第一回野口英世アフリカ賞授賞式における総理式辞第1回野口英世アフリカ賞授賞式及び記念晩餐会

天皇、皇后両陛下、TICAD出席の各国首脳閣下、グリーンウッド博士、ウェレ博士、ご列席の皆様、本日は、第一回野口英世アフリカ賞授賞式にご参列頂き、誠にありがとうございます。

グリーンウッド博士、ウェレ博士、そしてご家族の方々、さらにロンドン衛生熱帯医学校、ウジマ財団の関係者の方々に、心より祝福を申し上げます。

本賞は、二〇〇六年五月、当時の小泉総理大臣のアフリカ訪問の際に構想が表明され、当時のコナレAU委員長、及び、クフォー・ガーナ大統領の賛同も得て、二〇〇六年七月に日AU首脳共同記者会見の場で正式に創設が発表されました。以来、二年間の準備を経て、本日、第一回授賞式を迎えることとなりました。本日は、野口博士がガーナで黄熱病のために亡くなってから、ちょうど八十年と一週間の日にあたります。

日本は、アフリカの保健の改善を国際保健における最大の課題の一つと位置づけており、本賞は、正にこの難題に挑戦する質の高い医学研究や医療活動を国際的に活発化させることを目指すものであります。TICADやG8洞爺湖サミットにおいても、国際保健が重要課題として位置づけられ、環境や生態系との関連性といった議論もあり、国際保健への関心は例年にない高まりを見せています。その意味で、野口英世アフリカ賞は、日本の政策と国際社会の機運の高まりの合流点にあると言えましょう。

グリーンウッド博士とウェレ博士の業績は、熱帯医学や保健活動の新たな地平を切り開き、この賞の使命であるアフリカの医学の進歩と保健の改善に寄せる私たちの期待に応えるものとして、たいへん意義深いものであります。

また本賞は、個人のレベルでの画期的な創造や英雄的な勇気のみならず、その結果アフリカの人々の病の問題がどう解消され、改善されたかという社会のレベルでの影響も重視しています。グリーンウッド博士とウェレ博士は、三十年、四十年にわたるアフリカにおける活動を通じ、現場で生起する苦しみ、痛み、そして人間の尊厳を私たちに伝え、医学研究や医療活動が持つべき人間社会との深いつながりに目を見開かせてくれました。

以上の観点から、お二人は、野口英世アフリカ賞の理念を体現する第一回受賞者に相応しい方々であると私は確信します。

本賞が対象とする熱帯医学という学問分野、あるいはアフリカにおける保健という活動領域は、これまで国際社会の関心を十分に引き付けてきたとは言えません。お二人の受賞を通じ、この分野に対する国際社会の認識と取組が高まり、人材と資金の動員につながることを切望すると同時に、日本の医学界・医療界とアフリカとの間の新たな交流と協力の機会が生まれることを大いに期待するものであります。

最後に、グリーンウッド博士とウェレ博士の偉業に対し、改めて心からの祝意と敬意を表し、私の式辞とさせて頂きます。