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商品先物取引法における不招請勧誘禁止規制の緩和策に対する意見

2014年4月8日
消費者委員会

経済産業省及び農林水産省は、平成26年4月5日、「商品先物取引法施行規則」及び「商品先物取引業者等の監督の基本的な指針」の改正案(以下、「改正案」)を公表して意見公募手続を開始した。

改正案は、商品先物取引法施行規則第102条の2を改正することにより、7日間の熟慮期間を設けること等の条件の下で、70歳未満の消費者への電話・訪問勧誘による取引を幅広く認めるとともに、自社以外とのハイリスク取引の経験者に対する勧誘を認めるという内容となっている。しかし、商品先物取引に係る消費生活相談の半数以上は70歳未満の契約者についてのものであり(別紙資料参照)、改正案は商品先物取引の不招請勧誘禁止規制を大幅に緩和し、事実上解禁するに等しいものである。

当委員会としては、このような改正案が、消費者保護の観点から見て、重大な危険をはらむものであることに鑑み、かかる動向を看過することができず、深く憂慮し、その再考を求めるものである。以下、その理由を述べる。

当委員会は、平成25年11月12日「商品先物取引における不招請勧誘禁止規制に関する意見」(以下、「平成25年意見」)において、将来において、「総合取引所に商品先物取引が上場されて金融商品取引法の規制下に置かれることになった場合でも、不招請勧誘の禁止規制を緩和すべきではない」旨の意見を明らかにし、金融庁に対して善処を要請したところであるが、今回の改正案は、既存の「商品取引所」で行われる商品先物取引に関するものについて、従来の不招請勧誘禁止ルールを大幅に緩和しようとするものである。

周知のように、不招請勧誘の禁止規定(商品先物取引法第214条第9号)は、商品先物取引業者による長年にわたる深刻な消費者被害に対応するため、国会における慎重な審議を経て同法の平成21年改正で導入され、平成23年1月から施行されているものである。同法第214条第9号は、不招請勧誘禁止規定の適用対象を政令で指定することとしているところ、法改正の際の国会審議において、不招請勧誘禁止規定の対象につき、次のような附帯決議が採択されている。(注1)

  • (1)当面、一般個人(注2)を相手方とするすべての店頭取引と、初期の投資以上の損失が発生する可能性のある取引所取引を政令指定の対象とすること。
  • (2)施行後1年以内を目処に、政令指定の対象を見直し、必要に応じて一般個人(注3)を相手方とする取引全てに対象範囲を拡大すること

商品先物取引に対する不招請勧誘禁止規制の必要性と適用対象の範囲は、国会における慎重な審議を踏まえて定められたものであり、この経緯を重く捉えるべきであることは、平成25年意見でも指摘したとおりである。

ところが今回の改正案は、国会での議論の経緯や附帯決議を無視し、省令で不招請勧誘禁止規制を事実上解禁しようというもので、極めて不適切である。商品先物取引法及び同法に基づく政令により禁止されている不招請勧誘行為について、省令で禁止の対象から除外することが許されるのは、「委託者等の保護に欠け、又は取引の公正を害するおそれのない行為」に限定される。そこで現行の商品先物取引法施行規則第102条の2は、デリバティブ取引に関する継続的顧客に対する不招請勧誘行為に限り、禁止の対象から除外しているのである。

これに対して改正案は、法律及び政令による不招請勧誘禁止の対象を、省令で大幅に限定し、事実上電話・訪問勧誘を解禁するものであり、手続的にも、内容的にも到底許容できるものではない。

改正案は、事実上70歳未満の消費者に対する商品先物取引業者による電話・訪問勧誘を解禁しようとするものであり、社会問題化してきた古いビジネスモデルを再び活性化させ、高齢者のいのち金や、一般消費者の生活基盤である預貯金を極めてリスクの高い投資に向かわせ、同時に、詐欺的投資勧誘を行おうとする悪質な事業者に格好のツールを提供する結果となる。したがって、改正案が実施されれば、再び商品先物取引被害が社会問題化する危険性が極めて高く、市場の活性化どころか、市場の衰退をもたらすことにもなりかねない。

また、改正案による7日間の熟慮期間の設定は、商品先物取引勧誘の局面において、とりわけ高齢者を含め複雑でハイリスク・ハイリターンな取引に不慣れな一般消費者の保護には、ほとんど機能しないものであることにも留意する必要がある。

この制度は、「海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律」(注4)(昭和58年1月施行。以下、「海先法」)の第8条に14日間の熟慮期間として設けられていたものであるが、熟慮期間は、クーリング・オフとは、その効果を異にする制度である。すなわち、商品先物取引の契約は、取引に係わるルール全般に関する基本契約と、基本契約に基づいてなされる個々の売買取引という構成になっているところ、「クーリング・オフ」は、一定期間に全契約を解消することを可能ならしめる制度である。これに対して「熟慮期間」は、基本契約の効力には影響を及ぼさず、単に、熟慮期間内に行われた個別の売買取引についてのみ自己の計算としないことを可能とするにとどまるものである。商品先物取引は、基本契約の締結後、相当の期間にわたって多数回の取引を次々と勧誘されて行われるものであるから、当初の7日間に行われた取引についてのみ自己の計算としないというだけでは、クーリング・オフのような効果はまったく期待できないのである。

実際、海先法が適用される事案においても、熟慮期間を活用して被害救済された例はほとんどなかったという実情にある。改正案は、このような実効性のない熟慮期間制度を設けて不招請の電話・訪問勧誘を解禁するものであり、消費者保護の観点から、到底認めることができないものである。

なお、以上のような観点から必要なセーフティネットをはることによって、消費者の保護を図ることは、勧誘等における禁止事項について「顧客保護に留意しつつ」市場活性化の観点から検討を行うこととする「規制改革実施計画」(平成25年6月14日閣議決定)とも何ら矛盾するものではないことを付言する。

以上


  • 注1 平成21年6月17日衆議院経済産業委員会附帯決議第1項、同年7月2日参議院経済産業委員会附帯決議第1項
  • 注2 参議院経済産業委員会附帯決議においては「一般委託者」とされている。
  • 注3 注2と同じ。
  • 注4 商品先物取引法により廃止された。
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