第166回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2014年7月15日(火)16:00~16:47

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
河上委員長、石戸谷委員長代理、阿久澤委員、岩田委員、齋藤委員、高橋委員、夏目委員、橋本委員(TV会議出席)、山本委員、唯根委員
【事務局】
黒木事務局長、井内審議官、大貫参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 個人情報保護について
  3. その他
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○河上委員長 それでは、始めさせていただきます。本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。ただいまから、「消費者委員会本会議(第166回)」を開催いたします。

きょうは欠席の方はいらっしゃいません。橋本委員についてはテレビ会議での御参加となりますけれども、橋本委員、聞こえますか。

○橋本委員 聞こえます。よろしくお願いいたします。

○河上委員長 よろしくお願いします。

それでは、配付資料の確認につきまして、事務局からお願いいたします。

○大貫参事官 議事次第にございます配付資料、資料1が「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」に関する意見(案)ということで、これが資料1-1と資料1-2の概要の1枚紙の2つに分かれております。資料2が「消費者問題シンポジウムin静岡」実施報告。本日の資料は以上でございます。不足のものがございましたらば、事務局までお申し出いただきますようお願いいたします。


≪2.個人情報保護について≫

○河上委員長 それでは、早速入らせていただきます。本日の議題は「個人情報保護について」であります。

個人情報保護については、6月24日にIT総合戦略本部において、個人情報及びプライバシーの保護に配慮したパーソナルデータの利活用に関する制度改正の方向性を示すものとして、パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱が決定され、この大綱は、現在、6月25日から7月24日を期間としてパブリックコメントに付されているところであります。

これまでも当委員会では、内閣官房IT総合戦略室に出席をお願いし、パーソナルデータの利活用に関する制度見直しの検討状況について、昨年11月と本年5月にそれぞれ御説明をいただいたほか、前回、第165回の本会議では、決定された大綱の内容と今後の制度改正の進め方等について説明をいただき、内閣官房からは、パブリックコメント終了後に法案作成作業に入っていくことになるという説明があったところであります。大綱は、保護されるべきパーソナルデータの範囲を初め、とるべき措置の内容等を必ずしも具体的に示していない部分が多く、今後、こうした部分を含めて制度設計の細部等を検討して法案化が進められる予定とされておるにとどまります。

したがって、現時点において、当委員会としても、本大綱について語れることは限られておりまして、これまでの検討を踏まえて消費者の利益の擁護という観点から意見を述べさせていただきたいと考えております。

それでは、「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」に関する意見(案)について、担当委員である山本隆司委員から説明をお願いしたいと思います。

○山本委員 それでは、私のほうから概要の説明をいたします。

まず、大綱と意見書との関係につきましては、今、委員長から御説明のあったとおりでございますので、1ページの部分につきましては省かせていただきまして、2ページ以下でございます。1枚紙の概要が配られてございますので、それに沿って本文と照らし合わせながら御説明を申し上げます。

この消費者委員会の意見は、大きく4つのパートに分かれてございまして、第三者提供及び目的外利用、民間主導による自主規制ルール策定・遵守の枠組みの創設、第三者機関について、継続的な検討課題という4本立てになってございます。

1の第三者提供及び目的外利用が、情報の取り扱いの中身について意見を述べている部分でございます。さらに、その中が3つに分かれておりまして、まず第1が、個人が特定される可能性を低減したデータの取扱いでございます。これは、今回の大綱の一つの柱となっている部分でございまして、現行の個人情報保護法には規定が特にない部分でございます。大綱によりますと、個人データを個人の識別性・特定性を低減して、第三者に提供する、あるいは当初の目的以外の目的に利用するといった可能性を開くということが言われております。

この点に関しまして、消費者委員会の意見といたしましては、これは内閣官房の検討の段階でも言われていたことではございますけれども、個人が特定される可能性を低減するといっても限度がある。これは、技術的に限度があるということと、余り特定可能性を低減してしまいますと有用性も低くなりますので、実際上の限界もあるということがございます。そうだといたしますと、そういったデータについても適正な取り扱いが十分されるように規律を置くべきであるという意見を述べております。

考え方といたしましては、2ページから3ページあたりにかけてでございますが、本人の同意にかわるだけの十分な透明性の確保。それから、再識別化の禁止。そして、問題が発生したときに第三者機関が迅速に対応をとり得るような体制をあらかじめ整えておくべきといったことを述べてございます。

それから、1の(2)個人情報の範囲につきましては、現行の個人情報保護法においては、必ずしも個人情報の範囲が明確でなくなっている。これは、いろいろな形の情報が最近ふえておりまして、どこまでが個人情報に含まれるかということが曖昧になっているということがございまして、大綱の中ではその点を整理しようということが言われております。

具体的には、概要の中でも、あるいは意見書の3ページにも書かれてございますが、大綱は、「指紋認識データ、顔認識データなど個人の身体的特性に関するもの等」から、個人情報として保護される対象を明確化するとございますけれども、内閣官房における検討の過程においては、もう少し広いものが検討されてございました。この点が3ページの注7に具体的に書かれてございます。本委員会といたしましても、個人情報の範囲が狭く理解されることがないように、国際的な動向を見ても、一定のものについては個人情報に含めていくということですので、個人情報の範囲が狭くならないように十分留意すべきだということを言っております。

具体的には、3ページの中ほどですが、「個人または個人の情報通信端末(携帯電話端末、PC端末等)等に付番され、継続して共用されるもの」は、個人情報の範囲に含める方向で検討すべきであると言っております。

それから、1の(3)利用目的の変更時の手続でございます。これは、意見書で申しますと4ページ以下でございます。現在の個人情報保護法においては、当初の個人情報の利用目的から変更する場合には、本人の同意をとることになってございます。これに対しまして、大綱の中におきましては、本人が十分認知できる手続を工夫しつつ、新たな利用目的による利活用を望まない場合に、本人が申し出ることができる仕組み。つまり、一種のオプトアウトの方式を設けて本人に知らせるといったことが考えられると述べております。これも具体的に書き切る形にはなっておりませんけれども、こういうオプトアウト方式を認める方向で考えるべきだということが言われております。

これに関しまして、消費者委員会の意見といたしましては、本人同意を必要とする原則は十分尊重すべきであるということを述べておりまして、仮にオプトアウト方式を認めるとしても、その場合は限定すべきですし、あるいは実際にオプトアウトができるような条件を十分整えておかなくてはいけないということが述べられております。

それから、大きな2番目に入りますが、民間主導による自主規制ルールの策定・遵守の枠組みの創設という点でございます。この点は、大綱の中では、こういった民間団体によるルールの策定及びその遵守というものを十分活用していくべきだと述べてございまして、そのこと自体について消費者委員会から特に反対というわけではございません。そういった民間の枠組みを活用できるところは活用していく必要については、特にこの意見の中でも反対はしてございません。ただ、その際に、消費者委員会の意見といたしましては、消費者の実質的な参画が行われ、消費者保護の観点を民間のルールづくり等の中に十分反映していかなくてはいけないということが述べられております。

もう一つは、自主規制ルールと申しましても、それが全ての分野あるいは全ての事業者をカバーするとは限りませんので、したがって、そのように自主規制ルールでカバーできない範囲については、今後、新たに設置されることが予定されている第三者機関がガイドラインを定めて、そういった自主規制ルールが及ばないところにガイドライン等も適用していく必要があると述べております。

それから、大きな3番目でございます。今、申し上げた第三者機関でございます。これは、大綱の中におきまして、現在、番号法に基づいて設けられております特定個人情報保護委員会を、さらに拡充する形で第三者機関を設けることが想定されているようでございまして、独立の専門性の高い新たな第三者行政機関をつくるということが大綱で言われております。消費者委員会といたしましても、特にそのこと自体に反対するわけではございません。そういった専門的な独立性の高い第三者機関ができること自体は望ましいことですが、その中で幾つか考えておくべきことがあるだろうということを意見として述べております。

まず第1は、第三者機関が十分な体制を整えることが当然必要だということでございまして、特に消費者保護の観点から、関与する有識者が第三者機関の方針決定過程に委員として参画する必要があるということを意見として述べてございます。これは、5ページから6ページにかけてのところです。

2番目ですけれども、大綱の中においては、苦情相談、苦情処理に関して新たな仕組みを設けるということは特に言われておりません。消費者委員会の意見といたしましては、もしそういうことだといたしますと、苦情相談が各地の消費生活センターに持ち込まれるということが予想されますので、したがって、消費生活センターの体制を十分整える必要があるという意見を述べております。具体的には、第三者機関と十分連携をとるとか、消費生活センターの相談員の方に対して十分な情報提供を行う、あるいは研修を十分行うという必要があるという意見を述べております。

3番目でございますが、これは意見書の6ページの(3)と書かれている部分ですが、大綱の中におきましては、「個人の権利利益を侵害するおそれが少ないと認められる一定の要件を満たす者については、義務違反行為が故意又は重過失によるものであるなどの事由がない場合には、勧告及び命令の対象としない」という方針が示されております。

これは、7ページの頭に書かれておりますが、現在の個人情報保護法において、データによって識別される特定の個人の数が5,000以下である事業者については、法律の適用除外とされておりますが、大綱の中ではこのような適用除外は設けない。全ての事業者に対して法律を適用するという方針がとられているのですが、そうした場合にも、先ほどの6ページの(3)の頭で述べたように、主として中小の事業者に対して一定の配慮をすべきであるということが言われているわけでございます。

消費者委員会の意見といたしましては、確かに事業者に対する配慮は必要であるのですが、それは実務上のもろもろの方策をとることによって図るべきであって、このように大綱で言われているような制度を設けることは、余りにも問題が大きいのではないかという意見を示しております。

最後、大きな4番目、「継続的な検討課題」とされている事項でございます。

2つございまして、1つは、紛争処理体制でございます。大綱におきましては、紛争処理体制の整備につきましては、差し当たって特に新たな仕組みは設けないとしております。今後の検討課題としております。しかしながら、消費者委員会の意見といたしましては、早急にこういった紛争処理体制を整備する必要があるのではないかという意見を述べております。

それから、一番最後ですが、「いわゆる名簿屋」に関連する問題でございます。この点につきましては、8ページの一番最後に述べられております。大綱の中では、いわゆる名簿屋の問題に限定しているわけではないのですが、第2段落に書かれてございますように、個人データによって識別される本人が、オプトアウト規定を用いて個人データの提供を行っている事業者を容易に確認できる環境を整えるために、第三者機関に対して本人通知事項などを届け出る。個人情報取扱事業者が第三者機関に届け出る、あるいは第三者機関が届け出られた事項を公表するといった措置を講ずるとしていたところでございます。

しかし、8ページの続きのところですが、この間、前回の消費者委員会の後、発覚した問題だと思いますけれども、大量の個人情報流出事故が生じたということがございまして、大綱が示す対策だけでなく、さらに突っ込んだことを検討すべきではないかということを言ってございます。ただ、これは今、申しましたように、前回の消費者委員会後に発覚した事案に鑑みてということでございますので、委員会の中でさらに議論しないと、具体的にどのような方策を考えるべきかということは、なかなか結論が出ないだろうと思います。そこで、今回の意見書におきましては、一番最後のマル1からマル5に、このようなことが検討項目として考えられるのではないかという論点だけを挙げる形にしてございます。ということで、説明は以上でございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。それでは、御質問、御意見のある方は発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。石戸谷委員、どうぞ。

○石戸谷委員長代理 私のほうは、継続的な検討課題とされている事項について補充的に意見を述べたいと思います。意見書(案)ですと、7ページです。

委員会のほうで挙げてあるのは、紛争処理体制と名簿屋に関する事項という2点であります。大綱のほうで言っている継続的な検討事項というのは、要はこういう場合の継続的な検討ということは今回はやらないと。その先に検討するという意味合いでありますので、いや、そうではなくて、今回の法改正に盛り込むべきであるという内容になっております。

まず1つ、紛争処理体制ですが、確かに民事請求権を明確にしたということは前進であるのですけれども、苦情処理で解決できないものは全部裁判でやらなければいけないということで、果たして実効的に権利行使ができるだろうかと。例えば、今回のような大量の情報流出の事件があった場合に、それぞれの被害者が一々裁判を起こさなければいけないのかということになりますと、余り現実的ではないのではないか。

そもそも流出したのが何百万件という単位、あるいは最大2,000万件という単位であることが報道されていて、一人一人が民事請求権を行使する、一々裁判を起こすということでは十分でないと。各分野でADRの整備が進められているわけでして、個人情報の紛争処理もADRに非常になじむと思います。裁判を起こすのがそれだけ大変だということです。

最後は裁判で決着するというのは当然ですけれども、その前段として、各分野で整備されているようなADRの整備というのは、権利の実効性の確保からして必要だろうということで、今回改正に盛り込むべきという意味合いで入れてあるので、支持するところです。

それと、名簿屋のほうについても継続的に検討するとなっているのですけれども、大綱のまとめの後ではありますが、大量の流出事案が生じて、立法事実というものが極めて明確になっているわけですので、これについてもその対策を先送りということではなくて、今、改正の中に入れ込むべきという内容になっております。

意見書については、これで結構だと思いますけれども、若干個人的な感想をつけ加えますと、今回の事案で個人情報というのは全く守られていないのだなということを多くの方が実感されていると思います。盗み取ったものであるにもかかわらず、それがいわゆる名簿屋という形で転々として、しかもそれが合法的に処理されていることに関して、非常に驚きと不安を感じた方がたくさんおられると思います。データの利活用ということをうたうのであれば、生情報が転々売買されているような状況というものに対して、きちんとした措置をとるというのが、インフラとして最低限必要であると思います。

今の法体系というのは、改めて見てみますと、つくづく物を中心にできているなと思います。物をとると窃盗罪になります。ですので、データを入れたUSBをとるとUSBメモリの窃盗罪になります。ところが、自分のUSBを持っていって情報を抜き取ると、その情報の窃盗罪というのはありませんので、窃盗罪は成立しません。その後の流れを見ますと、盗品を売ったりしますと贓物故買、盗品に関する罪というのが刑法にあります。そもそも、また中古品を業として扱う場合は、古物営業法の適用があります。当然、開業規制はあるし、取引の本人確認、取引の確認をしなければいけないというつくり方になっております。

さらに、貴金属なんかについて言えば、古物営業法とともに犯罪収益移転防止法の適用があります。疑わしい取引について本人確認、取引内容の確認、届け出といったものが規定されておりまして、古物営業法以上の厳しい確認義務というものがあるわけであります。こういうものの一連の流れとの対比で見ていくと、盗んだデータを名簿屋という形で転々と売買されていて、それについて何の規制もない。抹消・請求したい人はオプトアウトで届け出てくださいと。そうすると、760万件、皆、それぞれが届け出をしなければいけないのか。これはどう考えてもおかしいのではないかというのが、皆さん、率直に感じられているところではないかと思います。

したがって、そもそも個々人がそういうものに対処するということではなくて、せっかく第三者機関をつくるというわけですので、第三者機関の権限を明確にして、一件一件、民事請求権的に削除するというのではなくて、一括して削除を命じられるような権限と、その要件というものもあわせて整備しなければいけないということになるかと思います。ということを整備していくことが必要であると思いますけれども、ただし、名簿屋という業態の実態がよくわからないところがあるので、よく吟味した上で、さらに詰めた上で意見を出すのが適当かなということで、こういう意見になっております。以上です。

○河上委員長 ありがとうございました。特に修文の必要は、今のところはないという前提での御意見と承りました。そのほかにはいかがでしょうか。夏目委員、どうぞ。

○夏目委員 法的なことにつきましては、今、石戸谷代理がおっしゃったとおりでございますけれども、今回の事犯を考えてみますと、現行の法律ではなかなか対応できないということが明らかになりましたし、立法事実も固まってきているということであれば、最初に委員長が申されましたように、大綱というのは、制度設計の細部で検討し、法案化が進められる予定とされている部分がとても多いということですので、そこのところをもう少しきちんと枠組みをつくった形で、パーソナルデータの利活用を図っていくことが大事ではないかなと感じます。

まだ、これからの議論になるかと思いますけれども、委員会の意見書の中では、特に最後の部分ですけれども、短時間に委員間で意見の交換をしましたので、十分に詰め切れていないところもありますけれども、とりあえず今、お話がたびたび出てきましたように、盗んだ情報であろうと、そうでない情報であろうと、個人の情報が転々と世の中に出回って、本人に知らないところで利用されていくという情報のロンダリングを防ぐために、個人情報のトレーサビリティを確立しておくということが、企業にとってもいいことではないかなと思うわけでございます。ぜひ、そういうところをこの事犯を契機に、しっかりと大綱の中に具体的な制度設計として盛り込んでいただければありがたいと思っております。以上でございます。

○河上委員長 ありがとうございました。齋藤委員、どうぞ。

○齋藤委員 意見はこのままでいいと思いますが、私の意見を述べさせていただきます。

1つは、5ページの2の最後の「自主規制ルールがない分野にも同ガイドラインが適用される必要がある」というくだりです。この同ガイドラインというのは、業界ルールなどを決める場合にも適用されるガイドラインと全く同じでは困るのであり、それ以上に厳しいガイドラインが定められるべきだと私は考えております。国等の公的なところが示すガイドラインというのは、最大公約数的なルールだけを示し、それ以上は業界ごとに決めるということになる。業界ごとに決めると、さらに詳しい、厳しいルールに大体なるのです。業界ルールがないところにおける自主規制ルールについては、相当厳しいガイドラインが示されなければならないと思います。

それから、先ほどの大量情報の取り扱いの件ですけれども、世の中で財産と言われるものは、物と金と、それから最近、情報と言われております。物と金に関するルールはだんだん整理されてきておりますけれども、情報のルールというのは未整備なところが多いと思っています。物については、先ほど意見がありましたように古物営業法。金につきましては、犯罪収益移転防止法でとことん抑えるということが国際的にもかなり浸透していると思うのです。しかし、情報は、技術変化が激しいということもあるのでしょうが、このあたりできちんとしておかないと、大きなダメージを受けてからではどうしようもない部分が多いのではないかと思っております。

具体的に気になることを2つ申し上げます。大量のデータが外国に移転した場合に、我が国として、民事的・刑事的にどういうふうにそれを取り扱うことができるのか。これは難しいことがあるかもしれませんが、愉快犯のように外国のサーバーに置かれたまま、みんながアクセスできる状態になったときに、それを取り除くことができるのかという問題が出てこようと思います。そのあたりをきちんと整備していく必要があると思います。

それから、今回の新聞のニュースなどで不正競争防止法で摘発するということが最初に出てくるわけです。これは営業秘密侵害罪ですけれども、時効が気になるところです。最高刑は懲役10年ですから、時効は普通ならば7年になるのですけれども、これは親告罪ですので、被害者が犯人を知ったときから6カ月となっています。本当にそれでいいのかという疑問があります。このあたりも含めて、物や金の扱いと同じような法体系が早くできることを望んでいるところです。

○河上委員長 ありがとうございました。ほかにはよろしいですか。唯根委員、どうぞ。

○唯根委員 6ページの苦情相談の受付体制の話で、消費生活センターが受付窓口になるだろうということで、ここまで書いていただけたことはよかったと思うのですけれども、受け付けた後、今回のような大事件、何百万件という件数の相談をどうやって処理していけるのか、どれだけ対応できるかが心配です。通常の苦情相談とは性格の異なるものだけに相談員の業務負担も大きく、研修等の準備だけではなくて、被害救済に向けての紛争処理体制にスムーズにつなげていくという体制づくりまで今後具体的に検討していただきたいと思います。以上です。

○河上委員長 それは、先ほどの紛争処理体制のところの書きぶりとも関係してくるのですけれども、この部分を修正する必要がありますか。

○唯根委員 今回はここまで書いていただいているので良いと思いますが、紛争処理体制の検討時にでも意見を出させていただければと思います。

○河上委員長 ありがとうございました。ほかには。高橋委員どうぞ。

○高橋委員 パーソナルデータの利活用に関する制度改正において大事なことは、個人の情報はあくまでも本人のものであると。この基本が揺らぐようであってはならないと思います。事業者には、個人の大切な情報をお預かりしているという認識を徹底させて、初めて利活用と言えるのではないかと思います。そういう視点で大綱に関する意見を委員間でこれまで交わしてまいりまして、今、案として提示されているものに関しましては、私は異議はございません。

前回の会議でいわゆる名簿屋問題ということに言及させていただいたのですが、個人のデータをデータベースから盗む。それが名簿屋に渡り、転々としたという事件が起きているわけです。不正な手段で流出したものが転々するということの意味をこの間、考えてまいりました。先ほど物とか金とか情報という分類がありましたけれども、マネーロンダリングの防止法に匹敵するような手段をとらなければいけないことではないかなと感じております。

ですので、マネーロンダリングの中で仕入れ先の本人確認をするであるとか、購入履歴を記載するとか、こういったことを本日のこの意見書案の4の継続的な検討課題のところに「情報のロンダリングを許さないトレーサビリティの確立」という表現で入れてありますけれども、これが今後、私たちが議論する上で非常に大切なことと思っております。

名簿屋に限らず、ビッグデータというビジネスというのが今後どのように展開されるかは、非常に未知数なところが多いと思っています。データを取り扱う担い手として、データサイエンティストとかデータアナリストとか、いろいろな人たちが登場してくるのだと思うのですけれども、そういう人たちがどういう形で情報を入手し、加工していくのか、その加工したものをどういうふうに販売していくのかに対して、消費者委員会としてはそれが妥当なものであるように目を光らせていく必要があると感じました。以上、意見でございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。他には、よろしいでしょうか。お互いに相当意見交換して、ここまでまとめてきたものですから、これでよろしいということであれば、この内容で「(案)」をとらせていただきたいと思います。

ちなみに、前に紹介してもらった制度、大綱の案で第2次照会版というものがあって、それの一番最後に継続的な課題が幾つか並んでいて、実は名簿屋の話はそのときに入ってきた課題なのですね。

同様に加えられたその他で「同意取得の標準化」という問題と「共同利用」についてという項目があって、そもそも同意取得のあり方についてきちんと考えないといけませんという話と、幾つかの企業が共同利用する場合に、その共同利用のあり方についてもきちんと考えないといけないということが書いてありました。結局それは落ちているようなのですが、考えてみると、検討の順序、優先順位が逆じゃないかと思うのです。もともとどういう形で最初に同意をとるかとか、共同利用のあり方についてのルールをきちんと固めて、そして取得されたデータをどういうふうに管理していくかということを固めて、その上でこれをどう加工してビッグデータとして利活用できるかという順序にならないといけないように思うのです。

インフラの議論が後手に回っている。その意味では、今回の事故は、本来最初にやるべき基本的な個人情報の管理のあり方ついて思いをいたす、いいきっかけになったという気もいたします。

済みません、山本委員、補足してください。

○山本委員 共同利用につきましては、大綱の中では、今、委員長が言われた当初案では末尾に入っていたのが、16ページ、先ほどの第三者提供におけるオプトアウト規定に関する記述のところに書いています。

○河上委員長 6月24日版ですか。わかりました。確認できました。いずれにしましても、ビッグデータの利活用ということを言う前に、まずはインフラの部分でもう少しきちんと考えないといけないことがたくさんあるなということを痛感させられた次第です。

皆様からの意見では、基本的には修正という方向での意見はございませんでしたので、これで消費者委員会の意見として公表させていただくことにいたします。どうもありがとうございました。

この意見につきましては、委員会終了後、18時をめどに、消費者庁の記者会見室において私から記者会見をさせていただくということにいたします。

≪3.その他≫

○河上委員長 最後に、議題の「その他」といたしまして、去る7月12日の土曜日に実施いたしました「消費者問題シンポジウムin静岡」の実施報告を事務局のほうからお願いいたします。

○黒木事務局長 資料2をごらんいただきます。

7月12日に「消費者問題シンポジウムin静岡」を、消費者委員会と静岡の消費者団体である消費者問題ネットワークしずおかとの共催で開催いたしました。当日は、近隣の県あるいは市の消費者行政担当者や相談員の方、あるいは消費者団体の方、弁護士、司法書士、事業者、大学関係者あるいは一般消費者の方など120名の御参加をいただきました。

テーマは消費者教育を取り上げまして、冒頭に消費者問題ネットワークしずおかの小澤副代表に開会の御挨拶をいただきました。その後、河上委員長から「消費者委員会の活動と消費者教育」について、続いて静岡大学の色川教授に「地方における消費者教育の推進について」、各基調講演を頂き、その後パネルディスカッションを行いました。

パネルディスカッションでは、パネリストの方々等から、例えば消費者問題に巻き込まれていても問題が悪化するまで放置していて被害が大きくなるケースもあって消費者教育が不足していると感じるという御意見、あるいは、事業者側にも従業員に対する消費者教育を通じて消費者問題への対応を検討してもらいたいという御意見がありました。それから、消費者教育の分野は非常に範囲が広くまたこれは取り組んですぐに効果が出るという性質のものでもない。また、消費者教育をする側としても形式的になりがちなところもあるということなので、関係団体がお互いにチェックし合えるような環境づくりや情報の一元化が大切であるという御指摘がありまして、例えば各地で行われている寸劇とか出前講座のようなものを全国コンクールみたいな形で共有できないかという御提案等もございました。

その後、フロアからの御質問等としましては、消費者教育推進法で事業者あるいは事業者団体が努力義務となっているのはなぜなのかという御質問、学校教育をもっと推進できればということが言われるけれども、教育委員会から話がないとなかなか受け入れてもらえないということもあるので、消費者庁から教育委員会に協力・実施できるよう呼びかけていただきたいという御意見、それから、先駆的な事業の取り組みについては、できれば単年度の予算に縛られずに実質的な効果を見ながら二、三年で考えるような予算措置というものができないのかという御質問、消費者教育推進地域協議会というものについて、努力義務ということもあって、なかなか設置が進んでいないのではないかという御指摘等がございました。

なお、シンポジウムに先立ちまして、河上委員長におかれましては、前日の7月11日に静岡県の髙副知事を表敬訪問していただき、また静岡市の秋山市民生活部長と懇談、あるいは静岡県中部県民生活センターの視察等をしていただいたところでございます。以上でございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。当日は夏目委員にも参加いただいて、パネルで議論していただきました。夏目委員から何かつけ加えることがありましたら。

○夏目委員 大学生から、幅広い年代層の方たちが集まっていただいて、大変有意義なシンポジウムであったと思います。私は、河上委員長が総括コメントのときにおっしゃった、ここに集まってくださった方は一粒の麦です。一粒の麦が実って、そして広げていく。とてもその言葉が印象的であって、消費者教育の担い手というのは輪を広げていくということがとても大事だというメッセージが、いらした120人の方に伝わったのではないかと思いました。消費者教育は、環境整備も大事ですけれども、それを担っていく人材の育成が大事だということを共通理解したシンポジウムだったと思います。とてもよかったと思います。ありがとうございました。

○河上委員長 シンポジウムではいろいろな意見が活発に出まして、静岡の方々、大変熱心で、有難く思いました。会場は100ちょっとの席を用意していたのですが、120人入って満杯で、なかなか熱気あるシンポジウムになったと思います。

消費者教育については、いろいろな課題があるのですけれども、教材などができ上がってはいるものの、ポータルサイトに入っている教材・コンテンツが雑然としていて、自分にとって必要な教材が見つけにくいということも言われておりまして、使い勝手のよい形に、整理していく必要もありそうです。また、協議会の設置のあり方等についても、地方、地方で随分温度差があるようでして、その辺についてもてこ入れをしていく必要があるのではないかということでありました。

静岡はわさびの特産地ですが、消費者委員会は日本のわさびになりたいという話をさせていただきました。小粒ですけれども、パンチのきいた委員会になればということを申し上げました。以上です。

本日の議題は以上であります。


≪4.閉会≫

○河上委員長 最後に、事務局のほうから、今後の予定について説明をお願いいたします。

○大貫参事官 次回の本会議は、7月22日火曜日16時に開催を予定しております。開催時間や議題など詳細につきましては、確定しましたら委員会ホームページで御案内させていただきます。

なお、この後、18時をめどに消費者庁記者会見室において報道機関の皆様を対象とする委員長記者会見を行いますので、お知らせいたします。

この後、委員間打ち合わせを開催いたしますので、委員の皆様におかれましては委員室に御移動くださいますよう、お願いいたします。橋本委員は、引き続きテレビ会議で参加されます。

○河上委員長 よろしくお願いいたします。それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

(以上)