河上消費者委員会委員長 記者会見

2014年12月2日
消費者委員会

日時

2014年12月2日(火)19:35~19:59

場所

消費者庁記者会見室

冒頭発言

(事務局) ただいまから、河上消費者委員会委員長の定例会見を始めさせていただきます。

それでは、委員長お願いいたします。

(河上委員長) どうも、お待たせいたしました。それでは、定例会見を行いたいと思います。

今日、報告といいますか、お話をさせていただくのは1件といいますか、ゼロ件といいますか、あれですけれども、機能性表示食品の表示基準案に対する答申をどうするかという問題でございます。

本会議を御覧になった方はおわかりのとおりでございますけれども、今日の本会議で機能性表示食品に関する答申について議論を行いまして、この食品表示基準については従前から食品表示部会で審議を行っておりましたが、この件については制度が新たに設置されるということ、食品表示部会とは別の場で審議している特定保健用食品、いわゆる特保のあり方との整合性なども確認する必要があるということから、制度全体の確認と答申の議論というのは本会議で行っているところであります。

それで、議論状況としては、11月4日の本会議で制度全般についての議論をし、制度設計についてはおおむね理解できたということでまとめましたけれども、11月26日の食品表示部会で基準案について意見をお聞きしていて、その答えを今日伺って、部会での意見を含めて本会議で再度議論を行った。こういうなりゆきでございました。

本日の本会議では、委員間の打ち合わせなどでも既にいろいろな疑義とか懸念が出ていたところではあったのですけれども、そこで出た各委員の意見を踏まえて、とりあえず、今日答申が出せる可能性がありましたので、私のほうで内容を調整して、ひとまずはこの諮問案は承認できるけれども、しかし、それに一定の附帯意見をつける形でまとめることができないかなということで、答申案の中身を議論のたたき台として、むしろ議論の一番最初にお出しして、みんなで議論をさせていただいた。しかも、そのときに消費者庁にも来ていただいて、委員会としての問題意識を、質疑を行う形で明らかにするという形での議論をさせていただきました。

ただ、結果としては、非常に悩ましかったわけで、委員の間でも、意見が若干、分かれました。良いけれども、問題意識については、この附帯意見のような形で明らかにする。若干の字句修正をして、これでまとめようということでもやむを得ませんねという人と、やはり違和感は残りますということで、適当と認めますというふうに直ちに述べることについては承服しかねるという方がいらして、結論が出ませんでした。悩ましいなと思いつつも、やはり継続審議をして、この段階で余り拙速に結論を出さないほうがいいだろうということで、次回まで持ち越して、委員間でもう少し、今までもかなりやったのですが、充実した形で議論をして、そして消費者庁とも情報交換をしながらやってみたいということで、時間をとらせていただくことになりました。

消費者委員会としては、制度創設そのものは特に反対するというものではございませんで、これがうまく運用されれば、一般の消費者にとって見ると、自主的かつ合理的な食品選択の機会が確保できることにもなり得るわけでして、上手に育てないといけない。そのためには、構想そのものは理解できるので賛成できるのだけれども、しかし、その制度を実現する上で、このまま進んでいいかどうかということについて、2つぐらいの問題があると考えています。

1つは、この制度を確実に実現していく上で、例えばちゃんとした証拠もなく届出をして、後からそれが間違いだったことがわかったときに、それを取り消したり是正したりということを消費者庁として消費者行政の担当者がやれるだけの法的な裏打ちがきちんとなされているかどうかというあたりに疑問がある。つまり、法律上の脆弱性があるということです。安全性の担保は今後、消費者庁が策定するガイドラインなどで行われるために、現時点では詳細を確認できないということもございまして、基準案は適当かもしれないけれども、やはり問題はあるということでございますし、実際にこれがうまく機能するためには、それ以外のところで執行がきちんと行われる必要があります。食品について、その表示が消費者によって信頼に足るものであって、選択の幅が広がるというメリットを十分に生かせるためには、さまざまな点で執行を整備することが絶対必要なことであると思われます。

今日も、消費者庁の覚悟のほどを伺うために相当いろいろ突っ込んだ質問をしまして、執行については頑張りますという気持ちは示していただいたのですが、制度的な脆弱性を直ちに直していくということについては、本日の回答ぶりを聞く限りでは、我々の問題意識を正確に受けとめていただいているのかどうか、確信が持てない、不安や疑問が残るということで、複数の委員の方から、このままで適当と認めますと断言するにはやはりちゅうちょされますという意見でございましたので、私のほうでもそれを酌んで、今日結論を出すということはやらないことにいたしました。

当委員会としては、当方で憂慮している点を含めまして、所管省庁であります消費者庁が今後、誠意を持って消費者目線で制度実現に取り組んでいく。そして、制度の問題についても真剣に、その問題の所在を理解した上で、速やかな対処を試みる姿勢が確認できない状況では、やはり結論を出しがたいということで、先ほどのような形になったということでございます。その辺、御了承をいただければと思います。とりあえず、当方からの説明は以上ですけれども、あとはまた質問がありましたらお受けいたします。

質疑応答

(事務局) それでは、質疑応答を受け付けますので、マイクのスイッチを押して、マイクに向かって御発言いただけますでしょうか。

(河上委員長) どうぞ。

(問) ちょっと確認ですけれども、今、委員長が、誠意を持って消費者目線で取り組んでいく。そういう姿勢が確認できない状況で結論を出しがたいとおっしゃったかと思うのですが、これは例えば1週間、時間をとるとおっしゃいましたけれども、その1週間後でも同じ状況だったら状況は変わらないという理解でいいでしょうか。

(答) 変わらないでしょうね。

(問) とすると、1週間後に結論を出すという話でもなく。

(答) 結論は出ても、それはネガティブな結論になる可能性があります。

(問) 要するに、単に認めるというだけではなくて、かなり強い意見を出すと。

(答) 可能性としてはあります。

(問) わかりました。

(答) それでなければ、今日あえて結論を留保しません。

どうぞ。

(問) 関連してなのですが、今のネガティブなものになるというのは、入り口として了とするけれども、それ以外の附帯が強くなるという趣旨なのか。入り口からノーという可能性があるという意味なのか。ネガティブの趣旨をお教えください。

(答) 幾つかの段階があり得ると思うのです。これだけのことを条件としてお認めするという言い方になるのが次の強い段階になりますね。そうでなければ、制度そのものについてもう一度考え直しなさいという話になるかもしれません。

ただ、これは諮問に対して答申をしたとしても、その答申自体が必ずしも拘束力を持っているというものではないので、むしろそのまま閣議決定をした内容で消費者庁のほうで突き進むことがありますと、それは逆に我々が懸念しているようなことがそのまま何もかも手当てされないままで進んでしまうことになります。消費者庁との関係で正面衝突することは必ずしもいいことではないと私も思っています。

むしろ消費者庁が、せっかく今回のものについて、届出というところを使って、特保並みの安全性とか、品質の確保、表示の適正化ということについて防波堤をつくろうというふうに思っている、その気持ちは酌んであげたいと思いますので、その意味ではできるだけ、それを強固なものにするために制度的な手当てをしておくことが大事ですよということを強く申し上げたということです。

(事務局) 次の御質問をお願いします。

(問) 法的脆弱性というふうにおっしゃっていたのですけれども、これは例えば、この答申を出す場合の絶対条件になるのか。あるいはもうちょっと、そのための何か段階的なことも考えられるのか。その辺はいかがなのでしょうか。

(答) 制度として見ますと、最初に制度的な手当てをしてスタートさせたほうが混乱は少ないと思います。そうでなくて、そのまま突き進んでしまった後から、薬事法との関係がどうなるのだろうかとか、いろいろなことで問題が次々に出てしまってからこれを手当てしようとしますと、いろいろな問題が混乱してしまうということを恐れております。

ですから、その意味ではもう少しそれぞれ厚労省との間で詰めていただいて、それぞれの法の適用に関して明確にしておいて、しかも届出というものが一定の、事業者に対して今回さまざまな義務を事実上課することになりますから、その義務違反に対して指導する根拠規定というものになるように、一定のことを書き込んでもらうというほうが筋が通りますし、ルールとしては明快だと思うのです。ただ、絶対条件とまで、言うつもりはありません。

(事務局) よろしいですか。

どうぞ。

(問) 先ほど委員の先生からも、消費者委員会のほうでは消費者庁に対する監視機能を持っておられるという話がありまして、今、どれぐらい使えるのかという正念場というお話があったと思うのですけれども、具体的にこの齟齬が埋まらなかった場合に、消費者委員会のほうでは消費者庁に対して何らかのアクションをとる可能性はあるのでしょうか。

(答) アクションと申しますと。

(問) いろいろ、建議をしたりとか。

(答) これは新しい制度をめぐって、こういう形で制度設計をすべきであるというような、それは諮問に対する答申をはるかに超える内容になりますから、必要であればそういう意見を申し上げなければならないかもしれません。

(事務局) よろしいですか。

どうぞ。

(問) 部会のほうも本会議のほうも、基準案についての議論は余りなかったと思うのですけれども、基準案自体については特に問題はないという合意形成をされているという理解でよろしいでしょうか。

(答) 少なくとも部会に関しては、お一人を除いては、基準案に関しては特に異論を申しておられる方はいなかったと聞いております。

委員会の中でも、基準案そのものについてどうこうというところまでは行っておりません。といいますか、その前提となる部分というのがガイドラインでして、その中身は余り明確に書かれていないのです。ですから、それを前提にして基準案はこれでいいかというふうに言われましても、なかなか回答はしづらいのです。これは1回目のときに私が3度ぐらい念を押したのですが、つまり検討委員会で言われているような内容とか手続をガイドラインの中で全てきちんと盛り込んでもらえますかと。それでいいのですねというふうに言ったら、制度課長さんが全て盛り込みますというふうにおっしゃったので、では、それを前提にして考えた上で、このガイドラインでもオーケーですという話をしたということでございます。

ただ、それもガイドラインでそれをやって、実質的な内容コントロールまで考えようとするのだとすると、それはそれでいいことなのですけれども、安全性を守るためにきちんと内容をコントロールすることはいいことなのですが、そのための根拠規定がどこにあるのですかという話になると、かなり遠い読み込みをしながら解釈をして、これで言えることになりますというふうにおっしゃるので、それはひっくり返る可能性がありますので、脆弱ですよと申し上げたわけです。

(事務局) よろしいでしょうか。

(河上委員長) どうぞ。

(問) 1週間の期間ということでしたけれども、ガイドラインが出てからの答申というのは考えられないのでしょうか。

(答) ガイドラインがいつ出てくるかというのは、わかりません。今でも遅いと思うので、速やかに出してくださいということは今日も申し上げたところであれなのです。ただ、ガイドラインが出るまでは答申は出せませんというふうに言うと、逆に制度を動かそうとする場合に、逆算していくと、かなりタイムリミットとしては厳しいのではないかという気がします。ですから、最もネガティブな形で答申を出してしまうということをやるにしても、かなり早い段階でやらないと消費者庁としても困るのではないかと思います。

(問) 先ほど、法的な脆弱性、制度的な脆弱性ということでしたけれども、もともとは規制改革会議の中で、法律をいじらないということを前提としてスタートしていて、だから、今のような特保であったり、栄養機能食品であったり、いわゆる健康食品も販売されている中で、新しい制度というものは果たして消費者にとっては混乱を招かないのかどうか。それで、招くという前提でいろいろな消費者団体がこういう制度自体を反対してきたのだと思うのです。

それで、規制の緩和ということを前提とされているので、その中で出てきたぎりぎりの制度であるとしても、法律自体が非常に構わないといいますか、それで今回、法律を速やかに整備するということを提案されていらっしゃるのですけれども、もともとスタートが、ある種、前提が消費者委員会としてもっと早く、何か建議なりを出すという内容が附帯意見の中に組み込まれているような気が私はするのです。

(答) 理解できます。

ただ、食品に関して特保と栄養機能表示の今までの既存の制度があって、それと、新しく今度、制度として提案されているものとの関係をどういうふうに整理するかというのはかなり難しい問題で、いわゆる健康食品に関して、これまで何回も建議もあったり、意見の表明もあったところでして、消費者委員会としてはワーキング・グループをつくって、特保制度等との関係について、もう少し深掘りをしないと、根本的な意見を出すのはちょっと難しいのではないかと考えております。現に今、ワーキング・グループでその点については検討作業を続けているところですので、この点についてはもう少し時間をいただければありがたいと思います。

(問) わかりました。

それと今日、もし間違っていたら教えてほしいのですが、附帯意見の中で、一番最初のところに、前文というのでしょうか、その中に、この制度自体の創設が基本的に望ましいと判断された、その一つの理由の中に、事故が起こった場合に備えて、届出事業者に消費者庁への事故情報の報告義務を課するということになっているというところなのですけれども、この報告義務に対しては、法的な義務ではないですね。

(答) そういう義務づけも、検討委員会の中では制度の中に入れていたわけですね。ですから、届出をした以上は、その届出内容が一定のレベルを達していることとか、それから、番号をもらった人間が、それについて事故が起きたら、直ちに事故情報を提供しなさいとか、そういう義務を全部課していかないといけないわけです。それを単純なガイドラインとか、そういうものでやれるというふうに消費者庁が考えているとすれば、それはちょっと見通しが甘いのではないですかということになります。

(問) 法的義務ではないですね。

(答) ですから、そこが法的義務ではないということになれば、違反した業者に対して、これを行政的にいろいろコントロールするのが難しくなる可能性がある。ですから、むしろ私どもは消費者庁に対して、待ったをかけるといいますか、邪魔をするつもりは全くなくて、消費者庁が一生懸命考えて、閣議決定ですので、その上でなおかつ、特保並みに一定の水準を保とうということで頑張ろうとしていることは積極的に評価したいと思っておりますし、それを応援するとすれば、むしろこういうところで制度的な対応をしておくことが望ましいという立場で議論したつもりです。なかなか、うまく受けとめていただけないものですけれどもね。

どうぞ。

(問) 安全性の問題以外に、いわゆる健康食品の場合は経済的な被害というものも結構あったと思います。それで、かなりそれもパーセンテージが大きかったと思うのですが、この制度で、例えばある程度、安全性が担保されるとして、経済的なそういう被害のようなものも担保されるのかどうかというのは私は疑問に思っているのですが、いかがでしょうか。

(答) 経済的な被害ですか。どうでしょうね。

(答・事務局) 送りつけ商法みたいなことでしょうか。

(答) そちらのほうですか。

表示がきちんとされたということになったときに、消費者がだまされにくくなるとか、選択の機会がきちんと増えるという意味では、間接的には被害の抑止につながる可能性はあると思います。ただ、この制度で何もかもがうまくいくというふうには考えないほうがいい。

私はむしろ、これは健康食品業界の販売促進のための一つの手法であって、それに対して国として一定のコントロールをかけながら頑張ってくださいというふうな、健康増進法の世界の法律とはちょっと違うタイプのものかなという感じさえ持っております。これは私の個人的な見方です。

(事務局) ほかはよろしいでしょうか。

よろしければ、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

(河上委員長) どうもありがとうございました。

(以上)