「消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果の報告」に関する意見

2011年3月4日
消費者委員会

 消費者庁は、消費者安全法第13 条に基づき、2月25 日、行政機関等から通知された情報その他消費者事故等に関する情報について、集約・分析の結果を国会に報告しました。消費者庁が集約・分析した消費者事故等の情報については、幅広く国会はじめ国民に報告・公表し、また消費者安全法4条には開示することも規定されています。消費者安全の確保を図り、消費者被害の防止へ向け、有効に情報が活用できるよう、報告書の重要性が増しています。
 消費者委員会は、昨年6月25 日、消費者庁が最初の国会報告・公表をした際に、「消費者安全法に基づく国会報告について今後重視されるべき基本的視点」を提示しました(参考資料)。ここでは、消費者事故等の発生状況やその傾向と対策が分かりやすく示され、収集された事故情報が消費者のみならず事業者、地方公共団体等に幅広く、積極的に活用され、社会全体で消費者事故の未然・拡大防止に寄与できる、そのような報告のあり方への意見を述べています。
 消費者庁による今回2回目の国会報告・公表に際して消費者委員会は、昨年の「基本的視点」で示した3点をベースに、今後さらに取り組むべき課題や新しい対策の必要性などについて、次のように意見を述べます。

(1)情報の一元化と社会的共有化

■ 消費生活用製品安全法に基づく重大製品事故の事例が報告書に掲載されていません。

■ 追跡確認状況のデータと重大事故事例のデータとの関係が明確でありません。

■ 重大事故の発生日から消費者庁の報告受理日との間に長期間を要している例があります。

■ 事故情報データバンクの運用実績が報告されていません。

■ 「重大事故」と「重大製品事故」の公表に整合性がありません。

 昨年と同様に今回の報告書でも、情報の一元化と社会的共有化に関しての改善が見られません。
 報告書には消費生活用製品安全法に基づく重大製品事故例の内容が記載されていません。さらに報告されている消費者安全法に基づく重大事故事例については、「対策済み」「対策検討中」などと分類した事故の「追跡確認状況」が記載されていますが、どの事故がこれらの分類のどれに該当するのか、国民には判別できないままとなっています。
 また、消費者安全法では重大事故等が発生した旨の情報を得たときは「行政機関の長、都道府県知事、市町村長および国民生活センターの長」は「直ちに」通知しなければならないことになっていますが、報告・公表案件を見ると、事故発生から数ヶ月、長いときは1年以上経ってから、消費者庁に通知された事例が散見します。これは収集体制に課題があることを示していますが、報告書にはその理由や改善措置が明記されていません。
 昨年4月に稼動した「事故情報データバンク」についても、報告対象範囲が半年間であるとはいえ、ルート別収集件数をはじめ、分野別収集結果、分析結果、行政機関等による活用事例等などの説明はありません。本来は、それらを報告してこそ、事故防止を求める消費者の活用へ向け、解決すべき課題も、より明らかになってくるものと考えます。
 消費者庁が消費者安全法に基づいて収集する「重大事故」と消費生活用製品安全法に基づいて収集する「重大製品事故」には重複する事例があります。収集ルートが異なるから、区別して収集されているわけですが、毎週の定期公表にあたっては、事故製品に対する製造事業者等の対応状況、対応結果の記載方法などに整合性がなく、消費者には分かりにくいのが現状です。

(2)分かりやすく使いやすい分類

■ 「事故内容分類」「商品・サービス分類」など、分類のあり方に改善措置が講じられていません。

 消費者委員会は、昨年の「基本的視点」の中で、消費者庁が収集した情報は国民に理解されるよう、わかりやすく分類され、報告・公表されることが必要と提言しました。そのために、「事故内容別分類」の記載方法をはじめ、商品・施設・役務(サービス)などの項目設定も生活実態に合わせた内容とし、用語・事故の分類も統一・整合化するよう求めました。
 しかし、今回の報告書では、この点についての改善は全く見られません。「事故内容別分類」も抽象的な記載(化学物質による危険等)のままであり、依然として従来の「大分類」「中分類」および「商品等別分類」も分かりにくいまま集計結果に反映されています。例えば、冷暖房機器は「商品等別分類」では、「住居品」に含まれますが、「大分類」「中分類」では、「住居品」には含まれずに、一部は「家電製品」に含まれます。パソコン、電話機、音響・映像製品は「商品等別分類」では、「教養娯楽品」ですが、「大分類」「中分類」では、「娯楽用品」ではなく、「家電製品」です。「商品等別分類」の中に、「家電製品」がないことも分かりにくくさせている一因です。

(3)原因究明結果と事故防止のための対応措置についての情報提供

■ 重大事故等の一覧表では、事故の発生状況、被害内容、事故原因、対応策、処理結果などが整理して記載されていません。

■ 「相談者非公表希望」の事例が完全非公開となっており、改善措置が講じられていません。

 国会や国民への報告・公表では、収集した事故情報の分析・原因究明結果とその対応措置結果について情報提供のあり方が課題となります。今回の報告書では消費者庁や国民生活センターの措置状況が時系列的に報告されており、昨年より詳細に、分かりやすく掲載されています。
 しかし、誰もが理解し、事故防止に役立てることのできる報告となるためには、昨年の「基本的視点」でも指摘しているように、「事故の発生状況」「被害内容」「事故原因」「対応策」及び「処理結果」などが整理され、記載される必要があります。今回の報告でもその点が考慮されていません。
 また、消費者安全法に基づき収集された「重大事故」に関する情報のうち、「相談者非公表希望」の3件が、今回も「全面非公表」となっています。「事故情報は国民の共有財産」との観点から、「重大事故」であるだけに、「全面非公表」としてしまわないよう、被害者のプライバシー保護にも配慮しつつ、取扱いの工夫をしていくことが必要です。少なくとも消費生活用製品安全法では、重大製品事故例はすべて公表されています。

(4)国会報告は迅速に

■ 報告は定期的に、迅速、分かりやすくすることが必要です。

 今回の報告書に盛り込まれた情報の対象範囲は、昨年4月から9月までの半年間のものとなっていますが、それから半年程度もの時間を費やして「国会への報告」がなされました。報告は定期的に、迅速、分かりやすく実施することが必要です。

(5)今後検討すべき課題として 制度的改善の必要性

■ 総合的な通知・報告制度の充実化への対応が求められます。

 今回の報告書は、消費者庁など行政機関の措置状況を第1回目よりは詳しく記載している点で前進が見られます。しかし、その一方で、関係法律の規定の違いを背景にした課題が改めて明らかにもなりました。
 事故の「追跡確認状況」に関する記載方法のあり方のほかに、消費者安全法と消費生活用製品安全法では通知・報告ルートが異なることから、重複情報が必然的に発生すること、それらの重複情報が内容面で整合性がとれないまま公表されていること、消費者安全法に基づく事故収集例では、事故発生から消費者庁への通知までに数ヶ月、長い例では1年以上を要しているものがあること、などです。
 また、消費生活用製品安全法は、食品はじめ遊具や施設などを対象としておらず、その結果、これらの分野の製造・輸入業者には、重大事故の発生を知ったとしても消費者庁への報告義務が課されていないという分野間でのアンバランスが生じています。
 通知・報告制度の一層の充実化への対応が求められます。

 

 消費者委員会としては、今後、消費者基本計画の「検証・評価・監視」に際して、以上の視点を重視して取り組みます。