消費者基本計画工程表の改定素案(平成28年4月)に対する意見

2016年5月24日
消費者委員会

消費者基本計画工程表の改定素案(平成28年4月)に対する意見

当委員会は、消費者基本計画工程表(以下「工程表」という。)の検証・評価及び見直しについて、本年2月24日に「消費者基本計画の実施状況に関する検証・評価及び計画工程表の改定に向けての意見」(以下「2月意見」という。)を取りまとめ、本意見の内容を、可能な限り工程表の改定案等に反映することを求めてきた。

その後、消費者庁をはじめとする関係府省庁等では、2月意見も踏まえつつ、工程表の検証・評価及び見直し作業を行い、取りまとめられた工程表の改定素案は、本年4月21日よりパブリックコメントにかけられた。

当委員会は、本年5月10日の消費者委員会本会議において、工程表の改定素案について、消費者庁よりヒアリングを行ったところである。本ヒアリングの結果や、これまでに行った建議・提言その他の意見等の内容、本年2月から4月にかけて実施した建議(注1)に関するフォローアップについてのヒアリングの結果等を踏まえ、工程表の改定素案に対し、下記のとおり意見を述べる。関係省庁等におかれては、下記の各項目について積極的に検討の上、可能な限り工程表の改定原案等に反映されたい。

当委員会としては、本意見の工程表への反映状況や、その後の実施状況等について引き続き監視を行い、消費者被害の状況が深刻なものや、取組が不十分と考えられるもの等については、今後、重点的に当委員会の調査審議を通じて取り上げていくとともに、必要に応じて建議等の意見表明を行っていくこととする。

第1 全体的な事項

1.KPIについて

当委員会が公表した「次期消費者基本計画の素案(平成27年2月)等に対する意見」(平成27年2月17日)において指摘したような基準(注2)を念頭にKPIの見直しを行うほか、施策の達成状況等に応じ、指標の見直しや追加設定を検討するとともに、目標の数値等についても、不断の見直しを図られたい。

2.工程表の図について

年限を区切らずに5年間で取り組むことが示されているものについては、定期的・継続的に実施しなければならないものを除き、可能な限り具体的な取組に分けた上で、当該具体的な取組ごとに期限を明確に設定した上で、図示されたい。

第2 個別の事項

1.軽井沢スキーバス事故を受けた対応(1(1)(3)関係)

「軽井沢スキーバス事故対策検討委員会」の中間整理(平成28年3月29日)を踏まえ、少なくとも「速やかに講ずべき事項」とされている取組について、可能な限り工程表に明記されたい。(国土交通省)

2.基礎ぐい工事の適正な施工を確保するための取組(1(1)(5)関係)

2月意見に盛り込まれた内容(工事監理者が基礎ぐい工事における工事監理を行うにあたって留意すべき点が示されている「基礎ぐい工事における工事監理ガイドライン」について、その実効性を確保するための取組のスケジュール等の工程表への明記)について、同ガイドラインの実効性を確保するため、周知のみならず、同ガイドラインのフォローアップ等の取組について、工程表に明記されたい。(国土交通省)

3.事故情報の収集、公表及び注意喚起等(1(2)(1)関係)

商業施設以外の遊戯施設における事故防止対策について、平成27年8月に発出した「商業施設内の遊戯施設における消費者安全に関する建議」及びそのフォローアップ結果を踏まえ、具体的な取組を工程表に明記されたい。(消費者庁)

4.高齢者向け住まいにおける安全の確保(1(2)(6)関係)、高齢者向け住まいにおける消費者保護(3(2)(11)関係)

2月意見に盛り込まれた内容(サービス付き高齢者向け住宅を含め、消費者が選択にあたって必要な情報が入手できるような分かりやすい情報提供等の工程表への明記)について、「サービス付き高齢者住宅の整備等のあり方に関する検討会」の議論を踏まえ、情報提供等のための取組を工程表に明記されたい。(厚生労働省、国土交通省)

5.健康増進法による表示・広告の適正化の在り方に関する検討(2(3)(2)関係)

平成28年4月に「健康食品の表示・広告の適正化に向けた対応策と、特定保健用食品の制度・運用見直しについての建議」を発出したことを踏まえ、健康増進法による表示・広告の適正化の在り方に関する検討について、工程表に明記されたい。(消費者庁)

6.個人情報保護法制の周知(5(2)(2)関係)

平成28年1月に個人情報保護委員会が設置され、個人情報保護法が同委員会に移管されたことを受け、同法に係る制度の周知は同委員会が行うこととなることから、法制度の周知に係る今後の取組を、工程表に明記されたい。(個人情報保護委員会、消費者庁)

第3 今後の課題

1.特定商取引法の適用除外とされている消費者保護関連法の必要な執行体制強化及び制度改正(3(1)(3)関係)

工程表の改定素案には、執行状況の把握のための調査結果を取りまとめたものとして、別表1において行政処分等の執行件数が記載されているが、行政処分等の種別ごとの件数を把握するのみでは、特定商取引法の適用除外とされている消費者保護関連法においても、特定商取引法における違反類型(不実告知等の不当勧誘や虚偽・誇大広告等)と同様の行為に対して行政処分等がなされ、消費者の保護が十分に図られているのか否かが明らかでない。調査された執行状況については、さらに違反行為ごとに分析した上で、今後はその内容を明らかにされたい。(消費者庁)

2.消費者教育の推進について(4(2)(1)関係)

消費者教育の推進に関する法律(平成24年8月22日法律第61号)及び消費者教育の推進に関する基本的な方針(平成25年6月28日閣議決定)に基づき、これまで取り組んできた消費者教育について、実態を把握し、必要に応じて工程表を見直すことを検討されたい。

3.地方消費者行政の充実・強化に向けた地方公共団体への支援等、地域の見守りネットワークの構築(消費者安全地域確保協議会、消費生活協力員、消費生活協力団体)(6(2)(1)、(2)関係)

消費者安全確保地域協議会の設置状況をKPIに設定しているが、当該指標のみならず、消費生活協力員・消費生活協力団体の活用支援についても、施策目標の方向性を検討されたい。

また、地方消費者行政推進交付金が平成29年度で終了することから、地方消費者行政の計画的・安定的な取組が可能となるよう、同交付金終了後の施策の方向性について、十分検討されたい。(消費者庁)

4.新たに発生する課題について

社会経済情勢が変化する中で、新たに消費者問題として課題が発生することがあるが、必要に応じて新規の政策レベルで工程表に追加することを検討されたい。

(注1) 「美容医療サービスに係るホームページ及び事前説明・同意に関する建議」、「電子マネーに関する消費者問題についての建議」及び「商業施設内の遊戯施設における消費者安全に関する建議」

(注2) (i)法令及びガイドライン等の見直しや改訂の実施状況、(ii)消費者や事業者等への、法令及びガイドライン等の周知状況、(iii)消費者関連法令の執行等、行政処分の実施状況、(iv)関連する取組全体の効果としての消費者被害の発生状況を基準としている。

(以上)