第14回 地方消費者行政専門調査会 議事録

日時

2013年3月28日(木)14:00~16:21

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
宇賀座長、池田委員、池本委員、上原委員、小林委員、丹野委員、仲條委員、吉冨委員
【消費者委員会担当委員】
稲継委員、吉田委員
【オブザーバー】
国民生活センター 林企画調整課長
消費者庁 村松地方協力課長
【事務局】
原事務局長、小田大臣官房審議官ほか

議事次第

1.開会
2.第二次地方消費者行政専門調査会の進め方
   説明者:事務局
3.地方消費者行政の現状
 (1)地方自治法における国・都道府県・基礎自治体の役割分担
   説明者:事務局
 (2)地方消費者行政の充実・強化について
   説明者:消費者庁地方協力課 村松課長
 (3)旭市の消費者行政について
   説明者:仲條委員
 (4)人吉市消費生活センターの取り組み
   説明者:池田委員
 (5)埼玉県における消費者行政体制と県の役割 ~市町村支援体制・取り組みを中心に~
   説明者: 上原委員
 (6)地方消費者行政の現状評価と課題
   説明者:池本委員
4.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:9KB)
【資料1】 第二次地方消費者行政専門調査会の進め方について(事務局提出資料)(PDF形式:71KB)
【資料2】 国と地方の役割分担について(出典:総務省ホームページ)(PDF形式:192KB)
【資料3】 地方消費者行政の充実・強化について(消費者庁)(PDF形式:540KB)
【資料4】 旭市の消費者行政について(仲條委員提出資料)(PDF形式:26KB)
【資料5】 人吉市消費生活センターの取り組み(池田委員提出資料)(PDF形式:116KB)
【資料6-1】 埼玉県における市町村連携の取り組み(上原委員提出資料)(PDF形式:42KB)
【資料6-2】 埼玉県 平成24年度消費者行政担当職員研修カリキュラム(新任)(PDF形式:19KB)
【資料6-参考】 消費者被害の防止に向けて(埼玉県の取組)(PDF形式:61KB)
【資料7】 地方消費者行政の現状評価と課題(池本委員提出資料)(PDF形式:30KB)
【参考資料1】 地方消費者行政専門調査会 委員名簿(PDF形式:11KB)
【参考資料2】 地方消費者行政専門調査会 設置・運営規程(PDF形式:12KB)

≪1.開会≫

○原事務局長 それでは、時間がまいりましたので、始めさせていただきたいと思います。本日は、年度末で大変お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。
 ただいまから、「消費者委員会地方消費者行政専門調査会」の第14回会合を開催いたします。
 消費者委員会の事務局長を務めている原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 地方消費者行政の専門調査会については、本日が第二次消費者委員会発足後、初めての会合となります。お手元の参考資料の1に本専門調査会の委員名簿をおつけしておりますので、御所属、お名前等、御確認いただければと思います。
 なお、消費者委員会からは、稲継委員、吉田委員が担当委員として本専門調査会の調査審議に参画いたします。
 本日は、所用により専門委員の沼尾委員が御欠席ということで、御連絡をいただいております。
 専門調査会を開催するに当たりまして、座長につきましては、去る3月26日に開催いたしました「第116回消費者委員会」において、河上委員長から指名を受けました宇賀克也委員に務めていただきたいということになりましたので、御報告をさせていただきます。宇賀先生、どうぞよろしくお願いいたします。
 また、本専門調査会には、消費者庁と独立行政法人国民生活センターにオブザーバーとして御参加いただき、必要に応じて説明、質疑対応をお願いすることになっております。本日、消費者庁からは村松地方協力課長、国民生活センターから林企画調整課長に御出席をいただいております。どうそよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入ります前に配付資料の確認をさせていただきたいと思います。議事次第と書かれた紙の後ろに配付資料の一覧を載せております。
 座席表の次に、資料1といたしまして、「第二次地方消費者行政専門調査会の進め方について」ということで、消費者委員会事務局から提出いたしました資料。
 資料2といたしまして、「『国と地方の役割分担』について」ということで、出典は総務省のホームページですけれども、説明に使いたいと思いますので、おつけしております。
 資料3といたしまして、消費者庁に御準備をいただきました「地方消費者行政充実・強化について」の資料になります。
 資料4、5、6は、それぞれ旭市、人吉市、埼玉県の御報告をいただくことになっておりまして、その関連の資料になります。
 資料7といたしまして、「地方消費者行政の現状評価と課題」ということで、池本委員から御提出をいただいた資料となっております。
 参考資料1で委員名簿。参考資料2といたしまして、地方消費者行政専門調査会の設置・運営規程をおつけしております。
 不足がございましたら、途中でお申出をいただければと思います。
 それでは、宇賀座長、議事進行をよろしくお願いいたします。

○宇賀座長 東京大学の宇賀でございます。消費者委員会の河上委員長から御指名を受けまして、地方消費者行政専門調査会の座長を務めさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、第二次の専門調査会としての初会合でございますので、初めに、本専門調査会を改めて開催することになった経緯につきまして、事務局から御報告をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○原事務局長 それでは、地方消費者行政専門調査会を改めて開催することになった経緯につきまして、御説明をさせていただきます。
 地方消費者行政の活性化に向けた検討につきましては、第一次消費者委員会の際に本専門調査会を設置し、平成22年4月から計13回にわたって調査審議を行い、平成23年4月に報告書を取りまとめ、これに基づき第一次消費者委員会としての建議を行いました。
 平成23年9月に発足した第二次消費者委員会においても、地方消費者行政の活性化は、重要課題として位置づけておりまして、委員会本体において調査審議を継続し、自治体の調査も行った上で、平成24年7月に2度目の建議を行いました。
 これまでの建議のポイントについては、後ほど御説明させていただきますが、昨年7月の2度目の建議において、今後の課題として、活性化基金の終了後、地方消費者行政が中期的に目指すべき姿を明らかにすることが指摘されました。このため、去る3月12日に開催された第114回消費者委員会において、これらを含めた地方消費者行政に関する重要事項について調査審議を行うために、本日、専門調査会を改めて開催することが決定いたしました。
 事務局からは以上です。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 続きまして、座長代理についてですが、地方消費者行政専門調査会の設置運営規程の第2条第4項の規程によりまして、座長が指名することとなっております。私としましては、本日、所用により御欠席されておりますが、日本大学経済学部教授の沼尾波子委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、初めての会合でございますので、専門調査委員会の皆様に自己紹介をお願いしたいと思います。
 池田委員から順にお願いしたいと思います。

○池田委員 御紹介いただきました、熊本県人吉市市民部市民課くらし安心相談係、池田芳隆と申します。よろしくお願いいたします。

○池本委員 弁護士の池本と申します。消費者庁発足から2年ほど、消費者庁の参与をやっていたこともありまして、第一次の専門調査会にはオブザーバーとして参加させていただきました。さらに深掘りをしていくということで、きょうは第二次が開催され、私自身も期待感を持って参加していきたいと思います。よろしくお願いします。

○上原委員 埼玉県の消費生活課長をしております上原と申します。どうぞよろしくお願いします。

○小林委員 仙台から参りました小林でございます。私は、消費者活動を昭和52年から任意団体として続けておりました地域の消費者団体でずっと活動してまいりました。よろしくお願いいたします。

○丹野委員 全国消費生活相談員協会の理事長をしております丹野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 消費生活相談員は、全国に三千何百人おりますが、私どもの会員は、そのうちの2,200人ぐらいが任意で加入している団体でございますので、消費生活相談員の立場から、地方で消費生活相談員が把握している消費者の現実の声を踏まえて、ここで意見を述べさせていただくことを大変光栄だと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○仲條委員 千葉県旭市商工観光課の仲條と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

○吉冨委員 NPO法人消費者ネットやまぐちの副理事長をしております吉冨と申します。
 地域に根ざした活動をしてまいりました。その中で感じていること、思うこと等を述べられたらいいかと思って参りました。よろしくお願いいたします。

○宇賀座長 続いて、消費者委員会の担当委員である稲継委員と吉田委員、お願いします。

○消費者委員会稲継委員 早稲田大学で行政学を担当しております稲継と申します。よろしくお願いします。
 第一次の地方行政専門調査会にもかかわらせていただきました。今回、宇賀先生という非常に有力な座長をいただいて、うれしく思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○消費者委員会吉田委員 消費者委員会委員の吉田です。どうぞよろしくお願いいたします。
 私も現場を離れて2年くらいたっておりますので、少し感覚がずれてきているところもあるかもしれませんが,皆さんから現状をしっかりとお伺いしながら、しっかり考えていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

○宇賀座長 そのほか、まだお見えになっておりませんが、オブザーバーとして消費者委員会の山口委員も御出席の予定です。どうもありがとうございました。
 本日の会議につきましては、公開で行います。議事録につきましても、後日、公開することといたしますので、御協力お願いいたします。

≪2.第二次地方消費者行政専門調査会の進め方≫

○宇賀座長 それでは、議事に入らせていただきます。議事次第の2、「第二次地方消費者行政専門調査会の進め方」につきまして、事務局から御説明をお願いします。

○原事務局長 最初に、専門調査会の進め方について御説明をさせていただきます。資料1になります。
 本専門調査会の進め方については、一昨日、3月26日に開催いたしました第116回消費者委員会において、事務局より報告を行い、委員同士意見交換を行った上で、おおむねこのような方向で調査審議を進めることについて御承認をいただいております。
 消費者委員会における地方消費者行政に関する検討経緯ですけれども、平成21年9月に消費者庁及び消費者委員会が発足しております。このとき既に、地方消費者行政が大事だということは、委員も消費者団体の方々も、皆さん認識は一致するところでありまして、すぐに地方消費者行政の実態調査を、21年10月、11月にかけて、年明け辺りまでやっております。それをもとに、12月に「地方消費者行政の充実強化に向けて」ということで論点の提示を行いました。
 年が明けて、22年11月、12月には、消費生活相談に関する実態調査も行い、平成22年の4月から平成23年4月まで1年かけて、第一次の地方消費者行政の専門調査会を、計13回開催しております。そして、平成23年4月に専門調査会の報告書をまとめ、その折に消費者委員会に報告をして、地方消費者行政の活性化に向けた対応策についての建議を行っております。
 その後、第二次消費者委員会が発足するわけですけれども、平成24年5月から6月にかけて、地方消費者行政の現地ヒアリング調査ということで、計20か所、自治体を回りました。第二次消費者委員会では、「地方消費者委員会」というのも、委員がそれぞれ地方自治体に出向いていって開催しておりまして、これも既に8回実施をしているところです。こういったものも重ねながら、平成24年7月、「地方消費者行政の持続的な展開とさらなる充実・強化に向けた支援策についての建議」、二度目の建議を出したところです。
 2ページにこれまでの建議の主な内容をお示ししております。平成23年4月に出したものと平成24年7月に出したものと併記しておりますけれども、大きなものとして、支援策の検証・評価、財政支援/負担、消費生活相談員の処遇改善、基盤整備/技術支援等ということで、大きく分けて整理をしております。
 支援策の検証・評価については、第一次のときも第二次のときも同様の建議内容になっておりまして、国による地方に対するこれまでの支援策の検証・評価、結果の公表ということを求めております。
 財政支援/負担については、第一次のときは、PIO-NETの入力費用に対する国の一定の負担ということで、直接的にこういう形の財政支援ができないのか、という提案をしておりました。第二次、昨年7月に出したものでは、基金を使ってかなり底のアップというようなことが見えてきていたところなので、その段階での意見なのですが、自主財源確保が困難な自治体の、基礎的な取組みを下支えするための財政支援を確実に実施し、当面の間、継続してはどうか。国の政策的要請に基づく自治体の業務負担の実態を把握。国からの財政負担の在り方について、国庫負担金や補助金等を含めて幅広く検討して、必要な措置を講じてはどうか、としております。
 消費生活相談員の処遇改善も、消費者庁・委員会設置の国会での審議のときからずっと言われていたことですけれども、昨年7月の建議では、雇止めの抑止に向け、一律に任用回数の制限を設けることは適切ではない旨を自治体に対して要請してはどうか。消費生活相談員が、「任期付短時間勤務職員制度」の対象となり得ることを明確化してはどうかということを掲げております。
 基盤整備/技術支援のところでは、平成23年4月の建議では、相談ネットワークの充実、地方における法執行体制の強化を掲げておりますが、昨年7月に出したものでは、それに加える形で、多様な研修機会・プログラムの提供、基本マニュアルや相談事例集等の体系的整備・提供、消費者教育啓発に係る取組みへの支援強化を掲げております。
 3ページです。地方消費者行政の現状と課題ということで、これが今回の専門調査会の課題につながっているところです。地方自治体の現状について、現状認識ですけれども、1つ目の矢印は、多くの自治体が、活性化基金により地方消費者行政が前進したということは高く評価をしておりますが、基金終了後に自主財源確保の見通しがあるのは一部の自治体に限られておりまして、消費者行政の進展には、加えてなお大きな自治体間格差があるのが現状です。
 2つ目の矢印は、活性化基金で新設・増設されたところもたくさんございますが、相談体制の維持、消費者庁の設置前から指摘されてきた諸課題、消費者行政専管部署の設置、専任職員の確保、相談員の処遇改善等も未だ解決途上です。
 3つ目の矢印は、消費者庁設置に伴って拡充された消費者行政の全国ネットワークを維持・定着させていくためには、しばらくは国からの財政支援、技術支援が必要ではないか、という現状にあるのではないかと考えております。
 課題ですが、予算については、年が明けてからでしたが、平成25年度末までの基金の延長・金額の上積み等の措置が取られることが決まりました。今後、地方消費者行政を持続的に展開していくためには、地方消費者行政が中期的に目指すべき姿を明らかにすることがなお必要ではないかという課題を持っております。
 また、「どこに住んでいても消費生活相談を受けられる体制」を消費者庁設置のときに目指したわけですけれども、これを実現・維持する具体的な道筋を示すに当たり、まず、国・都道府県・基礎自治体の役割を機能面から整理するという課題があるのではないかと思っております。
 4ページに移りまして、そのような現状と課題というところで、今回、具体的な調査審議事項ということで、案でお示しをしておりますけれども、こういう形で審議を進めていってはどうかと思っております。論点のところを読ませていただきます。
 論点マル1といたしまして、地方消費者行政の現状分析。「どこに住んでいても消費生活相談を受けられる体制」がどの程度実現されているかについて現状分析するとともに、課題を抽出。これについては、消費者庁で現況調査をおやりになっていますけれども、現況調査を生かしながら、少し現状分析を深めて課題を抽出してはどうかというふうに思います。
 行政が住民に最低限保障すべき消費者行政サービス水準はどういうところにあるのか、ということ検討が必要と思います。
 論点マル2は、基礎自治体の役割と体制です。「どこに住んでいても消費生活相談を受けられる体制」実現に当たっての基礎自治体の役割と、体制面の選択肢を検討。この基礎自治体に相談窓口を設置する、センターを置くというところは、この3年、随分進んだと思いますけれども、皆さん、まだすごく苦労されているというところがありまして、定着に向けてはまだまだ課題があるのではないかと思います。それから、いろいろな工夫もあるだろうと思っておりまして、広域連携・連合、よろず相談窓口化、消費生活相談を核とした庁内連携を例で挙げております。基礎自治体の役割と体制をきちんと位置づけることが必要ではないかと思います。
 論点マル3として、国と都道府県の支援体制の役割分担ということで、前述の論点マル1とマル2を実現するに当たっての、国と都道府県による基礎自治体支援の役割分担について検討してはどうかと思っております。
 最後のページですが、スケジュール案ということでお示ししております。本日、第1回目を開催しておりますけれども、今後、月1回から2回程度開催し、専門調査会の報告書を取りまとめ、8月の上旬に消費者委員会に報告をして、8月中に消費者委員会による意見表明。建議または提言と書いておりますけれども、審議によってどういう取りまとめ方になるかは、これからの皆様方の審議にお願いをしたいと思っております。
 今、お示ししたのはあくまでも案ですので、事務局としては、進め方についての御意見も含めて御意見をいただければと思っておりますので、今後の審議にどうぞ御協力をいただきますよう、よろしくお願いいたします。
 事務局からは以上です。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見をお願いしたいと思います。

○池本委員 資料1の3ページ目の課題というところに関連して、意見を含めた発言ということになります。課題に2つ柱があります。今後、地方消費者行政を持続的に発展させていくためには、地方消費者行政が中期的に目指すべき姿を明らかにするという、中期的なあるべき姿は何かということと、下のところには、「どこに住んでいても消費生活相談を受けられる体制」を実現・維持という言葉があります。次のページの調査審議事項の論点提示にも、どこに住んでいても消費生活相談を受けられる体制がどの程度実現されるか。あるいは、それを実現するためにどうするか。相談体制の整備ということに絞り込んであるように見えます。
 ところが、課題の2つの柱のうちの1つは、相談体制だけではないはずです。消費者行政は、まず地域の消費者被害、トラブルをきちんと受け止めるという意味では、相談体制の整備が一番中核でもあるし、真っ先にやることですが、その情報を活用して地域の中で注意喚起、啓発をする、問題の業者については早急の取締り規制もする。あるいは、地域の中の消費者、消費者団体にも活動してもらうという、総合的な消費者行政があるはずで、中期的なあるべき姿というのはそこも含めた議論を展開していく必要があるのではないか。
 後で発言の時間をいただきたいのですが、消費者行政担当職員がほとんど増えていない。消費者行政の総体として何をやるべきかということが、方向づけがないからではないかというふうに思うのです。その意味で、ここの柱が相談体制のことに絞られすぎているように思うのですが、これは、特にそうしたいというところなのか。あるいは、もう少し幅広でもよろしいのかどうか。その辺りの御意見をお伺いしたいと思います。

○原事務局長 この案につきましては、消費者委員会の場でも議論いたしまして、同様な御意見は出ておりまして、相談に絞り込むのではないだろうと。私も今、説明するときに落としてしまいましたけれども、相談・啓発という言葉も使いました。それであっても、相談を受け付けるところだけの問題ではなく、あっせんとか法執行にどう結びつけていくとか、全体もあるでしょうという話になっておりますので、事務局としては、言葉としてはこうなっておりますけれども、絞り込むという意図ではありません。

○宇賀座長 ほかにいかがでしょうか。

○消費者委員会吉田委員 前回の委員会でも話題になったのですが、8月は一定のゴールとして設定されておりますけれども、地方消費者行政が抱える課題というのは本当にたくさんあります。8月ですべて終わりということではないことは前回の委員会でも確認しておりますので、御報告させていただきたいと思います。

○宇賀座長 ほかにいかがでしょうか。

○丹野委員 先ほどおっしゃっていた相談体制、「どこに住んでいても消費生活相談を受けられる体制」というのがまずコアになるというのは、十分承知をしています。そこをまず充実・強化してもらわないことには、そこからいろいろなものが進まないということも重々承知をしています。当然、それに伴ってこれから議論をしていくのですが、論点に直接には挙がっていませんけれども、行政間の連携だとか、消費者団体との連携、先ほど池本委員がおっしゃったようなこともあります。
 それから、ここの議論になるのがふさわしいのかどうか、私自身もよくわからないので、申し上げるのに躊躇しますが、例えば消費者教育。本当に地域の中で自立する消費者をつくって、いわゆる消費者市民社会を確立しようと思ったら、消費生活センターで相談を充実させるとか、法執行の体制をつくるとかに加えて、消費者の権利確立のために消費者に知識を持っていただくこともやはり視野に入ってくるのではないか。この調査会の時間の制約もありますので、今回のテーマにふさわしいのかという部分では躊躇する部分はありますが、先ほど吉田委員におっしゃっていただいたので、そういうことも考えなければいけない論点なのではないかという気はいたします。

○原事務局長 消費者教育もすごく大きい視点で、消費者教育推進基本法が昨年8月に成立しておりまして、消費者庁のもとに消費者教育の推進会議というものが設置をされて、3月から、まず基本方針を決めるということで会議が動いているという状況です。そちらの状況も随時、情報提供しながら、考えていっていただければと思っております。

○宇賀座長 ほかにいかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 専門調査会の進め方につきましては、おおむね委員の皆様の御了解をいただけたものと思います。地方消費者行政専門調査会としましては、消費者委員会から御提示いただきましたテーマの方向に沿って今後の調査審議を行っていきたいと思います。

≪3.地方消費者行政の現状≫

 

(1)地方自治法における国・都道府県・基礎自治体の役割分担

○宇賀座長 次に、議事次第3「地方消費者行政の現状」につきまして、消費者庁と地方自治体の現場で実務を担われている委員の皆様から御説明をいただきたいと思います。
 それに先立ちまして、本専門調査会の検討テーマについて調査審議を進めていく上で、消費者行政における国・都道府県・基礎自治体の役割分担を中期的にどのように考えるかが重要な論点になると思われますので、地方自治に関する基本的事項を定めた地方自治法が、この点についてどのように規定しているのかを事務局から御説明いただき、委員間での共通認識としておきたいと思います。
 それでは、事務局から説明をお願いします。

○事務局 事務局で参事官補佐をしております太田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 お手元の資料2に基づきまして御説明をさせていただきます。消費者基本法や消費者安全法に基づく国と地方の役割分担の枠組みにつきましては、この後、消費者庁の村松課長から詳しく御説明をいただく予定となっております。私からは、消費者行政を含めた行政活動の全般について、国と地方の役割分担、地方の中でも都道府県と市町村の役割分担について、どのように規定されているのかということについて、地方自治法の総則部分の関連規定をもとに御説明させていただきます。
 まず、総則部分におきましては、地方公共団体は、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を担うということが規定されておりまして、その上で、地域における事務及び法令で定められたその他の事務を処理するということが規定されております。
 こうした目的を達成するために、国と地方公共団体の役割分担の在り方を定めることになっておりまして、国としてはこれを基本として適切に役割分担をするということでございます。
 まず国の役割でございますが、国は、国が本来果たすべき役割を重点的に担うという規定がございまして、地方自治法では以下の3類型が例示されています。まず第1に、国際社会における国家としての存立にかかわる事務ということで、これは外交・防衛・司法・通貨といったものが当てはまるかと思われます。
 2番目といたしまして、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動、もしくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務ということで、基本的な法制度、基本的なルールや基準の策定といったものが当てはまるのかと思われます。
 3番目は、全国的な規模で、もしくは全国的な視点に立って行われなければならない施策及び事業の実施ということで、消費者庁は、主に3番目の観点から地方消費者行政に関与しているということになろうかと思われます。
 地方公共団体の役割でございますが、地方自治法では、「住民に身近な行政はできる限り地方公共団体に委ねる」という規定がございます。地方の中での都道府県と市町村の役割分担につきましては、都道府県は、広域の地方公共団体として、マル1 広域に渡るもの(いわゆる広域事務)、マル2 市町村に関する連絡調整に関するもの(いわゆる連絡調整事務)、マル3その規模または性質に応じて一般の市町村が処理することが適当でないと認められる事務(いわゆる補完事務)、以上3つの事務を行うということでございます。
 こういった観点から、都道府県は、広域的な消費者行政を実施するとともに、補完事務の一環として、特に財政基盤が脆弱な小規模自治体の消費者行政の推進に一定の支援を行うことが求められているということかと思います。
 その上で、市町村につきましては、都道府県が処理するとされるものを除き、一般的に地域における事務及び法令で定められたその他の事務を処理するということになっております。こうした観点からみれば、住民生活に身近な消費者行政の推進につきましては、市町村が主体となって担うことが基本であると、理想的にはそういうことが言えるかと思います。
 こういった規程に基づきまして、国は地方公共団体に関する制度の策定や施策の実施に当たって、地方公共団体の自主性・自立性を十分発揮されるようにしなければならないということで、国が地方に関与する際にはこういった制約に服するということになっております。
 以上でございます。

○宇賀座長 ありがとうございました。

 

(2)地方消費者行政の充実・強化について

○宇賀座長 それでは、地方消費者行政の現状、それぞれの取組みについて、御報告をいただきたいと思います。最初に消費者庁から、地方消費者行政の基本的な枠組みや全般的な状況、国からの地方への支援策の経緯や概要等につきまして、御説明をお願いします。説明時間は15分程度でお願いできればと思います。

○消費者庁村松地方協力課長 消費者庁の村松でございます。
 お手元の資料3に基づきまして、いただきました項目につきまして、御説明をいたします。
 基本的な枠組みでございますけれども、1ページが、消費者基本法でございまして、3条、4条で国と地方公共団体の責務について規定しています。国は、消費者政策の推進、地方公共団体は、国の施策に準じて施策を講じるとともに、地域の状況等に応じた政策を推進するということが規定されております。
 基本的な施策につきましては、マル3にございますとおり、啓発と教育は国と地方公共団体、苦情処理については地方公共団体ですが、広域・高度な案件について都道府県、苦情処理のための人材につきましては、国と地方が手を取ってということでございます。紛争処理も同様でございます。
 以上が基本法でございます。
 消費者安全法につきましては2ページになります。4条で、国と地方公共団体の責務について網羅的に定めておりますが、消費生活相談の事務につきましては8条で規定しておりまして、都道府県については、市町村相互間の連絡調整、広域的な見地を要する消費生活相談・あっせんと規定されております。市町村につきましては、消費生活相談とあっせん、情報収集・提供ということでございます。
 窓口でございます消費生活センターにつきましては、10条で規定しておりまして、都道府県については必置義務、市町村につきましては努力義務ということで、これまで体制整備を続けていただいているところでございます。
 国といたしましては、9条にございますとおり、消費生活相談の事業に関しまして、都道府県、市町村に対して、情報提供や必要な援助を実施するということが定められているところです。
 これが法的な仕組みでございまして、3ページは消費者行政全体のイメージをまとめたものでございますが、こちらの説明は省略したいと思います。
 4ページをごらんください。地方消費者行政活性化の基本的考え方でございます。上の枠にございますとおり、地域の消費者の安全・安心を確保するためには、行政の取組みのみならず、地域で消費者問題に携わる者が幅広く連携することが必要ということでございます。地方公共団体の中でも、消費者行政担当課だけではなく、幅広い部局との連携が必要ということでございまして、下のポンチ絵にございますとおり、地方自治体の中でも連携が必要ですし、地域全体でも、行政だけではなくて、地域の消費者団体、弁護士などの専門家等の連携が必要でございます。地域の連携の向上というところが大きなポイントになっているところでございます。
 続きまして、2つ目の項目としまして、消費者庁発足以降の地方消費者行政の概要でございます。まず、消費者庁設置以前は、5ページの図の上のほうになります。消費者庁設置までの10年間につきましては、相談件数は約40万件から約90万件に2倍以上に増加している一方で、消費生活センター、相談員の体制につきましては、十分には追いついてこなかったという状況でございます。加えまして、行政予算につきましても、163億円から100億円に大幅に減少を示しておりまして、自治体の厳しい予算削減の中で、相対的に消費者行政にしわ寄せがあったということがうかがえるところでございます。
 消費者庁設置以降、活性化基金成立後の状況につきましては、活性化基金等を活用いただきまして、各自治体で相談体制の充実を図っていただいたところでございまして、それにつきましては次のページで御説明したいと思います。
 21年に活性化基金ができまして、それ以降、活性化基金の活用をいただきまして、各自治体では、地方の消費生活相談体制の充実に取り組んでいただいたところでございます。これまでの3年間の推移でございますけれども、消費者行政予算につきましては、自主財源もこの3年間で15億円増加しているところでございます。左下の消費生活センターでございますが、3年間で223か所増加いたしまして、24年度当初で724か所になっているところでございます。
 相談窓口設置市町村は、この3年間で228自治体増加しております。市町村における相談窓口の人口カバー率の状況はこの4年間で4ポイント増加しまして、24年度当初で99%まで達しているところでございます。相談員につきましても、この3年間で591名増加いたしまして、24年度当初で3,391名になっているということで、窓口の充実を図っていただいたところでございます。
 7ページ以降につきましては、今年度の現況調査でございます。こちらについては、時間の都合上、説明は割愛したいと思います。
 10ページは、御活用いただきました財政支援でございますけれども、メインは地方消費者行政活性化基金でございます。こちらをメインに、住民生活に光をそそぐ交付金、地方交付税措置も大幅に拡充して、これらをもとに、これまで都道府県・市町村で体制整備に努めていただいたところでございます。
 メインの活性化基金につきましては11ページをごらんいただければと思います。右上の枠内にございますとおり、20年度の第2次補正の150億円以降、補正予算、当初予算で上積みをしてまいりまして、25年度当初予算の5億円を加えまして304億円を基金に交付いたしまして、これを活用いただいているところでございます。ですから、毎年60億円程度を取り崩していただきまして、それをもとに、窓口の体制整備、各種消費者教育等の事業等を都道府県、市町村に展開いただいたところでございます。
 事業の概要は11ページの右下にございますけれども、今日は省略したいと思います。
 今後の財政支援でございますけれども、12ページと13ページでございます。24年度の補正予算の60.2億円、来年度の当初予算の5億円、こちらを25年度までの財政支援ということでご用意しているところでございます。
 1つ目が12ページの補正予算による上積みでございます。真ん中の枠にございますとおり、活性化基金は、今年度までが取崩し可能期間でございましたけれども、それを1年間、25年度まで延長いたしまして、補正予算におきまして60.2億円を上積みしております。こちらの予算につきましては、主にこれまでの都道府県・市町村の取組みをさらに維持・充実を図るということを趣旨としております。
 真ん中の枠にございますとおり、大きく2つの柱で地方を支援いたします。1つ目が、市町村の基礎的な取組みの下支えということでございまして、これまでの3年間の集中育成・強化期間に整備されました体制の維持・充実を図るというものでございます。市町村におけるセンターの設置・窓口の新設、消費生活相談員さんの配置や養成、レベルアップ、都道府県による市町村の支援を対象にしております。
 2つ目の柱が、消費者問題解決力の高い地域社会づくりということでございまして、食と放射能の問題への対応など、リスクコミュニケーションに関する各種講演会の開催ですとか、消費者教育推進法を踏まえた各種消費者教育・啓発の取組みなどを支援いたします。こちらでは、多様な主体との連携事業ということで、消費者団体の間接補助も引き続き手当てをしているところでございます。こちらが今後の予算の施策の1つ目でございます。
 もう一つが13ページでございます。来年度当初案に盛り込んでおります5億円でございます。国と地方とのコラボレーションによる先駆的プログラムということで、こちらも活性化基金の上積みという点では同じですが、趣旨としましては、国を挙げて取り組むべき重要な消費者問題につきまして、国が政策テーマを地方に提示いたしまして、地方がそれを実証いただき、その成果を消費者庁が取りまとめて全国に展開するという、いわばパイロット事業でございます。
 国から提案をしようとしています政策テーマといたしましては、5つございます。1つ目が風評被害の防止ということで、消費者と生産者との交流、被災地の産品のフェアなどの開催等を想定しております。
 2つ目が、消費者と事業者との協働支援ということで、具体的には、事業者の商品開発に消費者団体が参画支援する事業ですとか、食品ロスの削減に向けた取組み等を想定しております。
 3つ目が、体系立った消費者教育の展開ということで、主に金融分野を中心に教材を作成いただいて、実際に講座を開き、その効果測定を図るという事業を想定しております。
 4つ目が、悪質事業者の撃退ということで、電話録音機を高齢者宅に設置いたしまして、録音情報を法執行に活用することを考えております。
 5つ目が、適格消費者団体設立の促進ということで、適格消費者団体は全国11か所で、まだまだ空白地域がございますので、設立促進に向けた取組みの支援を考えたいと思っております。これらが、今後の25年度までの財政支援の内容でございます。
 14ページをごらんください。地方消費者行政に対する国の財政措置の活用期間に関する一般準則でございます。こちらは26年度以降も視野に入れまして、基金またはその後継となります財政措置の個別事業ごとの活用期間に関するルールを、消費者庁長官通知ということで2月に定めて自治体にお示ししたものでございます。
 趣旨としては2つございまして、1つ目は、消費者庁としまして、各自治体の消費者行政の体制が定着するまでは継続的な支援が必要だということを認識していることを、自治体にお示ししまして、安心感をお持ちいただくということでございます。
 2つ目の趣旨は、自治体におきまして、一般準則で示されました期間を踏まえて、計画的に自主財源に移行する道筋をつけていただくことを促すことをお願いする、ということでございます。
 中身としましては、1のマル1 消費生活センター等の整備につきましては、活用期間は原則3年、それ以外の事業は、相談員さんの雇用・養成等、各種消費者教育の事業等ですが、それについては原則7年ということで定めております。
 一般準則では特例も設けておりまして、通常は原則7年でございますけれども、首長が、これまで基金で維持・充実した体制をこれからも維持・充実を図ることを表明いただいている場合には、プラス2年で合計9年にしたいと思っております。雇止め抑止が大きな課題でございますが、雇止めを行っている自治体につきましては、マイナス2年ということで特例を設けております。小規模市町村はなかなか自主財源化の道筋が難しいところもございますので、プラス2年で原則9年ということで期間を長くしております。ですから、小規模市町村で、かつ首長が表明を行っている場合には11年が活用期間となっているところでございます。
 今後、この一般準則を踏まえまして、引き続き26年度以降の予算についての確保を努力するとともに、自治体に向けましては、自主財源化の道筋のほうもお願いしたいと考えているところでございます。
 以上です。

○宇賀座長 ありがとうございました。

 

(3)旭市の消費者行政について

○宇賀座長 次に、仲條委員より、千葉県旭市における取組みについて御説明いただきます。説明時間は10分程度でお願いいたします。

○仲條委員 千葉県旭市の仲條です。
 旭市の消費者行政の取組みと今後の課題について、申し上げたいと思います。資料4でございます。
 旭市は千葉県北東部に位置しておりまして、平成17年7月に近隣1市3町が合併して現在の旭市となりました。人口は約6万8,000人です。
 消費者行政の組織・職員構成は、担当課は商工観光課、担当班は商業振興班4名おりますが、消費者行政を担当しているのは主に2人で、相談担当と啓発担当に分かれております。2人ともほかの業務と兼務しています。相談員は、ことし、4名委嘱しております。
 消費者行政の予算について、推移を表にしてございます。旭市では、現在、事業の予算のほとんどを活性化基金で対応しています。24年度については、最終予算を表に載せてありますけれども、決算見込みは総事業費が約690万円、そのうち490万円が基金・補助金で、事業の約7割を基金で充てております。25年度は当初予算の数字を載せておりますけれども、これは基金が終了する前提で組んだ予算ですので、少し少なくなっておりますが、その後、基金が復活するということで計画を立て直しておりまして、今後、補正で追加対応していく予定で、総事業費は1,100万程度になると思います。そのうち、基金の事業は860万ぐらいになると思います。
 次に4番、これまでの消費者行政充実の取組みとして書いてございます。旭市が重点的に取り組んできましたことは、相談体制の充実とセンターの周知・啓発の強化による相談の掘り起こしです。まず、消費生活センターの立ち上げが一番大きな目標としてありました。そのために相談員の確保が一番の課題でした。平成20年まで相談員は1名で、週2日の相談日を開催しておりました。相談員のなり手がなかなか見つかりませんで、市内にも近隣の市町村にも有資格者がいなかったため、相談員の資格試験を受けている方を探していましたけれども、やっと21年度に資格取得に意欲のある方を採用できまして、活性化基金の相談員養成事業に自治体参加型で派遣して、相談員を増員することができました。
 次のページです。22年度以降、窓口の開設日を段階的に増設していきまして、他市に勤務する相談員を当市でも委嘱して相談員の確保を図り、23年度に週5日の相談窓口を開設することができるようになり、センターを設置したところです。
 次に、消費生活相談体制の充実についてです。現在、旭市では相談員の配置を、1日1名の配置から2名の配置にする日を増やしていくことを進めております。市の後期基本計画でも、平成28年度までに相談員の配置を延べ10人とする目標を掲げております。つまり、平日はすべて相談員が2名で対応するということです。これは、行政の相談窓口として市民に対する責任がきちんと果たせる相談対応ができる体制にしていきたい、という思いから取り組んでおります。
 マル2に、現在までの相談体制の推移を表にしております。今年度は週のうち2日を2名の相談員の配置にしています。相談員の数は、24年度4名委嘱しておりますけれども、一人ひとりの相談員の勤務日が週1回から2回、または3回となっておりまして、フルに週5日勤務する相談員はおりません。そのため、4名の相談員がいても、完全に毎日複数の相談員を配置するという体制にはなっておりません。
 マル3に相談件数の推移を記してあります。21年度以降、相談窓口の開設の増設に伴いまして相談件数は徐々に増えています。今年度の新規受付件数は、現在340件で、前年度の2割増となっています。その下に括弧書きで記してある件数は、継続処理を含んだ延べの件数です。消費生活相談の特徴として継続処理やあっせん処理がありますので、これを数字であらわせるように23年度からカウントしています。今も新規受付は340件ですけれども、継続して処理をしている件数をカウントしていきますと、599件あります。
 表の一番下に、上記の割合としてパーセントが書いてありますけれども、これは全相談件数における旭市での新規相談件数の割合で、こちらも年々増加しています。また、相談員の配置だけでなく、相談員の専門性の向上のために弁護士による研修会の開催を毎月1回行うなどして、研修会への積極的な参加を行っています。
 消費生活相談員の処遇改善についても、報酬を日額8,000円から9,000円に向上するということを23年度から行いました。
 (4)の消費者教育・啓発事業については、まだまだ取組みが足りないのですけれども、活性化基金をかなり活用してセンターの周知などを図っています。
 次のページです。(5)の関係機関・庁内各課との連携について、旭市は、関係機関との連絡協議会の設置など形になっている連携体制の構築というのは、まだありません。民生委員や介護事業者への啓発は会議の機会に国センの「見守り新鮮情報」を配るなど、地道な活動をやっております。庁内の関係する課の担当者へ、消費者トラブルに悩む市民がいればセンターを案内してもらうように、担当者レベルでのコミュニケーションを大事にして相談の掘り起こしを図っております。
 次に(6)の多重債務問題です。こちらも、市の職員向けに多重債務問題についての研修会を行って、職員にこの問題に対する理解を深めてもらう努力をしているところです。
 次に、25年度に取り組む予定の事業について記載しています。目標としましては、さらに相談体制を充実・強化させていくこと、消費者教育の推進、多重債務問題に対する取組みの強化をやっていきたいと思っています。相談員は、25年度1名増員して4名から5名にし、複数で配置できる日を多くしていきます。さらに、センターの周知と相談の掘り起こしを図るために、毎月1回、週末出張相談というのをやろうと思っています。相談員を多く委嘱することができるようになりましたので、このような事業も行えるようになりました。
 消費者教育では、25年度初めてやる事業ですけれども、消費者力検定の団体受験を目指した連続講座の開催を予定しています。これは、個人の消費者力アップというだけでなく、地域力のアップといいますか、地域の中で活躍していただける消費生活サポーターのような方をつくっていきたいということでもありますし、このような講座をきっかけに、さらに勉強して相談員になりたいという方が出てきてくれればと願っております。
 多重債務問題の対策については、遅い気もしますが、やっと庁内の連絡会議を設置することとなりました。無料相談会の実施回数を増やしたり、開催方法を工夫して相談者の掘り起こしをやっていきたいと思っております。旭市は東日本大震災の被災地でもありまして、あれから2年たちまして、これから特にこのような問題に悩む方の支援が必要ではないかと考えております。
 次に、現状での課題について申し上げます。大きく2つありまして、相談の質の向上をしていくことと、被害の予防・救済のための連携体制の構築というのが課題です。消費生活センターの周知につきましても、件数などは増加していますけれども、まだほかのセンターに比べると件数や受付割合は低くなっています。旭市の場合は、市民や外部の関係機関との連絡協議会がありませんので、まだ相談窓口の存在を知らない市民が多く、被害に遭ってもセンターまでたどり着けない相談者がいると考えています。このため、いろいろな機関との連携が一層必要となっています。
 次に、相談の質の向上ですけれども、相談員の複数配置を進めていくという中で、なぜやっているかといいますと、複数体制の配置ができれば、相談員一人ひとりが今より余裕を持って相談に当たることができるようになると思っています。相談者に対しても事業者交渉にしても、じっくり取り組めるようになれば、あっせん率の向上につながるのではないかと考えてやっております。
 また、1日の勤務の中で、PIO-NETの入力時間も確保できるようにしていきたい。相談カードの精度を上げながら、相談受付から登録までの期間を短縮したいと思っています。相談処理の標準化も必要と考えております。旭市の場合は、相談員は新人からベテランまで年代も経験年数もさまざまです。行政の相談窓口として、どの相談員が対応しても、問題点の把握や解決が本来あるべきところにたどり着くことが理想だと思います。そのためにあっせんの基準や対応の仕方など、相談員同士、また、職員も交えて協議しながら検討していくことが、今後、必要となっています。
 相談体制を充実させるためにも、今後も引き続き相談員の確保が課題です。25年度も、相談員5名のうち4名が他市の相談員を兼務しています。扶養の範囲で働きたいという相談員もおります。そのため、旭市での勤務日数が限られてしまうという問題がありまして、今以上、複数体制を進めるにはさらに増員が必要ですが、現在も近隣に有資格者が少なく、資格のある方は既に他の市町の相談窓口を兼務していて、これ以上の兼務は無理といった状況です。
 次のページの消費者教育の推進も、連携という点で旭市はまだ劣っておりまして、必要な人へ必要な情報を届けるための連携や教育委員会との連携も課題です。今後、いろいろな事業を行っていくには、庁内における消費者行政への理解を深めていく努力が必要だろうと思っています。消費生活相談はほかの市民相談と違って、継続処理やあっせん、国への相談情報の集約までやっているということを知らない職員が多く、相談と啓発が一体となって市民全体の消費生活を支えているという理解が、庁内にはないように思います。
 職員の配置、体制に関しては、今以上の事業を実施していくには、担当職員が兼務の状態では思うようにいかないというのが実情です。消費者安全法には専任職員の配置というのが規定されておりますけれども、当市では、これを実現するのはなかなか困難であると思っております。
 以上、旭市における取組みと課題です。

○宇賀座長 ありがとうございました。

 

(4)人吉市消費生活センターの取り組み

○宇賀座長 引き続き、池田委員より、熊本県人吉市における取組みについて御説明いただきます。説明時間は10分程度でお願いします。

○池田委員 資料5になります。この資料は、今月上旬に佐賀県の消費者行政の職員と相談員さんの研修会がございまして、そのときに使わせていただいた資料です。
 まず、人吉市の概要です。熊本県の南部に位置する、鹿児島県と宮崎県に隣接するところでございます。人口は3万5,320名、女性が約2万、男性が1万5,000ぐらいでございます。高齢者率が30%を超えておりまして、ほとんど老人の集落となっているところです。主な産業は農業と観光業。観光業といたしましては、とりあえず温泉地でございます。まちの中央を球磨川という日本三急流の川が流れておりまして、その川を使った川下りもございます。特産品は球磨焼酎で、人吉・球磨地域に28の蔵元がございまして、約200種類の焼酎が販売されています。「白岳」「しろ」という名前は聞かれたことがあるのではないかと思います。人吉を中心に、球磨郡に9町村、そこの中核都市という形で存在しているところでございます。
 人吉の消費生活センターは、もともと地域生活課にございました市民相談係(一般生活相談)と、商工振興課にございました消費生活相談を一か所にまとめるということで、平成21年4月に設置しております。なぜこういう形になったかというと、当時、市職員が消費者トラブルに巻き込まれ、相談ができずに大変苦労したという事件がございました。職員ですら、消費者問題に関してどこに相談しに行っていいのかわからない。ということは、市民はどこに行っていいのかわからないというのが大もとだと思います。あとは、消費生活問題といいながら、多重債務に関しましても、後ろに存在するのはDV問題であったり、離婚問題であったり、生活問題が必ずついてくる場合が多うございます。
 そこで、当時、市長が、これでは市民もどこに相談に行っていいのかよくわからない、相談に行くのは1か所で、そこからきちんと関係機関につないでいけばいいのではないかと、市長の肝いりで、市民課にくらし安心相談係というわかりやすい名称で相談係を設置したところでございます。当時、ちょうど消費生活センターもつくるべき時期に来ておりまして、基金がございましたので、21年9月に設置をしたところでございます。
 センターの状況でございます。所長は市民課長が兼務しております。職員が3名(再任用職員を含み相談員を兼務)、相談員が4名(非常勤職員)。勤務は月17日、週4日という制限がございます関係で、私自身も相談を受けておりますが、1日に最低4名、マックスで7人が相談を受けられる体制としております。PIO-NETも2台ではさすがに足らずに、昨年、3台に増設をしていただいたところでございます。
 予算の絡みは、数字は出しておりませんけれども、平成20年の予算が、消費者問題に関する予算は9万5,000円でした。地域の消費生活連絡協議会なる任意の団体に対しての補助金が6万円、消費者モニターに対する日当が3万5,000円ということで、平成20年は9万5,000円という状態でございましたけれども、平成21年度から基金を使わせていただくことになりまして、約100倍の1,000万を使わせていただいております。最初の年度のうちは整備のほうに重点を置きまして、21年度は相談員を2名採用していましたが、足りないということで、平成22年度には2名増員した形で、非常勤でございますけれども、相談員を4名置いております。相談受付時間は8時半から17時、土・日、祝祭日、年末は除くという、典型的な公務員の相談室でございます。
 今、人吉市が取り組んでいる取組みは、3つのネットワークとしまして、庁舎内のネットワーク、地域のネットワーク、そして、人吉市の場合は近隣に9町村がございますので、そこを含めたところでの広域のネットワークということでやっております。イメージとしまして、相談がありましたら、庁内または関係機関、地域がその人をまとめていくということにして、その人の相談に関して対処をしていくということで考えております。
 まず、庁内のネットワークです。職員全員が相談員であるという意識を持たせるために、平成20年度、ちょうど職員がトラブルを起こしたときに、職員全員に対して多重債務の研修を行いました。70分の4コマ、当時、350人の職員が全員受けまして、多重債務とは何ぞや、消費生活問題とは何ぞやということで行ったところでございます。その意識を持ったところで、まず、直接住民にかかわるところ、福祉課、高齢者支援課、保険年金課、納税課、建築住宅課、市民課、水道局等、直接市民と接するポジションの職員が相談員の気持ちを持って対応していこうということで、全職員の研修を行ったところでございます。
 それから4年ほどたちまして、職員の入れかわり、新人職員もおりまして、業務による意識のズレも発生しました関係で、平成24年10月から11月にかけまして、基金を使いまして、新人職員を含め、窓口を担当する職員ももう一度初心に帰ろうということで、70分3コマの消費者問題に関する研修を行いました。
 庁内のネットワーク、人吉市におきまして協議会なるものはつくっておりません。一人ひとりが、問題があれば、何が問題なのかという意識を持って、市民から相談がありましたら、とりあえずは相談係に回し、相談係で問題を確認する。市民自体も、何を相談していいのかがわからないというパターンがほとんどです。その中で何が問題になっているのかがわからないということを、きちんと一人ひとりの相談員が意識を持って、どこに問題があるのか。問題があったら、どういうふうに解決をしていけばいいのかということで確認をして、庁内に関して、高齢者支援が必要ならば高齢者支援のほうに回す。成年後見などの問題が特にそういうところになってくるのかと思います。福祉関係、障害者関係でありましたら福祉課、また、多重債務の後ろには必ず生活困窮がついておりますので、生活保護の担当課に案内して生活再建を図るという方法でやっております。一人ひとりの意識というところでございます。
 続いて、地域のネットワークということで、人吉市くらし安心ネットワーク推進員なるものを考えました。先ほど言いましたとおり、人吉市は30%を超える高齢者が主な世帯になっております。高齢者の方が地域を見守るということで、地域のシルバーヘルパー、これは老人クラブが行っている見守りの団体です。また、民生・児童委員、町内会長、行政相談員、総務省の行政評価事務所の相談員さんがいらっしゃいますので、そういう方とも行政相談を含めたところで、どういうふうにやっていけばいいか、そういう方に参加を依頼してやってきたところでございます。23年から始めまして、23年が50名、24年度が50名の参加をいただいて養成講座を行ったところでございます。
 見守りということを念頭に置いておりますけれども、本来は役職についていらっしゃる方は地域のそれなりのリーダーの方なので、こういう方々が消費者トラブルに巻き込まれる。悪質商法、訪問販売などがあった場合、田舎では、「あそこの誰々さんが買われたので、あなたも買いませんか」という訪問販売というのがございます。そういう知名度のある方が引っかかってしまうことは、そこの地域自体が全部、あそこの人が買われたのだから、この商品は大丈夫だろうということになってしまう危険性がかなり多うございます。ですから、まずは地域リーダーがそういうトラブルに巻き込まれない環境をつくろうと。もちろん、案内していただくのは前提ですけれども、それ以前にそういう方々が巻き込まれないことを目標につくったところでございます。
 講座の内容としましては、高齢者の消費者トラブル、成年後見人制度、高齢者が主ですので、相続問題。田舎の方々は、法律問題を弁護士に相談するというのは敷居が高く、費用も、人吉市内に弁護士がお二人いらっしゃいますが、やはり弁護士に相談するだけでも高いのではないかと不安を持っておられますので、万が一、裁判等々になったときには、法テラスもありますということで、法テラスの活用法なども案内しているところでございます。2年間やりまして、皆さんが今後も喜んで参加をしたいということですので、平成25年度においても、養成講座につきましては、秋口にかけて月に1回程度、皆さんがお元気なうちはやっていこうと思っています。
 続きまして、広域のネットワークでございます。人吉球磨生活支援ネットワークとしまして、人吉市を中心に9つの町村があります。平成21年に、地域格差があるのではないか、相談しに行くにしてもどこに行ったらいいかわからないという声もありまして、消費者行政担当者と社会福祉協議会の多重債務担当、金融・貸付担当と一緒になりまして、窓口をつくってみようということで始めました。もちろん、情報の共有化も一つですけれども、もう一つの目標が、相談することに慣れていないということでございましたので、人吉市を含め10の市町村で、月に1回、巡回で相談会をやろうと。
 一つは、地元では、多重債務の相談、DV、離婚の問題、そういうことを相談することは恥ずかしいという意識がございます。知られては嫌だという意識が田舎の人は特にございます。ただ役所に行っただけで、「あの人は役所に来とんなったばい」という話もあるぐらいで、ものすごく敬遠されますので、自分の自治体以外のところだったら相談に行けるのではないかということを考えまして、各自治体に消費者行政担当者がおりますので、月に一度、相談窓口を開きましょうと。巡回相談における相談の担当者は、市内にいらっしゃる弁護士、司法書士、あとは、多重債務などはかなり精神的に疲れている方もいらっしゃいますので、その対応をするために県から臨床心理士を派遣していただきまして、少しでも問題解決するようなことでやっているところでございます。
 昼1時から夕方4時までの3時間程度ですけれども、1回の相談会で10名前後の相談がございまして、年間80~100名近い相談を受けております。その中の半分以上が他の地域からの相談になっております。ですから、少しは広域としてのやり方もあるのではないかと思っているところでございます。
 ただ、広域ネットワークということで問題になっているのが、協定を結ばずにやっておりますので、行政が他市町村の住民の相談を受けることは本来の姿と違うのではないか、やはり地元住民を優先して相談を受けるべきではないかという声が上がっているのも実際でございます。ですから、協定を結ぶなり、何らかのきちんとした枠組みの中でやっていかなければならないと思っております。
 最終ページに、今後の取組みということで載せております。人吉市が目指すものは、やはり、地方行政は地域住民の安心・安全を守るというのが大前提でございます。本当の意味でのライフサポートセンターというものを目指そうと思っております。地域住民が、生まれて住民登録されて、児童福祉が始まり、小学校に入れば教育問題があり、二十歳になれば年金というものが始まり、皆保険ですので保険というものがあります。成人になれば税金という問題も出てきます。常日ごろ、地方行政の職員というものは、そこに住んでいらっしゃる地域住民に対して、陰となり日なたとなり支えていかなければならない立場だと思っております。職員一人ひとりが地域に入り込み、地域の中の職員ということもあり、また、行政の職員という意識を持ちながら、少しでもライフサポートセンターの形がきちんとできればということで目指しているところでございます。
 ただ、今後の問題の中で、職員の意識という基本的なものがありますので、地域に対して愛着がないわけではないのでしょうけれども、人に干渉されるのが嫌だという人が増えてきておりますので、職員も地域の住民も、そういう人たちに対して、いかに地域の中での生活が必要になってくるのかということが重要になってくるかと思っております。
 最後に、人吉市の生活保護の話をさせていただきたいと思います。私も以前、生活保護のケースワーカーをやっておりましたけれども、人吉市の生活保護は以前は5‰程度の保護率でございました。今の10‰を超える保護率というのは以前に比べれば上がっております。いろいろな問題を抱えている人が増えてきているのが正直なところです。私たちは、多重債務なり何なりということで保護係に案内しますけれども、保護係の理念が、経済的自立がすべての自立ではない、まず自分の身の回りのことができる自立も一つの自立であろう。また、社会の中にとけ込める自立、社会的自立というものもあるのではないか。経済的には高齢者も自立できている人は少ないでしょう。ただ、社会の中で生きている自立を目指すためには、経済的自立だけを追い求めるのではなく、そこにいる人たちと一緒に生活をしていくという意識を持たせたいので、頑張っているということをうちの保護係が言っております。
 消費生活問題というのは、私たちのところでは消費生活センターと名乗っておりますけれども、消費生活問題だけではございません。本当に何でも相談です。何でも相談に当たる中で、いかにその人の問題の本質を見抜いていくかということが、窓口の最大の課題と今後の課題だと思っておりますので、頑張っていきたいと思います。
 最後はまとまりませんでしたが、以上でございます。

○宇賀座長 ありがとうございました。

 

(5)埼玉県における消費者行政体制と県の役割 ~市町村支援体制・取り組みを中心に~

○宇賀座長 引き続き、上原委員より、埼玉県における取組みについて、基礎自治体への支援の取組みを中心に御説明をいただきたいと思います。説明時間は10分程度でお願いします。

○上原委員 埼玉県の上原でございます。
 埼玉県における消費者行政体制と県の役割ということで、資料6-1を中心に御説明させていただきます。1枚でここ数年の埼玉県における市町村連携の取組みをまとめさせていただきました。
 私ども、基本的に市町村に対しまして、相談窓口の設置ないしは消費生活センター化について、いろいろお願いをしてまいりました。その実績が上の行に書いてございますが、おかげさまで、平成22年4月1日の段階で全市町村に相談窓口が設置され、消費生活センターについても、この4月には63市町村中61市町にセンターが設置される見込みでございます。これは、従来から市町村相談体制整備に向けまして、県の幹部職員が市町村トップマネジメントへの働きかけ、私は営業活動と言っていますけれども、いろいろ進めてまいりました。私自身も、毎年ターゲットを決めまして、この市町村にお願いをしようということで、それぞれ首長さんなり、副市長さん、副町長さんクラスにいろいろな働きかけをしてまいりました。
 非常に効果がありましたのは、この数字を見ていただけばわかりますが、平成22年からセンターの数が急に増えております。これは消費者行政活性化基金の効果が非常に大きかったと思っています。私どもが市町村のトップにいろいろお願いをする際に、財政的な裏付けができたということは、非常に大きな効果として数字で示されていると考えております。
 従来、埼玉県では消費者行政は相談業務が比較的中心でございましたし、伝統的に埼玉県と非常に熱心な市が中心となって相談業務に取り組んできたという歴史がございます。その一方で、一部には、県と市町村の行政レベルの部分において、若干熱意の差があったり、コミュニケーション不足の部分があるという認識もございましたので、平成22年、消費者行政活性化基金ができて2年目ですが、このときに市町村の担当課長会議を5月に行い、講演会と基金の趣旨の説明、消費者行政がいかに大事かというような説明もさせていただきました。
 これはよく言われますけれども、埼玉県内でも市町村の消費者行政の担当課、いわゆる消費生活課という専任の課があるところは少のうございます。産業系とか、安全行政の部分に置かれているところが多いものですから、それぞれの中間マネジメントのトップである課長さん方に、きちんと消費者行政の重要性を意識してもらうことがまず大事だと考えました。22年度からこういった取組みを始め、さらに、基金事業の説明会等を、埼玉県内には4つの消費生活支援センターがございますので、その4つの地域における説明会等もあわせて実施するような格好で、県と市町村の職員のコミュニケーションを活性化していこうという取組みを始めてございます。
 従来からそういったことは若干意識をしておりましたが、特に県の消費生活支援センター職員にも、市町村訪問を22年から積極的に行うようにお願いいたしました。私どもは役人稼業でございますので、同じ行政に携わる者でも、特に用もないのに市町村にお願いに行くのはなかなかやりづらいところはありますが、それをあえてセンターの職員にもお願いをいたしまして、課題等もあったり、基金の説明だったりということも含めて、市町村回りをお願いするというような取組みを22年ぐらいからお願いしています。そういった部分で、県と市町村間の情報の共有、実務的な細かい話もございますし、相談員の相互融通みたいな話も含めまして、いろいろなコミュニケーションが必要だろうと、それを活性化していこうという取組みを始めております。
 さらには、例えば高齢者の見守りハンドブックというようなものを県でもつくったわけですけれども、これを市町村に単に送りつけるだけではなくて、それを持って市町村に説明に行き、さらには、それを配る先、地域包括支援センターにも県の職員が直接お邪魔する、平成22年には、埼玉県内に233の地域包括支援センターがございましたが、全部回ろうという取組みをいたしました。市町村によっては、会議の場で幾つか集まる場があるというところで、そういう場での説明も含めまして、基本的には地域包括支援センターにも、県の消費者行政の取組みを御理解いただく広報活動の様な取組みを始めておりますし、民生委員、学校へのアプローチなども消費生活支援センターで個別に取り組んでおります。
 特に高校への消費者教育の題材の提供とか、大学生の間で投資DVDの被害、いわゆるマルチまがいの被害がこの2、3年急増しております。必要に応じて大学事務局に職員が説明に行くなり、最近でも県南部の大学でこの被害が連発しましたので、今の学生さんは、学部によりましてはすべて携帯のメールシステムが完備しておりますので、全学生にメーリングリストに基づいて注意喚起情報をまいていただくという取組み等を、少しずつでございますが始めております。
 こういった格好で市町村の相談窓口が整備されつつありますが、ハコだけの整備では不十分であるという認識をしてございます。左側の下向きの矢印にございますが、相談窓口が整備されますと、次の相談体制の充実が課題になろうかと思います。その意味で、平成22年に相談員の養成講座を基金事業で実施いたしまして、12人の相談員を養成いたしました。現在、このうちの10人の方が市町村の相談員として御活躍をいただいております。もちろん、養成講座を卒業されて市町村の相談窓口に配置されても、実際の相談対応はなかなか難しいところがあるのは事実でございます。そのため、そういった方々には、任意でございますが、県の消費生活支援センターに勤務日以外の日にお出でいただいて、さらなる現場での研修を積む、ないしは県の相談員が、若干不慣れな市町村相談員の方を巡回訪問しながらフォローする、さらには、共同処理を行うという意味での相談支援、これは別に新任の相談員さんだけでなく、御要望のある市町村相談員さんのところに、県の相談員が、相談員の相談員としていろいろなフォローを行わせいただくという取組みをさせていただいています。
 主任相談員の創設というのも平成21年度に実施してございますが、この主任相談員がいわば相談員の相談員という格好で、ベテランの方にお願いしてございますので、県の相談員も市町村の相談員も含めまして、いろいろなフォローをお願いするとともに、問題解決チームと言っておりますけれども、困難な案件に関しまして、主任相談員と県の職員と弁護士も含めたチームによる対応等を組ませていただきます。これに伴いまして、県の相談員の処遇改善という部分もございまして、月額報酬化、さらには土曜相談の開始、段階的な充実などに関しても取り組んできたところございます。
 それとあわせて、基金事業で特に相談員の方の研修事業、さらには研修参加支援事業を追加で行っています。県単でももちろん相談員の研修事業は従来より実施しておりましたが、基金事業のおかげでかなり充実した内容となってございます。
 さらに、職員の研修事業につきましては、資料6-2にカリキュラムをつけさせていただきましたが、これは従来から県単独で実施している内容のものでございます。市町村の職員の方にもいろいろ御理解をいただこうという意味で、年1回2日程度の日程で実施をしているところでございます。また、本県におきましては、埼玉県弁護士会の御協力をいただきまして、平成18年度から基礎法令研修会を実施しております。これは弁護士先生方の手弁当で毎月1回、夜間開催しているものでございまして、弁護士の先生方と、県と市町村の相談員と職員、任意による参加でございますが、さまざまな相談事例の検討等をさせていただいております。ここでは県職員の参加がかなりの部分でございまして、市町村職員の参加が若干少ない、どうしても平日の夜6時半から始めますので、その辺の問題がございますが、市町村相談員の方も含めまして、相談員の方にはたくさんの御出席をいただいているところでございます。
 こうした取組みによりまして、市町村センターの機能向上と、当然、市町村も県も含めて困難案件への対応力の向上を図っていきたいということで、これはこれからも続けていきたいと考えております。
 相談体制の充実の次に出てきますのは、啓発事業といいますか、消費者教育の分野でございます。できれば地域における啓発・情報活動の拠点として市町村の消費生活センターが機能することが望ましいわけでございまして、県としても、多様な主体との連携と書いてございますが、基金事業で消費者被害防止サポーターというものを3年間で200人養成させていただきました。ただ、養成しっぱなしにしておきますと、活躍の場がなかなかないというところがございますので、その後もフォローアップ研修を開催しつつ、アンケートを実施したり、具体的に活躍の場ということになりますと、市町村の場でどちらかということが一番現実的でございますので、従来から活動いただいている地域の消費者団体との関連も気にしながら、各市町村にそういう活用のお願いをしております。
 さらに、実際の相談現場等では、高齢者被害の急増なり勧誘手口の多様化・悪質化ということは、毎年、言われていることでございます。これらに対していろいろな手法がございますが、特に高齢者の被害を防ぐという意味においては、啓発事業をいろいろ行っても必要なところに情報が届かないのではないかなど、今までの行政の取組みからするとなかなか難しい部分がある。このところ、広く見守りということの活動も行われてはいますけれども、市町村には消費生活相談窓口がすべて設置され、専門家である相談員がいるわけですから、これを何とか活用してもらおうということで、地域連携フォーラムを平成23・24年度に開催しております。埼玉県では、要援護高齢者支援ネットワークを県の高齢介護課が事務局となって構築してございます。これは、行政だけでなく、電力会社、新聞販売店等、いろいろな地域活動を行っているところの見守りとの連携組織で、県レベルの組織でございまして、全部の市町村にあるわけではない部分もございます。このネットワークの中には消費生活支援センターも当然入っていますし、私ども消費生活課も入っております。市町村レベルで温度差もございますので、そういったものをベースに、フォーラムの中で紹介しつつ、県が中心となりまして、市町村の相談員の方と、地域包括支援センターや社会福祉協議会の方の参加をいただいてフォーラムを実施しているものでございます。内容としましては、相談員や弁護士による相談事例、被害事例の紹介。それぞれの地域におけるモデル的な取組みの紹介などを2年実施してまいりました。来年も、形を変えてこういった取組みを継続していきたいと思っております。
 さらに、本年度は市町村職員の出前講座の講師の研修も実施しております。私ども県の消費生活課は、出前講座ということで各地域の公民館事業等にも呼ばれる場合は、悪質商法の紹介、被害防止のための取組み事例等、私のところの職員が年十何回も参加しております。これは県の事業として行っておりますが、市町村で行われることが回数から言っても望ましいわけでございます。私のところの職員は、4月に異動してきた採用4年目ぐらいの職員でも、6月には出前講座を自分でやるぐらいのことはやってもらっていますが、なかなかとっつきづらいというところもありまして、市町村の職員にも、話し方教室から基礎的な部分から含めて講座を開催いたしまして、そういった取組みを促進するようなお願いをしているところでございます。
 来年度につきましては、消費者被害防止サポーターさんの中で、この講座の中で、消費者被害を寸劇であらわそうという取組みをしておりますので、寸劇グランプリというようなものも開催しつつ、いろいろな意味で広報活動も含めた取組みをしていきたいと思っております。そうすることによって、市町村レベルにおける、いろいろな消費者被害にかかわりを持つ団体・機関が、緩やかでも結構でございます、何らかのネットワークをつくり、それぞれの情報交換をしながら、なるべく整備されつつある消費生活相談窓口につないでもらう。それによって相談の掘り起こしをし、被害救済への取組み強化につながるように取り組んでいきたいと考えているところでございます。
 これらを進めますと、テーマであります役割分担に関しましても、県と市町村という部分では方向性が見えてくるのではないかという意識を持って、取組みをさせていただいているところでございます。市町村からすれば、若干お節介かと思われる部分があるかもしれませんが、県の取組みとしてこんなことをさせていただいております。
 資料の裏面ですが、「機能に応じた施策と課題-埼玉県における現状イメージ-」という簡単な表をつくらせていただきました。こういう三角形の山をつくりますと、通常は唯一の存在である国が一番上に来て、その下にそれぞれ47都道府県、基礎的自治体と重層的に重なるイメージかと思います。これはあくまで私自身の現状のイメージでございますが、消費者庁が設置されたことによって、国レベルにおいて、非常に広範囲な消費者行政の取組みの仕組みができた。非常に広範な施策分野を消費者庁が所管する、という取組みがなされたと私どもは理解しております。
 それに比較しますと、都道府県や市町村の直接担任する分野というのは若干狭いのではないか。例えば県の消費生活課という立場でいきますと、食品安全等、他部局の仕事もございまして、消費者庁の行っている担当業務をすべて行っているわけではないという組織上の問題はございますが、イメージからすると、国レベルでの話ではない部分でもございますので、それぞれの分野が少し違って、権限も含めて分野は少し狭くなっているのではないかという意識を持っております。
 それを逆に市町村、都道府県、国の機能ということを考えますと、市町村はやはり非常に住民に身近な存在であり、地域性を持ち、なおかつ福祉、自治振興分野の中核的な機能を既に担っております。地域包括支援センター、自治会、民生委員ですとか、そうした部分での実態的な部分でのかかわりはすべて市町村が行っている、都道府県には一切直接的なかかわりの持ちようがないという現実がございます。
 さらには、総合性の発揮しやすさということで記載させていただきましたが、これは規模との相関関係もありますし、縦割りの話はどこでもありますが、比較的規模が小さいほうが、ワンストップ的なサービスの提供はしやすいという傾向はあろうかと思います。右側に課題的なイメージを申し上げましたが、やはり規模・体制に市町村は大きな差がございます。埼玉県内におきましても、人口規模からいけば、下は3,000人から上は123万人の政令市までということで、そのばらつきが大きすぎるという課題はございます。
 また、県においても一定の広域性がございまして、情報収集なり集約をする機能、PIO-NETのセンターの機能もございますし、専門性という部分でも一定の能力は持っていると思います。情報発信機能としまして、テレビ局なり、FM局なり、報道機関との一定のつき合いもあろうかと思います。さらに法執行機能としては、制度・権限として、特商法・景表法の権限を持つだけでなく、県警本部との密接な連携関係も可能でございます。実際に特商法だけでなく、執行・調査のレベルと犯罪調査のレベルにおいての連携も頻繁に行っておりますし、個別案件に関する口座凍結等の協力に関しても非常に密接な関係にございます。これは都道府県の機能としてあり得るものだと思っております。さらに、食品衛生ですとか、環境部門で産廃の指導、福祉施設の監査というような、いわゆる行政警察機能も都道府県は本来持っておりますので、職員が異動でいきなり消費生活課の法執行担当に来たとしても、そういう感覚的なもの、ないしは、他部門での経験のある職員をハンティングすることも可能だというような部分があろうかと思います。ただ、右側に掲げましたように、あくまでも地域限定の権限と責任ですし、国と比較すれば、政策立案機能の限界は甚だしく差があることは現実問題としてあると考えております。
 最後に、参考というペーパーを準備させていただきました。これは古い資料でございまして、平成22年11月に当専門調査会のヒアリングに私が呼ばれたときに提示した資料でございますので、データ等は古くなっておりますが、県の消費者行政への取組みという格好では基本的な仕組みは変えておりません。見出しにございますように、「相談・啓発・事業者指導の相互リンク」という形で、県と市町村がお互いに協力・連携しつつ、この3つを相互に回しながら、消費者被害の防止という施策目標に向かって進んでいこうという内容のものでございます。本年度に消費生活基本計画も改定いたしましたが、従来から、埼玉県は消費者被害の防止を施策の目標として掲げてございます。その施策目標を達成するのにどうしたらいいかという発想をしますと、やはり相談・啓発・事業者指導というものを一体的に取り組んでいく必要があるだろうということでございます。
 事例として適切かどうかわかりませんが、相談業務そのものも、お客様でございます相談者の気持ちに寄り添い、個別案件としての相談の内容を、県民の方に満足いただけるようにリードしていくというのが本来の相談の機能だと理解はしております。その相談のプロセスの中で、例えば特定商取引法に反するような事例等が記録されている場合には、当然、それは事業者指導の材料として有力な内容のものになりますし、県においては、さまざまに集まってまいりました相談情報を分析・統計化することにより、相談そのものが一つの情報として客観化されていく。それに基づいて、県としての施策の立案なり啓発活動へフィードバックすることが可能であるということでございます。
 これを私どもは意識しておりますし、その意味においては、市町村の機能、相談体制の充実等はまさしく県の利害でもあるという理解のもとに、こうした考え方で取組みをさせていただいているところでございます。
 以上でございます。

○宇賀座長 ありがとうございました。

 

(6)地方消費者行政の現状評価と課題

○宇賀座長 最後に、池本委員より資料の提出をいただいておりますので、簡潔に御説明をお願いします。

○池本委員 時間もありませんので、ポイントだけ申し上げたいと思います。
 今、仲條委員、池田委員、上原委員から御説明をいただいたそれぞれの自治体の取組みというのは、本当にこういう形で各自治体職員が意識と意欲を持って施策を展開していただければ、大きく消費者行政は充実するであろうと思うのですが、全国の実情で言うと、こうやって意欲的にやっているところはむしろごく一部で、全体像からすれば、まだまだ動き出したばかりで不十分であると言わざるを得ません。活性化基金が導入されたことで、特にそこでは相談窓口の整備、相談体制の整備ということを重点課題にしていましたから、その点は、先ほど消費者庁の資料にもありましたが、進展していると思います。それでもまだ、小規模自治体の体制整備、あるいは国と都道府県がどう支援するかという残った課題があるわけです。
 きょう、一番ポイントになるところとしては、担当職員は増えていないし、その資質向上ということが、これまで手つかずだったのではないだろうかということを申し上げたいわけです。
 なぜそれを申し上げるかというと、消費者庁地方協力課からお配りいただいた資料3の7ページによると、消費生活センターは増えました、相談窓口も増えました、相談員も配置数が増えました、しかし、消費者行政担当職員は減っているのです。それまでの財政規模からすると、5割増の基金が投入され相談体制が整備されれば、個別相談を受けておしまいではなくて、それを地域の中で生かしていく、庁内の連携もあれば、地域の団体との連携もある、それをやっていくコーディネート役である職員さんが大いに力を発揮していただくこと、それで初めて相談の情報が生かされるはずなのですが、それが全然増えていない。
 私のレジュメの下のところに、地方消費者行政の現況という消費者庁の資料の第2次版と第1次版をあわせて、平成21年から24年、つまり、活性化基金が入ったときからの4年間の数字をフォローしてみたのですが、全自治体で職員が減っている。特に都道府県を見ていただくと、21年から24年で見るとプラス8人と増えているようですが、23年から24年では23人と減っている。市町村のところはこの4年間で33人減っている。23年から24年はプラスで、増えているように見えますが、実はこれは専任が減って兼任が増えているわけですから、体制からすれば弱体化していると評価せざるを得ない。
 市町村の場合、市町村合併によって減っているのではないかということも気になったので、一番下に数字を出しました。確かに4年間では自治体数が58に減っていますから、例えば兼任が減って専任が増えるというのは、規模が大きくなるからそれは適切なのですが、この1年で言うと、専任が減って兼任が増えているのだから、これは逆行なのです。つまり、レジュメの(3)の原因分析のところをごらんいただきたいのですが、活性化基金が投入されたことによって、これは使わなければいけない、窓口はつくらなければいけない、そこまでは動いていますが、相談がくれば、相談員さんにどうぞよろしくというだけで、消費者行政というものをもっと総合的にやっていく、そのために職員を配置しなければいけない、そういう政策判断が自治体にはまだ広がっていないのではないか。
 なぜそうなのだろうかと考えてみると、国民生活センターあるいは消費者庁による職員研修というのが決定的に不十分ではないか。この辺りは、これまでのデータをしっかり出していただいて議論が必要だと思いますが、私が理解する限り、国民生活センターは、活性化基金より以前と現在とで、相談員に対する研修体制は大きく広がっていますが、職員研修のコマ数はほとんど増えていないはずです。
 都道府県が市町村向けの職員研修をどうやっているかというのも、配付されている地方消費者行政の現況の資料の137ページ以下にありますので、後でごらんいただければと思いますが、ほとんどの自治体は、相談員研修会に職員さんもどうぞ参加してくださいというだけです。職員向け研修のコマとして表示され、職員を中心に参加と書いてあるものを見ると、12自治体ほどしか見当たりません。しかも、その多くは1日、あるいは1コマなのか、よくわからないです。どんな中身をやっているのかも詳しいところはわかりません。先ほど、埼玉県の例がありましたが、新任職員、あるいは課長会議とか、それぞれの職員さんが何をすべきなのか、自治体が消費者行政として、どういうことに取り組まなければいけないのか、という問題意識と意欲、そして先駆的な事業例をきちんと学んで、自ら自治体の中でやるべき政策を立案し、予算を要求し、施策を展開できる力量を職員さんにつける必要があるのではないか。
 その意味で、この専門調査会での議論として、相談窓口の体制はかなり進んだけれども、あと一歩どうするかという狭い議論ではなくて、地方消費者行政の総合的な施策として何が必要か、そのために職員に対してどういう研修を広げていく必要があるかという観点で、是非、議論を展開していただきたいと思います。
 以上です。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に基づきまして、意見交換を行いたいと思います。意見交換におきましては、検討テーマとして提示された各論点につきまして、現時点でどのように考えるのかということ。それから、検討テーマについて議論を深めていくために、今後どのように調査審議を進めるのか、そういった点を中心に御議論をいただいてはどうかと思います。
 それでは、御自由に御発言をお願いします。

○消費者委員会稲継委員 各地の実情を御報告いただきまして、ありがとうございました。非常に勉強になりましたし、実際どういうところがポイントなのかということもわかる、非常にいい御報告をいただいたと思います。
 最後に池本委員から課題提起がありましたのは、担当職員の配置が向上していないという話。兼務は増えているけれども専任が増えていない、ここがちゃんと見なければいけないところだという大所高所からのお話がありました。他方、地方自治体の現場を見ると、10年間で10%以上の職員削減という非常に大きな課題に直面しているわけで、そこのところは実際、専任職員の配置が可能なのかどうか。旭市と人吉市の実情について、教えていただけたらと思います。

○宇賀座長 それでは、旭市からお願いします。

○仲條委員 専任職員の配置につきましては、旭市もセンターを23年度につくるときに、消費者安全法ではこういうふうになっていますということは上司には話をしましたけれども、やはり実情として、市全体、平成17年に合併して、合併の目的でもあります職員を段階的に減らしていくという中で、消費者行政に専任職員を置くほど仕事があるのかということがまず言われたことでありました。
 そういった全体の状況の中で、厳しいというのもわかりますし、やはり庁内、職員の中で、消費者行政の重要性といったものの理解がないので、私は課長ではなく一担当者ですので、担当者のレベルからそういうところを推し進めていくというのも難しいですし、なかなか厳しいのですが、私も、専任の職員の配置がないと小さい自治体は事業ができないと思います。やはり人によって仕事をしているところですので、規模としては専任職員の配置がかなうような、何か国のほうからでも、提言ですとか提案ができたら、小さい市町村は本当にありがたいと思います。

○宇賀座長 それでは、人吉市の池田委員、お願いします。

○池田委員 私の場合も相談業務ということで、仕事が相談ですので、ある意味専任だと思っています。ただ、消費生活問題だけではなくて、すべての相談というのが括りが大きくなりますので、そういう意味では少し違うのではないかとも思いますけれども、近隣の町村を見てみますと、現実的に考えまして、1人で五つも六つも業務を抱えているのが現実です。しかも、職員の数がどんどん削減されている中で、専任を置くというのであれば、かなり法的な力が入らないと難しいのではないかと思います。例えば生活保護のケースワーカーみたいな形で、きちんと法的に根拠があって、ここに置きなさいというのであれば専任の職員は可能なのかもしれませんけれども、今の法律のもとにおいて専任を置くというのは、そこの自治体の首長の力量と財政の考え方だと思います。
 うちの財政の考え方が、当時、消費生活センターが、補助金がなくなったらどうするのかという話をしたときに、1,000万の道をつくったとしても、どれだけの人の価値になるかわからないけれども、1,000万を使ってそこに住んでいる人の生活が安定できるのであるならば、その1,000万は、道をつくるよりも消費生活問題のほうに回したほうがいいという、当時の財政の担当の考えでした。ですから、あくまでもそこのポジションにいる職員の考え方で変わってくるかと思います。うちの首長は、当時の職員が起こしたトラブルをきちんと理解したところがございましたので、1,000万という事業費に関しては高くないと思ってやっていると思います。だからこそ3人もの専任職員を置いたのだと思っております。

○消費者委員会稲継委員 御回答、ありがとうございました。
 人吉市さんに追加で御質問したいのですが、今、専任でほかの相談業務も受けているというのは、この統計の専任職員というところにカウントされるのか、兼任職員にカウントされるのか、どちらでしょうか。

○池田委員 一応、専任で出しました。業務的には、どこからどこが消費生活問題かという括りが難しかったので、あくまでも消費者問題に関しての専任職員ということで考えています。

○消費者委員会稲継委員 どうもありがとうございます。
 最後に、埼玉県さんにお伺いしたいのですけれども、埼玉県内の市町村を見渡して、専任職員、兼任職員、あるいはそれが置かれていない、そういう状況について、全体的な傾向を教えていただければと思います。

○上原委員 今、手元にデータはありませんが、今のお話の中でちょっと気になったといいましょうか、専任の職員が置かれればそれはよりベターだということで、これは論をまちません。ただ、市町村の規模によって、それはある程度どうしても規定されてしまいがちなものでもありますし、逆に専任の方が一人で頑張っていると、その方が異動されるとすべてがひっくり返ってしまうというリスクもあります。規模に応じて、兼務であったとしても複数の職員がかかわるほうがいい場合もありますので、単に人口規模に応じての話ですが、専任か兼任かということだけで判断はできないのではないかと思っております。
 事務局で準備いただいた論点のところによろず相談窓口化という言葉がありましたが、埼玉県内においても、幾つかの市町村で、消費者行政だけでなく、例えば小川町とか、ときがわ町は、よろず相談窓口化をしてございます。名前は忘れましたけれども、いわゆる町民相談センターのようなものをつくりまして、通常の行政相談から人権相談、相談というものを一元的に対応する、職員も含めて対応するわけですけれども、その中に消費生活相談員の資格を持つ非常勤職員を配置するという形でやっております。かなり機能して、相談件数が増えているということもありますので、兼務がすべてだめということではなくて、それぞれの組織の大きさなり体制に応じた職員配置があり得るだろうという認識を持っております。

○宇賀座長 どうぞ。

○消費者委員会吉田委員 私の見聞きした範囲での話になりますけれども、よくできている自治体におおむね共通しているのが、正職員が相談あっせん・啓発教育に非常にかかわりを持ってやっている。相談員任せにしていないというところが多くのところで共通しているかと思います。そうすると、職員が専任か兼任かということも重要なところがあると思いますが、先ほどお話のあった、職員を育てていく、職員の資質を向上させていく、養成していく。そういった魂を職員に持ってもらうという施策が弱くなっていて、相談員だけは増えているけれども、職員の数は減っていくし、意欲もそんなに高まっていないのではないかという課題も一つポイントになるのではないかと思います。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 どうぞ。

○上原委員 今のお話につけ加えさせていただきたいのですけれども、職員自身のモラルの話、やる気の問題とか、いろいろあるとは思いますが、要は、どういうふうに問題にかかわっていくかという問題意識でもありますので、職員がなるべく参加しやすい環境づくりというのは大変大事だと思っています。私が先ほど御説明申し上げました資料6-1に、市町村の相談職員の研修の内容を、雑駁に御紹介しないままにしておきましたが、この内容に私自身は不満がございます。相談その他、県の消費生活支援センターの行っている業務の紹介のようになっていて、それぞれの行政職員の役割というのは、いろいろお話がございました人吉市さんのように、相談に応じることも大事ですが、実は、役所の中で自分たちの仕事の内容を主張していくということが一番、行政職員として必要なことだと思っています。先ほど私が御説明したような、例えば関係部署との連携ですとか、必要な部門に話をつなぐとか、そうしたものが本来、行政職員として求められる機能ですので、その職責を果たしてもらうことがまず大事なのだろうと思います。
 その視点を忘れて、単に兼務だからとか、やる気がどうのこうのという話ではなくて、行政職員は行政職員としての職責がとりあえずあるはずなので、その問題をきちんと整理して、私どもが御提示した研修の中でも、そういったところをきちんと伝えられるようなことをしていきたいと思っております。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 どうぞ。

○丹野委員 職員がきちんと職務を全うしていただけるかどうかというのは、旭市のペーパーにも、埼玉県のペーパーにも、それぞれ、きちんと窓口はつくりました、あとは質の問題ですという話が出てきたと思います。埼玉県のお話でも、ハコはつくったけれども、あとは質ですとお話しがありました。その質は、もちろん担当の消費生活相談員が支えるのですけれども、支える者を理解する職員が、職責の中でこういうものを支えるのだという、個々人の資質によってはいけないわけで、仕組みとしてそういうものがないと、業務として回っていかないということになって、結局、相談は相談員が勝手にやればいいという話になってしまいます。
 それはやはり地域の住民にとっては非常にマイナスですので、職員が職員としてやるべき仕事をきちんと定めて、それを職責として定着させる方向へ議論をしていかないといけないのではないかという気がいたします。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 どうぞ。

○池本委員 先ほど、職員数が増えていないということをスタートの話にしたので、職員をいかに増やすかというだけの議論に受け止められると困ると思いまして、少し補足したいと思います。
 今、何人かの方がおっしゃったように、専任か兼任かということで変わるのではなくて、消費者行政担当職員は何をしなければいけないのかという、その役割が自覚できているのかどうか。きょうお集まりの3人の方はそれこそ全国行脚して研修をやっていただきたいぐらいに、すばらしい取組みをしておられます。その出発点には、現場の被害があって、それを救済するとともに防止するために、庁内の連携もある、地域の団体にも入っていって啓発もする、あるいは地域の団体そのものにも動いてもらう。そのコーディネートをする、それこそが自治体の役割だと、先ほど池田委員もおっしゃったように、まさにそういう問題意識を持ってもらう必要があると思いますが、残念ながら、その機会が制度としてつくられていない。
 つい先日、九州に相談員研修関連で行きましたが、そのときに地元の県のセンターの方のお話で、そこは小さな自治体なので、男女共同参画のプラザと消費生活センターとの兼務なのです。聞きましたら、「男女共同参画のほうは年に何回か市町村研修がある。でも、考えてみると、消費者行政職員だけの研修というのはなかったですね」ということでした。その所長さんは非常に意欲的にやっておられるのですが、職員研修という着眼点がなかったというので、メモをしておられましたが、職員が何をすべきかというのは、実は、消費者行政トータルで何をすべきかという方向性やカリキュラムが決まっていないのではないか。
 私のレジュメの3ページの最後に、参考として、研修テーマとして次のような課題が考えられると勝手に書いてみたのですが、見本があるわけでも何でもないし、多重債務のことが落ちていると思います。自治体の中における消費者行政の役割から始まって、活用すべき法律もあれば、他の部門との連携、あるいは地域の団体との関連と、本当に山ほどあります。埼玉県の2日間でもまだまだ足りないと、先ほどおっしゃったとおりだと思います。そういうところこそ、国が方向性を示し、国民生活センターで模範カリキュラムをつくり、資料をつくり、各地でも実施できるようにするという取組みが必要ではないかと思います。

○宇賀座長 どうぞ。

○吉冨委員 私は団体として消費者行政の窓口の訪問を行っています。直接伺いまして、担当者にお会いして意見交換をさせていただいていますが、まさにそのところが問題で、だいぶ格差があります。そういう意味での意識のズレと言うのでしょうか、それはすごく肌で感じるところです。言われてみれば、多分研修を受けていないのではないか。無難にこなして、自分がそのポジションにいて何となく過ごせたらいいという考え方が伝わってくるというか、あちこち歩いていて、そのように感じることがあります。「こういうこともあります。どうでしょうか。」と申し上げても、それに対するお答えがない。「やりましょう」とか、「検討しましょう」とか、前向きのお答えというのはなかなかないのです。ですから、先生がおっしゃったように、担当者の中に消費者行政の意義と役割という辺りが希薄なのだと思います。それが解決されたらかなり動くのではないかと思っています。そういう意味ではそこのところが一つ、大きなネックなのではないでしょうか。
 私の知っているセンターの所長さんも、相談員の研修には出ていらっしゃっています。でも、山口県の場合も多分これはないのではないかと、今、はたと感じたのですが、そういう意味ではこれは必要かもしれません。そうすると、上の方を動かしていくことに繋がりますね。私たちが「予算をつけてください」と言っても、そのレベルだと多分予算の獲得にはつながっていかないと思います。消費者行政に関わる人の意識改革が必要です。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 どうぞ。

○小林委員 消費者団体として、長年、消費者行政の方とか、消費者行政だけではなく、市長の方とかかわってきまして、トップの方が消費者行政をどういうふうにとらえているかによって、市長が変わるとガラッと変わってくるということを経験しています。それから、担当の方々は、同じ庁舎の中でいろいろな局がある中で、消費者行政の重要性が、局全体、市役所全体に理解されていないと、予算を要求するときにもほかのところに全部負けてしまって、いつもみそっかすのような感じの予算の獲得になってしまうのです。
 ですから、先ほど池本委員がおっしゃったように、消費者行政というのはどういう行政なのかを行政の職員全員がちゃんと理解していないと、2年か3年で代わっていくと、私たちは消費者団体として行政とかかわってきて、ここでこういう言い方をしていいのかどうかわかりませんが、賽の河原で石を積んでいるようだと。担当者が代わるたびにまた一から積み直さなければいけない。3年たってやっと理解していただけたかなというころに、また新しい方に代わってしまうというのを長年経験してきていますので、やはり消費者行政とは何かという、その重要性をきちんと行政マンの方たちに理解していただくのが一番大事なのではないかと思います。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 御意見を多数いただいておりますけれども、時間の関係がございますので、また次回以降の調査審議で改めて御発言いただきたいと思います。
 きょうは貴重な御意見をたくさんいただきまして、本当にありがとうございました。本日、委員の皆様からいただきました御意見をもとに、次回以降の議題等具体的な内容について、事務局のほうで御準備いただきたいと思います。
 きょう御報告いただきました委員の皆様、本当にありがとうございました。
 本日の議論は以上とさせていただきます。

≪4.閉会≫

○宇賀座長 今後の予定等につきまして、事務局から御連絡をお願いします。

○原事務局長 熱心な御議論をどうもありがとうございました。
 次回の専門調査会は、4月25日(木)14時から開催いたします。議題等につきましては、決まり次第、御連絡をさせていただきます。
 今、こちらに大きなファイルを置いてありますけれども、関連の資料を既にファイルしてあります。本日からの調査会の資料もここにファイルしていきますので、このまま置いておいておかれれば結構です。お手元の資料はお持ちいただければと思います。
 事務局からは以上です。

○宇賀座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきたいと思います。御報告いただきました方に、重ねてお礼申し上げます。
 本日は、お忙しいところをお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

(以上)