末松副大臣記者会見要旨 平成23年1月13日

(平成23年1月13日(木) 17:30~17:57  於:消費者庁6階記者会見室)

1.発言要旨

 どうも、明けましておめでとうございます。記者会見をさせていただきたいと思っております。
 まず、新年に当たって一言ということで、私から申し上げたいのは、昨年、皆様のお力添えもありまして、53名、体制が強化されたと。これを強化されたことで、今まで本当にできていなかったことにつきまして、さらに詳細な力が発揮できるように頑張っていきたいと思っております。
 大きな体制上のポイントとしては、国センとの間でどういう形で、消費者行政にとって最も消費者のほうが利益を得られるような、消費者力がパワーアップするような形の体制をつくれるかというのが、一番求められていると思っております。事業仕分けのチームから指摘されたことではございますけれども、これをしっかりまず両管理者の立場からお互いに徹底的に討議していただいて、そこの中で仕分けのチームが独法に対してどういうふうな位置づけをするかということを見ながら、よい結論を出していきたいと思っております。
 私は、新年に当たってはそのことが一番念頭にございます。
 あと、今日の二役会議につきましては、出張報告がメインでございました。大臣からは、京都や滋賀に行かれた出張報告がございましたし、私からは、スウェーデンの出張、そして昨日、土浦幼稚園に行きました出張報告、そして明日、明後日、香港に行きますということで、そのことについて報告させていただきました。
 それから、皆さんとは若干テイストが異なるかもしれませんけれども、私の所掌範囲ということで、皆さんのお手元にあるように、スウェーデンの出張所感ということで、このまとめをつくってまいりました。幾つかのポイントがあって、消費者関係もその中にあるのですけれども、私からかいつまんで2分ほど、お話をさせていただきたいと思います。要約版を見ながら説明させていただきます。
 まず、スウェーデン社会の特徴ということで、個人主義が極めて徹底しているということ、それから厳しい自然の中で非常に高い勤労意欲を持っているということ。
 さらに、19世紀の初頭、あるいは18世紀の後半から、米国へものすごい数、大体半分近くとも言われている人たちが、大量移民で行った。こういうことから、スウェーデンの出生率に対しては、彼らは異様なまでに、民族の興亡がかかっているというぐらいに、非常に出生率を重視してきたということでございます。
 あと、日本との違いでよく言われるが、女性が労働力として尊重されておりまして、その労働力、労働者としてしっかりと社会に組み込まれていってきているがゆえに、男女共同参画という発想がしっかり出てきたということでございます。
 さらに、ここが私は非常に知りたかったところであるのですけれども、高負担・高福祉と言われながら、産業の強化、そして国際競争力、これが非常にEUでも最も高い。そして、GDPパーキャピタも世界で非常に一流のところでございます。こういう経済、ハイグレード・パフォーマンスを出しているということ、これが非常にそこで確認できたかなと私は思っています。
 さらに、最後に高福祉・高負担ということで国民的なコンセンサスがあるということでございます。
 男女につきましては、例えば専業主婦の比率が、たった2%しかいないというのがございます。本当にここは、違う国だなと。特に、これは例えば年金にしても、あるいは保険にしても、みんな夫婦単位ではなくて個人単位で全部設計されておりますので、より多く働けば、自分の年金がより多くなる、こういう仕組みになっておりまして、この辺が大きな勤労意欲になっているということだろうと思います。
 それで、幼保一体化というものを、私も今、基本システムということで、座長でやっているわけでございます。これにつきまして、「今、幼保一体化を進めているのだけど、何かアドバイスはありますかね」と言ったら、これは彼らの認識では、複数の人がそう言っていましたけれども、1930年代にそういったものは終えて、幼稚園と保育園という概念はないと。ですから、「今さら何を言っているのですか」と言われて、ちょっと私自身、何か恥をかいた気になったということでございました。
 それで、1996年かな、プレ・スクールという概念、これはもうしっかり法律として書き込まれていて、そこで統一されていて、大体、大まかなところは全部、法律で方針を書いているのですけれども、細目については両親と施設側との間で合意をそれぞれにつくって、その合意の下に実質的に動いているということでございました。
 それから、「衝撃を与えた出産・育児休業補償!」というのがございますけれども、これは若い夫婦にとって、出産・育児の休業をとる、そういう育児休暇をとるということ、これを社会が支えているということ。これは1年3カ月です。そこの中で、特に男性についても2カ月間、これをとるよう割り当てられておりますので、こういったみんなきちんととるということ、それについて、給料の8割を補償しておりますので、社会がきちんと支えているのだという認識が強くて、それがやはり育児はみんな社会全体で支えてくれているのだということで、男のほうも、日本でよく言われる育メンというのが一般化しているという状況でございました。
 あと、男女共同参画につきましては、プレ・スクールという保育所、保育園の遊び場、テッパン保育所というものに行ったのですけれども、そこで特に女らしさとか男らしさというもの、もうそういった役割、概念はなくするような形でやっていて、「ああ、ここから男女共同参画の発想があるのだな」というようなこと、よく言う女らしい、男らしい、こういった概念をなくしていくようなことが強調されておりました。
 それから、専業主婦のことはさっき言ったので省きます。
 あと、スウェーデンの高い国際競争力の秘密ということですけれども、これはおもしろいことに、ボルボが、今、中国の会社だというのは、彼らはよく認識していて、そこで何か、例えば「日本だったらJALを救ったのだけど」、あるいは「アメリカはGMを救ったのだけど」といった、これに対しまして非常に否定的な見方を示しておりまして、これはヌーデルさんという前財務大臣、この方は今、首相をねらっているとも言われておりますけれども、この方と話しているときに非常に印象的だったのは、ああいう弱い産業、あるいは弱い企業は、決して救いはしないと。ここは、小さな政府に徹底しておりまして、そこでつぶれていくものはつぶれていけと。ただし、そこの中で働いている労働者、これは高い社会保障で救っていくと。これはどういうことかといいますと、この労働の移動は、それによってより新しい、成長性のあるところに労働移動はされていくということを生んでいるのであると。それが非常にスウェーデンの甘い見通しを持たない形で、厳しい中で創造性とか創造力、そして何とかやっていかなければいけないという危機克服、こういった力を生み出しているのだという説明がございまして、なるほどと思った次第でございます。
 それから、プレ・スクールという彼らの言う保育園、ここでの発想は、集団的な訓練とか、そういった上から規律を押しつけるようなことではなくて、非常に自由な発想を大切にして、それをより育んでいく。そういう育んでいく中で自由な発想をどんどんやることによって、クリエイティブな発想が生まれるのだと。それが小学校、中学校、高校の教育でも活かされていて、そういったことでスウェーデンの創造力、創造性、これが育っていくのだということを強調されておられました。特に、スウェーデンというのはノーベル賞を誇っている国でございますから、そういった仕組みもなかなかおもしろい仕組みでございます。産業のいろいろな知識が普及していく大きなもとになっているのかもしれませんけれども、それとプレ・スクールの役割、これが重要だということを強調されていました。
 それから、ここは消費者関係の皆さんに非常におもしろいところでございますけれども、消費者苦情委員会、ARNというのですけれども、ここに行きましたときに、この年間の苦情処理件数が8,000から9,000、ほぼ1万件ぐらいを年間処理していると。まずは、この数に驚いたわけでございます。といいますのは、国センがやっているADR、これは大体、年間100件ぐらい扱って、勧告が出るのが20件ぐらい、こういう感じでございましたから、どうしてそんなに多くの処理をできるのかなという問題意識を持っていたわけでございますけれども、そこの6ページに書いてあるように、22名の裁判官、これは兼務しているそうなのですけれども、この苦情処理委員会の判断者となっていただいて、それに30名の職員、そのうち20名は裁判官の卵という形でやっている法務官という立場みたいですけれども、この方々が判断する裁判官の席に座って、そこで大体、横に―これは250名という理事の半分が業界選出の方、もう半分が消費者団体の選出の方、これが2名・2名座って、そして案件を持ち出されたときに、ああでもない、こうでもないといろいろな議論をして、そこで決めていくということでございました。半年以内には、すべて大体、片がつくということでございます。
 何でこんなに多い処理ができるのだと、そういう秘密を聞いたら、徹底した書面主義なのです。クレーマーには会わないのです。そこで書類だけで審査する。だから、主張した人はみんな書類に書けということでございました。それが、迅速性の一番のポイントであるということでございました。
 この審査で処理いたしますと、その結論に対して、大体平均で8割の企業はその決定に従うということでございました。従わない企業はどうするのだといったら、これらはまず、この企業名を公表してブラックリスト化する、あるいは業界のほうから除名処分を行うという形で、実態的には―これは法的には基づいていないので、勧告は法ではないのですけれども、その勧告に実質的に従わざるを得ないような、そういう整備が行われているということを実感したわけでございます。これに対して、日本も学ぶところがあるのかなと私は感じましたので、さらにこの情報について教えてほしいということを言いましたら、先方から「喜んでそれは提供したい」ということでございました。
 一方、私から、消費者情報のPIO-NETについてお話をしたら、非常に関心を持っていまして、ここについては我々のほうから情報を送ろうという話になりました。
 あと、最後に青少年対策なのですけれども、この登校拒否問題というのがやはりスウェーデンでもあるのですけれども、一番の彼らの登校拒否の問題は、移民の子です。特にアラブ系とか、そういったところの方々が、なかなかスウェーデン社会になじめない、あるいはスウェーデン語を話せない、こういった幾つかの要因があるということで、これを4つか5つのカテゴリーに分けてそれぞれに、語学のできない人はこういう対策をとろう、あるいは英語とかスウェーデン語のできない人はこういう対策をとろうと、こういうカテゴライズして対応しているということでございました。
 あと、私が関心を持ったのは、引きこもりです。これは、日本では大体70万人から140万人近くいるのだという紹介をしたら、非常に驚いておりまして、スウェーデンではそういう問題は全くないということを言われておりました。
 大体、そういうことです。それが、今、ここでレポートとしてまとめたものでございます。
 それから、土浦幼稚園の視察について一言申し上げますと、この土浦幼稚園というのは、今、175名定員がいて、今、充足しているのがというか、実際に生徒の数が32名ということで、ほとんど2割ぐらいしかいない。そして、近々に合併を検討しているということでございます。横のいくぶん幼稚園というところに合併せざるを得ない。これは地方の幼稚園が、公立幼稚園は、今、土浦でも6つあるのですけれども、このうちの定員の充足率がやはり28%ということで、非常にほとんど生徒がいなくなっている。そういう状況にある幼稚園から見て、今の幼保一体化をどう考えるのかということを聞いてみたのですけれども、そうしたら、もう結論的には、幼保一体化は早くやってほしいというのが彼らから出た切実な答えでございました。私立幼稚園についても、いろいろと説明を受けました。おもしろいのですけれども、私立幼稚園のほうでも定員に満たないところがかなりあって、また、定員以上のところもあったわけですけれども、「これはどうしてそんなに差があるのだ」と聞きましたら、彼らの言い方は、やはり例えば幼稚園のころから数学とか、あるいは英語とか、あるいは水泳とか、そういったいろいろと人目を引くような、両親に受けるような教育方法をいろいろととっているということが人気の秘密ではないかなというふうな解釈をしておりました。
 いずれにしても、結論的には、詳しくは申しませんけれども、やはりこの幼保一体化、これはどうしても必要だということが地方の面では切実だったのだなということを、改めて確認したところでございます。
 あと、パワーウインドにつきましては、消費者庁として、まず担当官をすぐに派遣いたしまして、今日、担当官が来ておりますけれども、ちょっとあなたから簡単に説明してくれますか。大体2分ぐらいでよろしく。
(政策調整課)12月20日に静岡県富士市において発生しました、1歳11カ月の女児がパワーウインドに首を挟まれて重体となった事故でございます。これについて、パワーウインドの挟み込み事故の防止の観点から調査を行うということで、12月27日に実際に富士警察署のほうを訪れまして車両を見るとともに、警察からのヒアリング等を行っております。事故の起きた場所は、ハンバーガー店の駐車場であり、そこで停車しているときに、運転者が運転席で携帯電話の通話中に、「後部座席右側で子供が首を挟まれているよ」ということを通行人から教えられて、事故に気づいたというような状況でございます。
 車両については古い車両で、平成9年式の車ですが、事故のありました後部座席の右側の窓についは、自分の席のスイッチからも運転席の操作スイッチからも操作可能という状況でございます。車両に乗っていたのは、運転席に運転者である41歳の女性保育ママ、それから挟まれたのが後部座席右側に座っていた1歳11カ月の女児、それともう1人、1歳10カ月の女児が後部座席に座っていたということで、運転者が運転席に、後部座席に子供が2人いたという状況でございます。
 後部座席にはチャイルドシートがありませんでしたので、チャイルドシートは不使用でした。それから、本車両につきましては、パワーウインドのロック機能というのは装備されていたのですけれども、これも不使用であったということでございます。
 ただ、パワーウインドを実際操作したのは誰だったのかということについては、まだ明らかとなっておりませんので、引き続き、警察の捜査の進展に応じて話を聞いていきたいというふうに考えております。
(副大臣)消費者庁として、そういったときにはできるだけ、可能な限り担当官を急派させて、実際どうだったのかというのを見たい、見るべきだという中で、我々、積極的にやっているところでございます。いろいろな形でこういうふうな、また現地に行った職員から皆さんに説明してもらう機会を増やしていこうと思っています。
 私からは以上です。

 

2.質疑応答

(問)スウェーデンの御報告の中の件で、苦情処理システムの日本への適用可能性ということで副大臣は書面にも書かれていますが、その適用可能性を探る部分としては、人員体制なのか、それとも処理をすべて書面で行うという、そのどの部分を日本への適用が可能性としてあると感じたか、その点を教えてください。
(答)日本のADRが、今のところ100件だと。これも、まだ一昨年からやったわけで、いろいろな改良の可能性はたくさんあるわけです。ただ、私が注目したのは、スウェーデン、大体930万人の国で1万件ぐらいの処理を行っている。ということは、それだけやはり消費者問題はたくさん、ディスピュートといいますか、いろいろな争いはあるのだなということを改めて感じたわけでございます。日本でも、PIO-NETからいけば、いろいろなクレーム、あるいは30数万件とか、そういう話があるわけですから、スウェーデンの規模から考えれば、日本とすると、やはり十数倍の人口があるわけですから、この件数を多く処理できないものかなというのが私の問題意識でございました。
 そこの秘密は何だろうと見たときに、実際に書面主義というのが1つあったのと、それから半年以内に簡易裁判みたいな形、ADR風の形で、専門の裁判官―兼務ですけれども、あるいは裁判官の卵、こういったものを活用してやっていき、そして業界の人たちも理事として125名入れて、消費者団体の人たちも125名入れて、そこでお互いにある意味での客観性を持ちながら、彼らが議論していく。そして、判断者が1名、あるいは大きな事件のときは3名いるわけです。だから、そういった仕組みがもし日本で機能するのであれば、この1万件のレベルということであれば、日本だったらもっといけるのではないかなという中で、この可能性も検討したほうがよいのではないかというのが、私が感じた率直な感想でございます。
(問)パワーウインドの件について、ちょうど今日、事故調査機関の検討会がもうすぐ始まるようなところで、今回の件で静岡県警がどのぐらい情報開示してくれたのかは関心があるところなのですが、またそれは担当官の方にお聞きします。
 もう1件、この事案の側面として、保育ママが保育中にこういうことが起きたというのが一つの側面としてあって、これは副大臣の担当分野でもありますが、これから子育て対策で保育ママの活用を検討していく方向で、多分、お考えだと思うのですが、この保育ママの保育活動中の事故とか事故対策、これは何か今回の事故を踏まえて、副大臣として何かお考えになっていることはありますでしょうか。
(答)特にないです。といいますのは、これは保育中といっても、詳細を聞けば、来た子どもを一緒に連れて、まだ遅れている子どもを迎えに行ったとのことです。そこの場で起こった話なので、そこはちょっと保育ママというような、保育の観点からは、ずれる話だろうと思います。
 そういった中で、むしろ我々は車のテクノロジカルな面に注目して、例えば、挟込み時にオートで下がる自動反転装置、こういったものは2000年からメーカーで自主的に取り決めているわけですが、また、今回の事故がなぜ起こったのかというのは未だに不明だということですが、この件もそういった観点に注目して明らかにしていくことが一番のポイントかなと思います。だから、ちょっとそれは保育とは関係ない話だと思います。

(以上)