第10回「地方消費者委員会」(大津)を開催しました

地方消費者委員会とは

消費者委員会の委員が地方に出向き、消費者のみなさま、関係各団体のみなさまの声に直接真摯に耳を傾け、問題の解決に効果的に取り組むために、地方の関係団体や自治体などと連携し、意見交換等を開催するものです。

大津での会合の様子を紹介します

写真集はこちらから御覧いただけます。

第10回「地方消費者委員会」(大津)は消費者委員会と特定非営利活動法人消費者ネット・しがが主催し、平成25年12月14日(土)、JR大津駅近くにある滋賀弁護士会館4階大会議室で開催されました。
当日は冷え込みながらも晴天に恵まれ、滋賀県、大津市をはじめ近隣の府県、市町の消費生活センター相談員のほか、消費者団体、弁護士、司法書士、事業者、一般消費者など73名の参加がありました。

着席している参加者の後ろから会場全体を撮影した写真。前方の演台には河上委員長がいる

冒頭、特定非営利活動法人消費者ネット・しがの土井裕明理事長より、「今日のテーマは健康食品の表示の問題です。滋賀県には三方よしというものがありまして、売り手よし・買い手よし・世間よしという、あるべき事業活動をあらわします。そう考えると、果たして健康食品の業界は三方よしになっているでしょうか。安心して受け入れられる商品を、正しく広告して正しく売る、そして消費者のみなさんに買ってもらう、これはどんな分野にも言えることです。今日は業界関係の方もお見えです。今日一日みなさんと意見交換をし、勉強していきましょう。」との開会挨拶がありました。


講演中の河上委員長の写真

シンポジウムは河上正二委員長による基調講演「消費者委員会の活動と食の安全」で始まりました。河上委員長は、消費者委員会の役割と活動について紹介し、国民生活センター・消費者庁・消費者委員会の三機関の緊張感をもった連携関係の必要性について説明しました。「消費者運動の原点は食品偽装と食の安全にかかわるものばかりである。食品に関しては広告と表示の適正化、そして品質管理と安全性の二つの論点がある。消費者は自分が口にするものがどういうものかを知る権利がある。」などと述べて、次の講演者である阿久澤委員につなぎました。
阿久澤委員は、一般にいう「健康食品」を定義する法律はなく、学術的にも認知されているものではないことを説明しました。口に入るものは「食品」か「薬」のどちらかであること、また「食品」の分類や、トクホ(特定保健用食品)などの表示ルールを解説した上で、健康食品に関するアンケート調査結果をうけて消費者委員会がまとめた建議の概要を紹介しました。健康でいるためには、冷静な選択眼を養い、適量でバランスのよい食事をすることが最も重要だとしめくくりました。
つづく滋賀県消費生活センターの清水文子副主幹の報告では、滋賀県内の健康食品についての相談の概要や、薬効をうたうセールストークの問題事例などが紹介されました。また清水副主幹は、自己責任を問うことができない人に対する見守りが必要なこと、事業者に対しては明確で判り易い表示をすること、消費者に対しては冷静な判断力を身に着けることなどを訴え、「消費生活センターとしてもさらなる啓発につとめていきたい。」と述べました。


休憩後、パネルディスカッションが行われました。パネリストは公益財団法人日本健康・栄養食品協会健康食品部次長兼JHFA担当課長の小林一夫氏、滋賀県消費生活センターの清水文子副主幹、消費者庁食品表示企画課の竹田秀一課長、特定非営利活動法人消費者ネット・しがの土井裕明理事長、コーディネーターは消費者委員会の阿久澤良造委員が務めました。

パネルディスカッション中の会場を後方から撮影した写真。客席には多くの参加者がいる

健康食品に求められる表示のあり方について、各パネリストから次のコメントがありました。「業界としても虚偽・誇大広告の禁止は当然。さらに機能性を表示するのであれば、原材料の安全性が確保され、製造工程管理された工場で製造され、科学的根拠に基づいた表示が必要である。科学的根拠の検証方法も有効性が統計的に有意であり、査読を受けた論文を根拠に、データのねつ造等がないきちんとしたものでなければならない。」「センターに入る相談には、送り付け商法のように消費者が広告や表示を見るに至らないトラブルもある。機能性表示後も、表示がされないものはどうなるのか、結局状況は変わらないのではないか。」「今後の機能性表示の制度設計については、現時点で不適切な表示・広告をしていることを承認するようなことは全くない。基本は科学的根拠となる有意差を事業者自らがきちんと示して、その根拠があるものについて、どの範囲まで機能性の記述が許されるかの条件を設定し、条件の範囲内の表示が可能になる。」「売りたい業者による偏った根拠提示になっていないか、検証をきちんとしなければならない。」「広告を見て過度な期待を持たないかどうか、一般消費者の受け止め方の検証も必要だ。」「健康食品は利用者のおおむね6割が満足しているとのアンケート結果も出ており、ちょっと買ってみようかと満足を得るために利用されている側面もあると思われる。きちんとしたルールのもとで、生活のうるおいのための健康食品があってもよいのでは。」などがありました。
フロアからは、「健康食品にも機能性表示が認められた場合、法令を逸脱しているか否かがグレーな広告が増加するのではないか。」「健康食品の表示に関するシンポジウムであるならば、医師の参加も促してみては。」「トクホ制度が開始されて20年以上経過しているが、どの省庁も制度の検証を実施していない。制度自体の存続可否も含め検討してほしい。」など忌憚のない意見が聞かれました。
最後に、河上委員長が「「食」は消費生活の中でも基本中の基本であり、大事な課題であるのでこれからも真摯にとりくみたい。食品には最低限のセーフティネットが必要。規制改革会議がアクセルを踏むなら、消費者に不利益が生じないよう、消費者庁と消費者委員会にはブレーキを踏むことも期待されている。問題を起こしているのは一部の心無い事業者であり、多くは良心的な企業だと思う。問題解決のためには良心的な企業の協力が不可欠。みなさまにはこれからもいろんな形でご支援を賜りたい。」と総括して、会議は終了しました。

参加者のアンケート結果から

会場では参加者にアンケート調査を行いました。アンケートには「消費者教育が大切だと感じた」「さまざまな立場からの報告が聞けて大変参考になった」「トクホについてはメーカーの話もききたい」「さらなる建議による消費者行政推進を期待している」「地方の消費者行政への安定的財源確保を!」など、数多くのコメントが寄せられました。

大津市長への表敬訪問

開催前日である12月13日(金)午後、河上正二委員長は滋賀県庁を訪ね、北川正雄総合政策部長へ後援のお礼と消費者委員会の活動状況についてなど説明しました。
続いて、越直美大津市長表敬訪問のため大津市役所を訪ねました。越市長へ後援のお礼を述べ、和やかに会談しました。成立したばかりの「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続きの特例に関する法律」について、また、大津市の消費者啓発の取りくみや消費者教育の推進に関してなど、幅ひろく意見交換しました。

越大津市長と河上委員長が並んだ写真。二人の後ろには大津市航空写真がある




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