消費者委員会委員と消費者団体ほか関係団体等との意見交換会(2010年8月6日) 議事録

日時

2010年8月6日(金)17:00~18:40

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
 松本委員長、中村委員長代理、池田委員、下谷内委員、田島委員、山口委員

【参加団体】
 全国消費者団体連絡会 阿南事務局長
 社団法人日本経済団体連合会 斎藤政治社会本部長
 日本弁護士連合会消費者問題対策委員会 紀藤副委員長、大迫副委員長

【事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.消費者委員会の機能強化等に関する意見交換
 ○全国消費者団体連絡会
 ○社団法人日本経済団体連合会
 ○日本弁護士連合会
3.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第 (PDF形式:53KB)
【資料1】 全国消費者団体連絡会提出資料 (PDF形式:166KB)
【資料2-1】 消費者問題に対する経団連の基本的な考え方(社団法人日本経済団体連合会提出資料) (PDF形式:128KB)
【資料2-2】 「消費者委員会の機能強化等に関する意見交換会」に係る論点(社団法人日本経済団体連合会提出資料) (PDF形式:113KB)
【資料3-1】 紀藤弁護士提出資料 (PDF形式:200KB)
【資料3-2】 大迫弁護士提出資料 (PDF形式:18KB)


≪1.開会≫

○原事務局長 それでは、時間少し前ではありますけれども、おそろいなので始めたいと思います。本日は皆様、お忙しいところをお出かけいただき、大変ありがとうございました。
 ただいまから、「消費者委員会委員と消費者団体ほか関係団体等との意見交換会」を開催したいと思います。
 それでは、委員長、どうぞよろしくお願いいたします。

≪2.消費者委員会の機能強化等に関する意見交換≫

○松本委員長 それでは、議事に入ります。
 当委員会では、昨年9月の発足後、現在に至るまでの当委員会の運営状況を評価し、機能強化を含めた今後の運営改善の参考にするため、消費者団体ほか関係団体等から御意見を伺うとともに、委員との意見交換を目的とした意見交換会を2回に分けて開催することといたしました。前回の7月23日には、消費者団体ほか関係団体として、全国消費者行政ウォッチねっと及び日本司法書士会連合会にお越しいただき、2回目の本日は、全国消費者団体連絡会、社団法人日本経済団体連合会及び日本弁護士連合会にお越しいただいております。
 なお、御質問や御意見につきましては、説明が終わりましてから一括して行いたいと思います。

【全国消費者団体連絡会】

○松本委員長 初めに、全国消費者団体連絡会の阿南事務局長より御説明をお願いいたします。

○阿南事務局長 全国消団連の阿南と申します。こうした機会をつくっていただいて大変光栄に存じますし、よかったと思っております。
 私は今、全国各地、あるいは事業者団体・事業者のところに呼ばれて話す機会がとても多くなっておりますけれども、この消費者委員会のことはどんどん忘れられていっていると思っていまして、大変危機感を募らせております。今日は率直にそうした問題意識について申し述べたいと思います。
 本題に入ります前に、私ども全国消団連のスタンスと、この間の消費者庁と消費者委員会を支える取り組みについて、簡単に御紹介したいと思います。
 法案の成立前は、なかなか法案が国会に上程されず、私どもは大変な苦労をしました。そして審議が始まってからも、修正合意にこぎ着くまで、とにかく必死の取り組みをしてきました。また国会要請活動とともに、全国各地の説明会を歩き回って、世論形成に努めてきましたので、ようやくできた消費者庁という感じがしています。
 同時に、私たちは昨年7月に消団連の内部に「消費者行政充実検討委員会」というものを設置いたしました。会員の皆さんをはじめ、弁護士、その他、関係者の皆さんも大勢御参加くださっていますが、現在、約90名の皆さんが参加され、検討に当たってくださっています。検討委員会はこれまで18回持たれておりまして、現在は消費者団体の強化や新ビジョンづくり、食品安全行政の在り方について議論をしているところです。
 この検討委員会の下にワーキングチームをいくつかつくりました。1つは、地方行政WGで、最近また復活しておりますけれども、この間、7回ほど議論をして、消費者庁の地方行政の強化プランなどについても積極的な提言活動をしてきております。
 また、不当収益のはく奪と被害者救済制度についてのWGも設けておりまして、これも11回の議論を行っています。
 また、「基本計画」については各テーマに応じて9つの作業チームをつくり、そこで何回か議論をし、みんなの意見をまとめて消費者庁に意見提出をするということをやってきました。
 ほかには、ロビー活動。これは創設後のロビー活動になりますが、こちらの方は民主党の政策研究会等に何回もかかわってきております。また、衆参消費者問題特別委員会にもずっと詰めて参りました。
 世論形成についても、昨年、消費者庁創設後も全国各地の消費者団体の会合に出かけていって、今、こういう状況でこんなことに取り組んでいるというお話をさせていただいていますが、そこにはほとんどで自治体の担当者が参加されています。また、地方自治体が開催する講座等の講師ですとか、事業者・事業者団体のセミナーなどにも呼ばれて行く回数が多くなっております。
 そんな伝える取り組みと同時に、ここには書いてありませんけれども、各地の消費者団体がより活発に活動を進められるように、そうした活動について情報を集め、それを全国に流していくという情報受発信の取り組みも併せて進めてきております。
 では、今日の本題の「消費者委員会の機能強化」について申し述べたいと思います。私は、消費者委員会には、まだ機能するための基礎的な準備ができていないと感じております。ですから、まずは消費者委員会の機能をもう一回整理し、運営方針をぜひつくるべきであると思いますし、消費者委員会の徹底的な話し合いでそれを進めて、共有して、地域の消費者にそれを見せてほしいと切に願っております。
 そうでないと、今の段階では、より多くの消費者、国民が理解をして存在を容認することはできません。全く認知されていないと思います。あるだけなんですよ。ですから、あってよかったねと思ってもらえるように、そうか、そういう考え方に基づく委員会で、そのように動き始めたんだ、ということがわかるようなことをぜひやっていただきたいと思っていまして、そのためには抜本的な運営方針が必要だと思います。パフォーマンスでやることではないと思います。
 実は昨年の7月29日、私どもは消費者委員会の発足に向けて要請文を出しております。当時の麻生総理大臣宛です。3つ、大きな柱にしておりますが、まず1つ目は、消費者委員会は十分な準備を行って、新内閣の下で発足するべきという意見を出しました。準備不十分だと考えておりました。内容については略しました。
 2つ目は、消費者委員会の機能整理を早急に行って、その上で事務局体制を確立すべきだと言いました。今更言うまでもないことですが、消費者委員会は5つの重要な任務を持っていると思っています。
 まず1つ目。みずから重要事項(7つ)について調査審議し、内閣総理大臣、関係各大臣、または長官に建議をするということです。
 2つ目は、消費者被害の発生・拡大の防止で、みずから内閣総理大臣に勧告・報告要求をするということ。
 3つ目は、附則の検討ということです。
 4つ目は、内閣総理大臣や関係大臣、または長官からの諮問に基づく調査審議。
 最後は、「消費者委員会の意見を聴かなければならない」とされている事項への対応です。
 ここをもう一回確認して整理すべきだと思います。
さらに意見では、「事務局体制についての検討が不十分」だと述べておりまして、消費者委員会事務局の任務についても私たちが考えました意見を出しております。それが2ページ目になりますが、3つ挙げておりまして、消費者庁を含む各省庁への建議や勧告の準備(情報収集、調査、分析なども含む)。
 2つ目は、本委員会の事務局機能。
 3つ目は、審議会や部会、小委員会の事務局機能です。が、これについては、昨年の段階では、まだ共有されているとは言いがたい状況だと思いましたので、早急に機能整理を図って必要な事務局体制の確保を求める、ということを申しました。
 それから、消費者委員会設立準備参与会の段階でしたので、ここは参与主体で議論を進めてくださいということを求めました。これは略しております。
 こうした要求を昨年の7月末に出しましたけれども、果たして、結果はどうでしょうか。私は、当時とほとんど状況は変わっていないと思っています。事務局が少し増員されましたが、基本的には当時のままです。このままでは、附則・附帯決議を3年以内にクリアーするという宿題も終わることはできないと思います。
 具体的に提案を考えてみました。
基本的には、設置法に規定されたこと、附則・附帯決議に挙げられたことを整理して、各ミッションの意義・目的と運営方針を策定し、取り組み順位や役割分担、必要な体制整備の方針などを明確にする必要があると思います。ここでの事務局長、審議官の責任は非常に重大だと思いますし、委員のかかわり方についても、従来の審議会とは違って、委員が本気になって主体的に課題にかかわる姿勢が大切だと思いますが、ここができていないのではないかと考えております。
 具体的に3つ挙げてみました。重点的なものです。
 まず、委員会としての審議の工程表が必要だと思います。議題の選定基準、優先順位が不透明ですので、アウトプットのイメージを持つことを考えていただきたい。少なくとも締切が設定されている附則・附帯決議事項については、審議の工程表づくりをする必要があると思います。
 2つ目は、みずから調査審議し、建議するということを第一任務としてちゃんと位置づけて、運営方針と事務局体制の整備方針を立ててほしいと思います。各重要事項について、何を課題とし、何を調査するのかということについてしっかりと話し合っていただきたい。ほとんど行われていないと思います。調査のための体制もなく、早急にここは改善すべきだと思います。
 事務局の人員・予算増は、今の段階では簡単に期待できそうにはありませんので、運営方針、委員会の役割分担を明確にし、各課題ごとに、今の事務局メンバーを配分するなどして精いっぱい工夫することが必要だと思いますし、そのための工程表も早急につくるべきだと思います。
 それに関連して、委員間、事務局で、建議のイメージ、建議というのは一体何かということについて共有する必要があると思います。建議して他省庁を動かすということですから、みずから調査審議をしっかり行うことが必要です。相当の水準と説得力のある内容にする必要があると思いますので、ここは、そのイメージづくりをはっきりしてほしいと思います。
 3つ目ですが、消費者委員会の個別マターの諮問・答申機能というのがありますけれども、これは現状で、とても無理を生じていますので、移管も含めて消費者庁との関係を再整理してほしいと思います。現在の委員会は、審議会機能への対応に忙殺されている状況だと思います。とても建議のところに力を注いでいるとは思いません。本委員会に期待された機能が十分果たせていないと思います。
 また、事務局は、審議会運営に当たっての獲得目標ですとか、論議のスケジュールを戦略的に組み立てていく余裕がないと思われます。ロジスティックのところだけで精いっぱいという状況ではないかと思います。
 更に、地方消費者行政や健康食品などの課題について、委員会と消費者庁がそれぞれで検討している現状は効率さを欠くと思いますし、時にお見合い状態になっていて、課題をやり切るという、主体的な姿勢が見えなくなっているのではないかと思います。しかしこのことに関しても、事務局の補充は早急には認められないと思いますし、望むべくもありません。建議の方に力を注ぐということを考えたら、諮問・答申機能の消費者庁などへの返上も含め、抜本的な対策を検討すべきだと思います。
 以上ですが、私たちは、国会で審議が始まろうとしている来年度の予算編成に向けて、動こうと思っています。消費者行政強化のための予算として、何をやらねばならないかを明らかにした上で要請行動に取り組みたいと考えております。これは緊急の課題になっておりますけれども、人がいないからできないと言っているだけでは、私たちも応援ができませんので、何をするのかというところをはっきりさせていただきたい。どうあるべきかということをはっきりさせていただきたい。そうすれば私たちも、要求ができるわけです。またそれを、地方の消費者の集まりでもちゃんと言って、世論形成につなげることができるわけです。ぜひそういうことをやっていただきたいと切にお願いしたいと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。

○松本委員長 ありがとうございました。

【社団法人日本経済団体連合会】

○松本委員長 続きまして、社団法人日本経済団体連合会の斎藤政治社会本部長から御説明をお願いいたします。

○斎藤政治社会本部長 本日は、松本委員長をはじめ消費者委員会委員の皆様には、お忙しいところ、私どもに意見陳述の機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。今回、消費者委員会から、いくつか質問があるということでございましたので、資料として2つ持ってまいりました。1つは、経団連としての基本的な考え方、これが資料2-1でございます。資料2-2は、本日の議題であります、消費者委員会の在り方等についてです。
 初めの2-1でございます。これは、経団連の中に企業行動委員会という、CSR・コンプライアンスを扱っている委員会がございまして、そこでとりまとめたものでございます。昨年の9月に消費者庁・消費者委員会が発足に当たりまして、経済界としてここでひとつ考え方を整理しようということで、3つの点を申し上げております。その前提として、豊かな国民生活を実現するには、企業・消費者・行政がそれぞれの役割と責任を果たしていく、それが基本であります。決して対立のことではなく、それが協調して豊かな社会、安心・安全で持続可能な社会の構築に向けてそれぞれの役割を果たすことが必要であります。
 具体的にどういう役割があるかということでございます。まず、私ども企業あるいは事業者団体は、消費者からの信頼なくして企業活動は成り立ち得ませんし、また、そのために社会に有用な製品、安全な製品、サービスを提供するという責務が求められております。例えば、法律で規制があるため義務があるという前に、まず自分たちがそのような責務を果たしませんと、消費者からそっぽを向かれます。マーケットからそっぽを向かれると、当然、その製品・サービスは売れません。また、そのために企業は、自主的かつ積極的に、製品の安全性、品質の確保、顧客への適切な情報提供、更に、消費者からの問い合わせへの誠実な対応をしなければなりません。これは、経団連の中で「企業行動憲章」を1991年からつくっておりますが、その第1条に書いてある内容でございます。
 次に、消費者に期待することでございます。やはり消費者も健全なマーケットの大きな担い手ですし、消費者の行動、選択が社会を変える大きな役割を持っているのではないかと思っております。したがいまして、企業側としても消費者に適切な情報を提供すると同時に、消費者がその情報を的確に判断できる「自立した消費者」になることが、社会をよくするために非常に重要なことだと思っておりますし、そのために消費者教育に力を入れていただきたいと思っております。
 実はこの考え方は、今年の5月、松本委員長とたまたまコペンハーゲンのISO26000の会合で御一緒する機会がありました。消費者課題の中で、消費者の責任で社会を変えていくという視点が原案に入っていなかったものですので、日本経済界を中心に経済界から提起をしたところ、コンシューマーズ・インターナショナル、世界の消費者団体の皆様が、これはいいことだということで、そういった内容も新しい国際規格の中に入れていただいたということでございます。
 また、消費者教育につきましては、お隣に座っていらっしゃいます阿南さんの消費者団体連絡会ほか、消費者団体と一緒に消費者市民教育のモデル事業をやろうとしております。たまたま同じ会場で、この5月に鳩山総理もお招きして「社会的責任に関する円卓会議」が開かれました。松本委員長が司会をされていましたけれども、消費者団体と事業者団体が協力して共同で消費者市民教育のモデル事業をやっていきたい、という提案した経緯もございます。
 3番目、消費者行政に求められていることでございます。これはたしか、福田首相時代の消費者行政推進会議のときの原則の中にあったと思いますが、消費者利益の増進と産業活動の発展を両立させるという視点が大事であります。消費者利益と産業活動の発展は両立し得るということが、一番大事だということでございます。
 2番目は、先ほど申し上げました健全な消費者の育成、更に消費者と企業間が円滑なコミュニケーションをとれる公正な市場を実現すべきである、ということでございます。
 3番目は表示の問題等で、この委員会の下部機構でも検討されているようですが、検討に当たりましては、グローバルな事業展開をしている中で、国際基準との整合性、あるいは輸入品に関しては日本独自の規格なり基準をつくって、それが障壁になることがないように、また、諸外国から輸入する場合は、外国政府、国際機関と協調して安心・安全を図っていただきたい。そういった国際的な視点が大事だということでございます。
 4番目は、消費者にとって身近な地方の消費者行政を充実させるということで、相談員の待遇をはじめ御検討なさっているようでございます。これは事業者にとりましても、実際に消費者行政の執行という面では、地方の都道府県とか他省庁に委託して、地方の部局の方が事業者との日ごろのコミュニケーションを図るということでもございますので、地方の行政が大事だという視点は大切だと思っております。
 最後に、これは言わずもがなですが、消費者庁を新しくつくるに当たりまして、法律が、共管とかいろいろな形でできましたけれども、そのことによって、二重行政といった混乱を招く事態は避けていただきたいということを申し上げております。それが基本的な考え方でございます。
 次に、消費者委員会の機能強化等に関していくつか申し上げたいと思います。率直に申し上げまして、昨年9月に発足して、消費者基本法に基づく消費者基本計画を3月までにつくらなければいけないという一つの大きな任務があったと思います。それと並行して、下部委員会も設置していない中で、すべての問題が消費者委員会本体にかかってきたということで、恐らく毎週のように会議をし、更にその準備等もされたということで、これまでの審議会と比べますと、この委員会の活動ははるかに活発に行われていたのではないかと思います。また、事務局につきましても、それを支えるということで、少ない人数でよくやられていたことは率直に評価していいのではないかと思います。
 ただ、その検討内容につきまして、先ほど私どもの考え方にありました、消費者と事業者双方のウィン・ウィンにより安全で安心、持続可能な社会をつくり、また、行政が消費者を保護するとかそういった観点ではなく、健全なマーケットを整備するんだという視点が、必ずしもこれまでの議論では見えてこなかったと率直に思っております。
 一つの原因としては、さまざまな事案を過去30数回やっておりますけれども、個別事案を扱い過ぎたのではないかと考えております。例えば、こんにゃく入りゼリーの問題とか、老人ホームの問題とか、貸金業者の問題とか、さまざまな問題を取り上げてきました。トピックがあると取り上げてここで議論をするのはいいのですが、ただ、被害者というのが消費者であって、悪いことをするのは事業者で、それに対してどう対応するかという視点がどうしても前面に浮かび上がらざるを得ないので、日常的に、事業者と消費者がどうやってWIN-WINの関係をつくるかといった議論があまり行われてこなかったのではないでしょうか。言ってみれば、木を見て森全体を見ないような形に終始してきたのではないかと感じております。
 先ほど阿南事務局長がおっしゃっていましたが、日本のあるべき社会の姿、あるべき消費者行政の姿というグランドデザインをしっかり議論し、その中で毎年、あるいはこの年に行う施策は何なのかというプライオリティー付けをするとか、消費者委員会はどういう議論をいつまでに片づけるかといったようなことをまず決めていただきたい。その前に、消費者委員の方々の目指すべき社会像なりビジョンはある程度一つの方向に行っていただきたい。まさにそれがないと、いつまでたっても議論が集約できないという状況があるのではないでしょうか。そのために日本としてどのような消費者社会をつくったらいいかということについて、もう少し時間をかけて皆さんで御議論することも必要で、その方向さえできれば、今後、すばらしい議論を展開できるのではないかと思っております。
 また、消費者、事業者、あるいは政府に加えて我々も、消費者委員会、行政に任せず、一生懸命できるだけいい関係をつくっていきたいと思っております。先ほど阿南事務局長が事業者団体の対応をされているということで、我々も、消費者委員会ができましたので、企業行動委員会の下に消費者政策部会というのを設けまして、阿南事務局長にもお越しいただいて意見交換をさせていただいたこともございます。 また、本日はお越しになっておりませんが、消費者委員会の委員の一人であります日和佐さんに、この7月22日・23日に軽井沢で行われた経団連のトップセミナーにお越しいただいて、「社会とのWIN-WIN」ということで経団連の幹部と意見交換をしていただいて、非常にいいお話をいただきました。我々も、事業者、消費者というのは、できるだけ対話して相互理解の増進を図っていきたいということでございますので、そういったWIN-WINの社会をつくるということで消費者委員会の在り方も議論していただきたいと思います。
 更に、先ほど申し上げました消費者教育の推進。ただ議論するだけではなく、実際に一緒に汗をかこうということで、今、消団連の皆様と消費者教育のモデル事業をやりたいということで頑張っているところでございます。
 (2)、消費者庁と消費者委員会との役割分担ということを申し上げたいと思います。私どもは、一番大事なのは消費者庁と消費者委員会がいかに連携するかということだと思っております。先ほど阿南事務局長から、少ない人数で予算、増員もなかなか期待できないのが現実だというお話がございました。それでは、どう工夫するかといった場合に、消費者庁と消費者委員会が、独立性という言葉にこだわって、接触してはいけないとか、あまり一緒にやってはいけないのではないかということではなく、消費者庁はまさに消費者行政の司令塔としてできたわけですから、その消費者庁が十二分に活動できる環境づくりを後押しするのが、消費者委員会の最大の任務ではないかと思っております。
 その意味で(2)のマル1、審議会機能につきましては、今、6つあります。今日になって7つ目ができるという話がありますが、それぞれ扱っている部局が消費者庁の中にタイアップしてあるわけですから、そこと協力してやらない筋はないのではないかと思いますので、ぜひその方向でやっていただきたいと思っております。また、専門的な議論は過去の審議会からの蓄積等もございますので、そういった経緯もわかっている方を中心に、ある程度消費者庁の方でハンドリングするようなことも必要ではないかと思っています。
 マル2でございますが、いわゆる監視機能ということで、消費者庁を監視するというよりも、監視機能として求められているのは、消費者行政そのものを転換することではないかと思います。消費者目線に立った霞が関全体、あるいは国・地方を含めた行政全体のマインド・チェンジだということを考えた場合、むしろ監視の対象は消費者庁よりは他省庁であり、地方自治体です。そういったところに、消費者マインド、消費者委員会はこういうことを考えているということを伝えていくことが大事ではないかと思っております。
 建議の話が阿南さんからございましたけれども、私はむしろ、消費者安全法の中で、消費者庁が他省庁に対していろいろ注文もつけられますし、本当に消費者行政の司令塔であれば消費者庁でできる部分はいくらでもある。建議をしたから動いたということではなく、まず消費者庁が動きやすい環境をつくっていただきたい。建議というのはある意味伝家の宝刀で、逆に持っているということが重要で、毎回毎回、建議する必要もないのではないかと思います。
 それから、消費者委員会の評価です。先ほど申し上げましたけれども、基本計画についてはこれまでの基本計画に比べるとはるかにわかりやすくなりました。しかも、パブコメを2回もやられたということ、これは評価していいと思っております。ただ、今後、それを検証・評価・監視する中で、どの施策にどういうプライオリティーを付けて、どういう予算を付けてやっていくかというところについては、引き続き御指導をする立場にあるのが消費者委員会ではないかと思っております。
 2の(2)でございますが、消費者、事業者がWIN-WINになるためには、何も事業者から意見を聞いてはいけないということではないと思いますし、今日のように聞いていただいているのは大変ありがたいと思っています。また、委員の構成も、他の審議会等と比べても、本委員会あるいは下部委員会に事業者出身の委員があまりにも少ないのではないかということは危惧しております。
 例えば、消費者安全調査会というのがございます。事故情報の収集、公表、そういった基準を扱う、我々事業者にとって大変重要な委員会であります。まさにそういう調査会については、現場の視点、現場でどういうことが行われて、現場の開発はどう行って、現場のリスク管理がどうなっているかをわからずして、なかなかいい施策というのは打ち出せないのではないかと思っていますが、残念ながら、そこに一人も事業者出身の方が入っておりません。早急に改善できるものなら、事業者の参加を実現していただけたら大変ありがたいと思っております。
 2の(3)でございます。健全な事業者と一部の悪徳事業者の峻別ということで、消費者事故なり消費者被害を扱う事例を扱えば、当然、そこで扱う事業者は悪徳事業者であり、まさに市場から排除すべき対象の事業者です。そういった事業者に市場から退出していただくことは、私たち経済界としても、健全な市場、公正なマーケットをつくるということで非常に重要なことだと思っております。ただ、悪徳な事業者の対策のみに視点が当たった施策が求められるということですと、健全な事業者に対して逆に悪影響を及ぼすのではないかということは心配しておりまして、その点のバランスある議論をしていただきたいと思っております。
 もちろん、経団連の会員も不祥事を起こさないわけではございませんし、新聞等で不祥事が報道されていることも確かでございます。経団連の会員が全員常識があって健全だということは申し上げませんが、ただ、意図的に、まさにだますことを目的にして事業をやっている経営者はいないと思っております。もし不祥事があれば、それを糧に、消費者の信頼を獲得するために不断の努力をして経営に当たられていると思っております。そこは御理解いただければと思っております。
 最後に、消費者委員会委員の常勤化についてです。附則で、「2年以内に常勤化を計ることを検討する」ということになっておりますが、私どもが考えるに、何のための常勤化というのが見えておりません。今の体制でどこが悪いのか、今の体制に何か不備があって、常勤化すれば逆にこういういいことがある、まさに常勤化が必要ではないかというのが見えてこない、というのが率直なところでございます。ただ法律の附則に書いてあるから常勤化を検討しなければいけないという前に、今の体制でやらなければいけないこと、また、今の体制でもできることというのは多くあるのではないかと思っております。その中で検討してみて、やはり常勤化が必要だとなったときに常勤化を検討してもいいのではないかと思っております。
 時間になりましたので、私の話は以上にしますが、もし御質問等があればお答えしたいと思っております。

○松本委員長 ありがとうございました。

【日本弁護士連合会】

○松本委員長 続きまして、日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会副委員長の紀藤弁護士及び大迫弁護士から御説明をお願いいたします。

○紀藤副委員長 弁護士の紀藤正樹といいます。よろしくお願いします。
 日弁連は年間に6回ほどしか全体の消費者問題対策委員会の議論をしていませんので、今日のお話は、消費者問題対策委員会の正副委員長会議で若干議論を得たものを、紀藤の個人的見解ということで公表させていただきます。議論は二人の今日の意見書で出ていますが、今日のレジュメは長いものですから、特に線を引いた部分を中心に話させていただきます。
 まず、消費者庁のみならず消費者委員会の人員、予算があまりにも少ないというのが、そもそも現状の問題点としてあります。4ページに「消費者委員会も全く同様の論点があります」と書いてありますけれども、消費者基本計画自体、そもそも171の基本計画があります。その171の基本計画に応じるのに10人の委員でやっている。そして24名の事務局体制でやっているということは、現実的にはほとんど不可能でありまして、これを何とか改善しないといけないと思います。
 ですから、どんなに意見を言ってみても、171の基本計画、企画立案事項として17の権限、執行権限として5つの権限、それから、現在、調査会部会が延べ8個あります。これだけのものをたった24名程度では、全くできないということがまず前提にあるのではないかと思います。私の文章の中では「もはや悲劇的」と書いてありますけれども、「およそ組織としての目的遂行のために、不可能な人員と予算と言うほかない」というのが私の意見です。
 そもそも消費者庁は、消費者問題の司令塔・エンジン役、消費者委員会は、消費者庁も含めた他省庁に対する監視役ということが当初の立法目的です。実際上、消費者委員会のホームページにも「監視役」という言葉が出てくると思いますけれども、そういうものが現実にできる体制に全くなっていないということを、まず早く改善してほしいと思っております。8月末までに予算の関係が出てきますので、これを何とか消費者委員会の方で、事務局、消費者委員会の委員の皆様方も含めて、予算や人員の拡充に奔走していただきたいと強く思っています。
 次に、少し具体的な話に戻しますが、5ページ以降に線が引いてあるところです。多くの問題は予算、人員の問題ですけれども、意識の問題も非常に大きいのではないかと思います。消費者委員会は行政機関であるという自覚を持っていただきたいと思います。もともと消費者委員会は、設立の際、政府提出の消費者庁設置法案の下に、消費者政策委員会という名前で呼ばれている委員会がありまして、それは実際上、審議会だったわけですが、その審議会では従来の国生審と変わらないということから、国会の審議の中で消費者庁とは別の独立した行政機関である消費者委員会をつくった上で、審議会とは別の組織、そして消費者庁を含めた他の省庁の消費者行政全般に対して監視機能を有する、独立した第三者機関として設置したという経緯があります。先ほど、斎藤さんから審議会という言葉がかなり出ましたけれども、審議会ではないのです。これはあくまでも行政機関です。ただ、10人の合議制になっていることが一般の行政機関と少し違うところです。
 しかも、この行政機関は「みずから積極的に調査審議を行う」という任務づけをされていますし、「与えられた権能を積極的に行使し、消費者の利益の擁護及び増進のため、適切にその職務を遂行すべき」と、たしか衆議院と参議院の附帯決議に定められていたと思いますけれども、そういう形で積極的に権限を行使することを求められた機関です。
 しかも、10人という人数も、これも少し思い出していただきたいのですが、もともと消費者政策委員会案では15人であったところを、私が衆議院の消費者問題特別委員会に呼ばれたときに、15人では多過ぎる、5人にすべきではないかというところを、間をとって10人になったという経緯があります。逆に言うと、人数が絞られたということは、それだけ個々の委員に期待されるところが大きいと思います。
 ところが、出席率が低い委員や、消費者委員会の形式的な委員外の活動、広報活動などに積極的に活動しない委員がいると聞いています。そういう委員は、消費者委員会の目的を考えてみるに、みずから消費者委員会の委員を辞めるべき人だと思います。例えば内閣総理大臣は行政機関の長ですけれども、内閣総理大臣が単に行政機関の権限を行うだけではなく、日本という国の広報も行うことは当然のことでありまして、行政機関の長であれば当然行うことは、同じく消費者委員会という行政機関である以上、個々の消費者委員会の委員は、単に審議するだけ、単に勧告するだけではなく、この消費者委員会を国民のものとするために広報活動にもかかわらないといけないと思いますが、実際上、それすらかなり厳しい状況にある。さっき阿南さんが言われましたけれども、消費者委員会が国民に知られているのかと言われると、相当厳しいのではないかと思います。
 3番目は、今、お話ししたことで、もっと国民や消費者との連携、特に広報活動の充実が必要ではないかと思います。消費者委員会の委員はみずから行政官として国民の中に入っていって、消費者委員会を広報・宣伝すべきだろうと私は思っています。
 次に、現行の専門調査会・部会の委員選任の在り方は大きく改善すべきだと思います。もともと消費者委員会の委員を10人に絞ったということは、それだけ審議を充実させ、具体的な結論を早く出させるということだったろうと思います。ところが、10人以上の委員選任をしている専門調査会・部会というものが見受けられます。10人以上委員選任してしまうと事実上の審議会でありまして、単に諮問機関ではなくなる。しかも、10人以上の人間の予定を合わせる、あるいは時間の中で意見を闘わせることは、実際上なかなか難しく、かえって時間がかかることがあります。
 委員個々人の力量や調査不足も指摘されますけれども、人は森羅万象のことをすべて知ることはできないことを前提としても、臨時委員や専門委員の制度がそもそも置かれていて、臨時委員や専門委員というのは、いわば委員個々人の力量や調査を補充するために置かれている。法律上も置かれているわけですけれども、これを超えて、消費者委員会の委員の判断を縛る形での専門調査会や部会の設置はそもそも問題であって、問題の先送りにほかならないと私は考えています。
 筆者の意見としては、委員のブレインとして、臨時委員、専門委員を置けば十分であって、委嘱は、個々の案件ごとに1名ないし数名程度で足るのではないかと思います。裁判所の鑑定委員の制度がそういう制度です。
 付言として、専門調査会・部会の名称が、一般市民から見て全く何を意味しているのかわからない名称が使われているものもあります。これも非常に官僚的な言葉でありまして、やはり一般の市民からわかる言葉にしていただきたいと思います。例えば個人情報保護専門調査会というのは、一般の市民から見て一目瞭然でわかります。ところが、新開発食品調査部会という名前は一般の市民から見て全くわかりません。
 こういうネーミングは消費者目線でないネーミングでありまして、早急に改めていただきたいと思いますし、そもそも、人数が非常に大きい部会や専門調査会をやることについては検討していただきたいと思います。もちろん、新開発食品調査部会のように、特定保健用食品の認定をしないといけない部会があるのは承知していますけれども、それは別に人数を増やす必要はなく、内部を分ければいいだけの話ですので、その点は強く言いたいと思います。
 それから、消費者委員会そのものも実務型行政組織に変更すべきだと思います。消費者委員会はみずから積極的に調査審議を行うとともに、与えられた権能を積極的に行使するということでしょうから、10人の委員で全体的に審議を図るという方式も、従来の審議会方式という先例にとらわれた面があると思います。
 最高裁判所は、重大な案件は15名の大法廷で行いますけれども、通常は5人の小法廷で行っています。消費者委員会も、全体委員会は1か月に1度程度にして、急な事態の際に臨時の委員会を開くのは構いませんけれども、ふだんは3人程度の3つの小委員会に分けて審議を行い、小委員会の結論に特に全体委員会で異論がなければ承認して執行する。異論がある場合は、全体委員会で改めて議論を尽くすという在り方があってもいいのではないか。行政機関である以上、そういう在り方はだれかが最終的に判断しないといけないわけですから、そういう在り方はあってもいいと思います。そうすると、現行の3倍とは言わないけれども、2倍以上の業務がこなせるのではないか。
 消費者委員の全員常勤化については、私の意見としては反対です。なぜ反対かといいますと、常勤化は、結局、行政官の官僚化を生む危険があることと、民間登用の趣旨に反するからです。3つの小委員会に各1人の委員の常勤化はあっていいと思います。そういう意味では附帯決議で「三人について、常勤的に勤めることが可能になるように」という衆参の附帯決議はある種の参考になる、あるいは達観であったのかもしれません。
 この問題は、常勤化が問題ではなく、先ほど斎藤さんも言われました論点ですけれども、「委員としての職務に専念できるような人選」という点に主眼があるのであって、別に常勤化でなくても職務に専念できるような人物であれば、それは消費者委員会の委員としてまさに適正な配置だと思いますので、この点はよろしくお願いしたいと思います。
 言い忘れましたけれども、消費者委員会が何をやったのかということについては、成績表のようなものはありますが、個々の委員が何をやったのかということについては成績表のようなものがありませんので、国民は、個々の委員に対する判断枠組みが持てません。先ほど言いましたように、消費者委員会の委員は各行政官の役割を持っているわけですから、全体として個々の委員の成績表のようなものを公表してほしいと思います。
 最後に、「国民目線」「消費者目線」の消費者委員会になってほしいということです。具体的な消費者被害者が生じた案件について、その解決例や建議に乏しいことについては言うまでもないことですけれども、まさにこの点が国民や消費者が求めている分野であることを考えると、非常に残念です。
 実際、警察が動いている案件でさえ、消費者委員会は何ら動いていない案件が多数あります。注に挙げているとおりです。例えば霊感商法の事案であると、全国的に特定商取引法違反で摘発に入っているのに、消費者委員会では何ら取り上げられていないとか、消費者委員会でなければ取り上げない最近の観光事故事案のようなものが、消費者委員会で取り上げられていないというのも非常に残念な感じがします。
 国民・消費者が望んでいるのは、従来の行政の後追い、縦割り、産業育成的目線からの脱却であって、だからこそ消費者庁ができて、その消費者庁でも納得できないから監視機能としての消費者委員会ができた、その経過、歴史を十分に踏まえていただきたいと思います。後追いでなく、みずから積極的に、そして、縦割り、産業育成的目線ではなく、国民目線、消費者目線の消費者委員会になるように心から望んでいますし、そのために私も尽力する所存です。
 以上、意見に及んだ次第です。

○大迫副委員長 補足させていただきます。
 消費者委員会がいろいろやってこられた中で一番大きく抜け落ちているのは、何といっても消費者被害の7割を占める取引の分野、この部分はいかにも手薄であると感じております。ぜひこの部分に早急に取り組んでいただいて、重点的に扱っていただきたいと願っております。
 その取り組みにつきましても、ぜひ調査会をつくって人員を大きく割いていただきたいと思います。取引の分野の問題と申しますのは、今の日本の未曽有の高齢化社会の中で悲惨な被害をたくさん生んでおります。老後の資金を貯めて高齢者になって、どうしても判断能力が低下しがちな中で、老後の資金を根こそぎねらわれてしまうような被害事例が本当に多くなってきております。これを何とかしていただきたい。
 この取引被害の分野こそ、これまでの行政の産業育成構造の中で、本当に細かく縦割りされていた、そのすき間がたくさん生じている分野の問題でございます。昨今、法を整備して横断的な規制をすると言われておりますけれども、それでもなお、規制の間隙を縫うような被害が後を絶ちません。この委員会でも第1号の提言は未公開株であったわけですけれども、もう未公開株は古いです。今は社債です。これは、株式より社債の方が発行しやすいなど、規制が緩いために、そこに悪質業者が飛び移っているわけです。この消費者委員会こそ、こういう新しい、法の間隙をねらうものにいち早く気づいて、各関係省庁に素早く指示を出していく、そういう姿勢を持っていただきたいと思います。
 詳細は、先に提出したペーパーの方を見てください。消費者庁も含め、各行政機関が機敏な動きを取りにくい中で、いち早く消費者委員会が気づいて、このすき間、このすき間と、的確な指示を出していっていただきたい。それがこの委員会に求められている役割だと思っておりますので、ぜひその点の御努力をお願いしたいと思います。
 時間がありませんので、あとはペーパーをお読みいただくということで、よろしくお願いいたします。

○松本委員長 ありがとうございました。

【意見交換】

○松本委員長 ただいまの3つの団体からの御説明、御意見に対しまして、委員から質問あるいは意見を出して、意見交換をしたいと思います。
 山口委員、どうぞ。

○山口委員 それぞれのお立場からお話があったとおりで、私も、建議といいますか、社会への発信はドシドシしていくべきだと思うし、したいと思います。ところが、阿南さんが指摘されたように、建議というのは一体何なのかということについて、委員間で話し合いをする機会もあるのですが、明らかに認識が違います。私自身も最近は迷っています。
 といいますのは、国民生活審議会はたくさん意見をまとめて出しているわけですが、実現していない部分が多いのです。せっかく建議する以上は、役所がそれを重く受けとめてすぐ実行に入ると。例えば未公開株でも、特定商取引法の改正、金融商品取引法の改正を消費者委員会が提言しましたが、それを両省庁が受け入れて改正作業に入るとか、あるいはこんにゃく入りゼリーについても、建議を出したら厚労省がすぐ食品衛生法の改正作業に入るというような、先の見通しもついた建議をどんどん出せるのであれば効果的だと思いますが、出しても出しても、どこの役所も無視するような建議を出してもしょうがないですものね。だから、どうしたものか。
 もちろん、なまじっかな知識で建議を出しても、役所が無視するような、レベルの低い建議でも困るだろう。やはりそれなりの見識と情報と、諸外国の実情を踏まえた上で出さなければいけないだろう。一体どうすればいいのか、私自身もわからなくなっています。阿南さんと斎藤さんから端的に、お二人の意見もちょっと違っていたように思うのですが、どうしたらいいのか。実現可能性のあることをやらなければいけないと思うけれども、レベルはちゃんと守るという、そこを両立させるためにはどうしたらいいでしょうか。

○松本委員長 どうぞ。

○阿南事務局長 先ほども申し上げましたけれども、調査審議をするというところをしっかりやらないと、しっかりした建議はできないと私は思います。今、そんなことをやっていますか。その事務局もいないし、どれについてやるのかという方針も決まっていないではないですか。役割分担もしていない。それをしっかりとつくるということが先決だと思います。

○斎藤政治社会本部長 建議をやるには、当然、それに基づく証拠なり客観的事実をしっかり集めることが大事だと思います。ただ、委員会みずからが取り締まり機関のような、要するに消費者Gメンではないけれども、何か問題があったら、そういう問題は大変だということで各役所にああしろこうしろと言うのが、建議とおっしゃると、我々のイメージしている建議とは少し違うと思っています。
 むしろ、建議をやる前に本当は行政が問題に反応しなければいけないし、また、行政を動かすのに、消費者委員会の更に上に担当大臣をはじめとする政務三役もいらっしゃいます。消費者委員会と消費者庁、さらに、食品安全委員会もあって、それぞれがしっかり連携をとって対応するという体制をつくってはじめて、建議が効いてくるのではないでしょうか。具体的にどういうときに建議が必要かというイメージは湧かないのですが、むしろ建議の前に今の法律の中で、消費者庁なり大臣なり三役がうまく動けば解決できることは多々あるのではないかと思います。
 ただ、それでも動かない場合に、消費者委員会として、国民の目から見てこれはおかしい、政治家も動かないのはおかしいということが本当にできれば、それはまさに国民の目から見た建議であって、そういった建議であれば国民の支持も得、消費者委員会の認知度も上がっていくということではないかと思います。そういう意味では建議の回数や頻度が大事なのではなく、しっかりとした消費者行政を動かす仕組みをつくる方が先ではないかと思います。

○松本委員長 池田委員、どうぞ。

○池田委員 まず、阿南さんにお伺いします。私の意見ですけれども、最後に整理整頓とおっしゃいましたが、これは私も全く同感です。根本的なところで消費者庁と消費者委員会というのがよくわからない関係のまま今日に来ている。お互い金も人も能力もない。そういう状況でここまで来ているから、お見合い状態というのはいい表現かもしれませんけれども、これは全く別な組織ですから、調整したいけれども、どういうふうに調整したらいいかもよくわからない、というのが本音ベースの話ではないかと思います。本当に調整が必要だと私は思っています。
 それから、日弁連のお二方にお伺いしたいのですけれども、趣旨は私は反対するものではありませんが、特に紀藤弁護士の最後に書いてある事例のことです。これは消費者問題であると思いますけれども、ここまで消費者委員会が取り上げなければいけない問題と考えて書いておられるのかどうか、ということを確認したい。
 大迫さんについては、取引問題について最優先ではないかということは、私はこの委員会でも再三言っていまして、なかなかこれが具体的に進捗しないというのが本音ベースで、どうしたらいいかというアイデアがあったら教えてほしいと思います。

○紀藤副委員長 これは紀藤が個人的な意見で書いているものですけれども、消費者委員会の中で取り上げるべきだと思っています。その理由はっきりしています。消費者問題は総合的な施策でありまして、単に警察だけの施策ではない。あるいは、他の行政ですでに調査中だから、消費者庁や消費者委員会はやらないでいいという施策ではないと思うからです。
 これは理想かもしれませんけれども、消費者庁や消費者委員会ができた由来というのは、171の基本計画でもそうですが、すべて消費者庁が171の基本計画について消費者目線を持っていないといけないということなのです。そのうちの72は確かに消費者庁の施策ですけれども、残りはやらなくていいかといったら、やらないといけない。そうすると、予算の重点配分の関係から、複線はお金がかかるというのはそのとおりですけれども、消費者庁をつくった時点で、もう政策が複線になっていること自体を認めているとしか思えないわけです。
 例えば国交省が観光の問題を所管していますけれども、観光事故が起こればそれはまさに消費者問題なわけですから、国交省が何もやらなければ、常に消費者庁が動けるような体制づくりが必要ですし、消費者庁が動かなければ、消費者委員会が監視するという体制づくりが必要です。それを各消費者委員会の各委員の頭の中に入れるだけでも、それは重要な施策だと思います。委員会の中でだれも提言する人がいない、あるいは事務局の中で「これも消費者問題ではないか」と言う人もいない。だから、何ら審議されないということが続いているのだと思います。頭に入れるだけでも、あるとき即座に対応できるということがあります。消費者問題というのは続けているときりがないですけれども、ただ、これは消費者目線で見たときにどう見えるのか、頭の中に入れるだけでも、あるときにきちっとした意見が出せるということでも重要だと思っています。

○大迫副委員長 大迫の方から取引のことについて申し上げますけれども、取引の分野に取り組もうと思いますと、非常に情報が多いので比較的始めやすい分野ではないかと思っております。例えば日弁連の消費者問題対策委員会は大きな所帯ではございますけれども、取引の分野を取り扱う部会はたくさんの委員を抱えておりまして、情報もたくさん持っている。逆に安全とか食品衛生の部門は、日弁連の消費者問題対策委員会の中では比較的取り組む方も少ないですし、専門的に取り組んでこられた方以外ではなかなか意見も言いにくいということで、技術的にも、理数系の知識であるとかそういったことも要求されたりして、高度に難しい分野だと思うのです。
 それに対して取引の分野というのは比較的取り組みやすいし、被害も多いということで、この委員会で積極的に取り扱っていこうと思えば、最初から技術的な人をたくさん育てるというプロセスを経なくてもできるわけで、そこはできるのではないかと思っております。国民生活センターの被害の相談では7割が取引の問題ですので、これは情報の宝庫の近くにいらっしゃるということだろうと思います。
 それと、先ほど山口委員から、この委員会の意見が取り上げられないことについて、どうしたらいいのかというお話がありました。そのこととも非常に大きく関連すると思っておりますけれども、この委員会の意見が尊重されるというのは、この委員会のやっていることを国民が支持する。よくぞ消費者委員会が言ってくれた、そうか、消費者委員会が言ってくれるのかということが国民からも支持があるときに、これを行政庁が無視すれば、消費者委員会が言っているのにどうしたんだと。それは国民が声を上げてくれないと、この委員会では大きな働きはできないと思います。
 では、国民が声を上げる、支持をしてくれるような委員会というのはどういうことでできていくのか。今、私どもが見ておりますと、情報の発信力も低いですし、せっかくの未公開株の提言も、委員会がそういうことを言ってくれたことをほとんどだれも知らない。広報の問題もありましょうし、それと取引の問題も、早くタイムリーに鋭いことを言って声を上げてくださる、その都度その都度、適切に委員会が声を上げてくださる。消費者委員会すごいじゃないかと、そういうことが実績に結びついていって広報もうまくいくということだろうと思います。
 私どもが一番被害と感じている分野、そこに対して多くの意見を消費者委員会というところが言う、そういう体制を早くつくっていただきたいと思います。

○松本委員長 どうぞ。

○池田委員 議論するつもりはありませんけれども、消費者委員会は行政組織だと先ほど紀藤さんはおっしゃいました。行政の組織でタイムリーにいろいろな意見を言うことは、本当にできるのですか。個人的な見解はいくらでも述べられると思いますけれども、果たしてそういうことをタイムリーに消費者委員会として出していっていいのか。そういう問題を我々は感じているわけです。
 問題の認識は全く同じですけれども、やはり消費者委員会として出す以上は、他省庁なりそういうところに対して訴えられるようなもので出していかないと、一度否定されて、そうでしたということでは消費者委員会の価値はないと思うのです。だから、そういうプロパガンダ的な意見表明だけで済む問題ではないのではないか。もちろん、そういうことで言っておられるのではないと思いますけれども、委員会内ではそういうこともかなり議論になっているというのが実情です。

○松本委員長 どうぞ。

○阿南事務局長 今とも関連するのですけれども、先ほどの経団連の斎藤さんが、そんなに建議を安売りするなと。私も確かにそれはそうだなと思いました。だから、各省庁のやる消費者施策にかかわることをきちんと定期的に、今、こういう問題が起こっていて、行政としてはこう対応しているということを報告させる仕組みをつくって、その中で、足りなかったらそこで意見を言う。そういう積み重ねの中で、このやり方はあまりにもおかしいのではないかというときにはじめて、きちんと調査して建議するとか、そういう体制をつくった方がいいと思います。
 先ほど池田さんがおっしゃった審議会機能のところは、今はそこに全部、力が行ってしまっている。そんなことをやっている余裕はないので、ここはちゃんと整理して、消費者庁の援助を得ながらやっていくという仕組みをつくる。今、どういうふうに行政が消費者に関して動いているかという情報を集め、そこに的確な提言や勧告を出していく仕組みをどうつくるか、というところに専念していただきたいと思いました。

○紀藤副委員長 池田さんの御意見は非常に参考になるし、御意見としても新しい面もあると思いましたけれども、これは抽象論ではないと思うのです。要するに努力と能力の問題が完全にかかわっていると思います。努力や能力が高ければいっぱい建議が出せて、努力や能力が低ければいっぱい建議が出せないような議論は、私はすべきではないと思っています。委員の中に建議の前提たる情報がちゃんと流れている。努力しなければその情報にたどり着けないということであれば、あるときの消費者委員会はいっぱいやったけれども、あるときの消費者委員会はほとんどやりませんでしたということで、普通の行政と同じだと思います。事務次官がいいときだったらいろいろな行政が進み、事務次官がだめなときは行政がよく進まない、内閣総理大臣がいいときだったら行政は進むけれども、そうでないときは進まないという、偶然性に非常に左右されるということだと思います。
 私が予算と人員が一番大事だと言ったのは、そういう前提があるし、阿南さんが組織の問題だと言われたのは、私もその前提があると思います。行政的な考え方というのは、その歴史的な経過で柔軟に対応すべきだと思うのです。例えば建議が全体の委員会で出せないのであれば、例えば5人の建議が出せるとか、あるいは全員の一致を見ないのであれば少数意見を付して建議を出すとか、いくらでも工夫ができるのではないかと思います。今の消費者委員会は、その工夫を皆さんの中でできないでいるのではないか。みんなが意見を戦わせている。でも、全員10人が集まる機会も少ない、定期的な会合でさえ10人がなかなか集まらないと。それでは何のために議論をしているのですか。1人欠けていれば議論にならないわけで、出るときは10人が絶対出る。ただし、その10人が絶対出る前提は、小委員会などでちゃんと議論したものを持ち込むとか、そういう前提をつくっていかなければ、未来永劫、10人で審議しなければ何もできないということが続くのではないですか。それはおかしいと思います。私は、建議の仕方も、法律に書いてある以外の方向性もいろいろ工夫していただきたいと思っています。

○大迫副委員長 それとプラスして、せっかく民間の方の中からエキスパートの方々が10人、委員になっておられるのですから、当然、各委員が消費者の問題についての情報を持っていらっしゃると思うのです。それぞれ分野分野で、お得意のところとか、偏りというか、そういうものはあるでしょうけれども、そこは10人の方が常に、情報のある人、ない人、精通している方、そうでもない方とが平等に話をして、まとまらないといけないということではなく、もう少し専門的な識見を十分に生かし切れる仕組みも工夫はできないのでしょうか。
 例えば日弁連から委員を2人出しておりますけれども、当然、日弁連の委員は消費者被害の現場の非常に近いところにいて、その実態もわかっております。それから、取引にありがちなことですけれども、次々と間隙を縫って変化していく、ぬえ的な存在について、非常に情報を持ってここへ来ているわけですから、それぞれの委員のそういう情報も大事に使っていただきたいと思います。現場を知らない人が議論をいたずらに重ねることで、せっかく新しい情報を古くしてしまうことのないような工夫、そういうこともいろいろと考えようがあるのではないかなと、端から見ていて感じております。

○松本委員長 今まで委員会で我々はいろいろな問題を取り上げてきたのですが、ばらばらにやっているのではないかという批判がかなりあるわけですね。ところが、紀藤さんのペーパーを見ると、もっといっぱい取り上げるべきだという趣旨、もっとさまざまなことを取り上げて議論しろという感じに見えます。その辺り、できるだけたくさんの問題を取り上げてここで議論をすることがいいのか、それとも、もう少しテーマを絞って継続的にやって、確実に一定の建議なり結論に持っていって、それを公表するという感じの方がいいのか、どうでしょうか。昔の審議会だと、一つの報告書をまとめるのに1年間ぐらいかけてじっくりとやったわけですね。
 どなたでも結構ですが、どうぞ。

○紀藤副委員長 私は、消費者委員会ができて10人の委員の先生が就かれたときも、非常に期待していた者の一人で、今でも期待し続けているのですが、どういう組織でもやはり理想に立つべきだと思うのです。現実路線に立った瞬間から官僚化するというか、悪い言葉で官僚化という言葉を使いますけれども、現実路線に立ったところから守りに入ってしまって、なかなかものが言えなくなると思いますので、まず、理想は何なのか、制度趣旨は何なのかと考えたときには、ありとあらゆるものを取り上げるべきだと思います。
 ところが、ありとあらゆるものを取り上げるときに、たった24人の組織と10人の委員で全部できるのかと言われたら、それは現実的には難しいと思います。でも、難しいと言った瞬間から、取り上げるべき重点事項という話になる。だから、10人の委員で取り上げるべき事項とか、個々の委員で分担を決めて取り上げる事項とか、3人で小委員会をつくって取り上げるべき事項とか、それは切り分けるべきだと思います。切り分けた上で最終的に上がってきたものが、10人の委員で共通の意見が出せるものであれば、それは積極的に出すべきだというふうに思います。

○阿南事務局長 私もそう思っています。分野ごとに委員の責任分担をしっかりして、そこにその分野の事務局を複数付けて、そういう問題について常に検討していく。何か行動を起こすときは、本委員会で担当者がプレゼンをして、共有した上で「こうだ」というふうにして責任を持ってそれを遂行していく、そういう進め方の方がより機動的だと私は思います。

○大迫副委員長 日弁連の消費者問題対策委員会でさえも、百数十人の委員を抱えていろいろな問題に取り組んでいるわけです。こちらは10人の委員の方がやるその後ろには、それだけの人数がいてそれを支えていないと、とてもできないことだと思います。ですから、最低限、日弁連の消費者問題対策委員会程度の人間が後ろにいて、支えられるようなものを目指してもらいたいと思います。もちろん、それは予算を付けて人員を得てこなければならないので、今、すぐできることではないかもしれませんけれども、そのぐらいのものになっていくという前提で予算の獲得とかも頑張っていただきたいです。やはりそのぐらいになって、日弁連の消費者問題対策委員会と同じぐらいの仕事ができるということにもなりますので、もっと更に上ということであれば、更なる人員と更なる予算ということだろうと思います。

○阿南事務局長 でも、今、現実的にはできないので。

○松本委員長 基本ポリシーが2つありうると思うのです。委員会という合議体を中心に議論して決めていくというポリシーか、そうではなく部会中心でそれぞれの専門ごとに分担して、そういうチームが10チームぐらいあって、それぞれどんどんやっていくという方向で行くのかという、かなり違ったポリシーがあるわけです。我々は今までのところ、どちらかというと10人の本委員会でいろいろなことをやっていこうという形でやってきています。だから、決定がすごく遅いとか、だれかが反対するとなかなか進まないとか、そういうことは確かにあるわけです。
 専門調査会は、長期的なテーマについて専門家に集まって議論していただくということで、個別の問題について、それぞれの部会や専門調査会が臨機応変に取り上げて、今日はこれを議論して一定の方向を出して、それを建議に持っていくとか、そういう感じではないわけですが、むしろその方がいいということですか。

○阿南事務局長 部会や専門調査会ではそれは無理だと思います。それは消費者委員会自体がやらなければいけないです。今の人数でも、分担してできる限りのことをやる。それから始めるしかないと思います。

○松本委員長 分担してということは、結局、特定の人に権限を与えてしまうということですか。

○阿南事務局長 そうです。最終的に本委員会でちゃんと議論して、見解なりを出していけばいいと思います。

○松本委員長 中村委員。

○中村委員長代理 これは国会で議論されているときにもあった話なのですが、消費者庁・消費者委員会設置法で消費者委員会に与えられている任務は、消費者利益の擁護等の基本的なところをやりなさいというのがメインです。そのためにみずから調査審議もするけれども、専門的なことや特別な事項については、専門委員会とか臨時委員を置いてそっちでやりましょうと、法律上は一応そういう形になっているわけです。だから、紀藤さんが言うように、山で遭難したものも全部含めて消費者委員会がやれと、野戦病院のような状態でおまえらガンガン働けという建前には、必ずしも法律はなっていない。
 そこまで国民の期待が高まってきたのだとしたら、附則にあるように、政府が3年以内に、組織の在り方、法律の所管の在り方とか、消費者庁・消費者委員会、国民生活センターも含めて、この関係をどうするかということを議論して整理していくべきだと思います。生まれてまだ1年にもならないゼロ歳児の状態で、最初に予定したことをまずはきちっとやることが当面必要なのではないか。期待が大きいというのは非常にいいことなので、できるだけ背伸びしてでも、食らいついてでも、本当は期待に応えていきたいとは思うけれども、今はまだ力及ばずという状況ではないかなというふうに理解しています。

○斎藤政治社会本部長 今、中村先生がおっしゃったように、基本的な政策をどの方向に持っていくかというかじ取り役が消費者委員会だと私は思っています。というのは、消費者保護基本法から消費者基本法に変わり、基本的な考え方は転換しましたけれども、いまだ行政の形が変わらなかったということで、消費者庁と消費者委員会を設置しました。人数や予算は別にして霞が関の形を変えました。
 形を変えましたけれども、行政が全部変わったかというと、それはまだこれからです。そのために、行政の形が変わったということをしっかり見せることが消費者委員会に与えられた仕事であって、みずからが取り締まるとか、犯罪人を減らすというのは、むしろ別の組織がやることではないか、と思っています。消費者行政の転換、それによって社会が変わっているということを見せることが、長いようですが、そこが一番大事だと私どもは思っております。

○紀藤副委員長 中村さんの言っていることも少し誤解があると思いますけれども、例えば10ページの注に挙げている霊感商法の事案は特商法の事案ですが、経済産業省は何もしていません。消費者庁も何もしていません。そういう事案に関してどうして消費者委員会が取り上げないのでしょうか。要するにやっていないから、まさに監視の問題を生じています。
 観光事故に関しても、これは観光庁、国交省は何もしていません。観光問題に関しては、契約書、説明義務の中身も含めて、消費者問題ではここ何十年もずっと議論が続いています。でも、観光庁や国交省は、御存じのとおり観光庁の長官も会社側の人ということもあって、どうやっても殖産的な発想、産業育成的な発想しかしないですね。産業育成的な発想が絶対だめだとは言っていません。WIN-WINの発想は当然必要です。でも、消費者にとって、何ら説明しないで事故に遭うというのはやはり問題だと思うのです。あるいは中国の列車事故で、保険も何もかかわらないで自分でやりなさいとか、あまりにもひどい感じがします。その辺りを何もやらないから監視があるわけであって、実際にしていないわけだから、どうして消費者委員会が取り上げないのか、私はさっぱりわかりません。
 もう一つ、あえて言うというので、私もあえて言いますけれども、臨時委員と専門委員というのは、もともと審議会をつくれという趣旨ではなく、各委員の知識の補充、あるいは意見を出すときの補充だというふうに思います。だから、この問題はちょっと専門的ではないなというのは当然あり得ると思います。そのときに、専門委員を自由につけられる仕組みをつくってほしいわけです。例えば中村さんがこの分野はわからないとしたら、専門家に聞く。この人に委員嘱託をしてときどき来てもらって話を聞く。全体の委員会の中でそういうことを認めてもらう。いわば専門的な秘書のような形になるのかもしれませんけれども、そういうのが簡単にできる仕組みがあれば、個々の委員はもっと時間も使えるし、能力もアップすると思います。知識が増えますし、人を使えるわけですから。
 ところが、審議会のようなものをつくって、その中で1年かけて議論してくださいと言われたら、1年かけて議論するまでは、個々の委員はなかなか意見が出せなくなると思います。例えば、地方消費者行政専門調査会は委員が13人もいるとか、公益通報者保護専門調査会は委員が14人いるとか、個人情報保護専門調査会は委員が18人もいると。18人や13人いたら結論が決まるまで1年はかかりますよ。そうではなく、個々の委員が理解し意見を出せるのに臨時委員と専門委員がいる。やはり法律の建付けはそうなっていると思うので、なぜこれがいつの間にか審議会方式に変わったのか、私はさっぱりわからないのですが。

○松本委員長 個々の委員が意見を言う方がいいですか、それとも委員会として意見をまとめる方がいいですか。どっちがいいですか。

○紀藤副委員長 どっちも必要です。

○松本委員長 個々の委員はかなり自由に発言しています。

○紀藤副委員長 だから、個々の委員が意見を言える仕組みになることが全体の委員会を活性化させる。

○松本委員長 それは、かなりできていると思います。

○紀藤副委員長 今、言っているのは、個々の委員が外に意見を出せることも含めてです。

○松本委員長 外に出すのは全く自由です。ただ、委員会の決定ではないわけです。

○紀藤副委員長 それはそのとおりです。

○松本委員長 下谷内委員、どうぞ。

○下谷内委員 皆さんの意見を聞いて非常に励まされたのと、もう少し頑張らなくてはいけないのといろいろあったのですが、阿南さんが最初におっしゃられた、消費者委員会はだんだん見えなくなっているというところについては、真摯に受けとめたいと思っておりますし、また、経団連の方では高く評価していただいているということで、見方によって非常に見解が違っているということがわかりました。日弁連もそうですが、そうなりますと、私たちのこの消費者委員会は、意見を発信するのと併せて、消費者委員会そのものを国民の皆さん、消費者の皆さん方に知っていただいて、「何をしているか」ということをやらなくてはいけないのではないかということを改めて感じました。私は相談の現場におりまして、大迫先生のおっしゃるように、取引被害が私どもの相談の中に7割以上入っていますので、そういうものも積極的にやっていかなくてはいけないと思います。
 ただ、いろいろな事案がたくさんありますものですから、それをどうこなしていくか。今、皆さん方の御意見を拝聴いたしまして、2、3人の担当の専門の委員がそれに一つずつ取り組んでいってバックアップしてくれるチームをつくるとか、いろいろなことを考えられるなとは思いました。結局は予算と人員のところに行き着くのかもしれませんけれども、皆さん方がそういう声をたくさん発していただければ、少しは国の方にも届くのかなということで、それは非常に感謝いたしております。
 今後、一つの案件をどうとらえていくか、いくつも出てきたものに対してどう対応していくかとなると、なかなか困難なところでもあるのですが、別に委員が何人かで検討しながら、それを本委員会に提案していく方法もあるでしょう。先ほど委員長もおっしゃられましたように、この委員会は割にそれぞれの意見を言っていますから、聞いた方は、意見がまとまらないからわからないという意見もありますけれども、結構いろいろな意見を皆さんが言っています。それがまた見えにくいというところもあるかもしれませんが、そういうものを一つずつ積み重ねていって、提言なり建議に結びつけていきたいとは思います。私は行政法とか法律的なことは疎いものですから、建議に対してどう扱うべきか、提言に対してどう扱うべきかという、細かいところになるとなかなかわからないのですが、できるだけ早く何かを外に向けていきたいなというふうには思っています。
 そういたしますと、今、皆さん方から伺った御意見は非常に貴重な御意見でしたので、私個人は、少しずつ考えながら進んでいく必要があるのかなと思っています。なるべく皆さんに見えるように動いていきたいし、自分の持ち分のところで一番できやすいものですから、今、そのようなことを皆さんの意見を拝見して感じました。みんな高い理想を持って委員になったと思いますから、なるべくそのように頑張りたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○松本委員長 どうぞ。

○阿南事務局長 ぜひ頑張っていただきたいのですけれども、個々の委員が意見を言っていると。それはいいかもしれないのですが、私が聞きたくないのは、あの委員がこういうことを言ったから私たちはできなかったんだと、そんなことを外で言うのはやめてください。

○松本委員長 今、おっしゃったのは、多数決でどんどんやれという趣旨ですか。

○阿南事務局長 いいえ、違います。徹底的に話し合ってそれなりの結論を出すというのは、私は必要だと思います。それについて言ってくださいというのはわかりますが、実は私は反対だったけれども、ほかの委員がこういうことを言ったからだめだったんだ、というふうな言い方はすべきでないと思います、一定の結論を出したら。私たちはそういうことを聞きたくないです。

○下谷内委員 「外で」ということですか。

○阿南事務局長 はい。

○松本委員長 内部で反対があったということは、言わない方がいいということですか。

○阿南事務局長 それは議事録なり何なりで見えますので。でも、そんなことは別に聞かなくたっていいです、わざわざ外で。

○山口委員 いいですか。

○松本委員長 どうぞ。

○山口委員 阿南さんに聞きたいのは、運営方針づくりをしなさいと書いてありますね。確かに、例えば原事務局長が当委員会の宿題として挙げられている重要テーマについて、工程表をつくろうとしたことがあります。ところが、アドホックにいろいろ問題が起こります。私は未公開株の問題をやろう、やろうと言い続けて何とか提言にまで至りましたけれども、本当は老人ホームの問題をもっとやるべきだと思っています。工程表でつくられてしまって、運営方針もこれしかやらないということになると、それこそアドホックに起こる問題、あるいは委員がやるべきだと思った問題ははじかれてしまうわけです。この運営方針というのは、何をおっしゃろうとしているのかがよく見えないのです。「例えばこういうふうにやったら」ということなのか、どういうイメージをつくられているのか、その辺がよくわかりません。
 それと、斎藤さんは少し誤解されているのかなと思うけれども、個別の問題について消費者委員会が、建議やら意見をやろうということは毛頭考えていないです。例えば未公開株の問題でも、何とかの事件を早く取り締まれということを言うつもりは全くないです。要するに無登録の事業者がやりたい放題やっている実情があるから、制度的にこういうところを調整すると被害抑止に役に立つのではないですかと。あるいは老人ホームの問題で、火災が起こっておじいちゃん、おばあちゃんがどんどん死んでいる。制度的にもう少しこういうところを改めたらどうでしょうかとか。入居一時金の問題でトラブルが多いのだから、もう少し整備したらどうですかと。個別の問題ではなく、あくまでもたくさん起こっている問題について、制度改善、それも言いたい放題言うだけではなく、関係省庁と打ち合わせをして、消費者委員会が言うならしょうがないか、ちょっと動いてみようか、動かざるを得ないな、という気になるぐらいのところでやれたらどうかと思うわけです。
 例えば未公開株の問題については、無登録業者がどんどん消費者問題を起こしている。これについてあえて言うと、金融庁は最初はうちの仕事ではないと言っていました。要するに事業者を登録させて、問題が起こらないようにいろいろ指導をしていくのが法律の建付けであって、無登録業者についてどうするかということについてはあまり関心がなかったのです。それを世論とか、消費者委員会の中でも言い続けて、やっと少し動いていただくようになったわけです。そういういきさつもあります。
 恐らく紀藤弁護士も、個別の事件をやれと言っているわけではないと思います。その辺は、総論的なことだけをやっていたら評論家になってしまっておもしろくないと思うし、多発している消費者被害を抑止するために、実態を把握した上で、制度的な検討もした上で、消費者委員会としてどういう観点から発言したらどうだというふうに考えているのか、その辺はどうなのか。全く違う質問で申し訳ないですが。

○阿南事務局長 ですから、私は何度も申し上げているのですけれども、7つの重要事項というものに対して、どういうふうにしてこの委員会を運営していくのか。役割分担も含め、そういう方針をつくってください、それが先ではないですかと申し上げているのです。

○山口委員 意味がわからないです。7つのテーマがありますね。それは頑張りましょう、やりましょう、いつまでにやりますと。

○阿南事務局長 「頑張りましょう」が運営方針なのですか。

○山口委員 では、運営方針というのはどういうことですか。

○阿南事務局長 考え方を、消費者委員会の機能としてちゃんと宣言することですよ。

○山口委員 わからないな。やらなければいけないのは当たり前の話ではないですか。

○阿南事務局長 日常的な消費者問題に対してどういうふうな対応の仕方をするのか。それをどこでどう察知して、情報を得て、どういうふうな議論の進め方をするのか。そういうこともちゃんと明らかにしてくださいということです。

○山口委員 そんなのが明らかにできるのだったら、結論が出てしまうじゃないですか。そうではないですか。

○原事務局長 わかります。

○原事務局長 もう少し手続の明確化、透明化というところですね。どういう判断の下でこの問題を取り上げて、こういうふうにしていこうと考えているのか。少なくとも附則で書かれていることとか、消費者基本計画で挙げられていることとか、下部組織はほとんど予定していたものは立ち上がりましたから、そこは明確に書き込んでいくということだと思います。
 ただ、今、私が一番悩んでいるのは、「みずから調査審議し」という機能を充実させたい。それを発揮したいのですけれども、そこの部分が、アドホックにいろいろな問題が出てきて、何を優先してやっていくのかというところは、委員会で相談しながらということにはなりますが、そこがうまく工程表とか方針のところにならない。ただ、どういう手続をしてそれを選んでいくのかというところは、もう少し工夫して明確化して、みんなにわかるようにしなければいけないということは私は思っているので、それはそのとおりです。
 それから、運営についての御提案をいくつもいただきました。やっていると、それなりに工夫しているところはありまして、例えば未公開株については臨時委員とか専門委員という形にはいたしませんでしたけれども、弁護士の方々には随分お手伝いをいただきました。それから、何人かの委員で小委員会形式でやっていってもいいのではないかというのを、例えば決済代行の問題をやろうとしていますけれども、これは委員と事務局2、3人ということで、5人ぐらいでチームを組んでいます。一方、自動車リコールのように大がかりにやっているものもありまして、いろいろな工夫は小さいながらやっているというところになります。おっしゃられるところはわかります。

○斎藤政治社会本部長 私が申し上げたのは、個別事案を委員会が取り上げてはいけないということでは全くなく、個別事案について各省庁がどういう対応をするかというのは、委員として、あるいは委員会としてどんどん調査なり提出を求めてやればいいと思いますが、それを週1とか、限られた時間の中で委員会の議題に取り上げて対応しようとするからどうしても時間が足りなくなっているということでございます。議論が煮詰まらない。そうすると、この委員会を聞いている皆さんの焦点がいつも悪徳業者というふうになってしまいます。委員会を開かなければ役所から提出を求めてはいけないということは全くなく、日々の委員会の機能として行えばいいと思います。
 そこは、委員の分担という話もありましたけれども、全員集まらなければ何も議論してはいけないということでもないでしょうから、事務局あるいは消費者庁と連携して、関係省庁に、何が問題になったのかというのは調査していただいて、制度上の問題があることがある程度わかった段階で、逆にこの制度は変えなければいけないということを、委員会で大きな視点から議論をしていただく方が、本当はいいのではないかと思います。もちろん、世の中で起こっていることをちゃんと取り上げていますということを示すことも確かに大事かもしれませんけれども、それを委員会の議題に毎回上げることがいいのかということで申し上げました。

○松本委員長 かなりいろいろ厳しい意見も含めてお出しいただきまして、我々としても真摯に受けとめて、やることはやっていかなければならないと思いますし、少し意思疎通がうまくいかなくて、お互いに理解できていない部分もあるかと思います。これからもまだこういう意見交換を続けていきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 各団体の皆様におかれましては、お忙しい中、誠にありがとうございました。
 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

○原事務局長 ありがとうございました。

≪閉会≫

(以上)