第18回 地方消費者行政専門調査会 議事録

日時

2013年6月28日(金)9:30~12:09

場所

消費者庁記者会見室

出席者

【委員】
宇賀座長、沼尾座長代理、池田委員、池本委員、小林委員、竹中委員、
仲條委員、吉川委員、吉冨委員
【消費者委員会担当委員】
稲継委員、吉田委員
【説明者】
佐賀大学経済学部 岩本教授
【オブザーバー】
国民生活センター 千塚研修部長
消費者庁 村松地方協力課長
消費者委員会 山口委員長代理
【事務局】
原事務局長、小田大臣官房審議官

議事次第

1.開会
2.国・都道府県・基礎自治体の役割分担について
 (1)「消費者基本法」「消費者安全法」「消費者教育推進法」等に基づく地方消費者行政の枠組みについて(事務局説明)
 (2)地方行政の現状と今後(沼尾委員説明)
 (3)今後の地方消費者行政のあり方と課題(佐賀大学経済学部 岩本教授説明)
3.専門調査会報告書の取りまとめに向けて(事務局説明)
4.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:9KB)
【資料1】 「消費者基本法」「消費者安全法」にみる地方消費者行政に係る国・地方公共団体の責務(事務局提出資料)(PDF形式:145KB)
【資料2-1】 地方行政の現状と今後(沼尾委員提出資料)(PDF形式:602KB)
【資料2-2】 市町村における事務処理のあり方に関する調査について(出典:総務省ホームページ)(PDF形式:197KB)
【資料2-3】 第29次地方制度調査会答申(基礎自治体関係)(出典:総務省ホームページ)(PDF形式:183KB)
【資料3】 今後の地方消費者行政のあり方と課題(岩本諭佐賀大学経済学部教授提出資料)(PDF形式:267KB)
【資料3-参考】 消費者委員会「地方消費者行政に関する委員会ヒアリング」発言概要(平成24年6月26日開催・第94回消費者委員会 岩本教授提出資料)(PDF形式:289KB)
【資料4-1】 消費者委員会地方消費者行政専門調査会 報告に向けてのたたき台(事務局提出資料)(PDF形式:92KB)
【資料4-2】 消費者委員会地方消費者行政専門調査会報告取りまとめに向けて 論点とこれに対する委員の主な意見について (事務局提出資料)(PDF形式:114KB)
【資料5-1】 基礎自治体における消費者行政の体制整備の課題(池本委員提出資料)(PDF形式:113KB)
【資料5-2】 消費者行政職員向け研修カリキュラムのテーマと視点(案)(池本委員提出資料)(PDF形式:111KB)

≪1.開会≫

○原事務局長 おはようございます。
 それでは、時間がまいりましたので、始めさせていただきたいと思います。
 本日は皆様お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから「消費者委員会地方消費者行政専門調査会」第18回会合を開催いたします。
 なお、本日は国民生活センターの西総務部長におかれては公務のため御欠席ということで、千塚研修部長に代理出席をいただいております。
 それでは、議事に入る前に配付資料の確認をさせていただきたいと思います。
 配付資料につきましては、議事次第と書かれた裏に配付資料一覧を載せておりますが、座席表の次に資料1といたしまして前回、条文だけで御紹介いたしましたけれども、消費者基本法と消費者安全法に見る国、地方公共団体の責務を整理いたしました表で、事務局で準備いたしました。
 資料2の関連ですけれども、本日ヒアリングをお願いしております沼尾先生から御提出をいただいた資料で、枝番がついておりますが、関連の資料が2-3まであります。
 資料3は、同じく本日ヒアリングをお願いいたしました佐賀大学の岩本先生から御提出をいただいた資料になります。
 後半の議論になりますけれども、資料4が「地方消費者行政専門調査会 報告に向けてのたたき台」ということで、事務局で準備をした資料になります。
 資料5は前回、時間がなくて簡単な御紹介で済ませてしまいましたけれども、池本委員から御提出をいただいた資料になっております。
 参考資料といたしまして、6月末に消費者庁で取りまとめられました、いわゆる消費者白書です。そちらの概要を参考資料でおつけをしております。不足がございましたら審議の途中でお申し出をいただければと思います。
 それから、本日は会場を変更させていただいて申しわけございませんでした。狭いところで大変恐縮です。それから、マイクも御発言のときまたよろしくお願いいたします。
 それでは、宇賀座長、議事進行をどうぞよろしくお願いいたします。

≪2.国・都道府県・基礎自治体の役割分担について≫

(1)「消費者基本法」「消費者安全法」「消費者教育推進法」等に基づく地方消費者行政の枠組みについて

○宇賀座長 それでは、議事に入らせていただきます。
 本日の最初の議題は「国・都道府県・基礎自治体の役割分担について」です。議題について資料を御用意いただいておりますので、事務局より御説明をお願いします。

○原事務局長 資料1をごらんになってください。前回、条文だけお示しをして、時間切れにもなって、十分御説明できなかったので改めて表にいたしました。消費者基本法と消費者安全法に見る地方消費者行政にかかわる国、地方公共団体の責務ということで、責務についてどういう書かれ方をしているかということで整理をしております。
 まず消費者基本法ですけれども、第2条の基本理念のもとに、第4条に地方公共団体の責務が置かれておりまして、地方公共団体は第2条の消費者権利の尊重及び自立の支援そのほかということで、こういった消費者政策を推進する責務を有するという規定が置いてあります。
 それから、国ですけれども、条文は前後いたしますが、第3条には国の責務が置いてありまして、消費者基本法は消費者保護基本法から消費者基本法に改定をしたわけですけれども、2005年でしたか、年次が明確でなくて申しわけありませんが、第25条に国民生活センターの役割を規定いたしました。これは消費者保護基本法にはなかったものですけれども、消費者基本法に国民生活センターの役割を規定いたしまして、第25条で後段に書いておりますけれども、中核的な機関として積極的な役割を果たすものとするという規定を入れております。
 それから、右側の消費者安全法ですけれども、第3条の基本理念のもとに、3項を見ていただきたいのですが、消費者安全の確保に関する施策の推進は、国及び地方公共団体の緊密な連携のもとと書かれておりまして、アンドの関係で規定をされております。それを受けて第4条ですけれども、ここにおいても国及び地方公共団体の責務ということで、全体に第4条1項の3行目に書いてありますけれども「責務を有する」という規定で、ここもアンドで書かれております。
 第9条に「国及び国民生活センターは」ということで、ここも必要な援助を行うものとするという規定が置かれております。
 裏を見ていただきたいのですが、これに昨年8月に成立いたしました消費者教育推進法の規定を入れていくとどういう枠組みになるかということですが、黄色の背景で書かれているものが消費者教育推進法の規定を入れ込むと、こういう形になるということになります。ピンクもありますけれども、ピンクはほかの法律ということで書いておりまして、こういう形に整理できるのではないかということです。
 地方公共団体のところで、左から2つ目のところが実際の事務の実施について書かれているわけなのですが、安全法の8条の規定のところに基礎自治体と都道府県の事務の実施が書かれておりますけれども、同様の項目が並んでおりますが、第8条で都道府県のところでは下線を引いておりますが、市町村相互間の連絡調整・技術的支援、専門的知識及び技術を要する消費者事故等の調査・分析、市町村の区域を超えた広域的な見地が必要なことを行うということで、ここは都道府県にかかっていることになります。
 国については今回なかなか議論の審議のまだ及ばないところだと思いますけれども、左から3番目、地方公共団体に対する援助で、安全法の9条に情報の提供そのほかの必要な援助ということが規定されております。機能、役割ということで整理をすると、こういう形になろうかと思います。参考ということで御紹介をさせていただきました。
 以上です。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 本日はお二方からのヒアリングを行います。まず、地方財政の専門家でもあります沼尾委員から、地方行政の現状と今後について御説明をいただきます。説明は15分程度でお願いします。

(2)地方行政の現状と今後

○沼尾座長代理 おはようございます。日本大学の沼尾です。
 それでは、お手元に資料2-1、資料2-2、資料2-3という3種類があるかと思います。資料2-1だけ別セットになっていると思いますが、主にそちらを使ってお話をさせていただきます。
 本日は、地方行政の現状と今後というテーマでの報告をということですけれども、これだけ地方消費者行政は非常に重要だと言われつつも、自治体の現場を見ますと、人員と財源の確保が非常に厳しいという実態がある。限られた人員と財源でどうするかということを現実的に考えざるを得ないわけですけれども、まずそのあたりの現状認識を一度確認したいというのが報告の1点目の主旨でございます。
 もう一方で、さすがにさらなる市町村合併は難しいだろうというときに、地方制度調査会等では、今後市町村における事務の共同処理や、広域自治体としての都道府県による市町村との連携、補完について検討されておりまして、そのあたりの状況について簡単に御紹介させていただきたいと思います。
 まずレジュメの1ページ目ですけれども、市町村の状況ということで、皆様既に御承知だと思いますが、平成の大合併で市町村数というのがこの十数年大幅に減少しまして、2012年の時点で1,719団体ということです。市の数はふえているのですけれども、町は本当に半減しまして、村の数も大幅に減ったということです。
 では、自治体の規模、数がどうなっているか見ますと、グラフでは20万人未満の市町村の数だけを掲載しておりますが、実は人口の平均値で言うと6万8,970人なのですが、人口規模の多いところから少ないところまで並べると、ちょうど真ん中の規模の自治体、すなわち大体860番目ぐらいの自治体というのが人口規模2万4,750人でして、実は1万人未満の市町村数がかなり多いという実態がございます。ですので、人口で見るとかなりの部分が大都市圏に集まってはいるのですけれども、これだけ小規模な多数の市町村における消費者行政サービスをどうするかということを、もう一方で考えていかなければいけないという実態が見えてきます。
 次に人口構造を見ていきますと、皆さん御承知のとおり、人口減少が進んでおりまして、国勢調査で平成17年と22年とを比べますと、5年間で人口が減少した市町村数は全体の75%以上という状況です。その一方で高齢化率は常に上昇しているような状況で、全国の市町村平均で見ると28.0%、そして高齢化率が3割を超える市町村というのは、人口規模が小さい地域に集中している状況がございます。
 さらに、今後は3大都市圏で高齢化が急激に進行することを考えますと、大都市の場合、高齢者の絶対数が非常に多いので、今後消費者行政を含めて、どのようにして高齢者の生活を見守り、支えていくかということが課題になります。
 実際に東京都の人口推計を見ますと、東京はまだこれから人口は増加すると言われているのですが、2020年をピークにその後、加速度的に減少が進みまして、東京都が2100年までの人口推計をしているのですけれども、2070年に1,000万人を割り込む。2100年にはピーク時の半減となるだろうと言われています。一方、高齢者人口はどんどんふえていく。特に単身高齢者数が大きくふえていくだろうということで、こうした人たちに対する生活支援というのが行政課題としてこれから大きく増えるだろうと言われています。
 他方、地方圏では人口は著しく減少するのですけれども、世帯数は実は横ばいです。ですので、単身世帯が点在したまま居住するということが言われていて、広い中山間地域にぽつぽつと単身の高齢者がずっと定住する状況の中で、どのように暮らしを支えていくかというのが地方圏の課題となります。このように、大都市圏においても地方圏においても人口減少と高齢化、単身世帯の増加の中でどのように見守りというところを支えていくのかということが課題ですし、それは地方消費者行政の分野においても同じであろうということが言えると思います。
 2ページに行きます。一方それを支える自治体の側の状況なのですけれども、これも皆様御承知のとおりで集中改革プランを投じて定数削減と給与カットが継続してきました。一般行政職員というのは、常勤の公務員プラスフルタイム雇用の臨時職員を含めた数で、パートは含んでおりません。これがピーク時が1994年で、その水準から78.9%、つまり8割以下と、2011年まで公務員の数が減少してきております。ただ、行政課題のほうは、高齢化の進展を背景とした消費者行政なども含めてどんどん拡大している。それをピーク時の8割の職員で支えなければいけないという実態がございます。
 他方で小規模町村の場合は、人口に対する職員数の割合が相対的に高い傾向があります。ですので、これからさらに職員数のカットということが言われた場合に、特に小規模町村に対して職員数を削減できないかということが言われる可能性もあって、こうした点からも事務の共同処理ですとか、都道府県の補完ということがますます言われるようになると思われます。
 このほかには、ハードですね。今後大都市部ではインフラの改修、更新の時期を迎えます。さらに、ソフトの面でも今、言ったような見守りというものがふえていく中で、これを一人一人の個人の自己責任ということだけでは厳しい。これをどういうふうに支えていくのかという点から課題が出てくるだろう。
 その次、一方でそれを支える専門職員なのですけれども、これは皆様御承知のとおり、小規模市町村では専門職員の確保が非常に困難な状況でして、消費者庁の相談員にかかわらず、栄養士、保健師・助産師、土木技師、建築技師等、やはり人口規模の少ないところでは専門職員が抱え切れないという実態がございます。これを共同処理等で支えているという状況です。
 3ページ、次に財政状況なのですけれども、これも皆様御承知のとおりだと思いますが、既に今年度末の普通国債残高は750兆円規模になるという見込みでして、国と地方を合わせた長期債務残高は977兆円となる見込みです。今後、社会保障関係費がどんどんふえていく中で、一方で地方交付税を削減するべきではないかという議論が台頭してくるのではないかという指摘もございます。
 実際に地方交付税の財源保障機能はかなり限界に来ているという指摘もあります。例えば1つは行政需要です。消費生活相談ですとか、消費者行政というのは新たな需要が出て、それが実際に基準財政需要額の中で地方交付税で算入されたとしても、実際に現金が本当に地方自治体に交付されるかどうかというのは何とも言えないということがございます。
 今年度の地方財政計画ベースで見ますと、交付税総額は17.1兆円です。ピーク時20兆円超えていたものが、小泉構造改革の中で毎年1兆円ずつ削減され続けてきまして、民主党政権になって一旦総額が回復するのですけれども、これからまた再び削減が続くのではいかという指摘もございます。
 既に17.1兆円渡してはいるのですけれども、実際に地方財政計画全体で見ますと、地方全体の財源不足額は13.2兆円という数字が出ていまして、このうちの約半分は国が国債を発行して補填をする。あと半分は臨時財政対策債ということで、自治体が地方債を発行して調達をするという状況ですので、いずれにしても自治体の財政も非常に厳しいだろう。財政当局は歳出削減抑制基調を続けていくと思います。
 こうした中で義務的経費と言われている人件費、扶助費、公債費の抑制ということが言われるわけですけれども、人件費は先ほど見たような状況で毎年職員数カットとか何かで減らしてきているのですが、さはさりながら他方で生活保護の受給者の増大ですとか、高齢者に対するさまざまな支援とか、子育て支援といったところがふえてきておりまして、扶助費がそれを上回る勢いで増大をしているということで、実際に新たな裁量的な政策経費をどこから捻出するのかということが課題になっているのが現状でございます。
 そのように考えますと、こうした地方消費者行政の分野においても基金終了後、新たな財源を確保すると言っても、なかなか打ち出の小鎚がどこにもないよということで、これをどういうふうにしていくのかというのが大きな課題だろうと。
 厚生労働省で今年度から新規に予防接種の事業を新たに追加するということで、法改正が行われたのですけれども、これが法定化された段階において、結局、補助負担金はつかなくて、全て交付税の基準財政需要額で見るという非常にめずらしいスキームなのですが、そうした財政措置が行われたということがございました。
 この時期に新たな補助金、負担金をつけるというのは非常に厳しいということで、何とか交付税の中に算定項目を入れてもらって、要するに裕福な自治体、厳しい自治体かかわらず、基本的な権利として予防接種、基本的なものを受けられるようにしたいということです。
 では、地方消費者行政をどうしていくのかということが出てくるわけですけれども、このように人員と財源の確保が非常に厳しい。無論、頑張っている自治体はあるわけですが、全ての市町村にいわゆるスーパー公務員の方がいるというわけではないので、それをどうしていくか。特に小規模市町村をこれからどうしていくのかということが課題になるのではないかと考えております。
 次、2番目に小規模自治体の課題ということなのですけれども、今ここで人口1万人未満の市町村を小規模自治体と定義しますと、これが全体の3分の1弱、480ございます。これには3つぐらいタイプがありまして、まず人口5万人以上の都市と隣接している市町村が223、都市とは連関していないのですけれども、各圏域の町村が集まった形で連担しているものが207、どことも連担していない離島など50がございます。
 こうした離島などのように、近隣市町村との共同処理がなかなかやれないような市町村が存在しておりまして、ここはやはりある程度都道府県の補完を考えざるを得ないのではないかということが言えると思います。
 また、こういった小規模市町村の場合には、財政力指数が低い傾向がございまして、財政的には地方交付税の依存度が高い。今後、交付税が仮に減っていくとすると、ここを何らかの形でサポートする仕組みが必要になるのではないかと言えると思います。
 実際に共同処理による対応状況ということで、どういう方法があるのか。これはこれまでも議論になっていた点なのですけれども、今、簡単に申し上げますと、そこにマル1~マル5で示した通り、事務委託、機関等の共同設置、協議会方式。これは法律上の新たな設立を要しない仕組みでして、それに対して別法人の設立を要するものとして一部事務組合方式と広域連合というのがございます。
 実は、このほかに3ページ一番下に書いてあるのですけれども、地方自治法で規定されていない任意の連携や協力、自主協定とか覚え書きなどで連携をしているケースなどがございまして、1つ例を紹介しますと、例えば山梨県では平成17年度から県と全市町村が一体となって小児救急医療の事業を推進するという協議会を立ち上げておりまして、県内どこにいても子供が救急医療が必要になったときにやれる体制をつくろうということで、県が中心となって全市町村が集まった協議会をつくっているという事例もございます。
 次のページに行っていただいて、この共同処理の状況なのですけれども、実際に事務委託、共同設置、協議会、一部事務組合、広域連合ということで、記載されているだけの件数がございます。以前にここでも議論になりましたけれども、委託の場合は一旦委託をしてしまうと、委託したほうの自治体には一切その権限がなくなってしまうということで、そういう意味で言うと共同設置ですとか協議会方式などのほうがいいのではないかという議論もありますが、実際に機関等を共同設置するという場合も、なかなかその事務を効率的にやるのが難しい面があるとか、あるいは機械的に例えば許認可のような形で処理をしていくようなものであれば、かなり効率的にやれるそうなのですけれども、消費生活相談のようにかなり細かくそれぞれの状況に応じて臨機応変に対応していかなければいけないタイプのものについて、これがどこまで適用できるかというのは課題もあるのかなという印象を個人的には持っております。
 では実際にこの事務処理のあり方について、それぞれの自治体がどういうふうに認識をしているのかということで、資料2-2は総務省が昨年、全市町村を対象に事務処理の現状とか今後のあり方について調査を実施したものなのですけれども、まず共同処理をする上でどういう問題がありますかということで質問をしているのですが、これを見ますと迅速な意思決定ができないとか、構成団体の意見が反映されにくいといったような回答が出ている。ただ、共同処理をやっている自治体に対して何らかの課題があるかということで言うと、課題があると答えたところは2~3割でして、特に課題はなくうまくいっていますよというところが6~7割ということでもございます。ただ、やはり課題がないわけではないということです。ということでこういう回答がございます。
 2ページは事務処理体制の話なのですが、これで下のほうの2つの表を見ていただきたいのですが、周辺市町村との共同処理を検討する必要がある事務は何ですかということと、都道府県による処理を検討する必要がある事務は何ですかという質問に対する回答なのですけれども、税の徴収とか国保とか介護保険、障害者福祉といったものが挙がっています。実は総務省に聞いたところ、選択肢のなかに消費者行政を入れていなかったということで、消費者行政は「その他」に入ってしまっているのです。消費者行政という回答項目が入っていたらまた少し違った結果が出たのかもしれないですけれども、ということで消費者行政については参考になるかどうかわかりませんが、こういうことです。
 3ページ、周辺市町村との共同処理の検討ということで、どういう理由から共同処理が必要かという問いで見ますと、財源の不足、人員の不足、職員の専門知識の不足、行政サービスを提供する上で単独の市町村では事業規模を確保できない、その他ということで回答が出ているのですけれども、この3ページ目が市町村との共同処理への回答で、4ページ目が都道府県との補完と言うのでしょうか、都道府県にやってほしいというところでの検討ということなのですが、これを見ていただきますと財源不足、人員不足という点から周辺で共同でやりたい。県にもう少しやってもらいたいということの回答が多いのですけれども、職員の専門知識が不足している。これを補完してもらいたいというところは都道府県に期待をしているという回答が非常に多くて、これは共同設置で乗り切るよりも都道府県に期待したいということが、わかります。
 資料2-1のレジュメに戻ってください。3番目は都道府県による基礎自治体の支援ですけれども、今、見ていただいたとおり、地方消費者行政においても基礎自治体が共同処理をやるのか、都道府県による補完を期待するのかという2通りがあるのですけれども、やはり専門職員の確保という面では、都道府県への補完を期待する部分が大きいだろうということです。特に県の出先機関は土木ですとか園芸とか、特に技術面です。ハード、インフラ整備関係では専門の職員がおりまして、なかなか市町村単独でこういった職員を複数確保することが難しいという中で、そういったところを期待する部分が多いと言えます。
 また、財政負担という面でも、特に介護保険ですとか後期高齢者医療、国民健康保険などは、むしろ県でやってもらいたいという意見が非常に根強いわけです。というようなところはございます。
 先ほど申しましたとおり、近隣に連携できるような市町村がないような離島などの場合には、これは都道府県が補完をせざるを得ないだろうということは言えるだろうと思います。
 その次に、では実際に都道府県が代行できるという制度が一部設けられておりまして、これ実は過疎法で規定されているのなのですけれども、基幹的な市町村道あるいは農道等で大臣が指定したもの、あるいは公共下水道で大臣が指定したものについては、都道府県が計画を策定して、都道府県が市町村にかわって事業を行うことができるという規定がございます。過疎法での対象市町村は775なのですけれども、2010年度実績では道路230件、下水道5件ということで、結構この制度で都道府県に代行してもらっているという自治体が、過疎地域では多いということです。
 これは実は過疎法だけではなくて、山村振興法とかほかの法律でも似たような制度が入っておりまして、ハードについてはこのように都道府県が代行する仕組みがございます。
 他方、市町村から都道府県への事務委託の実態なのですけれども、これも総務省の調査結果をここに貼りつけました。字が小さくてごめんなさい。競艇事業ですとか児童福祉、介護認定審査等いろいろなものを市町村から都道府県へ事務委託しているという事例がこのぐらいあります。
 ただ、これを見ますと機械的に処理できるものですとか、専門技術を必要とするものが圧倒的でして、ある種の顔の見える関係を前提としたような対人サービスというものは、ほとんどないと言っていいだろうということです。
 そう考えますと、やはり財政上の課題ですとか、一定の機械的な行政手続あるいは認可ですとか、あるいは対人サービスの中でもこの後、申しますが、むしろ顔が見えてしまうと困る。匿名性を担保しなければいけないようなものについては、より広域的なところに委託をしていくスキームが考えられるのかと思いますけれども、それ以外のところはなかなか難しいのかなという実態が見えてまいります。
 最後5ページ目です。ただ、実際に今も申しましたとおり、都道府県から市町村に対して一定の補完なり支援をしているケースというのは、やはり技術的な面でのハードの部分が非常に中心になっておりまして、あと、生活保護の福祉事務所の設置などがあるのですけれども、それ以外のところのソフトの部分というのは、なかなか制度的にも整備されていないような面もございます。
 それから、ここには書いていないのですけれども、これまでのヒアリングでも出てきましたとおり、今、都道府県も職員数の削減という状況の中で出先機関の縮小ですとか、あるいはソフトの部分についてはどんどん撤退する方向で、むしろ対人サービスというのは基礎自治体の役割なのだから市町村でやってもらいたいということで、そういったところについては県のほうが規模縮小するような傾向になっている。だけれども、このまま県のほうも縮小、撤退をしてしまって、小規模町村でもなかなか対応できないとなると、そこに穴があいてしまうという問題も出かねないわけです。
 そういう意味で1つ参考になるのが、高知県が導入している地域支援企画員制度というものです。これはソフトでの支援をやっているものなのですけれども、2003年度に当時の橋本知事が始めたのですが、福祉とか農業といった分野ごとの出先機関に属さない職員が、県の職員として市町村役場に机を置いて、そこで実際に地域に駐在して、職員目線で自主的に地域の中を回って、市町村を支援したり集落を支援したりするというような仕組みでございます。なので、住民主体となって取り組む地域づくり活動へのアドバイスとか、ほかにはこういう制度があるとか、こういう補助があるとか、そういうことをいわば県との太いパイプと、要するに単独で歩き回れるという小回りを利かせた良さをうまく活かしながら、人と人と地域をつなぐパイプ役のような機能を担う。こういう仕組みを県が入れているのです。
 このようなソフトの支援をこれから多分、県として考えていかないことにはならないだろうと思うのですけれども、実際は対人サービスについて県は引きぎみでして、ここをどう制度化できるかということも課題になってくるのではないかと思います。
 そういうところで見ていきますと、小規模町村の場合に単独で専門職員を確保することは難しい。あるいは場合によっては消費生活相談の場合、匿名性を確保しなければいけないということもあることを考えると、ある程度広域的な対応ですとか、県の補完が求められるだろう。
 他方で住民に身近なところできめ細かいアドバイスができる。あるいは一人一人にいろいろな教育活動ができる、見守りができるという意味で、基礎自治体がやることの意味も大きいだろうと考えていくと、その両面をうまく補完するような市町村の役割あるいは共同でやれること、あるいは県との補完というところの整理をしていくことが、大事なのではないかというふうに考えております。
 また、事業者に対する指導・監督というのが国及び都道府県の役割ということを考えると、やはり県が消費生活相談を一部担当することで、そこの事業者指導とのつながりがうまくいくのではないかという面もあるので、こういった点からも県の役割をもう一方で考えていくことも必要ではないかと思っています。
 これは前回ヒアリングで出たことですけれども、県の職員の方たちが、むしろ県内市町村の方たちへの研修のプログラムをしっかりつくっていくようなところで、専門的な技術を地域の中で確保するというサポートの仕方もあるかもしれません。
 では、こういったことをいろいろアイデアとしては出てくるのですけれども、その人員と財政措置をどうするかという話なのですが、参考ということできょう資料2-3をつけておりますけれども、第29次地方制度調査会の答申の中で、これからの行革のあり方を議論する中で単独の市町村でやれないことについては、一定の例えば地方中枢拠点都市みたいなものを設けて、そこを中心とした連携が図れないか。さらに言うと、そこの中心となる都市に対して、圏域の役割に応じた適切な財政措置を図ってはどうかということが答申として打ち出されました。
 あるいは従来からある定住自立圏施策についても、定住自立圏の取り組みを促進しつつ、一定の財政支援を例えば交付税措置でやれないだろうかという議論もあったと聞いております。
 こういった中核都市から相当距離がある場合あるいは広域連携が困難な場合には、都道府県による補完も選択肢としてあっていいと思うのですけれども、いずれにしても、こうした状況の中で何らかの共同での取り組みとか、県の補完に対する財政措置みたいなものを考えていかなければいけないのではないかということも地制調などでは出てきているので、そういったところを見据えながら対応を考えることが必要ではないかと思います。
 きょうは3大都市圏の話は出てこなかったのですけれども、こちらについても実は地制調でも単独の都市でやるにはなかなか非効率な面もあるので、水平相互補完的な役割分担を考えてもいいのではないかという議論があったことを、最後に補足させていただきたいと思います。
 若干長くなってしまいましたが、以上です。

○宇賀座長 どうもありがとうございました。

(3)今後の地方消費者行政のあり方と課題

○宇賀座長 続きまして、佐賀大学経済学部の岩本教授から御説明をお願いします。
 岩本先生は経済法の専門家であり、本日は「今後の地方消費者行政のあり方と課題」について、国、都道府県、基礎自治体の役割分担を中心に御説明をお願いしております。説明は15分程度でお願いいたします。

○岩本教授 ただいま御紹介いただきました、佐賀大学の岩本でございます。
 昨年も消費者委員会にヒアリングということで報告をさせていただきましたが、恐らく本日の内容は昨年とほとんど変わらないだろうということを、まずお許しいただきたいと思います。
 6月10日に事務局から本日の依頼を受けました。そこでは消費者行政の今後のあり方ということと、さらに今、沼尾先生からありましたけれども、基礎自治体をどうするのかというような問題点、最低限のサービスはどう考えるのかということにつきまして、何かしゃべっていただきたいということでございました。
 まず基本的な立場ということで、手薄なレジュメで大変恐縮でございますけれども、基本的に去年と同じなのですが、概要だけ申し上げますと、最低限の行政サービスをどう考えるのかということであります。これは既にこの委員会でも昨年から今年にかけてずっと議論されてきておりましたし、今日の資料の最初についておりましたが、消費者基本法と安全法という2つの根拠法がありまして、まずこれがどういう立法趣旨から生まれたのかについてはあえて申し上げませんけれども、まずそれが実現できているかどうかというところを確認するのが、まず最低限のサービスだろうというところが基本的な立場であります。このレジュメの中にでも消費者行政、インフラという言葉を使っていますけれども、それができていますかという確認をすることが現在求められていることだろうということだと思います。その上で、どうそれを継続していくのかということなのですが、その継続の仕方が問題でありまして、ここでPDCAサイクルという言葉がありますけれども、結局、長年、少なくとも私が知っている限りでは20年以上前から消費者行政、特に自治体の問題は指摘されてきているわけでありまして、それで消費者庁が設置された。そして、財源が足りないということで、そこに活性化基金等の財源を投入した。それでもできないということであれば、これが機能していないのではなかろうかということで、昨年申し上げました。
 その際に昨年申し上げたのは、一体どうなっているかということの基礎的なデータを踏まえた議論が必要であると、高いところから物を申してしまいましたけれども、今回はそれが非常にいい入口ができたと思っていますが、これはまず先週の消費者庁の白書でございますし、また、本調査会の資料と書いてございます3月28日のものと、さらに詳しい4月25日のこの調査会で出されました非常に貴重な分析資料ができたというのは、非常に大きな点だろうと思います。
 これがまず「見える化」ができたのではないかということで、国民、消費者、地方自治体の住民にとってみれば、今、どうなっているのかということが一番知りたいものでありまして、さらにそこから一歩進めまして、自分の自治体ではどうなのだろうかというところが見えるというのがいわゆる需要者の観点であろうし、これに応える供給者側すなわち行政側としてはそれを見せることが必要である。このようなマッチングの第一歩ができたという段階で、本日こちらのほうに来させていただいた次第でございます。
 その中で消費者行政の質の向上を図っていくことについては、むろん、その中でまず最低限のサービスができたかどうかということの上に、質の確保があることが私のまず申し上げたいところでございます。
 あと簡単にメモ書き等のレジュメでございますけれども、現状分析ということで1~2ページにありますが、今、申し上げましたお話でございますけれども、2ページの頭、消費者行政インフラについては、基本的に関係法律の各項目が達成できているかどうかというところが、このインフラ整備の状況を示すものであろう。ですから、まずそれができていれば、最低限のサービスというのは一応できているのだろうと考えてもよかろうと思っている次第でございます。
 では、その場合のインフラとは何かといいますと、2ページ(2)でございますけれども、要するにもともと消費者基本法の改正、消費者庁の設置にかかわる中で、ずっと政府で議論されてきましたのは、情報、窓口の一元化ということでございます。特に情報の一元化は国レベルにおいてもそうでありますし、地方においてもそうだろうということでありまして、当然それには窓口の一元化も伴ってくるということで、それぞれの法律がつくられてきたという経緯だと思います。
 その中でまず重要なのは、特に行政の一体的推進、情報の集約体制が確立しているかどうかというチェックがされる必要があるということで、消費者庁の白書ができていますし、また、4月25日の調査会の資料もできていると思います。そこで結局、活性化基金というのはインフラ整備のために投入された。かなり延長した部分も含みまして非常に貴重な財源、巨額な財源が投入されているわけでありますけれども、それでも情報集約体制ができなかったという状況が報告されているわけでありまして、例えば基礎自治体119自治体についてはまだできていないことが報告されています。ただ、逆に言いますと約9割につきましてはできているわけでございますので、残り119と言うと多いか少ないかは別にしまして、これについてはなぜできなかったのかということについて、個別に見ていく必要があるだろうと思っております。
 情報の一元的集約につきましては、PIO-NETがあるところないところがありますけれども、とりあえず相談窓口が設置されていることがそれぞれの法律の目的でございます。したがって、それができているのかどうなのかというところのチェックが必要になってくるだろう。
 2~3ページにかけて、これはまた後に申し上げます消費生活相談の実施というところについても、相談窓口の質はどうなのかということになりますと、非常に質の問題というのは悩ましいところがあります。同時にこれはいわゆるセンターあるいは相談員自体の質の問題もあるかもしれませんけれども、消費者問題とは何かということの捉え方の問題として、やや偏った部分があるのではなかろうかという部分がございます。
 3ページの上段でございますが、では相談員、実際にこれも4月25日の資料でありましたけれども、いわゆる偏在しているという問題や、資格、有資格、無資格の配置の問題、大都市に偏っている等々の問題があって、それがようやく資料として見える形になりましたが、結局それは配置しました、相談員が増えましたと言えば、1つはそれはアウトプットなのですけれども、需要者の観点からするとアウトカムが一体どうなっているのか。相談員がちゃんと定着していますかという点については、実際に定着率の問題も出ました。これは恐らく研修の問題だろうと思っておりますけれども、では離職率はどうなのだろうか。そうしたさらに細かくその成果というものを見ていく必要があるということを、ここで述べております。
 また、さらに定着率の問題は雇用の形態、賃金につきましても消費者委員会の資料がございましたけれども、さらにどういう形で雇用されているのか、嘱託なのか直接雇用なのか、あるいは外部団体への委託なのかという形を見ていくことによって、配置の問題についての実態を明らかにすることができるだろうと考えておりまして、そこから消費者相談員の広角的な配置のあり方が検討できるだろうと思います。
 その上で3ページからでございますが、では小規模自治体の底上げという非常に難しい問題でございますけれども、まず基本的には設置されていないというところについては、まず個別に完全に見ていく必要があるだろう。なぜできないのかというところの個別の原因なりを探っていく必要があるだろうと思っております。そして広域自治体あるいは都道府県あるいは場合によっては連携ということが当然考えられてきますが、その場合でも自治体単独でもできるけれども連携のほうがいいのか、あるいはできないから連携のほうがいいのかということを見ていく必要があるでしょうし、先ほど沼尾先生の御報告にありましたけれども、広域化した場合に本当に広域はできましたが、では動きますかという話になってくるということなので、やはり実態を踏まえて広域化の必要性について考えていく必要があると考えております。
 基礎自治体の問題は、結局は地方の消費者行政、いわゆる広域自治体、都道府県の問題になってくるだろうということなので、都道府県のガバナンスの問題となってくると思います。これは消費者基本法、消費者安全法の中でも都道府県の義務がありますが、例えば都道府県の消費生活センターというのは今、基礎自治体で処理できない問題や広域な問題についてやっていかなければならないわけでありますけれども、その場合にそれができているかできていないかということについては、やはりこれは都道府県、広域自治体の問題を考えていく必要があるだろうということです。そこにやる気のあるというふうに書いていますけれども、都道府県は絶対にやらなければならないわけでありますが、市町村の中にもやる気のある自治体あるいは実際に政令指定都市ではないのですが、PIO-NETが置かれているところがあれば、そこを起点として広域化を図っていくことが可能だと思っていますが、ただ、最低限法律に基づきますと市町村には窓口が置かれる必要があるわけでございますので、仮に窓口での対応ができないにしても、窓口を置くことによって情報を吸い上げて広域につなげていく機能は、必ず必要だろうと考えているところでございます。
 もっと難しいのは自治体職員の底上げということなのですけれども、これは非常に難しい問題がありますが、そもそも逆の言い方をしますと、なぜ自治体職員のマインドが低いのかということです。これは法律の問題が多いということと、有資格者が多いように専門的な対応をせざるを得ないということで、一部その資格を持っている行政職員がいることはいるのですけれども、そういう方は大変積極的なのですが、そうでない場合には例えば相談員の管理、そうした業務の管理に軸足が置かれているということや、無論、定期異動の問題もあります。ですから、そうしたことで自分たちの問題ではないという意識があるのが実態でございます。
 また、自治体によってもセンターを別立てにしているところ、あるいは消費生活課の中のセンターとしてとかいろいろありますけれども、やはりセンターというのは別であるという意識は今でも強いわけでありまして、広域自治体ですらそうであれば、市町村は消費生活相談の窓口やセンターの窓口については、意識が低くなっていくのはやむを得ないのかなと思っています。
 ただ、職員がみずから企画できる、あるいはみずから意思決定できるようないわゆる講座とか、そうしたものについては積極的に非常にやっているわけでありまして、これは白書の中からも講座の実施状況というのは非常に積極的な状況が見てとれます。
 あと、消費者教育のうちの市民向け、生涯教育向けの消費者教育は、この延長線でやっていくことが非常に期待できるわけでありますけれども、そもそもの行政の作用として行われるそうした啓発活動については、非常に取り組みは積極的だという傾向は見てとれます。インセンティブということによって底上げを図っていこうということを少し書いておりますけれども、確かに消費者庁へ自治体から人を派遣する制度は非常に効果的だと私も見ておりますけれども、ただ、消費者庁自体は地方に機関を持たないという組織でありまして、しばしば公正取引委員会は自治体との関係はないということをよく言われますけれども、公正取引委員会は地方事務所を置いているわけなのです。ただ、もともと専門的な競争政策ということなので、これは自治体ができないということで自治体は機能を持っていません。ところが、消費者行政の場合には、これは都道府県のセンターは必置のものでありまして、そこがいわば地方の出先機関的な役割、要するに拠点の役割を果たしているわけでありますので、これはなかなかできないかもしれませんけれども、いわゆる双方の派遣ということで、国から都道府県に人員が配置されるということのある種の影響機能というものを考えていくことはできないのかなということを、少し書かせていただいた次第でございます。
 その上で最低限のサービスは何かということなのですけれども、これは繰り返しになりますが、インフラの整備状況がまず基本でありますが、その上でアウトプット窓口をすなわち設置しました、相談員を増やしましたというだけではなくて、質の成果はどうなのかという観点がまず重要だということと、もう一つは行政サービスの供給者目線の観点と、需要者目線の観点の両方を考えていく必要があるだろうということです。
 繰り返しになりますので5ページの中段は省きますけれども、5ページの一番下から6ページにかけてでございますが、その際に、これは以前から私が気になっている部分なのですけれども、特に6ページでございますが、一元化されたといいましても、これは国レベルでありまして、自治体における一元化というのは、これはまだ進んでいないというか、全然行われていないわけなのです。特に先ほど申し上げましたけれども、消費生活相談とは何かと聞きますと、相談員の多くがまず第1に多重債務を挙げる、契約トラブルを挙げるということはまだいいとしまして、表示の問題は違う。広告の問題はうちは使いませんという実態がまだまだありますというか、かなりあります。
 そういう中で、例えば表示の相談が来たらどうするかというと、これは表示課に回す、あるいは食品の問題ですと保健や食品衛生に回してしまうのです。回すというか、具体的には相談者に対してそちらのほうに電話をかけてくださいと言って終わるのです。その後、当の相談者が相談したかどうかはセンターが把握しないのはほとんどのケースなのです。となると、これはセンターがワンストップになっているといえるかどうかの問題です。消費者問題全体を取り扱うというのが地方の住民目線でのセンターの位置づけなのですが、それができていないということで、先ほどの表示のケースでは、実際にそちらに回ったかの確認も内線で回すこともしないとか、そういうシステムすらないというセンターが多いと聞いています。
 ですから、そういう中でセンターの役割で言うと、やはり多重債務問題とか高齢者被害の問題だけを取り扱うところという意識があると、やはり住民の消費生活センターに対する期待や信頼というものが、やや本来のものとは違ったものになって捉えられてしまうのではないかという点が気になる点でございます。いわゆる宙に浮いた状態の問題がまだ自治体にある。特にこのことは、これも先週成立いたしました食品表示法が施行されたのち、食品の表示の問題、広告の問題等につきまして、これはセンターが担うことになるのだろうというときに、今それに対応できる力を持っていないというのは、緊急に解消するべき、克服すべき状態にある点を指摘しておきたいと思います。
 あと、消費者教育につきましても、私は同時に消費者教育の学会もやっていることもあって、厳しいことは言えないのですけれども、ただ、確かに総花的というこちらの調査委員会の、消費者委員会のコメントもございましたが、非常に大きく広がってしまっている感があるのは気になるところでありますけれども、特に文部科学省の対応で教科にするのかしないのかということも含めて、まず学校教育レベルで対応できるかどうかの体制は、今のところ自治体からは全く見えていない。特に地方の教育委員会はほとんどまだ関心を示していないか、沈黙をしている状況でございます。
 その一方、市民向け、生涯教育向けにつきましては、先ほど申し上げましたように今まで担ってきているものや蓄積がございますので、その延長線として十分センターを中心にやっていけるだろうと思っております。ただ、市町村の窓口がやれるかというと、やはり私は今のところ無理だろうと考えていますので、まず都道府県を中心にしてやっていく必要があるだろう。ただ、この際も念押し的に書いておりますけれども、消費者基本法においても、消費者教育推進法につきましても啓発と教育を分けているわけでありますので、今やってきた主には啓発活動としての公開講座等をやってきておりますが、やはり教育の質に合ったものが実現される必要がありまして、仮にセンターで推進していくとしましても、教育と啓発は分けた内容のものを展開していく必要がある。これが消費者教育推進法の趣旨だろうと考えているところであります。
 ということで、以上のような形で報告させていただきます。

○宇賀座長 どうもありがとうございました。
 事務局及びお二方の先生から消費者行政に関する国、都道府県、基礎自治体の役割分担についてのお話を伺いました。
 これまでの御説明につきまして、委員の皆様方から御質問や御意見があればお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。

○池本委員 今、沼尾先生あるいは岩本先生から、地方自治体全体の中で消費者行政をどう捉えるか、あるいは消費者行政というのを契約トラブルだけではない、もっと全体像でどう捉えるかということで、全体像を示していただいたという意味で非常に感謝したいと思います。
 お二方のお話の中でも、私は共通の方向性を示していただいたように思うのですが、私なりの受けとめと、それについてまたコメントをいただければと思います。
 沼尾先生の御説明の中で基礎自治体、小規模自治体で担うべきものと、なかなか担うことが難しいものということで、レジュメの5ページ目で特に消費者行政というのは専門性が高いものであるということの御指摘があり、そのあたりが基礎自治体だけに押しつけるのではなくて、都道府県との連携あるいは都道府県の支援が必要だということがありました。
 実は、この議論は国と都道府県と自治体の役割という、全体につながる問題だろうと思うのです。広告表示も取引も本質的に現代は国全体で展開されている経済活動です。そういう意味では個別の基礎自治体だけで情報をキャッチし、個別に対応できる問題ではない。だから何でも国がやってしまえということでは決してなくて、トラブルは現場で起きているし、地域住民がそれに巻き込まれているわけですから、情報をキャッチすることと、その情報を住民にしっかりと伝えるという意味では、基礎自治体に動いてもらわなければいけないのですが、それが基礎自治体だけで解決できるようなパターン化した問題ではなくて、非常に専門性が高いそれぞれの法律問題であるし、あるいは法律にない新しい問題も次々出てくるというふうになります。
 そうしたときに、基礎自治体の、特にこれまでは相談員の配置というところで議論していましたけれども、職員の専門性を確保するという問題に都道府県がどうかかわっていくべきなのか、あるいは国がどうかかわっていくべきなのかということが、ここでの議論の焦点にもなると思います。そのあたりの方向づけについて、もう少しお伺いできればという点が1点です。
 岩本先生にも、基本は共通の問題意識になるのですが、競争政策に関する公取は地方事務所はあるけれども、都道府県には独禁法の権限がない。従来は景表法は公取が独禁法と景表法両方やっていて、景表法については全面的な権限ではないですけれども、指示処分のところまでは都道府県におりている。その意味では政策の視点が違うからなのかもしれないのですが、そのあたりの課題によって基礎自治体、都道府県、国の役割分担の違いということを考えると、先ほどさまざまな課題が基礎自治体に押しつけられて、しかし効率が悪いというところと、消費者行政の属性をどの辺に置けばいいのかというヒントが、今の競争政策のところにあるのではないかと私はお話をお伺いしました。そのあたりについて何かヒントをお伺いできればと思います。

○宇賀座長 沼尾委員からお願いします。

○沼尾座長代理 池本先生、御指摘ありがとうございます。
 これはあくまでも私見ですけれども、これまでも市町村で例えば職員研修ですとか、職員の採用試験問題作成を共同で実施したり、職員研修について言えば都道府県に委託をするということをやってきていて、当然メリット、デメリット指摘はあるのですけれども、職員の専門性の確保という点からの職員研修について、例えば都道府県が補完をするという考え方は1つあってもいいのではないかと思います。
 ただ、現場の実態、私は消費生活相談窓口は余り詳しくないのですけれども、実際に例えば地域包括支援センターなどの高齢者の介護の現場において、実際に各家庭に保健師さんなりヘルパーさんが入ってみたら多重債務を抱えていたとか、だまされていたというところで、むしろ現場のほうで、とりあえずケアの一環としてどうにかしなければいけないというところから、ヘルパーさんが消費生活相談のための勉強をして、そちらのほうに手を伸ばしていくとか、あるいは専門家を呼ぶことを考えて、関係者が少しずつつながっていくというようなこともあります。このように、現場の目の前の課題をどう解決するかというところから、少しずつ枝葉を伸ばしてつながりをつくりながら、仕組みをつくっていっているという基礎自治体の取り組みもあるので、そこは両方向からやれるような仕組みが大事だと思いますし、そのマンパワーを確保するための財政措置というのは、何らかの形で考えなければいけないのではないかと思っております。
 適切な回答になったかどうかわかりませんけれども、以上です。

○宇賀座長 岩本先生、お願いします。

○岩本教授 当初、景表法は制定当時は国だけで、1970年代になってから指示の権限を自治体に付与したという経緯があります。実際にその中でどの程度の指示があったかというと、表示と景品類の事例全体で本当に数年に1つ出るか出ないか。ほとんどが警告・注意というものの中でやってきたということがありますので、1つのやり方としてそれは可能かもしれませんが、池本先生の質問の御趣旨を十分に理解し切れていないのですけれども、競争政策の場合のいわゆる独禁法の本体の部分については、これは自治体ではできないわけです。その分につきましては広域ごとの各事務所が置かれているわけでありまして、ただ、景表法につきましては一部の機能、特に表示と景品類につきましては、都道府県のほうに指示の権限を与えたということがありましたけれども、競争政策本体は結局おりていかなかったわけであります。
 もう一つ、表示につきましては自治体は既に条例を持っているわけです。実際に条例に基づいて、これはほかの取引もそうですけれども、どのぐらい規制しているかというとこれはほとんど運用実態がないわけです。となると、国と広域で特に表示、広告の問題につきましてはどの程度役割分担できるのかというと、私は役割分担しなければならないと思う。ただ、市町村は恐らく全く無理だろうということで、市町村の場合は先ほどお話しましたように、少なくとも吸い上げるだけの機能の窓口だけは置く必要があって、それを都道府県のほうで処理する、あるいは広域の場合ですと中核になるセンター機能を持っているところにそれが上がっていく仕組みは最低限必要であって、そこをどういう形で処理するか、これは食品表示法の最終的な中身が完全にまだ詰まっているわけではないので、私もはっきりしたことは言えませんけれども、広域自治体を中心とした規制にしろ、相談処理にしろ、そういうものをつくっていかざるを得ないのかなということを今、感じているところでございます。

○宇賀座長 池本委員、よろしいですか。

○池本委員 はい。ありがとうございます。

○宇賀座長 山口委員、どうぞ。

○消費者委員会山口委員長代理 岩本先生、沼尾先生の御説明は非常によくわかりましたけれども、今、消費者委員会で美容医療の問題について建議しまして、その後の執行の強化のあり方について検討をしているところなのです。美容医療は厚労省のほうで一定のガイドラインをつくったり、基準をつくったりしている。それ自体が不十分だということで、厚労省ともやりとりをしてきたのですが、ところが、美容医療の行き過ぎた広告表示についての規制は医療法上、保健所がやることになっているわけです。ところが、先ほど岩本先生がおっしゃったように人手がなくて、また、広告を医療部門の保健所の職員が摘発して、行き過ぎだからやめなさいというマインドはほとんどないし、人手もない。だから厚労省が通達を出すと地元のいわゆる保健所の担当者が迷惑だという対応をされるという実情なのです。やる気が全くないし、人手もないわけです。マインドもなければ人手もない。ですからやはり一定の連携がないと、国のほうで、あるいは消費者庁なり消費者委員会が美容医療の行き過ぎた広告のあり方とか、あるいは事前説明の不足とか、そういう事項を指摘しても地方の現場ではなかなか地に着かないなと痛感をしているところなのです。
 そこで思い出しますのが、実は投資用のマンションの問題も悪質事業者のいきすぎた勧誘問題が熾烈を極めておりまして、消費者委員会で建議をしたことがございます。宅建業法は自治体の宅地建物課といいますか、建設関係の部門が担当しているわけです。ここも摘発のマインドが全くなかったといいますか、今もないのかもしれませんが、少なくともいわゆる行き過ぎた宅建業の手口、売り方の問題について何故摘発例が1件もないのか。行政処分の例が1件もなかったのです。問題ではないかということでいろいろやっているうちに、1件、2件と行政処分をしていただく事例が出てきたのですが、その中で出てきた現場の声は、こうです。勧誘の手口について事業者が否認するというのです。そんな行き過ぎたことをやっていないというふうに否認すると、もう地元の自治体の宅建業担当課ではどうにもならないという話だったのです。それは違う。実際に特商法では業者が否認しても被害者の声を集めて、それで違反が認められるからやめなさいという行政処分を県レベルでもやっていますよと。なるほど、そうなんですかということで摘発ノウハウの研修を宅建業の担当課と消費者部門とで協同してやっていただいた。あるいは国交省と消費者庁で連携して研修をやっていただいた。ということで、多少従前よりも改善したということがあるのです。
 ところが、実は健康食品についても建議したのですが、健康増進法は保健所が担当なのです。ところが、ここは健康食品について行き過ぎた販売の仕方や宣伝がなされていることについて、保健所はほとんどやる気もマンパワーもない。ノウハウもないというところで、健康食品についていろいろ問題があるのは重々わかっているけれども、自治体のほうでもなかなか追いつかないという実情なのです。問題として今、池本さんがおっしゃったように、自治体がやることなのか、それとも国がやってもいいことなのかという問題と同時に、自治体の中でも県と基礎自治体の問題がまたあるのかもしれませんが、自治体の中でも消費者行政の様々な問題が一元化されていない。あるいはそこの問題のノウハウの集約ができていない。
 多少は先ほど沼尾先生がおっしゃった地域包括支援センターと消費者部門、高齢者の問題の部門ではかなり連携が生きていると思うのですが、今、申し上げましたような美容医療の問題、医療の問題とか建設業の問題とか健康食品の問題とか、これは自治体がやるべきところという立てつけになっているところで、非常に不十分というところがあるかと思うのです。これは岩本先生は今、自治体の一元化が不十分だと。まさにそのとおりだと思うのですけれども、ではどうしたらいいのでしょうか。そこをお聞かせいただければと思います。

○岩本教授 山口先生の御指摘のとおりでございますが、まず国の共管部分と一元化されている部分が本当にきれいに分かれているかどうかの精査も必要なのだろうと思っていますし、ただ、特に表示の問題と安全の問題は表裏一体の問題もありますので、そこをどう国レベルで消費者庁はここまで表示についてはちゃんとやりますよという部分がはっきりしているといいのかなということもありますけれども、もう一つは自治体の中では当然、今、言ったように全然追いついていない状況があるわけですが、それを一つ一つ打破する特効薬には全然なりませんが、私は広域自治体の拠点、地方の拠点ということから考えた場合に、要するに自治体だけの判断ではやり切れないのです。東京都はやれますけれども、ただし、全然やれない状況だからこそ消費者庁の方が都道府県に来る。何らかのポストの人がそこに入ってくると、これはやる可能性が1つ出てくるのだろう。
 やはり自治体のほうも事業者から反訴されるのが一番怖いわけです。ですから手を出さないし、あるいは立入検査はほとんどやらないようなこともありますので、そこは国の組織に対応した形でのセンターの役割というのを、どこかでもう一度確認しておく必要があるのだろうということです。特に宅建の問題なんかできるだけ手を出したくないでしょうし、厚生省の管轄である保健所の問題、医療の問題で、これはやはり手を出しづらいと私も聞いています。ですから、センターが本来どこまでやるのかということ。要するに地方がどこまでやるのだろうかということについては、一元化のときに議論はしたはずなのですけれども、それの事後的な対応がまだできていないという現実があるということで、済みません、答えになっていませんが、私は国と広域の自治体を一体的にやっていく必要があるという立場で考えていますので、そうしないと恐らく動けないのだろうなという感じがございます。

○宇賀座長 山口委員、よろしいですか。

○消費者委員会山口委員長代理 もう一つ、これは消費者庁の村松課長にお聞きしたいのですが、自治体から消費者庁に出向している職員は何人か私も知っているのですが、逆に消費者庁から先ほど岩本先生おっしゃったように、自治体に出向して戻ってくるという、まだその体制はできていないですか。あるいはこれからやろうとする体制があるのか、そこら辺はどうなのでしょうか。

○消費者庁村松地方協力課長 人事担当でないので全くわからないのですが、個人的には自治体に出向している消費者庁の職員というのは聞いたことがないというか、もともと消費者庁は出向した人ばかりですので、消費者庁からさらに出向することはあり得ないと思いますので、その点はこれからプロパーの人がふえてきて、その人が今後そういうキャリアパスを積むということはあろうかと思います。

○宇賀座長 吉川委員、どうぞ。

○吉川委員 いろいろありがとうございました。
 沼尾先生には3ページのところで地方交付税の財源保障機能の限界というところで、これはその分の財源が自治体に交付されるとは限らないということが書かれています。私の理解が違うのかなと思いますが、地方交付税として来ても消費者行政に使われるかどうかはわからないということですか。あなたたちのためにはこれは予算上はこう見えるかもしれないけれども必ずしも消費者行政に使用されているとは限らないとよく言われて、いつもがっかりするのですけれども、そういう意味ですか。それとももっと別の意味と読んだらいいのでしょうか。

○沼尾座長代理 ありがとうございます。
 今、吉川委員がおっしゃられたような意味で、つまり需要額の中で消費者行政分ということで積まれているのだけれども、財政当局の判断で実際には別のことに使われてしまうこともあるのですが、それとは別に、結局、地方交付税等の需要の算定で例えば100なら100の需要があったとしても、実際に入ってくる国税の一定割合分というのが例えば60しかないとなると、あと40足りないという話になるわけです。それが財源不足額ということで、つまり需要額を全部保障しようとすると100必要なのに、今、60しか国から渡すことのできる国税収入しかないときに、あとの40をどうするかということが議論になっています。結局それをそのまま圧縮して60に減らすことはできないので、ある程度のところまでは財源不足額について詰めることになる。そして、国のほうで大体半分ぐらいは国債発行により財源を調達して埋めるのですけれども、あとの半分については結局、交付税としては渡せないので、臨時財政対策債という地方債を発行して、とりあえず残りの需要分は自治体が借入で賄ってくださいと。将来その起債の償還のときに、その需要額を地方交付税で将来上乗せします。つまり将来、交付税の需要額に積むと言っているのですけれども、それがずっと循環しているだけなので、結局、自治体の財政部門としては、幾ら財政需要として積まれたとしても、もはや100分の100が保障されている状況ではないということがマクロ的には起こっているのです。
 結局、財政需要100を確保するには一部分は借り入れないといけないので、借り入れをするか、歳出を抑制するかの判断が求められる。それも含めて何にいくら配分するかというときに、悪いけれども、地方消費者行政の部分はほかのところで使いますよという判断が財政のほうでなされる可能性がある。だから二重の意味でそういうことが起こっているということです。

○吉川委員 もともと消費者行政というのは、例えば先ほどの総務省の調査でも、その他で忘れていたという部分なのに、そこがさらに地方に行ったときに非常に厳しい状況になっているということで、今こういう会議が開催されているのだと思うのですけれども、そこを何とかする方法、やはり目的を決めたものでも転用されているという今の状況の中で、少ないものがさらにどう使われているかわからないというのは、現場にいる者にとっては納得できませんここを何とかする方法はないのでしょうか。

○沼尾座長代理 大変難しい御質問で、私は答えられるかどうか何とも言えないのですけれども、先ほども例えばほかの部署ですね。医療だとか福祉だとかとの共管部分をどうするかという御質問もあったかと思うのですけれども、そういうところですと、今これだけ職員数も減っていて、今それぞれの職員の方も目先の最低限やらなければいけないことをやっていっぱいいっぱいで、これ以上、仕事がふえるのは嫌だというのが実態だと思うので、内部からよほどインセンティブつけていって、では共管事項のところまでやりましょうということを期待するには、よっぽど意欲の高い、モチベーションの高い職員の方がいるところでないと多分難しいだろう。それができないのだとすると、そういうところも含めてここは目配りをしなければいけないと判断できるのは、やはり首長か議会あるいは結局住民ないし市民の方々がこれは問題だからどうにかしてくれという、そこではないかと私は思っているのです。
 その意味で言うと、もう少し自治体の首長さんですとか、議会に対してそういうことをどういうふうに働きかけていけるのかということが実は大事なのではないかと思っていて、幾ら国のほうで法規制を定めたり、努力義務というふうにやったとしても、なかなか最低限のことはやるけれども、それ以上は無理だよねというのが恐らく多くの自治体の現場なのではないかと思うと、そういうところの働きかけ、あるいは国のほうとしてはどうやれるのか。
 例えば私も地方6団体と仕事をさせていただくことがあるのですけれども、全国市長会ですとか町村会なんかで話を聞いても、消費者行政に対する大きなニーズは首長から出てきませんからねというふうにおっしゃられるのです。だからそういうところにどういう行政課題があるということをきっちり伝えていけるのかということも大事だと思っていますし、今回のこの資料でも、総務省が実施した共同処理事務の調査項目として、地方消費者行政が挙げられていない。認識されていないわけで、働きかけも必要だと思います。

○吉川委員 岩本先生にお伺いします。相談員として先ほどのお話で消費者行政部門の仕事の範囲ということで、私は今までも消費者相談で電話をとったときに、まずこれはここ相談窓口で扱うべき問題かどうかを考えます。消費者基本法で言われている「事業者と消費者の格差」によってもたらされる構造的な問題で消費者が被害を受けているというようなものは、分野に関係なく、全て消費者問題だということとしてどうするか。これを消費者問題として私どもの部門で扱うかどうかというふうに判断をしているのが基本的には相談員だろうと思います。
 ただ、最近よく言われるのは相談員は契約とかそういうものだけに目が向いているというふうには言われたりするのですが、実際はそうではありません。たまたまとても忙しいというのか、あるいはとても手が回らないというときにはひょっとしたらもっと適切な処理のできる機関として他機関を紹介していることもあるでしょう。確かにPIO-NETは、他機関紹介という形で終わっているものも確かにかなりあるのも事実です。だけれども、相談員というのは少なくとも寄せられた相談は丁寧に聞きとり、それが例えば大きなところですと、住宅だったら住宅の相談部門を持っているところもありますし、そんな場合は聞きとった上でそちらと連携をとるようにしているというのが基本だと思っています。その辺のところは私どもも現場にいる者たちの集まりとしては、今後相談を受けるときの基本姿勢みたいなものは、先生のお話からまだまだ足りないところもあるのかなと思いつつ、基本はいろんな消費者問題に関するあらゆるものを窓口で基本的には丁寧に受けるという姿勢で仕事をしているということは、御理解いただきたいと思います。
 なおかつ、そうでない場合があった場合は、それは正していかないといけないことだなと思っています。その点については御理解をいただきたいと思っています。私は地方で相談員をしておりましたから、地方のすごい忙しさとか、職員の考え方というのか地方の場合は相談員に任せたよというので、それこそ書類が来たら書類を「はい」というふうに渡してくださるとか、印鑑押すとか、そういうことだけが消費者行政の方の仕事みたいなことになっているところも多く、その辺のところを何とかしないといけない。この委員会でもいろいろ議論していただいていることは非常にありがたいです。今後、先生の御理解いただいているような方向で進んでいけばいいなと思いました。

○吉冨委員 それに関してよろしいですか。
 私も同感なのですけれども、消費生活センター=悪質商法というイメージは非常に強いですね。消費生活全般を扱っていると捉えていらっしゃる方は余りいらっしゃらないように思っています。それが特化して今、非常に大きな問題になっていて、それに関する啓発が多いがために多分そういうふうになっているのだと思われます。消費生活センターで扱うPRするチラシがあるのですが、悪質商法に関するチラシだけが配られるというあたりも問題なのかなと感じています。だからそういう意味ではセンターそのもののPRの仕方にも少し問題があるのではないかと思います。これだけやっていますというイメージが非常に強いと私は思っています。ただ、やはり消費生活全般をきちんと扱っていますよ、消費者の問題については全てこの窓口ですよとイメージを変えるところに来ているのではないかと思います。
 そういう意味では先生がおっしゃった利用者、相談者の声の評価というのが非常に大事になってくるのかなと思っています。だから、そこら辺ですり合わせをすれば、もう少し違った方向で動いていくのではないかと思いました。そういう意味で私は共感いたしましたし、やはりそうかなというふうに確信をしました。自分でもいろんな啓発をするのですが、どうしてもセンター=悪質商法のイメージを植えてきたという私も反省はしております。そういう意味ではとてもいいお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。

○宇賀座長 岩本先生、お願いします。

○岩本教授 吉川様からお叱りを受けましたけれども、確かにおっしゃるとおりで、全消協の資格もアドバイザーの資格も大変難しい。また、オールラウンドな問題も出ておりまして、私の知っています1980年代のころからの方からのお話を聞きますと、昔は米の研ぎ方の相談もありましたということを言われて、どう答えたんですかと聞くと、米はこう研ぐんです。何回やるんですよと。最近もそういう相談が年何回かかかってくるそうです。そういうときにどうしていますかと聞くと、昔からやっている方は今は無洗米もあるし、以前より精米の質が上がっていますので2回で十分ですよと。それを言うことによって、それで水を節約できるとか、環境の問題につなげていくという相談をしている方もいらっしゃるわけです。
 ただし、傾向としては特に平成14年、15年ぐらいからのオレオレ詐欺と架空請求、17年の多重債務の問題あたりから件数が急激に伸びました。それが今、逆に収束しかかっていて減っているように見えるのですけれども、そうした一時の非常に大きな国を揺るがすような問題が起きている中で、相談員が非常に多くの時間をそちらにとられたというのも事実だと思っています。
 ただし、基本的に相談員の方々はそういう問題意識を持って活動しているのは、私も重々承知しております。問題なのは、行政機関がそれを受け入れる体制になっていない。先ほどの表示のケースでも、結局、向こうに電話してくださいねと相談者に答えて終わってしまってフォローがされているか。中には例えば食品衛生に電話して、こういう相談がありまたが、電話は来ましたかということを自主的にやる方はいますけれども、基本的にはそれはやらなくていいらしいのです。となると表示の問題とか広告の問題とかも含めて、そうしたほかの部署に回すような体制自体の問題なのでしょうけれども、内線番号すら回すシステムがない中で、結局PIO-NETがあるところはPIO-NETに入力して終わるのです。ところが、PIO-NETがないところは相談票に書いて、それを当該自治体の管理者に渡して終わるのです。ですからPIO-NETにすら入らないものもある。それはどこへ行ってしまったのかとなると、需要者目線からすると相談したのに答えが返ってこなかった。あるいはほかに電話しろと言われてたらい回しされたという意見が出てくるわけなのです。これは相談員の問題ではなくて、センター、自治体の問題だろうと考えているということで書かせていただいた次第でございます。ありがとうございます。

○宇賀座長 ほかいかがでしょうか。

○消費者委員会吉田委員 どの先生にお伺いしたらいいかわからないままの質問なのですけれども、小規模基礎自治体の実施体制を考えたときに、基礎自治体ができなければ都道府県が補完するという選択肢は大いにあり得ると思いますけれども、消安法施行前は実質的にそういうことができていた都道府県も多かったと思いますが、消安法8条によって一次的な相談あっせんは市町村の義務だということが明確化されたことで、都道府県がそこから手を引いているというのが全国的な傾向かと思います。
 ここで改めて都道府県の補完性というところを提示した場合、都道府県としては施策変更にもなりかねないという問題が出て来るのではと思います。そこをどう乗り越えていったらいいのかというのが課題だなという意識を持ったのですが、そこの解決策のアイデアが何かあればお伺いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

○宇賀座長 沼尾先生、お願いします。

○沼尾座長代理 ありがとうございます。
 大変難しい御質問で、どのように答えていいか非常に難しいところもあると思うのですが、1つは今の話もあると思うのですけれども、もう一つ、地方分権一括法が2000年に施行されて、都道府県と市町村の関係が対等協力というふうになったこともあって、これは基礎自治体、すなわち市町村でやることだったら都道府県は手を引いていいよねというふうになっている。そこは都道府県と市町村とが協力、連携するということ、あるいは都道府県が市町村の補完機能を担うというようなことにならなくなっているという実態があるように思います。
 ただ、先ほど見たとおり小規模町村はなかなか自力ではやれないところがあるので、こうしたらいいということが全然申し上げられないのですけれども、1つはある程度連担しているところであれば、共同でやれるという仕組みを考えざるを得ないだろうと思いますし、そこができなかった場合の対応というのは、先ほど御紹介した高知県の事例を見てもいわゆる地方圏ですね。中山間地域をたくさん抱える都道府県であればあるほど、そこの現場の実態というのがますます深刻になってきているという実感はあると思うので、そこを支える仕組みを、都道府県、そしてなかなか消費者委員会とか消費者庁だけができるわけではないと思うのですけれども、もう少し国レベルでも考えていく必要があると思います。
 済みません、全然きちんとした答えになっていなくて申しわけありません。

○宇賀座長 岩本先生、お願いします。

○岩本教授 同じように大変難しい問題でございますが、そもそも役割分担されているわけですから、まずその役割をちゃんとやっていますかということを、これは常にPDCAで確認していくことが必要だと思っています。
 その上で、私は見える化を図ってほしいと言っておりますけれども、せっかく恐らく消費者庁様も、消費者委員会のほうでもそうしたデータをもって分析されているわけでありますから、私は指標を設けて、自治体それぞれがここはこうしている。この自治体はこうであるというのはある程度可視化して、自治体全体の状況を見えるようにしてあげたほうがいいだろう。無論、手を引いてしまっているところが実際ありますし、うちは広域の部分だけしかやりませんよというところもありますし、そういう中でほかはどうやっているのかということを見せてしまうほうがいいのかなと。
 ですから、今回4月25日に消費者庁からのデータに基づく消費者委員会のほうで分析されたような、本当に住民からするとうちの自治体はどうなっているのと。全国で何番目なの、平均値はどうなのか。1つ平均値という指標が出されましたけれども、それから見てうちの自治体はどうなのだろうかということをまず「見せる」ことが必要で、そのあたりは消費者庁としては二の足を踏むところかもしれませんけれども、それをやれるのは消費者庁だと思っています。
 さらに市町村レベルにつきましては、これは都道府県のほうでやるべきことだろうと思っていますが、そうした「見せる」ことによって国民がわかる、住民がわかる。それをその後のステップにつなげるかどうかは別にして、それを例えば頑張っている自治体に対しては予算がこうなりますよということで、反映させていく1つの材料になっていくと思いますので、やっていないところはやらなければまずいという、そうした見せる工夫をすることによってせざるを得ないものはしてもらう。頑張っているところは頑張っている形で見えるようにしていくことが非常に結果として大きな意味を持つのではないかということが今、私が考えているところでございます。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 竹中委員、どうぞ。

○竹中委員 今、県と市町村の役割についてというお話が出ましたので、ちょっと感想的なものになるかと思うのですけれども、身近な相談についてはまず市町村でというのがあろうかと思っておりますが、そうかと言ってそういう相談を県で全く受けなくなってしまいますと、県では事例も蓄積されませんし、いざ専門的な相談を受けようというときにも、相談にも乗れなくなってしまうことがありますので、県では実際には相談を受けながら市町村の相談員の相談に乗るというような体制を現在とっているようなところでございます。
 また、住民からすると専門的な相談は県で、そうでないものは市町村でといっても、何をもって専門的な相談かというのは非常に難しいのかなと思っております。都道府県と市町村の役割分担というものを行政的には引けるのかもしれませんけれども、住民からはなかなかそれは見えないのかなと思っております。
 補完と言いましても大きな市と小さな町、村ではレベルは全然違ってきていますので、こういう意味で県と市町村の役割を厳密に線引きしていくというのは非常に難しいのかなと。これは感想なのですけれども、思っております。
 小規模自治体の課題というところにも少しございましたけれども、現在、相談体制が整ってきたというのは、消費者行政活性化基金というものが非常に大きいのかなと思っております。交付税の削減の話が出てきましたが、こうした相談体制が整ってきたというのは活性化基金の効果かなと思っております。しかし、現在、基金終了後を見据えて大きな市では基金を余り活用していないところも出てきています。そうしますと、実際に使っているのは大きな市ではなくて、そうではない市町村ということになってきますので、基金終了後の相談体制については非常に危機感を持っているところでございます。
 意見というか感想になってしまいましたが、以上です。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 ほかいかがでしょうか。仲條委員、どうぞ。

○仲條委員 県と市の役割分担というところでもそうなのですけれども、やはり地方の小さな市町村の窓口では県のセンターですとか、県の行政指導の役割ですとか、そういったものを非常に頼りにしている部分がありますので、そういったものを強化していっていただきたいと思います。
 実際に需要者側の目線というところで見れば、本当に県のセンターを選んでも、市町村の窓口を選んでも、それは問題なく解決がなされるというのが必要だと思いますので、そこをやはり線引きするのは難しい。そして、県の充実も市町村は頼りにしていることがありますので、お願いしたいところだと思います。
 それと、先ほど職員の専門性というところにも絡むのですけれども、表示などの問題について、相談員さんは私のそばで見ていて、そういうところでこれは表示だからとか、食品だからとかいうのは線引きをしていると思いませんが、それを啓発につなげるとか、そういったところの職員の考え方が消費生活センターは悪質商法とか多重債務だという考えになってしまうといけないのかなと、お話を聞いて思いました。
 先ほど沼尾先生の資料の中にありました高知県の地域支援企画員制度というのを知りまして、非常にすばらしいなと思います。何回か前のこの会議でも申し上げたのですけれども、担当者とか相談員がモチベーションを上げて、やる気を持っていくというのは、いろんな人から受ける影響というのが非常に大きいと思うので、自分で現場で相談を受けてどうしていっていいかという中でのいろいろな人とのかかわりもそうですけれども、こういった県とか国とか、例えば相談員さんもそうなのですが、国からそういうスキルを持った、県からスキルを持った相談員さんが1人入ることでも、現場の職員も相談員も両方影響されると思います。国センの巡回の専門家の派遣の制度がすごくよかったというのはあるのですが、それは間近で専門家の相談員さんの対応を見て市町村の相談員が影響を受けて心を動かされる。こういうふうにやってみたいと思うようになったというのもありますし、それが相談員だけではなくて小さな自治体であれば、そういった専門家である相談員さんが月1回とかのただの巡回指導ですということではなくて、1年間ぐらい根をおろして地域で週1回でも市の相談員としてやっていただけるようなことがあれば、それは相談員だけの影響ではなくて、行政の職員への影響というのもすごく大きなものがあると思います。小さな市町村であればあるほど、そういったところが影響とか心動かされる部分で自分の仕事に対する態度を変えていけると考えています。
 以上です。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 ほかいかがでしょうか。池田委員、どうぞ。

○池田委員 自治体の方が2人言われましたので、人吉市からも一言という形で言わせていただきたいと思いますけれども、まず、今ちょうど最後に仲條委員が言われましたが、専門家の訪問に関しては多分、人吉市が全国でも一番使ったものだと思います。週に2回、お二人の方が1回ずつありましたから、平成21年から始まった事業に関して24年まで毎回ずっと使わせていただきました。
 その中で御指導いただいて、最初のうちはあくまでも指導ということで、相談の中にまでは直接同席されることはなかったのですけれども、後半になってきて一緒に同席されながら、こういう部分のチェックの仕方とかを相談員と一緒になって見られたことで、相談員の質も上がってきたのかなと思いました。
 ただ、最後にちょっと残念がられたのが、試験の合格までつながらなかった部分があったので、もう少し頑張らなければいけませんねということで御指導が終わられたということがありました。
 ですから、せっかくあった小規模自治体においては、この事業がやめられたので県のほうから、熊本県の相談員さんが巡回されるようになったのですけれども、でもそうなった場合に、県にも実際に相談をやっている関係がありますから、立ち位置が難しいというか、自分の仕事もしなければいけない。でも訪問しながらも指導をしていかなければいけないということで、難しいのかなと思いながら、今回については人吉としては訪問については自分たちで頑張ってみようということで残念ながら断念した部分がありました。ですから、できればまた国センあたりで復活していただいて、事業として復活していただければと思うところが1点でございました。
 あと1つ、少し話がずれてしまうのですけれども、広域連携ということを人吉市はまだ協定を結んでいなかったものですから、今、協定を結ぶためにやっています。県のほうが定住化構想の中で人吉・球磨を地域として指定しましたので、納税部門と消費生活部門と介護の部門の多分3つだったと思うのですけれども、広域連携をするようにという話で動いている最中です。その中で消費者部門ということで広域連携を始めようとしたときに、もともと協定がなかったものですからきちんとした協定で結んでいったほうが、お互いのためだろうというところもありましたので始めようとしたのですけれども、正直、負担金の話を出したのです。だから実際に相談件数を提示しました。人吉市でも実際これだけの各町村からの相談受けているのが現実ですという数字を出したのですが、でも言われたのが、これぐらいの数字で負担金を出してまで協定を結ばなければいけないんですかというのもありました。正直な話。だからそこで県のあたりの問題になってくるのかなと思うのです。
 結局、協定を結んだ際には国、県あたりから逆に費用についてはこちらのほうから見ますよみたいなものがあれば、自治体は協定を結んできちんと相談を受けているんですよ、中心の自治体が受けているんですよというのがはっきりわかってくるならば、相談の掘り起しにもつながってくると思うのです。実際にはどこに相談に行っていいのかわからないというのがあると思うのです。そのときに初めてそのとき中心市でも、自分の自治体で相談を受けられなくても、あそこに行けば相談を受けることができるんだということがきっちりわかってきて、そうすることでいいものが地域住民に対してなってくるかと思います。
 協定を結んでいらっしゃるところを見ると多くても4つとか5つぐらいなのです。人吉でも協定を結ぼうとするのは10の自治体なのです。生活圏がそれだけなものですから、10自治体でも可能だと思っているのですけれども、ただ、どこまでやっていけるのかなと。生活圏自体は全部一緒で、鎌倉時代からずっと一緒で、生活圏はそれぐらい古い話になるのです。鎌倉時代に当時の藩主が入ってきて、その後からずっと徳川幕府が終わるまで同じ藩主の三十何代の藩主がしているというところなものですから、生活圏は全然一緒なのです。できないわけはないと思っているのです。ただ、10の自治体の足並みというか、それを合せていくのにどこがどうやっていけばいいのか。県の財政のバックアップであったり、国がバックアップをすることができるのかなと思っていますが、ここに初めて県のあり方が出てくるのかなと思っています。これは私の感想という形になるのですけれども、以上でございます。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 ほかよろしいでしょうか。きょうはお二人の先生から御報告をいただきまして、また、委員の皆様からも非常に貴重な御意見をいただきましたので、事務局のほうではそれを踏まえて報告に盛り込めるように作業をお願いします。
 次の議題に入る前に、一旦ここで5分程度休憩をとりたいと思います。11時20分に再開したいと思いますので、よろしくお願いします。

≪3.専門調査会報告書の取りまとめに向けて≫

○宇賀座長 それでは、議事を再開いたします。
 次の議題は、専門調査会報告書のとりまとめに向けてです。本専門調査会は、本年の3月からこれまで5回にわたり審議を重ねてまいりました。消費者行政についての論点は多岐にわたりますけれども、8月末に第2次の消費者委員会の任期が満了するまでには、これまでの審議についてのとりまとめを行いまして、対応すべき点について提言を行い、個々検討を継続すべき課題については整理して消費者委員会に報告を行いたいと考えております。
 この議題につきまして、資料を御用意いただいておりますので、事務局から御説明をお願いします。

○原事務局長 資料4-1をごらんください。専門調査会の報告に向けてのたたき台ということで、骨子を事務局案としてお示しをしております。
 まず、構成なのですけれども、1といたしまして地方消費者行政の現況と今後の消費者行政をめぐる情勢の展望についてというのを掲げております。中をめくっていただきますと2ページの頭に「基礎自治体における消費者行政の体制整備をめぐる優先課題」ということで、3つの項目を挙げております。
 それから、3ページに入りまして、下の段にIIIといたしまして「国、都道府県、基礎自治体の役割分担について」ということで、今回の審議、少し時間不足ということもございまして、国、都道府県というところについては、まだなかなか審議が及んでいないところでありますけれども、項目としてはこういう分け方をしております。
 1ページに戻っていただきたいのですが、現況と情勢の展望についてというところも2つに書き分けております。1.といたしまして、「地方消費者行政の現況」ということで、これまでも資料でお示しをしておりますけれども、基金によりかなり地方消費者行政の体制は進展をいたしました。窓口の未設置は平成24年で6.9%、ただ、やはり小規模自治体では体制は脆弱なままではないかということを資料でもお示しをしたところです。
 今回の専門調査会における課題ということで、2ページ以降の課題に移っていきますけれども、1.として「小規模自治体における消費者行政に対する底上げ」、2.といたしまして「消費者教育をめぐる新たな動きと地域力強化による地方消費者行政の体制強化」、3といたしまして「消費者行政担当の自治体職員に対する支援の在り方の検討」ということが、今回のこの専門調査会における課題ではないかということでお示しをしております。
 2の囲みのところですけれども、中期的展望ということで、今後5年、それからその先も見据えてというところですけれども、先ほど沼尾先生からも御説明があったところですけれども、独居高齢者ですね、これも単身なのですが、増加をしていくのではないかと。地方財政の将来展望についても資料をお示しいただいたところです。こういう中で体制整備の課題は何かということで整理をしていってはどうかと思っております。
 2ページに入りまして、2ページからの3ページ、先ほど申し上げましたとおりで、1.といたしまして、小規模自治体の消費者行政の体制の底上げのための方策ということで、ここでは2つ掲げておりますが、(1)といたしまして「広域連携の推進」、(2)といたしまして「地域力の強化」ということで、(1)の広域連携の推進ということでは、小規模自治体での体制構築の端緒+質的向上にも役立つのではないかということで、2年前に地方消費者行政専門調査会、建議を出しておりますが、そのときに比べて非常に広域連携、進展をしているというところがございますので、そこの課題というところで整理をしてはどうかということで、検討すべき課題としては、「消費者庁において、これまで蓄積してきた広域連携の仕組み等の情報を適宜適切に都道府県や基礎自治体関係者に提供」、「消費者庁の基金活用のための一層の周知」、「周辺町村の主体性維持のための方策」、それから、「都道府県のコーディネーターとしての役割」が課題としてあるのではないかと考えております。
 (2)で「地域力の強化」といたしまして、ここによろず相談窓口として強化をしていくということ、それから、民生委員、社会福祉主事、介護福祉士等、民間部門との連携強化」というところも考えられるのではないかと思っております。
 2.といたしまして、「消費者教育をめぐる新たな動きと地方消費者行政の体制協会」ということで、これは新しい動きということで、消費者教育推進法を契機とした地域力の強化ということで、本日の閣議で消費者教育の基本方針が決定をされたということですので、また報道されるかと思いますけれども、この消費者教育推進法を契機とした地域力を考えていってはどうかと。地域の消費者教育推進のための庁内連携や民生委員等に対する地域の消費者教育推進が緒につくが、これをもとにして消費者行政対策強化につなげてはどうかと。
 以下に各地域での消費者行政に関する地域力強化ということで、「自治体内の教育、福祉等の関連部局による町内連携」、「消費者団体、福祉関係者等との間の官民連携」ということが考えられるということで、推進のための方策としては以下に掲げております。
 「消費者が主体となって、消費者教育の意義・理念の周知・浸透→推進法の初期段階においては、国が責任を持って推進法の趣旨や重要性について各地方自治体の関係部局に理解を求めるとともに、町内連携促進のための具体的措置が必要」、「民生委員、社会福祉主事、介護福祉士等への研修プログラムや教材の整備と普及」、「模範となる具体的指導事例の収集と提供」。
 それから、「消費者庁が主体となって、庁内連携等のための事例集の更新・普及」、非常に工夫されて庁内連携、既にいろいろと行われておりますので、そうした事例の蓄積をもとに実務の中に即したわかりやすいものが必要ではないかと。
 それから、官民連携ですけれども、地域の消費者団体、弁護士会、事業者等の行政の外にあるノウハウの反映も考えられます。
 3ページに移りますが、「消費者庁や国センが主体となって、地域協議会設置や活性化の端緒となる関係者の情報交流の場、異業種マッチングの場を提供」ということで、消費者庁でおやりになっている地方グループフォーラム、それから国民生活センターで実施されている全国消費者フォーラムなどを活用してはどうかと思っております。
 それから、消費者教育については7月11日、次回の専門調査会で消費者庁からヒアリングを予定しておりまして、ここはそのヒアリングをもとにしてももう少し肉づけができるかと思っております。
 それから、3.として、今回専門調査会の第1回目、2回目で大変多く御意見が出ておりました「消費者行政担当の自治体職員に対する支援策の在り方の検討」ということで、「これまで見てきたように、地方消費者行政の推進には、庁内外との連携が重点課題となっていくことが見込まれるなか、自治体の消費者行政担当職員に対してどのような支援を行っていくべきか」ということで、「庁内外での消費者行政の役割の認識の共有」、先ほど岩本先生からもお話があったところですけれども、認識の共有、「地域の実情に合わせた連携体制の構築」。
 それから、スーパー公務員というふうに言われるように、特定の職員の非常な自助努力とか熱意といった要素に大きく左右されることがございますけれども、そういうことではなく、消費者行政の継続性を担保するにはどのような政策オプションがあり得るか、自治体の厳しい財政・定員事情の中、消費者行政を担当することとなった職員が、その在任期間において職責と能力を最大限発揮できるよう、国や都道府県はどのような支援を行っていくべきか。
 「推進のための方策」といたしまして、消費者、国民生活センターに加え、都道府県が中心となり、自治体職員をバックアップするための職員研修体制の実施を考えてはどうかということで、幾つか掲げておりますが、「それまで消費者行政の実務経験を有しない職員について、効率的に業務遂行が可能になるよう、体系的な職員研修メニューのひな形の作成」、「模範となるテキストや他自治体の先進事例の共有」、「研修への参加を促すための仕組みづくり(旅費の支援や研修参加中の窓口バックアップ体制の構築)」。
 それから「消費者行政担当職員専用の情報共有の場の提供」ということで、具体的にはワークショップや対面型の研修の場を活用した情報交換会への開催、職員版の消費者行政フォーラムの設置・運営」が考えられるのではないかと思います。
 それから、大きいIIIですけれども、「国・都道府県、基礎自治体の役割分担について」というところ、実は、今回6月28日、それから7月11日で県のヒアリングを考えていたのですが、なかなか絞り切れなかったということで、ちょっと難しい状況です。ですから、県のお話を聞かないままで今回、専門調査会の議論を、一旦まとめなくてはならないというところなので、具体的に書き込むことが限られてしまいますけれども、基礎自治体支援というところに焦点を絞って書き起こしてはどうかと思っています。
 「住民に身近な基礎自治体が消費者相談と一義的に担う体制へとシフトしていくなかで、特に都道府県の役割についての再検討が課題」としています。「役割については今後の検討課題であるが、人材育成、法執行力の強化、域内の消費者問題の最新状況について、管内基礎自治体の迅速な情報提供等が重点的に果たすべき役割ではないか」ということで、課題にしております。
 その次に資料4-2といたしまして、それぞれの論点に応じて皆様方からこういった御意見が出ていましたというものを整理しておつけしております。
 事務局からは以上です。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 本日、池本委員から資料を出していただいておりますので、この資料のポイントにつきまして御説明をお願いします。

○池本委員 資料の5-1をごらんください。特に、2ページ目裏面の1から5という一覧表になったところをごらんいただければと思います。
 先ほど、事務局から紹介された資料4-1で言いますと2ページと3ページ目のとりまとめの方向性と組み合わせてごらんいただくと、位置づけが明確になるかと思います。4-1の方の資料では、小規模自治体の体制底上げというのが1.にあり、それから、消費者教育をめぐる動きと体制強化という地域の中での位置づけがあり、それから職員が3番目にありました。私は、この1、2、3、4、5というのは1番、2番が相談窓口、それを更に広げていく3番が職員、そして、4番、5番がそれを地域の中に広げていく地域との連携というふうな順序でまとめてみました。
 この一覧にした趣旨は、一番左側で、住民にとってどういう消費者行政が必要なのかという住民目線から見た機能、それを自治体の中でどういう体制をつくる必要があるかというのが真ん中のブロック、そこへ向けて、ではどういう具体的な施策を展開するか、特に国の側でどういう支援が必要か、「目標・目安の提示」と書きましたけれども、数字だけではなくて、どういう施策を展開するかというふうに区分けしてみたものです。
 この中で言いますと、1番、2番の相談窓口のこと、従来はどちらかというと、1番、2番はもう一体のものとしてそれぞれの基礎自治体が地域に住民に身近なところへ窓口をつくり、しかもそれが専門的知見によるきちんとしたあっせん、解決ができることが望ましいというふうに、1つの文章で語られていたのではないかと思いますが、小規模自治体になると、その需要の数からしても専門の相談員を毎日配置するほどのニーズもないし、ではどうしたらいいのかというので、この1番と2番が矛盾してくるというところで、広域連携とかそういう議論があったと思います。
 ただ、その場合に、2番目の専門性の確保ということと、だからといって広域連携にして、近隣の自治体に委託してしまえば、その委託した元の自治体の方は担当の職員もいない、啓発もしないというふうになったのでは、これは身もふたもないことで、地域で利用しやすい窓口が最低限、例えばよろず相談の形ででもあって、それがその自治体における消費者行政の基盤となる。あるいは職員も、専任であれ、兼務であれきちんと位置づけられて、3番以下の業務につながるという、やはり拠点がなければいけない。こういうことは、広域連携でやっていますというところに対しては、その位置づけをしっかり伝える必要がある。
 あるいは、よろず相談の形でやっていますというところは、ある意味では自治体内に拠点があるということになるのでしょうが、そこは2番目の専門性の確保、そことつながることが必要ですよ、そこのつなげ方を広域連携の窓口と連携するのか、あるいは都道府県と連携するのか、そこは選択肢は両方あると思うのですが、その意味では1番と2番をきちんと見据えて、両方を、体制の面で両方をどう組み合わせていくのかというふうに方向づけていく必要があるのではないかという意味で、こういう区別をしました。それぞれの一番右側の、そのために何をどうするかというのは、ちょっと一つひとつを御紹介する時間もないので割愛したいと思います。
 3番の、「総合的な消費者行政サービスの提供」というのが、ここでも繰り返し皆さんからも議論があったとおり、基礎自治体の消費者行政というのが相談窓口をつくって相談者に助言をしておしまい、何か職員さんはよくわからないから相談員のところへどうぞと言うだけで、道案内をしておしまいになってきた傾向がある。それに対して、やはり消費者行政としてのサービスはそこから先が本領発揮なわけで、職員をきちんと配置して、個別案件の解決のためにも庁内連携が必要な場合もあるでしょうし、あるいは未然防止のために啓発につないだり、あるいは都道府県の行政部門とつないだりという意味でも職員の役割があるでしょうし、その意味で、消費者行政職員というものがきちんといて、相談窓口と連携して初めて自治体の消費者行政は簡潔するのだということを明確に打ち出していただく必要があるのではないか。
 そのために何をどうするかという、一番右の中で、この専門調査会の3月のときにお話ししたように、職員向け研修の強化ということがこれまで余り書かれていなかったのではないかという問題意識がありましたので、それが資料5-2のところへ研修テーマを別につくってみたものです。
 このマル1からマル12を一挙に全部やるというには、余りにも無茶な話でしょうけれども、例えば新任職員の研修とか、半年とか2年目とか3年目とか、これをそれぞれの中身をきちんと議論してカリキュラムをつくる。そして、その時期に応じて配置をしていく、そういう研修プログラムをつくる中身は、単に個別案件の処理の知識を得ることではなくて、それもある程度必要なのでしょうが、やはり最終的には自治体の中でこれを推進するための事業計画を企画立案し、人と予算を獲得する、そういう職員の能力をどう鍛えるかという、やはり視点をきちんと据えた研修が必要です。その意味で相談員研修にどうぞ積極的に出てくださいというだけでは不十分なのだろうというふうに思います。
 そういった、何を伝える必要があるのか、職員にどういう専門性を持ってもらう必要があるのかということも、今回の報告書の中で可能な限り見えるように提示していただきたいというものがあります。
 そして、4番、5番のところが、狭い意味での自治体の中の消費者行政を地域の中に広げるために、地域の関係団体とどうつながるか、あるいは地域の関係団体といっても、やはり消費者問題にきちんと自覚を持って行動する人を育てなければいけないという意味で消費者教育の推進というところにも発展していかなければいけないというのが、この4番、5番のところです。このあたりは今回のペーパー、資料4-1の中でも位置づけられております。特に、右側あたりはお読み取りいただければよろしいのかと思います。
 以上です。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に対しまして、委員の皆様からの御質問や御意見をお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。
 吉田委員、どうぞ。

○吉田委員 事務局で作成していただいたたたき台についてなのですが、3.のところですけれども、真ん中のところ「推進のための方策」ということで、消費者行政職員が在任期間中の支援体制が主に書かれてありますけれども、その上のところに書かれている消費者行政の継続性を担保するにはどうしたらいいかというテーマからいくと、その在任期間中の支援は確かにこれでいいかなと思います。一方、支援をして育った職員が長く在任することによって継続性を担保するというやり方もあり得るのではないかというふうに考えたときには、定期人事異動でころころ変わるから、変わるたびに育成すればいいのだということにとどまらない方策の提案というのが必要なのかなというふうには感じております。
 以上です。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 ほか、いかがでしょうか。
 池本委員、どうぞ。

○池本委員 資料4-1の1ページ目について、1.のところでマルの2番目、小規模自治体で体制が脆弱なままであるという、その下に、消費者行政担当職員の配置というのが進展していないという書きぶりになっています。しかし、職員の配置がほとんどふえていないのは、これは小規模だけではなくて地方自治体全体に係る深刻な問題であるというふうに認識しています。
 後ろの3ページのところでは、ここへ書いてある中身は全体に通じるのだろうとは思うのですが、2ページの一番上は基礎自治体における体制整備の課題というので、1.だけが小規模自治体というふうになっていますから、それと見比べても、1ページのところは小規模自治体の体制が不十分だという問題とは別に、独立の項目として担当職員の配置が広がっていないということを、大きなくくりで位置づけていただくのが適切かというふうに思います。
以上です。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 ほか、いかがでしょうか。
 吉冨委員、どうぞ。

○吉冨委員 4-1の1ページ、一番下なのですが、「今後、高齢者、ネット社会化の中で」という文言なのですが、ちょっと気になるのですが、少子高齢化、人口減少というのを含めたらどうでしょうか。高齢化のみではないので、どうかなと思いました。提案です。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 ほか、いかがでしょうか。
 竹中委員、どうぞ。

○竹中委員 4-1の2ページなのですけれども、「消費者教育をめぐる新たな動きと地方消費者行政の体制強化」のところで、自治体内の教育、福祉等の関連部局による庁内連携とございますけれども、やはり消費者教育に関しましては、消費者行政部局以上に学校現場で教育する部分も非常に大きいと思っていますので、教育、福祉等の関連部局による庁内連携よりももうちょっと強目に教育委員会の主体性的なものを入れていかないと、なかなか実効性を担保できないのではないかなと感じたところでございます。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 吉川委員、どうぞ。

○吉川委員 3ページ目のところの「国、都道府県、基礎自治体の役割分担について」というのですが、ヒアリングができなかったということが大きな要因かと思いますけれども、やはり私は都道府県の果たす役割というのは、基礎自治体は勿論大事ですけれども、もっと大事だと思っております。なぜヒアリングが嫌なのか。多分私の知っているところでも、1年ごとの契約とか、民間委託等の単年契約とか、そういうようなところがありますので、私はそういうところにヒアリングしてほしいと思っています。ヒアリングできなかった理由が何なのか。都道府県の役割が本来すごく重要で、基礎自治体も重要だけれども、本来私はやはり都道府県の役割と基礎自治体とでは役割が異なる。それぞれに違う役割で重要だと思っているので、そこのところの分析、書き込みがないと困ったと思っています。

○原事務局長 済みません、言葉が足りなくて。都道府県が嫌だと言ったと、ちょっと誤解を招くといけないので。
 実は、6月が皆議会だったのです。だから、6月が皆様難しい、難しいと言われていて、7月はどうかということなのですけれども、では、どういうこちらはヒアリング項目でお願いをして来ていただくかというところが、やはりちょっと基礎自治体の話をまとめないと、なかなか出てこなかったというところで、次回は7月11日なのですけれども、時間不足のようなところもあったということなので、ちょっと中途半端な段階でお願いをしていたということもあって、お断りになられたようなところもあるということなので、何か皆さんが嫌だ、嫌だと連呼されたというのとはちょっと違うかなと思いますので、済みません。

○宇賀座長 ほかいかがでしょうか。
 小林委員、どうぞ。

○小林委員 消費者教育推進法の抱える範囲というのは、例えば幼児から大学生まで全部入っているということでしょうか。

○原事務局長 はい。

○小林委員 そうすると、保育所とか幼稚園とか、あと学童保育のようなところとか、幅広くすべて網羅する形でこの消費者教育が行き渡るような方策がとられるということでしょうか。

○原事務局長 そうです。全部です。

○小林委員 大学生も被害に遭うことが多いですね。社会に出ていくのは中学校を卒業して出ていく子どもたちもいますし、高校を卒業して出ていく子どもたちもいるのですけれども、大学生でも結構被害に遭っている子どもたちは多いですし、大学の落語研究会の子どもたちと一緒になって出前講座のための勉強をして、落語でやっていただいたことがあるのですけれども、是非この推進法ができたのを機会に、大学の中にやはり消費者行政だとか消費者問題についての学部というのでしょうか、何かそういうのがきちんとできるようにしていっていただきたいなという気がします。
 食の安全のときのアンケート調査をしたときに、「市場に出ているものは何でも安全だと思うので、売られているものは何でも安心して食べます」というアンケートの答えが返ってきて愕然としたことがあるのですけれども、子どもたちはすべてが子どもたちを保護する形で安全な社会が構築されているわけではないのだよということを、やはり小さいときから覚えておいてほしいなと思いますので。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 ほか、いかがでしょうか。
 はい、吉冨委員、どうぞ。

○吉冨委員 3ページなのですが、地方消費者グループフォーラムや全国消費者フォーラムを活用云々の上に文言が書いてあるのですけれども、地方消費者グループフォーラムは、これから多分開催されていくと思うのですが、是非、異なった立場の団体等のマッチングの場としてとらえるならば、実行委員のメンバーに参加していただくとか、それから会場に参加を要請するとか、後援を得るとか、何か具体的なことを消費者庁の方から少し指導をしていただけるといいですね。多分、今、消費者団体のみの交流の場になっているのではないかなと思うのです。せっかくのたたき台なので、是非実行する方向で少し働きかけをしていただけたらいいかなという感想です、思いましたので、よろしくお願いします。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 ほか、いかがでしょうか。
 池田委員、どうぞ。

○池田委員 ちょっと小さいことになるかもしれないのですけれども、高齢者社会になってということで、民生委員さんの担当ということでかなり出てきているかと思うのですが、小さい自治体になればなるほど、民生委員さんになる方というのは現実的には少ないのです、希望される方が。この中で、今、やっていらっしゃる方がもういっぱい、いっぱいなのに、またこういう形で、では今度は福祉部分からではなくて消費者部分の方からもお願いといったときに、では、どこまでこの方たちがやっていけるのか。また、民生委員としてはたしか報酬がなかったと思うのです。だから、そういう方に対して業務をふやしていくというのが余りにも強く出てきてしまうと、また別の意味での民生委員の在り方というのが消えてしまうのかなと、なり手がなくなってしまうのかなという危険性もあるのかなと思いました。ちょっとそれが気になりましたので。

○宇賀座長 小林委員、どうぞ。

○小林委員 反論するわけではないのですけれども、民生委員さんは個人、個人の家の中に入っていって、そこの家の中の事情を本当によくわかっていらっしゃるので、あれは総務省の管轄ですか、民生委員さんは、厚生労働省ですか。
 私たちも民生委員さんとのかかわりがあって、地域の中の細かい家庭の事情とかがよくわかる民生委員さんたちがもっと消費者問題を知っていただくと、被害が未然に防げるのではないかなと思ったことがたくさんあるのです。新しい役割を加えるのはすごく大変だと思うのですけれども、それによって民生委員さんが若返っていくのではないかなという気もしますので、かなり労力を要しますので、民生委員さんのお仕事は。今、私の周りだけを考えると、かなりお年を召した方が、私も高齢者ですけれども、年配の方がやっていらっしゃることが多いように感じられますので、もっと若返っていくとそういった新しい役割が入っていっても耐えられるのではないかなというふうに思えるのと、それと、もっと未然に被害を防ぐことができるのではないかなという期待もあるのです。

○池田委員 別に私は、民生委員を載せるなと言っているのではなくて、民生委員さんは無償でやられているのに対して、これ以上負担をかけてしまうことで、今までやっていらっしゃる方も、今後も新しい方が無償でここまで業務をやっていかなければいけないのかといったときに、なり手がなくなる可能性が出てくるのかなと思うのですよ。きちんとやっていく上で、実際に民生委員さんに入っていただいていることで高齢者の消費者被害というのはかなり防げている部分というのは理解しているところです。ただ、何もかも、民生委員という形では報酬がなかったので、たしか児童委員というのはついていると思います。民生児童、児童委員という兼務でされていると思うのですけれども、児童委員さんの方には報酬がたしかついてきたのではなかったのかということで、両方兼務させることで報酬部分を補完している部分があったと思うのです。
 ですから、仕事をお願いするのであるならば、ある程度の報酬担保なり何なりをしておかないと難しいと思いますし、実際、高齢者の方というか、ある程度リタイアされた方で職務経験がある方が家庭内に入っていくことで、いろいろと情報の聞き出し方であったりとか、信用性というのも出てくると思うのです。だから、そこの付近がちょっときちんと明確にできないのであるならば、余り民生委員さんというお名前を全体的に出してくると、また負担がふえてくるのではないかなという危惧があっただけです。
 ですから、民生委員さんの負担がちょっと大きくなることが別の問題であるのかなと思います。

○宇賀座長 吉冨委員、どうぞ。

○吉冨委員 済みません、多分おっしゃっていること、両方とも正しいと思うので、例えば書く文言としては「見守る人」とか、「地域にかかわる人」とか、そういうふうに表現したら一括民生委員も自治会も福祉委員もすべて網羅される。だから、だれに負担が要るわけではなくて、要するに見守る、山口県では「見守る人」という表現ですが、「地域にかかわる人」などという書き方にしたら無難かなというふうに思います。いかがでしょうか。

○宇賀座長 小林委員、どうぞ。

○小林委員 2ページの「地域力の強化」というのをすごくあっさりと書かれているのですけれども、ここはもっと丁寧に、今、吉冨さんが言われたようなこととか、池田さんが言われたようなこととかを全部網羅する形で、小さなところほど地域でやっていかないとできないだろうなと思いますし、これだけ行政の職員が減っている中で、地域の力に頼っていくという方が、むしろ健全なのではないかなという気もしますので、是非充実した書き方にしていただきたいと思います。

○宇賀座長 山口委員、どうぞ。

○消費者委員会山口委員長代理 1枚目の箱の中に今回の課題が3点挙げられているのですけれども、ここに並べるのは難しいのかもしれませんが、先ほど岩本先生がおっしゃった自治体での消費者行政の一元化ができていないといいますか、厚生部門あるいは建築部門、その他の部門でのばらばら感がやはりかなり一つの重要な問題だと思うのです。勿論、処分権限が保健所にあったり県にあったり、あるいは市にはないという問題もありますが、その問題は3ページの3の「消費者行政担当の自治体職員に対する支援策の在り方の検討」の次の行に「地方消費者行政の推進には、庁内外との連携が重点課題となっていくことが見込まれるなか」と、すっと書いてあるのですが、ここの実態をきちっと書くことが重要ではないかと思います。この辺は今後の書きぶりなのですが、地方自治体の中での連携が非常に重要な課題になっているのだということをきちっと書き込んでいただく必要があるのではないかなと。その上で、その実態を踏まえた上でどう自治体内で、あるいは自治体間、あるいは県として連携するのかということを書き込んでいただくという視点が必要ではないかなと思います。
 それから、先ほどの地域力の強化の中で、どこまで書くかというのは難しいところなのですが、この間、高齢者の詐欺的投資勧誘被害の問題などを検討していますと、特に社会福祉協議会が自立支援のためのいろいろな施策をやっています。それから、先ほどちょっとお話が出た地域包括支援センターの問題ですね。書き出せば切りがないと思うのですけれども、それをどこまで名前を並べるかというのもあるかと思いますが、地域力の強化というときに、この3つだけではないだろうなという感じはします。

○宇賀座長 はい、ありがとうございました。
 では、仲條委員、どうぞ。

○仲條委員 3ページの行政担当職員の支援策の在り方の検討というのが書かれているので、今回の会議でいろいろ専門性の向上とか研修プログラムとか、在任期間を長くというようなお話が出て、担当者としては非常にうれしく思っているところです。
 それで、この中の推進のための方策の中で、研修への参加を促すための仕組みづくりの旅費支援とあるのですけれども、やはり自治体で予算を取るときに相談員さんの研修費用だけは何とか確保できても、担当職員の研修という部分の理解というのは非常に得ることが難しくて、相談員さんは専門家だから研修が必要というのはわかるのですけれども、担当職員までなぜというところがあるので、こういったところをもっと細かくというか、深く書き入れていただいて、その旅費の支援というところでは、やはり国の方からの支援が必要かなと思います。なかなか自治体の中でここの部分だけを、必要性はわかるけれども、でも予算は難しいというふうに大体どこの自治体でもなるかと思います。この人材育成に係る支援とか、研修費用に係る支援というのは、やはり国にお願いしたいところであるとは思います。
以上です。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 ほか、いかがでしょうか。
 はい、沼尾委員、どうぞ。

○沼尾座長代理 済みません、ちょっとこれを読んで感じたことなのですけれども、そもそも自治体の現場でもそうですし、私も割と地域づくりというようなことで、結構いろんな自治体に入って、あるいは公民館を拠点とした地域づくりをどうしようかとか、いろいろ活動とか何かのお手伝いもしているのですけれども、そこで出てくる地域の課題というのを列挙したときに、こうした消費生活相談とか、消費者行政にかかわるものというのが項目として挙がってこないのです。それはやはり高齢者の見守りというような話とか、あるいは、例えば耕作放棄地がふえてどうしようとか、あるいは若者がいないしとか、学校がさびれたという話が出てくるのですけれども、何か身近な生活の中で、例えば何か買い物をしたらだまされてしまったとか、あるいはこの表示、何か違っているのではないのかとか、そういうことに対して自治体なり行政に窓口があって、そこを通じることで何か解決できるのだということ自体が、そもそも地域の人たちにほとんど認識されていないのではないかと思うのです。
 そういう状況の中で、つまり需要が出てこなければ地元の議員さんたちだって、そういうことをもっと行政でやれということも議会でも言わないし、首長さんだって当然そんなことよりももっと表に出てくる課題をやはり優先してやる方が選挙で勝てるということになる。ですので、何かこういう体制を強化するということも大事なのですけれども、そもそもやはりそういう課題があって、何かあったときに、困ったときにここに行けば何か解決できるというような仕組みがあるのだということ自体が、全く知られていないということ自体が、地方消費者行政が活発にならない根本的な問題なのではないかなと思うのです。そのあたりのところ、これは普及とか広報なのかどうかはわからないのですけれども、そもそもの何かそういうところをきっちりと伝えていくということが大事なのだというところを、どこかにうたっておいていただいたらいいかなというふうに思ったというのが1つ目です。
 あと、それから、先ほど県の役割についてのヒアリングというお話があって、それは事務局の方のお考えもあるかと思いますけれども、もし可能であれば、やはりヒアリングなり、何かお話を聞けるような機会がないのかなということとか、あと、せっかく竹中委員もいらっしゃったりするのですけれども、何らかの形でちょっと御意見を伺ったりとかはできないのかなと思ったりしています。
 そういうことも含めて、いろいろな、例えば都道府県でも、多分、竹中委員はここで御発言をいただいているので、もっと違ったタイプの県をとか、いろいろなお考えもあるのかもしれないのですけれども、せっかくなので、できればお話を聞きたいなというのが、これは要望です。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 では、池本委員、どうぞ。

○池本委員 1ページ目で、今の沼尾委員からの御発言あるいは山口委員からの御発言にも関連するのですが、これは、1.の上のくくりなのか、あるいは2.の中期的展望のところで位置づけることなのかもしれないのですが、高齢化の進展というのと地方再生の将来展望という、言わば条件づけの話、環境の話が出ていますが、やはり地方自治体において消費者行政というものが自治体の中でも、あるいは住民にとってもまだまだきちんと位置付けられていない。消費者庁をつくる前の平成20年ですか、消費者行政推進基本計画が決定されたときにも、明治以来のわが国の行政の役割を産業育成から地域の市場の安心安全に大きく変化するのだという、そういう根本の価値判断が自治体にまだ浸透していない。だから、人員を配置したり、特定財源で来たのは何とか使っているけれども、人員もだし、あるいは地域住民にそれを普及しようということができていないという、やはり大きなくくりの中で議論をしていく必要があるのだろうと思います。
 財源が厳しいという話も、単に一般財源が2割減っているというだけではなくて、例えば消費者行政予算は3、4割も大幅に減っている、あるいは人員も全体で1割、2割減っているけれども、消費者行政予算はたしか4割ぐらい、過去10年ちょっとの間に減っている。やはりそういう大きなくくりの中で消費者行政がまだまだ位置づけられていないという事実と、では、そこをどう突破するかという大きなくくりでの問題提起を、是非していただきたいというふうに思います。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 ほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 いろいろと貴重な御意見をいただきましたので、事務局の方でそれを踏まえて次回の会合で報告書の案の提示をお願いしたいと思います。
 それでは、本日の議論は以上とさせていただきます。

≪4.閉会≫

○宇賀座長 今後の予定等につきまして、事務局から御連絡をお願いします。

○原事務局長 どうも熱心な御議論をありがとうございました。次回の専門調査会は7月11日木曜日ということで、会場は、また、もとの大会議室に移らせていただきますので、課題については報告書の素案について御審議いただきたいということですが、消費者庁より消費者教育推進に関する基本方針のうち、特に地域の消費者教育について御説明をいただく予定としております。その上で報告書案の検討です。
 それで、先ほどやはり県のヒアリングということで、実は事務局でも相当いろいろな観点から絞り込んで、この県にお願いをしたいということもあったのですが、なかなか難しいと言われました。知事会とか市長会とかに連絡をして、是非どこか推薦いただけないかということもお願いしたのですが、先ほど沼尾先生がおっしゃられたとおりで、例えば組織に委員会とか何とかというのがあれば、そこに参加をしている県に声をかけることができるのだけれども、消費者行政についてのそういう委員会のようなものがないので難しい、ただ非常に今の事務総長は地方消費者行政には熱心な方なので、具体的な県のお名前もいただいたのですが、次回間に合わずということで、何らかの方向でまた工夫したいと思います。
 それから、予備日を8月1日にお願いしておりましたけれども、7月11日の審議が終わるまでどういう状況になるかはわかりませんので、今の段階ではまだ予備日で置いておいていただければと思います。
 事務局からは以上です。

○宇賀座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきますが、沼尾先生と岩本先生には本当に御多忙なところ、御報告をいただきましたことに対しまして、重ねて御礼申し上げます。
 また、皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして熱心な御議論をいただき、ありがとうございました。

(以上)