消費者行政における新たな官民連携の在り方ワーキング・グループ(第1回) 議事録

日時

2015年3月31日(火)10:00~12:03

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
山本座長、岩田座長代理、河上委員長、唯根委員
【参考人】
一般社団法人消費者市民社会をつくる会理事長 阿南 久 氏
弁護士 二之宮 義人 氏
【事務局】
黒木事務局長、金児企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 今後検討を行う論点等について
  3. 有識者ヒアリング
    一般社団法人消費者市民社会をつくる会理事長 阿南 久 氏
    弁護士 二之宮 義人 氏
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○金児企画官 本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから「消費者委員会 第1回消費者行政における新たな官民連携の在り方ワーキング・グループ」を開催いたします。

最初に、配付資料の確認をさせていただきます。

資料1が山本座長からの提出資料。

阿南理事長からの提出資料が資料2-1と2-2でございます。

その次が二之宮弁護士からの提出資料が資料3-1、3-2、3-3。

このほか、席上配付資料として新聞記事の1枚紙がついているかと思います。これはメーンテーブルの方だけでございます。済みません。

それから、参考資料1がワーキング・グループの設置・運営規程。

参考資料2が「下部組織の会議運用の在り方に関する申し合わせ」でございます。

不足がありましたら、事務局へお申し付けください。

では、ここからは山本座長に議事進行をお願いいたします。


≪2.今後検討を行う論点等について≫

○山本座長 河上委員長から御指名を受けまして、このワーキング・グループの座長を務めることになりました山本と申します。よろしくお願いいたします。

早速でございますけれども、お手元の参考資料1をごらんいただきたいと思います。「消費者委員会ワーキング・グループ設置・運営規程」となっております。

それから、参考資料2として、平成26年7月8日の消費者委員会本会議で決定された「下部組織の会議運用の在り方に関する申し合わせ」をおつけしております。

本ワーキング・グループにつきましては、これらの規程及び申し合わせに沿って運営していきたいと思います。

次に、消費者行政における新たな官民連携の在り方ワーキング・グループの構成と目的について述べさせていただきます。

当ワーキング・グループは、本年3月24日の消費者委員会本会議におきまして、参考資料1「消費者委員会ワーキング・グループ設置・運営規程」の改正によりまして設置されました。

また、参考資料1の別紙にありますように、当ワーキング・グループの目的は「消費者政策における官民連携の在り方と行政の責任等について検討すること」であり、構成員は、私と岩田委員、河上委員長、唯根委員の4名の消費者委員会委員であります。

なお、第5条第5項の規定によりまして、「座長は、必要により、当該審議事項に関して識見を有する者を参考人として会議に出席させ、関係事項について説明を求めることができる」と規定されておりますことから、本日は一般社団法人消費者市民社会をつくる会理事長の阿南久様、弁護士の二之宮義人様に参考人として御出席いただいております。

それでは、まず、本ワーキング・グループの開始に当たりまして、河上委員長から一言でなくても結構ですけれども、いただきたいと思います。

○河上委員長 おはようございます。早くからお越しいただきまして、ありがとうございます。

今、山本座長のほうからお話ありましたけれども、先般、この下部組織を立ち上げました。もともとは、昨年の春過ぎから、消費者委員会の今後の課題をどうしようかということが話題になっていて、そのときにいろいろな問題が起きるごとにアドホックに対応していく、短期決戦の課題をリストアップするという作業をして、そのほかにも政治状況が変わったり、問題が発生したりということで、課題がたくさんある。そういう短期的課題が一方でありますけれども、他方で消費者委員会として、少し中長期的な観点から、今後の消費者政策の在り方等について検討して、意見表明することも必要であろうということが議論されました。

消費者基本計画が3期のものが新しくできるということもありましたし、全体として今後の見通しについて、前陣速攻でやる部分と、腰を落ち着けてきちんと考えるべきものがあるので、それを何にしましょうかという話をいたしました。そのときに持ち出しましたのがいわゆる「保障行政」と言われる言葉であります。後で座長のほうから話が出てくると思うのですけれども、私の知る限り、ドイツでGewährleistungsverwaltungと呼ばれる概念です。Gewährleistungというのは、何かを担保するあるいは保証するという意味です。たとえば、売り主が売ったものに傷があったりしますと、それをきちんとしたものと交換するとか補修する。いわゆる瑕疵担保責任で用いられるのもGewährleistungという言葉ですが、この保障するという言葉と行政verwaltungという言葉がくっついた概念です。

どこの国でも、財政が逼迫していく中で、消費者行政をどういうふうにしていくかは大きな課題です。消費者行政に限らないのですが、行政自身が自分たちだけでやっていくことにはもう限界があるということで、それを少しずつ民営化していくという動きが活発化していくわけです。それでも、行政が本来目指していた公益的な目的を担保することが必要で、そのために行政はどういう立ち位置で、どういう支援やどういう責任をとっていくべきかということが話題になっていると私自身は理解しております。日本でもそうした状況は避けられない。消費者政策の場合は特にそういう問題があって、ほかのいろいろな重要政策が出てくると消費者政策にかける費用がどんどん削られてしまうという状況にあります。

それ自身、問題なのですけれども、いずれにしても、行政が民に肩がわりをさせていくような作業が行われていくようになりますと、そのときに何らかの形でセーフティーネットを張っていく。そして、本来行政が守るべき公益をどういうふうにして守ったらいいかということについて考えておくことは大変重要であろうという問題意識から、場合によったら、これを中長期的な課題の一つに考えてはどうですかという提案をさせていただきました。実は、山本先生はこの分野では第一人者でもあるので、ちょうどメンバーの中にそういう方がいらっしゃるということも心強かったものですから、ぜひやりたいと前々から思っておりました。たまたま事務局に産休に入った方がいらして、その方を中心に文献なども読んでもらったりしておったわけです。

私自身が考えていたのは、適格消費者団体による団体訴権とか、いろいろなものが今、消費者法の中で実現されていって、本来であれば国がモニターして、市場の公正をきちんと守らないといけないところを、言ってみればそういう適格消費者団体のボランタリーな活動に依存していろいろやっている。それに対して、経済的支援が非常にお粗末な状態であるということも考えさせられておりました。他方で、相談業務が民間委託といいますか、相談員のチームに民間委託という形で行政から離れたところで委託されるというときに、その委託の結果に対して行政がどういうふうに関与していくのか。

それから、去年1年、消費者委員会はとても大変でしたけれども、表示の問題がありました。食品表示でも、行政がモニターするには限界がある。そういうときに、消費者モニターというものが非常に重要な役割を果たすだろう。そんなことを含めて、いろいろなことを考えていくと、民間の力をかりながら消費者行政をより充実したものにしていくという方向性は、これからも少なくなることはないだろうという気がしたわけであります。

ただ、そこには、ある意味で落とし穴が1つあって、それは民のことは民にやらせればいいということで、行政がどんどん自分が本来やるべきであったことまで民のほうに任せてしまうという過度の民営化であったり、あるいは行政事務のアウトソーシングを言いながら、結果的には「丸投げ」をしてしまうという危険です。ほかにも、いろいろな問題があります。コスト削減という目的とか、あるいは民間にやらせれば、場合によっては行政がやっているほど厳しくやらなくても済むので、規制緩和につながるのではないかとか、様々な思惑があります。

ちなみに、規制改革会議も同じような官民連携というテーマで研究しようじゃないかと考えておられることを、この間新聞で見ました。それがどういう目的でやられるか、全然わからないのですけれども、少なくとも消費者委員会がやる官民連携という言葉を持ち出した背後には、連携しつつ、民を支えるために行政が何をすべきか、行政がどういう責任とコストを負担していくべきかを考えるところにあります。これは、決してコスト削減にならないかもしれない。場合によっては、コストは上がるかもしれないけれども、民の力を使うことによって消費者行政がもっと強いもの、充実したものになるという方向で将来像を描くことができないかということであります。ちょっと長くなって済みません。講義は大体90分になっているものですから。

実は昔、私、仙台におりましたころに、消費者審議会というものが仙台にもありまして、そこの議長をやっておりました。そのときに仙台でやっていた都市ガスの仙台ガス局を民営化するという話が出てきました。仙台は、戦争末期か戦争直後ぐらいですけれども、東南アジアから天然ガスを早期に輸入し始めて、あそこは寒いですから、市民の暖房とか燃料を確実に手に入れるためにということで、市が肝入りでガス局をつくって、現在まで運営してきていたようです。しかし、いろいろな問題があって、もう自治体だけでは対応できないので民営化するという話になって、この移行するための検討会を1年近くやった記憶があります。

そのときに、仙台ガス局の方々は物すごく責任感があって、自分たちがやってきた市民の暮らしを守るという公益的な結果を保障してくれるような民間団体が本当にあるだろうかということで、電力会社とか候補者として手を挙げていたところを一つ一つ吟味しながら、これはできますか、ここまでやってもらえますか。あるいは、そのために仙台はどういうことをしたらいいですかということをしきりに聞きながら作業を続けていました。今、どうなっているか、よくわからないのですが。そういうふうに、単なる民営化ではない、行政が一定の支援と責任を持って民間の活力を利用させていただくという発想で問題を考えることの重要性を前々から感じておりました。

その意味でも、このワーキング・グループで多くの方々の知恵をおかりして、新しい消費者行政の在り方というものについて、一つの道筋をつけることができればと願っているわけでございます。

お忙しい中で大変かと思いますし、第3期の任期が8月末までということですので、余り時間的な余裕はございませんけれども、ぜひ充実した議論をしながら、いい方向性を示していただければありがたいと思います。

ちょっと長くなりましたけれども、よろしくお願いいたします。

○山本座長 ありがとうございました。

それでは、本日の議題に入りたいと思います。

本日は、お二人にお話を伺うと先ほど申しましたけれども、その前に私のほうから資料1に沿って、若干の説明を申し上げたいと思います。

資料1につきましては、委員長とか事務局等とは全く相談・調整しないで、私がぱっと書いたものにすぎませんけれども、本日はとにかく自由に討論していただく。大体、こういう会議というのは、座長のところにシナリオがあって、それに沿って進めるというのが普通ですが、本日は自由と、本当に何も書いていないものですから、本当に自由にいろいろなアイデアを出していただく場にしたいと思っておりまして、そのたたき台といいますか、出発点にでもなればという程度のものでございますので、その点はあらかじめ御承知おきいただきたいと思います。

まず、大きく3つのことを書いたわけでございますが、1つは、基本的な考え方ということで、先ほど委員長からお話がありましたように、当初、「保障行政」という名前で、ワーキング・グループではなくて、もう少し大きな会議の形で立ち上げようという構想がございまして、それで「保障行政」という言葉は一体何なのかということがまず問題になるわけでございますが、先ほど委員長からお話がありましたように、これはドイツで10年ぐらい前から非常に使われるようになった言葉です。したがって、「保障行政」という、いささかこなれない日本語になってしまうのですけれども、ドイツ語では先ほどお話がありましたGewährleistungsverwaltungという言葉でございます。

あるいは、これはそもそも行政ということに限らず、むしろ国家観、この国の形という言葉が昔、行革のときに使われたことがありますけれども、まさに国の在り方を示す観念であるということで、「保障国家」という言い方もされたりいたします。これは、ごく縮めて言ってしまいますと、民間の主体が公益のために活動する役割を担う、国や公共団体はそのための枠組みとなる制度を制定する、あるいは状況を観察して必要な態様の関与を行う。

つまり、民間の主体が公益を実現する役割を担うのだけれども、だからといって国や公共団体が何もやらないというのではなくて、それがうまく回るように枠組みを設定し、あるいは場合によって、これは若干うまくいっていないなというときには、そこに関与していく。こういう行政のやり方あるいは国の活動の仕方を示す観念として説かれたわけです。ここで言う、民間の主体が公益のために活動するというわけですが、これは一体どういうものなのかというので、若干議論が錯綜しているところがございます。

大きく分けて2つございまして、1つは、生活に必需のインフラの供給です。これは少し前の話になってしまいますけれども、例えば国鉄の民営化とか、ドイツでは郵便の民営化というのがかなり議論の的になったわけです。こういうふうに一種生活に必要なインフラを供給することをする役割を、当初は国がやっていたのに対して、これを民営化する。民間の事業者に郵便サービスとか鉄道のサービスとか、もろもろのインフラの供給の役割を担ってもらうという意味で使われることがあります。

ただ、それだけでなくて、むしろもう少し別の意味合いで保障行政というのが使われることもございまして、それがマル2に書きましたように、公益的決定ないしは公益的決定に向けた活動ということです。民間の主体が、まさに単に鉄道とか郵便といったサービスを提供するというだけでなくて、公益にかかわる決定、ないしそれに向けた活動を行うという意味合いで使われることがあります。

これがドイツで一番最初に言われた分野は環境保護の分野でして、環境保護の分野はかなり技術的な問題がかかわってまいります。環境の保全のための技術等の問題がかかわってくる。こういった技術的なノウハウを国や自治体は持っているかというと、必ずしも持っていない。むしろ、それは民間の事業者等のほうにあるといった事情があり、あるいは環境保護というのは国の行政活動の中ではとかく後回しにされがちである。国が環境を守るといっても、実際にはどちらかというと事業活動の促進のほうに力点を置いたような行政活動になってしまう。

そうすると、むしろ民間の主体が環境保護のためにもっと積極的な役割を担うような体制にすべきであるというので、例えば環境保護団体に団体訴権を認めるといったことが、割と早くからドイツでは認められるようになっているということがあります。あるいは、環境アセスメントの制度も、事業者あるいはそれに対して環境保護する側の民間の主体が能動的に手続に参加するという仕組みで、その例として挙げられるところです。

このワーキング・グループでは、後のマル2のほうを主には想定することにしたいと思っております。マル1のほうも議論としてはいろいろおもしろいのですけれども、このワーキング・グループでは後のほうの消費者保護のためのいろいろな活動、あるいは消費者のための決定に民間の主体が関与するということを想定していきたいと思っております。

次に、先ほど委員長のほうから少しお話がありましたけれども、これを議論するときに、こういう大ざっぱな言い方がいいかどうかという問題はあるのですが、わかりやすく大ざっぱに言ってしまうと、2つの方向から議論がされるわけでして、1つは、スローガン的に言いますと、「スリムな国家」論という側からです。これは、先ほど委員長からお話がありましたように、国や公共団体が財政難であって、自分で活動を担っていくのが難しい。そこで民間の主体に委託する。あるいは、今までの国の活動が過剰であって、そのために経済活動が過剰に規制されていたのではないか。それを緩和するといった文脈で使われることがあります。

他方で、もう少し別の角度から議論されることもあります。それは、先ほど環境保護の例をちょっと挙げて申しましたけれども、国や公共団体が活動する際に、情報の収集や分析をすることには限界がある。これは、消費者行政にも往々にして見られるところで、情報を国や公共団体が集めて、しかもそれを分析するということには、どうしても限界がある。あるいは、バランスよくいろいろな利益を考慮する、調整するというときにも、従来の行政はどちらかというと事業者の側から物を見てきた。それで、消費者庁、消費者委員会というのができたという経緯があるわけですけれども、必ずしもバランスよく、もろもろの利益の調整ができているとは限らないということがある。

そこで、そういった活動の限界を補っていくために、民間の主体に一定の役割を担わせるべきなのではないか。民間の主体の側から言えば、民間の主体がそういった活動を担うことによって意識が高まる、あるいは公益にかかわるいろいろな判断をする能力が向上するということがあって、それが民主制の基礎になるのではないかといったことがございます。というわけで、官民がそれぞれの特性を生かして力を補い合うという形を目指すべきではないかという方向から議論がされることがあります。ここでは、もちろん後のほうを想定して議論したいと思っております。

それでは、消費者行政の分野で、特に官民連携を説く意義がどういうところにあるかと申しますと、もともと市場の問題ですから、市場というのは国や公共団体とは一応別のセクターとして存在するわけです。もちろん、完全に切り離されて存在するわけではありませんが、国や公共団体の活動からは自立的な活動を行うセクターとして市場というのはもともと存在しているわけで、したがって、その市場に参加する者自身がそういった公正な市場を形成していく役割を担うべきであると。

ただ、それだけでは、先ほど言いましたようないろいろな問題が出てくるので、国や公共団体は状況を見て必要な枠組みを整える、あるいは必要な支援等を行うという姿で考えることができるのではないかということがございます。非常にスローガン的に言ってしまうと、事業者保護育成型の縦割り行政から、消費者庁、消費者委員会ができたときによく言われたことですが、行政に消費者目線をインプットするということがあり、そして、さらにその先のことを言えば、むしろ市場自体における消費者目線をもっと強くしていく。単に行政の中に消費者目線を入れていくというだけでなくて、市場の中に消費者目線をインプットしていくということを目指すことを考えるべきではないか。

それが恐らく、そんなにすぐに全て実現するとは思いませんけれども、5年後、さらには10年後、さらにその先になるかもしれませんが、見据えた消費者行政として、今、考えておくべき課題なのではないかということでございます。

それで、具体的にどういったテーマが考えられるかということですけれども、これはいろいろあり得るので、ざっとここに書いたとおりでございます。

1つは、政策決定の段階から、法執行とか具体的な案件の処理にかかわる段階にずっと流れるように書いたつもりではあるのですが、余りそうなっていないかもしれません。マル1からマル10まで書かれてございます。

マル1は、この後のお二人のお話にも出てくると思いますけれども、コンセンサス会議、マルチステークホルダーフォーラムというものです。これをもう少し生かしていけないだろうかということ。

それから、そこまで非常に大きな政策決定まで行かなくても、この間、新聞記者さん等と話をしたときにちょっと出たことですけれども、規制改革などを行う際に、消費者への影響のアセスメントを行うような手続が何か考えられないだろうか。これは、リスクアセスメントとか環境アセスメントとか、新たな技術を導入したり、あるいは施設をつくろうというときには、その影響を調査するアセスメントを行うということがあるわけですけれども、消費者への影響のアセスメントは、必ずしも十分行われていないのではないかといったこと。それを行う場合には、もちろん消費者がかかわっていくわけですね。

次に、規格策定・基準認証は、特にEUでかなり議論があるところで、EUの場合は完全に民間が規格を策定しますので、民間規格が国の基準とかEUの基準に取り入れられたりするという現象があるものですから、そのときに民主的な正統性を持っていない民間の団体がつくった規格を、そのままEUとか国が使うというのは本当に許されるのだろうかという、割と根本的な議論があるところです。

それから、事業者団体による「自主規制」。これは民間と言っても、むしろ事業者になるのですが、事業者団体による自主規制が法令による規制に代えて使われるということが日本では非常にしばしばある。これは、実は日本に限った話ではないのですけれども、法令の規制にかえて、事業者団体が自主規制を行うということが多いわけですけれども、このときにも何らかの制度的な枠組みが考えられないだろうか。例えば、手続にある程度、消費者等の代表とか、そういった外部の人がかかわっていくとか、あるいはアウトサイダーに対する補充的な規制を行うような仕組みというのが必要なのではないかといったことがあろうかと思います。

それから、マル5の個々の事業者の体制ですね。コンプライアンス体制等々の問題。具体的に1つだけ言いますと、何か事故があったときに、その情報を国や公共団体に伝達する義務が個々の法令の中には定められている例もあり、あるいは各省のガイドライン等で行われている例もあるのですけれども、このあたりが、まず現状、全体像としてどうなっているのかということを把握することも必要ですし、今後、それをどうしていくべきかという議論も必要なのではないか。これは、主に事業者側の話ということになろうかと思います。

もう一つありますのが、保険会社等、他の事業者の監視などをする事業者の位置づけ。保険会社で言いますと、事故等が起きたときには、まず保険会社がそれを調査するということがあるわけです。それから、アクワイアラーと書いたのは、この間、たまたまその議論があったからですけれども、加盟店の管理を行うといった役割を担うというので、事業の形態によっては、そういうふうに何か他の事業者をウオッチするという役割を担う事業者があるわけで、こういうものの位置づけというのも少し考えてみるとおもしろいかなということです。

それから、少し事業者から離れますけれども、情報の分析ということで、これは先ほどから出ています事故情報等を、集めるというところまではある程度できるとしても、そこから先、分析して有益な情報をつくっていくというところが非常に難しいということがあり、ここのところでIT技術とか大学等々の研究機関をもう少し巻き込んだような形で、この情報の分析ができないだろうかということがあるかと思います。

それから、ここから先は、これはむしろ後のお二人の報告にいっぱい出てくることですので、詳細は申しませんけれども、紛争解決の場面、法執行の場面、啓発・援助の場面で、それぞれ既に消費者あるいは消費者団体が一定の役割を担っているということがあるわけですけれども、それをさらに援助するような仕組みができないだろうかといったことが課題としてあろうかと思います。

最後のIIIですが、全体としてどういう視点で考えていくかということですけれども、1つはプロセス全体が公正で透明なものでなくてはいけない。団体が関与したことによって、国民からいろいろな活動が見えにくくなるということではよくないだろう。国民の信頼を得ていくためにも、全体のこういった連携のプロセスが公正であり、また透明である必要があるということがございます。

それから、恐らく一番微妙な難しい問題になるかと思われるのは、一方で国や公共団体はどこかの特定の利益をひいきするということをしてはいけないわけです。ですから、あくまでいろいろな諸利益・諸権利をバランスよく見て、適切な決定を行うという役割を担うわけです。ただ、同時に、特定の利益がうまく実現されていない場合には、その利益が実現されるようにサポートしていく役割を担うわけです。そのために、例えば消費者を保護するための制度をつくるとか、消費者のために国や公共団体が自分で情報を流すこともあるし、あるいは事業者に流すように義務づけるということもあるでしょうし、情報が流れるようにする、あるいは人的なサポートを行う、あるいは実際に補助するための金銭を給付するということもあるかと思います。

こういった一種の利益がうまく実現するための国や公共団体の役割と、特定の利益をひいきするようなことがあってはならないという部分のバランスと申しますか、そこの境界線を一体どこに求めていくべきかというところが、恐らくはこれを議論する際に一番難しい問題なのかなと思います。

それから、民間の主体の側に負担を求めるということであれば、その負担を負うのはなぜかという根拠を示さなくてはいけませんし、逆にサポートするというときにも、なぜ国が、あるいは公共団体がサポートするかという根拠は明確にしなくてはいけないので、そこのところの明確化をするということが1つ重要な課題としてあるのではないかと思います。

ということで、私からざっと申し上げました。一言のつもりだったのですが、委員長と同じでちょっと長くなってしまって、非常に申しわけございません。

≪3.有識者ヒアリング≫

それでは、ここから阿南理事長と二之宮弁護士、お二人は消費者行政に非常に強くかかわられた御経験がおありですし、また現在も消費者団体で活動されているということがございますので、官民連携の在り方あるいは行政の責任などについて、お考えになっていることを、きょうは本当に自由討論なので何でも結構ですとお願いしてございますので、忌憚のない御意見をいただきたいと思います。

まず、阿南理事長のほうから20分程度でお願いいたします。

○消費者市民社会をつくる会阿南理事長 ありがとうございます。

私は、長官になる前は全国消団連の事務局長をやっておりました。消費者庁をつくる運動にも参加してきました。そのときから、消費者団体には経済的支援を中心に育成支援の枠組みが必要であるということを主張してまいりました。適格消費者団体への財政的なサポートについては、附帯決議にまで書かれておりますが、この5年を過ぎて、私が長官のときも全く手をつけることができずにおりましたので、このワーキング、大変期待しております。どうぞよろしくお願いいたします。いよいよ始まったなという感じがしております。

私は、きょうはお呼びいただいて非常に幸いですが、新しい行政の変革といいますか、認識転換ということはもちろんですけれども、連携相手である民自身の新しい在り方、エンパワーメントということもテーマにしたいと考えておりまして、その2つの観点から事例を紹介させていただき、議論に参加したいと思っております。

レジュメに沿ってまいりますが、まず民間の組織の可能性という点でお話をさせていただきますと、私、昨年12月にASCONという一般社団法人を設立いたしました。ASCON(Association to Create a Society with consumer citizenship)、アソシエーションのAとソサエティーのSとコンシューマーのCONを合わせたものです。アスコンと呼んでください。明日のコンシューマーというイメージです。

消費者が消費生活において自主的・自律的に行動するための「力」をつけていくことと、また企業が消費者・生活者目線で事業を推進していく。そうした「力」をつけていくために、志を同じくする人たちが出会って、学び合って、ともに成長するということを目的としてつくりました。

主な事業は、「日本だまされないゾウ学会」を初めとするシンポジウムとか研修会・研究会、商品を購買する能力の向上に資するような教育・指導、講習会への講師派遣、インターネット、マスメディアを通じた情報の発信、消費者からの相談受付事業といったことを考えています。今時点で個人会員が39名、法人会員も13法人参加されています。

何をやってきたかといいますと、まだ立ち上げたばかりで、十分にできていないのですけれども、3月2日に「食品の安全と安心の確保」というセミナーを開催し、約100名の方たちに御参加いただきました。消費者も企業も参加が多かったですね。食品表示法の施行直前という状況の中で、事業者のみならず、消費者もこの新しい制度をどう理解していくのかということが大きなテーマになると考えていまして、その理解や周知をどう進めていくかということが議論になりました。ですので、今度の制度自体の学習から始まったということです。これは、今後も続く内容だと思っております。

また、5月に計画しておりますのは、異物混入の現状と課題というセミナーです。ここでは事業者がやるべきことは何か、そして消費者にできることは何なのかを議論したいと考えております。同時に、会員交流会を開催し、この消費者市民社会をつくる会、ASCONはこれから一体何をやっていくべきなのか。どうすれば消費者が安心して暮らせる社会づくりにつながっていくのかということをみんなで議論しようと考えております。近々ホームページも開設いたします。

もう一つ考えていますのは、機能性表示食品の制度が始まりますが、インターネットを使って、各地の消費者から、どんなことが起こっているのか、おかしいことがあれば言ってもらう。わからないことがあれば出してもらうといった情報収集を行い、それに応える情報発信の仕組みづくりを検討したいと思っています。つまり、会員を全国に広げて、その人たちに市場チェックしてもらうというしくみです。

資料2-2に12月25日の設立総会で議決した設立趣意書をつけております。下のほうにありますが、消費者が、消費生活において「消費者力」をつけることができるように。また、消費者が、持続可能な社会をつくっていく。そして、あたたかい地域コミュニティづくりを進めていくというための「消費者市民力」をつけることができるように。また、企業が消費者・生活者を経営の中心に位置づけて、消費者・生活者目線の事業を推進していく「消費者志向経営力」というものをつけることができるように。仲間を集めて、学び合いの場をいっぱい設けて教育・啓発事業を推進していくということが当会のみんなで確認したことです。

もう一点、地方における官民連携と中央との関係について、少し問題提起をさせていただきたいと思います。ここには、新潟市の取り組み事例を紹介させていただきました。私は、明日から新潟市政の評価アドバイザーというものになりますが、市長さんにいろいろなアドバイスを申し上げるとともに、新潟市内で講演活動をさせていただくという役割です。4人のアドバイザーがいるのですけれども、私は主に消費者行政分野の担当になります。私のふるさとでもありますので、少しでもお役に立ちたいと思っております。

その新潟市の2つの市民参加組織の取り組みを紹介したいと思います。ここは、民間との連携の場になっています。

まず1つ目は、地域コミュニティ協議会で、97あります。これは、地域における課題解決のための任意組織です。おおむね小学校区を単位にできていまして、平成19年3月までに市の全域で結成されています。新潟市の人口は約80万人、高齢化率が約23%という状況です。

そこには、PTAとか青少年育成協議会、老人クラブ、婦人会、NPO、民生委員、児童委員さんたちが大勢参加されていて、地域住民の生活の充実、公共施設の維持管理、運営などの活動を通してまちづくりを進めています。

市としては、ここに助成金を出していて、地域コミュニティ協議会運営助成金というものと、地域活動補助金というものです。この中には消費者被害の問題に取り組む消費者団体のメンバーも参加されているようです。

2つ目の組織ですが、新潟市地域と学校パートナーシップ事業というもので、私は非常におもしろいと思いました。これは、学校、社会教育施設、民の融合による人づくり、地域づくり、学校づくりという考え方のもとで進めてられています。平成19年度、8校からスタートしましたが、平成25年度から市立の義務教育学校が173校ありますけれども、この全てで実施されています。全部の学校に「地域連携室(ボランティア室)」があり、1人から4人ぐらいの地域教育コーディネーターが配置されています。

この事業の目的のところに書きましたけれども、これは学校と社会教育施設や地域活動を結ぶところですので、学校の教育活動や課外活動における地域人材の参画と協働ということが位置づけられています。また、地域の学びの拠点に学校をしようということですとか、学校の教育活動の様子を地域へ発信するということが目的として定められていまして、さまざまな事業を展開しています。例えば、「どんぐりの森づくり」というのは、一緒に森をつくっていくという環境の活動です。「お寺でごーん」というのは、早寝、早起き、朝御飯をみんなで実践ということで、お寺で宿泊して座禅を組んだりといった体験学習ですし、放課後の学習教室やジュニアレスキューなどの活動も活発に取り組まれています。

先生が学校のボランティア室に相談に行くと、地域教育コーディネーターが、地域の学校支援ボランティアに協力を要請し、一緒にプログラムを考えて、それを協力・実施していくという仕組です。これは非常にすばらしい活動だなと私は思いました。

この事業は、平成19年度のスタートですが、最初は自前でやっていたもので、翌年度から文部科学省の学校支援地域本部事業として補助金を出すようになり、それを使っています。以来、ずっと続けてきているという状況です。全国では設置率はまだ30%程度だと聞いております。これから消費者教育を展開していく上で、こうした仕組みは、さまざまな市民団体がこの中で協働することができる、すごくいい場になる、と思っています。ここにも市から少し助成金が出されているということでした。

それと、中央との関係で、河上先生もおっしゃっていましたが、支援しやすい環境整備のためにかなりの整理が必要なのではなかろうかと思います。新潟市で聞きましたら、地域コミュニティ協議会を市民生活部というところが庶務としているわけですけれども、市民生活部が分かれていまして、市民生活課が消費者センターなどを所管しているということです。そして、各団体の官民連携の仕組みを動かしているのは、市民協働課ということなので、そこが別になっているところがやりにくいところなのではないかと思いました。もちろん、市民生活部のほうでは連携することができるのとお話されていましたけれども、そういう各部署の連携というものがポイントになると思います。

また、中央との関係で言いますと、中央からさまざま提案しますけれども、それが一元化されていないので、地方としてはなおさら受けとめにくい現状があると思います。例えば、消費者庁からは、消費者教育推進法と基本方針に基づいて「地域協議会」というものを各地でつくりましょうと言っていますし、それから改正消費者安全法に基づいて「見守り地域協議会」をつくりましょうということを言って。けれども、それを地方の公共団体がどう受けとめるのかということです。

新潟市で言えば、既に地域コミュニティ協議会とか学校のパートナーシップ事業がある。そういうところで、別に組織をつくるのですかといったら、それは非常に難しいですね。ですから、今ある仕組みとその財政的な支援をどうやって整合性をとっていくのか、合体させていくのかというのが、ポイントではなかろうかと思いました。それに、その辺は非常にわかりにくくて受けとめる側も、そう言われてもとてもやり切れませんという話なので、それをどうやったらいいのかということを提案側も考えて整理して言ってあげることが必要だと思います。

「適格消費者団体」に関しては、なおさらそうなのです。各地で適格消費者団体ができていて、もちろん国からの支援も何もない状態ですが、適格消費者団体はNPOなので都道府県登録して活動しています。しかし、全体のまちづくりとか市場監視とか消費者政策を推進していくために、適格消費者団体をそのエリアの官民連携ネットワークに入れて、うまく機能させていくという発想になっていないということに問題があるのではないかと思います。適格消費者団体自身も地域協議会とかコミュニティ協議会や、都道府県の消費者政策に関わる審議会等にも積極的に参画する必要があると思います。その辺の認識をしっかり持っていくことが必要なのではないかと思います。

それと、マル2で挙げましたが、情報集約とブロックレベルでのネットワーク化ということで、今、「社会的責任円卓会議」というのが内閣府にありますけれども、ここには消費者団体や労働団体、経団連、NPOなどさまざまな組織が参加している、まさにマルチステークホルダー参加の組織です。消費者庁ができる前にでき、今は内閣府がその庶務を担ってくれてはいるのですけれども、その位置づけが全くはっきりしていなくて、活動もなかなかしにくい状況にあるようですが、ここをどうやって活かしていくかということが重要だと思います。この円卓会議では、「地域円卓会議」というものを提唱していて、少しずつ始まってはいるのですけれども、それはまさに、地域におけるマルチステークホルダーの連携が実現できるわけですから、それを推進していく施策形成が必要なのではないかと思います。

それから、消費者庁は全国8会場で地方のNPOや消費者団体などと一緒に「地方消費者グループフォーラム」を開催しています。ここももう少しバージョンアップしていくといいますか、例えば地域円卓、ブロック円卓会議みたいな形でやれないかということ。また、消費者委員会自身も地方消費者委員会というものをやっていますが、それを広げていって、ブロック消費者委員会みたいなものを地方消費者グループフォーラムと合体させてやるということも考えてもいいのではないかと思います。

こうした整理が行われ、新たな枠組みができ、地方消費者行政活性化交付金の対象事業として明確化されていけば、地方は、地域の官民連携の活動にも、適格消費者団体にも、もっと援助がやりやすくなるのではないでしょうか。

以上です。ありがとうございました。

○山本座長 ありがとうございました。

いろいろ重要な御指摘をいただいたと思います。前のほうで、特に高齢者とか青少年、子ども、学校における取り組みというのは、確かに今後どんどん重要性を増していくだろうと思いますし、それから地方の現場に関しても、制度とか何かがいろいろできているのだけれども、それがばらばらで、実際に動かすとなるとなかなかうまく動かせないようになっているのではないかという御指摘だったかと思います。その辺は、確かにこれからこの場でも議論しなくてはいけないかなと思いますし、マルチステークホルダーフォーラムをつくったときには、岩田委員がかなりかかわられたのではなかったですか。

○岩田座長代理 国民生活審議会の委員をしていたのですが、国民生活審議会でその設置を決めるところまでやったのですね。実際の運営には、残念ながらかかわることはなかったです。

○消費者市民社会をつくる会阿南理事長 それを引き継いでやっているのですね。

○山本座長 それでは、引き続き議論のときに、さらに続けたいと思います。

続きまして、二之宮弁護士から御説明をお願いしたいと思います。同じく20分ぐらいでお願いします。

○二之宮弁護士 二之宮です。本日は貴重な機会をいただき、ありがとうございます。

私は、ふだんは京都で本業として弁護士をしており、主として消費者問題、消費者事件を取り扱っております。適格消費者団体の活動としては、関西、大阪の適格消費者団体であるKC’sの常任理事をしています。また、京都の適格消費者団体であるKCCNの会員です。

私のほうからは、官民の連携の在り方を検討するということで、1つ、実践例を紹介して、その上でそのときに感じたこと、あるいは問題意識、あるいはこうやって乗り越えていったという点を考える材料として提供したいと思います。

まず、資料3-1をごらんください。これは、京都弁護士会と京都府、京都市、京都府下の自治体が連携して取り組み、検討段階から一緒に協議して、それから実践して、一緒に運営してみて、さらに改善して、今も発展しつつある取り組みです。最初にマル1からマル8まで項目を掲げておりますが、これを全部説明すると多分時間がないと思いますから、ざっと、これはこういう取り組みをしたということで説明したいと思います。

おめくりいただきまして、消費者行政一元化推進本部というものをまず京都弁護士会に立ち上げました。これを立ち上げたときは、消費者庁設置運動がまさに起こっていたときで、中央に消費者庁がいよいよできる。あわせて、京都府下の自治体における消費者行政も拡充しよう。中央だけ強力になっても、自分たちの身の回りが今までと変わらないのだったら、余り実感がないというところもありました。

弁護士会のほうから呼びかけまして、2008年8月に全体協議会というのを一旦やってみました。次の3ページに書いてあるのが、その全体協議会の趣旨、こういった目的でやりませんかと声をおかけしたところでございます。

4ページへ行きまして、最初の全体協議会で協議したこと、意見交換項目を大体7点挙げております。センターの未設置のところをどうしようかとか、あるいは消費生活センターでのあっせんと消費生活審議会、いわゆる苦情処理委員会のあっせんとの関係をどうしようか、どうしようかという以前に、苦情処理委員会は全く動いていなかったものですから、一体何が問題なのだろうとか、その辺りも洗い出して検討していきましょうというものです。

5つ目、法執行の強化です。相談に取り組むだけではなくて、法を執行しないといけません。自治体は権限があるのだから、そこも何とかならないだろうかということも検討しました。

5ページは、ただ協議しましょうと言っても前へ進まないでしょうから、弁護士会のほうでたたき台として、こういったA案、B案を提示して検討してもらうことにしました。

6ページからブロック別協議会ということをやりました。なぜブロック別に分けたかといいますと、一堂に会すると余り活発な意見交換ができないというのが1つありました。京都も南北の地域差がとても大きく、市町村合併で北部のほうは結構大きな市になったのですが、南部のほうは小さいところが沢山ある。この辺りも全然違っていますので、地域の実情を把握しながらやったほうがいいのではないかということで、ブロック別に分けました。これは広域振興局の単位でやっています。

ブロック別の協議会でどういったことを検討していったのかというのが7ページ以降に書いてあります。

8ページ以降は、全体協議会でこういう意見が出たけれども、ブロック別でやってみるとどういった話が出てくるのか。さらに突っ込んでいくと、地域の実情と、皆さんお集まりいただくのがお隣の市町村の方だとなると、日ごろからいろいろなことで連携しているので、うちはこうだ、あそこはこうだとかと、活発な議論になりました。

その辺りが続いていきまして、11ページ以降、意見と問題点は大体何となくわかってきたから、これをどうやって形にしていこうかということで、今度は消費者行政ADR検討会と名称を変えて、相談員さんのあっせんを積極的にやっている地域を中心に呼びかけまして、具体的な形づくりをしていこうという取り組みをしました。この辺りは、日程を後で見てもらったらわかるのですけれども、結構急ピッチでやっています。それも一つの目的がありまして、余り間を置いてしまうと、また1からやり直しということになってしまうと感じておりましたので、その日の協議会の成果物をどんどん出して次回の日程を決めて、1つの形ができるところまで一気にやってしまおうというところで日程を組んでいます。

12ページ以降でこういう意見が出て、13ページ、大体こういうイメージだろうかというのを示させていただきました。左から右へどんどん流れていくのですけれども、最後に訴訟に結びつけるところまでを絵に描いております。検討会でも出てきた意見でもあり、これは我々がふだんから感じているところ、あるいは相談員さんが感じているところでありますが、最終的な解決に結びつかないと、どうしても並行線のまま、ずっと案件を持ち続けてしまうなど、相談現場が疲弊している原因の一つがそこにありました。ここから先はそのテーブルでは無理だとなったら、次へ回していく。そして新たな問題に取り組んでもらう。そうして、全体として取り扱う相談件数を増やしていこう、経験を積んで相談員さんの力を伸ばしてもらおうということを考えました。

その後は検討会の実施とか、こういったことを検討しましたというのを抜粋しております。

次に、今度はシミュレーションをしてみようかということで、17ページです。ADRをやったけれども、相談員さんのあっせんとどう違うのかがもう一つわかりにくいという声もありましたので、実際のセンターでの不調事案をもとにシミュレーションを8事例ほどやってみました。我々もやってみると、意外とあっせん案は分かれるものだな、これは仕組みをもうちょっと変えたほうがいいのかなということも見えてきたところでございます。

18ページで、中間報告(案)という形で大体固まりつつあるだろうというところで、今度はここまでやってくれたなら一気に進もうということで、正式な取りまとめをする前に、今度は京都府のほうで引き取って実際の形づくりに動いていきました。それが19ページです。京都府の仕組みが消費者あんしんチームと言います。京都市は同じ協議機関に参加していたのですが、政令市ですから同じ仕組みを京都市として作りました。こちらは消費者サポートチームと言います。名前は違いますが、やっていることは同じです。

そうやって立ち上げて、いざ実践し始めたところが20ページの図です。これは、最初のスタート時の仕組みといいますか、人の配置図です。京都を大きく北部、中部、南部の3つに分けて、さらにその中を、これは振興局単位で分けていますが、大きく5つのチームができております。笑顔マークは当時、相談員さんがいる地域です。今はもっと増えています。星マークは助言弁護士を派遣する地域です。全部は無理でした。ただ、助言弁護士が来ている日には、最寄りの相談員さんや職員はそこへ行けば助言を受けられるという形で最初は動かし始めました。

21ページは飛ばして、全体図というのを最後から2枚つけております。矢印ばかり描いてある図が全体イメージとなっておりますが、左からどんどん相談が入ってくる。右に流していくわけですが、上の段は今までと同じ相談員さんのあっせんです。そこに助言弁護士を張りつけて、相談員さんの相談を受けつつ、あっせんしても不調に終わると、今度はあっせん会議のADRに流れ、そこでもだめだと訴訟へ結びつける。

下のほうの特定事案110番というのが特徴的な取り組みだと思いますが、これは同種の案件が起こったときには、来る相談だけではなくて、埋もれている相談、これだけ被害件数があればきっともっとあるだろうから、特定事案について110番をやって埋もれている被害を掘り起こそうというものです。これには、府と市と弁護士会、適格団体が連携して呼びかけます。そこで受けた相談については、もちろん相談に来られた人の了解をとった上で全情報を共有します。京都府のセンターには京都府警のOBの方が嘱託としておられますので、その人が相談を聞くと調書にするのです。彼らはプロですから、取調調書と同じように書いてくれます。裁判で出てくる証拠と全く同じような形のものがどんどんでき上がってくるわけです。

それをもとにした一括あっせんというのは、同じ事業者に対してであればと考えていました。しかし、実際やってみて、最初に1事例やったのは正直言って失敗しました。失敗といいますか、念頭に置いていたのとは違って、同じようなタイプの被害者なのですが、事業者がバラバラだったのです。けれども、相談に来られた人は沢山いる。要するに、この分野でこのような問題は結構あるのです。せっかくだからというわけではありませんが、個別事案を集団化して、一気に訴訟へ持っていきました。そういう意味で言うと、個別事象の集団化ということになるかと思います。

行政のほうは、そこで集まった情報をもとに行政指導のほうへ動いていきます。適格団体は、これはちょっと止めないと、今後もやり続けるだろうという事業者に対しては差止請求という形で動かしてきました。この個別訴訟や集団訴訟や差止訴訟は、これから始まる集団的な損害賠償の一つのシミュレーションになったのではないかと思っております。

これらを立ち上げたときも、ここまではイメージできていました。苦情処理委員会の一括あっせん以外は、ほぼ全て実施しています。今後は、これにさらに拡充しようと思っているのは、ここには警察が抜けているのです。刑事処分です。犯罪的な詐欺的な業者、オレオレ詐欺や振り込め詐欺、あの辺りは犯罪ですから、ここに取り組んで一緒にやっていかない手はないだろうと思っているところです。

下の図は、個別の相談について横から見たというか、縦に並べていますが、我々が1階と呼んでいる1階部分、いわゆる市町村での相談現場、センターでの相談現場です。消費者の方が相談員さんに相談する。相談員さんが事業者とあっせん・交渉を行う。それについて、助言弁護士が後ろから助言を行う。

それが不調に終わる、物別れに終わる、あるいはずっと並行線のままだったということになると、今後は我々が2階と呼んでいるADR、ここへ上げてしまおうということなります。ここに上げると、記録とともに相談員さんも一緒に同じところでやりますので、消費者は1から説明しなくてもいいという仕組みになっています。助言弁護士が事実関係や法律関係を整理した報告書も一緒にADRへ上げますので、あっせん会議を担当する弁護士は記録を読めば何がどうなっているのかが大体わかります。並行線の場合、もう一度そこで交渉しても仕方がありません。双方の意見を聞いた上であっせん案を出して、それでどうですかと提示することになります。

それでも合意に達しなかった場合、第3段階として訴訟へ移行させます。このときには、基本的には助言弁護士が、特に利害関係などの問題がなければ主任としてやるというところまで決めておりますので、消費者もまた1から説明する必要はありません。弁護士も全部把握しています。そこでネックになってくるのが訴訟費用というお金の問題でした。しかし、ここは一つ立ち上げて動かして、とりあえずやってみないことには頭を抱えていても仕方がないということで、一般財団法人京都消費者訴訟基金という、まさにこの訴訟費用を支援する一般財団法人をつくりました。これは、弁護士が役員になって、弁護士がお金を出し合ってやっています。ですから、枯渇したらどうしようか、そのときに考えようかということでやっています。

ここまでが立ち上げて、動かしてというところです。現在、これがどこまで発展して進化しているのかというのは、映像で見てもらったほうがわかりやすいと思い、今日は4分ほどの映像を御用意してまいりました。

(映像上映)

○二之宮弁護士 これは、最初の説明で、助言弁護士を地域に全部派遣していたのをネットでつないで、相談員さんも自分のパソコンで、自分の机で参加してもらっています。個人的な情報は全部削除したものですけれども、相談票というものをネット画面で見られるようにしたり、後ろに沢山の画面が映っているのは、自分の地域ではない人たちも時間が空いていれば参加できるようにしています。

これは、北部でも南部でも、空いているときに参加すると、二十何回線つなげるようになっていますが、十五、六回線、埋まることもあります。

ここに映っているのは、みんなが一斉に発言すると、話が重なってしましますが、先程のはどういうことだろうとか、もう一回聞きたいということなどをメモで送ると、文字で流れてくる仕組みになっています。

これは、京都府のセンターで講演したものも全部録画して、京都市内まで来られない人は自分の席で空いている時間に見られるようにアーカイブ化しているものです。

これは、ホワイトボードがわりに絵を描いているものも向こうで見られますので、仕組みなどを描いて説明することができます。

次に、資料3-3に戻っていただきまして、今の取り組みを通じてどういったことを感じたかというところですけれども、立ち上げまでには全体で、地域で、ブロック別で取り組みをいろいろ検討しました。運用開始後は特定事案などを通じて、それぞれができることで主体的に連携しよう、どこかに任せっきりではなく、行政指導などは我々はできない、差止訴訟は適格団体にしかできない、しかし、それぞれがやれること、やるべきことがあるだろうということで、全員が主体的にかかわっていく。そうしていくと、こういったところがちょっと不便だとか、こうしたらどうだろうとか、それぞれが問題意識を持って改善案を出せます。

京都市内から天橋立の日本海のほうまで行こうとすると、2時間半ぐらいかかります。本数も新幹線と違って少ないですから、1日仕事になります。そうすると、我々も来年は遠方の担当なのかなどといろいろな思いが出てきますし、1日かかると交通費を払っているほうも結構な金額になってきます。相談員さんのほうも、自分のところへ来てくれるときは良いけれども、近隣に出掛ける場合に市町村が大きいと移動するだけでその間、相談室の席を空けなければいけません。そうすると、そのときの相談が受けられませんし、講習会・講演会をやっていても、京都市内まで出掛けるとなると、我々が出ていくのと逆ですから、やはり1日仕事になってしまいます。

そうなってくると、自分の席で時間が空いているときに参加できないだろうか。いろいろな意見が出て、ウエブ会議でつないでしまったらどうだろう。そうしたときに、セキュリティーの問題などいろいろな問題は確かに出てきました。けれども、改善できればもっとうまくいくというところでは一致しているので、こうなると府のほうの担当部局が俄然頑張って折衝してくれるというところが、ちょっと今までとは違うなと感じました。

その下、実践を踏まえた実施主体共同型の場合における連携の考慮要素、こういったところが意識されました。自治体側の意識。これはもともと地方自治体レベルでしたら、被害現場、センターと本課が同じところでは、それほど意識の差はありませんでした。我々の言うことと彼らが言うことというのは、ほぼ共通しているというのは感じられました。

弁護士会側の意識も、従前は確かにこういうことをやったらどうだろう、やるべきだなど、どちらかというとお願い一辺倒だったところは反省すべきものがあります。京都では、私もそうですけれども、私は平成17年から19年まで国民生活局、消費者庁の前身に任期付きで行っておりまして、私が3人目でした。その前に1人目、2人目と行って、どんどん連続して行くことで、行政側の仕組みと考え方を持って帰ってくる。そうすると、弁護士会の中でもできることできないこと、できないかもしれないけれどもやってみるべきこと、その辺りがかなり現実路線になってきたところがあります。とともに、どこがネックになっているのか、それをどうやったら突破できるのかということを自分たちで考えて持っていかないと、やってくださいだけでは動かないというところは反省したところです。

Cですが、協議会ではなく、システム、制度ができると持続性、継続性を持つ。これは、協議会そのものを否定しているのではなくて、実践するタイプのときは、協議して実践してというのを繰り返していかないと制度が継続しないし、古くなってしまうということを感じているところです。

Dです。官は制度をつくるだけではなくて、運営に携わることで制度が改善される。これは、先ほどのウエブ会議もそうですけれども、自分たちの不得手を自分たちで取り除く。これは、自分たちが参加しているからにほかならないからかなと思います。

自治体間の体力格差。京都も南北、あるいは北部の中、南部の中、あるいは大都市である京都市との違い、でこぼこがあります。その辺りを調整していくのがまさに都道府県の役割だろうというのも、この取り組みをやって痛感したところで、逆に今度、都道府県はそれに徹する。現場のでこぼこは自分たちで応援するから、弁護士も出すし、毎日相談が聞けるようにネットでつなぐという役割分担も見えてきたと思います。

F、国レベルではどうだろうかというのが逆に思うところです。特にAやDです。というものが1つ、弁護士会を通じての連携で感じたところです。

次は国レベルの話で、消費者団体訴訟制度に関与して、これは適格団体に関与していて思うところを少し述べさせていただきます。

制度は19年6月に始まって、対象は増えてきたところです。現在、12団体。ことし3月に出された事例集では、25年7月5日現在で差止訴訟件数が30件、訴訟・訴訟外を合わせて111件の事案で改善が図られたとなっていますが、この団体数・件数を多いと見るのか少ないと見るのか、これは立場によっても、またいろいろ何をもとに考えるかによっても違うかもしれません。私が団体に関与していて思うのは、12団体しかまだ増えてこない。訴訟件数も、我々も頑張っているけれども、トータルで30件か、それぐらいの認識で、まだまだ少ないなというところです。これはどこに問題があるのだろうかということを考えていかなければいけません。

それが次からですけれども、差止関係業務は完全に団体に関与する人員のボランティアが主体になっています。そうすると、やればやるほど疲れていくというところに一つの問題点があります。差止訴訟は、実施主体が完全に適格団体ですから民間型ということになって、ここからどういったところに気を付けていく必要があるのだろうかということが次のページに書いてあります。

2点ほど書いてあるのは、先程の実践例を通じて感じるところのものと裏腹の関係にもなっています。公的活動には公的財政支援が必要だろう、制度そのものは政策的につくられた。もともとあるものではなくて、こういう政策が必要だから、これを実践しようとしてつくられたものです。それが持続的に活用されるようにすることは、政策の実現の一環にほかならないと思います。そうすると、公的活動には公的な財政支出が当然必要だろうと思います。その辺りについて、官のほうの意識はどうだろうかというと、愚痴っぽくなってしまいますが、制度はつくるけれども、運用は団体がやっているのだから、サポートするところはすると言ってはくれるけれども、というところです。

制度設営維持のための事務、要するにどんどん事務が大変になってくる。ここが1つ不思議なところです。こういう制度ができたときには、先ほどの座長のお話にもありましたが、規制改革でどんどん規制を緩和していく。民間でトラブルが発生するから事後チェックをかけようとなる。そうしたときに役所が出ていってやるのはなかなか大変だからそこは民間にやってもらったらどうだろうかとなる。そして、民間で消費者団体というのをつくって差止請求というのをやってチェックを働かせる。そうすると、規制改革で問題が起こったところをチェックするためには、その活動をサポートしなければいけないし、活動しやすいようにしなければいけない。けれども、適格団体にいろいろな細かい書類を出させて、それで疲れさせてしまう。どんどん疲れていくけれども、この辺りに問題点があるという声をどこで拾い上げてくれるのだろうか。そうして団体の活動を規制、制約してしまう。規制緩和で生じたトラブルをチェックさせるための団体の活動を規制する。昔、経済界を規制し過ぎて、もう緩和してもていいのではないかという流れと逆の流れのようなものが、こちらに来ているなと感じるところです。そうしたときに、現状がどうなっているのか、それを認識し理解してもらって、運営に携わっていってもらわないとその辺りがかみ合わないのかなというのが、先ほどの1の京都の取り組みを通じて思うところです。

それに関連して最近思うところは、まさに集団訴訟、特定適格消費者団体のガイドラインづくりがこの間まで行われておりました。そちらの議論状況を見ていても、そこが一番不安になってきます。現状を委員の皆様がどこまで認識・理解されて現実的な議論をされているのだろうか、あるいはあるべき理想的な制度を求めて議論されているのだろうか。その辺がちょっと不安になったものですから、我々も我々の声を聞いてほしいということをお願いしてみたところ、当初の予定では最後にヒアリングを行うとなっていたのが、第2回でヒアリングを行うと変わりました。

そこで、全団体から現状はこうですという意見を述べさせてもらいました。しかし、その後の話を見ていくと、制度が信頼を得るためには、きっちりとした制度をつくらなければいけない。そうすると、団体にはきちんと活動してもらわないといけない。その辺りの規制的な部分が少し強いのかなと思わざるを得ませんでした。どんどん話が進んでいって、最後、どうやってこの費用を賄うかというところでは、議論が錯綜し紆余曲折して、いろいろと変わりました。

これは誰もやったことのない制度だから、みんなわからない。だから、仕方がないという面もあるのでしょうけれども、やってみないとわからないのであれば、動かない制度をつくっていたら、ますます実例が出てこないわけですから、どうやったら動かせるようになるのだろうか、その検証、検討もできないのではないかと思いました。

それらを踏まえてというところが3。ここは、書いていますけれども、山本座長のペーパーと大分近いものになっていると思います。最初の、現在の政策推進の在り方・方針、3タイプぐらいに分かれるのかなと思います。

市場管理の行方に混乱が少ないときには、市場に任せて管理していいのではないか。これは、アウトソーシングのような形でやっていけると思いますので、この検討会から外してもいいのかなと思います。

マル2、マル3、市場管理への一任では不安が残る。かえって混乱するのではないかというところには、行政の管理の範囲内で民間事業者に執行を代替させる。適格団体がやっている活動というのは、まさにここのものだと思います。差止請求もそうですし、これから始まる被害回復業務もそうだし、特定の要件を満たした団体にだけやってもらうというのは、民間のあらゆる個人、団体にやらせると問題が起こるというものですから、そうすると一定の要件を満たした団体に公権力の行使、公的な活動を民間に、委託ではなくて執行をお願いしているという形になると、それに対するサポートがどうなるのか。

ここは、最初のお話の担保という言葉を聞いて、なるほどそうだなと思いました。担保するというのは、うまくいくように担保する、活動しやすいように担保するというのがあるべき姿だと思います。ところが、実際にこれまではどうかというと、何かよからぬことをしたときには監督するという方向の話に目線がいっていて、担保ではなく逆だなと聞いていて思いました。ですから、その辺りをこのワーキングではぜひ整理して、明確に将来像を打ち出していただければなと思います。

3-2として配っているのは、ガイドライン検討会の13回に提出した全団体の連名での意見書です。こういう意見書を都合3回出しています。これは、ほぼ全適格団体の連名で出しております。皆さん思うところは同じということを示した資料です。

あと、机上配付させていただいた新聞記事は先程のあんしんチームの取り組み例で、特定事案110番をやったときのものです。御参考にお配りさせていただきました。

以上です。

○山本座長 どうもありがとうございました。大変有益なお話で、相談等のことは、これから人口減少社会の中で、相談の体制自体をどのようにしていくのか、そこで民間の弁護士会等の力をどのように使っていくのかというのは、かなり喫緊の課題になっているのではないかと思いまして、そこは大変興味深く拝聴させていただきましたし、一番最後のところで言われた、政策の実現を団体に任せる。しかし、財政的な裏づけがない状態で、それが行われるという部分が、まさに委員長の問題意識もそこのところにあると伺っていますので、ここはぜひどのように考えるのかという考え方をある程度整理して示すことができればいいなと思っております。

それでは、これから本当に自由の討論の時間に入りたいと思いますけれども、いかがでしょうか、御質問あるいは御意見、何でも結構ですけれども、それではお願いします。

○岩田座長代理 まず、阿南さんにお尋ねしたいと思うのですが、一般社団の法人で消費者問題にかかわる民間の側のエンパワーメントが必要であるというお話が、私にはなかんずく非常に印象に残ったのですけれども、どういう団体に仕上げようとしていらっしゃるのか。

消費者問題にかかわっている、いわゆる消費者団体とか、それから消費者問題に非常に理解のある、熱心に取り組んでいる消費者志向経営力のある企業も中にはあるし、これからそういう力をつけたいと思っている企業とか企業の団体もあると思うのですが、最終的には消費者問題に関する組織のアンブレラになって、そしてそれぞれの組織が実力をつけるために、そういう組織に対していろいろサービスを提供するような社団法人を目指しておられるのかどうかということをお尋ねしたいというのが、阿南さんに対する質問です。

それから、二之宮先生に対する質問は、私は実は京都に別の要件で出張する機会がありましたので、京都府の消費者センターをお訪ねしたことがあるのです。そして、今のお話も伺って、非常に感心した記憶がございます。それで、弁護士会が先頭に立って、こういう体制をつくり上げたということだと思うのですが、ほかの都道府県に仮にこのモデルを参考にしてもらって、同じような仕組み、同じような活動をやると考えたときに、障害になりそうなこととか難しいこととか、京都府はできるけれども、ほかの都道府県は難しいという事情があるのかどうか、そのあたりのコメントをいただきたいと思います。

○山本座長 唯根委員から何か御質問ございますか。今はよろしいですか。

○唯根委員 はい。

○山本座長 それでは、お答えをいただきたいと思いますけれども、お願いします。

○消費者市民社会をつくる会阿南理事長 ちょっと難しいですけれども、私たちのこの組織は純粋の消費者団体というわけではなく、市民団体といった方が適当だと思います。法人でも個人でも入会自由です。消費者問題は生活全般にわたるテーマですので、消費者の権益の保護に係る様々な問題を出しあって、どうあったらいいのか、何ができるかを議論し、学びあって、よりよい市民社会をつくっていくための協働の場になることを目指していますので、できるだけ多くの人たちに参加してもらいたいですし、全国に会員の人たちが広がればいいなと思っています。

そうすると、今、ここでこういう問題が…といった地域の情報が集まってくるというのですか、それらをインターネットの仕組みを使って集めて、議論して、それを自分たちの自己規制といいますか、自主基準、自主ルールづくりにつなげていければいいと思いますし、場合によっては、政府に対して、こういう制度が必要だという政策提案もできるかもしれないと思っています。

○岩田座長代理 もう一点、いいでしょうか。いわゆる消費者団のネットワーキングといいましょうか、消費者団体の在り方、消費者団体自体をもっとエンパワーメントするという観点から、今の消費者団体の組織のされ方というのは理想的でしょうか、それともネットワークという観点とか、もう少し協働でできるものは協働でするとか、そういう観点から、今の消費者団体のつくられ方というか、それについて何か御意見がございましたらお聞きしたいと思います。

○消費者市民社会をつくる会阿南理事長 私も全国消団連をずっとやっていました。各地の消費者団体のネットワーク組織ですね。加入されている消費者団体は、それぞれがそれぞれで、特に消費者教育を中心に活動されていますけれども、そこをもっとエンパワーメントしていくためには、地域においてさまざまな人たちのつながりの核になって広げて行くこと、同時に地域の他のネットワークにも参加しつながっていくことが重要なのではないかと思います。全国レベルでは、今の全国消団連がつなげていく機能を持っていると思いますので、その機能強化も課題だと思います。

地域では、自分たちの暮らしは自分たちで守っていくという消費者自身の活動と組織が必要ですし、そうした活動においては、企業や生産者との対話が必要です。場合によっては、対立、闘いが必要なこともあると思いますけれども、たくさんのそういう場をコーディネートして地域の消費者に提供していくという役割が消費者団体の求められていると思います。

○山本座長 それでは、二之宮弁護士からお願いします。

○二之宮弁護士 まず、これを立ち上げたときのやり方をそっくりそのままというのは、弁護士会側の問題点として、人数・規模というのはかなり大きな問題だと思います。京都は東京・大阪に比べれば全然少ないですが、他の県に比べると一定の人数がいる。一定の人数がいると、委員会活動ですね。弁護士会にもいろいろな委員会がありますけれども、そこで活動する弁護士を一定数確保できます。人数の比較的少ない弁護士会になると、1人で幾つもの委員会を掛け持ちしていますので、それだけでいろいろ大変で、消費者問題ばかりできないというところもあります。

実際、先程述べたあんしんチームを京都弁護士会ではどのくらいの人数で回しているのかといいますと、助言弁護士、1階部分に張りつけるのが二十五、六名ぐらい、あっせん会議、2階部分の委員の候補として20人ぐらいを予定しています。あっせん会議のほうのADRは、それなりのキャリアを積んだ弁護士、消費者委員会の委員長経験者クラス以上を充てています。助言弁護士は、むしろ臨機応変に新しい事件をすぐに調べて助言できるようにということで、若手に担当してもらっています。

当初、各地の現場に助言弁護士を派遣していたときは、京都市以外の地域に行くと、相談員さんもこれから勉強しつつというところもありまして、こちらも若手に行ってもらって、一緒に成長していってもらいます。これが、京都市や京都府の本庁でのセンターになると、我々でもすぐには答えられないような困難な案件も来ますから、そういうところにいきなり若手というのは、これはまた難しいのです。そうすると、弁護士会のほうも育てていく過程と時間と規模・人数が必要になってきます。そういう問題点が一つあるのではないかということは感じるところです。

もう一つは、自治体との連携でやっていくに当たっては、いきなりこれをやりましょうと言ってもなかなか難しいと思います。そういう意味で言いますと、京都は昔からといいますか、京都府の消費者センター、本庁のセンターには助言弁護士を以前からずっと派遣していたので、連携自体はできていました。こういう仕組みづくりをしようというのは、消費者庁ができたのが一つのきっかけではありますが、それ以前からいろいろな話し合いの場はあったのです。先程私は協議会だけではだめで、実践して協議をまたやってということを言ったのは、我々の反省も含めてでして、最初は話し合いの場だけはあったのですが、そこから動きませんでした。他の県がどうなっているのかはわかりませんが、その辺りも違うのかもしれません。

ただ、いきなりこれを立ち上げてというのではなくて、先ほどのウエブ会議の仕組みですと、人数が少なくて、エリアが広いところでも、最初からやりやすいし、導入しやすいのではないかと思います。ベテランの助言弁護士がカメラの前でアドバイスしつつ、若手はその横について勉強してもらうことも可能ですし、あるいは若手自身もモニターのほうで参加してというのもいいかもしれません。他方で、我々も相談員さんから最初はいろいろ言われるのです。こんなことも知らない弁護士か、頑張りやと。しかし、みんなそれは経験していくことでして、いいんだよ、私も最初はそうだったという話でして、その過程が必要だと思います。その辺りも、全国に一気に広がらないところの原因の一つかなとは思います。

○山本座長 先ほど、人口減少社会において相談をどうするかという話をちょっとしましたけれども、今も出てきましたけれども、ウエブ会議の仕組みをうまく使えれば、非常に有効な手段になるかなという気も、伺ってしたのですけれどもね。

あと、私のほうから阿南さんに1つお伺いしたいのは、それぞれの地域でのマルチステークホルダーフォーラムの可能性というお話をされたのですけれども、現状をどのように見ておられて、今後どういうふうにしていったらいいとお考えになっているかというあたりを、少しお伺いできればと思います。

○消費者市民社会をつくる会阿南理事長 現状で言うと、SR円卓会議は、全国何カ所かで開催している文科省の消費者教育フェスタに協力しているという活動が実際に見えているところです。ですがそれだけではもったいないので、位置づけを明確にして、それをブロックの消費者委員会とか、地方消費者グループフォーラムと重ね合わせるような形にしていけたらもっと力を発揮できると思います。経済団体も参加の意欲は十分あるし、NPOもそうです。

○山本座長 ありがとうございます。

ほかに何かございますか。では、お願いします。

○唯根委員 それでは、済みません、御二方両方に伺いたいのですが、こういう市民団体や組織を立ち上げる当初、ボランティアで皆さん、なさっていたと思うのですが、そこには場所とか資金とか、どんなに志がある方たちが集うと言っても、場所とか、費用がかかると思うのですが、ここまで来るまでの御苦労の部分で、一番お感じになっていたり、経験されたことで印象に残ったことがあれば聞かせてください。

○消費者市民社会をつくる会阿南理事長 全て会費でまかなっています。事務所は、食品衛生協会に借りていますが、とりあえず会費収入で事務所の家賃を払えています。会員の活動参加はボランティア。私の報酬はなしで、交通費などもまだ持ち出し状態です。

○唯根委員 それは、阿南さんや参加される方々のお一方お一方の力というか、そういうことがあったからできるということですか。今、地域で何か団体を立ち上げたいとか、人が集まりたいといっても、篤志家というか、中心になる方、ある意味資金力のある方を見つけないと、なかなか定点を見つけたり、定期的にやっていくことを持続するのが実際には難しいと感じるのですが、その辺はいかがでしょうか。

○消費者市民社会をつくる会阿南理事長 そのとおりで、設立の志は非常に高らかですけれども、実際どうやってその団体・組織を維持して運営していくのかというのは非常に難題です。会員の皆さま方のボランティア精神といいますか、この会の趣旨に賛同して参加してくれている強い志で支えられています。ですから、最初はこうした志の共有化といいますか、ここに来たら学べた、すごくいい情報だった、がんがん議論して、文句も言われたけれども、とても勉強になったという場をいっぱいつくっていくことが重要なのではないかと思っています。そのうちに少しずつ会員がふえて、もっと活動できるような余裕も出てくると思います。唯根さんもぜひ頑張って。

○唯根委員 ありがとうございます。地域でつくるというと、小さいところから始めなくちゃいけない。そこのきっかけというか、京都は弁護士会が主導していただけたところが大きいと思いますけれども、地方自治体、体力のない市区町村の行政側の温度差をどうまとまられるのか、すごく難しいとも感じるのです。

○消費者市民社会をつくる会阿南理事長 それは確かに。やるよと言ったらいいのです。叫べばいいわけです。

○唯根委員 この指とまれ。

○消費者市民社会をつくる会阿南理事長 はい、この指とまれで。

○山本座長 励ましをいただきましたけれども、二之宮弁護士、いかがでしょう。

○二之宮弁護士 基本的には一緒です。特に、私が関与している適格消費者団体も収入は主として会費です。立ち上げたときには、志を同じくする人が集まって、最初の一定数まではその人の知り合いだとか、同じような取り組みをやっている人とかで広がっていきます。けれども、どこの団体でも同じだと思いますが、必ず会員数は頭打ちになって、それ以上会費収入は上がらなくなります。では、どうやっているのですかとよく聞かれますが、どうもこうもありません。ある分でできることをやっているのです。足りない分は持ち出しでやっています。何故それで続くのかというところがわかってもらえないところが悩みです。

ただ、実際に被害の現場で被害者の声を聞くと、放っておけますかというところを共感できるかどうかだと思います。そこは感受性というか、感性の問題ですから、消費者問題でこれはひどいなと思う人は消費者団体に参加して取り組みますし、弁護士会にはいろいろな委員会がありますから、冤罪問題、再審問題に取り組んでいる人、子供の権利に取り組んでいる人、環境問題に取り組んでいる人。それらを全部ひどいなと思って、全部取り組むかというと、それは現実に無理だと思います。私が消費者問題に取り組んでいるのは、これはひどいなと一番感じるからでして、そこにはボランティアでも持ち出しででも参加します。同じように感じる人たちが一般市民の中でも、社会の中でも、いろいろなところで共感して集まって会費を出して参加しているのだと思います。

ただ、これは別に日本に限ない話でして、外国に調査に行くと外国でも会費を集めるのは大変ですよという話をよく聞き、同じなのだなと感じます。ただ、ここから先が違い、先程の話に戻りますが、海外へ行くと公的な活動には公的資金が入っています。日本はどうしてそれがだめなのと逆に聞かれるところです。最初の話に戻ってしまいますが、御質問に対しては会費と志と頑張ろうでした。

○山本座長 ありがとうございます。

ほかにいかがでしょう。何か委員長からありますか。

○河上委員長 本当にありがとうございました。大変、参考になりました。

持続的にそういう民間の組織を維持していくとか回していくための要素として、今、お話があった経済的なところ、精神的なところ、そして制度的な支えというのが必要なのだろうと思うのですけれども、本人たちがどこまでやるかという話は置いておいて、国とか公的なところが支援すべきことというのが、民間組織がだんだん育っていく過程で、その内容が違ってくるのかもしれません。しかし、今の段階で、例えば阿南さんが見ていて、まず手をつけなくちゃいけないのはどこだという感じがございますか。

○消費者市民社会をつくる会阿南理事長 先ほどお話ししたのですが、地方には国から財政支援があり、交付金が出ているわけですので、それをどうやって実際に活動している適格消費者団体に回すかということを今すぐ考えるべきだと思うのですね。活性化交付金のプログラムの中に適格消費者団体への支援ということを盛り込んでいますが、具体的に適格消費者団体のどういう事業に、どれだけの支援をするかということをプログラム化するといいますか、そこから始めるしかないと思います。地方の消費者団体には、消費者大会とか消費者教育の活動に対する援助が出ているところもあるのですけれども、適格消費者団体に出しているところは見たことがありません。

○河上委員長 具体的な資金の使い方についてのプロジェクトですね。これは、それぞれのところで考えてはいるみたいですけれども、通常の消費者団体と違って、かなり抽象的なテーマになってしまうので、お金がなかなかついてこないというか、来ないというのは聞いたことがあるのですけれども、逆に言うと、そういうお金の引き出し方というか、ひもづけの仕方をまずは明確にするというあたりから始めないとだめということでしょうか。

○消費者市民社会をつくる会阿南理事長 そうですね。消費者庁もその辺は明確に言う必要があると思いますし、適格消費者団体のほうも、メンバーが都道府県の審議会等に参加されている人たちも多いかと思いますけれども、消費者行政担当課とちゃんと話をするといいますか、適格消費者団体としてつながるということをまずやらないとだめなのではないかと思います。そこから理解が進んで、こういう活動にこういうことを支援しましょうということが出てくるのではないかと思いますが、まだ、そこの相互理解というのがうまくできていないという気がします。二之宮さんはどうですか。

○二之宮弁護士 同じ質問に対して考えていたことは、多分同じことだなと思って聞いていました。短期的にというのではなくて、このワーキング、せっかく立ち上がって、阿南さんが最初にいよいよ始まったなとおっしゃられたのは、私も同じですが、私はむしろようやく始まったなというぐらいに思っています。私が書いたレジュメの2ページの最後のポツです。直近のところではなく、どのような政策支援を行うことができるのか、その根拠と、それをどう整理するのか。できる、できないではなく、ここをまず明確にきちんと打ち出していく。今、お金の話を持ち出すと、ないです、出せないです、無理ですと、思考停止状態に陥り、そこから先へ進まないのが私は一番問題だと思います。

ですから、きちんと整理して根拠づけて、そのうえでない袖は振れないという話なのか、いや、振らせてみようではないかとなるのかは、その先の話だと思います。我々も、回収できないから裁判をしないのかというと必ずしもそうではなくて、これは止めなければいけないという事件は差し止めをするわけです。被害が回復されるかどうかはこれから始まるところですが、今は、判決をとればもうさすがにしないだろうというところをやっているわけです。どういう事案で何が違法かを明確にするのです。そういう作業をこのワーキングでぜひきちんと整理していただきたいというのとともに、それをしてもらうためには、同じ意識を持ってもらわないと、同じバスに乗って前へ進まないと思います。

その辺りが自治体レベルだと同じ意識を持って共有化してプロジェクトを前へ進めることができたのですが、国レベルでは、新制度のガイドライン検討会などを見ていても、少し不安を感じます。これは消費者庁ができたときにもさんざん言われたことだと思いますが、マインドを持っていただきたい。そのためには、短期間でもいいから現場で被害者の声を聞いて、あなたたちはそのための政策をやっているのだということを実感していただきたいと思います。その上で、何が必要なのかをきちんと整理していっていただきたいなと思います。答えになっているでしょうか。

○消費者市民社会をつくる会阿南理事長 政策を整理するというのですか、それは大事ですね。それがないと、なかなか根拠がつくれないことになりますね。

○山本座長 まず、政策の内容とか、まさに民間の主体の位置づけですね。主体が市場の参加者として公正な市場をつくる一翼を担っているのだという位置づけをはっきりさせて、そういう考え方の提示とか共有というレベルの話と、それから現状、お金が出ているところもあれば、出ていないところもあるという、そのあたりのでこぼこといいますか、あるいはやっているところはやっているし、やっていないところもあるという、そのあたりの現状がどうなっているかということをよく調べて、そこから問題を提示していく。こういうところには行っているとか、こういうところには行っていないというあたりを精査していくという作業も必要なのかなと感じました。

もう時間になりましたので、本日の意見交換はこれで終了したいと思います。

阿南理事長、二之宮弁護士におかれましては、きょうは、大変お忙しい中を非常に有益なお話を伺うことができました。どうもありがとうございました。

本日の議事は以上といたします。


≪4.閉会≫

最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。

○金児企画官 次回の開催につきましては、議題、日程を調整の上、改めて御連絡させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○山本座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところ、お集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

(以上)