第98回 消費者委員会 議事録

日時

2012年8月21日(火)17:00~19:05

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

 消費者庁 阿南長官
【委員】
 河上委員長、山口委員長代理、小幡委員、川戸委員、
 夏目委員、細川委員、村井委員、吉田委員
【説明者】
 独立行政法人国民生活センター  保木口相談情報部相談第2課長
相談情報部相談第2課担当者
 消費者庁  黒田消費者政策課長
 東京都  松下生活文化局消費生活部取引指導課長
赤羽生活文化局消費生活部消費者情報総括担当課長
 厚生労働省  井上医政局指導課長
 金融庁  西浦総務企画局企画課信用機構企画室長
野崎監督局総務課金融会社室長
 警察庁  福田生活安全局生活経済対策管理官
【事務局】
 小田審議官

議事次第

1.開会
2.阿南消費者庁長官挨拶
3.医療機関債について
○説明者: 独立行政法人国民生活センター  保木口相談情報部相談第2課長
相談情報部相談第2課担当者
消費者庁  黒田消費者政策課長
東京都  松下生活文化局消費生活部取引指導課長
赤羽生活文化局消費生活部消費者情報総括担当課長
厚生労働省  井上医政局指導課長
4.改正貸金業法について
○説明者: 金融庁  西浦総務企画局企画課信用機構企画室長
野崎監督局総務課金融会社室長
消費者庁  黒田消費者政策課長
警察庁  福田生活安全局生活経済対策管理官
5.その他
6.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:8KB)
【資料1】 医療機関債の販売勧誘トラブルの現状について(独立行政法人国民生活センター提出資料)(PDF形式:249KB)
【資料2】 「医療機関債」の勧誘に関する注意喚起(消費者庁提出資料)(PDF形式:197KB)
【資料3】 医療機関債をめぐる現状と課題(東京都提出資料)(PDF形式:82KB)
【資料4】 貸金業法関連資料(金融庁提出資料) 【資料5】 多重債務問題に対する消費者庁の取組み関連資料(消費者庁提出資料) 【資料6】 ヤミ金融事犯の検挙状況(警察庁提出資料)(PDF形式:145KB)

≪1.開会≫

○河上委員長 それでは、時間になりましたので、始めさせていただきます。
皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。ただ今から、「消費者委員会(第98回)」会合を開催いたします。
本日は、所用によりまして、稲継委員、田島委員が御欠席となっております。
本日は、8月10日付で消費者庁長官に就任されました阿南消費者庁新長官にお越しいただいておりますので、開会にあたりまして、長官からごあいさつをいただきたいと思います。
では、よろしくお願いいたします。

≪2.阿南消費者庁長官挨拶 ≫

○阿南消費者庁長官 このたび、消費者庁長官に就任いたしました阿南と申します。よろしくお願いいたします。
これまでは、消費者団体として、消費者庁と消費者委員会の創設にかかわり、創設後も、消費者委員会の食品表示部会、安全専門調査会に参加させていただいてきました。大変お世話になりました。これからは消費者庁長官としてかかわらせていただきたいと思っております。とりわけ、消費者委員会とこれからはもっとタッグを組んで消費者行政を発展させて、消費者のためになる施策をどんどん実施していくために、どちらかというとその辺はどうだったのでしょうかね。一生懸命やらせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○河上委員長 よろしくお願いします。みんなが期待しているところですので、どうぞ頑張っていただければと思います。
長官におかれましては、御公務がおありですが、もうちょっといてもいいということでございますので、よろしくお願いします。
続きまして、配付資料の確認につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

○小田審議官 お手元の議事次第に配付資料一覧を載せてございます。
本日は議題が2つございます。「医療機関債について」、「改正貸金業法について」でございますが、資料1~資料3までが医療機関債に関する資料です。資料1が国民生活センターから御提出をいただいているもの、資料2は、束になっているかと思いますけれども、消費者庁から御提出をいただいているもの、資料3は東京都から御提出をいただいているものでございます。
資料4~6が、2つ目の議題であります「改正貸金業法について」でございます。資料4が金融庁からいただいた資料、資料5が消費者庁から提出された資料、資料6が警察庁からの資料でございます。
不足がございましたら、事務局に申し出ていただければと思います。

≪3.医療機関債について≫

○河上委員長 議題に入らせていただきます。
初めに、「医療機関債について」ということです。本日は、国民生活センター、消費者庁、東京都、厚生労働省の皆様にお越しいただいております。皆様におかれましては、お忙しいところを御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
医療機関債の勧誘をめぐるトラブルにつきましては、昨年度から各地の消費生活センターに多くの相談が寄せられて、昨年8月には国民生活センター、本年1月には消費者庁が、一部の医療法人が医療機関債の発行にあたって、強引な勧誘や虚偽の説明等の不適正な勧誘行為をしたとして注意喚起を行っておりますけれども、当該医療法人自体は、同様の勧誘行為を繰り返していたと伺っております。
本日は、医療機関債に関する消費者問題等について、国民生活センター、消費者庁、東京都の皆様から現状について御説明をいただきまして、その後、質疑を行いたいと思います。
それでは、まず国民生活センターから説明をお願いしたいと思います。説明は10分ぐらいでお願いできればと思います。

○国民生活センター保木口相談情報部相談第2課長 では、説明させていただきます。
国民生活センターでは、今、御紹介いただきましたように、昨年度の4月当初から、こちらの医療機関債の問題に関して注目しておりました。8月の段階で一度、手口について公表しましたが、その後も残念ながら簡単には件数がおさまらず、今年度に入っても、当時と比べたら件数は少ないながらもまだおさまらない状況ということで、このような場を設けていただけたのだというふうに理解しております。
実際の件数の部分を中心に、本日はデータを用意してきましたので、細かい部分について、担当の加藤から、もう少し詳しく説明させていただきたいと思います。

○国民生活センター相談情報部相談第2課担当者 国民生活センター相談情報部の加藤と申します。
資料1に従いまして、詳細について御説明できればと思っております。
まず初めに、PIO-NETに見る相談の概要ということで、7月31日現在の数字をまとめております。2ページ目にグラフがありますけれども、こちらをごらんいただければと思います。
総件数は、2011年度以降、医療機関債全体で448件寄せられています。ピークとしては2011年の6月から8月ごろで、40~50件程度寄せられていました。その後、注意喚起ですとか、消費者庁の事業者名公表等により、ある程度件数は減少していますけれども、依然として10件以上寄せられているという現状にございます。
また、2012年1月20日に消費者庁の方で公表を行っていただき、その後、7月17日に、出資法違反で大阪府警から現在捜索を受けている医療法人社団「真匡会」についてもグラフを作成しております。こちらも2011年8月あたりがピークになってはいますけれども、その後も、報道等により、医療機関債の契約をしたけれども、同じようなトラブルを出ているようで不安だというような御相談がいまだに寄せられている状況です。
データ上、真匡会の相談であることがわかったもの以外について、医療機関債全体の相談にはなっていますけれども、データ上、不明の業者のほかに、真匡会以外の医療法人社団の発行する医療機関債の相談もこのデータには含まれております。最近も同種の相談が寄せられているということで、トラブルが我々の注意喚起等で完全になくなったわけではなく、引き続き他の医療法人が同種のトラブルを起こすということで、そのおそれが非常にあるということで、我々の方では懸念をしているところです。
補足的な情報ですけれども、真匡会と契約した消費者の方が他の法人の医療機関債を勧誘されるという件数も報告されておりまして、いわゆる二次被害のようなケースでトラブルが生じているところもございます。あと、後ほど詳細を御説明差し上げられたらと思いますけれども、他の医療法人が勧誘の際に使っている資料が、パンフレットや契約書類について真匡会と酷似しているところもございまして、関連性等があればということで、我々の方では引き続き注視、あっせんを行っているところです。
2ページ目の(2)、医療機関債に関する相談の属性に移りまして、年代別、性別でまとめています。年代としては圧倒的に高齢者の方が多く、60歳代以上が8割を占めています。これは真匡会でも同じですし、他の医療機関債の販売でも同じ傾向が見られます。性別では女性が若干多く、7割になっております。
また、販売購入形態にも特徴がございまして、分析を行ったところ、電話勧誘によるトラブルが194件でほぼ5割、訪問販売がほぼ5割ということで、圧倒的に不招請勧誘のトラブルという特徴が見られます。
支払い金額についても、金融商品のトラブル全般に言えることではありますけれども、高額化しているということで、1口50万円の契約になっている関係で金額が高くなっているということはございます。
相談の事例についてです。典型事例については、昨年度公表した、参考資料1の3ページに掲載してある「主な相談事例」とほぼ同じ事例が、いまだ寄せられているという状況でございます。しつこい勧誘ですとか、利益ばかり告げられてリスクについて説明がなかったですとか、判断不十分者、御高齢でそもそも契約について理解されていない方々に対する勧誘がほとんどでございます。
続きまして、真匡会が勧誘の際に用いた資料ということで、簡単に御説明できればと思います。参考資料2をごらんいただければと思います。枝番で1、2、3とつけております。
初めに参考資料2-1ですけれども、こちらが勧誘の際に消費者に配布するパンフレットでございます。見ていただければとは思いますけれども、医療に関する一般的な事柄がこちらには書かれていて、さも信用できる病院だというようにパンフレットでは見せていますけれども、この医療法人社団について、具体的にどのような取引をしているのか、どのくらいの規模で診療を行っているかなどはほとんど記載がなく、消費者にとっては、そこが本当にお金を出すにふさわしい法人なのかということがわかりづらい資料になっているところが、特徴として一つ言えると考えています。
続きまして、参考資料2-2につきまして、我々が問題点として考えている部分を御説明できればと思います。発行趣意書というものが表になっているものでございまして、ページを1枚おめくりいただければと思います。そこには、医療機関債利払い表一覧という形で記載がされています。利率4.1%ですとか、利払日には幾らもらえるのかというような一覧が記載されています。
私どもとしては、ここの資料については非常に問題と考えておりまして、単なる金銭消費貸借ではなく、さも、預金ですとか、社債といった金融商品と誤解させるようなつくりになっております。あたかも預け主の便宜のために契約するように見えて、このような書類をつくって契約させることは、出資法違反の可能性があるのではないかということで注視しておりました。実際に大阪府警では出資法違反で捜査されていますけれども、ほかの法人でもこれと同じような書類が使われておりまして、我々としては問題なのではないかと考えているところです。
もう1点、医療機関債発行要項の2ページ目です。ちょっと細かくて申し訳ない部分もありますが、「財務上の特約」というのが中段の辺りに記載されています。こちらには、「当医療法人真匡会は、財産目録、貸借対照表、損益計算書、事業計画書及び事業報告書を毎年、当医療法人の指定する方法で開示します」という記載はありますけれども、実際にこれが開示されたケースは確認ができませんで、私どもの方でも、真匡会についてこの部分の開示を求めてはいたのですが、結局、開示されることはございませんでした。
仮に勧誘等が真っ当であったとしても、貸借対照表ですとか損益計算書によって、当該医療法人がどのような経営状態なのかということがわからなければ、消費者はリスクについて適切に把握することはできないので、ここの部分が開示されていない段階での契約は非常に問題があるのではないかと考えております。こちらも、新たに複数寄せられている医療機関債の相談でも開示されていることは確認ができておりませんでして、ここの部分が、トラブルについて非常に問題になっている部分の一つではないかと考えているところです。
簡単ではございますが、以上でございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
引き続きまして、消費者庁から説明をお願いいたします。

○消費者庁黒田消費者政策課長 消費者庁消費者政策課長でございます。
お手元の資料2でございますが、先ほど国民生活センターからほとんど説明がございましたので、私どもの注意喚起を出した経緯について、簡単に申します。当初から連絡を取り合いながらやっておりましたし、東京都の医療政策部とも連携しながら本件の情報収集等に努めております。注意喚起をして、東京都でもいろいろ取組をされている中で、一度、医療機関債を発行しない旨を公表されたということで、更に様子を見ていたのですけれども、その後も新たな勧誘を行っている。しかも、行っていなかったことについて、しっかりと説明もしないまま勧誘していたということがございましたので、その点を問題視して、私どもとしては資料2にあるような注意喚起を公表した。それが今年の1月20日でございます。
注意喚起の際には、私どもが公表してもいろいろ取り上げていただかないと余り意味がないのですけれども、なかなか難しかったというか、残念ながら当時は余り話題にならなかった。事件が進むにつれて最近はだいぶ報道されるようになってきて、国民の皆さんには是非、真匡会については注意をしていただければというふうに、ここでも改めて申し上げさせていただきたいと思います。
私からは以上です。

○河上委員長 ありがとうございました。
それでは最後に、東京都から御説明をお願いいたします。

○東京都赤羽生活文化局消費生活部消費者情報総括担当課長 東京都生活文化局の赤羽と申します。よろしくお願いいたします。本日はこのような機会を設けていただきまして、どうもありがとうございます。
本案件につきましては、これまで、国民生活センター、消費者庁から御説明があったとおり、東京都の認可医療法人でございますので、その経緯、対応につきまして、現状と課題について御説明させていただきたいと思います。
お手持ちの資料3をごらんくださいませ。当初、東京都では福祉保健局の医療政策部において対応しておりました。その際、消費生活行政部門として協力を求められまして、その対応を検討したところでございますが、やはり諸々の問題がありまして、結果的には都の消費生活部署では対応できず、全国に広がったということもございますが、消費者庁において対応していただいたということでございます。
それを踏まえまして、医療安全行政と消費生活行政の2点から御説明させていただきたいと思っております。
医療機関債の説明、発行の根拠、また、発行形態については資料記載のとおりでございまして、医療法人につきましては、医療法人社団の真匡会戸山公園クリニック、現在はまだ休業中でございますが、そこと、勧誘販売を行った共同医療事務センター株式会社、この2者がいるところになかなか対応が難しかった点がございます。
まず、医療安全行政としての問題点といたしましては、医療機関債発行のガイドラインでは、本来の医療機関債の発行趣旨というのは、地域住民ですとか、医療法人関係者が出資して地域の病院を支えるという、すばらしい理念があるということですが、この趣旨と異なって、全国で不特定多数の人に対して勧誘販売が行われた。医療法人は一般消費者から見まして公益性が高く、社会的な信用力があることから、購入された消費者は「社会のお役に立つなら」というような感覚で、また、元本保証というところで出資に応じてしまう高齢者が多々見受けられました。ガイドラインにつきましては、遵守すべきルール等は明示されておりますけれども、法的拘束力がないというところで悪用されてしまったのではないかと思っております。
また、医療法でございますが、医療政策部が対応するのは医療法第63条、64条に基づき、医療法人への立入検査、文書による措置命令等を実施しています。これはかなり厳しくやったのですけれども、命令に違反した場合の罰則が具体的にはないというところが問題を難しくしております。しかも、立ち入り等、命令に対しての最終的な権限というのが、設立認可の取消しということになりますので、認可の取消しをいたしますと医療法人の解散ということになります。この案件に関しましては、解散となってしまった場合、資金の回収が不可能となりますので、実施はかなり困難ということになります。
また本法では、医療法人に対する権限ということはあるのですけれども、発行事務代行者への直接指導が行えないという点がございます。また、医療法の目的とするものが、医療を受ける者への良質かつ適切な医療の提供という趣旨が目的にございますので、医療機関債の購入者である消費者保護という観点が、残念ながら、ないということがございます。
医療安全行政としての今後に向けた課題です。医療機関債による資金の調達は、良識ある医療法人の経営方法の一つであり、また、規制についてバランスも必要と思いますけれども、現在も各地で勧誘行為がまだ行われている現実を踏まえまして、悪用されることも想定した医療機関債の発行前、発行後の第三者によるチェック機能、また、法的拘束力の付与等を御検討いただければと思います。
また、一般消費者が金融商品である有価証券と誤認しやすいということで、単なる借金であるということなど、債券の性格を明確にあらわした名称への変更なども要望したいと思います。
続きまして、消費生活関連の事案につきましては、私どもの取引指導課長の松下から御説明させていただきます。

○東京都松下生活文化局消費生活部取引指導課長 松下でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
私から、資料のII番、消費生活関連法の隙間事案としての問題点について、御説明させていただきます。
医療機関債につきましては、お手元の資料の上の方に定義がございます。医療法第39条の医療法人が、民法上の消費貸借として行う金銭の借入に際し、金銭を借り入れたことを証する目的で作成される証拠証券が医療機関債でございます。私ども、今回のように業法のみで解決し難い場合には、消費生活関連法での対応を検討するのですけれども、当該案件について、都道府県の立場から、どんなふうに対応し難かったのかということについて御説明したいと思います。
まず1つ目が、特定商取引法に係る問題でございます。都道府県の場合、特定商取引法の法執行の権限がございます。福祉部門の方からも相談を受けたわけですけれども、特定商取引法の規制対象というのは、あくまで商品とか権利の販売及び役務の提供が規制対象になっております。当該案件につきましては、先ほど、医療機関債の定義のところで御説明しましたように、あくまでも消費者が事業者に対して金銭を貸し付ける行為というふうになっているために、今回、特商法は適用できないということが検討結果としてわかりました。先ほど国センの御説明にもございましたように、訪問販売、電話勧誘販売という形で高齢者に対して勧誘が行われていたわけで、特商法で規制をしている取引類型として、訪問販売、電話勧誘販売、通信販売等がございますけれども、こういった形での勧誘が行われていても特商法では有効な規制はできないということでございます。
2つ目、消費者安全法でございます。当該案件につきましては、消費者庁が今年の2月に、消費者安全法15条に基づいて消費者に対して注意喚起をしていただいて、その結果、事態もだいぶ沈静化したのではないかと思っておりますけれども、都道府県知事に関しましては、消費者安全法については権限は限定的なものというふうになっています。
具体的には、都道府県知事の権限は、消費者庁が事業者に対して勧告、命令等の措置を取ることができるような重大事故等の場合、こういった重大事故等の隙間事案に関してのみ権限があるということになります。なおかつ、隙間事案について、都道府県が有している権限は、法定受託事務と位置づけられていますが、報告徴収と立入調査権限のみになっております。措置の権利行使主体はあくまで消費者庁にあるということになりますので、自治体において、事業者に対して直接勧告等を行うことはできない形になっています。
参考までに、東京都消費生活条例を御紹介したいと思います。私どもは都で消費生活条例を定めて、この条例におきましては、特商法とは異なって事業者が消費者と行う取引全般を対象にしています。今回の医療機関債みたいなものも対象にすることは、やろうと思えばできます。具体的には、勧告という措置を持っておりまして、事業者名を公表して違反事項の是正とか、規定遵守を図らせるということは可能というつくりにはなっています。ただし、条例でございますので、消費者安全法のように、勧告に従わない場合の罰則はないというのが条例の限界かなというふうにも考えております。
今回は、真匡会が全国的な勧誘を行って、特に関西の方で勧誘が激しかったというふうに聞いています。事業者は新宿区、都内にいるわけですが、都民の被害の状況は余り明確な事例がなかったということもありまして、結果的には、条例等で何かしらの対応を図ることはなかったのですけれども、今後、都内でも類似の事例が起きてくる事態は容易に想定されるのではないかと考えております。
そこで、今後に向けた課題ということでございます。高齢者等を狙った利殖商法、もうけ話に係る被害が、近年、非常に増えてきているという状況でございますので、こういった状況に鑑みますと、被害の拡大防止のためには、隙間事案に対して、都道府県の消費生活行政の立場からもなるべく迅速に案件に対処できるように対策を講じる必要があるのではないか。そのためには、今、ちょうど消費者安全法の改正などもいろいろ御検討いただいているところだと思いますけれども、強制力の働く措置権限の付与なども視野に入れて法の整備等を検討していただければありがたいと考えているところでございます。
私からは以上でございます。ありがとうございました。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
なお、本日は、医療法を所管する厚生労働省にも御出席いただいておりますので、厚生労働省への御質問、御意見を含めて御発言をお願いしたいと思います。
井上指導課長から、今の話でコメントすべきことがございましたらお話しいただいても結構ですが、いかがですか。

○厚生労働省井上医政局指導課長 今回の真匡会、共同医療事務センターのこの問題というのは、ガイドラインを平成16年につくったわけですけれども、そのときに想定していた医療機関債の趣旨からすると、だいぶ外れた運用がなされてトラブルになった、非常に残念な事案だと思っております。
トラブルが起きた大きな問題の一つと私どもが考えているのは、先ほど東京都からも御指摘がありましたけれども、本来、医療機関債というのは、地域の住民の方、医療法人の役員、職員、その縁者の方、地域の銀行とか、医療法人と一定の関係性のあるというか、顔の見える関係性のある方から資金を出していただいて、それで病院の建替え費用とか医療機器の購入などに充てていく。地域の関係者で病院を支えていくという考え方の下で、そういう一つの資金調達手段をルール化する必要があるのではないかということで行われました。
今回、トラブルになった事案のように、全国の不特定多数の人に販売するとか、医療法人がダイレクトに販売するのではなく、これで言うと共同医療事務センターのような別の会社に委託して不特定多数の方に販売するみたいな、こういう形態というのは、そもそも医療機関債のガイドラインをつくったときに想定していた形態ではないわけです。平成20年ごろ、実態をある程度把握したことがありまして、やはり地域の顔の見える関係者が買っているという事例だったのですが、最近トラブルになっている案件は、もともと想定していた販売形態とは違う売り方をしている。そういったことも踏まえて、今のガイドラインについても、我々としても見直しの検討をしていかなくてはいけないなという考えを持っております。
それとともに、その前提として、実態把握、医療機関債の発行の実態がどうなのかということを、例えば定期的に医療法人から報告を求めるとか、そういう仕組みはありませんので、今までそういう把握がきちんとできていないということがあります。医療法人の監督官庁は都道府県なので、都道府県の御協力をいただきながらということになると思いますが、医療機関債の発行の実態把握も今後行った上で、今のガイドラインを見直すことも検討していきたいと考えているところでございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
消費者庁、どうぞ。

○消費者庁黒田消費者政策課長 これから御議論いただく上で論点をしっかり整理しておいた方がいいと思いますので、あえて私どもの考えを申し上げたいと思います。特に消費生活関連法として隙間事案としての問題点という形で、当庁所管の法律で掲げられておりまして、ちょっと基本的な認識が違うところがあるので、逆にこの場で是非お伺いしたいと思っていることがあります。
そもそもこれは厳密に言うと隙間事案でも何でもなくて、東京都が医療法に基づいてしっかりと処分をすれば、それで本来終わる話ではないのかということです。例えば医療法の64条、「都道府県知事は、医療法人の業務もしくは会計が法令、法令に基づく都道府県知事の処分、定款、もしくは寄附行為に違反し、また、その運営が著しく適正を欠くと認めるときは、当該医療法人に対し、期限を定めて、必要な措置をとるべき旨を命ずることができる」。その命令に従わないときに役員の介入を勧告することができるとか、そういった権限があるわけで、運営が著しく適正を欠いているとか、そういう部分で読めないのか。それは医療法人はできないという部分については、医療法上できないのか、東京都として医療法を運用できなかったのかという部分がはっきりしないと、そこから隙間に行くという話はまた別の話になるのではないかと思います。
権限が行使できていればそこで終わった話かどうかという議論も当然あると思いますし、逆にやるのであれば、まさに安全法で言えば実際には措置要求、15条ではなくて16条ということも当然あったのではないかと思います。私どもは実際、医療の当局とは連絡をとり合っていて、対応をとられているので、その辺、あえて措置要求をするほどの話ではないだろうと。既に情報も東京都さんは持っているし、実際にヒアリングもされているということで、そういった措置をとる必要はないということもあったのですけれども、勧誘が終わらないので、我々ができることとすれば何がということで、15条はやったのですけれども、強いて言えば、そういう意味では隙間以前の、東京都がこれについてどれだけ医療当局がやるかという部分が最初にあるべきである。そこの議論が飛んで、突然、特商法だ、安全法だという話に行く前に、そもそもこの件は医療法でどこまでできたのかという部分をしっかり議論しないと、そういったことにならないのではないかというふうに思います。

○河上委員長 山口委員、どうぞ。

○山口委員長代理 いろいろ議論があった中で、今、黒田課長がおっしゃったことも含めて、一つの問題は、先ほど井上課長がおっしゃった内容と絡みますが、医療法人の医療機関債発行の問題だったら監視が可能かもしれませんが、医療法人自ら発行するのではなくて、発行を委託するわけです。医療法人を監督しているセクションは、委託されて医療機関債を発行する、売る販売者の方に手が届かないというふうに聞くわけです。つまり、医療法人がやっている行為と医療法人から委託を受けた会社がやっていることが、巧妙に分けられている。一方で役所の方で、消費者問題を担当しているセクションと、医療法人を指導監督しているセクションとの連携がうまくいっていないという部分がある。
その辺をきちっと厚労省が、発行と医療法人の運営とが不即不離で監視できるように、指導監督あるいは実態把握をなされるシステムができていればいいのですが、果たしてちゃんとなされているのかなというところが大きな疑問としてあります。ですから、厚労省にお聞きしたいのは、そういう医療機関債、残念だとおっしゃったけれども、残念で済む問題ではないと思います。医療法人が委託している販売会社がやっている行為について、これは医療法上、どこまで手が伸びているのか。その辺の実態把握についてお聞きしたい。
2番目は、連携です。つまり、消費者部門と厚労省の医療法人部門との連携の体制がどうなっているのか。今、黒田課長は、消費者庁の方から厚労省との情報交換もきちっとなされたようなことをおっしゃっていますが、その辺がちゃんとパイプができているのかどうか。
3番目は、ガイドラインの見直しに当たって、ガイドラインを拝見したのですが、出資法違反にならないようにしなさいと書いてあります。ところが、出資法のどこに違反するのかが書いていないのです。出資法では4つ要件があって、不特定かつ多数の者が相手であること、金銭の受け入れであること、元本の返還が約されていること、4番目が、主として預け主の便宜のために金銭の価値を補完することを目的とするものであること。4つ要件があると言われていますが、違反しないようにしなさいというだけのガイドラインでは、抽象的でわからないです。その辺についてどういうふうに具体的に考えて、出資法違反にならないようにしなさいとお考えになっているのか。あるいは、ガイドラインを今度改定するに当たって、どういうふうにそれをチェックするつもりなのか。
それから、先ほど指摘がありましたけれども、情報の開示がきちっとなされていない。その辺もするようにしなさいと言った場合、なされていない場合にはどういうペナルティを科すということでお考えになっているのか。その辺、御説明いただければと思います。

(阿南消費者庁長官退室)

○河上委員長 井上課長、どうぞ。

○厚生労働省井上医政局指導課長 共同医療事務センターのような別の会社に委託して販売していることの実態の把握ということですけれども、まず、実態自身は、先ほど申し上げたとおり、定期的に実態を把握するような仕組みがないので、これから都道府県の御協力もいただきながら実態を把握していきたいというのが現状でございます。
消費者行政との連携体制に関しては、この事案に関しては国レベルでも消費者庁と情報交換、連携をしながら進めております。また、今年1月に消費者庁が注意喚起の報道発表をされた際には、都道府県に対しまして、医療法人の不適切な資金調達の情報を把握した場合には、都道府県における消費者担当部局との連携の下に、速やかに対応するようにという注意喚起を都道府県に対しても行ったところでございます。
それから、ガイドラインの見直しについてでございます。これは、今日いただいた御指摘なども踏まえながら、また、実態もこれから把握しようと思っていますので、見直すべきところがあれば直していきたいということでございます。その際には、都道府県の御意見を伺うとか、また、病院会計などの専門家の御意見も伺うとか、そういった形で、できるだけ適切なものになるようにしていきたいと考えております。
情報開示の問題は、今のガイドラインに情報開示を求める規定は入っているわけですけれども、それが行われない場合、医療法でも、医療法人の運営が著しく適正を欠く疑いがあると認めるときは、監督官庁である都道府県が、報告徴収、事務所への立入検査、場合によっては業務の停止、認可の取消しまであるわけですが、こういった権限を行使する中で、できるだけ適切な情報開示がなされるような指導をしていくことかというふうに考えております。

○河上委員長 山口委員、どうぞ。

○山口委員長代理 よくわからなかった2点だけ。そうすると、発行会社がやっている行為が不適切な場合には、医療法人に対する処分とかそういうのも可能なのかどうか。

○厚生労働省井上医政局指導課長 そこも実態だと思いますけれども、例えば委託先が、まさに出資法に違反するような不適切な販売勧誘をやっていることを知っていながら委託を続けているという場合。

○山口委員長代理 そう簡単に素直に、知っていたとは言わないでしょうからね。

○厚生労働省井上医政局指導課長 そうですね。それが明確である場合には、医療法人の方にも責任を問い得るのではないかとは思います。

○河上委員長 これは通常の履行補助者ではないのですか。履行補助者あるいは受託者として医療法人の手足になって動いているとは考えられないのですか。

○厚生労働省井上医政局指導課長 ちょっとその販売契約の形態がどうなっているのか。

○河上委員長 そういうふうに考えられそうですがね。
小幡委員。

○小幡委員 医療機関債は、そもそも医療法人がないと発行できないわけですね。

○厚生労働省井上医政局指導課長 はい。

○小幡委員 そうすると、もとの医療法人が自分のところの医療機関債というのを、この場合であれば、共同医療事務センター株式会社というところに委託しているのです。当然、医療法の所管、厚労省、本件では東京都が医療法人の監督権限を持っているから、まずは医療法人の機関債なのですから、そちらに対してしかるべき監督をするということになると思います。厚労省の部署としてはそのようにお考えだということでよろしいですか。

○山口委員長代理 それが、厚労省はどうもそういう考えではないのですよ。

○小幡委員 もとは医療法人だということは明らかですが。

○厚生労働省井上医政局指導課長 発行元は医療法人で、その勧誘とか販売を委託しているということですから。

○小幡委員 委託しているのは医療法人そのものです。

○厚生労働省井上医政局指導課長 もとは医療法人なので、そういう意味では委託先が例えば違法なことをしていたときに、医療法人の方に全く責任がないとは通常は言えないのではないかと思います。

○河上委員長 東京都でこの問題に対応されたときに、例えば医療法64条の運用の中で、医療法人に対して一定の監視行為を行うというようなことは考えられたのですか。

○東京都赤羽生活文化局消費生活部消費者情報総括担当課長 その辺りは63条、64条を駆使しまして、文書による命令、立入検査も行いまして、報告書の徴収ですとか、それは何回もやっております。それが不備であるものについては、出向くですとか、都庁の方に来ていただくですとか、そういったところの指導を今でも続けております。先ほど議論になっておりました事務代行の業者に対しても、医療法人に対して、委託業者の監督責任としてそれをやめさせるようにですとか、そういったところも指導はしております。
ただ、それでも発行がやまらない、また、弁明の付与ですとか、そういった手続を取っている間にどんどん購入者が増えていってしまう。そういう実態で、医療法の限界まで指導はしているという認識でおります。

○河上委員長 細川委員。

○細川委員 この議論を聞いていて、非常にまどろっこしく感じます。黒田課長が言われたとおり、私はこれは隙間事案だとは思わないです。そもそも法律的な契約の性格として、金銭消費貸借なのに、医療機関債という名称を厚労省が認めてガイドラインをつくっている。そこがそもそもわからないし、消費者庁も国センもどこも、医療機関債の販売勧誘に気をつけましょうとか、購入に気をつけましょうと言っていること自体がおかしくて、これは、ただ人に金を貸しているだけだと。だから、医療機関債といかにも金融商品であるかのように言っていること自体がおかしいというところからやらないと、医療機関債という商品が正当なものとして市場に存在しているかのようなところで、隙間事案だから特商法でどうしようとか、そんなことを言っている感じがします。初めに厚労省が医療機関債という名称をつけたところが間違っている。
ただ、そのときは、地域の人が買うという、信頼関係でしか成り立たないという想定だったからというところで免責があるとしても、明らかにそうではない多数の人に売っているわけだから、これは早急にガイドラインを変えて、名称も使わせないようにするとか、あるいは、今、医療機関が委託する形で販売しているわけです。そこからして初めの趣旨と違うわけだから、厚労省が素早く対応すればいいのに、それをやっていないがゆえに、消費者行政サイドの人がいろいろ駆使して、何か対応を考えているという状況ではないかなと思います。厚労省は、自分のところの責任だという形で素早く対応できないのでしょうか。

○山口委員長代理 それにあわせて聞きたいのですが、厚労省は、幾つの医療法人がトータルで幾らぐらいの医療機関債を発行しているかというのは、把握されているのでしょうか。

○厚生労働省井上医政局指導課長 把握できておりません。

○山口委員長代理 では、細川委員の御質問にお答えください。

○厚生労働省井上医政局指導課長 ということで、私どもとしてはまさに実態を把握できていないので、実態把握を早急にやるとともに、ガイドラインについても、今回の問題のよって来るところも踏まえて、そこはできるだけ早急に見直しも取り組みたいと思っております。

○山口委員長代理 私が言うのは変なのですが、金融商品取引法は社会医療法人債というのが適用対象になっています。ところが、医療機関債は金融商品取引法から除外されているといいますか、適用になっていないですね。その辺のいきさつもいろいろあると思いますが。

○厚生労働省井上医政局指導課長 先ほど申し上げたとおり、医療機関債は、不特定多数の方に金融商品として売ることを想定したものではなくて、地域の住民とか、医療法人に何らかの縁のある方に医療機関を支えてもらうという趣旨でガイドラインをつくったものです。ただ、今のガイドラインだと、その趣旨に合わない売り方もできてしまうものになってしまっているので、そこはできるだけ当初の趣旨に立ち返った形での見直しをしたいと思っております。

○河上委員長 小幡委員、どうぞ。

○小幡委員 もともとの原因は、医療機関債というよくわからない用語がつくられたことだと思いますけれども、それが本来の趣旨と違って使われてしまった。今、東京都が弁明の機会を与えつつ指導をしているというお話がございましたが、具体的に命令等は発していないのですか。行政指導だけですか。

○東京都赤羽生活文化局消費生活部消費者情報総括担当課長 現在は、医療法に基づく指導、そういったものはしておりますけれども、なかなかよしとするものが報告されない、出てこない、そういった現実がございます。

○小幡委員 先ほどからのやり取りで、医療機関債というのは、不特定多数の人に売る商品としては考えていなかったわけですね。そういうやり方をしてはいけないのにされているとわかったら、医療法に基づいて、行政指導とおっしゃっていますけれども、これは指導ではなくて、当然、命令等に行かなければいけないと思います。この事務自身は都道府県になっているのはわかるのですけれども、そもそもガイドラインなどをつくって医療機関債を認めたのは厚労省なので、そこは医療法を所管する立場として、こういうものについては速やかに命令等で止めるべきであるということをまずおっしゃっていただいた方が、東京都もやりやすいのではないかと思いますが。

○山口委員長代理 井上課長がせっかく指導課長なのでお聞きしたいのですが、医療法上不適切だということで医療法人を処分したというのは、どんな理由でもいいですが、どの程度ありますか。

○厚生労働省井上医政局指導課長 今、担当者が調べておりますので、後で。

○山口委員長代理 ほとんど処分なんかできていないのではないかと思います。

○小幡委員 実態はそうかみしれませんが、今、こういう状態になっていて、要するに行政指導だけでは止まらない状態ですね。

○東京都赤羽生活文化局消費生活部消費者情報総括担当課長 不特定多数に販売してはいけないとか、そういった内容はあくまでもガイドラインの趣旨を説明するものに書いてあるだけですので、そこに強制力がどこまであるかというところが問題になるかと思います。医療法で行う指導というのは、患者さんに適正な医療を提供するための医療法人としての健全な運営という、その観点からの指導権限があるということですので、具体的に医療機関債を発行してはいけないとか、そういったものは法的にはないということがございます。

○小幡委員 医療法の目的と違う、ということをおっしゃりたいということですね。

○河上委員長 黒田課長、どうぞ。

○消費者庁黒田消費者政策課長 これを読めば、会計とかいろいろ書いてあるので、運営とかできるはずだと思いますけれども、現場の感覚でもしかしたらということで、参考にならないかもしれませんけれども、マスコミも書いてくれなかったという部分もあって、我々が常に実名を挙げるときに躊躇する現場の思いというか、権限があってもなかなかできない部分というのは、実際にこのクリニックは存在していて、透析患者さんもいらっしゃったという事実も認識しています。
ここで業務停止して、しかも、我々はこれをかなり怪しいと思っていましたが、もしかしてそうではない場合、取り付け騒ぎが起こって本当につぶれてしまった場合、その患者さんはどうなるのか。そういったことを全く考えなかったわけではなく、そういう部分があるので、実際に停止とかできても本当にそこまでやるのかという部分について、医療法の運用を私どもは知らないのですけれども、安全法の実名公表をするときにも、私どもの運用としては、率直に申し上げて、現に医療機関債を持っている人にとってみれば迷惑この上ない実名公表ではありますけれども、そこは拡大防止と。それこそ不特定多数の人にこれ以上被害を防ぐのをまず第一に考えて、救済は、これから制度を我々もいろいろ考えていますけれども、安全法の運用としてはそういう考えでやっています。そこは、担当課長としてはかなり覚悟が要る決断であることは間違いないということを、ちょっとご参考までに。

○河上委員長 改善命令のようなことはできるわけですね。業務停止までいかなくても。

○消費者庁黒田消費者政策課長 できるのではないでしょうか。

○河上委員長 そんなことを含めて、先ほど山口委員から出ましたけれども、これまで、医療法上の改善命令とか、業務停止というのはあるのですか。

○厚生労働省井上医政局指導課長 担当者の手元にある資料で言うと、直近のデータで、平成22年度、1年間だけのデータです。この年は改善命令はないです。報告徴収まで行ったのが26件、立入検査が11件、休眠法人だったために設立認可を取り消したのが2件というのが、医療法人に対して指導監督が実際行われた1年間の件数です。

○河上委員長 小幡委員、どうぞ。

○小幡委員 医療の方について業務停止ということはあり得ないわけで、医療機関債の発行のところだけを、医療法に基づく改善命令で止められるかという話だと思うのです。医療機関債が、医療の用具を買ったり設備をよくすることに使うということであるとすれば、黒田課長がおっしゃったように、医療法の中での改善命令は可能だとは思いますが、医療機関債を認められたというそもそもの発端があるので、やはり厚労省の方でよく考えていただかないといけないかと思います。

○河上委員長 ただ、イラクディナールとかではないですけれども、医療機関債に関して仮に医療法人が止めたとしても、そこからあと、発行会社が勝手に名を使って売りまくると、これはまた別の投資詐欺の問題にはなりますね。だから、その辺は今度は厚労省だけの問題ではない。
消費者庁、どうぞ。

○消費者庁黒田消費者政策課長 その点については、今、提出中の消費者安全法で、注意喚起しかできない部分については何らかの措置ができるようにしようというふうにしているのと、先ほど、なかなか都道府県では安全法を使えないというお話がございました。確かに法律上の規定上は、直接権限を行使できるようには書いていないのですが、実際には措置の要請はできるようにはなっているということが一つ。
あと、立入検査等しかできないということですけれども、逆に実態は、東京都はちょっと別なのかもしれませんが、あらかじめ機動的にできるように、立入検査とかの委託を包括的に委任しようとしていますけれども、必ずしも御協力いただけない場合もある。むしろ私どもの説明は、そういった委託の権限を逆にうまく使って、つまり、最後の権限の行使の部分は消費者庁の名前でやらなければいけないですが、現場で事件を見つけたら、安全法に基づいて調べたいというのであれば積極的に言っていただければ、どんどんこちらの方でむしろ調査をお願いして、一緒に最後、消費者庁が出ていくというような運用の仕方もある。まずはそういうところから実績を、是非、自治体の方も安全法を利用してくださいというふうには呼びかけております。
勿論、将来的には、ほかの法律のように自治体が直接できるようにするという議論もあるのかもしれませんけれども、まずは、今できる範囲で実績を積み重ねていくことが大事ではないかと思います。今後、安全法が、今、お願いしているものがうまくいけば、そういった措置の権限もできるものですから、そういったものについてもできる限り自治体の方々と、事件は自治体で起きていますので、そういった運用ができるように私どもも地方自治体の方に積極的に働きかけていきたいと思っております。是非、そういう後押しを消費者委員会の方からもしていただければなというふうに思います。

○河上委員長 細川委員、どうぞ。

○細川委員 前に厚労省に対しては、エステ・美容医療についての建議も出したのですけれども、本当にひどい料金を請求するような、我々から見ればかなり悪質なことをしている医者もすごく多いけれども、それでも、民事上の契約上の問題だということで、処分もないわけです。厚労省の医療関係の部署も、お医者さんだけ見て行政をやっている時代ではもうないと思うのです。医療をめぐるステークホルダーの権利や利益も考えて、医療行政をやってもらう時代になってきていると思います。医療を取り巻く消費者とか、今回の場合は投資者ということになるかもしれませんが、そうした人たちの利益、それは国民の利益・権利だと思いますけれども、それも考えて行政をやっていただきたいというふうに思います。

○河上委員長 松下さん、どうぞ。

○東京都松下生活文化局消費生活部取引指導課長 隙間事案ではないのではないかというお話がありましたけれども、消費生活の現場、都道府県の現場としては、隙間事案と言わざるを得ない案件だったという意味で、隙間事案というふうにあえて書かせていただきました。というのは、先ほど黒田課長も、消費者安全法を一緒にというふうにおっしゃっていただいて、今、いろいろ改正も議論されています。今後の動きについては期待したいところではありますけれども、今の権限は非常に限られていて、あくまでも措置権限は消費者庁にある。私どもは報告徴収とか立入検査権限しかない。自治体として勧告ができるわけではなくて、先行きどうなるかわからない中での調査権限だけという状況でございます。
やはり消費者被害の未然防止、拡大防止を図るためには、迅速に動かなくてはいけませんので、ほかの部門から相談があったときにいち早く動くためには、なるべく現場で動きやすい状況を整えていただければというふうに思っておりますので、その辺、お含みおきいただければというふうに思って、一言申し上げさせていただきました。

○河上委員長 まだ論ずべきことがあるかとは思いますが、予定していた時間が来てしまいました。医療機関債に関しては、特定の医療法人の問題がクローズアップされましたけれども、それだけではなくて、同じようなことが今後も問題として発生する可能性がございます。それだけに、厚労省さんにおかれましてはガイドラインの見直しとか、発行にかかわるモニター、改善措置といったことについて、早急に対応していただければありがたいと考えております。これはやはり消費者問題ということになりますので、消費者庁と緊密に連携して対処していただければと思います。
消費者委員会としては、本日の委員会での議論も踏まえまして、被害の拡大を未然に防止する観点から、関係省庁に対して、医療機関債に関する消費者問題についての一定の提言を取りまとめさせていただきたいと考えております。また、皆様のお力をお貸しいただければと思います。それぞれの動きを、できるだけうまく後押しできるような提言をつくりたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
本日は、お忙しい中、審議に御協力いただきまして、ありがとうございました。

≪4.改正貸金業法について≫

○河上委員長 続きまして、「改正貸金業法について」でございます。皆様御承知のとおり、貸金業法につきましては、多重債務問題の解決と安心して利用できる貸金市場の構築を目的に、平成18年に改正されました貸金業法というのが、今、動いているわけであります。消費者委員会では平成22年6月に、同改正法が完全施行されることにあたりまして、同年3月の委員会で金融庁からヒアリング等を通じて調査審議を行い、完全施行後においても、同改正法の施行状況等についてしっかりフォローすることを要請いたしました。
他方、改正貸金業法の附則第67条によりますと、「施行後2年6か月を経過した後適当な時期において、改正後の規定の実施状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとする」と定められております。消費者委員会としても、完全施行後2年経過した現時点で、同改正法の施行状況や課題等について、把握しておく必要があると考えております。
本日は、金融庁、消費者庁、警察庁においでいただきましたけれども、関係省庁の皆様から、改正貸金業法の施行をめぐる現状あるいは課題等について御説明をいただき、その後に質疑を行いたいと思います。
それでは、金融庁から最初に御説明をお願いしたいと思います。説明は15分以内でお願いできればと思います。よろしくお願いします。

○金融庁西浦総務企画局企画課信用機構企画室長 金融庁総務企画局信用機構企画室長でございます。
本日は、お求めに従いまして、改正貸金業法の施行後の状況について、多重債務問題にかかわる政府の取組の経緯、概要等も含めまして御説明を申し上げたいと存じます。関係の資料は、資料4-1から4-6とナンバリングされたもの、できるだけ広範に御用意したつもりでございますけれども、先ほど委員長からお話もございましたように、時間の制約もございますので、すべてを逐一御紹介するのは少し厳しいかと存じます。ポイントを絞りまして、全体の流れが御理解いただきやすくなるように簡潔に御説明させていただきますので、あらかじめ御容赦をいただければと存じます。
まず、貸金業法の改正の経緯、概要でございます。経緯を申し上げますと、平成18年12月に、資料4-1の表紙を1枚おめくりいただいたページにございますような、当時の社会問題としての多重債務問題の深刻化を背景として貸金業法改正が行われています。
その中身に関しましては、次のページにございますが、法定上限金利を引き下げることに加えまして、貸金業者からの借入を、原則として借り手の年収の3分の1までに制限するという、いわゆる貸付の総量規制を導入することを内容とするものでございます。ここで、多重債務問題に対応する上で、必要と考えられた法律に基づく社会的規制を講じたということでございます。
また、平成18年12月の改正法の成立を受けまして、政府といたしましては、閣僚級の多重債務者対策本部を設置しております。これは閣議決定に基づき、関係閣僚をメンバーといたしまして、金融担当大臣を本部長とする本部でございますけれども、この本部で、有識者の意見、議論もあおいだ上で、翌19年4月に「多重債務問題改善プログラム」を決定してございます。資料4-2としてプログラムの概要をお配りしてございます。これが関係省庁が連携・共同の上、政府を挙げて取り組むべき施策のメニューということで決定を見たものでございます。
このプログラムの中身でございますけれども、上の四角囲みの真ん中に1~4と柱を記載してございます。まず1点目が、全国の自治体等に相談窓口を整備するということで、多重債務者の相談に親身に対応できる体制を整えること。2点目として、公的なセーフティネット貸付の提供を行うということ。3点目が、多重債務の発生を未然に予防していくために金融経済教育に取り組むこと。更には、ヤミ金融の撲滅に向けた取締りの強化を図るということを柱とするものでございます。
この改善プログラムにおきましては、改正貸金業法の完全施行に至るまでの間、少なくとも年に1回は施策の進捗状況をフォローアップすることになってございまして、本部としてのフォローアップを行ってきております。平成21年、22年における取組状況のフォローアップということで、資料4-3、当時取りまとめられたものをお配りさせていただいております。
多重債務者対策本部におきましては、19年度以降、第1の柱である相談体制の強化を図るために、全国の都道府県に呼びかけ、更に日弁連、日司連など関係団体の御協力もいただきまして、多重債務者向けの無料相談会の開催を集中的に行う多重債務者相談強化キャンペーンを実施してきてございます。本年も、来月9月1日から12月末日までをキャンペーン期間といたしまして、このキャンペーンを実施することとしておりまして、現在、関係機関・団体と協力・調整の上、準備に向けた対応を進めているところでございます。
冒頭に委員長からも貸金業法改正附則67条のお話がございましたけれども、改正貸金業法は、資料4-1の3ページ目にございますように、非常に大がかりな改正内容でございました関係で、完全施行に至るまでの間、段階的に施行を行っていくということで、平成19年12月から2年半をかけて、最終的に改正後の規制措置をフルに導入するという施行スケジュールになっておりました。完全施行までに至る2年半の間に、新たな規制を円滑に実施するためにどのような施策が必要か、その必要性の有無について検討を加え、その結果に応じて所要の見直しを行うことが附則に書かれておりました。
このため、平成21年11月、金融庁、消費者庁、法務省の政務三役を構成員とするプロジェクトチームを設けまして、関係者からのヒアリングなどを行い、その結果として、22年4月、「借り手の目線に立った10の方策」を取りまとめてございます。「10の方策」は、中身といたしまして、多重債務問題改善プログラムの柱にもなっておりました相談体制の強化、セーフティネットの充実、ヤミ金融対策強化を引き続きしっかり進めていくことを銘打つとともに、あわせて、総量規制などの新しい規制を導入するにあたり、運用面で完全施行を円滑に行うために必要な貸金業法の施行規則、内閣府令でございますけれども、それに必要な規定を設けるといったことを措置しております。
これは、立ち入ってしまうと御説明が長くなってしまいますので、「10の方策」のメニューと、それに対する対応状況を整理した資料を、資料4-4としてお配りさせていただいておりますので、後ほどお目通しをいただければと存じます。
申し上げたような経過をたどりまして、平成22年6月に改正法を完全施行いたしましたが、それをまたいでフォローアップを行うという観点から、改めて平成22年6月に、金融庁、消費者庁、法務省の政務三役を構成員とするフォローアップチームを設けました。ここで、改正法にかかわる制度の周知徹底、施行状況や影響についての実態の把握、あるいは、制度のフォローアップ、点検を進めることとされまして、ここで関係者のヒアリング、利用者の意識調査などを行ったという経緯がございます。
フォローアップチームによる実態把握や制度の点検を受けた結果を、資料4-5としてお配りさせていただいております。これが、平成22年6月から1年ほどかけたフォローアップ・点検の結果でございます。4ページ目の上の部分が結論でございますが、フォローアップチームによる作業の結果として、特段の制度の見直しが、施行後1年を経た時点で特に必要となるような事情は確認されないという結論に至りまして、この旨を23年6月時点で対外公表をしているということでございます。
フォローアップチームによるフォローアップ結果の公表から、現在までに1年余を経ているわけでございますけれども、現下の状況を示すデータに関しては、資料4-6としてお配りさせていただいております。これを順を追って御説明させていただきます。
まず、1ページ目でございます。ここには、金融庁、出先であるところの財務局、更には日本貸金業協会に寄せられた、1日あたりの苦情・相談件数の推移のグラフを掲げております。多重債務相談を含む貸金業等に関する相談・苦情の件数は、完全施行時、1日当たり300件程度あったものが直近では200件程度まで減ってきているということで、落ち着きを見せているというふうに見ております。
2ページ目は、貸金業利用者1人当たりの借入残高の推移を表にしてございます。1人当たりの借入残高は一貫して減少しておりまして、平成19年3月、改正法の公布の数か月後に117万円ほどのオーダーだったのが、直近では59万円になっているという状況でございます。更に、貸金業者から5件以上無担保無保証で借入を行っている残高がある人数というところで見ますと、同様に平成19年時点の171万人が直近では44万人ということで、大きく減少を見ているということでございます。
3ページ目、4ページ目では、貸金業者に借入残高がある方のうち、総量規制に抵触する方の比率あるいは延滞者の数でございます。これらもいずれも減少傾向にあるということでございます。
5ページ目でございます。これは、多重債務問題改善プログラムにおきまして最初の柱とされた、市町村における多重債務相談窓口の整備の状況でございますけれども、ごらんのように、順次進んできておりまして、現在、全体の93%に達する市町村に窓口が設置されている状況になってございます。なお、ここには書いてございませんけれども、47の都道府県にはすべて、都道府県段階での相談窓口が設置されているという状況でございます。
自治体における相談窓口の認知度を高めるために、相談強化キャンペーンを毎年秋に展開しております。これは資料の6ページ目が抜けてしまって、落丁があるようで大変失礼いたしました。6ページ目に、相談強化キャンペーンの中で、マスメディアを通じた広報宣伝等、あるいは関係機関の相互連携による呼びかけなどを行っているという1枚が資料として入っているはずでございましたが、そのようなことで、相談窓口の整備と、その体制の強化を政府としても後押しをしてきているということでございます。
そのような取組を進めてまいりました中で、7ページ目でございますけれども、ヤミ金融についての苦情等受付件数ということで、特に抜き出して件数を追った場合には、平成19年度の1万5,000件弱というオーダーから23年度には7,000件余ということで、これも大きく減っている状況でございます。
以上、御説明申し上げましたような状況を踏まえた政府としての認識でございますけれども、貸金業から5件以上の無担保無保証の借入の残高を抱えている方の人数で見ると、法改正直後の171万人が44万人になっているということで、多重債務者の数自体が大きく減っているということもございます。
それから、ヤミ金融に関する苦情の受付件数が大きく減少を見ている、あるいは、この後、恐らく警察庁から御説明があろうかと思いますけれども、ヤミ金融事犯の摘発件数も減ってきている傾向にあるということでございますので、私どもの認識といたしましては、改正法は多重債務者対策の上で相応の効果を上げていると思っております。したがいまして、23年6月にフォローアップをいたしました時点と同様の認識でございますけれども、現時点で、現行の貸金業法の制度について直ちに見直すべき点はないと考えております。この旨は国会での質疑などでも、金融担当大臣からこの間何度かにわたって申し上げているところでもございます。
以上で私の御説明とさせていただきます。

○河上委員長 続きまして、消費者庁から5分ほどで説明をお願いします。

○消費者庁黒田消費者政策課長 消費者庁消費者政策課長でございます。私から多重債務問題に関する消費者庁の取組を簡単に補足させていただきます。
消費者庁の役割としては、お金を借りられた方への対応策の一部を担っているという認識でおります。そういった方がどうしようということで相談に来られた場合、そういう方を適切な専門家に誘導していくのにいかに貢献するかということが一つの大きな取組でございます。全国の消費生活センターの相談員の方々がそういったことに対応できるように、研修を行うとか、マニュアルをつくるのを金融庁と共同でやったり、そういった取組をやっております。
消費者の方自身、そもそもそういったことに陥らないように、教材は金融庁等がつくっていますけれども、どういった教材があるかというのを一括して検索できる仕組み、消費者教育ポータルサイトを運用するといった形で情報提供を行っております。
あと、特定の問題といいますか、今回の改正貸金業法の完全施行にあたり、資料5-2の3ページですが、クレジットカードショッピング枠の現金化の相談件数が急激に増えるといったようなことが起こっております。この問題については現金化の防止のキャンペーンということで、消費者の方々に対して、現金化を利用しないような呼びかけを行ったり、情報提供といった面で取組を行っております。あとは、資料5-2、5-35-4はクレジットカードの現金化の実際にキャンペーンで使った資料等ですが、御参照いただければと思います。
簡単ではございますが、以上でございます。

○河上委員長 ありがとうございました。
それでは、最後に警察庁から御説明をお願いします。

○警察庁福田生活安全局生活経済対策管理官 警察庁でございます。
私どもからは資料6で1枚物をお配りしておりますので、簡単ではございますが、このペーパーに基づいて御説明させていただきます。
ヤミ金融事犯の検挙状況の推移でございますけれども、棒グラフで示してございます。平成19年からの統計を見ますと、毎年減っているという状況がうかがわれるところでございます。現在集計中で未公表になっておりますけれども、平成24年上半期の状況を見ましても、同様の傾向が見られるところでございます。
検挙人員、被害人員、被害額を見ましても、それぞれ減少しておりまして、全般的に事件自体の小型化が見られるかと思います。1人ぐらいでやっている事件も結構あるのかなと思われますが、総体として見れば、事件としては減っているところでございます。
これは参考までにつけさせていただきましたけれども、口座凍結のための金融機関に対する情報提供は大変重視してやっているところでございますけれども、この情報提供件数自体は、19年以降、毎年のように増えているという状況でございます。
続きまして、主な検挙事例でございます。(1)は、先ほど消費者庁からも御説明がありましたけれども、クレジットカードのショッピング枠の現金化の事犯です。この事犯につきましては、実は大分の事例で、今年になりましてから刑事事件化したものでございます。検挙日は昨年8月ですけれども、警視庁でショッピング枠の現金化事犯を出資法違反で検挙しておりまして、それの判決が確定しておりまして、昨年11月に東京地裁に出されています。その判決によりまして初めて、判例上もショッピング枠の現金化は出資法違反に当たるということが確定したところでございます。それを受けてここで御紹介しておりますのが、大分の事犯でございます。
また、今日は載せておりませんけれども、大分以外でも、その前に福岡で同じく出資法違反で検挙しておりまして、これも確定しています。それと、7月に入りまして、警視庁で全国では4件目のショッピング枠の現金化事犯の出資法違反での検挙をしているところでございます。(2)は大阪と岡山の事犯ですけれども、最近の事犯ということで掲げてございます。
簡単でございますが、警察庁からは以上でございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの御報告に対して、御質問、御意見のある方は発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
山口委員、どうぞ。

○山口委員長代理 御説明、ありがとうございました。金融庁と警察庁に伺いたいのですが、金融庁の御説明からも、貸金業法改正による多重債務者の減少、あるいは別のデータによりますと、経済的な問題を理由とする自殺者もこの間かなり減っているということも聞いております。貸金業法改正によって、社会的な問題の深刻さが少し軽減したのかなというところで、高く評価しておりますし、感謝しているところであります。
2つ、金融庁にお聞きしたいのですが、一つは、中小企業、個人事業者向けの融資の問題です。改正法に対してかなり批判をする向きには、総量規制によって中小企業、あるいは個人事業者の融資ができないがゆえに経済的にいろいろ困る、そういう事情もあるのではないかと。特に来年の3月末で金融円滑化法の措置が切れるということがあるので、その後、特にフォローアップの体制を相当強化しないと、いろいろ問題が起こる。かといって、高金利の融資をジャブジャブすれば中小企業は助かるかというと、もっと借金地獄に苦しむだけですから、それでは根本解決にならないと思うので、何らかのセーフティネットというのでしょうか、そういうシステムの拡充が必要だと思いますが、その辺はどういう体制になっているのか。そこについて伺いたいです。
その関係もありますが、収入のない主婦が借入をするにあたって、夫の収入証明まで出さないと融資が出ないと。プライバシーの問題とか指摘されるわけですが、これまた、夫に内緒で奥さんが高利のお金を借りることが果たしていいのかどうかという問題もあるので、借りやすくすればいいという問題ではないと思うのですが、その辺について金融庁ではどういう対策を講じておられるのか。これもお聞きできればと思います。
警察庁の関係で言いますと、金融庁の資料4-6という資料がございまして、この7ページに、ヤミ金に係る苦情等受付件数の推移というのがあります。これを見ると、金融庁や各財務局に対する苦情等の受付件数は非常に減っているということですが、都道府県に対する相談といいますか、苦情等の受付件数は必ずしも減っているようには見えない。そういう中で警察の摘発件数は減っている状況ではあるのですが、これをどう考えたらいいのか。ヤミ金の被害は減っているというふうに認識はしていいと思いますが、都道府県に対する相談との関係でどうなのか。これについては金融庁と警察庁の両方からお考えをお聞かせいただければと思います。

○河上委員長 では、金融庁、お願いします。

○金融庁西浦総務企画局企画課信用機構企画室長 それでは、最初の御質問2点に関しまして、お答えいたします。一つは、個人事業者向けの貸金業者からの貸付にあたっての総量規制の適用に関して、実は先ほど御説明を省かせていただきましたが、資料4-4の「借り手の目線に立った10の方策フォローアップ」のメニューの中で、1枚目の下の欄でございます。確かに個人事業者が借入をされる場合、原則として総量規制の制約がかかるわけでございますけれども、そこは、右の欄にございますように、ごく簡単なフォーマットによる事業・収支等の見込み、計画を示していただければ、総量規制の特例による借入ができるようにするという措置を「10の方策」の対応策の中で講じてございます。法律の施行規則、内閣府令においてこのような形をとりまして、個人事業者の方の事業資金需要になるべく円滑に応えられるようにという配慮をさせていただいているところでございます。
中小企業向けのセーフティネットに関しましては、これも先ほど、多重債務問題改善プログラムの中にセーフティネットの充実が一つの大きな柱になっているということを御説明いたしましたが、これは当然、消費者向けのものだけではなく、中小企業向けのセーフティネットも含まれるということで、政府としてしっかりそこに力を入れていくことが関係省庁共通の認識になっております。制度自体は財務省あるいは経済産業省の所管なので、私から踏み込んではお答えしづらいのですが、政策金融機関による融資、貸付ということで、中小企業対策は引き続ききちんとやっていくとの考えでございます。
それから、主婦の方の借入れに御主人の年収の証明が必要という点は、確かにいろいろ御意見のあるところではあると思いますが、やはり総量規制というものの趣旨からして、仕組みとしてはそれは必要ということだと考えます。これも「10の方策」のフォローアップの3枚目にございますように、年収の証明のために必要な書類の提出等については、なるべく負担がなるべくかからないようにする、これは主婦の方だけではなく、借り手一般にということでございますけれども、そのような手当も講じて、なるべく当事者の方々に過度な事務負担とならないようにという配意をさせていただきながら、総量規制の趣旨が損なわれないように制度の運用を図っているということでございます。少し不十分かもしれませんが、お答えとさせていただきます。

○河上委員長 続いて、警察庁からお願いします。

○警察庁福田生活安全局生活経済対策管理官 都道府県の相談件数でございますけれども、済みません、今日の資料ではお配りしていないのですが、実は警察の方でも警察安全相談と申しまして、いろいろな相談を受け付けております。ただ、これは警察の相談でございますから、必ずしも消費者問題に限らないで、かなりいろいろなのを幅広く受け付けております。その分、どこまで御参考になるか、そういうこともあって今日はお配りしなかったのですけれども、その中でヤミ金融関連という相談項目を設けて統計は一応とってございます。それを見ますと、平成19年で相談件数が約4万7,000件ぐらいございました。それが、平成20年で約3万7,000件、平成21年で約3万件、平成22年で約2万3,000件、平成23年で約2万2,000件となっておりますので、こちらの方の統計を見ますと、都道府県単位のものでも減っているというのは一応とれるかと思います。
申し遅れましたけれども、今、申し上げましたのは警察安全相談と申しますが、実態は各警察署なり都道府県警察単位でとっているものでございます。国でまとめてとっているものではございませんので、恐らく金融庁の都道府県の相談と本当は対比するものであろうと思います。 ただ、先ほども申し上げましたように、警察安全相談というのはいろいろな相談が来るので、精度という点ではそれに特化した相談よりは少し劣るかもしれないというのはあると思います。
簡単でございますが、以上でございます。

○河上委員長 ほかにいかがでしょうか。
細川委員、どうぞ。

○細川委員 ヤミ金の撲滅というのは非常に重要だと思いますけれども、ただ、刑事法規の消費者保護のための活用というのは、私はいろいろな分野で不十分だと思っていまして、そういう視点からお伺いしたいのですけれども、例えば、私の自宅にヤミ金融のチラシが入ってきたんですね。明らかにもっともらしい番号が書いてありますけれども、調べてみたら、その番号もウソだし、住所も検索してみたら実際にあり得ない住所でした。私は東京に住んでいるので、東京都の貸金業の担当課と、金融庁の場合は関東財務局ですね。あと、地元の警察に個人的に電話をしてみたのです、どういう対応をとられるか。どこも、自分の責任ではないみたいな、そういう視点なのです。ヤミ金融だから、貸金業者ではないから、行政処分はできないということになります。
ですが、このチラシも、自分は被害を受けないけれども、こんなチラシでだまされる近くのお年寄りがいたら本当に気の毒だなと思うから、私は連絡をしているわけですけれども、金融庁あるいは財務局は、そういった情報があったときにどういう対応をしているのか。自分たちはできないから、結局、警察の話です、警察へ行ってくれみたいな感じにしているのか、それを聞き置いて警察に伝えているのか。もっと言えば、本当は私は刑事告発ぐらいしてもらいたいと思いますし、あと警察の方は、私が電話したときに言われたのは、別にあなたは被害を受けているわけではないでしょうと。被害を受けていないのだったら警察は動けません、みたいな言い方をするわけです。
私が言っているのは、要は貸金業法上の無登録営業ということになりますけれども、これは被害者がいなければ警察は立ち入れない事案なのでしょうか。そうではないと私は思うので、その辺のところも非常に不十分だと思います。こういった問題は、医者ではない者が医療をやったとか、いろいろな分野でいろいろな消費者被害が生じていて、どこも無責任で、警察も余りやる気がないような部分があるものですから、その辺をお伺いしたいと思います。金融庁、警察庁と両方にお伺いしたいと思います。

○金融庁野崎監督局総務課金融会社室長 金融庁の基本的なヤミ金融の対応としては、細川先生がおっしゃられたような情報をいただいた場合、自ら取り締まれないので警察に情報提供をしますが、それ以外に、所在等がある程度確認できた場合には、直接電話をかけて、これは貸金業法違反、無登録営業に当たりますということで、警告するようにしております。

○細川委員 しっかり、どこでもそういうことをやるようになっていますか。

○金融庁野崎監督局総務課金融会社室長 基本的にはヤミ金対策としてそのような形でやることとしております。

○細川委員 警察への連携は余りないですか。

○金融庁野崎監督局総務課金融会社室長 警察には情報提供をしております。

○細川委員 地元の警察ですか。

○金融庁野崎監督局総務課金融会社室長 都道府県の県警に県単位で行っております。

○河上委員長 警察庁からお願いします。

○警察庁福田生活安全局生活経済対策管理官 まず、事件化ということですけれども、構成要件上、貸金業法の場合は業としてお金を貸し付けたということを立証しなければいけませんので、そうなってくると、被害者というか、実際に借りた人がいて初めて裏付けができるわけです。勿論、チラシがあった以上、実際に貸し付けている可能性は高いのですけれども、次に問題になってくるのが警察の中における優先順位です。同じヤミ金を検挙するのにどういう順番でやるかというときに、金融庁から情報をもらったり、PIO-NETで情報をとったり、いろいろな形で情報を集めていますけれども、実際に被害者が名乗り出てきた場合は、その事犯を優先的に事件化しております。こと事件化ということに関しましては、ある程度マンパワーがかかることもありますので、ちょっとでも端緒をつかんだらすべて事件にできるというほどの人員は残念ながらおりませんので、そこまではなかなかできていないというのが実情です。
一方で、これは前からやっておりますけれども、警告は、チラシを配っている以上は、犯罪をやっている可能性が高いので、それにつきましては、警告を実施しております。ただ、連絡がとれなかったらできませんが。

○細川委員 実施しているというのは、各警察署がそれを徹底していますか。

○警察庁福田生活安全局生活経済対策管理官 徹底するよう指導はしておりますけれども、残念ながら、ないのもあるのかもしれません。申し訳ございません。

○細川委員 資料6では確かに被害額は減ってはいますけれども、それでも23年度で117億です。しかも、これは被害救済されていますか。警察は民事救済には関与しないわけですし、これがどの程度救済されているかもわかりません。刑事法規であっても被害を生み出す前に、勿論、刑事法規は抑制的にというのはわかっていますけれども、うまく活用して、明らかにそういった行為をやっていれば、被害者が実際に出なくても取り締まれるような行政法規はいっぱいありますから、その辺のことができないのかなというのはちょっと私の個人的な考えです。

○河上委員長 ほかにはいかがですか。
吉田委員、どうぞ。

○吉田委員 金融庁にお伺いしたいと思います。貸金業法の改正と多重債務問題改善プログラムの進行によって、5年前と比べると大きくいい方向に向かっているというのは、私もそういうふうに思っていまして、御説明にあったとおり、現時点で制度の見直しが必要な事態ではないというふうに私も認識しております。一方で、多重債務問題改善プログラムの中で、進んでいる部分と、少し足踏みしているのではないかという部分があるように思われます。
具体的に言いますと、1番の相談窓口の整備・強化というのは、相当進んでいると理解しています。4番のヤミ金のところも、先ほど細川委員からお話があったとおり、もう一歩頑張っていかなければいけないところはあると思いますけれども、5年前に比べれば相当よくなっているというふうに思います。
問題だと思っているのが2と3のところです。2はセーフティネット貸付の提供ということで、かつて高利貸が弱い立場にある方のセーフティネットとしての機能があった。その部分を代替する、新しい安心して利用できるセーフティネットをどう広げていくかというところですが、まだ少し弱いのかなというふうに思っております。具体的な施策などは資料をいただいている中にありますけれども、いまひとつ、先に進んでいる感じがしないので、この先どういうふうに展開していくことをお考えなのかということをお聞きしたいと思います。
3番目の金融経済教育の強化というところですけれども、ここも、書かれている内容がそれほど進んでいるようには感じられないです。消費者教育推進法ができたこともあって、金融庁だけではなく、消費者庁や文科省と手を取ってやっていかないといけないと思いますけれども、この先の事業の展開のお考えをお伺いできればと思います。

○金融庁西浦総務企画局企画課信用機構企画室長 2点、お答え申し上げます。
責任逃れをするつもりは毛頭ございませんが、多重債務対策本部は、先ほどの繰り返しになりますが、関係省庁の各大臣にお入りいただいて、関係省庁挙げて政府として一体的に対策を進めていく中で、実はプログラム本文には、何をどこが担当するというのが括弧書きでそれぞれ明記されています。そこで責任省庁となっているところが今日はお越しになっていないので、余り私が立ち入るのは立場上難しいのですけれども、一つ、セーフティネットについて申し上げれば、中小企業向けのお話は先ほど山口委員にお答え申し上げましたので、それに譲らせていただきまして、個人消費者向けのセーフティネットについて申し上げれば、今、社会保障審議会で生活困窮者対策の文脈で、社会福祉協議会ルートで行われています生活福祉資金貸付制度などがございますが、これをどのように充実させていくか。これは生活保護の見直しともリンケージしながら、生活保護に頼らなくても済む方々を増やすためのセーフティネットの充実について、まさに議論がなされていると承知しております。私どももそれを注意を払って見守るとともに、厚生労働省のお求めがあれば可能な協力をしてまいりたいと考えてございます。
それから、金融経済教育が進んでいないのではないかという御指摘は、耳に痛いところでございますけれども、事の性質上、即効性が、目に見えて数字的にあらわれる部分がないというところで、つらいところがございますが、私どもで文部科学省とタイアップさせていただいて、今日はその関係の記述が詳しく入ったものをお持ちしていないのですが、強いて申し上げるとプログラムのフォローアップの部分にありますように、リーフレットをつくらせていただいています。貸金業からの借入に限らず、クレジットカードの利用であるとか、金融商品の購入も含めて、こういうところに注意を払っていただきたいということを、高校生、大学生から社会人の方々にもわかりやすく解説したリーフレット、パンフレットを発行してお配りさせていただいております。そういうものを地方自治体にも私どもでお配りしておりますので、これらが学校教育現場でもある程度活用いただけているのではないかと思っております。
学校での教育ということで申し上げると、承知しておりますところでは、中学、高校の学習指導要領にも、以前に比べれば、金融あるいは経済マターについて、教育をしっかり指導していくという部分の記述が強化されています。これもまた、文部科学省がおられないところで責任を持って代弁するのは難しいですけれども、少しずつ歩みは進んでいるというふうに認識してございます。成果を上げる上で、まだまだその取組を地道に重ねていく必要があることに関しては、委員の御指摘のとおりだと考えております。

○吉田委員 金融庁さんの采配に期待しておりますので、よろしくお願いいたします。
一つだけ、最後にお伺いしたいのですけれども、改正貸金業法が大きな成果を上げていると私も思っていますが、一方で、もう一歩先に進んではどうかというふうにも考えています。消費者が健全にお金を返していける利息というのが、利息制限法の20%上限でもまだ高いのではないかという話も聞こえてきます。シミュレーションした結果ということですが、8%とか9%という一説もあるというふうに聞いています。利息制限法を、更にこの後、消費者が健全に利用できるような利息に検討していく、要は下げていくということを、金融庁としてお考えがあるのかどうか。もしかしたら御担当が違うということもあるかもわかりませんけれども、何か情報があれば教えていただければと思います。

○山口委員長代理 その関係でちょっとよろしいですか。私はそれも申し上げようと思っていたのですが、利息制限法は明治10年に施行されていまして、当時は、100円未満が20%、1,000円以上が年12%という制限でした。大正8年に100円未満が15%、1,000円以上が10%となったのが、昭和29年の法改正で10万円未満が2割、100万円以上が15%となったわけです。これはデータを見ますと、当時の銀行貸出約定平均金利が年8~9%でした。ところが、今の平均金利は1.7とか1.4%なのです。だから、今の利息制限法の年20%とか年15%というのは、決して安くない。しかも、違約するとこれの倍を取れるわけです。そう考えると、その辺を見直すというのはあっていいのではないかなと思います。これは法務省が本来の所管だと思いますけれども、消費者庁、金融庁の方でどういうふうにお考えなのか、お聞かせいただければと思います。

○金融庁西浦総務企画局企画課信用機構企画室長 山口委員の御指摘のとおり、法務省のいらっしゃらないところで私だけがお話しすることの適否はあろうかと思いますが、一つ申し上げたいのは、法定の上限金利、その範囲内でどれだけ取られるかという実態は別として、法律上の上限については、御指摘のありました昭和29年以降、今に至るまでの経過を見てまいりますと、上限金利の水準自体は、政府提案ではなく、実はもっぱら議員提案で改正してきている経過がございます。上限の利息が一体幾らであるべきかということは、政府の事務的な閣法の提出手続によるというよりは、高次の政治判断として国会主導でお決めいただくべき領域であるという、そういう整理の下に基本的には議員立法で行ってきているという経過であろうかと思います。
そういうことを申し上げた上で、事務的に私が責任を持ってお答えできますことは、政府の認識といたしましては、現行法の制度自体について見直すべき点が現状あるわけではないということでございます。そこを繰り返させていただきまして、お答えとさせていただきます。

○河上委員長 ほかにはいかがですか。黒田さん、何かありますか。

○消費者庁黒田消費者政策課長 金融庁と同様です。

○河上委員長 ほかによろしいですか。
細川委員、どうぞ。

○細川委員 さっきのヤミ金にちょっとこだわっているのですけれども、日本では無登録の事業者の行為に対する行政規制ができないわけですから、そこは刑事規制に期待するしかないわけです。そこが非常に弱いと私は思います。業法の中にはいろいろな規定があって、何か違反すれば刑事罰というのも結構ありますね、金融関係でも。例えば我々でも、車を運転していてスピード違反をすれば、ある程度の速度を超えたら即、刑事罰です。ケガ人がいなくても、被害者がいなくても、社会の秩序や安寧を保つためにはそういう者は罰するべきだという社会的要請があるから、そういうふうにしているわけです。ヤミ金なんて全く合理性がない行為なわけですから、そこで構成要件として、被害者がなければ処罰できないという法律というのはどうなのかなというふうに思います。ここで管理官に言うことではないかもしれませんけれども、そんな意識を私は持っています。

○警察庁福田生活安全局生活経済対策管理官 構成要件上、お金を何人かに業として貸し付けてそれで初めて貸金業者になるので、借りている人は客観的事実としてはいたとしても、刑事事件で刑事裁判にかけるには、実際に借りている人を探し出して、私は確かに借りましたということを調書に取って、否認された場合のことを考えれば、最終的には公判に出てきて証人として証言してもらわなければいけないわけです。このように考えると、現実に名乗り出られている被害者がおられないと事件化は難しいものと思われます。

○細川委員 現行法ではそうなのだと思います。私は立法論も含めて提言しています。

○河上委員長 構成要件というか、要件としては実際に貸す行為まで必要なのですか。それとも、不特定多数の人を相手に特定の金利以上のもので提供しようとする業を営んだら、もうそれでいけるのですか。

○警察庁福田生活安全局生活経済対策管理官 理論的には、反復継続の意思があって一人に貸せばそれで大丈夫なのでしょうけれども、実際問題としては言い逃れというのはいろいろあり得えます。そういったことまで考えていくと、実際にお金を借りた方が、いないとなかなか難しいものと思われます。

○河上委員長 ほかによろしいですか。
この問題は昔からの問題でもありますけれども、いずれにしても健全な消費者金融市場を形成するというのは、消費者委員会にとってもやはり重大な関心の対象であることは事実でございます。先般の改正貸金業法の改正については、少なくとも今日伺った範囲でも相応の効果を出しているということでして、改正前の状況からは数字の上では改善されているように見受けられます。今後、金融庁でも10の方策フォローアップなど、多重債務問題の改善プログラムを継続・実行しているという現在、本日の委員会を踏まえますと、必ずしもこれを再改正しなければならないという状況にはないのではないかというふうに、委員会として認識していると考えていただいてよいかと思います。
全国の各弁護士会を初め、再改正に対する危惧の念を示す意見書が、4月以降、消費者委員会に対して多数寄せられています。まずは多重債務問題の改善プログラムをしっかりと実行して強化していくことが重要でして、今後、継続して取り組んでいく中で、特に皆様に次の3点について更なる充実をお願いしたいと考えております。
第1点目は、セーフティネット貸付という部分の再構築です。背に腹はかえられないで金を借りるという人はいつも出てまいります。そのような場合について、ある意味では「顔の見える融資」として、自治体と連携して各地域で現在拡充をしていただいている融資がございます。例えば生活福祉資金貸付制度とかありますけれども、今なお不十分ではないか。認知度が低いのであれば認知度を上げることも必要でしょうし、貸付条件が厳し過ぎるのであれば、若干ハードルを低くすること等を考えて、もう少しセーフティネット貸付に当たる部分を整備することが必要ではないかということでございます。
消費者金融の場合と、中小企業の事業者に対する金融とは若干問題状況が違うのかもしれませんけれども、地方の信用金庫、信用組合を含めた更なるセーフティネットの充実がやはり必要ではないか。そうでなければどうしてもヤミに流れてしまうことは、生きていく上ではしょうがないことであります。規制は厳しければ厳しいほど地下に潜ってしまうことになって、上からはどうしようもないということになりかねませんので、その意味ではセーフティネットの再構築ということに配慮していただきたい。
第2点目は、相談体制の更なる強化です。相談窓口の増加であるとか、教育研修の充実ということで対応していただいてきているわけですけれども、多重債務者をなくすためにも、多重債務問題の対応にたけた人材を、各センターや相談窓口等に増やしていただけるよう、引き続き取組の強化をお願いしたいと思います。先ほども金融経済教育といった発言もございましたけれども、こういうことができる人というのは少ないので、そうした人材を、消費者センター等にもうまく配置できるように工夫をしていただければということでございます。これは消費者庁にお願いすることかもしれません。
第3点目は、ヤミ金融の取締りの強化でございまして、最近では、いわゆる「ソフトヤミ金」というのですか、今までみたいに激しいのではないけれども、ソフトヤミ金という形で増えているものもあると伺っております。昨今、これまでよりも更に取締対策の強化というのが求められ、別の視点からもヤミ金問題に対する取締りを拡充していただく必要があるという気がいたします。
消費者委員会といたしましては、引き続き実態を適確に把握するように努めてまいりたいと考えております。また機会を見て多重債務問題改善プログラムへの取組状況を、聞かせていただければありがたいと考えております。今日は法務省が来ていませんけれども、上限金利に関して本当に今のままでいいのだろうかという問題もございます。0.01%程度の金利しかつかない時代に、この貸付金利というのはちょっと異常だと思います。勿論、焦げつきリスクというのがありますから、通常よりは高くなるでしょうけれども、それにしても、この状態でこんな上限金利はいかがなものかという意見はございます。その点についても消費者委員会としては更に検討してみたいと考えております。
今日は、お忙しいところを本当にありがとうございました。
本日予定しておりました議題は以上でございます。お忙しい中、審議に御協力いただきまして、誠にありがとうございました。

≪5.閉会≫

○河上委員長 最後に、事務局から、今後の予定等について説明をお願いいたします。

○小田審議官 次回の委員会ですが、9月4日を予定しております。16時からは関係団体との意見交換会を行い、終了後、17時から委員会を開催する予定でございます。

○河上委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございました。

(以上)