消費者行政における新たな官民連携の在り方ワーキング・グループ(第2回) 議事録

日時

2015年6月2日(火)15:30~17:00

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
山本座長、河上委員長、唯根委員
【参考人】
サステナビリティ消費者会議 代表 古谷 由紀子 氏
【事務局】
黒木事務局長、金児企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 有識者ヒアリング
    サステナビリティ消費者会議 代表 古谷由紀子氏
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○金児企画官 本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから「消費者行政における新たな官民連携の在り方ワーキング・グループ」第2回会合を開催します。

本日は、所用により岩田座長代理が御欠席との連絡をいただいております。

配付資料でございますけれども、資料1-1から1-4までございます。不足がありましたら事務局へお申しつけください。

それでは、山本座長に議事進行をお願いいたします。


≪2.有識者ヒアリング≫

○山本座長 それでは、本日の議題に入らせていただきます。

本日は、サステナビリティ消費者会議の古谷代表にお越しいただいております。古谷様は、NPO、NGO、事業者やさまざまなステークホルダーの協働によって既に行われている持続可能な社会に向けた取り組みをさらに進めるための消費者組織としてサステナビリティ消費者会議を設立され、このあたりの経緯は、きょう、まさにお話をいただくテーマだと思いますけれども、事業者の消費者志向経営やCSRの取り組みを消費者の視点で評価することなどによって促進し、また、消費者と事業者との協働等により従来の消費者団体の枠にとらわれない形で消費者の課題を解決するために活躍をされております。

本日は、そういった御活躍の御経験をもとに事業者の自主的取り組みに関する消費者団体などによる評価、連携と協働、行政による促進策についてお話をいただくことをお願いしております。

それでは、古谷代表から御説明をお願いいたします。20分程度というふうにお願いをしているかと思います。よろしくお願いします。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 古谷です。よろしくお願いいたします。

本日のテーマに沿ってお話をさせていただきますけれども、必ずしも全部私どものサステナビリティ消費者会議が実施したものではなくて、私が関与して、あるいは参画して取り組んだものも含めて紹介させていただき、皆様の少しでもヒントになればということで整理をしたものです。

実は、整理に当たってどういう切り口にするかを悩んだのでが、一応4つに分け、まず、消費者志向経営というところを1番目に挙げました。次に、3ページ目にありますが、CSRという観点で挙げております。3番目には、持続可能な社会という文脈ではCSRとも関連はあるのですけれども、それにとらわれないということで3番目に「マルチステークホルダーによる社会課題の解決への取組み」としております。4番目もこれまでの内容に関係しますが、必ずしもその中に含まれるとは言えない部分もありますので、別の項目として4番目に取り上げています。

今、お話ししましたように相互に関連しているので、説明の途中で他のところを関連づけてお話しさせていただくことになるかと思います。

最初に戻っていただきまして、1番目に消費者志向経営の促進についてということで、消費者団体や消費者問題の専門家が事業者の取り組みを評価・参画・連携という形で行っているものが非常にたくさんあり、私自身もそこにかなりかかわっているので、事例として幾つか取り上げたいと思います。

(1)に事例ということで紹介させていただきます。

まず、今、経済産業省が製品安全対策優良企業表彰制度というのに取り組んでいらっしゃいます。実は、これは最初に製品安全の仕組み自体を評価するに当たってどんな評価基準がいいのかというところで、消費者団体や消費者問題の専門家が基準づくりに参画したという経緯がございます。その後も、現在も含めて製品安全の観点で企業表彰をしていますが、消費者団体あるいは消費者問題の専門家が審査員として製品安全の専門家とともに実際に審査を行っており、消費者問題の専門家や消費者団体が参画している、一つのかなりいい事例ではないかと思います。

その関連で参考として挙げたものが、これも皆さん十分御存じの事例ではありますが、過去、経済産業省で実施した消費者志向優良企業表彰制度です。1990年度から2005年度まで行われた、かなり大々的に行った事業ですが、現在は行われておりません。そういう意味で幾つか課題があるだろうと思っています。

2番目なのですが、これは唯根さんと私も所属している日本消費生活アドバイザ・コンサルタント・相談員協会(NACS)が過去に実施した「消費者が選ぶ企業ブランドベストテン」というものです。2004年度から6年間実施したのですけれども、現在は行われておりません。これも課題があったということで行われていないということです。

実は、このユニークなところは、評価基準として、企業倫理、消費者重視、情報開示、商品・サービスの品質、環境対策、社会貢献の6つを設けているところです。従来、消費者志向経営というと、どちらかというと対応であるとか品質であるとかが中心だったのをもう少しCSR的な観点も含めた形での評価をしたということです。この「消費者が選ぶ」というふうなネーミングはしていますが、実は純然たる消費者ではなくて、会員である消費生活アドバイザーや消費生活コンサルタントが投票して選ぶという形でベストテンを公表していた事例です。

ここには書かれていませんが、毎年ベストテンで選んだものに関しては消費者志向NACS会議という、やはりNACSのイベントで、実際にその企業さんに御発表いただくという形で社会に公表する形で行っておりました。

次に3番目なのですが、どちらかというと公にやっているというよりも事業者が特定のテーマに基づいて行っている事例になります。基本的には事業者が消費者問題の専門家であるとか消費者団体に依頼して、その内容の適切性だとか妥当性を評価するというものです。対象としては取扱説明書であったり、広告であったり、表示だったり、あるいは高齢者対応という昨今の高齢者の問題に等に関して、例えば事業者がパンフレットをつくるとか対応の参考にするということで消費者問題の専門家などの適切性とか妥当性の評価を依頼してきたという形でかかわっています。

私は、最近多いと感じるのは広告や表示という問題にチェックをしたりするものです。あるいは高齢者対応も多くなっていますが、内容としては細かいことというよりも、例えばこれからの高齢者対応のあり方みたいな形で広く消費者問題の専門家に聞くというケースではないかと思います。

2つ目の項目に書いているものは、やはり事業者の依頼に基づいて、倫理委員会や品質諮問委員会やコンプライアンス委員会、名前はいろいろですが、消費者志向経営あるいは不祥事が起きたときの原因究明の第三者委員会などに消費者問題の専門家が加わって、問題が何であったのかとか、解決はどうしたらいいのかというかかわる事例が昨今多くなっているのではないかと思います。不祥事発生の場合の第三者委員会は、どちらかというとテンポラリーなものなのですけれども、その前に挙げた倫理委員会や品質諮問委員会というのは、どちらかというと恒常的に1か月に1回、あるいは数か月に1回開くという消費者の視点の反映という形で参画・連携というのが行われていると思います。

また、違ったパターンですが、食品のリコールについて、今も多いですが、消費者の利益と社会・環境の持続可能性という観点からはかなり問題があるのではないかということで、以前、NACSの中の消費生活アドバイザーの有志が、私が代表として「食のリコールガイドライン」というのをつくった経緯があります。実はこれに関しては、消費者問題の専門家だけではなくて事業者が自主的に協力を申し出てくださいまして、例えば実際に企業ではこのようにやっているとか、基準はどうなっているかなどを情報提供いただいてつくった経緯があります。

というのは、消費者問題の専門家だけでつくってしまうと、実際に企業の実態に合わないものがつくられてしまい、実際の運用などにも課題があるのではないかという問題意識があり、事業者にこういうものをつくりたいと、講演とかセミナーとかで私が提案をする形で申し出たところ、まさに自主的に企業の方がそれならば協力したいということで協力をいただいたものです。

次の2ページなのですが、これはサステナビリティ消費者会議で現在行っている取り組みの中の一つです。まだこのサステナビリティ消費者会議はできて間がないのですが、2015年から、まさに今年から、企業が実際に消費者視点からいろいろな取り組みをしているものをホームページ上で公表してはどうかということで、先ほどお話しした消費者志向経営の評価が現在、十分ではない実態もあって、私どもがかかわった企業でこれはいい取り組みではないか、いろいろな事業者にも広めたいというようなことで行っているものです。事業者の評価というと、どちらかというとネガティブな評価が非常に多いわけで、そういうものも非常に大切ではあるのですが、やはりよい取り組みというのを評価することでよりよい取り組みが広がっていくという観点で私どもの組織の設立目標にも合ったというところで、そういったものの評価をどんどんしていきたいと思っています。

実はこの事例としては、*2で別紙になっていますが、資料1-3として提出しています。まだ1事例しか公表していないのですが、今、ほかの事例も作成中です。

これは見ていただくとわかるように、そごう・西武さんの取り組みということで、育児に関する身近な情報発信の例です。経緯を申し上げますと、たまたま私がそごう・西武さんのCSRのダイアログに参加したときに、デパートというのは場所を提供しており、若いお母さん方に情報発信しているということを伺いました。そのときに、その取り組みの中で、例えば今、子供の事故とかが非常に多くて消費者庁を含め消費者啓発をしているのだけれども、なかなかその情報が伝わらないので企業さんに協力いただけないかということでお願いしたところ、今やっている取り組みに併せて積極的にやりましょうということで、1か月もたたないうちに実施をしていただきました。ここの事例で挙げているのは千葉店や広島店ということで幾つか事例を挙げていますが、実はホームページなどで参考にしていただきたいのですが、これだけにとどまりません。全国、自分たちの工夫を加えながら行政とかの協力も得ながら実際にやっているというところを評価したいということで取り組み内容を簡単ですが紹介しました。そのなかに消費者庁がやっている取り組みもプラスアルファの情報として追加しました。

もとの本紙に戻っていただきたいのですが、2ページのマル4の2)です。「事業者の製品安全の取組みを監査・評価」については昨年実施したのです。これについて参考資料はありませんが、ある住宅メーカーの方が製品安全の仕組みをつくり、毎年取組みを自ら評価していますが、第三者として消費者側からの評価を得たいということで私どもの組織に御依頼がございましたので、私どもが評価をしました。単にいい、悪いだけではなくて、こういう観点でやったら、製品安全の取り組みがより進化するのではないかというようなアドバイスも含めて監査・評価をいたしました。

3)ですけれども、これは「消費者の事業者に対する適切な申し出の促進」ということで、昨年、コンプレインレターというのを策定いたしました。実はこの背景としては、消費者が不満とか苦情とか被害に遭ったときに、消費者がちゃんと事業者に申し出ているかというと、御存じのように十分申し出ていない実態がある、あるいは適切に申し出をしていないという実態もあることから、コンプレインレターというテンプレートをつくって消費者に適切な申し出を促してはどうかというようなことを考えましてコンプレインレターというのを策定いたしました。

これは資料がございまして、資料1-4であるのですが、消費者の行動を支援するコミュニケーションツール「コンプレインレター」ということで説明をつけまして、企業に声を届けることがどんな意義があるのかというところの説明をした上で、2ページにありますように、実際にそれは消費者にメリットがあるだけではなく、事業者にとってもメリットがあるのだというようなことの説明を加えています。3ページ目には見本として、どのように申し出ればいいのかということで、契約日や場所や商品名ということで注意事項も含めてつけました。

これはホームページ上で公表しているのですが、資料の裏のところにあるテンプレートはダウンロードして自分が会社宛てにどんな申し出なのかを書いてしまえば事業者に即申し出ができるというものになっています。

これについては、幾つかアメリカの事例やヨーロッパの事例というのも参考にしました。実は、アメリカでは消費者教育の題材としてコンプレインレターというのが載っております。アメリカの場合は、実際に事例でどんなふうに言えばいいかというお手紙例のような形になっていま。しかし、それも参考にしましたが、テンプレートという形で提供しています。

なお、このコンプレインレターを作成するに当たっては事業者に意見も聞いています。というのは、これは事業者に影響がありますし、事業者自身にも活用していただきたいということで数社聞いておりまして、どういう形にすると事業者にとっては使いやすいのか、ちゃんと申し出を受けたときに取り扱いをしやすいのかということも含めて、まさに連携をした上でつくったという経緯があります。

ちなみに、このコンプレインレターに関して、先日、ACAPの消費者月間で入選として表彰をいただきました。これはコンプレインレターに関して、論文として提出したものです。

本紙の2ページに戻っていただきまして、今申し上げましたに私どもの組織が行ったものを3点つけました。

また、意見としてここで書かせていただきましたが、消費者志向経営の促進については、事業者の消費者志向経営の全体の仕組みとして評価するということもとても大事だと思うのですが、私どもが企業の評価を、先ほどのそごう・西武さんの評価をしたように、特定の課題についての取り組み、例えば安全であるとか広告とか情報開示という形で評価していくことも有力な方法ではないかと思っています。

なぜかというと、仕組み全体というのはかなりハードルが高いということもありますし、個々の問題点を即いい事例ということで評価・公表することで、すぐ事業者の参考にもなるし、消費者がそれを見て評価していくことができるのではないかと思います。

意見の2つ目で、これは皆さん十分御存じのことですが、昨年6月に景表法が改正されて内部管理体制の構築という形でコンプライアンス経営という内容が盛り込まれていますが、このようなところでも事業者が自主的に取り組みを促進するにあたって、そこに消費者問題の専門家とかがかかわっていくという形でより消費者志向の表示を促進できるのではないかと思います。

3つ目の項目ですが、実はその前の取り組みが現在実施されていないといったところに関連してくるのですが、事業者の取り組みの参画・評価・連携に当たっては消費者側の課題というのもあります。消費者とか消費者問題の専門家、あるいは団体の意識や力量にもかかわります。例えば、ベストテンなんかはそうだったのですが、消費者問題の専門家あるいは団体は、どちらかというとネガティブ評価というのは得意なのですが、ポジティブ評価というのは余り得意ではないのです。良い面は冷静に考えていけばわかるはずなのですが評価しにくいというところもあって投票率がなかなか伸びなかったというようなこともあって事業としての継続が難しかったということもあります。

ほかには、当然、企業の経営とかを全然知らないで消費者側の一方的な要求を突きつけたときに事業者側が実現が難しいといったような実効性というところからもあり、実際の経営を知らないとなかなか評価できないというようなところもあります。消費者志向経営の評価において、消費者側の課題というのも大きいのではないかと思います。

次に(2)ですが、これは実際にどういうやり方として行政が支援できるかというところで、当然、基準づくりであったり、評価をする機会を提供するであったり、あるいは消費者団体が評価していることを支援するというようなやり方もあるのではないかということで、ここは検討をしていただければという形で参考につけさせていただきました。

3ページですが、事業者のCSR経営に関して、これも消費者側が参画する例が最近ふえています。事例としては、マル1としてステークホルダーダイアログ、ステークホルダーエンゲージメントの実施の例です。これは事業者がまさにCSRということでダイアログを開いたり、エンゲージメントをしようというところが非常にふえているのです。参考に消費者課題としてISO26000では、どういう課題が挙げられているかについて、7つを記載しました。事業者によってはISO26000にのっとった形でCSRを実践しているところも非常にふえていますので、これを踏まえることでより消費者志向経営とかCSRという観点で消費者視点の経営が促進されていくという可能性も非常にふえていると考えます。先ほど私どもの組織が消費者志向の評価している事例も、実はこれがきっかけになったという意味ではCSRの取組みが有効活用できるのではないかと思います。

マル2ですが、これも少しマル1と関連するのですが、企業がCSRに取り組むときにはCSRレポートを発行することが非常に多いわけですが、そこに第三者意見として参画するという形で、より消費者視点が反映されるような例も非常に増えていると思っています。

マル3としては、実はマル1、マル2のCSRの課題でもあるのですが、どちらかというと総論的なCSRというところで、まだまだ日本企業はそういったところが多いのですが、CSRの中の特定の課題、例えば先ほど言ったISO26000では安全というのが2番目にあります。あるいは7番目として教育とか意識向上があります。そういった特定のテーマでダイアログを開いたりする企業も増えつつあるということで、非常に企業のCSRが進展・進化しているといったようなところがあります。

そういう意味で「意見」のところに書きましたように、これを十分活用したほうがいいのではないかということです。なお、ここでは記載していませんが、東京証券取引所でコーポレートガバナンスコードを導入するということがあり、そこでは、ステークホルダーとの関係性も入れた形のコードになっておりますので、そういった観点も入れた形で消費者問題ということを解決していくのは有効な方策ではないかと思います。

(2)は方法として、先ほど述べたようなことを入れておりますので、これは省略いたします。

4ページを見ていただきまして、これは少し観点が違いますが、「マルチステークホルダーによる社会課題の解決への取組み」ということで、事例として2つ挙げております。

先ほど言ったISO26000を紹介させていただきましたが、これはマルチステークホルダーの参画によってつくられたものであるということを参考にしていただきたいという意味でつけました。

2番目ですが、*5で書いてありますが、社会的責任に関する円卓会議というので2009年に始まりまして、政府も事業者団体も消費者団体も対等な立場で持続可能な社会の問題を解決していこうという形で取り組んでおりまして、マル2のすぐ下にありますが、私自身は運営委員としてかかわっているのですが、例えばということで「人を育む基盤の整備のワーキング」では、文科省の消費者教育フェスタに協力したり、人材原則の策定などを行っています。あるいは、消費者庁関連で言うと、地方消費者グループフォーラムが昨年度5年目を迎えたということで、この円卓会議が協力して活性化するというような取り組みも行っています。

文書のなかで「意見」として述べていますが、実は消費者問題はマルチステークホルダーで解決をしなければいけない事例というのが非常にたくさんあるのではないかと私は感じています。例えばということで食品の例を挙げています。リスクコミュニケーションであったり、食品ロスの問題であったり、食品の異物混入の問題が現在非常に重要な問題として挙げられており、これらは事業者を規制する話でもなく、消費者教育だけでもなく、行政も事業者も消費者もかかわって問題解決しなければいけない問題だという意味で、このマルチステークホルダーによる社会課題の解決というのが非常に重要になると思っています。しかし、この取り組みがなかなか思うように進まないことで消費者問題の解決が進まないということにもなるのではないかと私自身は思っています。

(2)として、行政としては場の提供であるとか、消費者団体や市民組織というのがこういった取り組みをしておりますので、それを支援するということも考えられるだろうと思います。

5ページ、「その他」ということで、消費者教育と社会課題ということで別の切り口で挙げております。

「消費者教育」のところで、消費者団体が参画する事例というのも非常にふえていると思います。これは消費者志向経営として取り組んでいるところもありますし、CSRとして取り組んでいるところもあり、なかには消費者団体が参画している事例ということが非常に多くなっています。

文書での「意見」ですが、私自身は、消費者教育推進会議の委員でもありますので、消費者教育というのが非常に難しい問題があるなかで、進展していっているということは十分よくわかっているのですが、消費者教育が食育とか環境教育、金融教育とかいろいろな取り組みにかかわる中で、消費者庁がもう少し他の省庁との取り組みと連携・協働をしていくことはできないか。例えば、消費者庁が全部把握して全部主体的にやる必要はなくて、ほかの省庁がやっているところに協力するというやり方もあるのではないかと思っています。

最後になりますが、社会課題でのなかで、「持続可能な生産と消費」ということで、ISO26000では「持続可能な消費」という項目で挙げられておりますが、これは「意見」のところで書いているように、消費者庁でも、例えば消費者教育推進会議でもそうですが、持続可能な消費というのを非常に積極的に取り上げてやっているのですけれども、まだまだ省庁横断的な取り組みとか市民組織の連携が不十分なのではないかと思います。

その例として挙げたのは、今、環境省で持続可能な開発目標という形でSDGSの取り組みを行っているのをホームページ上でも拝見いたしました。これは、2015年9月の国連総会でアジェンダが採択される予定になっているのですが、消費者庁としては全く動いていないのではないかなと思っています。実はこれに対して、NPOとかNGOの方は非常に関心を持っておりまして、消費者の行動に大きな期待を寄せているのですが、省庁も含めて消費者団体もSDGSのことをほとんど知らないというような状況もあります。実際はNPO、NGOが積極的に取り組んでいるので、もう少し市民組織と連携とか省庁の連携とかをしないと国際的な動きにもついていけていないのではないか。また最終的には持続可能な消費というのは消費者問題にも大きくかかわってくるというような問題でもありますので、そういった連携協働の取り組みがされてもいいのではないかと思います。

時間をオーバーしてしまいましたが、以上です。

○山本座長 ありがとうございました。大変いろいろ有益なお話をいただきまして、いろいろ聞いてみたいことも多いのですけれども、これから意見交換に入りたいと思いますが、今の御説明を踏まえまして御質問あるいは御意見等がございましたら自由にここから時間をとって議論したいと思いますが、いかがでしょうか。

それでは、まず、単純な質問ですけれども、1ページの「消費者志向経営の促進について」という部分の事例の中で真ん中ほどに、経済産業省でかつて表彰制度を実施していたのが現在は行われていない。それから、これは唯根委員もかかわっておられると思いますけれども、NACSでかつてベストテンというのをやっていたけれども現在は行われていないということなのですけれども、これはどういったことがあって現在行われていないのかという経緯を少しお聞かせいただければと。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 経済産業省の部分については私の個人的な見解を述べるのはむずかしいですが、NACS取組みについては、私自身が広報を担当しているときに実施していたのでお話しすると、実際なぜそれが難しかったかというのは、先ほども言いましたように、会員自身がなかなかポジティブに評価するのが難しいという実態があって投票率が伸びなかったということです。投票率が伸びませんと、数少ない中でベストテンといいましても余り根拠がないということになりますので途中で断念せざるを得なかったのです。私の広報としての責任もあるかと思いますが、私自身の工夫としては、いきなり消費者志向の企業を挙げてくださいと言っても難しいだろうというところで6つの評価基準を掲げたのですが、この6つもなかなか難しかったということですね。もっと具体化する必要があったのかもしれないと思います。例えば企業倫理といっても確かに広いですね。企業倫理は消費者視点の問題ばかりではないということもありますし、消費者重視といっても対応だけではないでしょうということで、もう少し具体化が必要だったのかもしれないなということがあります。会員から、よい企業というのはなかなか思い浮かばない、悪い企業は浮かぶのだけれどもというような話を聞いて、会員が良い企業を評価することの難しさを感じました。先ほど問題点として消費者側の意識であるとか、そういったことも含めての解決策を立てないと単純に評価というだけではうまくいかないのかもしれないと思います。

○山本座長 いかがですか。

○唯根委員 何か身内の話なので、済みません。

私どものNACSでやった企業ブランドベストテンの費用とそれにかかわった、広報委員会が頑張ってくださったわけですけれども、全国の支部の方たちへの声かけも含めて何人ぐらいで取り組まれたか、今、官民連携のところでは経済的なところはどういう支援ができるか御意見の中にも入れていただいているのですけれども、この6年間やった、自分で言うのも、自腹でうちの会でやった予算規模とかかかわった人数とか、その辺をもし覚えていらしたら教えていただけますか。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 費用については正確な数字は持ってきていないのですけれども、その当時、4,000名弱ぐらいの会員がいて、郵送で評価して返信をいただくという形にしましたので、往復の郵便代と、もちろん返ってこないのは人数に入れないとしても、少なくとも行く人数としては会員数の郵便料金、そして当然、印刷費用もかかったと思います。基本的には事業者の協力を得て実施したのではなくNACSの費用で行ったものです。

関わった人数は、その当時、広報委員会がまさに数名、三、四名ぐらいの人数ですね。また返ってきたアンケートについては、1割ぐらいの人数ですが、広報委員の一人が分析をするという形で、それもほとんど自腹で数千円の日当ぐらいの料金で実施しました。費用はそれほどかけられなかったということになります。

○唯根委員 経済産業省の表彰制度については、この表彰制度自体は確かになくなったというか、それ以前から色々名称や何かを変更しながら随分長年の間、続いてきたように記憶しています。それは、NACSの設立がもともと通商産業省所管で消費生活アドバイザーと消費生活コンサルタントの有資格者制度を支援してくださる方法や関わり方として、こういう制度などに補助金対象の事業として、いろいろ工夫をして、団体として関与させていただくという経緯はあったと思うのですが、その辺はいかがですか。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 唯根さんの質問の趣旨に合っているかどうかわからないのですが、これ自体は日本産業協会が主催しているのでNACS自体はかかわっていないのですが、私自身がかかわったものとしては、経済産業省の受託事業としてNACSが消費者志向マネジメントシステムNACS基準を、これは私が代表でNACSが特別委員会を作って策定したものがあります。資料に消費者志向マネジメントシステムNACS基準について入れ忘れてしまい申しわけありません。これは、10年前、平成15年に経済産業省からの受託事業としてつくり、その後、実際に私どもが表彰した企業があります。福岡にある明太子の事業者のふくやさんという事業者さんを評価した事例があります。ただ、やはり消費者団体が事業者の評価をするということになりますと費用もかかるということで、なかなか広報も難しいというようなこともありまして、これがなかなか進まなかったという経緯もあります。経済産業省の消費者志向優良企業表彰制度に採用されるとよかったのでしょうが、それはないままになっています。

○山本座長 ほかにいかがでしょうか。お願いします。

○唯根委員 1点補足なのですが、先ほどベストテンで企業の協力とおっしゃられたのは、あれは賛助会員さんという意味ですか。それではなくて、個別に事業者さんから援助されたりしていたということではないですよね。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 NACSがやったブランドベストテンは全くないです。自腹でNACSの費用でやっているということです。

○山本座長 一番下に「食のリコールガイドライン」というところで、これは事業者の協力を得ながら策定したということなのですけれども、専門的な知識などを事業者から提供を受けたという趣旨なのでしょうか。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 専門的な知識も提供いただくと同時に、実際、企業の中でどのように安全対策をしているとか、リコールの基準を持っているかなど、実態ベースでの情報提供もいただきました。

○山本座長 お願いします。

○河上委員長 率然と考えてみると、消費者団体がある企業をとらまえて自分のところの評価基準でもってベストテンをつくりました。これは余りサステナブルではないような気がするのですけれども、例えば企業のほうはこういうことで選んでもらったということについてはどのような感触を持たれたのか、場合によって、選ばれなかった企業の間では不公平感のようなものとか評価に対するマイナスの意見みたいなものはなかったですか。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 選ばれた企業さんの感触では、非常に喜んでいただいたと思います。というのは、日本の場合、消費者団体から評価するというのが余りないですね。そういう意味でNACSがこういう6つの観点で評価したというようなことで、しかも評価基準がありますので、自分のところは環境にすごく力を入れていると思ったところが、実際のところは品質で評価されたとか、そのギャップも含めてわかるということで、選ばれた企業さんとしては非常に参考になるという御意見もいただきましたし、あと、選んだ企業さんはセミナーとかそういったところで発表もいただきましたので、企業さんとしてはさらに消費者に自社の取り組みを知っていただくということもありますので、非常に喜んでいただいたと思っております。

ネガティブな、選ばれなかったところの問題ですけれども、これは実は1件も聞いておりません。なぜそれがなかったのかまではわかりませんが、うちが選ばれなかったのはなぜかというようなことはなかったと思います。

○河上委員長 これは企業のほうから手を挙げてうちを評価してくれという形ではなくて。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 あくまでもNACSの会員がこういう観点ですばらしいと思う企業さんを挙げていくという形にしましたので、企業さんが評価してくれと言ったわけではなくて、私どもの会員がこの品質に関してはこの企業さんがすばらしいと評価して集計するという形になりました。

○河上委員長 先ほど挙げていただいた例の一つに、経産省のほうの優良企業表彰制度というのが1番にありますね。こういうふうに公の機関がそういう評価のフォーラムを用意して、そこに消費者がほかの人たちと一緒に参画して評価基準をつくりというやり方でやる場合と、消費者団体固有の制度をつくってこういう活動をしていくという場合があるようですが、後者のほうは2つとも現在行われなくなってしまっている。後者のほうと前者と比べて何か後者には問題があるということなのでしょうか。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 多分、実現可能性という意味では、公に行政がやるほうが実現可能性があると思います。ただ、なかなか全体の、例えば消費者志向優良企業表彰制度もそうですし、製品安全対策優良企業表彰もそうですけれども、一つ一つの事例を公のところが評価するというのは現実的にそれは難しいかもしれません。しかし、例えば全体の仕組みとしてできているかできていないかという観点は、むしろ公のほうがうまくいくのかなと思っています。消費者団体はもっとフレキシブルに、先ほど私が事例で紹介したように、個別の内容も自分たちが評価しようと思ったらできますし、全体の仕組みで評価しようと思ってもできるのではないか。でも、一方で消費者側の力量であるとか意識の問題であるとかという課題があって、なかなかそれができにくいというのはあるかと思います。

○河上委員長 それは単純にコストの問題だけではないのですね。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 コストもありますし、意識の問題もあります。

○河上委員長 そうですか。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 コストの問題も非常に大きいと思います。

○山本座長 役所が評価をするとなると、比較的定型化したもの、例えば、製品安全対策というふうに絞って評価をすると、定型まではいかないにしても、割と評価の基準がはっきりしていて、それについては役所でできるけれども、もう少し踏み込んだ問題になってくると、なかなか役所で評価をすることが難しくなる面があるということですかね。

ただ、逆にコストといいますかお金の面でいくと、役所のほうが継続的にそれを出してそういったものを続ける可能性は高いという面がある。そのあたりをうまく組み合わせて何か仕組みをつくっていくことができれば、サステナブルで、しかももう少しきめ細かい評価の仕組みができてくるのですかね。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 おっしゃるとおりだと思います。今はないのですけれども、やり方としては幾つもあるかなというふうに思っているのは、ここには書かなかったのですが、例えばSRI投資ということで、消費者団体と関係なく、いわゆる第三者機関が評価をするというやり方もあると思うのです。消費者団体以外の第三者機関が評価する例として、消費者志向という言葉は使っていないのですが、消費者視点での経営という評価項目もよく見ることがあります。私自身、そういったものを利用するというやり方もあるのかなというふうに思っておりますが、実はそこでの課題というのもありまして、そこでは一般的に消費者志向というと対応とか品質に割と絞られた形で評価をする傾向があります。実は消費者問題というのはそれだけではないですね。広告も表示も、それこそ安全対策としての品質問題も含めて広い範囲で消費者志向という基準づくりが外部の第三者は難しいのかもしれません。そういう意味では消費者団体とか消費者問題の専門家のほうがすぐれているだろうと思いますが、先ほど言ったコスト的な問題であるとか、そういったSRIとかに関連づけた仕組み自体を消費者団体は持っていないので難しいところではないかと思います。ただ、現実には、今ではSRI投資も注目されているので、そういった外部のところと連携して実施できる可能性もないわけではない。やり方はいろいろあるかとは思います。

○河上委員長 もう一つ、ちょっと失礼に当たるかもしれませんが、評価能力に限界がなかったのかどうか、あるいは、その評価能力を補充するために何か工夫をされているようなことがあるのかどうかというあたりはいかがですか。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 ここは難しいところなのですが、評価能力がないかというと、ないとは言い切れない。ただ、そういう視点に立っていないだけではないかとも私自身は思っています。例えば製品安全対策優良企業表彰制度の仕組みをつくるときにも、品質の専門家とか消費者団体の人たちとは意見の齟齬があるわけですね。そのときに基準づくりをしながら、どういう基準であるべきかという議論をする中で消費者側も事業者の実態を知り、客観的な基準としてはこういう基準が妥当ではないかというようなことで落ち着いた経緯もありますので、やはり視点であるとか基準をつくる際に何らかの専門家とかのサポートを受けながら実施していくことでよりよい基準というのはつくれていくだろうと思います。特にNACSもそうですけれども、消費者問題の専門家という立場になりますと、一方的に消費者側を非難するばかりではなくて、よい面を評価するという人たちもいないわけではないので、そういう人たちを活用するという形で動きを広めていくということは可能だと思います。ただ、結構努力が要るかもしれません。

○河上委員長 そういう意味では、むしろ事業者のほうが事業の実態との関係でここまでのことはできるとか、いろいろな安全対策にしたって限界と可能性について知識を持っている可能性がありますね。だとすると、消費者団体が単独で何かをしてしまうというよりも事業者と同じフォーラムの中でいろいろな評価作業をする、その過程で相互理解が進むというような感じがしないではないのです。こういう消費者団体が自力で評価とか審査というような形をとっていることの限界のほうを感じてしまうのですけれども、それでもやはりやるときは消費者団体が軸になってやったほうがいいだろうという御判断なのですか。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 実は、やり方は幾つもあるという話で、事業者と消費者団体が協力してやるというのは実行可能性が高いかと私自身も思いますけれども、でも、消費者団体が一方で判断をするという強みというのもあるので、事業者が全くかかわらないというよりも、そういった取り組みに賛同する事業者が何らかの形で支援をしていくという形、あるいは行政が支援をするというやり方でもあると思うのですが、そういう意味の支援という方法があるかもしれません。リコールガイドラインでも行ったように、こういう取り組みをしたいといったときに自分たちの直接利益にならなくても世の中をよくしたいというふうなCSRの観点で取り組まれている事業者は協力を申し出てくれるわけです。そういう意味では基準づくりに専門的な知見であるとか財政的な支援を含めて何らかの形で事業者が支援をしてくださる可能性というのは大いにあるのではないかとっていますので、その方法も一つ考えてもいいのかなと思っております。

○河上委員長 事業者にとってみると消費者のニーズがどこにあるかとか、消費者の視点がどこにあるかということを知るのが今ではマーケティングの基本なのだろうと思うのです。ですから、事業者にとってみると、むしろそういう機会をとらえて消費者志向の経営をやっていくことで消費者から指示される企業になりたいと考えているのではないか。今日ではむしろ大多数の企業はそちらのほうを向いているのではないかという気がしますので、その意味ではコストに見合うだけの活動だろうと私なんかは思ってしまうのです。ただ、事業者の思惑が入ると純粋性が失われるかのような感覚を持つとすれば、ちょっと残念な気もするのですが、その辺は、今、どちらを向いていこうとしているのでしょうね。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 事業者さんのかかわりが結構難しくて、中立性の問題であるとか、なかなか日本の消費者団体は厳しいものがあるので難しいというふうに思うのですが、例えば食のリコールガイドラインのときには、確かに協力はいただきましたけれども、あくまでも主体的につくるのは我々だというような観点で最初にスタンスもお話しした上で協力できるところはしますという形で事業者も協力をいただいたので、恐らくその趣旨が事業者にとっても今後の消費者の意識を変えていく、あるいは事業者の意識を変えていくに当たって必要だろうというふうに判断していただいたからこその協力だと思うのです。そういう意味では、目的やスタンスを明確にすることで事業者は幾らでも協力をしてくれるのではないかと私自身は思っております。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。

今の話と少しかかわるのですけれども、食のリコールガイドラインとか、あるいは次のサステナビリティ消費者会議の2ページのほうに製品安全の取り組みを監査・評価するということが出てきますけれども、かなり専門家の協力が必要な場面だと思うのですけれども、現在、専門家の方の協力を得るという面はうまくいっているのでしょうか、それとも何か課題があるのでしょうか。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 これは消費者団体の弱みだと思っているのですが、もう少し専門家の活用といいますか、専門家に呼びかけて協力をお願いするというやり方をしていく必要があるのだろうと思っています。実はこの資料には書かなかったのですけれども、幾つも消費者問題の専門家が事業者とか専門家に呼びかけてそういった組織をつくっているという傾向がございます。そういうようなことも考えると、今後の取り組みとしては専門家の協力を仰ぐという形のやり方が望ましいと思います。しかし、それが事業者と消費者だけの狭い範囲になってしまうとどうしても中立性の問題になってしまうので、先ほど言ったマルチステークホルダーという形でさまざまなステークホルダーが参画するというやり方が、実はやり方としてはふさわしいと思いますので、お薦めしたいと思っています。

○山本座長 専門家といいますか、専門性という観点が入ることによって、事業者と消費者という二項対立のようなものを少し克服できるというか、事業者といってもいろいろな方がいますし、その中でもいろいろな立場の人がいるわけですし、消費者といってもいろいろな立場があるわけなので、何かそのあたりがうまく媒介できるような仕組みをつくる上で、専門性というのが鍵になりそうな気もするのです。

それから、サステナビリティ消費者会議を開始されたということなのですけれども、一番大きなきっかけといいますか、目的とされたところは何だったのでしょうか。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 なかなかこれは、NACSにも所属しておりながらというところで実は言いにくいところではあります。先ほどの話に関係してくるのですが、消費者団体側が消費者をポジティブに評価するということがなかなかできにくいというところもありまして、それならばそういう思いを持った人たちが別組織をつくって評価するということをやって、問題点を提起していくという従来の消費者団体の活動とあわせて、違った観点での消費者団体なりをつくって活動していくというやり方をすることが有効ではないかと思った経緯があります。多様な消費者団体の活動ということですね。

あと、現実に企業の方々から消費者志向であるとかCSRという観点で意見を求められたりする場面が非常にふえてくるという状況がある中で、やはり事業者の取組みに沿っていくことで消費者の利益にもつながるということもございますので、組織をつくったということになります。

○山本座長 岩田委員がおられたら、ここでいろいろ発言をされたのではないかと思いますけれども、残念ながらきょうは御欠席ですので、何か唯根委員からございますか。

○唯根委員 きょうはサステナビリティ消費者会議の代表としてここに御出席で、古谷さんはNACSの常任顧問でいらして一緒に活動もさせていただいている部分もあるわけですけれども、NACS自体が消費者団体とはいいながらマルチステークホルダーの集合体であると、私なんかはきょうのお話を伺っても感じるのですが、古谷さんはどういうふうにお感じになっていますか。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 ほかの消費者団体と違った強みがNACSだと思いますので、事業者とともに消費者問題の専門家が一緒に問題解決していく機会はたくさんあるかと思っておりますので、私はNACS自体にも期待をしたいと思っております。

ただ、CSRとかという観点で言うと、まだまだ取り組みが十分でないところもありますけれども、専門家として皆さんいらっしゃいますので、実はCSRも含めていろいろな取り組みが、大きな団体であるがゆえの影響力ということも考えると、私自身はそういう活動を非常に期待しております。

○唯根委員 期待だけではなくて、また御一緒に活動していただけることはありませんか。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 理事ではないので、そこのところが難しいということで、仕組み自体にはなかなか入っていけないなというところです。

○唯根委員 やはりきょうのお話を伺っても、古谷さんはどちらかというと事業者ニーズに合わせた視点で、私のような行政に長くいた者は消費者ニーズの視点が強いと感じるからでしょうか。NACSには私達のような立場以外に、本当にフリーのどこにも所属されない、例えば主婦業で資格はお持ちになっているけれども、もっとも消費者目線でいる会員の方達が、いろいろな見方や視点で、一つの消費者問題の課題とか専門的な課題をいろいろ活動につなげていくという事でこの27年間ずっと試行錯誤してきている消費者団体だと思います。立場や視線の異なる会員達が同じ課題を追い続けながら、消費者団体としてどこに向かって行くのかを、いつも理事も会員さんも悩みながら活動しているところもあると思うのですが、河上先生がおっしゃったように、私たち消費者団体が何処にスタンスを持っているかで、消費者団体としてどういうふうに評価されるかというのは随分変わるのかなと、きょうのお話を伺っていても感じて、誰にどのように消費者団体を支援していただくか、どこから支援していただくのがいいのか、ここのところずっと色々な方々にヒアリングさせていただいている中で、悩みどころだと感じました。古谷さんは、事業者の方と協働で活動するというか、こういう形で動くやり方と、行政や第三者機関などからの支援を受けるやり方との違いをどうお感じになりますか。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 感想でいいですか。ちょっと一般論になりますけれども、日本で消費者団体を行政が支援するというのは非常に難しいなというふうに正直感じています。ただ、諸外国を見れば、行政が消費者団体を財政的にも支援しているという例もあるので、できなくはないだろうなと思います。ただ、現実に行政が何か支援していくということを考えたときの基準というのは難しいのだろうと思います。というのは、日本は消費者団体が非常にたくさんあるので全てに支援するわけにはいかないので、恐らく団体支援というよりも活動支援になるのかと思っております。例えば消費者志向といった形での取り組みの支援であるとかという個別の支援は可能ではないかと思っております。

当然、諸外国ということで言えば、消費者団体が財政的にも人の問題も含めてかなり力を持てば行政の支援もなくやれるところもいっぱいあるわけで、ただ、現実には日本ではそれが先ほど資金的な面で難しいとお話ししたように難しい。これは当然、行政の課題というよりも消費者団体自身の課題だと思いますけれども、そういった現状にある中では先ほど言った個別の活動の支援というのが、別にこれはお金の支援ばかりではなくて場の提供という支援もあるのだろうと思います。

先ほどマルチステークホルダーでの課題解決の取り組みというのは、まさに場の提供だと思うのです。そういう意味では、消費者庁を含めた行政がこのマルチステークホルダーによる社会課題の解決という視点に立てば、既に円卓会議というのが存在するわけですので、うまく活用していけばそこに問題を乗せて解決していくということは十分可能だろうとも思います。

実は、この円卓会議のほうは対等な立場で集まった会議なので国からのお金も出ないのです。そういう意味では、実は財政的にも厳しいところがあるのですが、このやり方をどうするかということも行政の支援としては考えられると思います。

○山本座長 場の設定ということも含めて、現在の行政のこういった取り組みに対する支援とか援助は十分なのでしょうか。あるいは、もう少し何とかしてほしいというところはどういったところでしょうか。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 行政の支援で課題だと思うのは、省庁ごとの予算の割りつけになっているので、例えば横断的な取り組み、特に円卓会議なんかはそうなのですが、一つの省庁の課題ではないような問題に費用が出ないのです。そういう意味で、実はこの円卓会議は費用が出ないまま非常にみんなが苦労しています。市民組織である労働組合もそうですし、消費者団体もNPOもそうなのですが、まずは行政が連携してほしいというようなところがあります。何か横断的な課題を取り組むときに全体としては全く予算が出ません。もちろんが、各省庁での個別の取組みにはそれぞれ予算が出ていることもあり、実際行政が民間の組織に費用を出していないわけではない。実際の今の国の仕組みとしての限界なのだろうなと思っています。でも何とか解決しなければいけないと思うのは、まさに横断的な課題が今は山積みで、それを解決していこうとする消費者団体、市民組織が頑張っているだけでは進まないだろうという意味で、行政が動くという意味の必要性は非常に感じております。仕組みづくりが必要だろうと思っています。

○山本座長 そのほかいかがでしょうか。

確かにこういうふうに国といいますか行政組織から離れた民間の組織ないしは官民が連携する組織のようなものをこれからどんどん発展させていくことになると、まさにそれは行政組織でいうと省庁横断的なミッションを総合的に果たすためにつくるわけなので、それに見合った財政的な支援の仕組みも対応させてつくっていかないと、やりましょう、やりましょうと言うのだけれども、結局財政的な裏づけといいますか制度的な担保ができないままということになりかねないということは、今、確かに伺っていて思いました。官民の連携をする上で行政にもっと連携をしてもらいたいという話がどこかで出ていたと思うのですけれども、そういう面はあるかなというふうに伺っていて思いました。

マルチステークホルダーフォーラムの話、社会的責任に関する円卓会議の話が出てきたのですけれども、これは現在、どうなのでしょうか。古谷さんはうまくいっていると評価されているのか、もう少しこういったところを改善すべきだというふうにお考えになっているのか、その辺はいかがでしょうか。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 うまくいっているかどうかというと、うまくいっていないと言ったほうが正解かもしれません。ただ、これができたことで、実は消費者団体とNPO、NGOであったり、あるいは消費者団体と労働団体だったりが、連携のよさというものを特に関わった人たちは感じております。実はいろいろな問題があったときにお互いに呼びかけて問題解決しようという動きにつながっているという意味で、これを絶対に絶やしてはならないという意識がみんなに強くなっています。多分、政府以外はそうだと思います。政府は、市民がそう言っているからやめるにやめられない、しかも2009年には内閣総理大臣が署名して始まったということもありまして、市民側が頑張って継続させているというのが実態であろうと思います。

率直なところを申しますと、では、対等な立場でといいながら予算的な裏づけもないままそれぞれの代表が参画して運営をしているわけですが、運営上の苦労は正直ございますが、市民側が頑張っているところだと思います。

○山本座長 今後はどういったところをもう少し変えていくべきだというふうにお考えですか。もう少し政府がコミットしたほうがいいというふうにお考えでしょうか。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 実は課題自体の解決について、それぞれのステークホルダーが対等な立場でというコンセプトはとても大事でそれは重要なのですが、そもそも持続可能な社会の仕組みを構築していくのは政府の責任ではなかろうかと思います。そういう意味で、場であったり予算的な裏づけも含めて政府が、あるいは行政がきちんと仕組みづくりを予算の手当ても含めてしていくべきだろうと思います。ただ、あくまでも場の提供で、実際の問題解決はそれぞれのステークホルダーが主体的に解決というような仕組みをつくっていくべきなのだろうと思います。

この円卓会議は、2009年3月に設立されたのです。その後、民主党政権になったのが9月ですね。消費者庁も9月ですね。その後、自民党政権になりという、政権交代の中で何とかこれは生き延びてきたのですが、実はこのような組織はないのだそうです。やはり政権が変わるとそういった仕組み自体も変わるということが一般的ですが、恐らく皆さんがこれをなくしてはならないとして皆さんの努力で継続してきたものなのだろうと思います。ただ、現実にはそういった政権交代の波のなかで予算措置もつかないまま残っているというのが状況だと思います。

ただ、消費者団体である、私は運営委員として、ほかには全国消費者団体連絡会などの協力も得ながら取り組んでいます。例えば地方消費者グループフォーラムの問題が上がったときに、消費者団体としては、円卓を活用して、事業者であるとか労働団体であるとかも含めて協力を仰いだほうがいいのではないかというところで、我々の提案で円卓会議が協力するという形になりました。今後も消費者側からこういった問題を円卓の場で解決してほしいという提案を積極的にすることによってこの取り組みが継続していくことになるのだと思いますが、消費者側だけで利用していくというのもなかなか難しいところがあるので、やはり仕組みであるとか、あるいはほかのセクターの利用であるとか、いろいろな課題はあるだろうと思っています。

○山本座長 いかがでしょうか。

○河上委員長 なかなか難しいなと思いますが、現在、消費者教育推進法とか消安法とか法律上でき上がっているフォーラムが幾つかありますね。似たようなものを幾つもつくってもしようがないのにという話もあるのですが、ああいうものと先ほどのマルチステークホルダーと言われているものとの関係というのはどんなふうなイメージで考えたらいいのですか。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 究極で言うと同じだと思います。例えば消費者教育の実践を地方で地域推進協議会という形でいろいろなセクターがかかわって取り組んでいくというのもマルチステークホルダーの仕組みだと思います。ただ、例えば地方消費者グループフォーラムで感じたのですが、消費者問題は、まさに消費者団体なんかはもちろん専門なわけですけれども、消費者団体自身がいわゆるいろいろなセクターとかかわって問題解決するという発想が余りないということもあって、実は他のセクターと連携がなかなかできていない実態もあります。例えばNPOはNGOの方を知らない、あるいは事業者が実際それにどうかかわっているのかを知らない。知れば利用ができるのだけれども、なかなかそういう連携ができないということです。

具体例でお話ししますと、昨年、高齢者の見守りという形で地方消費者グループフォーラムを実施したときに、消費者団体側の発想で考えると高齢者の被害というのは頭に浮かびます。実は高齢者の問題というのは消費者被害ばかりではなくて、例えば介護の問題であったり、まさに地域の見守りであったり、いろいろな問題があるのですけれども、消費者団体の発想だと被害になってしまう。でも、円卓会議で御提案申し上げたのは、もう少し広い範囲で高齢者の見守りを考えると、事業者が高齢者を支援している事例というのは山ほどあるのです。そういったところに協力を仰ぐ形で高齢者の問題が解決できるのではないかというようなことであるとか、例えばNPO、NGOも地域の問題ということで、円卓会議の地域版ということで地域円卓会議ということでNPO、NGOの方が中心になって地域の事業者とか行政とかに呼びかけていろいろな問題を解決しているのです。そういう意味で円卓会議とか地域円卓会議にかかわった人たちは、既にある意味、中心となるネットワークができているので、例えば先ほど言った消費者教育の地域の推進協議会なども形だけつくってもそのネットワークが前提にないと多分うまく機能していかないので、当分の間といいますか、一緒にそういった円卓会議のノウハウを、あるいはネットワークを活用してやっていくというやり方もあるのではないかと思います。それは新たにつくるというよりも、どちらも既存にあるわけですから既存のものをうまく活用していく。最終的には人になるのかもしれないのですけれども、今あるものを人も含めてお互いが知恵を出し合って連携して解決していくということで、一言で言うともう少し、人も内容も視野を広げさえすれば実はいろいろな方々の協力のもとに問題解決はできるだろうと思います。

○山本座長 いかがでしょうか。

たしか円卓会議をつくるときには非常に大きな議論をしていて、それこそ立法との関係はどうだという話までしていました。つまり、何か制度をつくるとしてもその前の段階でそれぞれのステークホルダーが正確な知識を持つ必要があるし、完全なコンセンサスをそこで形成するのは難しいとしても、ある程度のベースラインといいますか、そういうものを共有していくための場がないと、大きな社会問題が出てきたときに、なかなかそれを制度でばちっと決めるだけで解決するかというとうまくいかないだろう。まさにお話のあった持続可能な消費とか、広く言えば持続可能な社会のあり方とか、あるいは新しい技術を社会に導入することの是非といいますか、あり方とか、そういったことを議論する場として、円卓会議のようなものが必要ではないかということを、私はつくるときにそれほど深くかかわったわけではないのですけれども、若干かかわったことがあって話をしていたという気がいたします。他方で最近ではもっと現実の、それこそ高齢者の見守りをどうするかとか、あるいは消費者教育をどういうふうに推進していくかというときに、いろいろなステークホルダーといいますか、いろいろな主体の連携協力をするための場として、こういうものを考えていったらどうかということがあります。多少そのあたりの考え方を整理しながら、先ほど委員長が言われたように、いろいろなものが動いているけれども、それがもう少し見える形でといいますか、完全に整理をするわけではないのでしょうけれども、ある程度相互に違うレベルで動いていくような仕組みができていくと、全体としても効率的に動くかと思いますし、もう少し消費者にとってもはっきりした形で、こういう取り組みがあるのだということがわかるようになるかと思いました。これは非常に難しい大きな問題ですね。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 それに関してお話しすると、では、いきなり消費者問題であるとかが社会課題としてステークホルダーとかが集まってというのも非常に難しいところがあって、まずはお互いに情報共有しましょうということが非常に大事で、そういう意味ではこの円卓会議なんかもお互いにどういうことをやっているかということを共有しながらやっていくということをして成果を上げてきたという面があるのではないかと思います。

実はこのやり方というのは、例えば消費者団体だと学習会という形でやったり、ただ、そのときもどちらかというと消費者団体は自分たちのメンバーの中でやる傾向にあるのですけれども、NPO、NGOの方々というのはもう少し広い範囲の人たちを集めて、今、どうなっているのかという形で情報共有しながら進めるというやり方で上手なやり方をしているかというところもあります。

例えば、私が最近呼びかけられて参加している例などは、先ほどあった持続可能な消費に関してはNPO、NGOが非常に熱心に取り組んでいるのです。ところが、NPOやNGOの方は消費者教育推進法が成立したことを知らないのです。そのときに呼びかけられてお話をしたのですけれども、消費者庁が消費者教育推進法に基づいていろいろな取り組みをしているのだということをお話しました。そうすると、NPO、NGO、あるいは環境団体などが取り組んでいる動きと一緒にすることでより大きな動きになるのではないかと思います。一緒につなげるお互いの努力が必要で、現在のところではNPO、NGOの方がそれをつなげようとして一生懸命努力をされている状況なのではないでしょうか。ただ、今は、先ほど言った政府側の持続可能な取り組みは連携されていないので、これをどうするかというところで課題になっているのですが、まずはお互いに何をやっているかをまず知るというふうなやり方が非常に大事ですね。もう一つ話してもいいですか。

○山本座長 はい。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 円卓会議で人材原則をつくったという話をしたかと思うのですけれども、実はこれは事業者団体と消費者団体が共同主催になったワーキングでして、そのときにまさに人を育む基盤というのは持続可能な社会を担う人材をつくるという意味なのです。まさに今の消費者教育にかかわるわけですけれども、そのときに事業者の話も消費者団体の話もNPOの方の話も、最初みんな認識が違うのです。持続可能な社会の観点でどういう消費者教育を進めたらいいのかといったときに、NPO、NGOの方は市民的な意識がとても強い。でも、消費者側は消費者被害の意識が強い、また、事業者は事業者で啓発もやっているけれども消費者教育もやっているところもある、やっていないところもあるといったような実態の中で、では、消費者教育はどうあるべきかという理想論でいってしまうと、お互いのスタンスが違うわけですから話が煮詰まってしまうわけです。そのときに私が提案したのは、原則をつくりませんか、と。それは情報共有しながら出てきたアイデアなのですけれども、どういう消費者教育であるべきかの前に、自分たちは何が大事だと思うかという原則をつくるならば共有できるのではないかということで人材原則をつくった経緯があるのです。そのときも円卓会議はそれぞれのセクターの代表で参加しているのですが、代表を背負ってしまうと何もできないのです。まず自分の組織に持ち帰って、これがいいかどうかという検討もしなければいけなくなるので、では、自主的に手を挙げてやりましょうかと。まさに円卓会議は自主的な集まりなのですけれども、さらにその中で自分はかかわってもいいよと、組織とは関係なくかかわってもいいよという手挙げ方式でやったのです。そうしたら、何と全部のマルチステークホルダーが参加する自主的な参加者になったのです。その中で何度も何度も議論して人材原則をつくって、最終的には円卓会議という場で承認をいただいて、今、公表しているという状況になったのです。

そういう意味では、まさに情報共有から始めて、でも組織を背負わないで自主的に意見を言う人を募ってやるとか、いろいろなステップの工夫をしながらやらないとなかなか成果にならないというところで、おっしゃるように仕組みだけではだめで、それぞれのまさに問題意識を持っている人が主になって呼びかける必要があります。でも呼びかけたときは必ず呼応してくれる人がいます。そういう意味では、呼応してくれる人と一緒に協力してやるというやり方をしていくということも必要です。一つの仕組みをつくったというだけではうまくいかないので、その工夫をどうするか。人を育てるという問題にもかかわってきます。ただ、人というのはいきなり育たないので、いろいろなことをやりながら結果的に人も育ち、組織も育ちというやり方をしていくのではないか。ただ、大きな仕組みとしては、やはりそれなりの支援なり仕組みというのはつくっておくことでそれが生きていくかなと思います。

○山本座長 そのほかいかがでしょうか。

○河上委員長 この間、テレビで大分かどこかの大きな団地の話が出ていて、その中で子供たちはみんな大きくなって出ていってしまってどんどん団地が高齢化してしまった。そうしたら、自然発生的にですけれども、高齢者の中で昔話がしたい人とか、地場での料理をみんなで楽しみたい人とかというのが幾つかグループをつくり始めて、その団地の集会所は月曜日から土曜日まで、それぞれ活動日を決めてそこを使って、みんなが集まって話をして、それをやっている。すると、何号棟のあの人が最近来ないとかという話になって、結果的には見守りにつながる。そんなこともあって、そのお年寄りだけの集団が意外にうまくいっているらしいのです。

先ほど古谷さんが言っていた場の提供のことを考えていたのですけれども、国や公が場を提供して目標を与えて集まれ、集まれといって議論をさせてというやり方は意外に続かないので、むしろその中にいる人たちが一緒に生活の一部として楽しみながら問題を発見して、テーマを発見して、そして解決策を策定して、場合によっては提言をしたり発信をしたりして実施に移していく。その実施の段階で自分たちだけではだめなところを公が手を貸して実施に移していくというようなサイクルをつくるのが理想です。国が見守るといいますか、支援するということの意味は、むしろ当事者たちが本当にやりたい、こうあるべきではないかと考えたことを実施に移していくところで国がそれなりの働きをする。それまでは場を与えて、みんなに課題も含めて主体的に活動してもらうというほうがいいのかなと思います。いろいろな問題がある中で、国の目から見て必要かどうかという上からの目線よりも、そこにいる人たちの主体的な問題関心のほうを大事にしたほうがいい。場の話をされたので、聞きながらそんな感じがしました。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 おっしゃるとおり、市民側が成熟してといいますか、みずから問題を発見して解決していくというのが理想だし、これがふえていくことは確実だと思います。今、そういう動きになっているだろうと思います。

ただ、実は私が場の提供であるとか仕組みが必要だと言ったのは、では、市民側が主体的に課題を発見してこういうことで最終的には行政の力を借りたいねといったときに行政が動くかどうかなのです。恐らく動かないのです。なぜかというと、もともと仕組みがないものを市民側が提案したとしても動かす仕組みがないのです。そうではなくて、もともとそういう課題は市民が発見して解決していって、それについては取り上げるという仕組みがなければ取り上げてはくれないのです。そういう意味で、どういう仕組みをつくるかというのは結構難しいとは思うのですが、大きな枠組みの仕組みは要るのだろうと思います。ただ、そのときに行政が課題を与えるわけでもなく、目標を与えるわけでもなく、自分たちが課題発見をして解決していくというところは絶対市民側が主体的にやらなければ問題解決はできない。だから、そういう意味で行政がどこまで仕組みを場も含めてつくっていくかというのが今後の課題なのだろうと思うのです。

実は、円卓会議のところでもいろいろな課題を話し合って、最終的にいろいろな解決策が出るのだけれども、行政がかかわっていただきたい解決策も出るのだけれども、行政がうんと言わないし、予算も出さないし、とまってしまうというところで民間ベースで終わってしまうのです。そこをどうするか。ただ、行政側に立ったらわからないわけでもないのです。みんなが勝手に考えた解決策がこれはいいと言っても、行政側として本当にいいかどうか、全体的な整合性がとれるかどうかも含めて検討しなければいけないことは山ほどあるわけです。そういう意味では簡単に市民側が提案したから、仕組みがあるからそれを取り入れますとは言えない面もあるというところをどうするかというようなことも恐らく考えなければいけないということではないか。でも、少なくとも俎上にのせてほしいとか、聞くことだけはしてほしいとかという市民側の要望はありますけれども、現実にはそれができないのではないかと思います。

○山本座長 それから、場の中でいろいろな民間の主体がどういうふうに動くか、あるいは、その場にどういうふうに関与していくかという面で、先ほど手挙げ方式といいますか、中でやりたい人は「はい」という感じで始めるというお話を伺ってそうかと思ったのですけれども、ちょっと前にACAPの方と話をして、事業者とか消費者団体とかいろいろな団体が集まって、まさに情報の共有などが、あるいは行政も入ってできる場があるといいですねという話をしたのです。そのときに、自分たちは事業者の立場から消費者教育をやりたいと思っても、なかなか行政との連携という面で課題があるので、そういう場があるとありがたいと言われたのですけれども、他方で、場をつくったときに、その場のあらゆる活動に全面的にコミットしなくてはいけないとすると動けないということを言われて、場を統一的にといいますか、つくることは必要なのだけれども、その場の中でいかに自由に動く余地を残しておくかというところが非常に大事ではないかと思いました。

いかがでしょうか。そろそろ時間になったのですけれども、よろしいでしょうか。

それでは、このあたりで意見交換を終了したいと思います。

古谷様におかれましては、お忙しい中、御出席いただきまして、きょうは非常に有益な議論ができたと思います。本当にありがとうございました。

○サステナビリティ消費者会議古谷代表 ありがとうございました。

○山本座長 それでは、本日の議事は以上で終了いたします。

最後に事務局から事務連絡をお願いいたします。


≪3.閉会≫

○金児企画官 どうもありがとうございました。

次回の日程につきましては、改めて御連絡させていただきたいと思います。

○山本座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところ、お集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

(以上)