第4回 電力託送料金に関する調査会 議事録

日時

2016年6月29日(水)13:59から16:24

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
古城座長、井手座長代理、太田委員、古賀委員、白山委員、陶山委員、安田委員、矢野委員
【説明者】
電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員
【事務局】
消費者委員会 黒木事務局長、丸山参事官
消費者庁 福岡審議官、澤井課長、笠原課徴金審査官

議事次第

  1. 開会
  2. 欧米の電力託送料金制度に関するヒアリング
    説明者:服部徹 電力中央研究所 社会経済研究所 上席研究員
  3. 電力託送料金の国際比較について
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、定刻になりましたので、会議を始めさせていただきたいと思います。

本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただ今から「消費者委員会公共料金等専門調査会第4回電力託送料金に関する調査会」を開催いたします。

本日は、所用によりまして担当委員の蟹瀬委員、長田委員が御欠席ということで御連絡をいただいております。

また、井手座長代理、太田委員も遅れて到着される予定です。

それでは、議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきます。

ただ今お配りしております資料につきましては、配付資料の一覧のとおりとなっております。不足の資料がありましたら、事務局までお申し出をよろしくお願いいたします。

なお、本日の会議につきましては、公開で行います。議事録につきましても、後日、公開することといたします。

それでは、古城座長、議事進行をよろしくお願いいたします。


≪2.欧米の電力託送料金制度等に関するヒアリング≫

○古城座長 ありがとうございます。

本日の最初の議題は「欧米の電力託送料金制度に関するヒアリング」です。

本日は、電力中央研究所社会経済研究所より服部徹上席研究員にお越しいただき、欧米の送配電料金規制の概要について御説明をいただきます。

それでは、御説明をお願いいたします。45分程度でお願いいたします。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 電力中央研究所の服部です。

初めに、お詫びなのですけれども、今日はこういうお聞き苦しい声になってしまいまして、申しわけありません。

私から、欧米の送配電の料金規制において適用されているインセンティブ規制について御紹介をいたします。

報告の内容は、2ページに書いてあるとおりでございます。

まず、簡単に概要をお話しして、ここで出てくるインセンティブ規制とはどういうものかということを総括原価方式との比較で御説明いたします。続けて、事例としてイギリスとドイツのレベニューキャップというインセンティブ規制の一つについて御説明をいたします。

3ページをごらんください。

電力では、皆さん御承知のとおり、自由化が進んでいるわけですけれども、自由化で競争を導入するのは発電と小売というところで、送配電部門、送配電ネットワークのところは、今後、自由化後も規制が残るわけです。その部門が自然独占性という性質を有することもあって、引き続き料金規制が適用される。独占が認められるかわりに、提供するサービスに対する料金は規制されるということでございます。

その規制方式については、我が国ではずっと総括原価方式あるいは報酬率規制と呼ばれるものでやってきているわけですけれども、海外におきましては、インセンティブ規制というものを適用している事例がございます。

これは、例えば、電力以外でも電気通信ですとか、規制部門に対する料金規制の中でも採用されているものになりますが、電力でも採用されております。

総括原価方式との比較で見たものが3ページになりますけれども、実は、今日のタイトルは「欧米のインセンティブ規制」と書いてあるのですが、アメリカは自由化を進めていますけれども、送配電部門のところは今も総括原価方式で規制をしているという州がほとんどになります。したがいまして、定期的にあるいは事業者からの申請に応じて、総括原価の回収に必要な料金収入を決めて、それで料金を決定していくということをやっています。

アメリカでも、下に書いてありますように、かつてはPBRと呼ばれる一種のインセンティブ規制が導入されていた時期もあるのですけれども、現在はほとんどが総括原価方式となっております。

右側のインセンティブ規制は、今、電力の場合は主に欧州で採用されています。インセンティブ規制といいますと、皆さんプライスキャップは御存じかと思うのですけれども、それは価格に上限を設定するものですが、電力で主に採用されているのはレベニューキャップと呼ばれるもので、収入の総額に上限を設けるものになります。上限を設ける意味は後ほど説明しますけれども、そういう形で採用されています。

ヨーロッパといいましても、主要3カ国のイギリス、ドイツ、フランスはもとより、ほかにも私の知っている限り10カ国以上で採用されています。また、一部報酬率規制なのだけれども一部レベニューキャップといった形で併用する場合もございます。

最初に申し上げたプライスキャップは、電力の世界では余り使われていないのですけれども、特にアメリカの電気通信事業などでは採用している例がございます。

次に行きまして、何が違うのかということなのですけれども、この4ページの図は、いずれも横軸が総括原価になります。この原価が増えると料金収入がどうなるかということを縦軸であらわしています。総括原価という中には、もちろんいわゆる適正報酬を含むと考えていただければと思うのですけれども、左側の総括原価方式の場合は、例えば、総括原価は右に点線があって、それが矢印で左側に移っていますけれども、これは要するに費用を削減するという意味です。費用を削減して、小さくしていった場合、料金はどうなるかというと、総括原価方式の場合は原価と収入の対応が基本的には45度の線であらわせる。総括原価1の場合は料金収入も1だし、総括原価が0.5になれば料金収入も0.5になるという関係にあるわけです。

一方、レベニューキャップの場合は、収入上限を設けます。それが一番上の水平線で示されているわけですけれども、事業者はこの収入の上限まで収入を得てよいことになります。もともとの総括原価というところにあった線から左にコストを削減しますと、総括原価の場合は料金収入も下がるわけですけれども、レベニューキャップの場合は、上限まで認められますので、そこは下げる必要はなくて、この三角の色を塗った部分が事業者の手元に残る、つまり、事業者の利潤になるわけです。つまり、事業者にとっては、総括原価を下げれば、コスト削減をすればするほど利潤が大きくなる。そういうことをあらわしているわけです。

そうすることによって、右下の「メリット」に書いてありますけれども、効率化に対する強いインセンティブを働かせることができるというメリットがあるわけです。

一方、総括原価の場合には、費用削減をしても、結局、料金の収入も下がりますので、事業者の利潤は変わらないことになります。どうせ変わらないのであれば、削減しなくてもいいのではないかということになります。ですので、逆に今度はデメリットとしては、効率化を促すのに限界があることになります。

総括原価方式はもちろんメリットもありまして、原価が下がれば料金も下がるということで消費者にはメリットがあるわけですし、必要があって投資を行った場合はその費用を確実に回収できるということで、原価を反映した料金になることと、それによって設備投資を促すことができるというメリットがあると考えられるわけです。

他方、レベニューキャップの場合は、先ほど申し上げたとおり、効率化の強いインセンティブは働くわけですけれども、効率化を考え過ぎる余り、例えば、品質であるとか、あるいはイノベーションみたいな、費用はかかるのだけれども実際にそのメリットがあるかどうかわからないという投資をどちらかというと手控えてしまう。そういうものをやっても、費用の増加になるだけで利潤の増加にはつながりませんので、こういったことが犠牲になり得ることがインセンティブ規制の一般的な課題として指摘されてきました。

ただし、このレベニューキャップの場合は、ずっと上限がここにあるかというとそうではなくて、一定期間なのです。

5ページを見ていただきますと、ここからイギリスの事例を紹介するわけですが、このイギリスの例を使って紹介しますと、先ほど言った収入の上限が青い右下がりの線であらわされていて、これは実は毎年あるフォーミュラに従って、物価とか、そういったものを反映して調整されるわけです。ただ、いわゆる本格改定はしない。そういう意味で固定されているわけです。

そうすると、その間に事業者はコスト削減努力をして下がった実績費用を達成するとしますと、その差額が事業者の利潤になるわけです。こうして一定期間が終了したら、イギリスの場合はもともと5年間でやっていたのですけれども、この5年間が終了した後は、今度はまた下がった費用に基づいて上限を設定することになりますので、こういったことを継続していけば、長い目で見ればインセンティブ規制のほうがコストも下がることが考えられるわけです。もちろんこういったことが機能するためには、最初に設定した上限あるいはその調整をするためのフォーミュラを変えない。それを約束することが大前提になります。

一方、事業者も、コスト削減をすれば利潤になりますけれども、上限を超える費用が発生してしまったらば、それは事業者の損失になるわけです。そのときには、総括原価のときのように値上げ申請はできないことになります。したがって、「事業者は自らのタイミングで料金改定の申請はできない」と書いてあるのはそういう意味でございます。

この改定期間は、イギリスはこれまで5年と言いましたけれども、結局、これは短いとインセンティブ規制と総括原価の違いはほとんどなくなるわけです。長ければ長いほどより効率化のインセンティブが働くことになりますけれども、一方で、初めに定めた上限がずっと調整されないと、非常にリスクが大きいことになります。

レベニューキャップの場合、実際にこれをやろうとするときの最初の問題は、最初に上限をどう設定するのかということになります。5ページの左上に「初年度の上限」と書いてありますけれども、これをどう設定するかということでございます。

6ページをごらんいただきたいのですけれども、イギリスに限らずなのですが、イギリスの例で見ますと、実は最初に上限を設定するやり方は基本的には総括原価方式のようにやっていることになります。すなわち、左の「収入上限」には、適正報酬、運転費、減価償却費、3つの要素がある。この適正報酬は、「資産価額」と書いてありますけれども、これはいわゆるレートベースですが、レートベースに資本コストを掛けて得られる報酬と費用を加算したものが収入上限になるわけです。この資産価額、レートベースは、もともとあった資産に新しい投資を加えて、それから減価償却分を差し引くことで求められるわけです。

例えば、運転費のところなどは、あらかじめ規制当局が効率化の努力目標などを織り込んだ上で、まずは厳しく査定して設定するわけです。また、右側の「新規投資」というのも、本当に必要な投資なのかどうかということを事業者の申請した計画に基づいて、その必要額をしっかりと査定するわけです。

資本コストについては、これはいわゆる報酬率のことですけれども、イギリスではいろいろなコンサルタントに託して、まずは範囲を特定させて、その中で規制当局がいろいろな要因を考慮して最終決定をすることになっています。

したがって、こういったプロセスは、今の総括原価方式でもやられている方法とほとんど同じと言えるかと思います。

7ページに行きまして、その上限を一回初年度に決めたら、5年なら5年間、全く変えないというわけではなくて、例えば、物価の状況などを反映して調整していくわけです。フォーミュラというのですけれども、7ページの式のようになっていまして、ある年の収入上限は昨年の収入上限の物価調整後です。RPIはイギリスのいわゆる物価指数のことになりますけれども、そこからXファクターという一定の割合を差し引きます。例えば、このXファクターが1%だったとすると、物価上昇率引く1%分上昇したものしか認めないことになります。

このXファクターは何かといいますと、要するに、その産業に対して、今回は送配電事業ですけれども、送配電事業の生産性の上昇とか、そういったものを織り込むあるいは新規投資の必要性など、いろいろと総合的に規制側で判断して、このXファクターを決めることになっています。

ちなみにイギリスのインセンティブ規制はこの括弧のところの「RPI-X」をとって、RPI-X規制と呼ぶことがございます。

実はこのフォーミュラは、本来はすごく複雑な式になっているのですけれども、大ざっぱに言うと、次にQであらわした品質要因がございます。これは先ほどインセンティブ規制のデメリットとして品質が犠牲になり得るという点を考慮して導入されているものです。

送配電の場合、品質といいますと、例えば、停電時間が短いとか、そういったいわゆる信頼度に関わることになるわけですけれども、要するに、「±Q」というのは何かといいますと、そういう品質を改善したらボーナスが与えられる。ボーナスで収入上限が少し増える。逆に、例えば、停電が長くなってしまったとか、そういった事業者側の責任でそうなってしまった場合には、ペナルティーが課せられて、上限から差し引かれる。そういうことを決めることで、インセンティブ規制のもとでも品質が犠牲にならないようにしているわけです。

最後にZがありますけれども、Zはその他もろもろの調整項になります。例えば、イギリスの場合にもいろいろとあるわけですけれども、例えば、最初のInnovation Funding Incentiveは研究開発投資に対するインセンティブになります。これは先ほど申し上げたとおり、インセンティブ規制のもとでは、イノベーションのような、長期にわたって投資が必要なのだけれども、その成果が本当に得られるかどうかわからないというリスクがあるような投資を手控えないように設けられているものです。

実際、これが導入される2005年までは、イギリスの配電事業者は研究開発費をものすごいスピードで減らしていきました。ただ、それはやはり問題があるのではないかということで、2005年にこのような調整項が導入されたわけです。

ほかにも、例えば、一番最後にあるように、今はイギリスを初め、いろいろな国でいわゆる再生可能エネルギーの導入を促進していますけれども、分散型電源を接続したら、それに必要な費用は8割までは自動的に認めるという調整項も含まれております。このフォーミュラが一旦決まったら、5年間動かさずに適用することになるわけです。

7ページのXファクターのところですけれども、実はこのXファクターが、先ほど生産性の上昇や新規投資の必要性などを考慮して、と申し上げましたけれども、これが結構規制当局の裁量に委ねられていて、イギリスの場合も、これまでに本格改定のたびにここの数字は大きく変わってきました。

導入当初は、8ページの図にありますように、送電は0、配電はRPI-1%ということで、そんなに大きな値ではなかったわけです。ただ、これが事業者にちょっと甘いのではないかということが問題になりまして、規制当局がその次の改定で大きく-3にしたわけです。その後、-4にしたり-1.5にしたりということで、物価上昇率よりも料金の上限を下げるようにしてきたわけですけれども、最も直近では、実はここをゼロにしたり、あるいは逆にプラスにすることもあります。これは、2000年代後半から低炭素化を進めるための設備投資が必要だということで、そういったことを考慮してこのXファクター自体をマイナスにすることでRPIプラスアルファとなったわけです。

9ページは、イギリスのインセンティブ規制の中で採られている効率化の成果の還元策のイメージになります。

Efficiency Incentive Rateと呼ばれていますけれども、これは事業者が費用を削減したら、その分丸々その事業者の利潤になるのではなくて、一部を需要家に還元しようというメカニズムになります。つまり、先ほどのレベニューキャップの例だと、収入上限は水平線だったのですけれども、そこに少し傾きがついた収入上限になるわけです。そうすると、コストを削減すると、事業者は利潤が増えるので、まだインセンティブはそこそこあるわけですけれども、同時に、そのうち一部は需要家にも還元される。なので、料金の引き下げにもつながることになるわけです。

イギリスは何パーセント還元するかというのは事業者ごとに設定をしています。イギリスは、先ほど8ページの図でお分かりのとおり、1990年からこのインセンティブ規制を導入してきました。正確に覚えていないのですけれども、2000年代の終わりぐらいに、このレベニューキャップの成果をちょっと見直しましょうということが行われました。

成果と課題があるわけですけれども、その成果としては、レベニューキャップでもともと言われていたとおり、事業者の効率化はある程度促したのではないかということでは一定の評価が与えられています。いろいろな経済学者がデータを使って研究した結果、一定の効率化の成果が認められることが知られています。

ただ、イギリスはもともと国営だったのが、90年のときに同時に民営化もしたのです。なので、効率化したのがインセンティブ規制のおかげなのか、民営化したからなのかというのは、本当はちょっと区別が難しいので、その点はちょっと留意する必要があるのですけれども、いずれにしてもインセンティブ規制も効率化に貢献したということは言われています。

また、品質が犠牲になるのではないかという懸念はあったのですけれども、品質向上に対するインセンティブも与えられたこともあって、供給信頼度は、イギリスでは悪化しないで、むしろ良くなってきていることは言われています。

もちろんインセンティブがあって品質が向上したということですから、その分、利用者は対価を払っているところは注意が必要なのですけれども、いずれにしても品質は犠牲になっていないことになります。

一方で、課題としまして、一つは、規制の運用が非常に複雑になってしまったということがあります。先ほどフォーミュラの紹介をしまして、私は単純化した式をお示ししましたけれども、実はQファクターにもいろいろあったり、Zファクターにもいろいろあったりということで、何をどれぐらい減らすか、収入がどれぐらい上がるのかというのは一目では全く分からないぐらい複雑になってしまった。

そうなりますと、事業者としては、規制当局にいろいろと説明を求めたり、いろいろな逆提案をしたりとか、いろいろな話し合いに時間を費やすことになってしまったという課題が指摘されました。

また、確かに効率化という意味では、いわゆる無駄を省くという意味での効率化は進んで、短期的な効率化は進んだのですけれども、例えば、技術革新を起こして抜本的に効率化を達成するとか、あるいは、低炭素化に向けた本当に長期的に必要な投資、例えば、スマートグリッド化するとか、そういった長期的に重要な投資がなかなか行われないことが懸念されるようになってきました。

そういったこともあって、実はイギリスはレベニューキャップを約20年間運用した後、大幅に見直すことになったわけです。

11ページをごらんください。

見直しの背景をもう一度簡単にまとめておきますと、イギリスは2000年代から低炭素社会をしっかりと実現していこうということが重要な政策課題になりました。排出削減目標もかなり野心的な目標を立てて、しかも法的拘束力のある形でそういった目標を立てたわけです。電力部門も、その低炭素化に向けていろいろな設備投資をしなければいけないことになっていったわけです。

具体的には、要するに、再生可能エネルギーをたくさん増やして、再生可能エネルギーが増えると、送配電網もいろいろと増強しないといけないものですから、そういったことをやっていかないといけないことになったわけです。

ただ、その送配電部門にかけられているインセンティブ規制のこれまでの状況を見ますと、効率化が進んだということです。だけれども、長期的な設備投資をなかなか促すことができなかった。

イギリスの場合は、投資はしなければいけない。しかし、イギリスを含む先進国は需要もなかなか伸びないという中でそういった投資をしなければいけない。しかも、十分効率化が進んできたのでさらに効率化する余地がないとなりますと、料金が上昇していくしかないということで、この規制のあり方自体をかなり抜本的に変えないといけないのではないかということになったわけです。

2008年から見直しに着手したということで、今はより長期的な視点を重視して、利用者に、単に安い料金ということではなくて、金額に見合う価値をしっかりともたらしていく料金規制に発想を変えようということになったわけです。

新しい料金規制として、今、入っているものが、「リーオ」と読むのですけれども、12ページに書いてあるRIIOになります。

RIIOは何の略かというのはいろいろと諸説あって、3つぐらいここに書いてありますけれども、これはかなり大幅に見直したというよりは、実は今までのレベニューキャップの枠組みは変えていないのです。なので、これまでのインセンティブ規制のマイナーチェンジと見ることもできるわけですけれども、しかしながら、先ほど言った長期的な視点を重視した変更が幾つかございます。

規制期間、つまり、キャップを次に本格改定するまでの期間を5年から8年にしたという変更があったこと。2番目は、アウトプットに基づく収入上限の算定ということで、これは後で説明します。あとは、イノベーションの支援をしていくことを掲げています。これが、今、送電と配電でそれぞれ始まっているわけです。

13ページには、規制期間の長期化ということで、ほかの国、ヨーロッパでレベニューキャップを採用しているところでは、大体3年から5年が一般的なのです。それをイギリスでは一気に8年に伸ばしたということで、ほかの国と比べるとかなり異例の長さだと言うことができます。

こういった長期化をすることで、確かに事業者は長い目で、例えば、設備投資とかを考えることができる。投資したもので、例えば、5年目、6年目に花が開きそうな投資も、この枠組みだったら行おうということになるわけです。

そういったメリットはあるのですけれども、8年間キャップを動かさないことは、事業者にとっても収益の変動リスクにさらされるわけですし、その間、料金の水準も大きくは変わらないという意味では、需要家も、例えば、費用削減をしたとしても、そのメリットをなかなか受けられないということがあるわけです。ほかにもいろいろとあるわけですけれども、単に長くすればいいということではないということでございます。

14ページには、先ほど言ったアウトプットに基づく収入の考え方を書いているわけですけれども、要するに、今までは、ネットワーク事業者が送った電力の量、キロワットアワーに応じて必要な費用を定めて収入を決めていたわけですけれども、キロワットアワーが今後増えていかない、ただ設備投資が必要だということで、今後は、アウトプットという、送配電事業者が提供するサービスを幾つかの軸で定義をして、例えば、信頼度であるとか、接続条件だとか、需要家満足度だとか、そういったものを測る指標を何かつくって、それを多く達成すれば収入も多くなるように仕組みを改めていったわけです。

これは実際にやるのは非常に難しくて、イギリスでも手探りでやっているとは思うのですけれども、いずれにしても、今、こういった形で料金規制のやり方を少しずつ変えている状況にあるわけです。

今までがイギリスのレベニューキャップでした。次に、ドイツのレベニューキャップについて御紹介します。

15ページにあるとおり、ドイツは2期間レベニューキャップを適用することにしていて、今、既に第2期に入っていますけれども、イギリスと同じように、上限を定めたら、フォーミュラによる調整を除くと、上限は固定して、事業者がコスト削減したら、その差額を利潤として得られるものになっています。

この収入の上限があることによって、ドイツの事業者には効率化が求められているわけですけれども、それは事業者全体に共通で求められる費用の削減分と、事業者も効率的な事業者から非常に非効率な事業者といろいろありますので、事業者ごとに求められる費用の削減分がございます。そういった2つの要素があることになります。

ドイツは、実は配電事業者が900ぐらいある。非常に小さい事業者が数多くあって、効率性の格差は非常に大きな問題でした。ですので、この格差を是正することがドイツでレベニューキャップを導入した目的の一つになっています。

ただ、実際は、小さい事業者は一つ一つキャップをかけてということでやっていると手間がかかりますので、大多数の事業者は簡素化した方法でやっています。実際にこのレベニューキャップの対象になるのは、送電事業者4社と配電事業者は大手の200社になります。200でも十分多いと思うのですけれども。

ドイツの収入上限は、まず、第1期目の2009年の上限は、16ページを見ていただければと思うのですが、その3年前に、コストレビューと呼んでいるのですけれども、いわゆる本格的な査定というものを実施しまして、それによって2009年の上限を定めた経緯がございます。実はこのときは大変厳しい査定が行われて、2006年の水準からかなり下がった水準で上限が設定されています。2期目の最初の上限は、その3年前の2011年の実績に基づいて算定をされています。

17ページをご覧いただきたいのですけれども、ドイツの場合は、この10年をかけて効率化をしていこうということなのですけれども、2009年1月1日の費用の分を見ていただきますと、ドイツの場合は大きく3つに分けているわけです。

一番下は、効率化の対象外としている費用です。これは法律で定められて必ず費やさなければいけない費用であるとか、例えば、国が増強の必要性を認めた送電線の追加投資費用といったものは、実はここに書いてあるInvestment Budgetと呼ばれるのですけれども、そういった国が必要性を認めた投資のコストは手をつけないことになっています。

真ん中は、いわゆる効率的な状態で生じる費用、どんなに頑張ってもこれ以上下げられないという費用なのですけれども、ドイツの場合は、少し難しい方法になるのですけれども、数理計画法あるいは計量経済学的な手法を用いて効率的な費用の値を計算します。こういった指標を用いることによって、効率的だけれども現実的に達成可能な費用を得ることができます。

それ以外の部分が、要は非効率によって生じている費用なので、これは10年かけて解消していきましょうということになっています。10年後には、この一番上の部分がなくなって、費用が小さくなっているだろうということを想定しているわけです。

ドイツの場合、この上限はどう設定しているのかということで、18ページにその上限の設定の図がございますけれども、これは先ほどのイギリスの図とちょっと違うように見えますけれども、やっていることは基本的には同じです。

まず、レートベースを算定します。それを賄うために必要な資金の調達コストを計算して、株主資本のコストのところはキャピタルコストになって、これに営業費用を加えます。これにさらに、例えば、品質向上で得られたボーナスであるとか、期ずれ調整は収入上限から実績がオーバーしてしまったり足りなくなってしまったりということが生じるわけですけれども、その辺の調整のことです。そういったものが含まれたり、あるいは、その次の転嫁費用は実は配電の例でして、配電事業者が送電事業者に払う費用のことですけれども、そういったものは自動的に含まれるようになって、そういったものを全部積み上げて収入上限を設定していることになります。

営業費用のところはきちんと査定をした上でやる。適正報酬を含めた原価を上限として設定するという意味では、総括原価と同じような方法をとっているわけです。

19ページのフォーミュラをごらんください。

ドイツの場合は、このようなフォーミュラになっていまして、これも数式としてはちょっと複雑になっていますけれども、まず、前年の費用から効率化すべき部分を差し引いたものを基本的な基準となる原価とした上で、物価調整をします。

ただ、この物価調整をするときに、このPFがイギリスでいうところのXファクターになります。これが全事業者共通の効率化目標になります。

3番の拡張係数は、例えば、再エネ、分散型電源が増加してきて、設備を増強しないといけない、配電線を新たに引っ張らなければいけないとか、そういったことがあったときに、そういった増加分を考慮するための係数になります。

ドイツの場合も、品質向上のインセンティブが入って調整されることになっています。

それから、変動費の調整が実際にはネットワークの損失の調整になります。送配電ロスのことです。

最後に、差額の調整をしたものが最終的にはその年の収入の上限になるわけです。

ドイツは既に1期目が終わって、今、2期目に入っているわけですけれども、1期目が終わった段階で規制当局がそのレビューを行っています。

規制当局自身は、これまでのドイツにおけるレベニューキャップの運用は、基本的に成功したと。どういう意味で成功したかというと、事業者の効率化を促したのではないかという意味で評価していることになります。

ただ、一方で課題も指摘されていまして、例えば、ドイツは御存じのように再生可能エネルギーがたくさん入ってきているわけです。そうした中で、系統の安定性を保つことが非常に重要になってきていて、やはりスマートグリッド化みたいなものを進めないといけないわけですけれども、そういったものへの投資を進めていくためのインセンティブが必要なのではないかということで、5年は期間が短い。5年を超えて必要な成果が出るような投資をいかにして進めていくか。あるいは、先ほどInvestment budgetを紹介しましたけれども、それは実は送電にはあるのですが、配電にはないのです。なので、配電にもそういったものをつくるべきではないかといったことが議論されています。

実際、ドイツでは、風力が北部に入ってきて、それを南部に流すための送電の増強は必要とされているわけなのですけれども、実際にはいろいろな問題があってなかなか進んでいないという実態がございます。先ほど申し上げたとおり、スマートグリッドといった新しい技術を取り込んだリスクの大きい投資はなかなか進まないというのが実際の懸念として挙げられていますので、今後も再生可能エネルギーを導入していくとなると、どうしても避けられないものになりますから、これをいかに促していくかということが現在のドイツの規制の大きな課題になっていることになるわけです。

そういう意味では、イギリスもドイツも、一定期間インセンティブ規制を導入した後で、今、同じような問題に直面していると言えるのかなと思います。

最後に、21ページでまとめをしておりますけれども、実際、規制方式として、総括原価方式よりも効率化を促すという意味ではすぐれていると考えられるインセンティブ規制がヨーロッパでは導入されている。

ただ、これまでにお示ししたように、レベニューキャップといっても、総括原価と全く違うものかというと、そうでもなくて、実際には同様の運用をしているような面もある。その意味で、現実の運用における両者の違いは必ずしも明確ではないことは指摘できるかと思います。

また、先ほど申し上げたとおり、再エネを導入していくに伴って、今後は設備投資を送配電部門でも着実に進めることが重要になってきているわけですけれども、設備投資を重視することと、効率化を進める、つまり、そういった費用をどんどん削減していくこととの相反するもののバランスをどうやってとっていくのかということが、今の欧州の課題と言えるのではないかと思います。

日本でも、効率化はもちろん常に考えなければいけない前提にはなるとは思いますし、また、その成果を利用者に還元していくことも非常に重要だと思うわけですけれども、そういった仕組みを一定程度担保はしつつも、日本でも今は再生可能エネルギーがどんどん増えてきて、これからもある程度までは増やしていこうということにしているわけですから、そういったものを入れて系統の安定を維持していくために、つまり、社会全体にとって必要な公益目的の達成のために必要な設備投資をしっかりと進めていくことができる、そういった工夫が料金制度の中で求められるのではないかと考えております。

本当に大変聞き苦しい声で申しわけありませんでした。

今日御紹介した内容は、22ページに紹介してございます報告書あるいは論文に書いてございますので、例えば、専門家の先生で御関心のある方はこちらをご覧いただければと思います。電力中央研究所の報告書はホームページでも公開されております。

私からは以上です。

○古城座長 ありがとうございました。

御説明いただいた内容、事実関係等につきまして、御質問、御意見のある方は御発言をお願いいたします。

安田委員、どうぞ。

○安田委員 関西大学の安田でございます。

本日は、非常に丁寧な御説明をありがとうございました。服部様の論文、特に電中研報告は以前より勉強させていただいておりますが、今日は一段と分かりやすく勉強させていただきました。ありがとうございます。

幾つも質問があるのですけれども、お時間をとっては恐縮なので、2つぐらいに絞って御質問させていただいて、この後、もしお時間があればさらに追加の質問をさせていただこうと思います。

大きな質問としては、1つ、特に欧州は、発送電分離と言いながら、送電部門と配電部門がTSOとDSOと完全に分けられて、TSOが規制部門で、DSOは競争部門となっていると思いますので、そのあたりのTSOとDSOの規制の大きな違い、問題点や課題の違い、そのあたりを少し追加で御説明いただければありがたく思います。

もう一つは、今回、イギリスとドイツの例を取り上げていただきまして、特にスマートグリッド関係で投資がなかなか行われないという御指摘がありまして、確かに私もそのとおりだとは思うのですが、私自身の欧州とかの研究の感触によりますと、イギリスやドイツはヨーロッパの中でも逆に一番遅れている国かなと感じております。特にスマートグリッド関係あるいは再エネの制度関係では、例えば、スペイン、ポルトガルなどがいち早く、デンマークなどでははっきりスマートグリッドという言葉を使って送電部門のインテリジェント化を2000年初頭から行っておりますので、どちらかというと、私の感触ではそういった国々は特に送電部門に対して投資が活発化しているのかなと感じておりました。ですので、ちょっとイギリスやドイツ以外の状況に関しても、御存じの範囲で結構ですので、コメントをいただければと思います。

以上、2点をお願いいたします。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 2番目の質問は、スマートグリッドのことについてでしょうか。それとも料金規制のことについてでしょうか。

○安田委員 スマートグリッドに代表されるような送配電への投資、特にイノベーションに関する投資です。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 分かりました。

まず、1点目ですけれども、私の理解ではTSOもDSOも規制部門になります。先生がおっしゃるDSO、配電のほうが競争部門というのは、実はヨーロッパは配電事業者と小売事業者が一体なときがあります。

○安田委員 はい。そういう意味で御質問いたしました。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 それは、いわゆるアンバンドリングのやり方、徹底ぐあいがTSOとDSOではちょっと違うということがあります。

TSOは、基本的には所有権分離をしなさいということがヨーロッパでは言われていて、ドイツの一部とフランスを除いては所有権分離が徹底されていますし、そうでないフランスとかドイツでもほとんど所有権分離と言っていいぐらいの程度で法的分離が行われています。そこはかなりこれまでの議論の中でヨーロッパではかなり徹底してやってきました。

ところが、配電のほうは、そこはそれほど厳しくは求められていなくて、配電と小売が実はほとんど同じような組織でやっている場合が見受けられたりもするので、時々議論になることはあるのですけれども、私の知る限り、本格的にもっと分離を強化しようということは起きていません。ただ、DSOのいわゆる配電ネットワークの部分に関しては、こういった規制料金の適用を受けるという意味では規制部門ですし、配電のネットワーク同士が競争することは、いわゆる間接的な競争を除けばありません。

○安田委員 失礼しました。

そういう文脈で、TSOとDSOの料金規制に関する、特にメリット、デメリットの違いは発生しますでしょうか、あるいは、同じと考えてよろしいのでしょうか。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 私は基本的には同じだと考えていいと思うのですけれども、細かいところで幾つか違いが生じるところがございます。

例えば、配電の場合は、一国の中でもたくさんあるわけです。ドイツの場合はちょっと極端に多くて900とかとなっていますけれども、少ない国でも5社、6社、イギリスだったら14社ぐらいあるわけです。ですから、その費用が妥当か否かを評価するときに、例えば、隣の配電事業者はどうかとか、比較の評価ができるわけです。

ところが、送電は大体1カ国に1つしかない。ドイツはたまたま4つありますけれども、それでもかなり規模も違ったり需要の密度が違ったりという中では、なかなか相互に比較できない。送電は、それなら国際比較しようかという話もあったのですけれども、国際比較は国際比較でいろいろな条件が違いますから、それは相当難しいということで、今はそういう動きはないのですけれども、いずれにしても、そういう具体的な運用の段階で幾つか違いが出てくることはありますけれども、基本的にはインセンティブ規制で一定の上限を保証してあげて、費用を削減したら事業者の利益が増えるという方法で効率化を促している。その効果という意味では、送電も配電も基本的には変わりはないと考えています。

2番目の御質問ですけれども、私自身もスマートグリッドも一応勉強はしたのですけれども、例えば、デンマークのスマートグリッドとイギリスで進めようとしているスマートグリッドがどう違うのかとか、ちょっと詳細は分かりかねますので、正直に言えば、その辺の違いを詳細に把握しているわけではございません。

ただし、スマートグリッドへの投資がなかなか進まないというのは、欧州大で課題として議論されておりますので、もちろん先生がおっしゃったような一部の国では進んでいるところもあるでしょうし、逆に遅れているところもあるでしょうしという差はあるとは思うのですけれども、欧州大の基本的な共通の見解としては、もっと進めるべきなのに進められていないではないかということが認識としてはあると思うのです。

そういった意味では、課題としては共通だというのが私の認識でございます。

○安田委員 ありがとうございました。

○古城座長 太田委員、どうぞ。

○太田委員 大変興味深い説明を丁寧にありがとうございました。

慶應義塾大学の太田でございます。

電気については基本的に素人なのですけれども、欧州の防衛装備品の調達に関して、軍事品の調達に関して比較的似たようなルールがありまして、そちらの調査をしたことがありまして、それに基づいてお伺いしたいのですが、まず、レベニューキャップとおっしゃるのは確定なのでしょうか。キャップということは上限ということなので、それより小さくなる場合もあるのですか。実際にはキャップに張りついてしまっているのでしょうか。収入の総額というのは、供給電力量とは関係なく決まるものでしょうか。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 上限、キャップという言葉を使っているのですけれども、先ほど説明したように、例えば、ドイツなどは差額の調整を期が変わるときにやっていいことになっていますので、足りない部分は取り返していいですし、超えてしまったら返さないといけないという意味で、少なくなってもいいのでしょうけれども、そこは事業者に上限まで得られる権利があると私は理解しています。

それから、キャップはその電力量に応じるのかということなのですけれども、それを考慮して費用は査定されています。その意味では、考慮しています。

ただ、先ほど紹介したように、イギリスでは、もはやキロワットアワーが伸びない中で設備投資はどんどん増えていくという中で、キロワットアワーという指標だと割高感が出てしまうというので、ちょっとそれにだけ依存する仕組みはやめようという話が出てきているということです。

○太田委員 そうすると、供給量と関係なく、一定期間の売り上げを保証するという感じですか。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 そうです。

○太田委員 そうすると、供給は多くても少なくても売り上げはこれだけと。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 そのとおりです。

○太田委員 需要があれば、あとはコストをできるだけ頑張って下げる。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 はい。

○太田委員 わかりました。

固定をすると、当然、一番最初の年度に三味線を弾くといいますか、非常にコストを多目に言うインセンティブが先方に出てくるはずで、そこは最初の段階でどう見るか。多目に言って、ぎゅっと絞ったら儲かるわけです。さらに頑張って絞り過ぎると、今度は、次の改定で召し上げられると思うと、コスト削減の程度を止めるはずなので、そこのところでどれだけ召し上げるか、次の改定のところに当たってのルールが必要になると思うのです。ドイツの3年前というのはそのあたりの考慮なのかなと思って伺ったのですが、イギリスの場合は何か具体的に数字として決まっているのですか。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 ありがとうございました。

イギリスの場合は、6ページの新規投資のところの評価において四角囲みに書いてあるのですけれども、後半ですが、妥当性に欠ける計画を提出して実際の投資が計画を下回った場合は、報酬率を引き下げる措置がある。これをInformation Quality Incentiveというのですけれども、要するに、最初に投資計画を査定する段階で、それは幾ら何でも盛り過ぎだろうということを議論する仕組みがあるわけです。余りに盛り過ぎていれば、ここに書いてあるように、例えば、報酬率を引き下げたりとかということで、やってもいいけれども、そのかわりリターンは小さくしますよとか、かなりぎりぎりでやっているところは逆にリターンを大きくしてあげたりとかという仕組みをとっています。

これは実際には非常に複雑な仕組みをしていて、もし御関心があれば、参考文献に挙げた私の2012年の論文に詳細を書いて、詳細といってもそんなに詳細ではないですけれども、そこで説明しておりますので、実はそれを入れるかどうか今日は迷ったのですけれども、私自身が理解したつもりでもなかなかうまく説明できないものですから、ちょっと今日は割愛したのですけれども、論文ではちゃんと書いてありますので、そこをご覧ください。

最初の絞り込みをどうしているか、あるいは、その次の期に移るときに、逆に余りコストを削減しないほうがいい場合もあるかもしれないというのはおっしゃるとおりです。多分それは経済学者たちの研究テーマの一つだったと思っています。私もちょっと勉強不足で、結局、理論的に言うとどういうことなのかというのは、私自身は十分に理解していないのですけれども、そういった問題は認識されていまして、実際、ドイツの場合、先生がおっしゃったように、数年前の値を適用するというのはそういったことを配慮しているのではないかと私も考えています。

○太田委員 あるいは、コスト削減のシェアリングルールがイギリスで導入されたということですけれども、これの割合も比較的腰だめで決められたものですか。何か背景に敷居などがあって決まっているものでしょうか。コスト削減分のどれぐらいが消費者に還元されて、どれだけが供給業者に残るのかといった割合です。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 私が見た配電の最後のほうの規制のときには、事業者の取り分が0.3から0.53の間で決められています。何でその値かという背景までは存じ上げません。

○太田委員 ありがとうございました。

あとは、その5年なり8年なりという期間でコスト削減効果が全部出てしまう。全部ということは、将来にわたってもコスト削減があるので、いずれにせよ期間を区切ってしまうとコスト削減インセンティブは若干弱まると思うのですけれども、もっと長期のコスト削減の投資といったものは何か調整係数のような形で別に見るという形にはなっていないのですか。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 私の報告の中で説明したとおり、そういう抜本的なコストの削減を可能にするような投資をいかに認めるかという話はあって、それでイギリスは最近の新しい料金規制に変えていったという背景はありますけれども、それまでの従来のレベニューキャップの中では特にそういう配慮はなかった。

つまり、事業者としては、ある年に投資をして、そのコスト削減の成果が出るのが5年より先の投資は全くインセンティブがなかった、あるいは、ほとんどインセンティブがなかったことになります。

ただ、研究開発については、さっき言ったような調整項で、ある程度研究開発にかかった費用はそのまま収入上限に入れてあげましょうという意味での配慮はありました。

○太田委員 ありがとうございました。

○古城座長 白山委員、どうぞ。

○白山委員 2点ほどありまして、ページでいきますと14ページのイギリスにおける料金規制改革というところで、アウトプットベースの料金収入の決定というところを、なかなかイメージがよくわからなくて、もう少し具体的に、多分アウトプットの何らかの指標を設定して、それを何らかの形で評価をして、実際の予測収入を調整するようなイメージではないかと思うのですが、この辺のやり方をわかる範囲で教えていただきたいことが1点目でございます。

2点目は、これも当たり前のことの確認なのでございますが、21ページのまとめのところで、4点ほど書いてございますけれども、特に3番目のところで、設備投資を着実に進めることが重要視され、効率化と設備投資のバランスをいかにとるかが課題ということと、必要な設備投資がちゅうちょなく行われるような料金制度が望まれる。

今後の流れとしては、当たり前のことなのですが、例えば、減価償却の内部留保プラス配当後の一定の利潤みたいなものが確保されて、将来の安定供給とか、あるいは、開発のための設備投資のためにやはり必要なのだという方向性が強く打ち出されているのかどうかというところを教えていただければと思います。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 まず、アウトプットに基づく規制なのですけれども、これは確かに分かりづらいというか、逆に言うと、いわゆる世界の電力業界の中でもかなり斬新な考え方として受けとめられていますので、なかなか分かりにくいところはあると思うのですけれども、まず、このアウトプットというのは、イギリスの場合は、この5つともう一つ、社会的義務というものがあるのですけれども、そういうカテゴリーは決まっていて、それをどういう指標を使って評価するかということはネットワーク事業者が提案をします。ネットワーク事業者が提案するときには、ステークホルダーというのですけれども、そのネットワークを利用する人たちと協議をして提案することになっています。

例えば、信頼度でいえば、これは月並みですが、停電回数とか停電時間を使おうとか、環境影響であれば、新しく再エネをどれだけつないだかとか、その割合がどれだけ増えたかとか、そういったものを使ってアウトプットを定義します。

そのネットワーク事業者が計画で定めたアウトプットを達成するにはこれだけの費用が必要なのだということを、規制当局に説明するわけです。規制当局は、事業計画書にそういったものが書かれているわけですけれども、その事業計画書を査定して、このアウトプットを提供するならば、この収入を得るのが妥当であるという評価をして、認可をしていくことになっています。

これまでと何が違うのかというのは多分分かりにくいとは思うのですけれども、いずれにしても、しっかりと送配電事業者が何を利用者にベネフィットとしてもたらしているのかというところをしっかり共有するというところが一つの狙いではないかと私は個人的に考えています。こちらについては電力中央研究所の報告書のY11012に書いてありますので、さらなる詳細はそちらに譲りたいと思います。

もう一点は、何らかの設備投資に関する方向性が得られているのかということですけれども、議論としてはあります。議論としてはというのは、要するに、もっと設備投資を進めないといけない、ただ、そのまま認めていったらば料金は上がってしまう、それを抑えつつどうやって必要な投資を促していくか。これはヨーロッパでもそうですし、アメリカでも課題になっています。事業者としては、インセンティブ規制であれ、総括原価方式であれ、例えば、報酬率を高目にしたくださいとか、そういったことを要求しているわけです。一方で、規制当局からすれば、それは即値上げにつながりますので、それを直ちに認めるわけにもいかないというところで議論があって、なかなか決着していないというのが現状かと思っています。

なので、私も軽軽に書いてしまったということなのかもしれませんけれども、バランスをとるのが非常に難しいということだと思っています。

○古城座長 陶山委員、どうぞ。

○陶山委員 ありがとうございました。

私から3点御質問させていただきます。

今、白山委員から、御質問の中にありましたアウトプットの中のこの中に含まれていなかった社会的義務、これは服部さんの、詳しくはとおっしゃった電中研の研究報告書の中に書かれていたのですが、社会的弱者への対応ということで、これがどのぐらいの目標を置いて、具体的にどのようなことが出されているのかを教えていただきたいということが一つ。

もう一つは、今日のスライド、先ほど太田委員からも御質問がありましたが、シェアリングメカニズムについて、ここは事業者が自由に設定できるという御説明でしたが、今、事業者の取り組みは0.3から0.53とお答えになりました。これは、この枠の中という理解でよろしいのでしょうか。そして、この0.3は1を基準にしているということになるのでしょうか。そこも自由とは言いながらも規制されているという、この枠は規制当局で決めているという理解でいいのかどうか教えていただきたいということ。

それから、これは複雑な仕組みなのでざくっとお話しいただくことは難しいと思うのですが、総括原価方式とこういうインセンティブ規制、今日はイギリスとドイツの御説明をいただきましたが、非常に複雑なフォーミュラを使っての規制ですが、総括原価方式とインセンティブ規制の両方を比べたときに、社会的なコストといいますか、規制当局のコスト、事業者のコスト、どんなふうに見えておられるかということを教えていただきたいと思います。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 御質問をありがとうございました。

1番目の社会的義務のところは、申し訳ないのですけれども、詳細はちょっと把握しておりません。私が調べたときには、そういうカテゴリーだけは決まっていて、これから具体的に運用が始まるという段階だったので、その後、ちょっと調査をサボっていましたので、申し訳ないのですけれども、詳細を今は把握してございません。

インセンティブレートにつきましては、まず、事業者ごとに決めるということなのですけれども、これは自由にというわけではなく、結果的にある程度は自由にということかもしれませんけれども、その事業者にとって必要だろうと思われる投資の水準に対してどれぐらいの投資を考えているのかということに応じて決まることになります。ですので、たくさん投資をして、たくさん上限を上げようとしている事業者の場合には、その取り分は小さくなるように設計されているわけです。

結局、その幅は規制で決められているのかという御質問でしたけれども、それはそのとおりです。

先ほどのスキームはIQIと略されているのですけれども、IQIマトリックスというものがあります。そのマトリックスの中で、インセンティブレートが一番極端なケースだと0.3、もう一方の極端は0.53、その中で幾つか選べるようになっているわけです。そのマトリックスの数字は、規制当局が決めています。

3番目の総括原価方式とインセンティブ規制のいろいろなコストですが、これは非常に重要な点だと思うのですけれども、いわゆる総括原価方式がいろいろと問題視されて、インセンティブ規制という考え方が登場したころは、インセンティブ規制のほうがいろいろなコストを削減できるメリットがあると言われていたのです。実際、総括原価方式の場合は、全部費用を毎回チェックすると非常に手間もかかるし、そういう意味では行政コストがかかります。

ただ、レベニューキャップにすれば、1回決めたら5年間はフォーミュラで勝手に調整するだけなので、5年間は別に何もしなくていいですよということで、規制当局側もそうですし、事業者もいちいち必要な書類を提出する手間が省けるという意味で、もともとはインセンティブ規制のほうはコストが削減できると言われていたのですけれども、実際にやってみますと結構大変で、正確な比較とか評価は、私はちょっと知らないですし、恐らくやろうとしても難しいと思うのですけれども、例えば、イギリスのインセンティブ規制を何回も回すのに、このイギリスの規制当局がやっていることを全部見てみますと、相当大変なことをやっているなと思っています。フォーミュラを決めるのでも、フォーミュラを変えるのでも、それをコンサルテーションといって、日本のいわゆるパブリックコメントみたいな形で意見聴取をして、そういったプロセスを経て変えていかないといけないですし、先ほど説明したIQIマトリックスはどうしようかというのもいろいろな計算をしてやらないといけないですし、意外にしっかりやろうとするとかなりのスタッフの数が必要ですし、しかも優秀なスタッフが必要だと私は思いますので、そういう意味ではなかなかそのコストは単純に小さいとは言えないのではないかということは言えると思っています。

○古城座長 済みません。私が言うのもなんだけれども、服部さんの報告ですと、総括原価方式は毎年料金改定するかのような総括原価が想定されているけれども、実際はそうではありませんね。日本の場合は、永遠に改定しないという究極のプライスキャップでしょう。それと比較してイギリスのプライスキャップはどういう特徴があるのですか。日本の今の総括原価だって、効率化のインセンティブは十分過ぎるほど与えているわけですね。それと比較してどうなのですか。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 それはまさに先生のおっしゃるとおりだと思っています。

先ほど、要するに、同じことを別の角度から説明したと思うのですけれども、先生がおっしゃるとおり、総括原価方式でも一回決めて、次の改定まで何もしなければ結局はいわゆるレベニューキャップだったりプライスキャップと同じになるということで、私が4ページの図で説明したのは、ここにあらかじめ書いてあるように「単純化した」ということなので、あたかも費用が変わったらすぐに変わるという前提で説明してしまいましたけれども、実際の運用のことを考えると、まさに先生がおっしゃるとおりです。

今日紹介したものにはないのですけれども、実際、私もその点についてはそういうコラムを書いて、総括原価方式だって運用によっては十分に効率化のインセンティブを与えられるという解説記事を書いたことがございますので、先生の今の御指摘には全く異論はありません。

○古城座長 古賀委員、どうぞ。

○古賀委員 どうも御説明をありがとうございました。

託送料金の規制料金として残るということで、当然のように総括原価でこのままいくという流れがあったと思うのですけれども、このような海外の事例、欧州、EUにおいては、ほとんどがレベニューキャップに移行しているということで、日本においてはまだ総括原価方式でいくような、その辺の議論がどうしてエネ庁やいろいろなところで進まないのかなという非常に単純な疑問なのですけれども、そもそも総括原価方式が消費者にとって非常に批判が大きかったのは、利益、利潤が全て保証された上で費用と収益の関係が何のインセンティブももたらさないということと、もう一つは、過大な投資がされていくことについての疑問があったと思うのですけれども、今回、この託送料金を算定するに当たって、レベニューキャップで、先ほど併用されている制度もあると伺ったのですけれども、服部さんとしてはどのような方式が一番理想的であるのかという、ちょっと抽象的な質問なのですけれども。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 これまでも、電気料金を自由化する前に、電気料金の規制を、例えば、プライスキャップにしたらどうかというのは、たしか90年代の半ばぐらいだったと思うのですけれども、多分議論があったと思います。なので、全く議論がなかったというわけではないと思いますし、また、いわゆる託送料金という制度ができてからも、そういったインセンティブ規制の適用も検討するべきではないかと、活発な議論とまでは確かに言えませんけれども、そういった指摘がいろいろと随所でなされてきたことはあると思うのです。

私の意見という意味では、ちょっと無責任に聞こえるかもしれませんけれども、どちらでもいいというか、先ほど申し上げたとおり、結局、運用でレベニューキャップと言いつつ、総括原価っぽくなってしまうところもあるし、総括原価だって運用によってはインセンティブ規制のように運用することも可能といえば可能なので、結局はどう運用するかというところになるのではないかと思っているわけです。

実際、例えば、アメリカの経済学者で、電気通信のプライスキャップの研究をしている学者がいるのですけれども、その先生から言わせると、ヨーロッパのレベニューキャップはインセンティブ規制ではないということを言うわけです。

要するに、理論上は違うものから出発しているのですけれども、電気事業というか、送配電事業のいろいろな特性を考えると、やはり極端な総括原価とか極端なインセンティブ規制はなかなか難しいというのが実情なのではないかというのがまず1点目です。

もう一点は、御指摘のとおり、私の資料にも4ページに総括原価のデメリットとして設備投資が過剰になるというのは、括弧書きで書いています。これは報酬率規制を入れると、理論的にもそういったことが起こり得るのはよく知られている話だと思います。

ただ、今、日本とかヨーロッパ、世界先進国が置かれている状況を考えていきますと、やはり再生可能エネルギーへの転換が程度の差はあれ求められているわけです。そういう中では、設備を本当に大幅に変えていかなければいけない。日本は、設備更新をしていかなければいけない古い設備もたくさんある。そういう中で、今まで信頼度を維持するためにちょっと過剰な設備投資ももしかしたらあったかもしれないけれども、さらにもう一歩進めて、いわゆるスマートグリッド化もしていかなければいけない。そういった投資を進めていくという観点からは、どっちがいいのかということをやはり考えないといけないと思っています。

ですので、私は少なくとも単純に効率化だけを念頭に置いたレベニューキャップの導入には消極的です。レベニューキャップを導入する場合には、十分設備投資を促すという点で配慮したやり方が必要になってくる。そう考えています。

○古城座長 お願いいたします。

○古賀委員 先ほど太田委員からレベニューキャップの算定がおかしかった、最初の申告と実際が乖離していた場合に報酬率を下げるという措置もされているということで、それだとかなり制度としては説得力のある制度のように思ったのですけれども、要するに、総括原価の場合にも事後検証は必要になると思いますし、レベニューキャップの場合も中途の間も含めてそういう検証が必要となると思うのですけれども、服部さんがレベニューキャップのほうが規制当局とのいろいろなやりとりが大変になるとおっしゃったのですけれども、そこら辺は、実際、具体的にどのように大変になるのか。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 それはあくまでイギリスの事例として申し上げた点なのですけれども、フォーミュラが複雑になると、結局、ものすごく過大になったり、ものすごく過小になってしまったりということは結果的にあり得るわけです。

正確にお伝えできるかちょっと分からないのですけれども、例えば、フォーミュラの中のLosses Incentive、7ページの真ん中に送配電損失費用の低減に対して与えられるインセンティブがありましたけれども、私が記憶している限りで言えば、事業者が損失を簡単に低減できるのに対してものすごいボーナスが入るような仕組みだったようなのです。それで過剰な収入を与えてしまった。逆のことも当然あり得るわけで、結局、そういったフォーミュラで何をどれぐらいいじればどういうことが起きるのかというのがなかなか分からないわけです。それが1つだったら分かるのですけれども、それが複数になりますと本当に複雑に絡み合ってよく分からなくなるわけです。そういう意味で、事業者の予見性を低めるという意味では非常にリスクになるし、それは規制当局にとってもリスクなわけです。そういったものに対する反省は、イギリスでは少なくともしているのではないかなということでございます。

○古城座長 矢野委員、どうぞ。

○矢野委員 御説明をどうもありがとうございました。

私のほうからは、1つは、まとめの21ページのところの3つ目と4つ目のところについてです。私もこういったことに強い関心を持っていますが、その前提として、11ページにありますいわゆるイギリスでのレベニューキャップ見直しの背景が、低炭素社会の構築が重要な政策課題になり、そのためには設備投資にどうインセンティブを与えるかというところで、服部先生の報告書、Y10032を少し読ませていただきましたけれども、基本的には今回のイギリスは長期的視点を重視した試みであるということで、まだスタートして成果が出るところまで行っていないので、その辺のところが分かりはしないのですけれども、一方で、制度設計に反映されている問題意識が重要ではないかと報告書に書いてありました。私もそこは非常に重要だなと思っておりまして、そのことの重要性とステークホルダーエンゲージメントは、単にネットワークの利用者だけではなくて、いわゆる需要者、消費者も含めてステークホルダーエンゲージメントと言っていらっしゃるのか、その辺を少しお聞きしたいです。それとまとめの3番目と4番目に書かれているところを、我が国での可能性としてもう少し踏み込んで今日教えていただけたらと思います。今後のあり方として、特に今年4月に経産省でこれからのエネルギー革新戦略が出されて、それはスマートグリッドとか、日本ではスマートメーターの設置が完了すれば、特に消費者あたりも、そういったスマート社会に対する恩恵とか、自分たちがもっと低炭素社会に関われるという実感を持てる時代になっていくとは思うのですけれども、そのためにも送配電のことに関する設備投資はこれからかなり重要になってくると思います。そのあたりで、先ほどの3番目と4番目の我が国への導入の可能性というか、ちょっと示唆できるものがあればお聞きしたいです。それと報告書の中で最後のところに、我が国の事業者が有意義な議論を行うための支援方策について検討を行う予定であるというところで最後がくくられていたのですけれども、これは平成24年だったので、少し進んでいればちょっと具体的に教えていただきたいなと。質問が3点ということです。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 まず、ステークホルダーエンゲージメントの中に、消費者が含まれているのかということですが、含まれています。

ただし、消費者が全てではなくて、例えば、発電事業者もネットワーク利用者のわけです。あと、送配電を利用する人たちがいろいろと入っていますので、消費者もその一部でありますけれども、消費者が全てではないことになります。

それから、まとめを踏み込んでということだったのですけれども、私もこうしたらいいのではないかというのはなかなかアイデアとしてはないわけですけれども、まだこういう議論が本格的に進んでいないということは残念に思っているところではあります。

誤解を恐れずに言えば、これまで、特に震災以降、料金は安くしないといけないと。それは非常に重要な点だということは、私は重々承知しているのですけれども、とにかく安ければいいというところに陥っていないだろうかというところは、ちょっと感じるところはありまして、我々がふだん使っている電気が、どういう設備を使って、どういう設備を必要としていて、それにどれだけコストがかかり、今後、どういった設備の投資が必要になってくるのかということについて、もっといろいろな人たちが理解を深めることが重要だと思っています。

ですので、今すぐにこういう仕組みを導入したらいいとかということはなかなか言いにくいわけですけれども、私としては、一研究者として、こういう海外事例を紹介したり、そういったことを通じて少しでも送配電ネットワークの価値といいますか、送配電ネットワークがもたらしているものの価値をもっと議論できる土壌ができればいいなと個人的には思っています。

私が報告書に書いた事業者が有意義な議論を行うための支援方策についても、まだこれは正直検討中でありまして、私は電力中央研究所というところに勤めていますから、もちろん日ごろから事業者さんとコミュニケーションをとることがあるわけですけれども、そういった中で議論をしながら、いろいろアイデアを生み出していきたいなと思っていますけれども、まだ具体的にこういうことをすればいいのにというのはなかなか思いつくところには至っておりません。

ただ、最近、今日は紹介しなかったのですけれども、安田先生とかは御存じだと思うのですが、今、送配電網のデススパイラル問題がございまして、それは何かといいますと、分散型の太陽光発電がたくさん入ってきまして、需要家が分散型の太陽光を設置しますと、需要家さんに系統から送られている電力は減らせるわけです。自家発電である程度賄うことができる。足りなくなったらもちろん系統の電力を使い、余ったら逆に売ったりとかということができるわけですけれども、そういったことが増えてきますと何が起きるかといいますと、系統から送った電力に対してしか今は料金がかけられないわけですから、分散型電源が増えてくると、今のままだと料金収入が減っていくことが予想されるわけです。しかし、分散型電源が増えたからといって、そこは配電線を切ってもいいですかということにはならないわけです。

配電線は維持しないといけないし、太陽光が増えてきて、いろいろな変動に対応するために、もっとコストをかけて供給しなければいけない。しかし、収入は減ってきてしまう。では、値上げをしたらいいではないかということになるのですけれども、今度は系統電力の値上げをしてしまいますと、ますます分散型電源のほうがコスト的には魅力になって、ますます系統電力が減ってしまう。そうすると、そういう負の連鎖がずっと続いていってしまって、必要なのに、そして、実際に再エネを支えるという価値をもたらしているのに必要な収入が得られないという非常におかしなことが将来的に起き得るということが懸念されているわけです。

そういった問題意識は、今、業界でもかなり認識されるようになってきていまして、そういった問題にどう取り組むかということが我々にとっても重要な研究テーマになっていますし、今後、そういった問題が本当に起きるのか、起きるとしたらどの程度の問題を引き起こすのかというのを精査していかないといけないと思っています。

ですので、当面はそういったことをやりながら、新しいアイデアが出てくればいいなと考えています。

○古城座長 井手委員、どうぞ。

○井手座長代理 報告を聞いていないのですけれども、質問させていただければと。

今までのやりとりを聞いていると、イギリスとかドイツは、本来インフラが十分整備されている状況であれば、いかに運用するかということで、プライスキャップとかレベニューキャップで有効に効率化するインセンティブになると思うのですけれども、時代とともに太陽光とか風力とかが出てきて、設備投資をやらないといけない。だから、当初やってあったレベニューキャップとかプライスキャップを少し変更していかないと、設備投資がうまくいかないという問題が多分出てきたのだと思うのです。

そういう意味で、先ほど服部さんが言われたように、日本でも1990年代、電気料金でプライスキャップが言われたときに、日本はまだ送電線とか設備投資が不十分だ、だから、プライスキャップをやると投資が十分に回収できないのでプライスキャップはやめようという話になったと思うのですけれども、日本も、一旦総括原価から離れたら、またもとに戻ることはできないわけで、慎重に移行をやらないといけないというのは確かだと思うのです。そのときに、レベニューキャップとかプライスキャップというものが有効なのかというと、今回、御説明を聞いていると、ヨーロッパではこれが主流だと、ただ、設備投資を十分考慮しないといけないという話だったと思うのですが、ここで議論しているのは、総括原価のもとでコストが、ずっとこうで、消費者委員会としては、今後はB to Bの話、接続の話ですから、コストにいろいろと関与していくというのは非常に難しい。だから、託送料金について値下げをする仕組みを考えないといけないでしょうということなのです。

出てくるのは、レベニューキャップだけですかということと、質問は、ドイツとかでレベニューキャップをやっているということですけれども、これは収入の上限は公表されているのですか。

というのは、送電線事業者は3社や4社はありますね。配電事業者は100も200もありますね。それについて、それぞれ収入の上限を決めているのですか。

本来、多分レベニューキャップとかプライスキャップは社会契約なので、その中で政府と送電事業者とか配電事業者が交渉しないといけないわけで、そういう手間を考えるともっといい方法があるのではないかということで、よく考えると、携帯電話の接続料は劇的に下がっているわけです。auとドコモ、それは別に規制しているわけではないのに劇的に下がっている。これはそこから何か学ぶことはないのかなという、これは印象だけなので、答えられるあれではないかもしれませんけれども、以上です。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 ありがとうございます。

値下げの方法として何がいいのかというのは、私自身、ほかに何か知っていることがあるかと言われれば、特には持ち合わせていないというのが現状です。ただ、要するに、私はというか、無駄を省いた結果としての値下げは重要で、無駄を省いて値下げを実現するというのは重要だと思っているのですけれども、結局、今、問題になっているのは、無駄を省いた後の費用自体が上がっていくあるいは上がらざるを得ないという中で、それをいかに抑えていくかということだと思っています。一つは、強いて言えば、技術革新を促すことによって、ずっと先になるかもしれないけれども、あるとき始めておいた技術開発投資が実を結んで、将来的にコストを下げていくことが、唯一の解とは言いませんけれども、可能性として挙げられるのかなと思っています。

そうなると、技術開発を促すためにはどうしたらいいのかということなのですけれども、技術の話は非常に難しくて、お金をかけた分だけ本当にそういう技術が開発できるかというのは全く違う話ですから、コンスタントに研究開発を進めていくことは重要だと思うのですけれども、レベニューキャップであれ、総括原価方式であれ、それをどのような形で担保していくのかということは、先生の今の疑問に答えるためにも重要だと思っていますし、私は携帯電話の世界は詳しくないので何が起きたのかはよくわかりませんけれども、電気通信と電力の世界でよく言われることは技術革新の違いで、電力業界が規制で守られているから技術革新が起きないということは、私は余り信じていないのですけれども、通信の場合はいろいろな技術革新によってコストダウンする可能性がかなり多くある。それをうまく活用することによってコストダウンができたのではないかと思っています。

それから、上限は公表されているのかということで、私自身はドイツの規制当局などがそういった数字を公表していたかどうかは記憶になくて、もしかしたらドイツ語でしか公表されていないかもしれないし、全く公表されていないかもしれないけれども、例えば、今日紹介した18ページには、E.ONという会社が自分のIRの資料として出しているものですけれども、ここにはちゃんと最後に収入上限は電力の場合は39億ユーロと書かれていますので、大手事業者の収入上限はこういった形で入手することができるのではないかと思っています。

それで質問の答えになりましたか。

○古城座長 安田委員、どうぞ。

○安田委員 安田です。

1つ前の服部様のコメントに対して追加のコメントをさせていただきます。質問ではなくコメントになっております。

分散型電源がたくさん入ってきたときに、ネットワーク収入が下がって、イノベーションとか投資が少なくなるということは、恐らくネットゼロと呼ばれるタイプの分散型電源で発生する可能性があって、これは恐らく特に配電部門の分野で御議論されていると思います。

一方、送電線の分野では、ちょっと私どももいろいろと調べているのですけれども、電力の消費電力量が将来余り伸びない中でも託送の使用量が増えているというデータがございますので、そのあたりが、TSO側、送電側と、DSO側、配電側で違うと思います。それは恐らく制度設計の問題ですので、ネットゼロ側、要するに、託送料金を払わない分散電源がたくさん出てきてしまうということは、これは将来制度設計によって是正すべきだと思いますし、いずれにしろ、我々日本も先進国型ですので、将来、余り電力の使用量が増えない中でどのようにより最適な制度設計をするかということを考えていくべきなのではないかと思います。

ちょっと追加のコメントをさせていただきました。

○古城座長 今のはコメントですね。

○安田委員 コメントでございます。

○古城座長 古賀委員、どうぞ。

○古賀委員 1つ確認をさせていただきたいのですけれども、最後のまとめのところで「必要な設備投資をちゅうちょなく行えるような料金制度」と書かれていらっしゃるのですが、総括原価方式が、消費者にとって、経営リスクも含めて何でも電気料金で回収されたらたまらないという視点が結構あって、今回、託送料金に何でも入れられたらかなわないという消費者側の素朴な声もあるわけなのですけれども、託送料については、ヨーロッパでは発電事業者と小売事業者が両方とも託送料を負担するということをちょっと読んだことかあるのですが、日本の場合は小売事業者だけが負担する形になっているのですけれども、これがどうなっているかということと、この必要な設備投資が、例えば、急に必要になった修繕費だとか、急に系統設備を拡充しなければならないような場合のようなことを何となく想定するのですが、プライスキャップの場合でも、当然最初に料金を設定する場合、修繕とか事業計画も含めて報酬を考えていると思うのですけれども、必要な設備投資は具体的にはほかにどんなものがあるのか教えてください。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 1点目は、ヨーロッパは基本的に日本と同じだと思います。

小売事業者がお客さんと契約を結んで、小売事業者が請求する料金の中に送配電のコストが含まれています。それから、必要な投資には何が含まれるかということなのですけれども、私がここで言いたかったのは、要するに、例えばというか、エネルギー政策の基本的な目標として、3つのE、今はそれに安全が加わって、3E+Sがあると思うのです。そのうちの1つは効率化ということですから、無駄を省いてできるだけコストを下げるという目標が一つにはある。あと2つは、安定供給と環境への適合ということで、安定供給はこれまでもそうでしたし、今後は再生可能エネルギーが増える中で、今はもちろん技術進歩もありますから、何とか対応していけると思うのですけれども、当面は再生可能エネルギーが増えると系統側で安定供給を維持するのは非常に難しくなっている。再生可能エネルギーが増える中でも、系統の信頼度を維持するためにはそれなりのコストがかかるし、系統を増強するという設備投資も必要だと。安定供給のために、特に今は再生可能エネルギーが増えていく、自然変動電源が増えていく中で必要な設備投資が、安田先生もいろいろと御意見はあると思うのですけれども、多かれ少なかれということで、私は少なからずかかると思っていますので、そういう設備投資の費用が1つ。

それから、環境適合ということで、これはいろいろな方法があるわけですけれども、一つの方法としては再生可能エネルギーを増やすということがあって、これを増やしていくために単純に生じてしまう費用、例えば、今まで発電所とかが建つようなところではなかったところに風力発電ができるのであれば、そこに送電線を引っ張らないといけないわけですから、そういう意味で必要な設備投資があり得ると思います。

私がここで「公益目的の達成のために必要な設備投資」と書いたのは、そういった設備投資のことを指していると考えていただければと思います。

○古城座長 ちょっと伺いたいのですけれども、レベニューキャップはグロスのレベニューですね。総収入ですね。キャップを価格にかけるのとレベニューにかけるのは、どこか効果が違うのでしょうか。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 今の質問は、プライスキャップとレベニューキャップの違いはあるかということですね。

それは、例えば、事業者に効率化のインセンティブを与えるという大きな意味では変わらないということはあります。ただし、違いとしては、電力の世界ではほとんどレベニューキャップであるという理由にも関係するのですけれども、プライスキャップの場合は、例えば、電力量を抑えるというインセンティブは働かない。逆に、増やして、規模の経済でコストを下げることができれば、プライスキャップのもとではどんどん販売電力量を増やそうとするインセンティブが働くことは考えられます。

一方、レベニューキャップの場合は、収入の総額が決まっているので、販売電力量を増やそうというインセンティブは基本的にはないと考えられます。これはどういう文脈で意味を持つかというと、これも低炭素絡みの話なのですけれども、ヨーロッパでは省エネも重要な政策の課題になっていまして、要するに、使う電力量を減らそうということです。このときに、プライスキャップだと、そういう事業者が省エネのための投資とか、そういったものを進めないのではないかということが懸念されて、レベニューキャップになったという背景があります。

ですので、例えば、電気通信の場合、増えれば増えるほどいいという世界だと思うのですけれども、電力の場合は省エネというものがありますから、増えるのに歯止めをかけるという意味で、プライスキャップよりレベニューキャップが志向される傾向があるかと思います。

ただし、実際は、規制方式にかかわらず、そんなに簡単に販売電力を増やしたりとかというのは、例えば、事業者が積極的にコマーシャルをやって増やそうとしてもそんなに簡単には増えませんし、事業者がそんなに簡単にコントロールできるものではないので、実際には規制方式の違いによる効果はほとんどないだろうと思われますけれども、少なくともそういった説明がなされることはございます。

○古城座長 もう一つなのですけれども、「効率化と設備投資のバランス」と書いてありますけれども、一般にはこれは両立しますね。効率的な設備投資になって、コストも下がるわけですから。先ほど言いましたような再エネの導入とか、非常に政策的な課題に応えるための投資は確かに両立しないと思うのですけれども、両立が難しくなるような設備投資はそれ以外にありますか。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 先生のおっしゃるとおりだと思います。

ただ、普通の投資でも、効率化と設備投資が両立するためには、私はある程度長い期間が必要だと思っていますので、普通の投資でも、短期的にはトレードオフなのだろうと思いますけれども、おっしゃるとおり、再生可能エネルギーをたくさん導入するために必要な設備投資は、少なくとも効率化と短期的にはトレードオフの関係になると思います。逆に言うと、特にそれ以外で思いつく設備投資はございません。

○古城座長 太田委員、どうぞ。

○太田委員 今のレベニューキャップとプライスキャップのところなのですが、レベニューのキャップは張りついているのですか。つまり、上限に達しないことがあった場合には、レートはどうやって決まっているのでしょうか。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 価格です。

価格は、イギリスの場合は、価格はこのようにして決めなさいという決まりがあります。レベニューキャップが張りついているかというと、結論からいうと、結果的には張りつくことになります。その水準を達成するように料金を変えることは認められていますが、料金の体系は勝手に変えてはいけない。例えば、基本料金を増やそうとか、従量料金を増やそうとか、そういうものはルールで決まっていて、その中で最終的に一定の料金水準を達成するための値下げあるいは必要な値上げは認められています。

○太田委員 そうすると、供給業者側としては、基本的にはレートを上下することで量を調整するという形ですか。売り上げは上限に張りつくということは、売り上げは変わらないので、レートを上げれば需要量は減ってその分コストが変動費分は下がるように思うので、レートを上げるインセンティブがあるということですか。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 多分、先ほど申し上げたとおり、いわゆる電力量は、確かにもちろん一部価格に反応するとは思うのですけれども、そんなに簡単には増えたり減ったりはしないという中で、足りない収入を補うために上限まではレートを上げる、あるいは、ちょっと需要が多くなり過ぎてしまったのでレートを下げることはあるということです。

○太田委員 価格弾力性は非常に低いという状態で、レートでその上限に合う張りつけに調整しているということですか。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 そうです。

○太田委員 ありがとうございました。

○古城座長 あと、規制期間の長期化というところなのですが、今、日本は無限の期間でやっているのですけれども、イギリスの8年はとても長いと思うのです。これはヨーロッパの大勢なのですか。ヨーロッパの各国の中で大勢の流れは、こっち、長期化に向かっていると見てよろしいのですか。それとも、イギリスは今のところ特異な例と見たほうがよろしいのでしょうか。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 少なくとも今のところは特異な例です。13ページを見てもらえばわかるように、先生の御指摘のように、このスライドでも説明していますけれども、8年は異例の長さと言えます。

ドイツのところでも、20ページに書いてあるように、5年という期間が若干問題視されている気配はありまして、5年を超えて成果が生じるような投資を奨励するためにはどうしたらいいのだろうか。当然1つの解は、規制期間を、5年を超えたものにすることだと思うのですけれども、私が知る限りでは、そういう決定はなされていないと思います。

ヨーロッパの趨勢かと言われると、今のところはまだそこまではいっていないと思います。5年でも十分に長いと思いますし、そういう中で非常に長いのですけれども、13ページに書きましたように、8年なのですが、実際には4年が終わった段階で一回とりあえずレビューをするのです。規制当局が限定的なレビューにとどめると言っているのですけれども、本当に限定的にするかどうかということはやってみないとわからなくて、これを限定的ではなくてかなり本格的にやられてしまうと、結果、余り長期化した意味はなくて、結局4年にしたのと同じだということにもなりかねないという危うさは秘めていると思います。ただ、一応、制度上8年にしたというのは異例の長さであることは変わりないと思います。

○古城座長 3年は短いという声はありますか。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 私は個人的に聞いたことはないのですけれども、実際、イギリスとかドイツとか5年で長年これをやってみて、5年では短いのではないかという結論に達したあるいは達しつつあるということは、そういう可能性は十分にあると思います。

ただ、恐らくイギリス以外の国はこの新しいインセンティブ規制を導入してまだそんなに時間は経過していないと思いますので、今ごろ議論が始まっているのかもしれませんけれども、まだ私自身は存じ上げておりません。

○古城座長 ありがとうございました。

あといかがでしょうか。

太田委員。

○太田委員 そうしますと、プライスキャップ制だと思うのですが、一番簡単に日本が入るというのは、5年に1回電気料金の査定をするとか、あるいは、10年に1回査定をするという制度、無限のものを5年、10年にしてしまうと、事実上同じ効果になるという理解でよろしいですか。

○電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員 あらかじめ5年間は本格改定をしないことに規制当局がコミットすることで、同じような効果は得られると思います。だから、それをやってしまうと多分それはレベニューキャップではないかという声が出るのではないかとは思うのです。

○古城座長 いかがでしょうか。ほかにございませんでしょうか。

それでは、議論は以上といたします。

服部上席研究員におかれましては、お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございました。

(電力中央研究所社会経済研究所服部上席研究員退室)

≪3.電力託送料金の国際比較について≫

○古城座長 続きまして、「電力託送料金の国際比較について」を消費者庁から御説明いただきたいと思います。

大体10分程度でお願いいたします。

○澤井課長 消費者庁の澤井です。

それでは、資料2に基づきまして、小売電気料金及びその託送料金の推移について、日本と海外を比較しながら、その概況について御説明したいと考えております。

1枚めくっていただきまして、今回、海外比較という形で様々なデータを提示させていただいておりますけれども、率直に言って、国際比較を上で非常に困難を伴っていました。国際比較はおおむねそういうことが言われるのですけれども、いろいろな制度上、その他の差異があるので、単純な比較はできないということで、数字について言えば、大変幅を持って見てほしいと考えております。

具体的には、当然のことながら、為替の変動がありますし、今回扱う電気料金、特に託送料金については、地理状況の差異、人口密度の差異、クオリティー、例えば、停電の回数とか。

あと、今回、実際にデータを見てもよく分からないと思った点は、託送の定義が一緒なのかどうかということです。どこから発電、どこまで託送とか、それから、様々なアンシラリーサービスコストとか、離島ユニバーサルコストとか、そうしたものが入っているのか入っていないのかわからない。

費目にどんなものを計上しているのか。賦課金を公租公課に計上しているのか、託送に計上しているのか。

政策的観点からの差異で、必ずしも今回出しているデータにスペインが再生可能エネルギーの費用を付していないとむしろ思うのですけれども、別のデータでは、スペインとかが非常に託送が高くなっているものがありまして、それについて言うと、再エネの料金を付加しているといった注釈があったりしたりしますね。そうした差異もある。それから、税金のかけ方についての差異があるということで、繰り返しになりますが、単純な比較ではちょっとできなかったので、幅を持って見てほしい。そういう意味で、いろいろな角度からのデータをここでは紹介させていただきたいと思います。

まず、全体として日本の電気小売料金の推移、それに対して託送料金の歴史的な推移を出してみたということについて、データを御紹介したいと思います。

まず、この電気料金の推移ということで「電灯」「電力」と書かせていただきましたが、電灯料金は主に家庭部門、電力料金は工場やオフィスビルといった産業用の電気料金という形で推移を見ていただければと思いますが、両者はほぼ並行するような形で推移しておりまして、大震災まではむしろ緩やかに低減していく形だったのですけれども、東日本大震災以降、小売料金については上昇している形になっております。

さらに、直近まで電力10社の月額料金ということでその推移をプロットさせていただきましたけれども、これで見ますと、2015年とか2016年に入った直近では、小売の電気料金はむしろ下がっている。原油価格のコストの影響といったこととかが影響していると思います。

1枚めくっていただきまして、託送料金の推移、低圧のものについては、今回の小売の全面自由化に伴いまして新たに設定された料金なのでありませんが、特別高圧、高圧についての推移をここで書かせていただいております。

どちらも特徴として、小売料金は、例えば、2011年以降上昇といった形での傾向が見られているわけなのですけれども、高圧についても、特別高圧についても、緩やかに減少しているというのが長期的な傾向として見て取れます。

では、小売電気料金の国際比較はどうなるかということなのですが、こちらの電気料金については、IEAの資料をそのまま掲載させていただいておりますが、特徴としては、まず一つは、この点線のものは為替レートの動きを出しております。

日本の推移は、家庭用でも産業用でも赤い色をしているのですけれども、ある意味ドルレートの推移にほぼ沿った形での推移になっておりますので、日本自身の電気料金の推移よりも結構為替が大きく効いているということがここからは出てきていると思います。

次のところで、国際比較ということで、各国通貨の指数を、2010年を100にした形でそれぞれの推移を見てみるとどうかという形で見ていきますと、日本の料金が、小売料金については、各国で2011年以降上昇しているのですけれども、日本についてもかなりその上昇傾向が顕著であり、産業について言うと、2010年を100にして、とり方の問題はあると思うのですけれども、かなり上昇していることが数字として出てきていると思います。

同じような形で、託送料金の国際比較という形で、ここでは、ユーロスタットのネットワークコストと日本の託送料金、それから、そのものについて代表的なところを仮定して、そこから電源開発促進税を引いたものを掲載させていただいておりますけれども、こちらはネットワークコストの定義が必ずしもユーロスタットの定義でよく分からないこともありますので、それと日本の料金について、定義の差がある可能性は十分にあることを御承知いただければと思うのですけれども、まず、推移がわかる産業用で見ると、家庭用よりも全ての各国で産業用のほうが低いという形で推移をしておりまして、日本の料金でいうと、やはり為替レートにむしろ沿った形で推移をしているように、ここでは見えております。ほかの各国の料金は、むしろ上昇している国もあれば、下がっている国もあるという形、左の家庭用について言うと、日本は残念ながら、これから始まったことなので推移はわからないわけですけれども、こちらについて言えば、ドイツが上昇傾向で推移していて、その他の国もやや上昇傾向、スペインはかなり上下が激しい形で推移をしているのですけれども、ちょうどドイツとデンマークの間に、現時点、今回は為替レートを2016年の今の価格がどうかということなので、5月の平均で換算させていただいたものですと、大体ドイツの次ぐらいという形になって、やや高目という形で見て取れるのではないかと思います。

次に、託送料金についても、為替の影響がない形で推移を見るとどうかということで、こちらは2010年に結構欠損しているデータが多かったので、2012年を100という形で推移を見ているのですけれども、これで言うと、日本の託送料金が一貫して産業用について低下傾向にある。各国は上がったり下がっているところもあるのですけれども、家庭用について言うと、日本はないのですけれども、各国の託送料金が、2012年から見ると、スペイン以外のところはちょっと上昇傾向にあるという状況が見て取れると思います。

1枚めくっていただきまして、左側の図は、家庭用と産業用のネットワークコストを、それぞれ横軸が産業用のネットワークコスト、縦軸を家庭用のネットワークコストとしてプロットしてみて、45度線を引いてみると、どの国においても45度線より上、つまり、産業用の価格について家庭用の価格が高いという形になっております。傾きが高くなればなるほどその割合が高いという形になって、日本について見ますと、この中のところではこの線のところに乗っておりまして、日本よりも高い国もあれば低い国もあるといった形にはなっております。

家庭用のほうがある意味コストが高くなっていることの背景には、右側にありますように、配電と送電のヨーロッパの各国の比率を載せさせていただきましたけれども、どこでも配電にコストがかかっているということがありますので、これが家庭用の値段がどの国でも高くなっている背景にはあると考えております。

次の図は、家庭用の電気料金、小売料金に一体どのくらい託送が占めているか。あるいは、産業用の電気料金に託送の料金が占めているかということについて、プロットさせていただいたものでございます。

EUの国々は2015年、日本のみ2016年5月のデータを使わせていただいております。赤い線は、各電気料金に占める託送料金、ネットワークコストが占める割合を示しております。この日本の数字を見ると、日本の家庭用については、小売料金のところで30%を超えていて、産業用については、それよりはかなり低いといった状況にあります。

次の図は、非常に為替の影響が大きいということを示すために、感度分析を右で行った形のものを載せました。

今回、お示しした日本の東京電力の託送料金が、1キロワットアワー当たり6.21ユーロセントと言いましたけれども、これは2016年5月の為替レートで換算した場合でございまして、もし円安ユーロ高が、例えば、3割進めば4.78円になりますし、3割円高であれば8.87円ということで、非常に高いか低いかというところは為替によって大きく変わる形になっております。

続きまして、アメリカの家庭用の電気料金との比較なのですが、なかなか比較できる数字がなかったのですが、例えば、米国のテキサスの託送料金と日本の電力料金を見ると、かなり米国のほうが安いといった形になっております。

ただ、一つの要因としては、次のところに参考として付けさせていただきましたけれども、必ずしもそう言ってテキサスの数字ではないのですけれども、一般的にアメリカにおいては停電といった形で設備自体に大きくクオリティーの差があると言われていまして、そうしたことが背景にあるのではないかと思います。

以上、御説明させていただきました。

○古城座長 ありがとうございました。

御説明いただいた内容について、御質問、御意見のある方は御発言をお願いいたします。

太田委員、どうぞ。

○太田委員 詳細な表をありがとうございました。

10ページを見ているのですけれども、これは産業用と家庭用電気料金を同じ条件で計算したという理解でよろしいのですか。

○澤井課長 それぞれEU各国については、ユーロスタットに載っているデータをそのままとらせていただきました。日本については、ちょうどその半分の使用だった場合の料金を計算して、為替レートで換算したものを掲載させていただいております。

○太田委員 そうすると、このイメージでは、家庭用電気料金については各国の中で比較的高い。赤いものが託送料金の占める割合になるのですね。そうすると、託送料金の占める割合は家庭用電気料金の中で比較的高い。

○澤井課長 高いと。赤いものがまさに薄い緑の部分に占める濃い緑の割合でございますので、もちろんこの緑の部分が何かという、例えば、ドイツ、デンマークですと、再エネにかかっている費用が高いがゆえにこういう形の数字になるのだと思うのですけれども、単純にその比率を出せばこういう形になります。

○太田委員 一方、産業用電気料金ではほかの国と比べてどちらかというと低い。真ん中やや下ぐらいというイメージでしょうか。

○澤井課長 そうです。選ぶレンジによって、かなりこの比率は正直に言って変動が大きくしますけれども、今、このとった数字においては、この数字が出てきている。必ずしも左側の家庭用電気料金のように、日本が一番高い割合ではないということはあるかと思っております。

○太田委員 そうすると、どちらかというと、託送料金では低圧のほうに寄っているということを示唆していると読み取っていいのでしょうか。何かそれに当たって留保条件とか、何かこういう理由によってそう見えているだけだということはありますか。これを素直に読むと、ほかの国と比べた場合、日本は家庭用電気料金のほうに託送料金の割合が寄っていると読めるのですか。

○澤井課長 最初に申し上げたように、電力料金に何を掛けているか、どこで掛けているかにも実は結構よっているのではないかと思いまして、家庭用の特に電気料金において、先ほども説明しましたように、デンマークとかドイツといった国は、割と再エネ賦課金とか、当然のことながら、どの国もEUの場合には消費税が高いといったこともありますので、一概に単純には言えないかもしれないのですけれども、御指摘になった可能性を否定することもないと思っております。

今、言ったところを割合で示したものは、1枚前の数字が、先ほどのものは電気料金に占める託送料金の割合、こちらは、ある意味で後ろにある図の5.58とか6.86や5.23、産業であれば2.43、3.12という価格自体を単純にプロットしたものでの比率でございます。どの国も家庭用より産業のほうが単価では安いということが45度線より上にあるということで、日本について言うと、その比率も図に示されているとおりではないかということです。

○太田委員 それはどこの国も絶対的に低圧のほうが高いという話ですね。

○澤井課長 どこの国も高いですね。それは右側にあるように、どうしてもそれは配電のコストのほうがどこの国もかかる。

○太田委員 ネットワークコストでいうとそうだと。

ただ、割合で言うと、ほかの国と比べて家庭用電気料金に占める託送料金の割合は高く、産業用はそこまででもないと読み取っていいのか。素直に読むとそうなるのですが、何か気にしないといけない条件があるかどうかという質問です。

○澤井課長 数字上はそう出ていると思いますが、今、申し上げた各国の全然違う政策をどう考えるかということなのかなと思っています。

○古城座長 安田委員、どうぞ。

○安田委員 安田です。

補足説明をさせていただいてよろしいでしょうか。

例えば、9ページの左側の45度線があるプロットの図が何を示しているか。背景を私のほうから説明してよろしいでしょうか。

こちらの手法は、実はそれこそ先ほどいらっしゃった電中研の服部様やそちらのグループが以前に論文で使われた手法と同じものだと思っておりますが、単純にネットワークコストだけで、電気料金もそうなのですけれども、家庭用と産業用で比率はどれぐらいあるでしょうかということを国際比較した場合に、太田先生が先ほどおっしゃっていたように、大抵の国は家庭用のほうが産業用よりもうんと高いということが出ております。

それを同じくネットワークコストだけで見た場合も、やはり高いですねと。実は日本よりもドイツのほうが上に行っているということは、家庭が多く負担しているということになりますので、太田先生が一番最初におっしゃったように、事実としてはそのとおりだと思います。

あと、技術的な背景としましては、同じく9ページの右側を見ていただきたいのですけれども、大抵どこの国も、日本も同じなのですけれども、単純に配電線のほうが圧倒的に長くて、およそ送電線の10倍ぐらいあります。大体1対9ぐらいのざっくりとした割合で、当然、国土の広さとか人口密度によって違うのですけれども、ほぼこちらの9ページの図でも10%から20数%の間で分布していると思います。

ということは、やはり配電線につながっている需要家さんのほうがいろいろな設備が必要なので、非常にどうしてもコストがかかってしまう。一方、企業、大口需要家の場合は、たくさん使っているから優遇されているとか、企業だから優遇されているとかということではなくて、高圧配電線から直結して持ってこられるので、その分の設備投資が相対的に少なくなる可能性があるわけです。

なので、どうしても技術的にも45度線を引くと家庭のほうが上に行ってしまうというのは、ある程度仕方がないところで、ただ、それが各国の様々な情勢によって適正かどうかということはいろいろ比較検討しながら精査していかなければいけないことだと思います。

○太田委員 ありがとうございます。

基本的には配電部分のコストがかかるので高くなることはわかるわけですが、よその国と比較したときに、その割合が高いかどうかということですね。

○安田委員 そうですね。

○太田委員 わかりました。ありがとうございます。

○古城座長 あと、いかがでしょうか。

古賀委員、どうぞ。

○古賀委員 わかりやすい表をどうもありがとうございました。

今の2つの表のところで、日本の場合は電源開発促進税をネットワークコストに含まないとしてあるのですが、これは多分含むと0.45ユーロぐらい上がってしまうのかなと思うのですけれども、これを外した理由は。

○澤井課長 こちらのユーロスタットのネットワークコストと比較するというところで、ユーロスタットのほうでそうした公租公課をどう扱っているかというときに、ある意味、特別な電気にかかわる制度とか、あるいは再エネとか、そういうものが例え託送、ネットワークコストに入っていた場合には、そこではなくて公租公課に入れてくださいという形でのメソドロジーがありましたので、比較する上でなるべく共通にできるようにという形でそういう処理にさせていただきました。

○古城座長 あとはいかがでしょうか。

よろしいでしょうか。

それでは、この件についての議論は以上といたします。


≪4.閉会≫

○古城座長 本日の議論は、以上といたします。

事務局から連絡事項はございますか。

○丸山参事官 本日も、熱心な御議論をどうもありがとうございました。

今後の調査会等の日程につきましては、確定次第、御連絡をさせていただきます。

○古城座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

なお、次回の調査会では、これまでの議論の状況を踏まえ、当調査会の報告書の取りまとめに向けた議論を行いたいと思います。

お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)