第2回 消費者契約法専門調査会

日時

平成26年11月21日(金)10:30~12:30

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、阿部委員、大澤委員、沖野委員、河野委員、古閑委員、増田委員、丸山委員、柳川委員、山本和彦委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会委員 河上委員長、石戸谷委員長代理、橋本委員
法務省 中辻参事官
国民生活センター 松本理事長
【消費者庁】
服部審議官、加納消費者制度課長
【事務局】
黒木事務局長、井内審議官、金児企画官、増田参事官補佐

議事次第

  1. 開会
  2. 今後の検討の進め方
  3. 委員からのプレゼンテーション(後藤巻則委員、山本健司委員)
  4. 意見交換
  5. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○金児企画官 本日は、皆様お忙しいところをお集まりいただきありがとうございます。

ただいまから「消費者委員会第2回消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

本日は、所用により井田委員と後藤準委員が御欠席との御連絡をいただいております。

まず、配付資料の確認をさせていただきます。

議事次第の下のほうに配付資料一覧がございますが、資料1が前回の専門調査会において出された主な意見の概要です。

資料2が、本専門調査会のスケジュール(案)。

資料3として、「ヒアリング等の進め方について」と題するペーパー。それに別紙で表を3ページおつけしてございます。

資料4は、後藤巻則委員からの提出資料です。

資料5は、山本健司委員からの提出資料で、レジュメと消費者契約法日弁連改正試案となってございます。

配付資料は以上です。不足がございましたら、事務局へ御連絡ください。

それでは、ここからは山本座長に議事進行をお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、本日もよろしくお願いしたいと思います。

まず最初に、先ほども資料の確認がありましたが、前回、委員から出されました御意見について確認をさせていただきます。事務局から説明をお願いいたします。

○増田参事官補佐 それでは、事務局の方から資料1に基づきまして、前回の専門調査会において出された主な御意見を御説明させていただきます。

資料1をごらんください。

資料1では、前回、委員の皆様からいただいた御意見を「今後の検討において重点をおくべき点等に関する御意見」、それから、「ヒアリング等に関する御意見」、「その他検討の進め方等に関する御意見」に分けて整理させていただいております。

「今後の検討において重点をおくべき点等に関する御意見」では、情報提供義務の法的義務化、不当条項リスト、重要事項の範囲や困惑類型の拡張、不当勧誘の一般条項といった個別の論点についての見直しに向けた御意見。また、消費者概念の議論は最後にすべきとの検討順序に関する御意見。あるいは、諮問内容を踏まえて、インターネット取引を前提とした取引環境や高齢化に配慮すべきとの御意見。また、消費者契約法の法的性質の考慮や消費者団体訴訟の差止め訴訟との関係、効果論についての御意見などをいただいております。

続いて、「ヒアリング等に関する御意見」では、これまでの議論を踏まえ、事業者がどのように対処していくことになるのかを議論する必要がある。ある規制を設けたときにどのような影響があるのかも重要な立法事実に関わる事柄と思われるなど、実務上の影響を踏まえた議論の必要性についての御意見をいただいております。

また、その方法について論点ごとに関連が深い業界に話を聞くというのがよいのではないか。あるいは、意見を聞きたい対象が明確になっているのであれば、可能性としてアンケートという方法もあるのではないかといった御意見もいただいております。

最後に、「その他検討の進め方等に関する御意見」として、民法改正により消費者契約法はどういう影響を受けるのか、どこかで整理したものを示してほしいとの御意見や、改正につながる議論において立法事実として何を取り上げるかについては早目にお示しいただきたいとの御意見をいただいております。

また、来年8月までに取りまとめる内容として、中間報告では不十分であり、具体的な法改正の方向性や内容を詰めた最終報告のような内容を目指すべきであるとの御意見もいただいております。

その他、効率的かつ充実した議論進行についての御意見や、特別法や行政規制との関係についての御意見等を頂戴しております。

以上、御紹介させていただきましたが、もし何か漏れ等ございましたらおっしゃっていただければと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、前回の御意見については以上のとおりということで、先へ進めさせていただきたいと思います。

続きまして、前回、所用により御欠席でした増田委員、柳川委員、山本和彦委員に自己紹介をお願いしたいと思います。自己紹介とあわせまして、前回、委員の皆さんから今後の検討において重点を置くべき点などについて御意見をいただいているのですが、その点についてももしありましたら御発言いただければと思います。

それでは、増田委員、柳川委員、山本和彦委員の順でお願いしたいと思います。

○増田委員 全国消費生活相談員協会の増田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

相談現場のお話をさせていただきますけれども、不当な条項についての交渉は、およそ困難な状況であることとか、複雑な商品サービスによる問題と契約する側の判断力不足、その2点によって大きくたくさんの問題が発生していると思います。ぜひ相談現場の中でスムーズに解決できるような、そういうものにしていっていただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

○柳川委員 東京大学の経済学研究科におります柳川と申します。前回は欠席で失礼いたしました。今日も申しわけございません、途中で退席させていただきます。

数少ない経済学者ということの参加でございますので、なるべく経済学的な知見でお話をさせていただこうかなというふうには思っております。

先ほどお話がありました資料1も読ませていただきまして、資料も見させていただきましたけれども、やはり問題のあるいろいろな案件が出てきているのは事実だと思うので、それをどういう形できちんと法律で対処していくか、改正をしていくかどうかというのは重要なポイントだと思うのですが、その際に経済活動を余りにも萎縮させてしまったり阻害してしまうようなやり方だとまずいので、どういう形で法律をつくっていく、あるいは改正していくのが経済活動をできるだけ阻害しない形になるのかということが重要なポイントかと思っています。皆さんにはこういう話を申し上げるまでもないですけれども、例えば飛行機の事故があったときに、それは大きな問題ですけれども、では、それで飛行機を一切飛ばさないというようなルールにしてしまうと、結局のところは利用者が困るわけなので、経済活動というのは単に企業側のメリットということではなくて、消費者全体にとってよりよい形できちんとした対処ができればいいのではないかというふうに思っております。

その際には、少し議論が出ていましたけれども、いろいろなデータに基づいた議論ができるといいのではないかというふうに思っております。もちろん限られていますし、数字がとれるもの、とれないものもあるのですけれども、やはり客観的なデータであるとか情報に基づいた議論ができるといいいかなというふうに思っております。

最後に、やはりこういう話は、この御意見のところにありますけれども、消費者がよりよく理解ができて、交渉ができるようにするということが大事だと思いますので、これは一般論ですけれども、より理解が進むような形の法律づくり、ルールづくりというのができるといいかなというふうに思っております。もう少し具体的には細かく議論が進んだところでお話をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。

○山本(和)委員 一橋大学の山本和彦です。例によって山本が多い会議のようであります。専門は民事手続法でありまして、手続法の観点からの参加ということになります。どの程度お役に立てるような議論ができるかわかりませんけれども、勉強しながら努力を尽くしたいというふうに考えております。

1点だけ私からの希望としましては、仲裁合意の問題です。現在の仲裁法においては、消費者契約に関する仲裁合意につきましては、附則の中で暫定的な当分の間の規制がされているところでございますけれども、司法制度改革のときの議論では、この点については消費者契約について十分な知見を持った会議体において今後検討されるべきであるということで、附則における暫定的な規制がされたというふうに承知をしております。恐らくそのような会議体はこの場ではないかというふうに思いますので、この点は司法制度改革の中で残された宿題ということになりますので、この場では非常にマイナーな課題であろうとは理解しておりますけれども、ぜひ検討の対象に加えていただければと希望する次第でございます。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。


≪2.今後の検討の進め方≫

○山本(敬)座長 それでは、本日の議事に入りたいと思います。

初めに、「今後の検討の進め方」についてです。前回の委員の皆様からの御意見を踏まえて、スケジュールなど今後の検討の進め方について事務局に整理をしていただいています。まずは事務局のほうから説明をお願いいたします。

○増田参事官補佐 それでは、事務局のほうから御説明させていただきます。

まず、資料2をごらんください。こちらに本専門調査会の今後のスケジュール(案)をお示しさせていただいております。

ごらんのとおり案としましては、来年2月ごろまでの間にヒアリング等や委員からのプレゼンテーション等の実施及びその内容を踏まえた意見交換を行い、3月ごろから個別の論点についての検討を行って、7月ごろから一定の取りまとめに入るという流れを考えております。

今申し上げました2月までに行う予定のヒアリング等につきましては、資料3の方でその進め方について記載しております。

まず、先に資料3の別紙をごらんいただけますでしょうか。こちらは、前回、消費者庁のほうから御説明いただいた「消費者契約法の運用状況に関する検討会報告書」に記載された各論点について、これまでに示された主な提案などを整理し、また、各論点について当該報告書や消費者委員会における消費者契約法に関する調査作業チームの論点整理の報告の関連ページを記載した資料となっております。

資料3の本紙の方にお戻りください。

前回の会議でいただいた御意見も踏まえまして、「目的」として記載しておりますところですが、先ほどの別紙で整理したようなこれまでの検討の結果を前提としながら、本専門調査会ではヒアリング等の実施により、本格的な検討に先立ち、さらに見直しの必要性や実務への影響、民法改正との関係などに関する御意見をいただきたいと考えております。

そして、「目的」の第2点といたしまして、そのような御意見をより効果的にいただくため、また、消費者契約法の見直しに向けた充実した御議論をいただくために、立法を意識した上であり得ると考えられる案を積極的に出していただくということを考えております。

実施の内容につきましては、こちらに記載しておりますが、まず、前回に委員の皆様からも御意見いただきましたように、いわゆるヒアリングとして事業者団体や消費者団体から本専門調査会の場で御意見をいただくことのほか、場合によってはアンケート等の実施、あるいは事務局において関連団体への意見聴取を行うなど、その他の方法も利用しながら可能な範囲で実務への影響等の御意見の収集を図ることを考えております。

この点、具体的な方法については事務局で整理させていただいた上で委員の皆様とも御相談させていただきながら実施したいと考えておりますが、ヒアリングにおいて聞くべき項目、あるいは、どこを対象としてヒアリングをすべきか等について現時点で御意見ございましたらお示しいただきたいと考えております。

また、このような実務への影響等に関するヒアリングなどと並行しまして、委員の皆様、あるいは、他の有識者の方からプレゼンテーションとして消費者契約法の見直しに関する御提案などをお示しいただいた上で、それに基づく意見交換を行っていただき、これまでの検討で示された結果を基礎としながらも、見直しに向けた御議論をさらに具体的なものとしていただくことでヒアリング等の実施や、3月ごろ以降に予定しております個別の論点についての議論を、より効率的かつ充実した内容としたいと考えております。

この点、本日の会議では後ほど後藤巻則座長代理と山本健司委員からプレゼンテーションを行っていただくことを予定しておりますが、次回以降では、不当勧誘、不当条項、情報提供義務、その他といった形で各回ごとに一定のテーマを設定して行っていただくことを一つの案として考えておりますが、このような進め方についてもより効率的な方法等について委員の皆様から御意見がいただければと存じております。

事務局側の説明としては以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、今、事務局のほうから説明のありました今後の進め方について、御意見、御質問がありましたらお出しいただければと思います。

阿部委員、どうぞ。

○阿部委員 2つございます。1つはヒアリング等についてでありますけれども、資料2の括弧の中で「場合によっては事務局が非公開で」ともありますが、ぜひそのような方法を用いてなるべく丹念に行っていただきたいということでございます。また、特に中小企業団体について、なかなか発言の機会が得られない場合がありますので、そこはぜひ御配慮願いたいと思います。2つ目は、全体の進め方についてでございます。8月までという限られたスケジュールであるのですが、ある程度方向性が見えた段階で中間的な取りまとめとか整理をしてもう少し幅広く意見を聞く、パブリックコメントというと大げさなのですけれども、何らかの形で中間的な取りまとめを公表して意見を聞く機会をぜひお願いしたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、丸山委員。

○丸山委員 今後のスケジュールにおける個別の論点の検討の項目に関連してなのですが、その他のところに抗弁の接続と複数契約の無効取消しという議題が挙がっています。現実に問題となっている背景としましては、決済代行業者の登場、それに伴い、悪質加盟店とのトラブルが増えているという事実があり、とくにマンスリークリアのカードの決済において対応の必要性があるのではないかという指摘が関連の資料のところでも指摘されているところなのですが、現在、割賦販売法の改正の検討において、何が本当に問題なのかといった議論がなされています。また、マンスリークリア型のクレジットカードに関しては、むしろデビットカード、その他スマホ決済といった、様々な決済手段の中でどのように位置づけをしたらよいのかという、他の決済手段との対比でも理論的なところを詰めなければいけないのではないかという議論が、割販法の改正・産構審においても行われているところなので、そこでの議論をにらみながら、果たして消費者契約法の改正を扱う本専門調査会においてどこまでの議論ができるのかということを整理しつつ、論点をどのように取り上げていくのかを考えていただければいいのではないかと思いました。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、古閑委員。

○古閑委員 前回も提案させていただいたとおり、ヒアリング等をしていただけるということで、ありがとうございます。

何についてヒアリングするのかというのが重要かというふうに思っておりまして、ただ漠然とこれについて意見を寄せてくださいといってもなかなか意見は集まらないと思うのです。せっかく事務局もリソースをかけてヒアリングしていただけるということなのであれば、極力意味のあるヒアリングをすることが大切だと思います。そのためには、何についての意見を聞くのかという、何についてというところをある程度まとめた上で聞かないとかなりぼんやりした議論になってしまうのではないかということを懸念しております。

例えば、ここにも別紙3でまとめていただいていますけれども、これまでに消費者契約法に関する調査作業チーム論点整理であるとか、消費者契約法の運用状況に関する検討会の報告書というのも出ているわけで、この中に意見も入っているわけですが、多分それをそのままヒアリングの対象にするということでもないのだと思います。私も必ずしもこれを全部読み切れていないですけれども、資料3で御紹介いただいている中に、例えばですけれども、契約の中途解約権というのが出てきますけれども、これは解約権を認めたほうがいいのではないかという御意見があったということではあると思いますが、とはいえ、例えば継続的契約であるからこそ、幾つかプランがあって短い期間のものと長い期間のものとプランを御用意しておいて、長い期間のプランであれば1か月当たりの料金は割安になっているとか、そういうものがあると思うのです。そういったものを全部解約権を認めてしまうということになると、事業者としては長期にして割安にするというものをつくる意味がなくなってしまうので、そういったものを多分なくしていくことになると思います。そうだとすると、消費者の中には、もしかしたら自分は生活環境が長らく変わっていないし、長期の契約で構わないから割安のほうがいいというふうに思う人もいると思うのですけれども、そういった消費者の選択肢をなくしてしまうことになりますので、消費者のためになっていない施策になると思うのです。

そうだとすると、では、どういう施策が最も適しているのかというある程度施策について整理をして、その整理したものについて御意見を聞くというほうが現実的な議論ができるのではないかというふうに思っています。

ここにせっかくこれだけ有識者の方々が集まっていて、これだけ論点整理もしてきたという実績があるわけですから、これをベースに、これだけの人数を集めるのは大変だと思うので、個別に事務局の方にヒアリングをしていただいて、ある程度こんな案はどうなのだろうというのをまとめていただいた上で、それについて議論をしていくということでないと実質的な議論ができないのではないかということを懸念します。

仮にそれを先にやらないで、まずヒアリングということであるとするならば、ヒアリングを受けた後で、政策立法だというふうに御説明もあったと思うのですけれども、どこかで政策的にどうするのかというのを決めると思うので、さらにその後、十分にヒアリングの機会を持てるというのであれば別ですけれども、そういうスケジュール感が難しいということであれば、先ほど申し上げたような進め方がいいのではないかと思い、提案させていただきます。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。それでは、大澤委員。

○大澤委員 委員からのプレゼンテーション等というスケジュール案について懸念を持っております。個別論点についての検討が3月から7月ごろということで約5か月弱だと思うのですが、正直申しまして、これで時間が足りるのか非常に心配をしております。そこで、委員からのプレゼンテーション等ということなのですが、消費者委員会の作業チームにいたしましても、ことしの10月に出た消費者庁のほうでの報告書にいたしましてもそうですし、あるいは、本日御報告いただく日弁連の試案ですが、こういったほぼ立法提案に近いような、あるいは、少なくとも現在何が問題になっているかについて整理したものはこれだけそろっていると思っておりますので、報告、プレゼンテーションをする際には、そこからさらに一歩進んで、こういう条文をつくったらどうでしょうかといったような提案に近い形で、かつ、その提案をするに当たってこういう問題意識がいろいろな報告書で出ておりますということを付記する形でやっていかないと、結局は今までの論点整理の報告などの繰り返しになってしまう可能性もあるのではないかという心配をいたしております。このプレゼンテーションの中では、より具体的な御提案等というふうに書かれておりますので意識はされているのだと思いますが、こういった条文にしたほうがいいですとか、あるいは、不当条項リストであれば、こういったものを具体的にリストアップすべきであるという形で積極的な提案をしていかないと、個別論点についての検討も恐らく進まないでしょうし、あるいは、ヒアリングもそうですし、先ほど阿部委員のほうから出ました中間的な論点報告というのですか、パブリックコメントをするかどうかはさておくとしても、そういうのをやるのであればなおのこと、このプレゼンテーションはより積極的な提案を掲示するような形でないと間に合わないのではないかという心配をしているということを申し上げさせていただきます。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、河野委員、お願いします。

○河野委員 今、大澤委員が御発言なさったこととほぼ趣旨は同じでございます。やっと10年ぶりに消費者契約法総点検ということになりましたけれども、拝見しているこのスケジュール(案)は、ゴールが7月ごろというふうに決まっております。これを考えますと、この日程の中で、果たして本当に今後しっかりとした論点に向けてこの中でコンセンサスがとれるような議論が持てるのかというところで、できましたら、回数がスケジュールに書かれていないのですけれども、例えば月に1回ですと、本当に最後まで何回かしかないというふうな予定になってしまいます。このあたりを、今日この場でしっかりと、週に1回というわけにはいかないと思いますけれども、どの程度やっていくのか、日程が厳しいのであれば、ですから、時間確保の問題と、どれだけ効率的な議論を行えるか、ヒアリングの中身も含めまして、どれだけ精緻な資料を用意できるのか、そのあたりをしっかりと今日合意ができればというふうに思っています。

それから、もう1点は、ここにいらっしゃる委員の皆さんは、基本的に消費者契約法については非常にさまざまなお立場から熟知されている方がそろっていると思います。恐らく、私自身が一番恩恵を受ける立場でいながら、このことについて知識がない立場で参加していると思っております。現在、今後に向けて検討を加えるに当たって、恐らく立法事実というふうなところが土台になるかと思いますけれども、実は消費者というのは裁判に訴える例はそんなに多くなくて、本当に困っている消費者は、あきらめるまたは泣き寝入りということがございます。つまり、数に上がってこない消費者被害の実態というのがございまして、そのあたりをぜひアンケート等ですくっていただきたいと思います。消費者契約法ができて10年、購買行動といいましょうか、先ほど決済のお話もございましたけれども、さまざま複雑な形になっております。消費者がどれだけ消費者契約のことを理解しているのか、それから、消費者契約に至る行動というのが浮き彫りになるような、ぜひ事実が見つかるアンケート等を行って、こういった法律の議論の中に今の実態が正しく反映されるような形で進めていっていただければというふうに思っております。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

少し御意見を伺ってから事務局のほうにもお答えいただこうかと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。

では、この段階で事務局のほうから何かお答えいただくことはあるでしょうか。

○増田参事官補佐 今、委員の皆様からもたくさん御意見いただきまして、委員の皆様からのプレゼンテーション等、あるいはヒアリングについて、より具体的に進められるように事務局サイドで準備できることはできる限り行いたいと思いますし、この会議のほかでも委員の皆様のヒアリング等を行いながら共有させていただいて、充実した議論ができるように進めたいと思っております。

○山本(敬)座長 日程について御心配になるような御意見が出ましたけれども、この点は、もちろん、今ここで具体的にいつ、何回ということはなかなか特定できないだろうとは思いますが、大体の感じとしてはどのようなイメージなのでしょうか。

○増田参事官補佐 先ほど河野委員がおっしゃられたように、毎週という形は難しいかと思いますが、委員の皆様の日程も調整させていただきながら、月に1回ないし2回で、議論内容も踏まえて調整させていただきたいと思っております。

○山本(敬)座長 どうぞ,阿部委員。

○阿部委員 できれば定例化といいますか、月2回開催するならば第1火曜日と第3火曜日とか、何か皆さんの御都合のいいところをあらかじめ決めて、先にわかるようにしていただければありがたいです。

○山本(敬)座長 この点に関しては、学者委員とそれ以外の方で多少違うところがありまして、学者委員の場合、授業期間中は、授業を休みますと必ず補講をしないといけませんので、その点を含めて日程調整をしなければならないと思います。定例となりますと、ある方が常に出られないというような事態になるかもしれません。そのあたりを含めて調整をできるだけ早目にお願いしたいと思います。

いずれにしましても、民法改正の法制審議会では,月2回を定例とし、さらに予備日を使って月に3回するというようなこともありましたが、それに近いことになるかどうかは別として、十分な時間の確保ができるように、できるだけ早目に日程調整をお願いできればと思います。

ほかにあわせて御意見をいただくことがあるでしょうか。

少なくとも委員の方々からプレゼンテーションを順次お願いするということになりますが、その際には、先ほどの説明にもありましたように、既に出ている問題点はほぼ明らかになっていますので、それを踏まえて、できる限り実現可能と考えられるような案をむしろ積極的にお出しいただいて、ここで議論をすることができればということでした。それは、そのとおりにしていただければと思います。

ヒアリングに関しては、いろいろ御要望が出たところですし、実際にどのようなところにやっていただけるかは相手のあることでもありますので、その点もよく考えないといけないと思います。具体的にどのようにヒアリングを進められるのか、あるいは、先ほどの委員のプレゼンテーションとの組み合わせで、いつ、どの段階でどこからヒアリングをお願いするのかという点については、もう少し事務局のほうでお考えいただいて、進め方をさらに検討していただくということになるかと思いますが、その点はいかがでしょうか。

○増田参事官補佐 先ほどのスケジュールの点等を含めまして、本日、今後の検討の進め方について御議論いただきましたので、これも踏まえて、ある程度今後の日程は早い段階で固めていって御案内したいと思っております。

ヒアリング等の進め方についても、それぞれの委員の御協力も得ながらというところで御相談させていただいて、先ほど座長もおっしゃられたように相手のあることですので、古閑委員におっしゃっていただいたように、どういうことを聞くかというところを固めなければなかなかお答えが難しいという部分もございますので、そこは委員の皆さんと御相談させていただきながら、受けていただけるところに積極的に働きかけさせていただいて、可能な範囲で反映していくというふうに考えております。

○山本(敬)座長 それでは、時間の関係もありますので、進め方についてはここまでとさせていただきます。

≪3.委員からのプレゼンテーション≫

(1)後藤巻則委員からのプレゼンテーション

○山本(敬)座長 続きまして、本日は、委員からのプレゼンテーションとして、後藤巻則座長代理と山本健司委員のお二人からプレゼンテーションをお願いすることになっています。それぞれ順次お話をいただいた後、残りの時間を使って、これまで検討課題として示されている主な提案や、今日、お二人からいただくプレゼンテーションの内容を踏まえて、消費者契約法の見直しに関する具体的な方向性について意見交換を行わせていただきたいと考えておりますので、積極的に御発言いただくようお願いしたいと思います。

それでは、まず、後藤座長代理からお願いしたいと思います。

○後藤(巻)座長代理 お手元の資料4をごらんください。「消費者契約法4条の検討課題」というテーマで報告させていただきます。

1ページから2ページの真ん中辺にかけて目次が出ておりまして、問題状況を指摘した上で消費者契約法改正の方向性ということを各項目について示すという形のレジュメになっております。

項目として、目次のIのところでは、「『意思表示の瑕疵』型規制の修正」という名前をつけておりまして、2ページ目のIIでありますけれども、「『行為態様重視型規制』へのシフト」というタイトルをつけております。こういう内容で各項目についてお話しさせていただきたいと思います。

2ページをあけていただきまして、各項目を四角で囲った形で1、2、3という番号がついております。この資料に書いてあることについて余り細かく触れることはできませんので、資料のここを見てくださいというような形で進めますので、そういうことでよろしくお願いいたします。

まず、「不実告知」のところでありますけれども、学説は幾つか注目すべきものがありますけれども、一つの学説として、消費者契約法4条1項・2項の基礎にあるのは、事業者が積極的な行為によって消費者を誤認させた以上、契約を取り消されてもやむを得ないという考え方であるから、消費者契約法4条4項1号・2号は例示にすぎず、4条4項柱書に該当すると評価できる限り取消しを認めてよいとします。民法改正の審議におきましても、不実表示を錯誤の一類型として民法典に規定することが検討されましたが、見送られました。

このような点からしますと、消費者契約法において4条4項の重要事項につき、1号・2号の限定を排して不実告知ないし不利益事実の不告知の一部を不実表示規定として定めるということが適切だと考えます。

例えば、資料4の3ページにアンダーラインが引いてありますけれども、そこに示しましたような定式化が考えられるのではないかと思います。

このように、民法改正で実現しなかった規定を消費者契約法改正の検討対象とするという点は、2の「情報提供義務違反と契約の取消し」の問題、それから、3の「情報提供義務違反と損害賠償」の問題にも共通します。不実表示の問題も情報提供義務の問題も、事業者・消費者間だけで問題となるわけではありませんので、本来的には民法で対応すべき課題かとも考えられます。しかし、これらの問題が情報・交渉力の構造的格差がある当事者間で結ばれる消費者契約において典型的にあらわれることから、消費者契約法の検討対象として取り上げることには十分な理由があると考えます。

次に、2番目の「情報提供義務違反と契約の取消し」の項目でありますけれども、消費者契約法4条2項によりますと、利益告知と故意という縛りがかけられており、これが消費者被害の救済にとって支障になっているということが指摘されております。この点につきまして裁判例を検討しますと、資料の4ページから5ページに示しましたように、利益告知要件を緩和する裁判例も、故意要件を緩和する裁判例もございます。

まず、5ページの(4)の「消費者契約法改正の方向性」の(ア)のI説というところで示した見解ですけれども、裁判例で利益告知要件、故意要件の双方の緩和が見られることから、これを独立の要件とすることを疑問とし、4条2項を情報提供義務違反による取消しに収斂させます。私はこの立場をとっております。この立場からは、どのような場合に事業者が消費者に対して情報提供義務を負うのかという点が重要になりますが、例えば民法改正中間試案は、資料の6ページに掲げました(1)(2)(3)(4)の要件の全てを満たす場合には、相手方が情報提供義務違反に基づく損害賠償責任を負うという提案をしております。

これは、民法上の規定として情報提供義務違反がどのような場合に損害賠償義務を生じさせるかについての提案ですが、その前提として情報提供義務がどのような場合に存在するかを示した提案として注目されます。

さらに注目される点として、さきの運用状況に関する検討会における沖野委員の御指摘があるのですけれども、消費者契約の場合には、代表的な場面にあっては、通常、消費者の契約締結の意思決定に影響を与える事情が上記(1)(3)(4)を満たすものと考えられるという指摘をなさっております。中間試案の提案は損害賠償を想定した提案ですが、情報・交渉力に構造的な格差があるという消費者契約の特徴に着目しますと、情報提供義務を負う事業者が情報の提供を適切に行わない場合には、特に損害賠償より要件を加重するということなく、契約の取消しを認めてもよいのではないかと思います。

これを原則とした上で、個別的には事業者が当該情報を入手することが著しく困難な場合、あるいは、消費者が当該情報を入手することが著しく容易な場合もありますから、このような場合を例外とすればよいのではないかと考えます。

このような観点から、情報提供義務違反による契約取消権を定式化しますと、資料6ページに示しましたような定式(アンダーラインを引いてあるところ)が考えられるのではないかと思います。

次に、資料6ページの(イ)で示しましたII説でありますけれども、この見解は山本座長の見解ですが、故意の不告知と情報提供義務違反に基づく取消しの双方を立法課題として挙げています。

まず、II-1説は、故意の不告知の立法化を図る見解です。すなわち、4条2項に関する裁判例を検討すると、利益となる旨の告知が具体的であり、不利益事実との関連性が強くなればなるほど、それと不利益事実が表裏一体をなす度合いが高まるため、不実表示と言っても差し支えない場合が数多く見られるとして、このような不実表示型は不実表示取消しの問題として位置づけられるとします。これに対して、利益となる旨の告知が具体性を欠き、不利益事実との関連性が弱いため、両者が表裏一体をなす度合いが低い場合には、不利益事実が告知されないという側面が際立つことになり、実質的には故意の不告知による取消しを認めることと等しくなるとして、このような不告知型について故意による不告知の立法化を図ります。

次に、II-2説、資料の7ページでありますが、情報提供義務違反による取消しの立法化を図るというものであります。

情報の劣位者である消費者は、本来ならするはずのなかった契約をさせられるおそれが定型的にあることから、事業者にとって過剰な介入にならないような例外を認めつつ、原則として事業者に情報提供義務を認め、その違反がある場合に取消しを認めるべきだとして、資料7ページに示した定式を提案しております。アンダーラインを引いたところです。

そして、仮にそこまでの改正が受け入れられないとしても、これまでの裁判例を見る限り、少なくとも契約をすることにより、消費者の生命・身体・財産等が害される危険性が高い場合と、事業者が専門知識を有することが契約上予定されている場合については、事業者に情報提供義務を認めるという傾向がうかがえるとして、これらの場合につき、情報提供義務違反による取消しを認める規定を定めることが検討に値するとしています。

次に、資料7ページの(ウ)のIII説でありますけれども、これは、丸山委員の見解でありまして、この見解は、契約客体の内容取引条件、これは消費者契約法4条4項1号・2号に掲げている要件ですけれども、このような契約客体の内容や取引条件についての誤認が問題となっている事例では、裁判例で利益告知要件や故意要件を厳格に認定せずに取消しを認めていることを指摘して、消費者契約法4条4項1号・2号に限定した、いわば事業者が当然情報を保有しているべき重要事項に係る情報は、消費者契約において事業者が当然保有すべき情報といえるわけですから、かかる情報に関する事実の不告知によって、消費者が当該事実について誤認、不認識状態にとどめられ、仮に当該事実が告知され、誤認状態が解消されていれば契約を締結しなかったという場合には、平均的な消費者であれば当然知っているべき情報は除いて取消しを認めてよいのではないかとされます。

以上、3つの見解を紹介いたしましたけれども、以上の見解を比較しますと、I説とII-2説は、従来の条文の枠組みを変えるということになりますけれども、III説は、4条4項の規定を踏まえた提案ということになります。また、II-1説は、もしこれだけの修正にとどめるとするならば、4条1項・2項・4項の条文を修正する度合いが最も少ないものでありまして、従来の条文との整合性からいいますと、II-1説が最も整合的ということになると思います。

情報提供義務における重要事項をどのようなものとしてとらえるかにつきましては、資料7ページで、沖野委員が既に消費者契約法の制定前の段階で重要事項の考え方を指摘しておりまして、基本的な方向として、これを満たす方向で4条2項をどう修正するかということが検討課題と考えます。

次に、8ページ、3の「情報提供義務違反と損害賠償」の問題でありますけれども、情報提供義務違反に基づく契約の取消しがなされた場合には、取消しの効果としての原状回復のみが行われますから、消費者が余分に支出した費用等の損害がある場合には、取消しだけでは損害は填補されません。また、契約の取消しが認められる場合でも、消費者が当該契約の効力を維持しつつ、自己のこうむった損害の賠償を請求することも考えられます。これらの損害は、契約の締結に伴って生ずる損害ですので、消費者契約法にこれらの損害の賠償を請求することができる旨を定めるということが考えられると思います。

次に、「断定的判断の提供」の問題でありますけれども、資料9ページの4の項目でありますけれども、事業者による断定的判断の提供があった場合に、将来における変動が不確実な事項が、条文に列挙されているような財産上の利得に関する事項に限定されるかどうかということに関しましては、立法当初から議論がありました。これにつきましては、断定的判断の提供の対象になった事項は、それが財産上の利益であるか否かにかかわらず、消費者の契約を締結するか否かの判断に影響を及ぼすものが多いということが考えられますので、このことを考慮しますと、財産上の利益に関する事項に限定しない定式化が必要と思います。一つの定式として、9ページのアンダーラインを引いた部分のような定式が考えられると思います。

次に、9ページ、5の「困惑概念とその周辺」の問題でありますけれども、消費者契約法4条3項によりますと、困惑概念は不退去、退去妨害に限定されていますけれども、消費者契約法の制定準備をした国民生活審議会消費者政策部会の報告におきましては、より広く消費者に畏怖を生じさせないため必ずしも脅迫の成立を認めるには至らないが、消費者を困惑させ、その自発的な意思決定をゆがめるような、強引・執拗で強要的・威圧的な事業者の不当勧誘行為を問題とし、事業者が消費者を威圧するような言動や消費者の私生活または業務の平穏を害するような言動をした場合においては、消費者は契約を取り消すことができるとしていました。裁判例にも例えば、消費者を退去させないこととは、物理的なものであると心理的なものであるとを問わないというように、困惑概念を広く認める傾向があります。

ところで、例えば資料10ページに挙げました東京簡裁の平成19年7月26日の判決でありますけれども、この判決は、消費者契約法上の困惑をめぐる問題状況と不招請勧誘規制が問題となる状況が重なるということを見てとることができる判決だと思います。そこで、困惑類型と不招請勧誘の規制の問題をどのように整理するかということが4条3項の課題としてはあると考えられます。

この点で興味深いものとして、2005年にEUで採択された不公正取引方法指令があります。同指令の付表1は、いかなる事態においても不公正とされる取引方法として、誤認的取引方法を23類型、攻撃的取引方法を8類型掲げています。具体的には省略しますけれども、そういうものを参考にするというようなことを通して4条3項を考えるという方向性があり得るのではないかと思います。

特にEUの指令との関係では、フランス法で、このEU指令を導入する際に、攻撃的な取引方法につき、契約の効力に直結する形で無効としているということでありまして、一つの手法として参考になると思います。

このような観点から、消費者契約法4条3項の改正の方向性を考えますと、資料11ページに掲げましたアンダーラインを引いてあるようなものが考えられるのではないかと思います。1号、2号、3号、4号、5号というような形で、具体的にまだ書き込むところがあると思いますけれども、被害実態や比較法等を参考にしながら、4条3項で保護すべき法益を考えていくという方向があるのではないかと思います。

それから、12ページの6の「『勧誘』要件」のところですけれども、広告等が勧誘に含まれるか否かが問題とされています。裁判例を見ますと、広告等に記載されたことも不実告知等の有無を判断する手がかりとされています。また、最近ではインターネット取引における広告が特に問題となっていますが、インターネット取引は非対面取引であることから、広告が消費者の意思形成に与える影響は極めて大きいと言えます。したがって、インターネット広告も勧誘に含まれると考えるべきでしょう。また、座長等が指摘しておりますけれども、勧誘要件の削除も検討に値すると思います。これを削除しても事業者の行為によって消費者が誤認・困惑し、それによって当該消費者契約の申し込み、または承諾の意思表示をしたことが要件とされるため、当該消費者の意思形成に対して実際に働きかけがあった場合に限って取消しが認められるということになりますので、削除しても大きな不都合は生じないのではないかと考えます。

次に、IIの項目になりますが、「消費者の弱みにつけ込む不当な勧誘への対応」ということでありまして、まず、適合性原則を取り上げたいと思います。

適合性原則についての相談事例につきましては、消費者契約法の運用状況に関する検討会報告書の346ページ以下に詳細にまとめられていますので、そちらをごらんください。

裁判例につきまして資料14ページに、「適合性原則違反が問題とされたのは金融商品の取引に限られているようであり」という記述がありますけれども、これは先ほどの運用状況に関する検討会報告書の116ページの裁判例17として、東京地裁判決の平成24年9月13日がありまして、アルカリイオン製水機の訪問販売の事例で適合性原則に言及した上で損害賠償を認めるという判決が出ておりますので、申しわけありませんが、この点は訂正させていただきたいと思います。

適合性原則違反の場合の契約の効力ですけれども、先物取引についての適格性を欠く主婦を相手に長時間執拗に勧誘したという事案で、公序良俗違反を認めた判決などは、実質上、適合性原則違反の場合の契約の効力を否定した判決と見ることもできると思います。また、適合性原則に関連する事案で、原状回復に相当する損害賠償を認める裁判例も一定程度存在します。

しかし、適合性原則違反が問題となる全ての場合に原状回復に相当する損害賠償が認められているわけではありません。また、契約の効力を否定する法理としては公序良俗違反等の活用も考えられます。さらに、不当勧誘規制の一般条項による効力否定ということも考えられると思いますので、これを定式化するとすれば、その判断要素として適合性原則の考え方を取り入れるという方向もあるのではないかと思います。

したがって、適合性原則違反の効果として契約の効力否定まで認める必要があるかどうかは、慎重に検討すべき課題と思われます。

適合性原則違反に基づく損害賠償の問題につきましても、消費者がこうむった損害の賠償を扱うルールを消費者契約法に創設するかどうかという問題と関連し、この点についても消費者契約法改正の全体の中で慎重に検討すべき問題と考えます。

次に、「状況の濫用」についての問題で、レジュメの15ページでありますけれども、状況の濫用につきましては、裁判例で、例えば呉服販売業者がその従業員に対し、呉服等の自社製品を販売した行為が従業員の支払い能力に照らし課題であり、売上目標の達成のために事実上購入することを強要したものであるとして、公序良俗に反して無効であるとした事例があります。これなどは状況の濫用が問題とされた事例と見ることができるのではないかと思います。

民法改正中間論点整理でも、契約締結過程の不当性に着目して契約を無効にする法理として状況の濫用法理を検討すべきものとされておりまして、わが国でもこの法理は注目されつつある法理です。

最後の「不当勧誘規制の一般条項の創設」という15ページのところでありますが、消費者契約法の運用状況に関する検討会報告書は、消費者契約法に関連する裁判例以外の事例、相談等事例を233件収録しています。そのうち、消費者契約の締結過程に関する相談等事例は120件ですが、そのうち不当勧誘に関する一般規定に該当するものは半数です。もしかしたら数え方が違っているかもしれませんけれども、不当勧誘に関する相談等事例のうちの約半数につき現行規定では対応がされていないということが浮き彫りになっております。

そこで、既に述べましたような誤認・困惑類型の修正により、消費者の保護を一定程度進めることが期待されますけれども、誤認・困惑類型が意思表示の瑕疵を基礎に置く法理である以上、その適用には限界があると思われます。そのため、消費者契約の適正化のための今後の方向としましては、事業者の行為態様をより重視することが必要です。この観点から、必ずしも消費者の意思表示の瑕疵に該当しない場合でも、公序良俗ないし信義則に反する不当な勧誘行為を規制し、この違反行為の効力を否定する一般条項を規定することが考えられます。

比較法的に見た場合、勧誘規制か内容規制かという位置づけについては考え方が分かれるとはいえ、一般条項という規定形式をもって契約の取消しまたは無効を認めるという考え方があるという点では一致しており、消費者契約法において一般条項をもって不当勧誘を規制することを後押しするものと言えましょう。

意思表示の瑕疵の問題と契約内容の問題は一応区別することができますが、成立した契約の不当性のみならず、勧誘行為の態様も取り込んで暴利行為論を発展させてきたわが国においては、不当勧誘規制の一般条項を公序良俗違反の一類型(暴利行為)としてとらえることが考えられます。とりわけ、資料で消費者契約法改正の方向として示す暴利行為論、17ページでアンダーラインが引いてありますけれども、これは運用状況に関する検討会で座長がお示しになったものでありますが、このような形の暴利行為論であれば、状況の濫用論が問題としているファクターも取り込む形で一般条項として成立するのではないかと考えます。

なお、一般条項的な規定が消費生活相談の場で機能するためには、条文化しないとしても何らかの形で典型的な被害事例から抽出したメルクマールを掲げておくというようなことも必要だと思います。そういう点をわかりやすく示すということもあわせて考慮すべきです。

暴利行為論につきましては、民法改正で見送られたということもありまして、消費者契約法で新たな規定の創設を検討するということに十分な意味があると思います。

最後になりましたが、本日の私の報告は、本来、さきの消費者庁での消費者契約法の運用状況に関する検討会での議論状況や裁判例、相談等事例を十分に踏まえて行うべきものですけれども、報告の準備時間の関係で、それが十分にはできていません。特に同報告書では、多くの裁判例、相談等事例が詳細に分析されていますが、これらに言及しつつ今回の資料を作成する余裕がなく、この点は断念しました。この点について、おわびしたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。そうはおっしゃいますものの、取り上げるべき論点、考えられる提案の可能性を特定してプレゼンテーションをしていただきまして、本当にありがとうございました。

(2)山本健司委員からのプレゼンテーション

○山本(敬)座長 それでは、続きまして、山本健司委員から御説明をお願いしたいと思います。幾らでも語りたいところであろうと推察いたしますけれども、20分程度でお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○山本(健)委員 日弁連の山本健司でございます。本日、このような発言の機会を与えていただきましたことに心より感謝申し上げます。

第1回会議でも御指摘がありましたとおり、消費者契約法の実体法改正問題につきましては、この専門調査会に先立つ2つの会議体において、法改正が必要と思われる論点や問題点の整理、裁判例や被害実例といった立法事実となり得る事実の調査と確認が既に行われております。したがって、本日の私の御報告は、そのようなこれまでの議論の成果を前提に、消費者被害の救済・回復の促進という観点から、日弁連が必要と考えております具体的な実体法改正の内容に絞った御報告をさせていただきます。

この点、本日の御報告で使用させていただく資料5-1-1の報告書では、各論点について、前提となる「現行法の問題点」という記載を付記させていただいておりますが、本日の御報告は、頂戴しております20分という時間の関係もあり、「具体的な立法提言」という記載部分に絞って、かつ、いささか駆け足で御報告させていただきます。その旨、あらかじめ御了承ください。

なお、本日の配付資料では、現行法と日弁連改正試案の内容を図式で対比した資料5-1-2、両者の条文を対比した資料5-1-3、日弁連改正試案を詳細に説明した資料5-2を参考資料として添付させていただいております。必要に応じて御参照賜れましたら幸いです。

以下、資料5-1-1の報告書に沿って御報告申し上げます。

第1に、「契約締結過程に関する法規範」の改正意見です。

まず、報告書1ページの「勧誘要件と広告」の問題です。

4条1項の「勧誘をするに際し」という条文について、広告や表示を手段とした誤認惹起行為にも対応できるようにするために、1ページの囲いの中の条文案のように、「締結に先立ち、又は締結の際に」と改正することを提案いたします。

次に、報告書2ページの「重要事項」の改正です。

4条4項の「重要事項」については、契約動機に関する不実告知にも対応できるようにするために、2ページの囲いの中の条文案のように、現行法の1号・2号という限定を取り除き、「消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの」と改正することを提案いたします。

次に、報告書2ページの「断定的判断の提供」の改正です。

4条1項2号については、財産上の利得に必ずしも影響しない事由に関する断定的判断が行われた被害事例にも対応できるようにするために、3ページの囲いの中の条文案のように、「将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が」という記載部分の削除を提案いたします。

次に、報告書3ページの「不利益事実の不告知」の改正です。

4条2項については、不実告知の場合には故意も過失も要求されていないこととのバランス上、3ページの囲いの中の条文案のように、「故意に」という記載の削除を提案いたします。

次に、報告書4ページの「困惑取消」の改正です。

4条3項の困惑取消については、消費者の自宅や職場に必要かつ威迫的な電話や訪問を繰り返す、霊感商法などで消費者を不安な心理に陥れるといった非身体拘束型の困惑惹起行為の被害実例に対処できるよう、4ページの囲いの中の条文案のように、現行法の1号・2号に加えて、新たに3号として非身体拘束型困惑惹起行為に関する規定を追加することを提案いたします。

次に、報告書4ページの「つけ込み型不当勧誘取消」の新設です。

現行法の不当勧誘行為規定は、誤認惹起行為と困惑惹起行為に関する消費者取消権を定めているのみですが、近年問題となっております高齢者の判断能力の減退につけ込んだ被害事案に対応できるようにするために、5ページの囲いの中の条文案のように、新たに「つけ込み型不当勧誘」という取消類型を新設することを提案いたします。

なお、高齢者被害は困惑取消の拡張だけではカバーしきれません。判断能力の減退が著しい高齢者の被害事案では「困惑」を肯定できない事例があるためです。

次に、報告書5ページの「取消権の行使期間」の改正です。

消費者取消権を実効あらしめるよう、消費者取消権の行使期間を5ページの囲いの中の条文案のように、「3年、10年」に延長することを提案します。

次に、報告書6ページの「追認・法定追認の排除」の新設です。

現実の被害実例における消費者の対応を踏まえ、6ページの囲いの中の条文案のように、消費者取消権に関する追認・法定追認の適用排除規定の追加を提案いたします。

次に、報告書6ページの「取消の効果」の新設です。

不当勧誘行為を行った事業者の「やり得」「利得の押しつけ」による消費者被害を許さないよう、6ページの囲いの中の条文案のように、消費者取消権を行使した消費者の返還義務を現存利益に限定する、また、極めて悪質な事案においては事業者の返還請求権が信義則で制限される旨の規定を新設することを提案します。

次に、報告書7ページの「不当勧誘行為に関する損害賠償請求権」の新設です。

現行法の不当勧誘行為規定は、一定の場合に締結済みの消費者契約を取り消せると定めているのみです。しかし、不当勧誘行為を受けた消費者の被害とその救済という観点からは、契約締結の前後にかかわらず、不当勧誘行為を行った事業者に損害賠償請求できると定めておくべきと考えられます。

また、消費者取消権の行使が可能な場合であっても、事案によっては取消権を認めただけでは消費者の救済として不十分な事案があります。さらに、事案によっては、消費者契約を取り消さずに維持したまま損害賠償請求のみを行ったほうが消費者被害の救済に資する事案も存在します。そのような観点から、7ページの囲いの中の条文案のように、事業者の不当勧誘行為で損害を被った場合の消費者の損害賠償請求権の新設を提案します。

次に、報告書8ページの「情報提供義務違反・説明義務違反」です。

現代社会における種々の局面における不正確な情報提供や不十分な説明による消費者被害の救済の必要性を考慮して、8ページの囲いの中の条文案のように、情報提供義務・説明義務を事業者の法的義務として明定する規定、義務違反時の損害賠償請求権の新設を提案いたします。

次に、報告書9ページの「不招請勧誘・再勧誘」の新設です。

不招請勧誘・再勧誘は、消費者の私生活の平穏を侵害する不当な勧誘行為であり、かかる行為も損害賠償請求権を帰結することを明らかにしておくという観点から、9ページの囲いの中の条文案のように、損害賠償請求権の新設を提案いたします。

次に、報告書10ページの「適合性原則違反」の新設です。

専門的知識を有しない一般人が契約締結目的に反する新規性の高い取引を勧誘・契約させられた場合の被害などを考慮して、10ページの囲いの中の条文案のように、損害賠償請求権の新設を提案します。

次に、報告書10ページの「消費者公序規定」の新設です。

同一人物が多数回の消費者被害に遭っている案件では、個々の不当勧誘行為に着目していては消費者取消権の要件事実の主張立証が困難であるという実務上の問題がございます。これを踏まえ、11ページの上側の囲いの中の条文案のように、消費者契約に民法90条を適用する場合の解釈規定、及び、消費者公序違反の一類型として、消費者に過大な不利益を与える内容の法律行為が事業者の不当勧誘行為に起因する場合の契約無効を定める個別規定を提案いたします。

次に、報告書11ページの「契約条項の透明性」です。

現行法3条1項は、契約条項の透明性を事業者の努力義務にとどめていますが、その重要性にかんがみ、11ページの下側の囲いの中の条文案のように、法的義務化と消費者有利解釈の原則の明定を提案いたします。

第2に、「契約内容に関する法規範」の改正意見です。

まず、報告書12ページの「10条」の改正です。

平成23年7月15日の最高裁判所の判決内容に適合するよう、12ページの囲いの中の条文案のように、前段要件を当該条項がない場合との比較という要件に変更すること、後段要件の信義則違反を消費者契約法の趣旨等にかんがみた総合的な考慮において決すべき要件であると明記することを提案いたします。

次に、報告書13ページの「9条1号」の改正です。

事業者の平均的損害に関する資料を有しているのは事業者自身であるということを踏まえ、13ページの囲いの中の条文案のように、平均的損害の立証責任を事業者に転換する法改正を提案いたします。

次に、報告書13ページの「9条2号」の提案です。

現在の超低金利という社会状況、民法改正論議で法定利率を年3%に引き下げて変動金利とするという方向で議論がなされている状況を踏まえ、14ページの囲いの中の条文案のように、年14.6%を引き下げる方向で改正する、具体的には「民法の法定利率の2倍」と改正することを提案いたします。

次に、報告書14ページの「新たな不当条項リスト」の新設です。

現行法では、不当条項リストが2条文しかなく、一般条項である10条に委ねられている部分が広過ぎます。予見可能性という観点からも極めて問題であると思われます。かかる観点から、15ページから16ページの囲いの中の条文案のように、不当条項リストの新設を提案いたします。

具体的には、日弁連試案17条のような、各号に該当する契約条項を「不当条項とみなす」とした上で具体的なリストを列挙するブラックリストの規定、及び、同18条のような、各号に該当する契約条項を「不当条項と推定する」とした上で具体的なリストを列挙するグレーリストの規定の新設を提案します。

また、日弁連試案の策定後に消費者庁の「消費者契約法の運用状況に関する検討会報告書」で不当条項例が列挙されております。これらについては立法事実となり得る事実を確認できたリスト案として、日弁連改正試案には無いものを含め、立法を検討すべきものと考えます。

次に、報告書17ページの「不当条項の効果」の新設です。

現行法には、不当条項の効果に関する規定がないので、報告書17ページの上側の囲いの中の条文案のように、効果規定の新設を提案します。

次に、報告書17ページの「不当条項使用行為と損害賠償請求権」の新設です。

不当条項使用行為を受けて損害を被った消費者の被害救済の観点から、報告書17ページの下側の囲いの中の条文案のように、損害賠償請求権の新設を提案いたします。

第3に、「消費者契約の特則等に関するその余の法規範」の立法提案です。

まず、報告書18ページの「消費者契約約款」に関する規定の新設です。

もし仮に民法改正で約款に関する法規範が制定されなかった場合や、消費者契約約款に関する法規範としては不十分な内容となった場合には、消費者契約法において報告書18ページの囲いの中の条文案のように、定義、組入要件、不意打ち条項禁止、約款変更といった規定の新設を提案します。

次に、報告書19ページの「複数契約の無効・取消・解除」規定の新設です。

取引の目的や当事者の認識において複数契約が一つのパッケージとして相互に密接に関連づけられた契約群である場合には、複数契約が全体として効力を失うという法規範を明確化しておくことが望ましいと思われます。かかる観点から、報告書19ページの囲いの中の条文案のように、複数契約の取消・無効・解除に関する規定の新設を提案いたします。

次に、報告書20ページの「継続的契約の中途解約権」の新設です。

トラブル事例の多さを踏まえ、報告書20ページの囲いの中の条文案のように、継続的契約における消費者の中途解約権の付与規定、損害賠償金の制限規定、特約条項の効力制限規定の新設を提案します。

次に、報告書21ページの「目的物交付前解除権行使時の免責」の新設です。

民法改正論議で目的物交付前解除権行使時の損害賠償責任が規定される方向で議論されていることを踏まえ、消費者借主保護の観点から、報告書21ページの囲いの中の条文案のように、消費者の免責規定の新設を提案いたします。

次に、報告書22ページの「期限前弁済時の免責」の新設です。

民法改正論議で消費貸借の期限前弁済時の損害賠償責任が規定される方向で議論されていることを踏まえ、消費者借主保護の観点から、報告書22ページの囲いの中の条文案のように、消費者の免責規定の新設を提案いたします。

次に、報告書22ページの「抗弁接続」規定の新設です。

現在の消費者契約では、商品等の供給業者と与信業者の業務提携で商品販売契約等と与信契約の目的及び契約締結手続が実質的に見て一体と認められる事案が少なくありません。消費者契約の分野において、割賦販売法30条の4のような抗弁接続規定を設ける必要性が高いという観点から、報告書23ページの囲いの中の条文案のように、抗弁権接続規定の新設を提案いたします。

次に、報告書23ページの「賃貸借の特則」の新設です。

不動産賃貸借契約の消費者借主が通常損耗・自然損耗についてまで原状回復義務を負わされている紛争事例の多さにかんがみて、報告書23ページの囲いの中の条文案のように、賃貸借契約の原状回復義務を加重する契約条項を無効とする旨の新設を提案します。

第4に、「定義・適用範囲」に関する改正提案です。

消費者概念に関する問題事例は、消費者庁の「消費者契約法の運用状況に関する検討会報告書」において、本報告書24ページの2部分のマル1からマル6のように類型化できることが明らかにされております。そこで、問題事例マル6アに対応するために、報告書24ページの囲いの中の2条1項の条文案のように、「事業として又は事業のために」を「事業に直接関連する取引をするために」と改正することを提案いたします。

また、問題事例マル4マル5に対応するために、報告書24ページの囲いの中の29条の条文案のように、「消費者的事業者」への準用規定を新設することを提案いたします。

なお、問題事例マル2は、実務的に非常に重要な問題事例ですが、現行法2条1項の逐条解説やガイドラインにおいて、「不当勧誘行為がなされた時点で消費者であれば、当該勧誘行為に基づいて締結した契約によって事業者となっても、2条の『消費者』として法的保護が及ぶ。」と明示すれば対処できると考えております。

以上、日弁連改正試案の提案内容を一通り御提案・御説明させていただきました。現に存在する消費者被害をどうすれば救済できるか、どのような法改正をすれば被害救済に役立つ消費者契約法になるかという観点からの、現時点における一つの試案でございます。

いずれも被害救済の実務の現場から立法が望まれている提案内容であり、今回の法改正がこのような内容となることを希望いたします。

もっとも、具体的な要件論や文言・文理については、まだまだ検討すべき点、推敲すべき点はあるかと思います。よりよい実体法改正の実現に向けて具体的な修正案や対案を頂戴できましたら幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。

以上です。

○山本(敬)座長 短い時間で簡潔におまとめいただきまして、どうもありがとうございました。

≪4.意見交換≫

○山本(敬)座長 それでは、本日のお二人の委員からのプレゼンテーションの内容を受けまして、さらに、今日は資料3、別紙で、これまで示された主な提案等の整理をしていただいていますが、これも踏まえて、消費者契約法の具体的な見直しの方向性などについて意見交換を行いたいと思います。もちろん、問題点は多岐にわたっていますし、時間も限られていますけれども、そしてまた、これから何度か繰り返し議論することになるものでして、今日で終わりというようなものではありませんけれども、主要な点について意見をお出しいただければと思います。御発言をお願いできればと思います。

阿部委員、どうぞ。

○阿部委員 まず、後藤先生の御説明は非常にわかりやすい御説明でありまして、中身は納得できるわけではないのですけれども、議論のたたき台として非常にわかりやすいものでありました。

日弁連の御提案についてはまた別の機会に逐一反論したいのですけれども、本日は総論的なことだけ申し上げます。

実は、消費者契約法の役割といいますか位置づけにかかわる問題かと思うのでありますが、やはり民法と個別法の間にある中二階といいますか、消費者契約の一般法であるということであれば、今回の民法改正の中で議論されたけれども盛り込まれなかったものが、今回消費者契約法の中で議論されるのは当然かと思っております。逆に、民法改正に盛り込まれたものと消費者契約法との関係については、これももう一度整理する必要があると思います。民法で十分な対応が可能なものがあるのかもしれないと考えております。

それから、個別法との関係でありますけれども、特に日弁連の御提案に対して全部が全部反対というわけではないのですが、さすがにこれは個別法に持っていったほうが望ましいというものも幾つかございます。具体的にはまたいずれかの機会で逐一申し上げますけれども、消費者契約法にどこまでのものを包み込むのかということ、役割というか位置づけをもう少し確認させてください。

繰り返しますけれども、民法改正で議論ができなかったこと、取り上げなかったこと、例えば情報提供義務でありますとか暴利行為というようなことが今回消費者契約法で議論されることはもっともだと思っております。それから、約款につきましてはどうなるかまだわかりませんけれども、民法に盛り込まれなかった場合は、当然消費者契約法に置くべきか否かということで議論は進められていくと思います。議論されること自体は納得しておりますが、民法改正と消費者契約法改正の整合性というか、そこは十分に御議論願いたいと思います。

○山本(敬)座長 それでは、ほかにいかがでしょうか。

大澤委員。

○大澤委員 時間も限られていると思いますので、いろいろ申し上げたいことはあるのですが1点だけ申し上げたいと思います。

後藤委員と山本委員のお話を伺っていて、いわゆる困惑概念の拡張というところと不招請勧誘の部分と、さらに弱みにつけ込むといった話がどちらの報告でもなされましたが、これらの概念をもう一度整理する必要があるのではないかと思っております。

具体例を挙げたほうがわかりやすいかと思うのですが、日弁連試案のほうの4ページと5ページを比較して見ておりましたけれども、4ページのほうにある5条の3号、新設というところです。こういう方向性自体に別に異論はないのですが、ただ、文言をつくるときに慎重に検討する必要があると思っております。

この5条3号のほうでは、例えば不安にさせる言動、迷惑を覚えさせるような仕方、その他心理的な負担を与える方法で勧誘することということがあり、不安感につけ込んでいるということだと思うのですが、ただ、そうだとすれば、6条で出てくる判断力の不足、これは高齢化社会に対応するということでまだ理解はできるのですが、その他当該消費者が消費者契約を締結するかどうかを合理的に判断することができない事情があることを不当に利用してという、ここの解釈にもかかわってくると思うのですけれども、こういう心理的な弱さとか心理的な不安感につけ込むという部分とこの6条というのは恐らく重なってくるところもあるかと思っていますので、日弁連試案でいうところの5条と6条の関係というか、そういった文言の整理はもうちょっと必要になるのではないかと思います。

私から見ると若干まだ混乱があるように思うのですが、その原因としては、後藤委員の報告で申しますと、不招請勧誘という話があって、一方で困惑概念の拡張だとか、あるいは状況の濫用を、もう一度比較法なども参考にして整理をしないと、今後、具体的に条文にするときには問題になるのではないかという感想を持ちました。

方向性としてそれほど反対しているわけではなくて、基本的には賛成しているのですが、今後条文にしていくという議論の場ですので、要件についてはもう一度整理しないといけないのではないかという感想を持ちました。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

山本健司委員、何かお答えになることはあるでしょうか。

○山本(健)委員 貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。

まず、大澤委員から、概念の整理やすみ分けの問題について検討する必要があるのではないかという御意見を頂戴いたしました。今後の議論の一つの重要なテーマであるというふうに思っております。

その点に関しまして、レジュメの9ページの「不招請勧誘・再勧誘」の新設のところの(一)(4)で日弁連試案の考え方を書かせていただいております。今回の日弁連試案の提案におきましては、不招請勧誘の効果は、保護法益が私生活の平穏にとどまる場合もあることを考えて、損害賠償と位置づけるのが相当と考えております。もっとも、具体的な事例においては、困惑惹起行為として困惑取消が認められる場合はあり得るだろうと考えております。程度問題として損害賠償請求権が認められる場合のほうがハードルが低い、困惑惹起行為とまで評価できる場合には取消権も行使できる、両方併存的に問題となり得る、というふうに整理しております。それにつきましては、今後御意見、御議論を頂戴いたしたいと思います。

また、阿部委員から、業法との関係に関する御意見を頂戴しました。これも今後議論の必要がある重要なテーマというふうに理解しております。前回の第1回会議でも御意見が出ていたかと思います。

ただ、消費者契約法改正に関して、「既に行政法規や刑罰法規がある。だから民事ルールまで要らない。」といった議論は、果たしてそうなのであろうかという疑問を持っております。例えば、具体例で申しますと、自動車の運転手が危険な運転をして通行人にけがをさせたという自動車事故の事案で考えてみた場合、加害者が業務上過失致死傷といった刑罰法規上の責任を問われ、かつ、運転免許の取消等といった行政法規上の責任を問われたからといって、加害者について被害者に対する民事上の損害賠償責任を負わなくてもよいといった議論にはならないと思います。被害者が被った損害の賠償や回復は民事法でこそ実現できるものであり、民事法のそのような役割や必要性については、刑罰法規、行政法規とは別に検討されるべき問題であるというふうに考えます。

したがって、民事法である消費者契約法の実体法改正の要否・内容については、行政法規、刑罰法規の存在とは区別して、消費者に発生した損害の有無、程度及び救済の要否、内容といった観点から独自に検討すべきものと考えます。

以上です。

○山本(敬)座長 どうぞ、阿部委員。

○阿部委員 あえて反論というわけではないのですけれども、やはり民事効と行政効のどちらが消費者救済、被害拡大防止に役立つのかというのはそれぞれ場面ごとに違うと思うわけであります。そういう意味では、現実に行政規制がきちんとしていれば被害が起こり得なかったもの、あるいは拡大が防止できるものというのは確実にありますし、それでも被害が起きた場合については、通常の損害賠償請求で十分足りる場合もあると思います。議論することについては何も否定はしませんけれども、あちこちからいろいろな規制があったほうがいいというような発想は、やはり経済活動を萎縮させることになりますので、私は反対であります。

○山本(敬)座長 後藤委員、どうぞ。

○後藤(巻)座長代理 先ほどの阿部委員と大澤委員の御意見は大変貴重なもので、どうもありがとうございました。

阿部委員の消費者契約法にどこまでのものを包み込むのかというお話は、非常に示唆的なお話だと思います。私もこの点が非常に気になっておりまして、私の報告で本日の問題をIとIIと分けたというのも、IIのほうは、今はないけれども包み込みたいということで御提案したということで、反面、包み込めるのかということも考えつつあるということなのです。それとの関係で、日弁連の試案で目的規定、1条のところに情報交渉力等の格差ということで「等」という言葉を入れています。自信はないのですけれども、現行の目的規定は、契約ということが念頭にあって、情報交渉力の構造的な格差ということを問題としているのではないかと思うのですが、例えば不招請勧誘で私生活の平穏を侵害するとか、あるいは、適合性原則違反の問題で損害賠償を考えるというような場合は、どちらかというと本来的な適用場面というのは不法行為の場面という感じがしまして、そういうものも取り込むために「等」という言葉を入れたのか、そもそもどういう意図で「等」という言葉が入っているのかということを御質問したいと思います。

特に、大澤委員が御指摘になった困惑の拡張という場合でいろいろな法益を考えていくと、交渉力というところにどこまでおさまるのかというのがよくわからない。困惑類型をどのような形で考えていくのかということについても、目的規定、あるいはどこまで包み込むかという阿部委員が一言でおっしゃったところにまさに帰着すると思うのですけれども、そういうようなことが重要ではないかと思います。そういう意味で、日弁連試案をおつくりになったときに、どういうことを包み込むために「等」という言葉を入れたのかという点について何かコメントをいただけたらありがたいと思います。

○山本(敬)座長 今の点について、山本健司委員、お願いします。

○山本(健)委員 御質問、御意見をいただきまして、ありがとうございます。

日弁連試案の1条で「等」という言葉を入れたのは、消費者基本法の第1条の目的において、「この法律は消費者と事業者との間の情報の質及び量、並びに交渉力等の格差にかんがみ、消費者の利益の擁護及び増進に関し、消費者の権利の尊重及び自立の支援、その他の基本理念を定め」云々という規定とされているものですから、その点、平仄を合わせて「等」を入れた、というのが改正提案の経緯でございます。

この字句を入れたことがほかの各論の提案に必ずしもリンクしているという位置づけではございません。各論のところはそれぞれで個別の問題として考えております。

○山本(敬)座長 それでは、その他の点は、いかがでしょうか。

沖野委員、どうぞ。

○沖野委員 御報告につきましては、いずれも基本的にはその方向で検討していくべきだと考えてはおるのですけれども、それら自体の検討はまた別の機会でのことだと思われますので置きまして、より総論的な部分でやりとりのあった点について付加的に申し上げたいと思います。

とりわけ山本委員と阿部委員との間でやりとりがなされました消費者法の役割、個別法との関係についてです。

言うまでもないことですけれども、個別法という場合に何をとらえていくのかという問題が1つはあるかと思います。今の議論の中では業法をとらえられているようです。業法について言いますと、実効的な監督権限を伴って詳細なものが置かれている分野もありますけれども、もちろんそういうものが全くないという分野もあるわけで、それが全て民法の一般則でいいのかという問題はあると思われます。また、例えば、ですけれども、保険業法などは、恐らく典型的にかなり詳細な行為規範とともに実効的な監督権限がセットになっているというものだと思われます。その見直しは段階的になされてきており、それらの議論の過程におきましてどのような規律を考えていくかという際に、それは業法としての性格、行政的な効果との対応ということから、ある部分はどうしても私法上の対応に委ねざるを得ないということで置いておかれた、それが前提となって議論がされたといったことが保険業法でさえあったと理解しております。

そいった際に、では、私法でという場合に民法の一般則でいいのか、それとも消費者契約という形でより一段具体化した形での規律が置けるのであれば、むしろその一段階を置くことに意義があると考えられます。どこまでの具体化なのかという問題はありますけれども、その存在の意義というのはあると思われます。まさに阿部委員が御指摘になりました消費者契約法の役割というものをどういうふうにとらえていくかという観点、それを個別法との関係で御指摘になった点ですけれども、なお消費者契約法の役割というのがあり得ると思われます。個々にはそれぞれの問題について検討すべきかと思いますけれども、一般論としてその点を申し上げたいと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

阿部委員。

○阿部委員 個別法というときには当然業法は入るわけでありますが、例えば景品表示法のような周辺関連法も入ってくると思います。やはり消費者契約法というのは消費者契約の一般法であるということであれば、個別法、業法とか周辺法で対応できないものがここに戻れば解決できるというような役割を果たすものかと思っています。そういう意味では、今の消費者契約法をさらに拡充するという、横に広げるという意味での拡充は十分あり得る議論かとは思います。一方で、やはり消費者契約法の上には民法というものがある。今回、民法改正はまだ固まっていませんけれども、年内か年明けには大体要綱仮案が要綱案にまでいくと思うのですが、そこではかなり広範な新しい事柄が盛り込まれると思います。ここで議論したようなものは既に民法の中で解決されているかもしれません。

法制審議会の民法部会の中で、経済界代表委員から個別の議論について、これはむしろ消費者契約法に置くべきだという発言をしております。これは全部私どもが確認しておりますので、それをここで議論される分には全く問題ない、むしろ歓迎いたしますけれども、逆に民法の中である程度解決できている問題もあるはずでありますので、そこはぜひ同じように確認をお願いしたいと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、丸山委員。

○丸山委員 両委員からプレゼンをいただきました事項に関連して思ったところから発言させていただきたいと思います。

まず、両委員の御提案の中で、例えば4条の勧誘の要件というのを外したらいいのではないかといった御意見であるとか、不実告知の場面に関しましては、重要事項の1号・2号の限定というのを外すような形で重要事項を緩和する方向で改正してはどうかとか、あとは困惑に関しましても外縁をどこまでにするかは議論があるとしても、不退去・退去妨害だけでは狭過ぎるのではないか、こういった御指摘というのは両委員でも共通していたと思いますし、これまでの検討とか提案の中でもある程度共通して繰り返し指摘されていた事項でございます。こういった一定程度のコンセンサスがあるような事項については、より具体的に、どういった具体例が今までは取消しできるかできないか議論があったけれども、改正することによってこの範囲では取消しできることになるといったことを確認し、その場合、実務の観点から、どういった影響や問題が出てきそうなのかご指摘をいただくという、少し具体的な議論をできるような形にシフトしていったらどうかと思いました。

それに対して、例えばですけれども、4条2項や情報提供義務違反に関してどのように改正をしたらいいのかという点については、非常にさまざまな提案がこれまでもなされており、要件の立て方についても法的効果についても、議論が収れんしておりません。私の認識では、現行の消費者契約法の4条1項・2項というのは、事業者側の行為としては不実告知とか断定的判断の提供のような積極的な行為を問題とする着眼点、不利益事実の不告知という重要な情報を提供していない消極的な行為を問題とする着眼点、そして、消費者側の状況としては、事実の誤認という着眼点、判断の誤認という着眼点があり、それらを組み合わせる形で今の条文は利益調整を試みている。ただし、現行条文では利益調整において不十分な部分があって、いろいろと改正について議論が積み重ねられてきた、このように認識しているのですけれども、全体的にみた場合に、基本的に何を着眼点として契約締結過程の規律というのを再構築していくのか、今までの着眼点というのが変わっていくのかといったことも、意識しながら要件の立て方を考えていってはどうでしょうか。特に4条2項情報提供義務に関しては、まだ意見が収れんしていませんので、こういった議論を緻密にやっていってはいかがかでしょうか。

以上です。

○山本(敬)座長 御意見をいただき、どうもありがとうございました。

それでは、古閑委員、お願いします。

○古閑委員 本日御発表いただいた資料の中で、相談事例であるとかファクトに基づいて書かれている部分もあると思います。それ以外、ファクトが本当にあるのかどうかというところをよく確認していったほうがいいのかというふうに思っておりまして、1つ御質問させていただきたいのですけれども、例えば後藤委員から御発表いただきました資料の資料4、13ページですけれども、(2)で「インターネット取引は非対面取引であることから、広告が消費者の意思形成に与える影響は極めて大きい」というふうに書かれていると思います。これは、注釈を見ればもしかしたら何かデータがあるのかもしれないですけれども、私が認識していたところと異なっておりまして、弊社のほうでは、毎年、ビデオリサーチインタラクティブさんが出されているリサーチ結果を購入しておりまして、それを今、手元に見ておるのですけれども、内容は基本的には社外に出してはいけないものになっているので、ここで個別具体的にお示しするわけにはいかないのですけれども、こういったデータを見ていると、必ずしもインターネット広告を他の広告より注目しているという数字が大きくないであるとか、あるいは、何かを購入するに当たって、どういった情報をもとに購入したかといういろいろな項目がある中で、最後に不明という項目があるのですけれども、不明が圧倒的に多いというデータがあります。

なので、私が持っているデータと照らし合わせると、必ずしもここはここいうふうに言えるのかというのは、ファクトとしてはどうなのかというのを、この注の29に詳しく書かれているのかもしれないですけれども、この点を質問させていただきたい。先ほど柳川委員のほうからもデータは重要だというお話があったと思いますけれども、この辺が実際、相談事例みたいにファクトがあるものと、ファクトはないのだけれども書かれているものがどの程度混在しているのかというのを知りたいというふうに思って質問させていただきたいと思いました。

それから、2点目は、今まさに丸山委員もおっしゃっていたところですけれども、やはりファクトがあって、それを具体的にどう落としていくのかというのをそろそろ整理したほうがいいのかなというふうに思っております。ファクトがあるにはあるのですけれども、では、そのファクトを何とか救済するために仮に改正するとしても、それがそのファクトをカバーするのに必要十分なのか、あるいは、結構広目にとって改正しようとしている部分がないのかというところはよく見ていったほうがいいと思いますので、そういう意味では、私も先ほどの丸山委員の意見に賛成で、具体的なものを出して議論をしていったほうがいいのかなというふうに思っております。

以上です。

○山本(敬)座長 後藤委員、よろしいでしょうか。

○後藤(巻)座長代理 大変貴重な御指摘ありがとうございました。私もここのところは、申しわけないのですが、データが余りなくて、引用させていただいた文献等によるものです。さきの運用状況に関する検討会でも、委員の方からインターネット広告に関して、私がここに書いたようなことではないという御指摘も出されておりまして、そういうこともありますので、今日はたたき台として、手元で入手容易な文献のみに基づいて報告申し上げたという程度にお考えいただいて、私自身も、古閑委員が御指摘になったようにデータに基づく検討が大事だと思っていますので、ぜひこの機会に、それを踏まえた議論をしたいと考えています。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

前回、私自身が申し上げたとおりなのですが、このようなデータは、立証責任がどちらかというようなことではなく、双方の側から提案を裏づけるデータ、あるいは提案が必ずしも妥当ではないことを示すデータをお出しいただいて議論するのが生産的ではないかと思いますので、よろしく御協力のほどお願いしたいと思います。

では、松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 先ほど大澤委員が指摘された点は、大変重要だと思っています。後藤委員の報告でいきますと、「困惑類型とその周辺」ということが、まず9ページ、10ページ、11ページで出てきて、それと別に13ページから「消費者の弱みにつけ込む不当な勧誘の対応」ということで、かなりいろいろなタイプのものがここに入っています。状況の濫用は、むしろ困惑類型の拡張ではないかという気もするのですが、消費者と事業者の間の取引におけるどういう点を根拠にして一定の救済法理をつくっていくのかというあたりの整理が、まだ不十分ではないかという気がします。

誤認のほうは比較的わかりやすくて、情報の質と量の格差という目的規定のところから説明できるので、したがって、実際に議論がある程度蓄積されていると思うのです。困惑のほうは交渉力の格差という目的規定のところから説明されることが多いかと思いますが、困惑というのは、恐らく交渉力格差にのみ限定されないで生ずるでしょう。さらに、情報とか交渉力とは別の消費者特有の特性、典型的には行動経済学で言われているような、いくら情報を提供されても誤った判断をするということだとか、その能力が客観的に衰えていくということだとか、あるいは肉体を持つ生きた人間だということだとか、そういった点を考慮していくと、また別の救済法理が必要になってくるかもしれません。そのあたり、今回の消費者契約法の改正の検討において、どういう消費者の特性に着目して、どういうジャンルの救済規定を置いていくのかという基本的な議論をきちんと行っていただきたいと思います。

その点で、後藤委員の紹介されたEUの不公正な取引方法の指令というのは2つのタイプに大きく分類しているわけですが、そこでいう攻撃的な方法というのが、日本でいう困惑とどこが同じでどこが違うのかあたりも含めてうまく問題類型を拾っていっていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御指摘いただく点は、あるでしょうか。

○増田委員 ちょっと話が戻るのですけれども、インターネットに関することですが、インターネット広告を見て違う場面で取引を行うというケースが単純な広告ということかもしれませんけれども、そのインターネット広告を見て、そこで取引を行うとなると、その広告の情報が全てであって、ある意味、店舗契約に近いものではないかと考えますので、単純な広告ということではないと考えます。

そういうふうに考えますと、現状の消費者トラブルの順位の中でインターネット取引に関する相談はトップに位置しています。非常にたくさんの御相談が寄せられているという状況から、雑駁なデータということになりますけれども、大きな根拠ではないかというふうに思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、古閑委員。

○古閑委員 進め方について念のため確認をさせていただきたいのですけれども、今、個別論点にも入りつつありますが、それは今後詳しくまた議論する場があるのか、あるいは、ここでやっていかないといけないのかという流れについてお伺いしたくて、もし今、それぞれ出ているものについてこの場で何か御回答したほうがいいのであればというところはあるのですけれども、多分時間の関係もあると思いますが、進め方について質問させてください。

○山本(敬)座長 それでは、事務局のほうからお願いします。

○増田参事官補佐 本日さまざまな御意見が出ておりますが、意見について本日の会議で全て出し尽くさなければならないという趣旨ではございませんで、今いろいろな御意見が出て、例えば4条2項とか情報提供義務については御議論が詰まっていないというような御指摘もありましたので、そういったところで今後議論を重ねていく中で、従前出ていた御意見にも立ち返ってさらに御意見を出していただくということはありうるものと考えております。

また、3月頃以降にはより具体的な御議論に入っていきますので、基本的には2月ごろまでの間にさまざまな御意見が出たものを踏まえて後半に入っていくということですので、毎回毎回で区切って出し尽くすということではございません。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

では、沖野委員。

○沖野委員 今の点なのですけれども、限られた時間ということがもともと問題としてあります。その中で、この後、幾つかのヒアリングやプレゼンテーション、ある程度の取りまとめ、そのブラッシュアップといった形で検討を進めていくものと理解しています。個々の問題についてはまた改めて取り上げる機会があると思うのですけれども、そのときの視点や、そのためのインプットというのは早目にいただけたほうが、ヒアリングの項目決めにおいても、あるいはプレゼンテーションに当たっても、それぞれが実効的なものになるのではないかと思います。

他方で会議の時間は限られておりますので、そうだとしますと、今回、先ほどのファクトについての問題ですとか、インターネット広告が与える影響についての御指摘というのは大変興味深く拝聴したのですけれども、それ以外にも既にこの時点でお気づきの点があるということであれば、次の段階での各種の検討に盛り込めるように早目に共通理解にしたほうがいいのではないかと思います。そうだとしますと、会議の時間自体が限られておりますので、そこで全てを御指摘いただくというのは難しいのかもしれませんから、支障のない範囲でこういった点を考えるべきだというのを別途それぞれの意見書とまでいうようなものではないのですけれども、補足的な情報提供というのを積極的に行っていくという組み合わせが必要ではないかと思います。

○山本(敬)座長 どうぞ、阿部委員。

○阿部委員 進め方の効率化という意味では、まず、民法改正との関係をしきりに私から申し上げておりますが、この点についてどう考えているか説明させていただければと思います。委員からのプレゼンの中の早い段階でといっても、民法改正が決まらないとできないので、民法改正が固まった後にでもぜひ民法との改正で消費者契約法をどうすべきかという私どもの考え方を述べさせてください。

それから、本件については日弁連との対決はいずれ避けられないので、今日の山本委員のプレゼンに対する反論は文書で出させてください。逐一反論を申し上げたいということもありますので、かなり大部なものになるかと思いますし、説明の時間をいただくのも恐縮なので、文書で意見を出させてください。

○山本(敬)座長 その点は、事務局のほうではいかがですか。

○増田参事官補佐 文書で出していただいて、ポイントを御説明いただくような機会を設けるという形で進行させていただければと思います。

○山本(敬)座長 文書のみではやりとりしないという建前になっておりますので、それを踏まえてそのような機会を設けさせていただければと思います。

古閑委員。

○古閑委員 今、沖野委員からお話がありましたとおり、なるべく効率的にやるべきだと思っております。何かについて回答したり反論をする際に、なるべくデータをお示しして御説明したほうがいいかというふうに思っておりまして、今、ちょっと議論になりかけたインターネット広告のところにつきましても、データをとっているものがあったのですけれども、今日はそこまでの議論に及ぶと思っていなかったのでお持ちできていないのでというようなところもあります。なるべくその資料に対してその場で議論していくというほうがもちろんいいと思いますので、そうであれば、資料をなるべく会合の早いタイミングでいただけたほうが、データをそろえるとかそういった準備もできますので、ぜひそういう進め方で次回以降お願いできればと思います。

○山本(敬)座長 事務局のほうはいかがですか。

○増田参事官補佐 日程の関係とも関連してくるかと思いますけれども、今後の日程を具体的になるべく早く決めた上で、資料の送付についても計画的に行って、検討いただける時間を確保していきたいというふうには考えております。

○山本(敬)座長 委員のプレゼンテーションに関しては、各委員の御協力もお願いしなければなりませんので、その点も含めてよろしくお願いしたいと思います。

その他、この段階でご指摘いただくことはあるでしょうか。

石戸谷委員長代理。

○消費者委員会石戸谷委員長代理 後藤代理のほうから出していただいたI類型、II類型というもので、先ほど松本オブザーバーのほうから、その両者の関係をというお話が出ましたけれども、これは資料3の別紙のほうに運用状況の検討会のほうで論点として挙げたものを整理したものだと思うのですが、そこの不当勧誘のところのその他類型というところに一塊あるわけですけれども、ここのところは運用状況検討会のほうでは詰めるところまでいっていなかったけれども、一山あるので、ここをどういう具合にというのは次の段階ということになったかと思います。

そこを踏まえて、後藤代理のほうからI類型、意思表示の瑕疵型規制の修正に加えて、II類型として類型が挙げられた、整理していただいた行為態様重視型規制へのシフトという、ここをまとめて出していただいたというふうに考えております。それは今回出てきたので、I型とII型の間の調整というのはまだちゃんとついているわけではなくて、これからまさに議論していくところだと思っていますので、大枠としては山本委員のほうの提案の中にもいろいろ一般規定に基づく損害賠償とかの類型が入ってきますけれども、こういう塊というのはぜひ入れていただきたい。

前回も申し上げましたとおり、実務的には取引的な不法行為に基づく損害賠償で構成せざるを得ないのが非常に多くて、そこの類型の中に消費者契約法のほうがきちんと入ってこないというところが、今回まさに議論していただくところだと思いますので、大枠としてはそういう方向でぜひ進めていただきたい。各論的な議論は、各論の検討でやるところがあると思いますので、そこで申し上げたいと思います。

○山本(敬)座長 松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 理解できなかったことが今の説明でちょっとわかりました。そもそもI類型とされているところの「意思表示の瑕疵型」は、相手方の行為によって引き起こされた意思表示を瑕疵ある意思表示と位置づけて取り消せるというだけの話だから、まさにI類型と言われているものは「行為対応重視型」そのものだと思うのですが、そうではないという整理をされているからこういう分類になっているのでしょう。日本の伝統的民法学における錯誤無効の考え方はまさにそうであって、相手方の働きかけいかんを問わず、一方的に表意者が錯誤に陥れば意思表示は無効だということであり、今回の債権法改正では取り消せるということになります。錯誤ではなく、詐欺の拡張・強迫の拡張として誤認・困惑が消費者契約法に取り入れられた面が大きいわけだから、これらはもともと相手方の行為との関係で消費者を救済しようということのはずだったと思うのです。そうすると、行為態様重視型規制へのシフトというのは、I型も含めて全体を組み直しましょうということなら大変よくわかるのですが、そうでない整理はおかしいのではないかという感じがいたしております。もっともこれは消費者庁の検討会の議論をきちんとフォローしていない外部からの意見です。

もう一度先ほどの発言に戻りますと、消費者のどのような弱い立場を考慮して、民法の一般的なルールとは別に救済するのかというところが一番重要になってくるわけです。そういう意味で、1条の目的規定の文言の見直しの話とこの救済類型の拡張の話は連動しているのではないかと思います。山本健二委員は日弁連案の目的規定中の「等」の内容の説明については必ずしもはっきりされなかったけれども、まさに「等」が一番重要であって、「等」を具体的に展開していくことによって、新たな類型としてどういうものを入れていくのがいいかという答えが出てくるのではないかという気がしております。

○山本(敬)座長 今の点は、さらに今後議論をしていかなければならないポイントだろうと思いますが、私自身が理解した限りでは、行為態様重視型というのは、意思表示に瑕疵があるかどうか、例えば誤認等があるかどうかを問うことなく、一定の効果を認めるというタイプのものであれば、区別がされているような気がしますけれども、そこが本当に区別されているかどうかという御指摘ではないかと思います。この点は、今後また議論をさせていただければと思います。

山本健司委員。

○山本(健)委員 先ほど、阿部委員から対決というお言葉を頂戴いたしました。発表時間が短かった関係で意を尽くせていないところがありますので、簡単に補足してお話をさせていただきたいと思います。

消費者契約トラブルというものは、消費者、事業者の双方にとって不幸な事態であるというふうに基本的に認識しております。消費者にとっては、不本意な契約への支出・拘束を余儀なくされるという不利益がございますし、事業者側にとっても、本来ならば消費者に支持されない劣悪な販売方法や契約条件しか提供していない事業者に健全な事業者が売り上げを奪われるという社会正義に反する事態を招来していると思います。

内閣府の平成20年の国民生活白書によれば、消費者被害による我が国の経済的損失額は契約金額ベースの推定で最大3兆4,000億円に上ると発表されております。この規模のお金が劣悪な事業者から健全な事業者に流れれば、それ自体、社会にとって非常に有益なことであろうと思っております。正直な事業者が馬鹿を見るような社会正義に反する状況は許してはならないと思います。健全な消費者取引市場の実現は、消費者、事業者の双方にとってメリットがあると思っております。基本的にこのような観点から提言をしているつもりでございます。

今般の日弁連試案の具体的な内容につきましては、実際に我々が具体的な被害救済の現場におります関係で、具体的な消費者被害を救済するために必要な法制度としてはこういうものが望ましいというスタンスで意見を述べさせていただいております。

その具体的な要件について、もし仮に「健全な事業者にまで悪影響を及ぼすほど要件立てが広過ぎる」とか、「ピンポイントの弊害除去の要件になっていない」ということであれば、それは当然修正を検討すべきであろうと思います。具体的な要件に関して対案を頂戴すれば、真摯に検討させていただきたいと思っております。消費者被害という弊害を除去でき、かつ、健全な事業活動に悪影響を及ぼさない、そういう法制度が望ましい法制度であろうと、当方も思っております。その点、補足させていただきたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 どうぞ、阿部委員。

○阿部委員 7月に具体的な立法改正提案をされまして、すぐに拝見したわけでありますが、全部に反対というわけではありません。理解できなくもないもの、中身はわかるけれども消費者契約法でなくてもいいだろうというもの、立法事実の認識からして違うのではないかと思うものなどに三分されると考えております。そういった点を中心にぜひ意見を述べさせていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 そろそろ時間が来ていますが、この点については、もちろん、今日で終わりというものではなく、これから議論していくべきことです。そして、丸山委員の御指摘だったかと思いますけれども、いただいているプレゼンテーションや議論の中でも、賛成するかどうかは別として、案としてはほぼ収れんを見そうなものと、必ずしもそうでないものがあります。後者についてもさらにいろいろな程度がありまして、問題としては明確になっているものから、異論の余地のあるものまでさまざまなグラデーションがあるということではないかと思います。

これからプレゼンテーションと、さらにヒアリングをお願いするにしても、そのあたりの整理をして、特に限られた時間の中で重点を置くべき事柄を選別してプレゼンテーションなり、さらにヒアリングなりをしていただくというのが、なかなか難しいのですけれども、そのような方向を目指すのが適当ではないかという気がします。

その意味では、そういった整理をこれからしばらくの間、事務局のほうでしていただいて、今後の進め方を考えていただくということをまずはお願いせざるを得ないかと思います。

その際に、冒頭の事務局の説明にもありましたけれども、例えば情報提供義務だとか、締結過程の規制、困惑類型の拡張を含めたもの、あるいは不当条項規制など、誰もがすぐこれらが問題だと思うものがあるわけですが、それと同時に、阿部委員が御指摘されていた消費者契約法の位置づけ、特に、一方で民法、他方でその他の個別法との関係については、一度、問題点を整理して議論する場があってもよいのではないかという気がします。それも早い段階のほうがよいかもしれません。

民法改正がいつどのような形ではっきりしたものになるかということはまだ予断を許さないところがありますけれども、それを見据えてそのような議論をする場があってもよいのではないか、場合によってはプレゼンをお願いするということがあってもよいのではないかという気もします。

このような形で今後進めるということでよろしいでしょうか。事務局のほうも御準備を進めていただく上で参考にしていただければと思いますが、よろしいでしょうか。

○増田参事官補佐 今、座長にまとめていただいた内容でしっかり準備して、今後進めていきたいと思います。

○山本(敬)座長 まだほかに意見を頂戴しなければいけないところではありますが、そろそろ時間が参りましたので、意見交換自体はこのあたりとさせていただければと思います。


≪5.閉会≫

○山本(敬)座長 最後に事務局から事務連絡をお願いしたいと思います。

○金児企画官 本日も熱心な御議論をどうもありがとうございました。

今、お話があったとおり、今後の検討の進め方についてもいろいろ御意見を頂戴いたしましたけれども、事務局のほうでさらに検討して、委員の皆様に適宜御相談させていただきたいというふうに考えております。

次回のこの会議の開催につきましては、できるだけ早く御案内させていただくようにしたいと思っております。

以上でございます。

○山本(敬)座長 大体いつぐらいというのもまだはっきりしないということでしょうか。

○金児企画官 ちょっと確認して、できるだけ早く御案内いたします。

○山本(敬)座長 わかりました。民法改正と並行してという少し難しい時期でもありますので、また調整をよろしくお願いしたいと思います。

それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

以上