第13回 成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ 議事録

日時

2016年12月27日(火)16:00から17:00

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
樋口座長、池本座長代理、河上委員長、大森委員、増田委員
【オブザーバー】
後藤専門委員
【消費者庁】
福岡審議官、河内消費者政策課長
【法務省】
中辻参事官
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 取りまとめに向けた検討(3)
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、時間になりましたので、会議を始めさせていただきたいと思います。

本日は、皆様、お忙しいところお集まりいただきありがとうございます。

ただいまから「成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ」第13回会合を開催いたします。

議事に入ります前に配布資料の確認をさせていただきます。

お配りしております資料につきまして、議事次第下部に配布資料一覧を記載しております。もし不足の資料がございましたら、事務局までお申しつけいただきますよう、よろしくお願いいたします。

それでは、樋口座長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。


≪2.取りまとめに向けた検討(3)≫

○樋口座長 それでは、早速、本日の議題に入らせていただきます。

取りまとめに向けた検討として、成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ報告書案について事務局から説明をいただいた上で、御検討いただくことにしたいと思います。

まずは、資料1について、事務局からの御説明をお願いいたします。

○丸山参事官 お手元に資料1「成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ報告書(案)」ということで御用意させていただいております。前回からこちらについて更に肉付けさせていただきましたが、初めに委員の皆様におわびということではないのですが、こちらにつきまして、前回同様、斜め字で記載しているところがございます。こちらにつきましては、更に精査、肉付けが必要であると事務局で判断いたしまして、今回におきましても斜め字のままになっている部分がございます。したがいまして、そこの部分につきましては、申し訳ございませんが、そういった形でなっていることを前提に、報告書についてお聞きいただければと考えております。

まず、報告書の中身についての御説明でございますけれども、従前から、こちらで御説明させていただいておりますワーキング・グループの構成案に関しまして、1点変更がございます。1つ目は、1ページ目に「はじめに」と書かれている部分がございます。こちらについては、従前の骨子案ですとか報告書(案)では記載がございませんけれども、今回新たに盛り込むという形にさせていただいております。

こちらの部分の内容でございますけれども、まず1点目は、前回のワーキング・グループで樋口座長から以下のような御指摘がございました。すなわち、消費者庁からは、今回新たに成年となる者の消費者被害の防止・救済のための対応策について検討してほしいということで、当委員会に意見の求めがあったところでございます。こちらの意見の求めに対する回答について、きちんと対応関係について明らかに分かるような形にしたほうがいいのではないかと、そちらの手続的なことについてきちんと整理をしておく必要があるのではないかという趣旨の御示唆がございました。

こちらを踏まえまして、ワーキング・グループの事務局で検討いたしまして、この「はじめに」で、新たに成年となる者である18、19歳の被害防止のための救済についての対応方針、言うなれば、このワーキング・グループのメッセージというものについて、端的にこちらに記載したほうがいいのではないかということを整理いたしまして、今回「はじめに」ということで位置付けさせていただきました。

それに加えまして、従前から「7.改正民法施行に関する配慮」という形で記載をしておりました点、すなわち消費者教育の充実、準備のためには一定期間が必要ということですとか、あるいは制度整備のための期間といった点についても、こちらの「はじめに」にあわせて盛り込む形で全体のことについて整理をしてみてはということで、今回お示しした案になっております。

以下、内容について説明をさせていただきます。

まず、「はじめに」の1パラ目ですけれども、先ほど来申し上げておりますように、新たに成年となる者の18、19歳の消費者被害の防止・救済のために、消費者教育などの充実ですとか制度整備等が検討されることが必要だということを端的に述べております。

それから、実際に消費者教育に関しては、施策の実施ですとか、教員の養成課程の中で行き渡るまでの準備期間が必要であるということ。それから、法務省で「民法の成年年齢の引下げの施行方法に関する意見募集」の際には、施行のためということで、少なくとも5年間は周知期間を設定すべきという意見が多く寄せられたことについても触れております。

その次のパラグラフでございますけれども、18、19歳の消費者被害の防止・救済のための教育、制度整備、その他の措置について、仮にそういったことが伴わない場合には、これらの者が消費者被害に遭う危険性が高まる。そのため、「例えば」ということで、後で御説明させていただきます消費者教育の充実、相談体制の強化、それから、第2の1.で記載しております制度整備などについて検討することが考えられ得るという形で記載しております。

その上で、「したがって」ということですけれども、十分な消費者教育がされるまでの準備期間を確保されるとともに、消費者被害の防止・救済のためのその他の措置が実施されるために必要な期間を確保されることが重要であると。「なお」ということでございまして、それ以降の制度整備については、成年年齢が引き下げられるものとする改正民法が施行されることを踏まえつつ、国民的コンセンサスを得た上で検討が進められることを期待したいという形で記載しております。

こちらの記載の趣旨につきましては、やはり前回のワーキング・グループで樋口座長から以下のような指摘がございました。ワーキング・グループの報告書については、消費者、事業者、あるいは行政、関係者の皆さんのコンセンサスを得た上でまとめていくことが重要ではないかと思いますという形で御示唆があったことを踏まえて、この趣旨について盛り込んでおります。

その後が「特に」ということで、制度整備についても国民的コンセンサスが得られておらず、その点を踏まえて取り扱う必要があるということについても添えているということでございます。

まず「はじめに」の位置付けについては、このような形で整理をさせていただきました。

以下、それ以降につきましては、主要な変更点、それから盛り込んだ点を中心に御説明させていただきます。

第1の「現状と課題」という部分につきましては、1.ですとか2.のところについて、細かい部分についての修正はございますが、大枠については修正はございません。

その後、「3.若年者保護のための具体的措置に関する制度の現状」ということで、前回のワーキング・グループでは(3)貸金業法の部分について、具体的な記述がございませんでしたけれども、こちらについて、例えば年収の3分の1を超える貸付契約の締結は禁止されているということですとか、あるいは返済能力の調査をしなければならないような趣旨を文章化という形で肉付けをしております。

「4.消費者教育における現状と課題」につきましては、次の6ページでございますけれども、消費者教育の担い手である教員の養成課程について、斜め字体になっておりますけれども、こちらの部分については、更に精査ということで肉付けをしたいと考えております。

「5.本報告書が対象とする若者の範囲」というところでございます。こちらのほう、前回のワーキング・グループの際には全て斜め字という形で整理をさせていただいていましたが、今回、文章化させていただいております。大枠の趣旨については変わっておりません。具体的には、1パラ目の最後のあたりですが、18、19歳について消費者契約における新たな取消権を設けるなど、年齢のみによって画一的に処理することについてはどうかといった点ですとか、あるいは知識・経験・判断力等に応じた対応をしつつ、若者が成熟した成人として社会に参画することができるための支援の必要性について述べているということがございます。

「そのため」ということでありますけれども、仮に成年年齢が引き下げられた場合、特に成年になって間もない18から20代初めにかけての若者は「若年成人」として、成熟した成人期とは異なる配慮が必要となる年齢層と言えるということで述べた後、7ページですけれども、「そこで」ということで、本報告書は18から22歳を念頭に「若年成人」とし、「若年成人」の被害の防止・救済の観点から望ましい対応策について以下述べるという形で整理をしております。

ただし、その後、斜字体のところで記載をしているものがございます。こちらについては、すなわち中身を御覧いただければと思いますが、いわゆる「若年成人」を18から22歳として対応を検討することや、後述する第2の1.に制度整備という形で位置付けられているところですが、そこにおいて対象が18歳及び19歳を超えていることなど、その内容については消費者庁から意見の求めがあったものについての範囲を超えているということもありますので、こちらについては関係者と調整が未了であることなどから、国民的コンセンサスを得られていないということで、その点を踏まえて取り扱う必要があるということで、留意事項という形で記載をしております。ただし、ここの記載ぶりについては、更に精査という形で考えていきたいと考えております。

また、次の第2の「望ましい対応策」の部分でございます。

まず、「1.若年成人の消費者被害の防止・救済のための制度整備」につきまして、前回の資料につきましては要点のみという形の記載になっておりましたが、今回、文章化という形で記載をしております。ただ、こちらについても、従前から申し上げておりますように、やはり更なる精査が必要であるということで、現状では斜字体でとりあえず御報告をさせていただいております。

具体的な中身でございますけれども、(1)の消費者契約法についてです。こちらの柱書きのところですけれども、いわゆる若年成人は、契約について知識・経験・交渉力等が十分とは言えない。こういった若年成人の知識・経験等の不足その他の合理的判断をすることができない事情につけ込んで締結した不当な契約を取り消すことができる規定を設けるといったことや、若年成人に配慮すべき義務を明らかにすることが必要であるということで述べております。

具体的に、アといたしまして「若年成人に対する配慮に努める義務」ということで記載しております。提案内容ですけれども、知識・経験に応じて適切な形で事業者は情報提供するといったことですとか、消費者の需要や資力に適した形で商品・役務の提供について、必要かつ合理的な配慮をするように努めることが考えられるということで、こちらを提示しております。

理由につきまして、具体的には、事業者と消費者について、特に若年成人の場合には、成熟した成人と比して知識等が十分ではないということで、いわゆる事業者と消費者の格差が非常に顕著であるということで、その格差を解消するためには、何らかの形で事業者から適切な情報提供をすることが必要であるということを述べております。

以下、8ページの下部のところですけれども、有識者の方からのヒアリングで御示唆を得たような形で、それを受けたということで、例えば情報提供義務については、適合性原則からのアプローチということで、9ページでございますけれども、年齢等に配慮した情報提供の義務が考えられるということですとか、あるいは別の有識者の方からの御示唆ということで、暴利行為のルールからのアプローチということで、知的・社会的・経済的成熟度に応じた情報の提供、意見・判断を提供するよう努力すべき説明義務等が考えられることについても記しております。

また、「そこで」以下ですけれども、若年成人が真に自由な自己決定をする前提として、あるいは社会全体で若年成人が成熟した成人となるよう支援するために、適切な形で情報提供するとともに、消費者の需要や資力に適した形で商品・役務の提供に配慮するよう努めるべき事業者の義務を明らかにする規定の在り方について、別途検討することが望まれるという形で記載をしております。

それから、消費者契約法の二つ目でございますけれども、「不当勧誘に対する取消権」という形で記載しております。こちらにつきましては、いわゆる若年成人の知識・経験不足等の合理的な判断をすることができない事情に乗じることにより締結された消費者契約を取り消すことができる制度の検討を進めるべきであるという形で記載しております。

理由についてですけれども、事業者が、知識・経験等が乏しいことを原因とした、相手方消費者が合理的な判断をすることができない事情を利用して、需要や資力に照らして不合理な商品・役務を提供する契約をすることは、消費者の意思決定を侵害する不当な取引であるという形で説明をした後、次のページですけれども、こちらについて、適合性原則というアプローチからは、いわゆる若年成人の知識・経験等に適合しない場合には契約を取り消すことができるようにすることが考えられるといった有識者の御示唆であるとか、更には別の有識者の方の暴利行為ルールのアプローチということで、消費者の脆弱性へのつけ込みによる取引を招来するリスクを構造的に内包している点に鑑み、そういった暴利行為のルールを消費者契約法に導入することが考えられるといったことについても記載をしております。

ただし、この両者のアプローチについて、結論部分は同様の制度の導入が示唆されるということについても付記しているということでございます。

「そこで」ということで、一番下から二つ目のパラグラフですけれども、若年成人等の消費者に対して、こうした考え方も踏まえて、知識・経験不足等の合理的な判断をすることができない事情につけ込んで締結した契約を取り消すことができるとする規定を設けることが考えられるということで結んでおります。

ただし、11ページですが、こういったものについて、考慮に当たっての重要な要素ということでは、マル1知識・経験・消費生活における能力の不十分性ですとか、マル2事業者がマル1の状況について利用したことですとか、マル3消費者の需要・資力との関係で合理性・必要性を欠くことが考えられるといったことですとか、合理的な判断をすることができない事情につけ込んだことを「困惑」の一つということで取り消すことができる規定について設けることも考えられるということで述べております。

その上で、「そこで」ということで、対象を若年成人に限定しない規制の在り方も含め、消費者契約法専門調査会において、更に検討すべきであるという形で結んでいるところでございます。

続きまして、(2)特定商取引法でございますけれども、こちらにつきましては、基本的に前回御紹介をした内容について変更はございません。理由等について、具体的な肉付けを図っているということでございます。

具体的には、アの部分では、連鎖販売取引について若年成人の判断力の不足に乗じて契約を締結させる行為を行政処分の対象とするということで、こちらについて、現行では未成年については明記されておりますけれども、若年成人という形で明確化してはどうかといった点について提案をしております。

それから、12ページのイについては、訪問販売で判断力の不足に乗じて売買契約等を締結させることが行政処分の対象行為となることについて明確にすべきということで、現行では「老人その他」という形で明記がされておりますけれども、若年成人、若者について、こちらに含まれるのかどうか、この規定の対象という形で含まれるかどうか明確になっていないということで、これを明確化という形で盛り込んでいるということでございます。

「2.処分等の執行の強化」については、具体的に変更しているところはございません。

次に、14ページ「3.消費者教育の充実」について、主として変更点について御説明させていただきます。

従前においては、「提案内容」については記載をさせていただいておりましたけれども、今回この部分については「理由」というものを付記して、実際にその「提案内容」についての具体的な内容を説明しております。現在まだ精査が必要だと考えられる点について御説明をさせていただきますけれども、具体的には16ページの情報の部分で、1点目の斜字体を記してございます。こちらについては、いわゆる教科横断的な消費者教育の取組ということで、消費者教育についてはそういった横断的な取組が効果的であるということですので、そこの部分について工夫をした上で、消費者教育の推進を図ることができるようにという趣旨について、こちらに盛り込みたいと考えています。具体的な文言については、更に精査したいと思っております。

二点目、下部のところで斜字体がございますけれども、高校段階において、クラスの中で成年に達する生徒が出てくるということですので、集団ですとか社会の一員ということで、よりよい生活を築こうとする自主的、実践的な態度について、高校段階から育成することが必要であろうということで、生徒指導という観点から、何らかの形でここのところについて、消費者被害の防止という形で記載ができないか精査をしたいと思います。

17ページでございますけれども、真ん中辺りに斜字体の部分がございます。こちらについては、具体的に消費者教育を担当されている教員の方への研修についての充実ということでございます。こちらについて、具体的な消費者教育の重要性について、研修を担当されている教育委員会に働きかける趣旨の文言について、更に盛り込みたいと考えております。

20ページを御覧いただければと思います。こちらは大学・専門学校等の教員養成課程についての人材開発という部分でございます。

下のほうでございますけれども、いわゆる教員養成課程において、消費者教育の位置付けについて、教科という形で具体的な記述について更に精査をしたいと考えております。

もう一点、消費者教育についての最後でございますけれども、22ページのエその他のところで、いわゆるマルチ商法において展開されるマインドコントロールの調査研究について、行うべきであるという形で記載しておりますけれども、こちらについても更に記載ぶり等について精査をしたいと思います。

続けて、23ページ「4.若年成人に向けた消費者被害対応の充実」、いわゆる相談体制の強化等の部分については、基本的に理由の部分を肉付けしているということで、前回から特に変わっているところはございません。

さらに、28ページを御覧いただければと思います。「5.事業者の自主的取組の促進」という形で記載しております。こちらについても、前回から比較して理由の部分を肉付けしているところですけれども、(1)の部分、具体的には若年消費者に配慮した自主行動基準の堅持・強化の部分につきまして、前回の資料では斜字体で記していたものですが、理由について、具体的に29ページに斜字体で記している部分がございます。こちらの中身についてですけれども、前回資料におきましては、若年成人を念頭に置いた上で、例えばということで、取引についての抑制・禁止ですとか、親族の立会いという形で盛り込んでおりましたが、むしろ基本的にこういったものについては、現在、未成年の方について取り組んでいる業界からの実情について、きちんと報告があった内容について記載をした上で、事業者の方にきちんとそういったものについて検討していって、強化をしていただくというような書きぶりにしたほうがいいのではないかということで、このような形で整理をさせていただきました。

具体的にそれ以降のところでは、30ページの(3)若年成人に対する健全な与信のための取組で、提案内容について、前回は一部斜字体で書いておりましたけれども、具体的な肉付けという形で記載をしております。

それ以降については、具体的には理由のところの肉付けをしたということで、特段の大きな変更点はございません。

資料1の説明については以上でございます。

続きまして、参考資料について御紹介をさせていただきます。

具体的に、お配りしております参考資料1から8につきましては、12月20日以降に消費者委員会に寄せられましたワーキング・グループの報告書の素案、検討内容に関する意見等の原本の写しとなっております。

それから、参考資料9から13につきましては、消費者委員会で、消費者団体ほか関係団体との意見交換会を定期的に実施しておりますけれども、12月8日に開催されました意見交換会において、成年年齢の引下げを議題としたということがございますので、そちらの出席者の団体等から提出された資料をおつけしております。

最後に、更にということで、12月16日におきまして、こちらのワーキング・グループとは別途でございますけれども、消費者契約法専門調査会が開かれました。そちらで私から、本ワーキング・グループの報告書の骨子について御説明をさせていただきました。その際、幾つか御出席いただいている委員の方から御意見をいただきましたので、その意見の中身について概要を御紹介させていただきます。

まず、ある委員の方からですけれども、事業者者側の委員がワーキング・グループに入っていないということから、法改正の根拠とすることには違和感があるので、その点を配慮してほしいという御意見がございました。

二つ目でございますけれども、成年年齢の引下げが本当に妥当なのかということを、引下げそれ自体について正面から検討するべきであるといった点について、御指摘というか御意見がございました。

それから、ある方は、これは制度的な整備のところですけれども、要件の設定次第で幅広い事業者に影響が及ぶので、事業者の意見も聞いた上で決めなければ、事業活動を制限するだけでなく、創意工夫を懲らした事業活動が萎縮することになり、消費者の利益も損なわれることになるといった御意見がございました。

以上、こういった御意見が専門調査会のほうで御指摘として寄せられたということで、今回、御紹介をさせていただきます。

長々となりましたけれども、私からの説明は以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。

それでは、意見交換を行いたいと思います。御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。

池本座長代理、お願いいたします。

○池本座長代理 池本でございます。

本当に短期間のうちに報告書を更に練り上げていただいて、ありがとうございます。

斜字体の部分も含めて、私どもも本当に直前にいただいたので、追加記載されたところを熟読しての意見、この場だけでは全部は出し切れないだろうと思いますので、大きな枠組みのことについて意見を述べたいと思います。

これは、事業者側からこの間、前回あるいは今回出された意見の中でも触れておりますし、あるいは先ほどの消費者契約法専門調査会の中でも指摘があったところですが、法制度の整備の問題について、事業者側委員も交えた議論がされていないのではないかという指摘がありました。

それから、18、19歳の新たに成年となる者に対しての措置ということについて、22歳までというところで諮問と答申にちょっとずれがあるのではないかという指摘も複数あったかと思います。そのことについて申し上げたいと思います。

まず、このワーキング・グループで取りまとめたもの、もちろんそれは消費者委員会、本委員会で確認をしていただいて、答申とするわけですが、そこで出た答申ですぐそのまま法案にするということを決して当初から考えていたわけではなくて、ちょうど今、消費者契約法の専門調査会が開かれているので、そこでの審議を、それこそこのことに関連する項目は優先課題にしてでも早くにやっていただきたいという趣旨で申し上げたところです。

それから、特定商取引法も、この5月末に法改正が行われた、それの政省令改正が近々予定されていると思いますので、その審議の中で、この提案したところも含めて審議をしていただく必要があるのではないか。

これは前回も申し上げましたが、いずれも、もともと成年年齢引下げそれ自体が是か非かというのはこのワーキング・グループに課されたテーマではありませんし、そのことを仮に引き下げる場合にどういう若年者の保護措置が必要かということの検討となっておりますが、御承知のとおり、あるいは前回もちょっと触れましたが、世論調査によれば、約8割の国民が引下げについてむしろ反対であるという意見が非常に根強い中で引下げを実施するとすれば、よほどきちんとした若年者の保護措置をとらなければならない。これは法制審の答申もそうですし、今回の私たちの基本の考え方です。

ただ、それを、だからといってこのワーキング・グループで書いた中身がそのまま法案になるということではない。ちょうど開かれている専門調査会、あるいは特商法で言うとこれから開かれようとする専門調査会で、事業者側委員も含めて、そういった新しい大きな政策課題も踏まえた上で、早急に具体的な若年者保護措置を考えていただく必要があるであろうというような意味で、今回そのことが具体的に書かれ、例えば先ほどもありましたが、消費者契約法専門調査会で更に検討すべきであるというのが11ページに明示的に書かれているのも、そういう趣旨だと理解しております。

同じことは、18歳、19歳に対する措置が22歳になっているというのも、一見すると唐突ではないかと思われるかもしれませんが、これは法制審議会の答申でもそうですが、年齢の枠組みで画一的に決めるのではない、実質的な保護の必要性に応じた措置をとるということからすれば、むしろ必然的に18歳、19歳だけではない、より実質要件で変えていくことは避けられない必要なことであろうと考えています。

ただ、これも形式的に言えば、このワーキング・グループの結論だけでそのまま法案をすぐ出すということではない、その点も丁寧な議論を専門調査会でやっていただいた上で、最終の結論に至る必要があるのだろうと考えます。

とりあえずその二点だけです。

○樋口座長 ありがとうございました。

いかがでしょうか。

委員長、お願いします。

○河上委員長 私も幾つかの意見書を拝見して、ずっと精査させていただきました。共通している論点がかなりありますので、それぞれについて考えてみたのですけれども、1つは若年成人の話であります。これは前回も若干話題になったことですけれども、報告書はあくまで成年年齢が引き下げられた場合の新成年、つまり、18、19歳に焦点を当てて問題を考えているわけであります。しかし、若年者の具体的な成長過程は多様であって、対象ごとに異なり得るということがあって、例えば20、例えば18というような形で、年齢で画一的に保護の要否や程度を考えることは本来的には非常に困難であるということを、このヒアリングの際も随分いろいろな方から指摘されたわけであります。

その意味では、要保護状態に関しては、むしろ一定の幅を持って検討されることが望ましい。さはさりながら、全くの幅がずるずるでは困るので、意見書の中では18から22歳ということにしましたけれども、実際には17あたりから23あたりまであるのかもしれません。そうした形で、年齢への配慮が必要なものだということがむしろ実態に即していることを基本的な、これは哲学になるのでしょうか、考え方にしているのだということであります。

ただ、これはある種の哲学であって、具体的な法制度にそれを乗せていこうとする場合には、年齢一般に対する配慮という書き方になる場合もあれば、特定の年齢に限った対処、例えばパチンコに入るには何歳というふうに禁止行為についてはきちんとそれを定めるというような目的に応じて年齢を考えることが必要なのだということは、前回もお話ししたとおりであります。

ですから、取消権などというはっきりと法的効果を持ったものに関して、何歳以下というような形でやることは、ありということになりますが、他方で、もう少し幅を持った一般条項的な年齢等への配慮というような書き方になる場合も、これはありだということであります。

報告書の5.で対象とする若者の範囲についての記述は、まさにそのような意味を持ったものとして読んでいただく必要がありまして、最後のほうのなお書きに至るまで、以上のことを明らかにしているのだということをぜひ御理解いただきたいと思います。

その意味では、この委員会が越権行為をしているかのように判断して、余計なことを言っているのではないかという言い方をされるのは、いささか心外です。

第二番目の問題でありますけれども、成年年齢を引き下げるのが本当に必要なことなのか、妥当なことなのかをもう一度正面から議論しろというお話がございます。それから、それとは別個に、成年年齢の引下げをする以上は、これは一定の判断力があるということを前提にしているのだから、そこに保護の策を考えるのは不適切であるという、言ってみれば全く逆の観点からの極端な意見があります。それは法制審議会の意見をそれぞれ援用しているのですけれども、法制審の最終意見を正しく読んでいただくと、そうではない。2008年以来、法制審がもう何年にもわたって議論をしてきたところでありまして、最終的な法制審の結論は、いろいろな観点から見て、民法の成年年齢を18に引き下げるのは、それはそれなりに必要なことだけれども、消費者被害が拡大してしまう懸念を払拭できないので、その点についての制度的な配慮、いろいろな形での20から18歳に当たる人たちに対する一定の配慮をしないと心配だということで、法務大臣に答申された表現を使いますと、民法が定める成年年齢を18歳に引き下げるのは適当である。ただし、現時点で引下げを行うと、消費者被害の拡大など様々な問題が生ずるおそれがあるため、若年者の自立を促すような施策や消費者被害の拡大のおそれ等の解決に資する施策が実現されることが必要であるという形で、両方の利益に対する配慮をしたものが法制審の結論であった。

両方の色が混じっているのですけれども、しかし、やはりその間のちゃんとした消費者保護のための施策をとりつつやらないと、若年成人のところで被害が拡大するおそれがあるという懸念が示されているのだということを前提にすれば、引下げが妥当かどうかという元の議論に戻ることも適当ではないし、あるいは引下げ対応は能力を認めたのだから、これ以上のことをするのは逆に過保護になるという意見も一方的であると思います。

一番大きな御批判は、その2つですけれども、そのほかに共通して出てきたものの一つが、若年成人の範囲というものを事業者は容易に知り得ないではないか。そういうときに事業者がそれを知るためには、相手からそれを聞き取る必要があるけれども、それはプライバシーの侵害にも当たるだろうというような、つまり認識の可能性がないのだということについて批判をされているわけですけれども、これは投資取引のように、相手の資力とか投資能力を測るために情報を入手すべき義務のような性格の問題ではなくて、相手が若年成人であることが分かっていた場合に、その相手にふさわしいような説明や商品を提供するように努めてくださいというだけの話であって、単なる努力義務をそこで課すという話でありますから、情報を収集することの御負担を事業者にお願いしているわけではないということであります。

そのようなことを前提として、事業者の方に、相手が若年成人である場合にそれを配慮していただけますかということをここでのヒアリングのときにもお聞きしたら、二つ返事で当たり前ですというふうに事業者の方が答えてくださった。我々は、売るときには、相手が未成年であったり、あるいは若年者であったり、あるいは高齢者であったりしたときには、それに合わせてものを売る、これが商売人ですとはっきりおっしゃってくださったのを、私はうれしく聞きました。

その意味では、相手の年齢等に対して配慮して情報を提供したり、ものを売ったりすることをお願いしたいということが、過剰な規制になり、事業者を萎縮させることになるのだという御指摘に対しては、私は本当にそうなのだろうかという疑問を禁じ得ない部分がございます。

ちょっと言い過ぎたかもしれませんけれども、いろいろ御意見がたくさんあって、その御意見を一つずつ私は真剣に伺いました。その上で今のような感触を抱いたということでございます。

○樋口座長 ありがとうございます。

ほかの委員の方はいかがでしょうか。

増田委員、お願いします。

○増田委員 ありがとうございます。

若年成人に関する規定の仕方について、いろいろ議論がありましたが、当初、18から22歳ということが最初からあったわけではなく、ヒアリングの中で、ある範囲に対して手当をする必要があるとみんなが理解したと認識しております。やはり現場にいらっしゃる方々の中からそういう意見が出たということは、非常に重要なことなのではないかと思います。

もう一点、大学の教員の養成課程などで消費者教育の指導の仕方も学ぶとか、学習指導要領において消費者教育も規定されているとかいうことが既にあるわけなのですが、それがあるにもかかわらず、あえてここに書くことは意味があります。やはり現実には十分ではない状況があるのではないかということが、これもヒアリングの中で分かったことなので、あえて書くということは非常に重要だと認識します。

そして、事業者の自主規制に関して言えば、既に取り組んでいるところが数多くあり、これについてもあえて書く必要もないのではないかという意見もおありなのだろうと思うのですけれども、現在やっていらっしゃるところに引き続きお願いするのはもちろんなのですが、まだ取り組まれていないところもたくさんあるわけで、そういうところに対して広く周知していく必要性であるとか、模範となるように見せていただきたいとか、そういういろいろな意味があるかと思いますので、ここで取り上げることは、やはり意味のあることではないかと考えます。

○樋口座長 ありがとうございます。

ほかの委員の方はいかがでしょうか。

基本的な枠組み、この報告書の性格、あるいはいろいろ御要望も出ていますけれども、それに関する考え方の整理等でいろいろ御意見をいただきました。また、個々のいろいろなところについてもあろうかと思いますけれども、増田委員からは、大学での教育等の問題について御指摘をいただきました。あるいは自主規制の問題についても御指摘をいただきました。ほかの委員の方、いかがでしょうか。

まだ報告書自体にペンディングのマークが何カ所かついていますので、細かい点は今後精査されるということでしたけれども、何か報告書について、もし御質問があればお願いします。

○池本座長代理 池本でございます。

消費者教育の関連で、16ページのところについて、下のほうで「消費者教育推進のための人材開発」。ヒアリングの中でも学習指導要領の現在のもの、更にはそれも改訂することで、教科書については比較的前進してきている、あるいは更に前進させようというところは見えてきたのですが、それを教える教員の人材、資質を向上していく。消費者問題という本当に日々新しく問題が出てくるものについて、どう人材を確保していくか、あるいは向上していくかということが一番悩ましい問題だと思います。

その意味で、この提案内容のところで、もちろん免許更新の講習だとか、資質向上の研修の中で、消費者教育を必ず受けろと義務化するのはちょっと難しいのかもしれないですが、ここには資料を作成するようなことで重要性を意識してもらうという記述があります。もちろんそれは必要なことですが、それだけで本当に足りるのか。何かもう一歩、よりこの問題の重要性に接する機会を作ることができないか。今、回答を持って申し上げているのではないのですが、そのあたり、この提案内容なり、あるいは理由の記述のところについて、更に検討する余地がないかということは、私自身も検討してみたいと思っております。このあたりが、やはり今回の問題を消費者教育の場面で前進させていく上では本当に鍵ではないかと思っていますので、とりあえず問題意識だけお伝えします。

○樋口座長 ありがとうございます。

消費者教育について、いかがでしょうか。

これは最後のその他のところにもかなり密接に関係してくるのではないかと思うのですが、私自身も大学におりますので、若い方自身がいろいろ取り組んでおられる。この委員会でもそういうお話が幾つかありましたけれども、これまで全国的にそういう取組が行われており、大学生、あるいは高校生でもそういう取組をしておられる方がいるということでした。そういう取組とうまく連動させていくことも重要ではないかと個人的には思っているところですが、最後のその他というところも、ぜひ内容を充実させていただければと思います。

ほかに何か御指摘があれば。

後藤専門委員、お願いします。

○後藤専門委員 望ましい対応策のところなのですが、8ページと9ページで、8ページのアのところで「若年成人に対する配慮に努める義務」というのが書いてありまして、9ページで「不当勧誘に対する取消権」というのが書いてあるのです。その中で、暴利行為のルールというものが9ページの1行目から書いてあるのですが、この暴利行為のルールというものが、アの「若年成人に対する配慮に努める義務」の問題として位置付けられるかどうかは少し疑問があります。学識者からのヒアリングで、暴利行為による対応ということが出ていたのですけれども、主に9ページのイの「不当勧誘に対する取消権」のところで、つけ込み型勧誘による法律行為に対する効力否定の枠組みというところで出ていたのではないかと思います。「若年成人に対する配慮に努める義務」のところは、むしろそれとは別個の説明義務、情報提供義務の枠組みというような内容として出ていたと記憶していますので、「若年成人に対する配慮に努める義務」が暴利行為の問題として位置付けられるのかどうかは、もう一度確認というのでしょうか、検討していただければいいのではないかと思います。

以上です。

○樋口座長 ありがとうございます。

この点について、いかがでしょうか。この点については少し専門的な内容になりますので、事務局のほうでも調整をしていただいて、適切な表現にできるだけ近くなるようにしていただければと思います。

ほかにいかがでしょうか。細かい「てにをは」の問題については、事務局でもこれから精査されるということですが、何か非常に気になる点とか重要な点等があれば、御指摘いただいておいたほうがいいと思います。

本日、報告書(案)に関して、調整中の項目、精査する項目を含めて全体像が出てまいりました。特に御質問等がなければ、更に、事務局で精査していただく部分があるということですから、本日の検討はここまでとさせていただきたいと思います。

次回の会議では、本日委員の方々からもいろいろ御指摘がございましたので、皆様の御意見も踏まえまして、報告書(案)について再度御議論いただきたいと思っております。

本日の議事は以上となります。

最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。


≪3.閉会≫

○丸山参事官 本日も御熱心な御議論をどうもありがとうございました。

次回の日程につきましては、改めて御連絡をさせていただきたいと思います。

○樋口座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)