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詐欺的投資勧誘に関する消費者問題についての建議

2013年8月6日
消費者委員会

 近年、言葉巧みに投資話などを持ちかけ、消費者から資金をだまし取るというトラブルが多発しており、その被害は年々深刻さを増している(注1)。全国消費生活情報ネットワーク・システム(以下「PIO-NET」という。)によれば、こうした詐欺的投資勧誘(注2)の相談件数(注3)は、平成21年度の約5千件から、22年度は約1万2千件、23年度は約2万2千件に達し、24年度は約1万6千件に及んでいる。その支払金額は、100万円以上が約5割、そのうち500万円以上が全体のおよそ4分の1を占めており、また、契約者の約7割は、65歳以上の高齢者である。これは、高齢者が老後の資金として比較的まとまった資産を保有していること、また、判断能力の低下や社会的接点の希薄化の傾向が認められる高齢者もみられることから、詐欺的投資勧誘のトラブルに巻き込まれやすいものと考えられる。高齢者がこうした被害に遭遇した場合、老後の生活基盤が失われることとなり、その後の生活に深刻な影響をもたらしかねない。
 このため、高齢化が進む我が国において、詐欺的投資勧誘による被害を防止し、高齢者が安心できる生活環境を整えていくことは、行政が早急に取り組まなければならない喫緊の課題と言える。

 消費者委員会において、詐欺的投資勧誘に関する消費者問題の実態を把握するため、PIO-NETや当委員会が地方自治体に対し行った調査(以下「自治体調査」という。)(注4)等を用いて分析を行ったところ、詐欺的投資勧誘には、先に述べた高齢者を狙った勧誘の他に、主に次のような特徴が認められた。

  • 劇場型の勧誘: 劇場型の勧誘とは、特定の販売業者と通じていると思われる者らが、消費者に対し「特定の商品や権利を販売業者から購入すれば、購入額を上回る金額で買い取る」などと購入を繰り返し勧め、特定の販売業者との取引が消費者にとって有利なものであると誤認させ、当該販売業者と契約をするように仕向け、契約させる勧誘手法である。劇場型の勧誘では、買取りを持ち掛けた者(すなわち、消費者に対して特定の販売業者との取引が有利なものであると誤認させた者。以下「勧誘者」という。)と契約後連絡が取れなくなることがほとんどであり、予め仕組まれた集団的・組織的詐欺あるいは第三者詐欺による取引の可能性が極めて高い。
  • 二次被害の発生: 二次被害とは、過去に詐欺的投資勧誘等の被害にあった消費者に対し、被害回復等を名目に再び勧誘を行い、被害回復の条件として、手数料の支払いや別の投資商品の購入を求める手法である。手数料や購入代金を支払っても、被害回復に向けた取組が実行されないケースが多く、被害者の損害を更に拡大させることから、その生活に与える影響は甚大なものとなり得る。
  • 商材の多様化: 未公開株、社債やファンド持分を商材とした詐欺的勧誘が多く見られる一方で、「温泉付有料老人ホームの利用権」、「天然ガス施設運用権」、「国内でほとんど取扱いがないイラク、アフガニスタン、スーダン等の外国通貨」といった新たな商材が次々と現れている。金融商品取引法(昭和23年法律第25号)においては、株式、社債や集団投資スキーム(ファンド)持分等の有価証券の販売・勧誘に対し、参入規制や行為規制が課せられている。また、特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号。以下「特定商取引法」という。)では、商品、役務及び一部の権利(指定権利)の電話勧誘販売、通信販売等に対し、行為規制が課せられている。しかし、この種の新たな商材である「権利」等には、これらの法の適用が想定されていないものも多く、関係法令の「すき間」が狙われていると考えられる。
  • 短期・広域的被害の発生: 同一の事業者による被害が、一定の期間内に集中し、また、特定の都道府県内にとどまらず、広域に拡大する傾向が認められる。
  • 事業者の追跡・捕捉の困難性: 消費者からの相談・通報等を受けて行政が調査・処分を行おうとしても、即座に事業者が所在不明となることが少なくない。また、事業者の登記簿に記載された「本店の住所」には営業実態がないケースもみられる。このように、事業者の追跡・捕捉が難しいために、消費者行政部局等による関係法令の執行や被害の回復が困難な事例が多い。

 こうした詐欺的投資勧誘の特徴から、その対策に特効薬はなく、(i)民事・行政・刑事にわたる関係法令の執行強化及び制度整備、(ii)犯行ツールに関する取組の強化、(iii)消費者への注意喚起及び高齢者の見守りの強化、等の施策を組み合わせ、これらを総動員することによって、被害の防止と損害の回復に取り組んでいく必要がある。

 当委員会は、以上の問題意識から、消費者庁及び消費者委員会設置法(平成21年法律第48号)第6条第2項第1号に基づき、内閣府特命担当大臣(消費者)、国家公安委員会委員長、内閣府特命担当大臣(金融)、総務大臣、法務大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣及び国土交通大臣に対して、次のとおり建議を行う。また、本建議への対応について、各大臣等に対して、平成26年2月までにその実施状況の報告を求める。

  • (注1) 消費者委員会においては、こうした事態に対し、「未公開株等投資詐欺被害対策について(提言)」(平成22年4月9日)において、(i)被害救済を迅速に進めるための民事ルールの整備、(ii)違法行為に対する抑止効果のある制裁措置の検討・導入、(iii)効果的な行政対応、について、関係省庁に対し提言を行った。本提言を受けて、平成23年5月に金融商品取引法が改正され、無登録業者が非上場の株券等の売付け等を行った場合には、その売買契約を原則として無効とするルールの創設、無登録業者による広告・勧誘行為の禁止、無登録業者に対する罰則の引上げが、同法に盛り込まれるなどの措置が講ぜられた(罰則引上げは平成23年6月施行、その他の項目は同年11月施行。)。
  • (注2) ここでの「詐欺的投資勧誘」とは、投資商品の取引やそれらによる被害からの救済をうたった取引を、あたかも消費者にとって有利な取引であるかのように誤認させるような悪質な勧誘行為をいう。詐欺的投資勧誘は、その勧誘行為の悪質性を一見明白に立証することができず、対応が困難となる事案が多い。
     また、PIO-NETの「詐欺的投資勧誘」の相談件数は、「未公開株」、「公社債」、「ファンド型投資商品」、「他のデリバティブ取引全般」及び「金融関連サービスその他」の合計のうち、「利殖商法」のキーワードを付してあるものとして定義した。
  • (注3) PIO-NETの平成24年度の相談件数は、平成25年5月末日登録分までを集計している。支払金額(既払い金額)別相談件数及び契約者年齢別相談件数は、不明・無回答等を除外した平成24年度の値。
  • (注4) 当委員会において、地方自治体(47都道府県及び20政令市)に対し、詐欺的投資勧誘による被害状況及び地方自治体における取組状況について、書面による調査を実施した(調査期間:平成24年6~7月)。

1.詐欺的投資勧誘に関する民事・行政・刑事にわたる関係法令の執行強化及び制度整備

(建議事項1-1)

 消費者庁及び警察庁は、詐欺的投資勧誘による被害の発生・拡大防止を図るため、以下の関係法令の執行強化に向けた措置を講ずること。

  • (1) 警察庁は、未公開株、社債、集団投資スキーム持分等の取引やこれらの被害からの救済を装う悪質な利殖勧誘事犯に対し、引き続き重点的な取締りを推進すること。その際、警察庁及び消費者庁は、都道府県警察と都道府県における消費者行政部局との一層の連携及び自治体間の連携の強化を推奨すること。
  • (2) 消費者庁は、詐欺的投資勧誘に係る事案のうち、外観上は「権利取引」であっても、実態が手数料等を徴収する販売代行等である場合のように特定商取引法の規制対象となる「役務取引」に対し、同法を適切に執行すること。また、消費者庁は、当該執行実績を取りまとめ、都道府県に周知するとともに、個別の事案に係る都道府県からの問い合わせに対し、明瞭かつ具体的な形で技術的助言を行うことにより、都道府県による同法の適切な執行を支援すること。
  • (3) 消費者庁は、消費者安全法に基づき、詐欺的投資勧誘に係る事案においても、消費者への注意喚起や事業者に対する勧告・命令等の措置を適切に講ずること。
  • (4) 消費者庁及び警察庁は、特定商取引法の執行力強化のため、地方自治体及び都道府県警察に対し、同法執行担当部局における都道府県警察との人的交流や弁護士等の専門家との連携等の取組を進めるよう推奨すること。

(理由)
建議事項1-1(1)について

  •  詐欺的投資勧誘は、未公開株、社債、集団投資スキーム(ファンド)持分、様々な「権利」等を商材とする利殖性の高い取引や、これらの取引による被害からの救済等が装われており、この種の事案は、金融商品取引法における無登録営業、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和29年法律第195号)における預り金の禁止、刑法(明治40年法律第45号)における詐欺等に該当するものが多いとみられる。
  •  警察庁は、これら利殖勧誘事犯による被害の深刻さに鑑み、都道府県警察に対し対策強化を指示するなど、同事犯に重点を置いた取組を行っているところであるが、その中には、組織的な犯罪者グループが劇場型勧誘等の巧妙な手口により消費者につけ込むものや、行政による監督をものともせず悪質な投資勧誘を繰り返すものなど、消費者行政や金融行政の手法のみでは対応が困難な極めて悪質な事例も多いことから(注)、引き続き、警察による関係法令を駆使した重点的な取締りが行われる必要がある。
    • (注) 自治体調査によれば、都道府県が詐欺的投資勧誘に係る事案に対し処分・指導が行えない理由として、行政調査の範囲では違法性の立証が難しいことが一因として挙げられている。
  •  その際、地域の現場においては、都道府県警察と消費者行政部局の間で、密接な連携、情報共有が図られることが不可欠である(注)。地域の中には、県と県警の間で悪質商法等へ対処するための連携協定を締結するなどの方法により、円滑な対応が図られている例もみられることから、相互協力の成果の実例を他の都道府県に展開するなどの措置も講ぜられるべきである。また、詐欺的投資勧誘については、広域的被害の発生が認められるところ、地方自治体の枠を超えた消費者行政部局間及び都道府県警察間の連携の強化を図ることも重要である。
    • (注) 犯罪対策閣僚会議において、平成20年12月に関係省庁による消費生活侵害事犯対策ワーキングチームの設置が決定され、同ワーキングチームにより「消費生活侵害事犯の被害が疑われる相談情報の警察への提供について」(平成23年6月28日ワーキングチーム申合せ)が取りまとめられている。同申合せでは、地方自治体の相談窓口に寄せられた消費生活侵害事犯の被害が疑われる相談につき、相談者が警察への情報提供に同意することが確認できた場合には、具体的な相談内容及び相談者に連絡するために必要な情報を、速やかに都道府県警察に提供するよう依頼するものとされている。また、地方自治体及び都道府県警察といった現場レベルにおいても、連携が更に深まるよう努めるものとされている。

建議事項1-1(2)について

  •  詐欺的投資勧誘による消費者トラブルは、取引類型としては電話勧誘販売や通信販売によるものが多く(注1)、仮に特定商取引法が適用できれば、同法の電話勧誘販売における不実告知や重要事項の不告知、通信販売における誇大広告等に当たるものもあると考えられるが、「権利」を商材とした取引の外観を呈することにより、同法の適用を免れようとする事案が少なからず見受けられる。しかし、一見、このような、特定商取引法の適用外とみられる事案の中にも、取引実態を精査すると「役務取引」として同法の適用が可能なものもある。例えば、外観上は「権利取引」であっても、実態が手数料等を徴収する販売代行等である場合は、同法の「役務取引」として規制対象となり得る(注2)。消費者庁は、CO2排出権の店頭デリバティブ取引に関する役務を役務取引と捉え、同法を適用し、平成24年6月に当該取引を行った訪問販売事業者を処分している(注3)。また、特定商取引法においては、金融商品取引法の金融商品取引業者が行う有価証券の売買等については、特定商取引法の適用除外とされているが(注4)、例えば、無登録業者が電話勧誘販売により行った未公開株等の仲介(注5)等については、同法の適用対象となり得る。
    • (注1) PIO-NETにより、平成24年度の詐欺的投資勧誘に係る相談件数を販売購入形態別にみると、約7割が電話勧誘販売、約2割が通信販売による。
    • (注2) 第108回消費者委員会(平成24年12月18日)において、消費者庁より、手数料等を徴収して販売代行を行うような事例は、役務提供として特定商取引法の規制対象となり得るとの説明がなされている。
    • (注3) 消費者庁は、平成24年6月19日、CO2排出権の店頭デリバティブ取引を行っていた訪問販売業者に対し、特定商取引法第8条第1項の規定に基づき、12か月間の業務の一部停止を命じている。
    • (注4) 特定商取引法第26条第1項第8号イの規定により、金融商品取引法第29条に基づく登録を受けた金融商品取引業者が行う同法第2条第8項の商品の販売又は役務の提供については、特定商取引法の適用除外とされる。
    • (注5) 第20回消費者委員会(平成22年3月25日)において、消費者庁より、民法上動産とみなされる無記名債権(国債等)は「商品」に含まれるが、その他の株式や社債等は「商品」に含まれないこと、また、株式や社債を含め金融商品の取引の仲介等は「役務」に含まれることが説明されている。
  •  このように、一部の詐欺的投資勧誘に係る事案については、特定商取引法の「役務取引」として同法の適用が可能である。そして、先にも述べたとおり、詐欺的投資勧誘によるトラブルは、同一の事業者による被害が一定の期間内に集中し、特定の都道府県内にとどまらず、広域に拡大する傾向にある。よって、この種の事案に対しては、処分の効力が全国に及ぶ国が、率先して同法の適切な執行に努めることが必要である(注)。
    • (注) 自治体調査によれば、都道府県が詐欺的投資勧誘に係る事案に対し特定商取引法による処分・指導が行えない理由として、被害が広域化しており単一県での取締りが困難であることが一因として挙げられている。
  •  また、これに併せて、詐欺的投資勧誘に係る事案では、高齢消費者が高額な被害に遭う事例も多く、老後の生活基盤の喪失等の深刻な影響をもたらしかねないことから、消費者からの情報をいち早く把握する可能性が高い都道府県においても、特定商取引法が適切に執行されることが望まれる。しかしながら、自治体調査によれば、都道府県におけるこの種の事案への同法の執行実績は低調にとどまっており、都道府県からは、その理由の一つとして、個々の事案が同法の適用対象となるか否かの判断が困難であるという点が挙げられている。
  •  したがって、国において、詐欺的投資勧誘に係る事案について、国(地方支分部局を含む。)による執行実績を取りまとめるとともに、それらを都道府県に周知することにより、都道府県による同法の適切な執行を促していくべきである。さらに、同法の適用の可否については個々の事案の性質に応じて判断する必要があることから、都道府県からの個別事案に係る問い合わせに対しても、明瞭かつ具体的な形で技術的助言を行うべきである。

建議事項1-1(3)について

  •  未公開株、社債、集団投資スキーム(ファンド)持分等については、金融商品取引法の規制対象とされ、原則として、販売・勧誘を行う場合には参入規制や行為規制が課される。近年、無登録業者による未公開株や適格機関投資家等特例業者によるファンド持分等の販売・勧誘に起因する消費者被害が社会問題化したことから(注1)、金融庁(証券取引等監視委員会)は、金融商品取引法に基づき事業者に対する調査や裁判所への禁止・停止命令の申立てを行うとともに(注2)、同法の違反が認められる事業者への警告や事業者名の公表等を行っているところである。
    • (注1) 無登録事業者への対策として、先述のとおり、平成23年5月に金融商品取引法が改正され、無登録業者による未公開株等の売買契約を原則無効とするルールの創設等の措置が講ぜられた。
       また、適格機関投資家等特例業者への対策として、平成24年4月に金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)が改正され、適格機関投資家等特例業務の届出記載事項の追加等の規制強化が行われ、あわせて、金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針の一部改正により、届出受理時のチェック項目の追加等の監督上の着眼点が整備された。
    • (注2) 金融商品取引法では、裁判所は、金融庁(証券取引等監視委員会)の申立てにより、同法の違反者に対し、その行為の禁止・停止を命ずることができ、金融庁(証券取引等監視委員会)は、その申立てに必要な調査を行うことができるとされる。
  •  今日なお、未公開株、社債、集団投資スキーム(ファンド)持分等を商材とする無登録事業者等による悪質な投資被害が多数発生していることから、引き続きこうした取組が積極的に行われるべきであるが、詐欺的投資勧誘においては、これらの金融商品取引法の規制対象商品以外にも、例えば、「温泉付有料老人ホームの利用権」、「天然ガス施設運用権」、「国内でほとんど取扱いのない外国通貨」といった新たな商材が次々に現れている。こうした商材は、金融商品取引法による規制が及ばないばかりか、特定商取引法が規制する指定権利にも該当しないことから、その取引の相当数がこれらの法令による取締りを免れているものとみられる。また、劇場型勧誘の場合には、勧誘者と販売業者が立場を分けて消費者に接することから、勧誘者と販売業者の共謀、又は両者を総合してみれば一つの取引を形成していることが立証されない限り、特定商取引法が規制する取引類型には当たらず、たとえ勧誘者に不実告知等があったとしても、同法による規制対象とはならない。このように、詐欺的投資勧誘においては、関係法令のすき間を狙った事案も多い。
  •  こうした、いわゆるすき間事案に対処するため、平成24年9月に消費者安全法(平成21年法律第50号)が改正され、同法が施行された平成25年4月からは、消費者庁が、消費者に重大な財産被害を生じさせる事態(同法第2条第8項の「多数消費者財産被害事態」)を発生させた事業者に対し、他の法律に基づく措置が存在しない場合には、当該被害に係る取引の取りやめ等を勧告し、これに従わない場合には当該勧告に従うべき旨を命令すること等が可能となった。
  •  したがって、詐欺的投資勧誘で扱われる多様な商材に対し、消費者の財産被害の発生・拡大を防止するためには、消費者安全法を厳格に執行することも有効である。特に、詐欺的投資勧誘による消費者トラブルは、一定の期間内に集中し、広域的に拡大する傾向がみられることから、同法を適切に執行することが肝要である。

建議事項1-1(4)について

  •  特定商取引法の執行力強化には、都道府県において実際に行政調査や行政処分を行う執行担当部局の体制強化と執行担当職員の能力向上を図ることが不可欠である(注)。具体的には、消費者からの相談を受けて、これを迅速かつ適切に行政処分や刑事摘発、個別事案の解決に結び付けるためには、証拠収集や供述聴取書の作成等の実務ノウハウを習得していくことが必要である。自治体調査によれば、47都道府県のうち、39自治体で警察OBの配置が行われており、こうした取組の一層の推進は、詐欺的投資勧誘の発生・拡大防止にも資するものである。
    • (注) 当委員会では、「地方消費者行政の持続的な展開とさらなる充実・強化に向けた支援策についての建議」(平成24年7月24日)において、都道府県における法執行の強化に向けて、都道府県の執行権限、執行体制(職員の増員・専任化、警察OBの活用等)、国や関係自治体との連携、国からの人的・技術的支援等の各面における充実・強化を図るべき旨を関係省庁に対し要請している。
  •  このため、都道府県における執行担当部局において、都道府県警察(OBを含む)との人的交流や、弁護士等の専門家との連携などの取組を一層推進し、これらを通じて、執行担当職員が、立入調査、事実認定、法解釈等の実務ノウハウを習得していくべきである。
  •  以上を踏まえ、消費者庁及び警察庁は、上記建議事項1-1に基づく措置を講ずべきである。

(建議事項1-2)

 消費者庁は、詐欺的投資勧誘による被害の発生・拡大の防止及びその回復を図るため、以下の制度整備に向けた措置を講ずること。

  • (1) 電話等を端緒とした不意打性の高い取引形態において、欺瞞的権利取引により、深刻な消費者被害が多数生じているとの実態に鑑み、特定商取引法における指定権利制の在り方又はこれと類似の制度の整備について検討を行うこと。
  • (2) 違法行為による財産の隠匿・散逸を防止するための制度の導入について検討を進めること。
  • (3) 消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の成立に努め、同法が成立した場合には、その円滑な運用を図ること。

(理由)
建議事項1-2(1)について

  •  詐欺的投資勧誘に係る消費者被害については、主として電話を端緒とする不意打性の高い取引形態により、実態が明らかとなった時点で架空の疑いが強いとの評価を受ける権利を、取引時点ではあたかも消費者に有利な投資商品であるかのように誤認させ、販売・勧誘を行う事案(以下「欺瞞的権利取引」という。)が多くみられる。このような取引のうち、詐欺罪等を構成する事案に対しては、同罪等による検挙を行うよう引き続き努めていく必要があると考えるが、事業者による欺罔行為の主観面等の立証の困難性などから、すべての事案に対し迅速にこれを行うことは実務上極めて困難である。このため、欺瞞的権利取引については、客観化された要件(行為規制)への形式的な違反行為をもって取締り等の対象とする法規制が必要となる。
  •  このような取引を規制するには、「商材」又は「取引類型」に着目することが考えられる。まず、その商材に着目すれば、欺瞞的権利取引の場合、その性質上多種多様な権利が商材として設定されることが想定され、あらかじめ規制対象となる権利を限定することは不可能である。よって、他法令で既に規制される権利を除外することは技術的に可能であるが、その他の権利については欺瞞的権利のみならず、適正な権利も含めて包括的な権利(権利の外形を伴うもの)を規制せざるを得ない。また、その取引類型に着目すれば、既述のとおり、電話勧誘販売、通信販売、訪問販売による被害が多い。すなわち、非劇場型勧誘の場合は、通常の電話勧誘販売等であり、劇場型勧誘の場合は、販売者が消費者へ勧誘資料を送付する手口が典型であることから、この部分は通信販売に該当する(注)。よって、これらの取引類型に限定して規制を課すことが適当である。
     以上より、電話勧誘販売、通信販売、訪問販売の取引類型により、消費者との間で行われる、他法令による規制の適用を受けない権利取引について、包括的に規制を課す必要がある。
    • (注) 劇場型勧誘を電話勧誘販売として規制するには、勧誘者と販売業者との一体性の立証が必要となる。
  •  具体的な規制手法としては、これらの権利取引を全面的に禁止することや、これらの取引を行う事業者に対し、登録・届出等の参入規制を設け、他の事業者による取引を禁止することも考えられる。しかし、先に述べたとおり、欺瞞的権利取引は、その性質上、多種多様な権利が商材として設定されることが想定され、明らかな違法商材を予め個々具体的に指定することは困難であることから、全面禁止や参入規制等を行う場合、欺瞞的権利にとどまらず適正な権利を含めた一定の包括的権利取引をその対象とせざるを得ない。このため、適正に権利取引を行う事業者にとって、過剰な規制を課し、その経済活動を著しく阻害することが懸念される。したがって、権利取引の全部又は一部を禁止するよりも、これらの販売・勧誘に行為規制を課すことを通じ、欺瞞的権利取引の排除を図ることが適当である。この検討に当たっては、特定商取引法における権利の取り扱いを見直すことも必要であると考えられる。
  •  当委員会では、「未公開株等投資詐欺被害対策について(提言)」(平成22年4月9日)において、「特定商取引法の適用対象を広げることを検討すべき」旨を、また「貴金属等の訪問買取り被害抑止と特定商取引法改正についての提言」(平成23年11月11日)において、「例えば、特定商取引法の規制の枠外とされている「権利」についても見直しを行い、(中略)迅速な対応をとることができる法的仕組みを整備していくことが考えられる」旨を指摘してきた。
  •  特定商取引法は、特定の取引類型において、一定のルールを遵守すれば取引を行うこと自体は法律上認容されることを前提として、その適正化を図るため勧誘行為等に規制を定めたものとされるが、詐欺的投資勧誘で扱われる権利の多くは架空の疑いが強いところ、そもそも架空取引の場合は、そのような契約の締結を勧誘することが違法であることから、これらの事案を対象とすることを想定して同法を改正することは適切でないとする考え方もある。しかし、欺瞞的権利取引は、消費者が取引を行う時点では、適正取引であるかのように偽装されており、あくまで事後的に架空の疑いが強いと評価されるものである。同法は、取引の適正化を図るため、契約成立前の勧誘行為等を規制対象とする法律であり、消費者保護の観点からは、事後的に有効性が否定される可能性を有する契約も含め、外形標準的に同法を適用させざるを得ないと考える。したがって、電話勧誘販売等の取引類型において、欺瞞的権利取引により、深刻な消費者被害が生じているという実態に鑑みれば、あくまで消費者トラブルの生じやすい取引類型に着目し、取引の実態が明らかとなった時点では、社会の安寧秩序や公序良俗に反するとの事後的に評価を受けるものであったとしても、個別業法による規制がない限り、原則として特定商取引法の適用対象とすることで、それらの市場からの排除を通じて、取引類型全体から見た取引の適正化を図る、との考え方に転換を図ることが求められる。
     仮に、考え方の転換を図ることができない場合、同法に類する新たな制度の整備を検討することも考えられる
  •  確かに、消費者安全法により、財産被害の発生・拡大防止を目的として、消費者庁が事業者に対し勧告・命令等を行うことで、すき間事案への対処が可能にはなった。しかし、同法は、(i)他の法令による救済が期待されない重大事故に対象が限定され、(ii)予め事業者に一定の行為規制を一律に課すものではない、(iii)クーリング・オフ、契約の意思表示の取消し等の民事ルールが適用されるものではない、などの理由により、事業者による勧誘行為等の適正化や消費者の被害回復の観点から、個別事案について、迅速かつ効果的な措置を講ずることが困難な事例も考えられる。したがって、この点からも、特定商取引法における指定権利制の在り方の見直し又は新たな制度の整備を検討する必要がある。
  •  詐欺的投資勧誘に係る事案については、取引の後、即座に事業者が所在不明になるものが少なくないことから、行政による調査・取締や民事救済が困難な事例も多いと見られるが、特定商取引法では契約時の書面不交付、虚偽・不備記載、不実告知等、客観化された要件のもとで不適切な勧誘行為に対して直罰規定を設けており、そういった事例についても、警察による取締りも併せて行われることから、これによる速やかな被害の拡大防止や当該行為に対する抑止効果も期待される。
  •  したがって、特定商取引法の適用範囲に権利の外形を伴うものを含める等指定権利制の在り方を見直すこと、又はこれと類似の制度を整備することは有効な対応策であり、これについて検討が行われるべきであると考える。
  •  なお、第125回消費者委員会(平成25年7月9日)において、特定商取引法の指定権利制の廃止に関する審議を行っており、本件に関する当委員会、消費者庁の詳細な見解は、それぞれ別紙1、別紙2のとおりである。

建議事項1-2(2)について

  •  消費者の財産被害を回復させるためには、その相手方である事業者が違法に得た財産を隠匿・散逸させない仕組みづくりが重要である(注1)。消費者の財産被害の回復については、民事訴訟を提起することにより実現を図ることも考えられるが、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(平成19年法律第133号。以下「振り込め詐欺救済法」という。)により、迅速な被害回復を図ることができる。振り込め詐欺救済法では、詐欺その他の人の財産を害する罪の犯罪行為であって、財産を得る方法としてその被害を受けた者からの預金口座等への振込みが利用されたものを対象に、捜査機関等(注2)からの情報提供等により、金融機関が犯罪利用預金口座等の凍結・失権等の措置を講じ、被害者に被害回復分配金を支払うことができる(注3)。
    • (注1) 消費者庁及び消費者委員会設置法附則第6項において、「加害者の財産の隠匿又は散逸の防止に関する制度を含め多数の消費者に被害を生じさせた者の不当な収益をはく奪し、被害者を救済するための制度について検討を加え、必要な措置を講ずるもの」とされ、また同法案に対する参議院附帯決議第31項において、「加害者の財産の隠匿又は散逸の防止に関する制度を含め多数の消費者に被害を生じさせた者の不当な収益をはく奪し、被害を救済するための制度の検討に当たっては、いわゆる父権訴訟、適格消費者団体による損害賠償等団体訴訟制度、課徴金制度等の活用を含めた幅広い検討を行うこと」とされている。
    • (注2) 一般社団法人全国銀行協会による事務取扱手続では、警察、弁護士会、金融庁及び消費生活センター等公的機関並びに弁護士及び認定司法書士を指すとされる。
    • (注3) 消費生活侵害事犯対策ワーキングチームにより「金融機関に対する犯罪利用預金口座等に関する情報提供の迅速かつ確実な実施について」(平成22年6月18日ワーキングチーム申合せ)が取りまとめられている。
  •  犯罪行為により得られた財産の隠匿・散逸防止を図るため、振り込め詐欺救済法を十分に活用することは当然であるが、同法に基づく措置には、保全の包括性等において限界もある。このため、財産の隠匿・散逸防止を図るための新たな制度について検討を行う必要がある。例えば、破産手続は、裁判所が破産手続開始決定をすることにより、破産者たる事業者が自由にその財産の処分を行えなくなること及び預貯金に限らない全ての財産の包括的な保全策であることから、財産の隠匿・散逸防止の観点から有効とも考えられる。
  •  現在、消費者庁において、同庁による破産手続開始申立て制度や、行政による保全命令申立て制度、被害金額返還命令制度等の加害者財産の隠匿・散逸防止策の検討が行われているところであり(注)、このような制度は、詐欺的投資勧誘による消費者の財産被害の回復に資するものとなり得ることから、引き続きこの検討が進められるべきと考える。
    • (注) 消費者庁「消費者の財産被害に係る行政手法研究会」において、財産の隠匿・散逸防止策等の検討が行われ、平成25年6月に「行政による経済的不利益賦課制度及び財産の隠匿・散逸防止策について」が取りまとめられている。

建議事項1-2(3)について

  •  消費者の財産被害については、同種被害が多数発生する傾向にある一方で、消費者と事業者との間に情報の質・量及び交渉力に格差があること、また、現行の訴訟制度を利用するには相応の費用・労力を要することから、個々の消費者が個別に訴えを提起し、被害回復を図ることは困難と考えられ、消費者の被害回復の実効性を確保するための新たな訴訟制度が必要である(注)。
    • (注) 当委員会の集団的消費者被害救済制度専門調査会では、平成22~23年にかけて、集団的な消費者被害の救済に関する制度の在り方について調査審議を行い、制度の骨格を同専門調査会報告書(平成23年8月)に取りまとめている。さらに、当委員会より、速やかな立法化作業を進めること等を内容とする「集団的消費者被害救済制度の今後の検討に向けての意見」(平成23年8月26日)を表明している。
  •  この新たな訴訟制度として、消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案が、第183回国会に上程されたところであり(注)、本訴訟制度の創設は、詐欺的投資勧誘に係る消費者被害の回復にも一定の効果を有すると考えられることから、政府において同法案の成立に努め、同法案が成立した場合には、その円滑な運用が図られるべきと考える。
    • (注) 消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案では、
      (i) 特定適格消費者団体が訴えを起こし、多数の消費者と事業者との間に共通する争点を確認する。
      (ii) 当該団体が勝訴した場合には、当該団体の通知・公告により、被害を受けた消費者が手続へ加入する。加入者が集まった後に、当該団体が請求金額等を取りまとめ裁判所への提出を行い、事業者による金額の認否等の手続を経て、消費者への返還金額が確定する。
      との二段階型の訴訟手続が設けられている。
  •  以上を踏まえ、消費者庁は、上記建議事項1-2に基づく措置を講ずべきである。

2.詐欺的投資勧誘に用いられる犯行ツールに関する取組の強化

(建議事項2)

 警察庁、金融庁、総務省、法務省、経済産業省及び国土交通省は、犯行ツール対策を通じた詐欺的投資勧誘の抑止を図るため、以下の措置を講ずること。

  • (1) 総務省は、携帯電話不正利用防止法に基づき、携帯音声通信事業者、媒介業者及び貸与業者に対し、本人確認義務等の周知徹底を図り、その履行の確保に努めるとともに、違反が認められる携帯音声通信事業者及び媒介業者に対し是正命令等を行うこと。また、警察庁は、同法に違反する貸与業者等の検挙を積極的に推進すること。
  • (2) 警察庁、金融庁、経済産業省及び総務省は、犯罪収益移転防止法に基づき、金融機関、郵便物受取サービス業者、電話受付代行業者及び電話転送サービス事業者に対し、取引時確認、疑わしい取引の届出等の義務について周知徹底を図り、その履行の確保に努めるとともに、違反が認められる事業者に対し是正命令等を行うこと。
  • (3) 総務省及び国土交通省は、詐欺的投資勧誘に係る事案において、郵便や宅配便等による送金の防止を図るため、それらの運送事業者に対し引き続き分かりやすい注意喚起を積極的に行うよう、協力を要請すること。
  • (4) 法務省は、代表権を有しない取締役等の登記の申請に当たり、他人や実在しない者の名義が冒用される事例の把握に努め、その結果を踏まえ、登記事項の真正を担保するための所要の措置の要否を含め、対応策について検討すること。

(理由)
建議事項2(1)及び2(2)について

  •  詐欺的投資勧誘においては、その犯行ツール(注)として、他人名義の携帯電話(レンタル携帯電話を含む)、金融機関の預貯金口座等を用いた送金、郵便物受取サービス、電話受付代行サービス、電話転送サービス等が用いられている。
    • (注) 「犯行ツール」とは、犯罪を助長し、又は容易にする手段(手段そのものが合法であっても、犯罪に悪用されている状態にあればこれを含む。)のうち、犯罪に関わる通信・運搬や、犯罪収益の集金・送金に用いられるものをいう。
  •  携帯電話については、携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(平成17年法律第31号。以下「携帯電話不正利用防止法」という。)に基づき、携帯音声通信事業者、媒介業者及び貸与業者に対して、契約時の本人確認、本人確認記録の作成・保存等を義務付けている。
  •  また、預貯金口座、郵便物受取サービス、電話受付代行サービス、電話転送サービス等については、犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号。以下「犯罪収益移転防止法」という。)(注)に基づき、事業者に対して、一定の取引時における取引時確認、疑わしい取引の届出等を義務付けている。
    • (注) 犯罪収益移転防止法は平成23年4月に、(i) 取引目的、職業・事業内容、実質的支配者の本人特定事項等の確認事項への追加、(ii) ハイリスク取引の類型の追加、(iii) 電話転送サービス事業者の特定事業者への追加、(iv) 本人特定事項の虚偽申告、預貯金通帳の不正譲渡等に係る罰則の強化、等を内容とする改正が行われ、規制の強化が図られている(平成25年4月全面施行)。なお、「ハイリスク取引」とは、マネー・ローンダリングのリスクの高い取引であり、具体的には、なりすましの疑いがある取引又は本人特定事項を偽っていた疑いがある顧客との取引や、特定国等に居住・所在している顧客との取引をいう。
  •  このように、詐欺的投資勧誘に用いられる主要な犯行ツールの中には、本人確認等の規制の対象とされているものもあるが、必ずしもその遵守が徹底されていないとの指摘もある(注)。
     したがって、近年の詐欺的投資勧誘による深刻な消費者被害の実態に鑑み、携帯電話不正利用防止法及び犯罪収益移転防止法による事業者の義務について周知徹底を図り、その履行の確保に努めることが求められる。さらに、違反が疑われる事業者に対して、報告徴収や立入検査を実施し、必要に応じて是正命令を発動するとともに、検挙を積極的に推進するといった措置を講ずることが求められる。
     なお、今般強化が図られた上述の犯罪収益移転防止法の規制についても、遵守が徹底されることも重要である。
    • (注) 警察庁「平成24年中における生活経済事犯の検挙状況等について」(平成25年2月)によれば、同庁が、平成24年中にヤミ金融事犯に悪用され、各都道府県警察において解約要請を行ったレンタル携帯電話2,763台のうち、追跡調査が可能な91台を選定し、契約実態について調査を行ったところ、本人確認記録として保管されていた自動車運転免許証の写しに偽変造が認められたものが39台(42.9%)、また、携帯電話端末の受け渡し方法が手交であったもの63台のうち、契約・手交場所が路上等店舗でなかったものが26台(41.3%)、さらに、契約・手交場所が店頭であったもの15台のうち、法で定められた本人確認を履行しなかったものが5台(33.3%)あり、必ずしも契約時本人確認等犯罪悪用防止措置を十分に行っていないレンタル携帯電話事業者が存在することが判明している。
       また、同報告書によれば、利殖勧誘事犯を行っている業者(50業者)と利用契約が確認できたバーチャルオフィス事業者(47店舗)のうち、契約時に本人確認をしていないものが4店舗(8.5%)、法人契約を締結していた37店舗のうち、15店舗(40.5%)が法人自体の本人確認を行っていなかった。この47店舗のうち、「犯罪に利用されていると思ったことがある」と答えたものが23店舗(48.9%)、うち「警察に届けたことがある」と答えたものは7店舗(30.4%)であった。(ここでの「バーチャルオフィス」とは、犯罪収益移転防止法第2条第2項に規定する郵便物受取サービス、電話受付代行サービス、電話転送サービス等、専用スペースを持たずに対外的な事務所機能を持つことができるサービスを提供するもの、及びいわゆるレンタルオフィスをいう。)
  •  また、携帯電話については、携帯電話不正利用防止法により、上述の本人確認等が義務付けられているほか、携帯音声通信役務が犯罪に利用されたと認めるに足る相当の理由がある場合には、警察署長からの求めを受けて、携帯音声通信事業者が契約者の確認を行うことができ、当該契約者が本人確認に応じない場合には、携帯音声通信事業者は役務の提供を拒むことができる。この警察署長からの求めによる契約者確認は、毎年その件数が増加しており、その手続きの迅速性も向上している。携帯電話が犯罪に利用された場合に、当該携帯電話を速やかに使用不能とすることは、被害の拡大防止の観点から有効と考えられることから、事業者の協力のもと、引き続き、同制度の迅速な運用が図られることも重要である。

建議事項2(3)について

  •  振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結や金融機関の窓口における注意喚起等により、詐欺等の送金手段として悪用される預貯金口座等への対策が強化されるなかで、現金を書籍等と詐称し郵便や宅配便等を用いて送付するよう被害者に指示する手口も多数認められている(注)。
    • (注) 国家公安委員会・警察庁「総合評価書 振り込め詐欺対策の推進」(平成24年3月)において、犯行グループが口座を入手しにくくなったことに伴い、被害者から現金やキャッシュカードを直接受け取る手口に移行している状況がみられるとの指摘がなされている。
       また、警察庁によれば、平成24年中のオレオレ詐欺のうち、交付形態別では、現金受取型が約5割、振込型が約4割とされる(警察庁ホームページ)。
  •  こうした被害を水際で阻止するためには、郵便、宅配便及びメール便を取り扱う運送事業者(以下「宅配便等運送事業者」という。)への協力を要請し(注1)、当該事業者の営業所やコンビニエンスストア等の取扱窓口などにおいて、それらの手段を用いた現金の送付ができない旨や、それらを送金手段とした詐欺被害が発生している旨などを、声掛けや、分かりやすいポスターの掲示、封筒への記入等を通じて、利用者に注意喚起することが有効と考えられる。
     これまでにも宅配便等運送事業者においては、係る被害を防止する観点から、様々な取組が行われているが、当該事業者に対して引き続き係る被害防止のための取組を行うよう、協力を要請することが必要である。
     なお、こうした「水際作戦」としては、金融機関の窓口における顧客への声掛けが行われており、被害阻止率が上昇傾向にあるなど(注2)、その有効性が認められているところである。
    • (注1) 「宅配便」とは、一般貨物自動車運送事業の特別積合せ貨物運送又はこれに準ずる貨物の運送及び利用運送事業の鉄道貨物運送、内航海運、貨物自動車運送、航空貨物運送のいずれか又はこれらを組み合わせて利用する運送であって、重量30kg以下の一口一個の貨物を特別な名称を付して運送するものをいう。
       「メール便」とは、書籍、雑誌、商品目録等比較的軽量な荷物を荷送人から引き受け、それらを荷受人の郵便受箱等に投函することにより運送行為を終了する運送サービスであって、一口一冊の貨物を特別な名称を付して運送するものをいう。
    • (注2) 国家公安委員会・警察庁「総合評価書 振り込め詐欺対策の推進」(平成24年3月)によれば、平成23年下半期における金融機関職員等による顧客に対する声掛けによる被害阻止件数は928件であり、20年上半期に比べて約600件減少しているが、認知件数(既遂)と被害阻止件数(潜在的な認知件数)の合計件数に占める被害阻止件数の割合(被害阻止率)については、概ね継続して増加しており、23年下半期は約22.5%で、20年上半期に比べて11.0ポイント増加した、とのことである。

建議事項2(4)について

  •  会社法(平成17年法律第86号)では、代表取締役については、その氏名及び住所を、代表権を有しない取締役等については、その氏名を登記することとされる。このうち、代表取締役については、実在しない者や他人の氏名を冒用した登記を防止するため、代表取締役が就任を承諾したことを証する書面の真正を担保する措置として、その書面の印鑑について市区町村長が作成した印鑑登録証明書の添付を義務付けている。
  •  しかしながら、代表権を有しない取締役等については、実在しない者や他人の氏名を冒用した商業登記が行われている可能性があるとの指摘がなされている(注)。このため、代表権を有しない取締役等の登記の申請に当たり、他人や実在しない者の名義が冒用される事例の把握に努め、その結果を踏まえ、登記事項の真正を担保するための所要の措置の要否を含め、対応策について検討する必要がある。
    • (注) 第120回消費者委員会(平成25年5月14日)において、日本弁護士連合会より示された「商業・法人登記制度及びレンタル携帯電話等の悪用に関するアンケート報告書」によれば、代表権を有しない取締役、監査役等に示談交渉や訴訟提起をしたが、就任した事実がないなどとして、争った事例があるとの回答が31件中9件、代表権を有しない取締役、監査役等を調査したところ、実在しない又は実在が疑わしい事例があるとの回答が29件中5件あった。
  •  代表権を有しない取締役等の真正を担保することは、詐欺的投資勧誘の特徴の一つである事業者の追跡・捕捉の困難性を改善し、役員等の第三者に対する損害賠償責任を追及することなどを通じて、詐欺的投資勧誘の抑止とその被害回復にも資するものと考えられる。
  •  以上を踏まえ、警察庁、金融庁、総務省、法務省、経済産業省及び国土交通省は、上記建議事項2に基づく措置を講ずべきである。

3.詐欺的投資勧誘に関する消費者への注意喚起及び高齢者の見守りの強化

(建議事項3)

 消費者庁、警察庁、金融庁及び厚生労働省は、消費者自らによる詐欺的投資勧誘被害の未然防止を図るため、以下の措置を講ずること。

  • (1) 消費者庁、警察庁及び金融庁は、テレビ等の媒体を通じ、詐欺的投資勧誘の手口、被害回復が困難な実態等に関する情報を提供することにより、高齢者等への注意喚起を引き続き積極的に行うこと。
  • (2) 消費者庁は、消費者行政部局に加えて、地域包括支援センター、介護支援専門員(ケアマネージャー)、民生委員等の高齢者と身近に接する者や、都道府県警察、消費者団体、事業者団体等の多様な主体が、高齢者への注意喚起・見守りを地域において密接に連携して行う体制の普及に努めること。
  • (3) 消費者庁及び警察庁は、都道府県及び都道府県警察において行われている詐欺的投資勧誘や利殖勧誘事犯に係る消費者への注意喚起・高齢者の見守りについて、その効果的・先駆的事例を取りまとめ、他の都道府県及び都道府県警察へ提供すること。
  • (4) 高齢者の二次被害の防止を図るため、消費者庁は、高齢者宅に通話録音装置を配置し、情報・証拠の収集を図る取組を進め、その全国展開を検討すること、また、被害者層に対する効果的な被害防止対策として、警察庁は、利殖勧誘事犯等に係る犯行グループから入手した名簿掲載者に対し、積極的な注意喚起を行うこと。
  • (5) (i) 厚生労働省は、高齢者の権利擁護の推進を図る観点から、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者等の財産管理や契約を支援するため、市民後見人の育成・活用を始めとする成年後見制度に係る地方自治体の取組への助成制度(市民後見推進事業)の周知や取組事例の情報提供等を積極的に行うこと。
    (ii) 厚生労働省は、精神上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の日常的金銭管理等を支援するため、地方自治体への助成等を行うことにより、日常生活自立支援事業の普及等に努めること。

(理由)
建議事項3(1)について

  •  詐欺的投資勧誘の特徴的な手口として、被害発生後、即座に事業者の所在が不明となる点が挙げられることから、消費者が一度こうした被害に遭遇した場合、実情では、その回復を図ることは困難と言わざるを得ない。このため、消費者がこの種のトラブルに巻き込まれないよう、予め自らその身を守ることも必要となる。
  •  また、詐欺的投資勧誘の被害者の多くは高齢者であるが、高齢者の中には、判断能力の低下や社会との接点の希薄化により、容易に詐欺的勧誘によるトラブルに巻き込まれる者もみられ、さらには、自らが被害にあったとの認識がないケースも認められる。このような高齢者が、独力で詐欺的投資勧誘に対処するには限界もあることから、高齢者の周囲の者が、高齢者の見守りを行い、こうしたトラブルに対して、高齢者本人への適切な助言を行う、また、高齢者本人に代わってトラブルに対処するなどの取組も必要となる。
  •  高齢者を含む消費者自身や高齢者の周囲の者が、詐欺的投資勧誘に迅速かつ的確に対処するためには、劇場型の勧誘、二次被害の発生、商材の多様化といった刻々と巧妙化する手口や、一度被害にあった場合にはその回復が極めて困難であるという実態等の情報が、消費者に速やかに提供され、それらが十分に理解される必要がある。このため、詐欺的投資勧誘の被害者の多くが高齢者であることに鑑み、特にテレビ等の媒体を活用し、消費者に対する注意喚起を引き続き行うことが必要である。

建議事項3(2)について

  •  上述のとおり、詐欺的投資勧誘等の悪質商法から高齢者を保護するためには、周囲の者による高齢者の見守りも必要となるが、この見守りが様々な地域主体の参加を得て、地域一体となって行われることは、高齢者被害の発生・拡大防止に効果的と考えられる。
  •  消費者庁の調査によれば、消費者が何らかの被害に遭った場合でも「誰にも相談しなかった」者が約4割に及んでおり、その割合は年代が上がるにつれて上昇している。さらに、誰にも相談しなかった理由として、約2割の者が「どこに相談すればよいか分からなかった」又は「相談する適切な相手がいなかった」と回答している。このため、高齢者の周囲の様々な主体が、積極的に高齢者被害の掘り起こしに努めることが重要である(注)。
    • (注) 消費者庁「消費者問題及び消費者政策に関する報告(2009~2011年度)」(平成24年8月)による。
  •  自治体調査によれば、地方自治体における見守りネットワークの構築について、47都道府県・20政令市のうち、27自治体が既に実施しており、14自治体が今後の実施を具体的に検討、23自治体が具体的な実施予定はない、3自治体が過去実施していたが今は実施していないと回答している。
  •  このため、地方自治体の消費者政策部局にとどまらず(注1)、地域包括支援センター、介護支援専門員(ケアマネージャー)、民生委員等の高齢者と身近に接する者や、都道府県警察、消費者団体、事業者団体等の多様な主体が、地域において連携を図り、消費者教育の推進に関する法律(平成24年法律第61号)に定められた消費者教育推進地域協議会の場を活用するなどして高齢者への注意喚起・見守りを行う体制の一層の普及が求められる(注2)。
    • (注1) 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(平成17年法律第124号)では、市町村に対して、養護者、親族又は養介護施設従事者等以外の第三者による財産上の不当取引の被害に関する相談の受付、関係部局・機関の紹介を義務付けている。
    • (注2) 高齢者及び障害者の消費者トラブルに関して情報を共有するとともに、高齢者及び障害者の周りの者に対して悪質商法の新たな手口や対処の方法等の情報提供等を行う仕組みとして、平成19年より、消費者庁を中心に関係省庁や関係団体等による「高齢消費者・障害消費者見守りネットワーク連絡協議会」が開催されている。

建議事項3(3)について

  •  地方自治体や都道府県警察においては、詐欺的投資勧誘等の悪質商法に対する消費者への注意喚起や高齢者の見守りに関し、これまでに様々な取組が行われているところであり(注)、それらの効果的・先駆的事例を取りまとめ、他の自治体等へ周知することも、被害防止に有効と考えられる。
    • (注)  地方自治体においては、例えば、京都府では、くらしの安心推進員による「くらしの安心訪問活動」、被害に遭わないための地域見守り・高齢者啓発活動、相談窓口への情報提供、地域のくらしの安心・安全ネットワーク活動への協力を実施し、安心推進員の養成にも注力している。また、京都府ホームページへの「消費生活[高齢者のための府政ガイド]」の開設、消費生活相談窓口に高齢者専用ダイヤル「高齢者消費生活ホットライン」の設置等の取組が行われている。埼玉県では、高齢者被害防止に向けて、地域包括支援センター、民生委員、自治会等の連携を図るための「埼玉県要援護高齢者等支援ネットワーク」構築や、消費者被害防止サポーターによる高齢者見守りの実施、埼玉県消費生活支援センターによる「埼玉県版 高齢者の消費者トラブル見守りガイドブック」の配布等の取組が行われている。
       複数の市町村において、悪質商法等の被害を防止するための出前講座が開催されおり、例えば、盛岡市消費生活センターでは、消費生活相談員を講師として町内会等に派遣し、未公開株、ファンド型投資商品、外国通貨両替等の悪質な手口を実演紹介する出前講座が実施されている。
       また、複数の都道府県警察において、振り込め詐欺や悪質商法の被害を防止するため、県民等の住宅に電話をかけ、振り込め詐欺等の手口を説明し、被害に遭わないように注意を呼びかけるコールセンターが開設されている。

建議事項3(4)について

  •  詐欺的投資勧誘においては、過去に被害にあった消費者を再び狙った二次被害が多数発生している。この手口は、被害者の損害を更に拡大させ、その生活基盤に甚大な影響を及ぼしかねない。このため、二次被害の防止が強く求められる。
  •  二次被害を防止するための措置として、高齢者宅に通話録音装置を配置し、情報・証拠の収集を図るなどの取組(注1)が進められており、また、被害者に対する効果的な被害防止策として、犯行グループから入手した名簿掲載者に対し、注意喚起を行うことなどの取組が進められているところであり、こうした試みが一層推進されるべきである。また、それらの実施に当たっては、地域の現場において、消費生活センター等の消費者行政部局と都道府県警察の密接な連携を図ることも必要である(注2)。
    • (注1) 消費者庁は、平成25年度予算において「高齢者の二次被害防止モデル事業(悪質勧誘電話撃退モデル事業)」を計上している。
    • (注2) 犯行グループから入手した名簿掲載者に対する注意喚起の実施に伴い、その注意喚起に不審を抱いた高齢者から消費生活センターに問合せが寄せられるとの指摘がある。

建議事項3(5)について

  •  先にも述べたとおり、詐欺的投資勧誘による被害をみると、判断能力が低下した高齢者が狙われた例も多い。このため、成年後見制度を活用し、後見人・保佐人・補助人による財産管理や契約の代理・同意・取消しを通じて、詐欺的投資勧誘等の悪質商法から高齢者を保護していくことも必要と考えられる(注1)。認知症高齢者数は平成24年時点で305万人、これが平成37年(2025年)には470万人に達すると推計される一方、後見等の開始の審判による登記件数は平成12~23年の累計で21.2万件、任意後見契約締結による登記件数は同5.8万件であり、成年後見制度の一層の普及促進が図られるべきである(注2)。また、後見・保佐・補助の別に開始件数をみると、平成12年度~23年までの累計で、後見が19.4万件、保佐が2.2万件、補助が0.9万件であり、特に保佐及び補助については、一層の利用の促進が望まれる(注3)。
    • (注1) 成年後見制度は、法定後見制度と任意後見制度に大別され、このうち法定後見制度は、後見(精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者)、保佐(精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者)、補助(精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者)の3つに分かれる。
    • (注2) 厚生労働省「認知症高齢者数について」(平成24年8月24日)、法務省「登記統計」による。ここでの「認知症高齢者」は、認知症高齢者の日常生活自立度II(日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意すれば自立できる状態)以上をいう。
    • (注3) 最高裁判所「成年後見関係事件の概況」による。後見・保佐・補助の開始件数は、それぞれ認容で終局した件数を平成12年度から平成23暦年まで累計して算出した。なお、数値が平成19年度までは年度値、平成20年以降は暦年値であるため、平成20年1~3月期が二重計算となっている。
  •  現在、市町村においては、成年後見制度の利用促進のため、国からの交付金も得つつ、同制度の利用に係る経費への助成等が行われている(成年後見制度利用支援事業)。また、後見人等については、今後、親族による後見等の困難な高齢者が増加すると見込まれることなどから、市民後見人の育成・活用を図ることが不可欠であるが、平成23年の後見人等のうち市民後見人が選任された件数は92件、全体の0.3%となっている(注1)。このため、国からの助成も得て、市町村においては、市民後見人の養成等の取組(市民後見推進事業)が進められており、都道府県においても、こうした取組への支援(高齢者権利擁護等推進事業)が実施されているところである(注2)。
    • (注1) 最高裁判所「成年後見関係事件の概況」による。
    • (注2) 平成23年6月に、老人福祉法(昭和38年法律第133号)が改正され、(i) 市町村の努力義務として、市町村長による後見等の審判請求が円滑に実施されるよう、後見等に係る体制の整備(市民後見人の育成・活用等)を行うこと、(ii) 都道府県の努力義務として、市町村の後見等に係る体制の整備の実施に関し助言その他の援助を行うこと、が規定された(平成24年4月施行)。
  •  詐欺的投資勧誘等の悪質商法の被害防止のためには、これらの事業の一層の利用促進を図り、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者等の財産管理や契約を支援することも有効と考える。このため、市民後見人の育成・活用を始めとする地方自治体の取組に対し、国による助成制度の周知や取組事例の情報提供等を積極的に行う必要がある。
  •  また、判断能力の不十分な高齢者等の日常的金銭管理を援助する仕組みとしては、社会福祉法(昭和26年法律第45号)に基づく、日常生活自立支援事業がある。同事業は、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な者に対し、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行うことにより、地域において自立した生活が送れるよう支援を行うものであり、都道府県社会福祉協議会等により、当該利用者に対し、預金の払い戻し、預金の解約、預金の預け入れの手続等の日常的金銭管理などの援助が行われている(注1)。同事業の実利用者数は、平成23年度末時点で3.8万人であり(注2)、また、地方自治体間の実施状況に大きな差がみられることから、同事業の一層の利用促進を図り、認知症高齢者等の日常的金銭管理等を行うことも、詐欺的投資勧誘等の悪質商法の被害防止に有効と考える。このため、地方自治体への助成等を通じ、引き続き同事業の普及等が図られるべきである。
    • (注1) 社会福祉法では、都道府県社会福祉協議会は、(i) 福祉サービス利用援助事業を行う市町村社会福祉協議会その他の者と協力して都道府県の区域内においてあまねく福祉サービス利用援助事業が実施されるために必要な事業、(ii) 当該事業に従事する者の資質の向上のための事業、(iii) 福祉サービス利用援助事業に関する普及・啓発、を行うものとされる。なお、福祉サービス利用援助事業とは、精神上の理由により日常生活を営むのに支障がある者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスの利用に関し相談に応じ、及び助言を行い、並びに福祉サービスの提供を受けるために必要な手続又は福祉サービスの利用に要する費用の支払に関する便宜を供与することその他の福祉サービスの適切な利用のための一連の援助を一体的に行う事業をいう。
    • (注2) 社会福祉法人全国社会福祉協議会「『日常生活自立支援事業』実施状況」による。
  •  以上を踏まえ、消費者庁、警察庁、金融庁及び厚生労働省は、上記建議事項3に基づく措置を講ずべきである。
  •  高齢化が進む我が国の社会において、事業者が高齢者等の消費者の特性(知識、経験、財産の状況等)に応じた、いわゆる適合性原則に基づく勧誘を行う意義は大きい。先に述べたとおり、詐欺的投資勧誘の多くが、高齢者の資産を狙って行われており、老後の生活基盤が喪失するほどの深刻な財産被害も多数生じている。また、そこで扱われる商材は、複雑・多様な権利等の投資商品であり、これらを購入する契約をした高齢被害者の多くが、それらの内容をほとんど理解していないとの指摘もなされている。従って、適合性原則が示す事業者の行為規範には、問題解決への大きな期待が課せられている。
  •  適合性原則は、主に業界の自主ルールや事業者の勧誘行為に対する行政規制として出発し、今日では不法行為に対する損害賠償請求を基礎づけるものとして認められている。さらに、消費者基本法(昭和43年法律第78号)では、事業者の責務として、消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮することを求めている。このため、詐欺的投資勧誘による高齢者の深刻な財産被害の救済を図るためには、高齢者が特定の投資商品の売買契約を締結し、それが一定の要件を満たす場合には、当該契約の解除・取消し等を行えるなど、消費者基本法における適合性原則の法意に照らした民事ルールの在り方について検討を行うことも、今後の課題となろう。本課題に関しては、当委員会として、引き続き以上の問題意識から十分な留意を払ってまいりたい。



(別紙1)

特定商取引法の指定権利制の廃止に関する論点

平成25年7月
消費者委員会


1.特定商取引法の権利の概念について
  •  そもそも「権利」概念は、それ自体が曖昧な外延を持つものであって、一般的な定義に馴染むものではなく、それぞれの実定法規において、法的に保護されるべき利益あるいは法的地位として確定されれば足りるものである。特定商取引法における権利とは、物品・役務の利用・提供及び金銭の提供といった一定の利益を享受する法的地位であって、売買契約の目的とされるもの(一身専属性のない財産権)であると考えられる。

2.特定商取引法の法目的に関する理解について
  •  特定商取引法の法目的を考える前提として、取引を次の3類型に大別して検討する。
    すなわち、
    • (A) 麻薬取引、殺人契約、人身売買等のように、取引時点において、当該取引行為が、一見して明白な犯罪行為あるいは公序良俗違反であると評価されるもの、
    • (B) 取引時点において、当該取引行為が、外形上は適正と見られる可能性があるが、後日実態が明らかとなった時点では、消費者があたかも有利な取引であるかのように誤認させられていたと評価されるもの、
    • (C) 取引時点において、当該取引行為が、外形上は適正と見られる可能性があり、後日実態が明らかとなった時点でもなお適正と評価されるもの、
    である。
     さらに、(B)については、後日実態が明らかとなった時点において、
    (b-1) 契約の目的物が「架空」の疑いが強いと評価されるもの(欺瞞的権利取引等)、
    (b-2) 契約の目的物は実在するが、消費者があたかも事実とは異なる「有利な取引」であるかのように誤認したと評価されるもの、
    に別けることができる。

     以上のうち、(b-1)と(b-2)の区分は、事後的評価によって「偽装の度合い」の濃淡の差が明らかとなるという相対的なものに過ぎないことから、(b-2)タイプについてはいうまでもなく、(b-1)を含む(B)のような取引全体に特定商取引法を適用することにより、「特定商取引を公正にし、及び購入者等が受けることのある損害の防止を図る」(1条目的規定参照)べきものと考える。
  • 特定商取引法の法目的については、
    •  個別の契約(事業者が複数の消費者と締結する複数の同種契約。以下同じ。)の是正を指示し、適正化を確保することにより、(B)のような取引を市場から排除することを通じて、当該事業者による個別の契約ごとではなく、各「取引類型」全体から見て、「購入者等の利益を保護し、あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑に」(1条目的規定参照)するとの目的が達成されると考えるべきではないか。
    •  または、仮に同法が、当該事業者による個別の契約についてのみ、「購入者等の利益を保護し、あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑に」(1条目的規定参照)するものだとした場合であっても、(B)と(C)のいずれに該当するかは事前に明らかではなく、(b-2)は言うまでもなく、(b-1)を含む(B)すべてについて同法の適用対象とすべきではないか。また、(b-1)に当たる商品等の取引が存在し得るところ、現行法においても、そのような架空の商品等の販売、役務の有償提供は同法の適用対象とされているのではないか。
  •  これらの解釈を行った場合に、どのような問題があるのか。また、(b-1)は特定商取引法の適用外であるとのことであるが、特定商取引において、どのような契約が同法の適用外とされるものであるのか。例えば、契約の有効要件を満たすもののみが同法の適用対象となるのか(適法性、可能性等を予め満たす必要があるのか)。仮に、絶対的無効とされる契約のみが適用外であるとする場合であっても、そのような契約も、一旦は成立し、裁判等の結果、無効と判断されるものも少なくない。一方、特定商取引法は取引の適正化を図るため、契約成立前の勧誘行為についても規制の対象としている法律である。したがって、消費者保護の観点から、事後的に有効性が否定される可能性を有するものも含め、むしろ、外形標準的に同法を適用することにより、勧誘行為の適正化を図るべきではないか。
  •  また、こうした詐欺的集団は、特定商取引法の販売業者等には当たらず、大阪高裁の判例(大阪高判平10・1・29)においては、「(豊田商事が)破産する直前まで(略)契約内容に従って顧客に賃借料を支払い、金地金等を償還せざるを得なくなった顧客に対してはこれに応じていたのである」ことをもって、豊田商事が独禁法や景表法上の規制対象である「事業者」であることは否定できないとの判断を下しており、「当初から専ら意図的に顧客を欺罔して金員を騙取しようとして」いる者が、両法の「事業者」にあたると判断したものではないとの理解が見られる。しかし、そもそも、金賃貸借から一定の運用益が発生することはあり得ず、このような架空の便益を対象とする商材を「純金ファミリー証券」として交付していたことや、欺瞞性を隠蔽する粉飾行為として、一定の「配当金」なるものを一部顧客に交付していたことが、豊田商事の「事業者」該当性を基礎づけるものでないことは、明らかである。かかる活動を、外形的に適正な事業活動と誤信した者こそが被害者となっているのではないのか。

3.平成20年改正における商品・役務の指定制の廃止の意義について
  •  特定商取引法の平成20年改正において、商品・役務の指定制が廃止されたが、それにより、結果的に公序良俗に反する商品・役務についても、概念上は同法の規制対象とされたと考えられるのではないか。当時の立法過程においては、本論点について十分な検討が加えられてはいないと承知しているが、このような見解が積極的に否定されているわけでもないとすると、この点に対して、どのように考えるのか。
  • 平成20年改正において、商品・役務の指定制が廃止されたが、権利を装うことによって役務取引規制の脱法を防ぐために権利取引を規制したのであるとすれば、商品・役務の指定制が廃止されたことにより、権利のみに指定制を維持する意味は、事実上失われたと言えるのではないか。さらに、同改正において、適用除外として明示された商品・役務を除く全ての商品・役務が概念上特定商取引法に取り込まれたとすれば、欺瞞的権利の基礎となる商品・役務(「架空」である場合を含む)もその中に含まれることから、同権利についても、同法に取り込まれることとなり、結果的に指定権利制は意味を失い、むしろ詐欺的・欺瞞的商材を生み出す口実になっているだけではないのか。

4.禁止法や業法ではなく、特定商取引法における指定権利制の廃止が法政策的に優れている理由について
  •  欺瞞的権利取引の規制手法としては、これらの取引を全面的に禁止することや、これらの取引を行う事業者に対し、登録・届出等の参入規制を設け、他の事業者による取引を禁止することも考えられるが、欺瞞的権利取引は、その性質上、多種多様な権利が商材として設定されることが想定され、明らかな違法商材を予め個々具体的に指定することは困難であることから、全面禁止や参入規制等を行う場合、欺瞞的権利にとどまらず、適正な権利を含めた一定の包括的権利取引をその対象とせざるを得ない。このため、適正な権利取引を行う事業者にとって、過剰な規制を課し、その経済活動を著しく阻害することが懸念される。したがって、権利取引の全部又は一部を禁止するよりも、これらの販売・勧誘に行為規制を課すことを通じ、欺瞞的権利取引の排除を図ることが、さしあたって適当ではないか。要件となる「権利商材」が明確化されれば、全面的禁止規定等を導入することを否定するものではないが、その場合にも、特定商取引法との重畳適用が望ましい。

5.指定権利制の廃止による詐欺的投資勧誘への効果について
  •  詐欺的投資勧誘に係る事案については、取引の後、即座に事業者が所在不明になるものが少なくないことから、行政による調査・取締や民事救済が困難な事例も多いとみられるが、特定商取引法では、契約時の書面不交付、虚偽・不備記載、不実告知等、客観化された要件のもとで不適切な勧誘行為に対して直罰規定を設けており、そういった事例についても、警察による取締りも併せて行われる。指定権利制が廃止されれば、権利取引について、形式的・外形的違反行為を理由とする取締りが可能となるところ、警察にとっても取締りが格段に行い易くなると期待され、これによる速やかな被害の拡大防止や当該行為に対する抑止効果も期待されるのではないか。特定商取引法の規制による当該効果を過小評価すべきではなく、むしろ他の取締り手段と の連携こそが重要ではないのか。少なくとも、悪質業者の逃げ足の早さや処分に向けた対処の困難さは、規制の整備を回避する抗弁とはならないのではないか。
  •  例えば、特定商取引法の不実告知については、事業者の二重の故意の立証を要しないことから、刑法第246条の詐欺罪よりも立件が容易であると考えられるのではないか。また、不実告知については、消費者庁が合理的な根拠を提出させる権限を有しており、行政側の立証負担についても一定の軽減が図られると言えるのではないか。

6.指定権利制の廃止による一般取引への影響について
  •  特定商取引において商品・役務の販売等を行う場合には、特定商取引法により行為規制が 課されことになることから、物品・役務の利用・提供等を受ける権利の売買に対して、同様の行為規制を課すことは、現行法以上に、経済活動を著しく阻害することになるとは考えられないのではないか。むしろ、悪質な業者を排除することによって、健全な取引活動を支援する結果となるのではないか。
  •  また、クーリング・オフ等の特定商取引の法規制に服させることが適当ではない権利について、必要であれば、例えば、商品・役務の指定制を廃止した際に一部の商品・役務の販売等を適用除外としたのと同様に、個別に適用除外とすればよいのではないか。

(以上)




(別紙2)

「特定商取引法の指定権利制の廃止に関する論点」に対する消費者庁の考え方

平成25年7月
消費者庁


基本的考え方

 現在、問題となっている詐欺的投資勧誘では、契約後連絡が取れなくなることがほとんどであり、予め仕組まれた集団的・組織的詐欺あるいは第三者詐欺による取引であることから、その存在自体が許されるべきではない悪性を帯びているものである。この認識は、貴委員会とのこれまでのやりとりの中で、貴委員会から提示されたものである。
 特定商取引法(特商法)の目的は、法律上規定されている行為規制を事業者に対して遵守させ、かつ民事ルールが活用されることによって、一般消費者を保護するとともに、特定商取引を公正にし、商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にすることにある。
 冒頭言及した貴委員会のご認識のとおり、現在問題となっている詐欺的投資取引は、本来その存在自体が許されるべきものでない。それにもかかわらず、仮にそれらを「公正な取引の是正による商品流通・役務提供の適正化・円滑化」を目的とする特商法の規制に置くのであれば、本来、存在自体が許されない詐欺的取引について、一定の行為規制にさえ従えば、その存在自体は許容されるとの誤ったメッセージを出すことになってしまうため、到底認めることはできない。


個別論点に対する回答

 1.、2.、6.関係
  •  特商法の目的について、貴委員会は、契約の目的物が架空であるなど偽装された取引であっても、取引時点では外形上適正取引と見られるものについて、それらを排除することは特商法の目的に適っている旨主張する。
     しかしながら、特商法は、ある取引自体を排除するのではなく、当該取引自体が市場に存在することは認めながらも、行為規制を通じて販売行為等を適正にすることで、「商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にする」(特商法第1条)ことを目指したものである。仮にある取引自体を排除することが法目的の一つであれば、その目的を担保すべく、そうした取引の禁止規定や参入規制が置かれることとなるが、特商法に置かれているのは、行為規制に関する規定や、消費者が債権債務関係から早期に離脱できるための民事規定、それらを担保する罰則規定等のみである。
     このように、特商法の目的に取引自体を排除することが含まれていると解することはできず、ある取引を排除する目的で特商法を活用するとの貴委員会の御意見は適当ではない。
     なお、貴委員会は、偽装取引であっても契約として一応有効に成立する場合もあると主張されている。どのような取引がそのような場合にそれに該当するかどうかという論点もあるが、いずれにせよ、御意見は契約の有効性に関するものであって、特商法の目的に関する議論ではない。
  •  特商法の権利の概念について、貴委員会は、「物品・役務の利用・提供及び金銭 の提供といった一定の利益を享受する法的地位であって、売買契約の目的とされるもの(一身専属性のない財産権)」であるべきと主張する。
     しかしながら、仮にこのように考えたとしても、貴委員会がさらに自ら言及しているように、権利概念はそれ自体が曖昧な外延を持つものであって、一般的な定義に馴染むものではない。
     さらに、「売買契約の目的とされ得る権利」としては、例えば、著作権や商標権等の知的財産権、配当権、CO2排出権等も含まれ、クーリング・オフに代表される特商法の強行的な法規制に服させることが適当でない権利も広く対象に置かれることとなる。
     貴委員会は、意見4.において、「欺瞞的権利取引は、その性質上、多種多様な権利が商材として設定されることが想定され、明らかな違法商材を予め個々具体的に指定することは困難である」とも記述しており、そうした曖昧な外延の権利に対して、予め、網羅的に権利の内容を精査し、特商法の規制に服させることが適当かどうかを判断することは困難である。

 3.関係
  •  貴委員会は、平成20年の特商法改正において商品・役務の指定制が廃止されたことにより、権利のみに指定制を維持する意味は事実上失われたと主張する。
     これについては、第120回消費者委員会でもご説明したとおり、そもそも指定権利を取引対象とする訪問販売等を規制するに至ったのは、役務提供事業者の脱法行為を防ぐためである。具体的には、役務提供事業者が役務の提供を受ける権利等を証券化し、その役務提供事業者とは別の販売業者が当該権利を不当な勧誘等により販売する場合、権利の販売業者や役務提供事業者には規制が及ばないままに被害が拡大してしまうため、権利の販売業者も規制の対象としたものである。したがって、御指摘とは異なり、商品・役務の指定制が撤廃されたことにより、指定権利制の意義が失われたということにはならない。
     また、貴委員会は、商品、役務の指定制の廃止により、欺瞞的権利の基礎となる 商品・役務も、それが架空である場合も含め規制対象に置かれることになったと主張する。しかしながら、現行の指定権利制では、実体性のある役務提供の存在がその前提となっているのであり、役務提供と紐づかない権利一般の売買を規制するものではない。

 4.関係
  •  貴委員会は、詐欺的投資取引を禁止法や業法で規制することについて、多種多様な権利が商材として想定されるため、適正な権利を含めた一定の包括的権利取引をその対象とせざるを得ず、適正取引を行う事業者に過剰規制を課し、その経済活動を著しく阻害する旨主張する。
     しかしながら、仮に詐欺的投資勧誘を特商法で規制するために指定権利制を撤廃した場合には、ご指摘の場合と同じく、適正な権利を含めた一定の包括的権利取引を規制の対象とすることとなる。その結果、繰り返しになるが、訪問販売業者等が権利を取引の対象とする場合は一律に、クーリング・オフのように強行的な民事効を有する規定や、直罰もあり得る行為規制を定めた規定に服させることになる。適正に権利取引を行う事業者に対して過剰な規制を課し、その経済活動を著しく阻害することが懸念される点は、特商法であっても同じである。
     さらに、詐欺的投資勧誘を特商法で規制することは、法目的の関係からも不適当であることは冒頭で述べたとおりである。御指摘の懸念点を払拭しつつ、詐欺的投資取引に関して現在生じている消費者被害を防止するためには、より広い視野に立ち、より実態に即した法律の策定等に関する建議があってしかるべきである。

 5.関係
  •  貴委員会は、詐欺的投資勧誘取引が特商法の規制対象となれば、外形上違反が明らかな書面不交付について罰則が担保されていることから事業者は逃げ口上が使えず、事業者の捕捉がより容易になる効果が見込まれる、と主張する。
     この点、特商法の執行経験に基づいて申し上げれば、悪質業者の多くは、仮に書面交付はしていたとしても、その内容は不実であるケースが多く、例えば、当事者が高齢者である場合などでは、処分に向けた調査を行う際に、いずれにせよ困難を伴うのであり、御指摘のような効果は期待できない。さらに第120回消費者委員会の場で申し上げたとおり、悪質業者はレンタルオフィス、レンタルポスト等を用いて活動拠点の特定すら困難な事案が増えており、特商法の規制対象とすれば、事業者の捕捉が直ちにより容易になる効果が見込まれる、との考えは、実務からかけ離れている。警察当局の取締まり容易化に資するとの期待についても、事業者の捕捉困難性との実情に関しては、警察当局においても変わらないと考えられる。
  •  さらに、特商法の目的は、消費者の被害防止を図ることに加えて、販売行為を適正にすることで商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にすることであり、詐欺的投資勧誘を行う事業者の行為を特商法の罰則の対象とすることで警察当局が事業者を捕捉しやすくなることを期待して(この期待が成立しないことは前述のとおり)、それを目的として特商法を改正するということは、全く成り立ち得ない議論であろう。
     詐欺的投資勧誘への対応を議論するのであれば、現状生じている被害実態を踏まえ、直接的にこうした事業者に対して制裁を課すことを可能とする立法措置等に関して建議すべきである。

 その他:景表法での対応について
  •  消費者庁が所管する法律である景品表示法について付言すると、同法は実体のある商品・サービスを前提にあくまで表示を規制対象としており、同法違反行為を行った事業者は、表示を是正すればその事業活動を続けていくこと自体は問題ない。このため、同法違反行為に対する措置は、当該不当表示の排除等表示に関するもののみであって、不当表示を行った事業者の事業活動そのものを規制するものではない。
  •  したがって、商品・サービスとしての実体がない取引に関し、その表示のみを是正させることでは、その事業活動自体は肯定することになり、詐欺的投資勧誘による被害の防止に対する直接的な対応策にはならない。さらに、詐欺的投資事案について表示の「適正化」をした場合、事業そのものの正当性は認めることになり、「詐欺的投資勧誘による被害の防止に間接的に資する」どころか、かえって、詐欺的投資事案の排除に逆行することとなる。
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