[解決事例12]災害援護資金の貸付制度の見直しにより、被災者の生活再建を促進
[地方に対する規制緩和]
貸付利率を条例で引き下げる見直し
(法律 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第66号)による災害弔慰金の支給等に関する法律の一部改正)
月賦償還の採用、保証人に関する規定の見直し
(政令 災害弔慰金の支給等に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成31年政令第16号))
ポイント
災害援護資金の貸付けについて、地域の実情に応じ、貸付利率の引き下げ、月賦償還、保証人不要が可能となり、被災者のニーズに合った貸付条件を設定することにより、被災者の円滑な生活再建を促進
詳しくは提案募集方式データベース「H29年」管理番号「299」、「H30年」管理番号「196、212」で検索!
提案実現までの流れ

1.災害援護資金の貸付利率を条例で引き下げることが可能となるよう見直し
取組の概要

- 災害援護資金は、「災害弔慰金の支給等に関する法律」に基づき、市町村が被災者に貸し付けるもので、法定の貸付利率は年3%であった。
- 東日本大震災(平成23年)の際は、貸付利率の特例(原則無利子)が設けられ、岩泉町では12件の貸付があった一方で、平成28年台風10号の際は、同町では東日本大震災の被害規模を大きく上回ったが、貸付利率の特例は設けられず3件の貸付けにとどまった。
- 同町は、被災者に寄り添った支援を行うためには、地域の実情に応じた貸付利率を条例で策定できるようにすることが必要と考え、内閣府に相談し、提案を行った。
- 追加共同提案団体となった他の地方公共団体からも「同様の理由により風水害の被災者が災害援護資金を活用しなかった」との意見が寄せられた。
- 提案を踏まえ、法律改正を行い、地方公共団体が地域の実情に応じて3%以下の利率を設定することが可能となった。
取組の成果
- 岩泉町は、令和元年6月10日付で町の災害援護資金の貸付利率を改める条例を公布・施行した。
・貸付利率
東日本大震災の際の特例に準じ、無利子(保証人無しの場合は1.5%)
・適用対象
平成31年4月1日以降に生じた災害
関係者からの声
「今後起こり得る大規模災害に備え、被災者が利用しやすい制度を提案」

岩泉町復興課
副主幹 熊谷 誠 氏
災害援護資金は市町村が被災者に対して生活再建をしていただく上で重要な支援です。しかし、3%固定という市中金利と乖離した実態に驚き、被災直後の住民にとって大きな負担であると感じました。
今後起こり得る大規模災害に対し、被災者がより利用しやすい制度とするためには、貸付利率を市町村の実態に見合ったものに変更することが最優先の課題と考えました。
提案募集方式を活用したところ、全国各地から共感をいただき、私たちの提案は実現しました。生活再建の促進が叶って本当によかったと感じています。
2.災害援護資金の月賦償還の採用
取組の概要

- 災害援護資金の償還方法は、年賦償還又は半年賦償還のどちらかを選択することが原則となっていた。所得の少ない世帯への貸付けにおいて、年賦償還や半年賦償還では、1回あたりの償還額が大きいため、被災者にとっては負担が大きく、行政にとっても貸付金の滞納リスクが高いものとなっていた。
- 熊本市では平成28年(2016年)熊本地震の発災により、本制度の利用が増加し、利用者からは月賦での支払いを選択したいとの意見が多くあった。
- このような住民の声も踏まえ、内閣府への相談を経て、災害援護資金の償還方法に月賦償還を加えるべきとの提案がなされた。
- 追加共同提案団体となった他の地方公共団体からも「被災者が利用しやすい制度にすべき」といった賛同の声が上がった。
- 提案を踏まえ、「災害弔慰金の支給等に関する法律施行令」が改正され、各市町村が償還方法を年賦償還・半年賦償還・月賦償還から選択できることとなった。
取組の成果
熊本市における月賦償還の利用件数は235件であり、全体の償還件数396件の59.3%を占める(令和3年10月時点)。
貸付年度 | H28 | H29 | H30 | R1 | R2 |
---|---|---|---|---|---|
貸付件数 | 409 | 150 | 0 | 0 | 0 |
件数 | 平均返済額 | |
---|---|---|
月賦 | 235 | 19,483円 |
半年賦 | 89 | 121,203円 |
年賦 | 72 | 237,132円 |
R2.12 | R3.3 | R3.7 | R3.10 | |
---|---|---|---|---|
償還件数 | 408 | 408 | 403 | 396 |
月賦償還件数 | 228 | 231 | 234 | 235 |
月賦償還割合 | 55.9% | 56.6% | 58.1% | 59.3% |
関係者からの声
「被災者にとって利用しやすい制度であることが重要だと思い提案」

熊本市健康福祉政策課
主任主事 平山 慶祐 氏
自然災害からの復興・生活再建を推進する中、「被災者の方々にとって計画を立てやすく、利用しやすい選択肢があった方がいいのではないか」と思い、提案に向けて内閣府に連絡しました。
制度改正後に、月賦償還が可能となったことを全利用者に通知したことで、現在5割以上の方が月賦償還を選択され、口座振替を利用しやすくなったことも喜ばれています。熊本市では年賦や半年賦での償還が困難な方に、月賦をご案内する等、利用者の実情に応じた対応をとっています。
3.災害援護資金の保証人に関する規定の見直し
取組の概要

- 災害援護資金の貸付けを受けようとする者は保証人を立てる必要があったが、貸付申請時に被災者が保証人の擁立に苦慮するケースや、保証人が機能しないケースが見受けられた。
- 八戸市はこれを受けて、内閣府へ相談の上で提案募集制度を活用し、災害援護資金制度における保証人に関する規定について、見直しを提案した。
- その結果、「災害弔慰金の支給等に関する法律施行令」が改正され、保証人を不要としてもよいとする見直しが行われた。
- 各地方公共団体からは「被災者が貸付を受けやすくなった」、「身寄りがない等の理由で保証人を立て難かった被災者に歓迎された」、「債権回収状況が改善した」、「保証人に関する所得調査がなくなり、事務効率化につながった」等の声が上がっており、八戸市の提案を踏まえた見直しの成果は広く波及している。
取組の成果
- 八戸市における保証人を立てない災害援護資金の貸付件数は19件(貸付額41,700,000円)であり、全体の貸付件数41件(貸付額91,100,000円)の約46%を占める(令和3年12月時点)。
- 制度改正を行って以降、収納率は上昇している。
H29 | H30 | R1 | R2 | |
---|---|---|---|---|
収納率(現年度分) | 63.9% | 72.7% | 80.1% | 90.8% |
収納率(過年度分) | - | 0.0% | 42.2% | 41.0% |
関係者からの声
「セーフティネットは重要だからこそ提案で改善できて満足です」

八戸市福祉部
福祉政策課
出川 幸平 氏
八戸市を含む各地域は地震や風水害及び雪害など様々な自然災害と無縁ではいられません。そのためのセーフティネット施策は極めて重要です。発災は避けられないものとしても、我々としては被災状況確認が済んだ直後から復興や生活再建に着手しなければならず、支援制度の実効性が低いなら、少しでも利便性の高いものに改善していくことができればと思い、提案しました。結果にはとても満足しています。
将来また自然災害が起きた際、速やかな支援ができると思います。