第9回 消費者契約法に関する調査作業チーム会合 議事要旨

日時

2012年9月21日(金)9:30~12:30

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

 河上正二消費者委員会委員長、山口広消費者委員会委員長代理、
 大澤彩准教授、沖野眞已教授、鹿野菜穂子教授、北村純子弁護士、千葉恵美子教授、
 平尾嘉晃弁護士、丸山絵美子教授、山本健司弁護士
 消費者庁消費者制度課 加納克利企画官
 【事務局】 原早苗事務局長、小田克起審議官、浅田英克参事官、山田茂樹委嘱調査員(司法書士)、戸上真語政策調査員

議題

 広告・契約締結過程における論点整理

議事要旨

(1)契約締結過程の規律

1)広告規制と消費者契約法

  • 総論的検討課題として「広告を含めた勧誘規制に関わる法体系の透明性の確保をいかに図るか」という課題があり、契約の効力には直結しないが、差止めを帰結するルール、あるいは行政的な措置や刑事罰に結びつくルールも消費者契約法の中で整備していくべきかといった立法の基本スタンスに関わる。
  • 各論的検討課題は、現行の契約締結過程に関する規律の拡張や、約款規制・不当条項規制のさらなる整備の必要性などである。

2)誤認類型

  • 「勧誘」要件については、広告などを含まないという制限的な解釈に合理的理由はなく、「勧誘」要件を削除してもよいのではないか。
  • 不実表示型については、「消費者の当該契約を締結するか否かの判断について通常影響を及ぼすべきもの」について、契約締結の過程において事業者が不実表示をし、消費者が事実誤認して、この誤認に基づいて契約をした場合に、取消しを認めてよいのではないか。
  • 断定的判断の提供類型について、不実表示に吸収可能という指摘があるが、投資取引等では、事実誤認はないが事業者の評価を信頼し、本来行わないような判断をする事態もあり得る。不実表示とは別に類型として残す意味はあり、かつ財産上の利得に限るという限定も外してよいのではないか。
  • 事実の不告知類型については、事業者に故意・過失がある場合に、利益告知の先行を問わずに、情報不提供事項について消費者が誤った認識を有し、情報提供があれば契約しなかったのであれば、取消しを認めてもよいのではないか。
  • 取消しのほか情報提供義務違反に対する損害賠償責任規定も消費者契約法に入れるという方向で検討してよいのではないか。

3)困惑類型

  • 高齢者の判断能力の減退、消費者の知識の不十分さ、従業員などの立場の弱さ、不安心理などに事業者が便乗して契約締結をさせた場合には、当該消費者は契約を取消しうるとする立法を検討すべきではないか。
  • 民法の暴利行為とは別に、消費者契約において状況の濫用という特別な取消権を認めることは、必要かつ合理的ではないか。
  • 職場への電話などの執拗な勧誘行為や、契約目的を隠匿した接近行為などで契約締結をさせた場合にも、契約を取消しうるとする立法を検討すべきではないか。
  • 時代によって変転しうる新たな不当勧誘行為を適切に捕捉するためには、不当勧誘行為に関する一般規定(受け皿規定)を併せ立法化すべきである。
  • 裁判例や個別事案における取消の是非等を考えた場合、損害賠償による救済という手段も積極的に評価されてよいのではないか。

4)取消しをめぐる問題

  • 取消しの効果としての清算については、消費者契約法に規律を設けるべきであり、具体的には原状回復についての原則規定、返還の範囲、サービスの場合の返還、商品の費消や使用利益の返還、金銭の返還と利息、給付された物の保管・返還、一定の場合の消費者の返還義務の否定、が考えられる。
  • 契約の複合の場合に、取消しの効果(無効)が他の契約に及ぶ場合があり、民法の改正の動向をふまえつつ、確認的な規定を消費者契約法において設けることも考えられる。
  • 現行法7 条の取消権の期間制限には問題が多く、民法一般の期間制限や民法上の取消権の期間制限との関係をあわせ考える必要があり、数字をあげれば、短期は1年/2年/3年、長期は5年/10年が考えられる。起算点については、追認・法定追認の取扱いとの関係で、「追認」という概念によらない起算点を構想する必要が指摘されている。
  • 現行法5 条は、「媒介の委託」の場合を定めている。消費者契約法は、事業者の責任面のみを定めており、第三者の責任を定めておらず、両者の関係は連帯責任とするのが適切である。
  • 損害賠償については、消費者の過失をどう扱うかという問題がある。

(2)インターネット取引における消費者契約の現状I~広告及び契約の成立~

  • 通販でインターネット関係のトラブルが多く、その中でも未成年者が当事者である場合が多い。
  • 消費者はインターネット上の広告による影響を大きく受ける。
  • 意思形成過程に問題があり得る場合として、選択の自由が奪われている場合、および、取引相手たる事業者を誤認する場合があり得る。個人の情報処理過程のどこに問題があったのかという観点から、インターネット取引の場合も含め、どのような民事責任が考えられるか検討すべきである。
  • 検索をしたら横に広告が表示されクリックすると広告であった、という場合と、広告にアクセスする意思があってアクセスしたものの、広告の記載に不備がある場合を分けて考える必要があるのではないか。
  • 相手が誤認することを認識しつつ放置していたという不作為の場合には説明義務違反が問題となり得る。消費者契約法の取消と民事責任の問題を区別して検討すべきであり、事業者の行為規制と効果を結びつけた検討のみならず、意思表示論の観点から検討することも必要である。

(以上)