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電子マネーに関する消費者問題についての建議

2015年8月18日
消費者委員会

電子マネーに関する消費者問題についての建議

インターネット取引の拡大に伴って、クレジットカードや電子マネーなど支払手段が多様化している。

これらの支払手段のうち、クレジットカード取引については、当委員会は、平成26年8月26日に「クレジットカード取引に関する消費者問題についての建議」を発出し、経済産業省に対して、加盟店管理の徹底など消費者保護のための制度整備を求め、同省においても、割賦販売法(昭和36年法律第159号)に基づく規制の強化に向けて検討が進められている。

一方、電子マネーについては、他の支払手段と比較して歴史が浅いが、発行額が年々増加している。また、政府が「『日本再興戦略』改訂2015」(平成27年6月30日閣議決定)において「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催等を踏まえ、キャッシュレス決済の普及による利便性・効率性の向上を図る」こととされていることから、今後、普及が拡大することが見込まれている。

しかし、電子マネーの利用拡大に伴って、消費者問題も発生している。全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO‐NET)(注1)に登録された電子マネーに関する消費者からの相談の件数は、平成17年度から26年度で約80倍に増加している。相談事例を見ると、加盟店の悪質な行為が原因で生じる被害や電子マネーのIDが詐取される被害などが発生しており、電子マネーの健全な市場が形成されているとは言い難い状況にある。消費者が安心して電子マネーを利用できる環境の整備を進める必要がある。

消費者基本計画(平成27年3月24日閣議決定)において、「多様な決済手段に関連する消費者トラブルへの対応について検討し、必要な取組を推進する」こととされていることも踏まえ、当委員会は、電子マネーに関する消費者問題が発生している原因や背景を探るべく、調査審議を行ってきた(注2)。

その結果、電子マネー発行業者の加盟店の管理及び苦情処理体制が十分でないこと、電子マネーのIDを詐取されることによる被害の防止対策が十分でないこと、電子マネーの特徴や利用に関する留意点の消費者への教育や情報提供が十分でないことなどの課題が明らかになった。

言うまでもなく、インターネット取引における被害の防止に向けた課題は、電子マネーだけにとどまらず、場の提供者の責任についての考え方、セキュリティの確保、発信者情報開示の必要性など多岐にわたる。

しかし、電子マネーはクレジットカードと決済の仕組みが類似しており、これまでクレジットカードを媒介としていた消費者問題が、クレジットカードに対する規制の強化に伴って、比較的規制の緩やかな電子マネーに移行していくことが懸念される。当委員会は、現時点において早急に効果的な対策を講ずるため、調査審議し、本建議に至ったものである。

当委員会は、以上の状況を踏まえ、内閣府特命担当大臣(金融)に対して、次のとおり、消費者庁及び消費者委員会設置法(平成21年法律第48号)に基づき建議する。また、この建議への対応について、内閣府特命担当大臣(金融)に対して、平成28年2月までにその実施状況の報告を求める。

(注1)PIO‐NET(パイオネット)とは、独立行政法人国民生活センターと全国の消費生活センター等をオンラインネットワークで結び、消費生活に関する相談情報を蓄積しているデータベース。
(注2)電子マネーには媒体別にIC型電子マネーとサーバ型電子マネーがある。今回当委員会が建議の対象としたのは、電子マネーのうちインターネット取引で主に利用されているサーバ型電子マネーである。

1 加盟店管理及び苦情処理体制の整備

(建議事項1)

金融庁は、電子マネーを利用した取引における悪質な加盟店による消費者の被害の発生・拡大防止及び回復を図るため、電子マネー発行業者に対し、資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)(以下、「法」という。)における義務付けを含む、加盟店の管理及び苦情処理体制の制度整備に向けた措置を講ずること。

(理由)

  • 電子マネーの利用における被害の主な類型の一つとして、消費者を言葉巧みに電子マネーの加盟店のサクラサイトなどに誘導し、役務を提供すると偽って何度も繰り返し利用料金を電子マネーで支払うよう指示するが、結局、役務が提供されないといった悪質な行為により、被害を受けたという事例が発生している。このような被害を防止するためには、加盟店が消費者に対して悪質な行為を行った場合、電子マネー発行業者は当該加盟店との契約を解除するなど適切な加盟店管理を行う必要がある。
  • 加盟店管理につき、法は、電子マネー発行業者の加盟店の取り扱う物品及び役務について公の秩序又は善良の風俗を害し、又は害するおそれがあるものではないことを確保するために必要な措置を講じていない法人(電子マネー発行業者)を第三者型発行者の登録拒否事由としており(法第10条第1項第3号)、登録拒否事由に該当するときは登録を取り消し、又は6か月以内の発行業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができることとしている(法第27条第1項第1号)。また、電子マネー発行業者の業務の運営に関し、利用者の利益を害する事実があると認めるときは、その利用者の利益の保護のために必要な限度において、当該業務の運営の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができることとしている(法第25条)。
      これを受けて、「金融庁事務ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)において、電子マネー発行業者における加盟店管理について、「第三者型発行者については、利用者に物品・役務を提供するのは主に加盟店であるため、前払式支払手段に係る不適切な使用を防止する趣旨から、加盟店が販売・提供する物品・役務の内容について、公序良俗に反するようなものではないことを確認する必要がある」とした上で、電子マネー発行業者に対する監督に当たっての主な着眼点を示している。
      「公序良俗違反」という要件については、犯罪行為に使用されるなどの悪質性が強い場合などが該当すると考えられるが、加盟店管理義務をより明確にする観点から、悪質な加盟店による被害の防止に資するように電子マネー発行業者の加盟店管理責任を法令などにおいて、明文化することが求められる。
  • クレジットカード取引については、加盟店管理について割賦販売法に基づく規制の強化に向けて検討が進められている。クレジットカードの加盟店管理の仕組みを参考に、電子マネー発行業者における加盟店管理の制度整備に向けた措置を講ずる必要がある。
  • 電子マネー発行業者における利用者からの苦情処理について、法第13条第1項第4号では、「利用者からの苦情又は相談に応ずる営業所又は事務所の所在地及び連絡先を表示すること」とされている。また、ガイドラインにおいては、電子マネー発行業者に対する監督に当たっての主な着眼点を示している。
      なお、電子マネー発行業者が法に基づく認定資金決済事業者協会(法第87条)の会員の場合には、同協会の自主規制規則により苦情処理が義務付けられているところであるが、同協会の会員以外の電子マネー発行業者も存在する。
      電子マネー発行業者の規約では「加盟店・利用者間のトラブルは当事者間で解決する」旨が規定されているものも存在し、電子マネー発行業者が紛争解決に非協力的である場合もあるとの報告もあるため、電子マネー発行業者に対して、苦情処理について、より徹底させる必要がある。
  • 以上を踏まえ、金融庁は、上記建議事項1に基づく措置を講ずべきである。

2 電子マネーのIDを詐取されることによる被害の防止対策

(建議事項2)

金融庁は、消費者が電子マネーのIDを詐取されることによる被害を防止するため、以下の措置を講ずること。

  • (1)消費者が電子マネーを詐取される被害が発生している電子マネー発行業者に対し、各発行業者のウェブサイトや販売時における注意喚起の表示、販売上限額の引き下げなどの販売方法の見直し並びに被害発生状況のモニタリング及び分析を通じて消費者の被害の予防及び救済に向けた取組を促すこと。
  • (2)経済産業省、警察庁、消費者庁と連携し、電子マネーを販売する事業者に対し、電子マネーの販売店において高額又は大量の電子マネーを購入しようとする消費者に対して、従業員から注意喚起の声かけを行うことなどにより、電子マネーを詐取しようとする者に支払うことを目的とした電子マネーの購入を未然に防ぐ取組について協力を要請すること。

(理由)

  • 電子マネーの利用における被害の主な類型の一つとして、消費者に対して架空の利用料金を請求するなど不正な請求を行い、その支払いを電子マネーで行うよう指示する事例が発生している。
      具体的には、悪質な業者などのアカウントへの入金手続きを消費者に行わせる、コンビニエンスストアなどの電子マネーの販売店で消費者に電子マネーを購入させてIDを詐取する、譲渡型の機能を利用してギフト型の電子マネーを購入させてそれを譲渡させるなどである。
  • 電子マネーは、販売店において匿名で誰でも比較的簡単に購入して利用でき、他人に譲渡することができる特徴がある。しかし、その特性を逆手に取られ、被害に遭うケースがみられる。たとえ、被害に気が付いても、電子マネーを詐取した者を特定できないため、被害救済を著しく困難にしている。このような点からすれば、電子マネーを詐取した者を特定できる手段の検討が必要であるが、一律に電子マネーの利用者に本人確認などを行うことは利便性を妨げるものであり、現実的ではないと考えられる。
  • そこで、消費者保護の観点から、電子マネーの利便性にも留意しつつ、次の措置を講ずべきである。
    • 消費者が電子マネーを詐取される被害が発生している電子マネー発行業者に対し、各発行業者のウェブサイトや販売店に設置しているMMK端末(マルチメディアキオスク端末)などにおいて販売時における注意喚起の表示、販売上限額の引き下げなどの販売方法の見直し並びに被害発生状況のモニタリング及び分析を通じた消費者の被害の予防及び救済に向けた取組を促すこと。例えば、電子マネー発行業者に対して、これらに取り組むことを求めることをガイドラインに盛り込むことが考えられる。
    • 電子マネーのID詐取による被害の発生を未然に防止するため、高額又は大量の電子マネーを購入しようとする消費者に対して、販売店の従業員から注意喚起の声かけを行うことなどにより、消費者がだまされていることに気づき、被害を未然に防いだ事例があり、この対策には効果が認められる。この「声かけ」に広く販売店が取り組むことで被害の予防を拡大することが期待されるため、関係省庁と連携し、電子マネーを販売する事業者に対し、販売店において高額又は大量の電子マネーを購入しようとする消費者に対して、従業員から注意喚起の声かけを行うことなどにより、電子マネーを詐取しようとする者に支払うことを目的とした電子マネーの購入を未然に防ぐ取組について協力を要請すること。
  • 以上を踏まえ、金融庁は、上記建議事項2に基づく措置を講ずべきである。

3 消費者教育及び情報提供

(建議事項3)

金融庁は、消費者庁及び文部科学省並びに関係団体の協力を得て、電子マネーの特徴や利用に関する留意点、被害の発生・拡大防止及び回復を図る際に有用と思われる知識についての消費者教育及び消費者への情報提供を一層積極的に推進すること。

その際、消費者の適切な理解を得るため、対象となる年齢層などにも配慮すること。

(理由)

  • 消費者が電子マネーの特徴や利用に関する留意点や、詐欺等の被害に遭わないための知識を身に付け、適切に行動することができるようにするためには、消費者教育や情報提供を推進していくことが重要である。
  • 学校教育では、文部科学省が作成する中学校学習指導要領解説の技術・家庭編や高等学校学習指導要領解説の公民編や家庭編等において、電子マネーについても記述されており、指導が行われている。電子マネーによる決済の仕組みは複雑であるため、中学生、高校生、大学生など年齢層に応じて理解できるような展開が必要である。
  • すでに消費者庁等関係行政機関や関係事業者・団体においては、各種の取組を実施しているところもみられるが、被害の防止を図っていくためには、そうした取組を一層充実させ、継続して取り組んでいく必要がある。
  • 以上を踏まえ、金融庁は、上記建議事項3に基づく措置を講ずべきである。
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