第1回野口英世アフリカ賞受賞者の決定 報道発表

平成20年3月26日
内閣府

本26日、日本国政府は、第1回野口英世アフリカ賞をブライアン・グリーンウッド博士(英国)とミリアム・ウェレ博士(ケニア)に授与することを決定した。
受賞式は、5月28日横浜で開催されるTICAD IVの中で行なわれ、受賞者には賞状と賞牌および賞金1億円が内閣総理大臣から授与される。

医療活動部門
ミリアム・ウェレ(Miriam K. Were)(ケニア)

ミリアム・ウェレ1940年ケニア生まれ。1981年、米ジョンズ・ホプキンズ大学公衆衛生学博士。ウジマ財団共同創設者・保健問題専門家。 第1回野口英世アフリカ賞(医療活動部門)は、東アフリカの村々において女性や子どもに対し基礎医療サービスと保健の権利をもたらし、何百万人ものアフリカと世界の人々に希望を与えたウェレに授与される。アフリカ医療研究財団(AMREF)やウジマ財団※1での活動を通じ、同博士は、アフリカ大陸全体の人々にとってインスピレーションの源泉であり続けてきた。

授賞業績:
コミュニティに立脚した保健サービスの提供

ウェレ博士は、40年間にわたり地域レベルへの医療サービスの提供の実践面に焦点を当てて、アフリカの人々の健康と福祉の増進に献身した。日常の健康問題の革新的な解決方法の開発・実施に向けて地域社会を団結させてきた。コミュニティに立脚したアプローチの最も典型的な事例は、長年のタブーを乗り越えて公衆トイレを継続的に設置してきたことである。また、地域の診療所に子供たちを小グループに分けて予防接種に連れて行くことにより、乳幼児接種率を大幅に引 き上げた。同博士の革新的な活動や体系的な先例は、アフリカ連合との係わりを通じ、あるいは、エイズ・結核・マラリアに関するアフリカ首脳会議の保健問題アドバイザーとして、ケニア国内のみならず東アフリカ、ひいてはアフリカ大陸全体に甚大な影響を与えている。

HIV/AIDSとの継続的戦い

性行為、HIV/AIDSに関する開かれた率直な議論を促すため、若年層、売春婦、同性愛者、麻薬の静脈注射乱用者などとの直接対話を行うウェレ博士の活動のスタイルは、ケニア社会に大きな刺激を与え、HIV/AIDSを抱えて生きる人々の恥辱や差別の減少に貢献した。また、弱者集団、特に貧困層や社会の周縁に追いやられた人々を献身的に擁護してきている。性、部族、年齢、階級に基づく偏見を乗り越え、すべての人々の自己啓発・成長に全力を傾けている。特に、重度のHIV/AIDSに苦しむ未亡人や孤児は、医療サービスへのアク セス拡大のための同博士の活動の恩恵を最も享受した人々である。

HIV/エイズ感染率・感染者数

同博士は、ケニア国家エイズ対策委員会委員長として強力なリーダーシップを発揮し、バランスのとれたHIV/AIDS対応指針を取りまとめた。その結果、ケニアのHIV感染率及びAIDSによる死亡率は一貫して減少してきている。2002年から2006年にかけてケニアのHIV感染率は13%から5.1%まで低下し、ARV薬服用者数は、2002年の2千名から2007年には15万人に激増した。同博士は、HIVとAIDSを抱えて生きる人々が、流行し続けるAIDSの予防、管理、社会問題の軽減に対し重要な役割を果たすことができることを強調してきている。

NGOの力の活用と集中

ウェレ博士は、アフリカ最大の保健NGOであるアフリカ医療研究財団(AMREF)の理事長として、ケニア国家予算のうち保健分野に係る予算を2003年から2007年にかけて3倍に増やし、農村部の地域社会への医療サービスの拡大を指揮した。
同博士は、ウジマ財団の共同創設者及び総裁として、自身の医学の知見と知識を活用して若年層の素行改善に努めてきている。ウジマのプログラムに参加した若年層の麻薬常用率は、6ヶ月で80%から10%以下に低下し、性や生殖に関する保健指標は顕著に改善した。

※1 ウジマ財団は、ケニアの慈善団体。「ウジマ」とは、スワヒリ語で良質な生活を意味する。ウジマ財団は、HIV/AIDS及びマラリアの対策を含む保健の向上を通じて若年層の自己啓発を行っている。