第2回 特定保健用食品の表示許可制度専門調査会 議事録

最新情報

日時

2011年3月30日(水)14:00~15:30

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【専門委員】
 山田座長、梅垣委員、宗林委員、寺本委員
【担当委員】
 佐野委員、田島委員
【説明者】
 神戸大学大学院法学研究科 中川教授
【消費者庁】
 食品表示課 平中課長補佐(総括)
 食品表示課 横田特定保健用食品審査官
 食品表示課 勝山保健機能食品係長
【消費者委員会事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.特保制度における新たな制度設計について
  ○説明者:神戸大学大学院法学研究科 中川丈久教授
3.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第 (PDF形式:9KB)
【資料1】特定保健用食品の表示許可制度に関して行政法の観点から検討するポイントについて (PDF形式:13KB)
【資料2】関係法令(抜粋) (PDF形式:29KB)
(参考資料)特定保健用食品の表示許可制度専門調査会の今後のスケジュールについて (PDF形式:19KB)

 


≪1.開会≫

○原事務局長 それでは、時間になりましたので、始めさせていただきたいと思います。本日は、皆様お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから、第2回「消費者委員会 特定保健用食品の表示許可制度専門調査会」を開催いたします。
 本日は、すべての委員に御出席をいただいております。担当の佐野委員が少し遅れておられます。
 それでは、審議に入る前に配付資料の確認をさせていただきたいと思いますけれども、本日お配りをしております第2回の議事次第の下の段に配付資料として明示しております。
 資料1「特定保健用食品の表示許可制度に関して行政法の観点から検討するポイントについて」ということで、後ほどのヒアリングを予定しておりますけれども、お聞きしたい点を列記したものです。
 資料2「関係法令(抜粋)」。
 参考資料といたしまして、この専門調査会の今後のスケジュールについてお示ししております。
 不足がございましたら、またお申し出いただければと思います。
 それでは、山田座長、どうぞ議事進行をよろしくお願いいたします。

○山田座長 本日は、お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 まず、議事に入る前に、前回所用により御欠席されました、寺本委員から簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。

○寺本委員 ただいま御紹介賜りました帝京大学の寺本でございます。前回所用がございまして、失礼申し上げました。
 私は、特定保健用食品関係の調査委員をしているという立場から、この会に参加させていただいていると理解しておりますので、どうぞよろしくお願いします。

○山田座長 ありがとうございます。
 それでは、撮影はここまででございますので、カメラの方がおられましたら退出をお願いいたします。

(報道関係者退室)

○山田座長 本日の議事につきましては、前回の専門調査会で示したスケジュールにおいて「特保制度における新たな制度設計について」のヒアリング、並びに「論点整理で消費者庁において早急に対応すべき方策とされた論点への対応について」の消費者庁へのヒアリング、この2点をお願いしておりました。
 しかしながら、2点目の消費者庁へのヒアリングにつきましては、大震災への対応をされていたために十分に準備をすることができなかったとのことでございますので、改めて次回の調査会でこの点についてはお願いしたいと思います。このため、本日は1点目の制度設計についてのヒアリングだけを行うことといたします。

≪2.特保制度における新たな制度設計について≫

○山田座長 それでは、議題に入ります。
 特保制度における新たな制度設計を検討するに当たって、行政法の観点からということで、この検討も必要と考えられます。本日は、神戸大学大学院法学研究科の中川丈久教授においでいただいておりますので、本専門調査会で検討することとしている論点について、行政法の見地から御説明をいただきたいと思います。
 中川先生には、御見解を伺いたい点について、私の方でまとめて事前にお送りしてございます。これらに沿って説明をお願いしたいと思っております。
 まず、私の方から伺いたいポイントをまとめた資料を読み上げたいと思います。資料1「特定保健用食品の表示許可制度に関して行政法の観点から検討するポイントについて」というA4判の1枚紙に3点示してあります。これをまず、読み上げたいと思います。
 「(1)特定保健用食品(特保)制度における再審査手続について」。
 現行制度では、許可後に新たな科学的知見が生じた場合、消費者庁が再審査手続(食品安全委員会及び消費者委員会の意見を聴いて、許可を取り消すか否かを判断)を行うこととなっています。再審査手続を開始するか否かの判断基準が明らかではないため、再審査手続を迅速に開始することが困難となっています。
 このことから、この判断基準を明確にすることが求められていますが、例えば、ある許可品の安全性に問題がある可能性が示唆され、かつ、問題があるか否かが確定するまでに長い時間、2、3年を要する場合に、当該許可品について再審査手続を行うことを公表した場合、事業者は一定程度の不利益を被ることになると考えられます。このような判断基準を策定するに当たり、行政法の見地からどのような点に留意すべきか、これが第1点目でございます。
 第2点目「(2)特保の表示許可の一時停止等について」。
 消費者庁が再審査手続を行うこととした場合でも、表示許可を取り消すか否かの判断には多くの知見を収集する必要があり、相当の時間を要すると考えられます。現行制度では、再審査手続中でも特保の表示を続けることができるが、消費者への正しい情報提供の観点からは望ましくないと考えられます。
 これに対して再審査手続中の製品に、1つ、注意喚起を促す表示を義務付ける。2つ、表示許可を一時停止するという対応が考えられますが、このような対応について行政法の見地からどのような問題点が考えられるか。例としては、不利益処分に当たるかどうかです。
 また、表示許可の更新制を導入することについては、行政法の見地から考慮すべき点はあるか。これが第2点目でございます。
 第3点「(3)食品としての安全性の観点からは食品衛生法上の販売停止等の措置がとられていない段階で、消費者保護の観点から特保の表示許可を取り消し、又は一時停止することが可能か」。この3点につきましてであります。
 本日は、以上について中川教授より御説明をお願いいたします。

○中川教授 中川でございます。
 本日は、大変難しい宿題をいただきました。あまり判例とか学説で議論している論点ではない、普通は行政指導で何となくごまかしてしまうところをきちんと法的に整理するとどうなるのかという問題ですので、そもそも難しいところがございます。
 ご下問の(1)からまいりたいと思いますが、ここでは2つの問があるのではないかと理解いたしました。まずは、この再審査手続を開始するかどうかの判断基準というのは、どういうものなのかという問題。もうひとつは、(1)の第2パラグラフでありますが、再審査手続を開始したことを公表すると、ある種の風評被害的なものが発生するのではないか、それについて法的にどう考えるのか。この2点かと思います。
 最初に条文の確認をいたしたいと思います。どこを今日、私が御説明するかということであります。
 資料2「関係法令」の1ページ目の第26条の部分です。26条で「販売に供する食品につき」というので表示の許可を受けなければならないとあります。
 もうひとつ,2ページに28条がございます。28条の下に、一、二、三とございますが、このうちの「三 当該許可を受けた日以降における科学的知見の充実により当該許可に係る食品について当該許可に係る特別用途の表示をすることが適切でないと判明するに至ったとき,当該許可の取り消すことができる」という条文でございます。
 さらにこの資料の5ページになります。これは健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令というものなんですが、先ほどの健康増進法という法律の執行の細部について定めた内閣府がつくった規則であります。内閣府令の第4条と第5条であります。なお,第4条は「審査」とありますが、これは先ほどごらんいただきました健康増進法第26条の手続について定めたものです。そして、28条3号を理由とする許可の取消しの手続について定めたのが第5条という関係になります。
 計4つの条文の運用、あるいは改善について今日お話をいたします。
 私がお話する次元は2つに分かれまして、1つは、今あるこの法律及び府令という現行法でどこまでできるかという問題。もう一つは、現行法ではこれ以上のことができないので、改正が必要である問題はどれかということです。
 前者を解釈論と呼びます。現行法でどこまでできるかです。後者が立法論。今後、新しい法律をつくるなり、府令を改正するなりしないといけない。この2種類のことを分けてお話をいたします。
 まず、健康増進法28条の3号を理由とする許可取消しについて、これがどういう趣旨の取消しなのかの確認から入りたいと思います。
 行政法の世界で許可とか認可とか承認とかを与えて,一定の行為なり活動なりをしてよろしいというお墨付きを与えた後、これを取り消すということはよくあります。大きく2種類に分かれまして、もともと間違えて許可等を渡してしまったという場合があります。これは当然取り消せる。これを職権取消しと呼ぶというのが,我々の学問上の用語です。
 それに対して、もともとの許可は正しく付与されたんだけれども、その後にいろんなことが起きて、これ以上この人に許可を与え続けるわけにはいかないというタイプの取り消しもあります。
 どちらも法令上は許可の取り消しと呼ぶんですが、大分性質が違いますので、前者の方を学問上の言葉で職権取消し、後者の方も撤回と呼びます。
 今日のテーマである28条には、許可を取り消してよろしいという事由が3つ掲げられていますが、いずれも撤回する事由に当たります。特定用途表示の許可をしたこと自体は間違っていたわけではないんだけれども、後でいろんなことが起きたので、それにかんがみると,表示許可をこれ以上あなたにはあげ続けるわけにはいきませんという意味での取消しであります。
 そのうち28条の3号が、新しく生じた知見にかんがみ,すでに与えた表示許可を取り消すというタイプです。この特徴は、次のとおりです。特定用途表示許可を与えたということは、許可時には,許可要件をすべて満たしていたはずなんです。この場合であれば安全性であるとか有効性があったはずである。しかるに,その安全性、有効性は、許可を与えた以上は、その後もずっと維持していなければならないはずだろう。ところが、新しい知見に照らすともはや安全ではないとか、新しい知見に照らすともはや有効とは言えないというので,許可を取り消すという場面です。
 ということは、許可取消しではありますが,健康増進法26条の申請時とよく似た判断をしています。健康増進法26条は初めて許可を取るときに、私たちはこんなデータを持って、安全性、有効性を立証したい。それが消費者庁に認められて許可をしましたというものです。これに対して28条の3号は、新たな知見ができてきた現時点で,もしも申請し直したら、許可はあげられませんという場合に、消費者庁が許可を取り消すという制度です。
 このように,28条の3号の許可取消しの判断は、許可申請の審査と非常によく似ています。28条の1号、2号というグループと3号というグループは大分違うんです。ここが今日のポイントになるんですけれども、28条の1号、2号は、きちんと表示していなかったとか、うその表示をしたとか,許可を受けた事業者が何らかの違反をしたことを理由に、退場してください,つまり許可を取り消します。食品が安全でないとかそういうことではなくて、事業者のビヘイビアがよくないということを理由して許可の取消しをするわけです。他方、3号は、今の段階で申請をし直したら「あなたはパスしません。だから、退場してください」というタイプの許可取消しなんです。
 そういたしますと、(1)の最初の問ですが,再審査手続に入るときの判断基準は何かといいますと、まさに28条3号の取消しをしなければならないだけの疑いが合理的にあるという以外に表現しようがありません。疑いがあるから再審査を行うというだけのことです。
 問題は、疑いというのはどの程度具体的ではなくてはいけないのかです。消費者庁の手元のデータでは、あなたの食品について今、申請し直したら、今の新しい知見の下では許可は認められませんということを具体的に示すデータまであって、初めて再審査手続に入れるのか、それともそこまでは要らないのかというところが実際上の問題になると思います。
 これについては、28条1号、2号の場合と3号の場合では、大分考え方が違うだろうと思います。28条の1号、2号に基づく許可取消、すなわち事業者の側で表示についていい加減なことをやっているといった場合は、その事実を消費者庁がつかんだから,許可取消しに動こうとしているわけです。
 ということは、消費者庁の方でそれなりの具体的な証拠があって、かなり具体的な嫌疑があって、取消しの手続に入るということが通常求められるだろう。つまり、アクションをおこす方が,何で動き始めたのかを立証しなさいと考えられるわけですけれども、28条3号は、これも確かに消費者庁の方から動き出しているんですが、中身は申請の審査と一緒なんです。26条と28条の3号は、消費者庁がやることは実際一緒で、この食品が安全性、有効性の基準、つまり許可の要件を充足しているかということに尽きます。
 そうしますと、安全性,有効性の要件をいまでも充足しているということを基本的にどちらが立証しないといけないかというと、それは28条3号の場合には、事業者であると考えられます。どうしてかといいますと、事業者はデータを全部持っているんです。消費者庁は持っていません。先ほどの28条1号、2号であれば、違反したということに気付いて消費者庁が動きだしているわけですから、それはやはり何か証拠を消費者庁は持っているわけです。逆に事業者の方に、あなたに一切違反がないことを示しなさいと言っても、それはなかなか大変な立証です。
 だけれども、3号の場合には、食品を持っている事業者が一度、特別な表示をすることの許可を得て、ずっと安全性、有効性という許可要件を充足し続けなくてはいけない以上、そのことは事業者のほうで証明できるはずなんです。かつ証明できるデータは全部事業者が持っている。
 そうしますと、ちょうど26条で申請者側が安全であり有効であることを立証しなくてはいけないのと同様に、28条3号の場合にも、消費者庁としてはむしろ簡単な疑問を指摘するだけでよろしい。それに対して反論しなくてはいけないのは事業者の方であると考えられます。
 ということは、再審査手続を監視するために必要な嫌疑は、消費者庁として新しい知見をまず認識し、それによると、すでに許可を与えたこの商品はもしかしたら有効性ないし安全性に欠けるかもしれないという疑念があるので、説明をしてくださいとお願いをしたときに、向こうから出てきた資料で「なるほど、これは大丈夫だ」と確信できればそれはもちろん何もする必要がないんですけれども、確信できなかった、あいまいである、あるいは向こうが十分に資料を出さない、そもそも出さないということになると、それだけで,許可取消しのための手続にはいるだけの嫌疑になると考えられます。これはまさに申請者が十分な添付資料を出さないと、許可を出すわけにはいかないというのと,一緒です。消費者庁としては、安全である、有効性があると確信できるだけの証拠を事業者が出してくれなかったら、それを理由に28条3号による取消しのための再審査手続に入ることができるという解釈は、私は十分できると思います。
 私はと申し上げましたが、実はこういう問題に関しては、判例も学説もないんです。こういうことは先ほど冒頭で申しましたように、正式な法的紛争になるという事例がほとんどありません。あまり素材がないものですから、我々もあまり議論ができないのが実情です。ですけれども、現行法の解釈として、消費者庁が28条3号に基づく再審査手続を開始する場合には、自分たちが確証を持てないというだけで十分であるという見解は十分成り立ちうるだろうと解しているわけであります。
 これが(1)の最初の問に対する私の考え方であります。次、(1)のもう一つの問題であります。再審査手続を開始していることを公表すると、それが売上に響くのではないか。そのことについて何か留意すべきことがあるかということなんですけれども、2点あると思います。
 1つは、先ほど申しましたように、再審査手続には、消費者庁が十分に納得できなかったからというだけで入れると申しました。それは事業者側からすると、大変厳しいのではないかと思われるかもしれませんが、この許可制度は,表示を許された製品が安全で有効であるということを強調する表示なのですから、それは常にそうではなければいけないはずです。ですから、それは説明できない事業者の方がおかしいだろうと思います。
 いまひとつは、常に説明し続けると、非常にコストがかかるかもしれませんけれども、それはやはり特別な表示をもらってそれで販売しているわけです。メリットを受けるための当然のコストであろうと思います。必要な表示を得るための対価である。対価として常にきちんと安全性、有効性を保っているということを新知見の下でも説明し続けるという責任を負うのは、特別な表示、つまり特権的地位を得ているわけですから、それに対する対価として当然のだろう。
 したがって、再審査手続を開始した結果、結果的には問題はなかったといった場合であっても、それは最初に確信が得られなかったから再審査手続に入るというところで消費者庁が非常にずさんな判断をしたということがない限りは、現在の国家賠償法の判例に照らしても、国が責任を負うことはないと思われます。新知見のもとで許可を取り消すべき疑いがあるかどうかについて、消費者庁があまりにもずさんな判断をすれば別ですけれども、専門的な見地から見て十分にあり得る判断であれば、これはそもそも違法ではないと判断されると思われます。
 ただ、公表の仕方については注意が必要かと思います。この製品非常に危なそうだぞという感じの不用意な表現を使うと、それは公表の仕方として中立ではありません。再審査手続に入るのは,消費者庁として確信が得られなかっただけなんですから、黒とも白ともわからない。詳細な審査が必要で、あるいはもう少し専門家の専門的な判断が必要である。慎重な判断が必要であるというので、やっているだけでありますので、白でも黒でもないということを明確にした形で公表をするのでないと、不用意な発言、無用な誤解を招くということになると、それはそれで公表の仕方が不適切であったということになろうかと思います。そういった場合は、国家賠償責任を国が負うということはあり得ると思われます。以上が(1)であります。
 続けて(2)にまいります。ここにも二つのご質問が含まれているように思います。
 再審査手続を開始したけれども、長い時間がかかる。その際、何らかの消費者への情報提供が必要ではないかという御質問であります。これが1つ。もう一つの(2)の質問は、表示許可の更新制度の導入ということであります。
 それぞれかなり異なる問題ですので、まずは前者の方からお伝えしたいと思いますが、注意喚起の表示を新たに義務付けるとか、あるいは今の表示を停止しなさいということを義務付けるという措置権限は現行法に書かれていません。
 現行法は許可された表示をすることができるということしか書いてございませんので、特定用途表示とは異なる注意喚起表示の義務付けであるとか、あるいは表示の停止命令をするのであれば、これは新たな立法が必要になると思います。現行法の解釈だけではできないと思います。これが1点です。
 ただ、再審査手続を開始しているからといって、注意喚起表示や一時停止をすることが,そもそも消費者保護の観点から必要なのかということにつていては、私にはまだ得心しかねるところがあります。
 表示停止ということは、業務停止命令、営業停止命令と一緒ですので、緊急性がある場合なんです。はっきりとわからないけれども、とりあえずそれはやめておいてくれという場合です。例えば食中毒などの場合、あなたのお店が原因ではない可能性もあるけれども、しかし原因である可能性もあるので、とりあえずは安全のために保守的に考えて営業を停止してくれ。普通こういう業務停止というのは、生命、身体に対する緊急の必要がある。あるいは非常に大きな財産的被害が生じる可能性があるという場合です。注意喚起も同様だと思われます。
しかし、特別用途の表示に関して、まず,有効性という点で疑問があるとして,その場合に緊急性があるのかと考えますと、有効ではないにもかかわらず有効であるかのような表示をしていたというのは、一般の不当表示と同じ問題だろうと思います。特保だけの問題ではなくて、優良誤認されるような表示をするのと一緒でありまして、よくある消費者被害のタイプなんです。
 この場合の消費者被害は、生命、身体に対する被害ではなくて、有効でもないのに有効だとだまされて買ったということですから、財産被害になる。そうだとすると、まだ白黒わかっていない段階で緊急に止めなければいけないのか。有効性がないことが判明した段階で,事後的なお金のやりとりで済むのではないかと思います。例えば返金命令をするなり、実は全然有効性がなかったものを売り上げてもうけたというわけですから、そのもうけを剥奪するという課徴金制度をつくるなりというといったことです。
特保の表示をどうことする立法ではなくて、後始末のための別の立法措置をする方がよほど有効ではないか。その事業者にもお灸が利くのではないかと思います。表示停止だけというよりもやはりもうけた分全部、あるいはそれ以上持っていきますという方がよほどお灸が効くだろうと思います。
 現在、消費者庁でこういった消費者被害に対して行政的命令で何か被害者救済ができないかという検討を別途やっておりますけれども、そこで検討しているような問題なのではないかという気がいたします。これが有効性に問題があるのではないかという疑義があって、再審査がされた場合です。
 他方,安全性を欠く場合はどうかということなんですけれども、安全でない商品であれば、逆にこれは表示を停止したぐらいでは全然生ぬるい。販売停止しないといけないような緊急性のある場面だろうと思います。安全ではないという注意喚起も同様です。
 特保としての安全性がないということは、恐らく食品としも食べていいということではないのではないか。ここら辺は私は素人的にそう思うだけで、認識が誤っている可能性もありますので、少し留保したいんですけれども、一応私が今理解している範囲では、特保の表示ができる安全性と食品として食べていい安全性に差があるわけではないとすると、安全性ですから生命、身体に関わりますので、表示の問題ではなくてそもそも販売停止させなくてはいけないということで、食品衛生法で行動すべきだろうと思います。販売停止あるいは回収をさせないといけないのであり、一時停止とか注意喚起では全然生ぬるいという気がいたします。
以上,注意喚起や一時停止というご質問については,そもそも,許可製品が有効性に欠ける場合であれ安全性に欠ける場合であれ、どちらにもあまり効き目がないといいますか、そもそも立法する意味があるのかというところを疑問に思った次第であります。
 以上が(2)の前半であります。一時停止とか注意喚起に関してであります。
 (2)の後半、許可更新制度等の導入であります。これは、現行法の解釈ではもちろんできません。現行法は、更新制ではないという制度であります。もともとは許可更新制度で立法されていたそうですけれども、規制緩和ということで廃止されて、現在の制度になったようです。
 しかし,現在のような,一旦許可を受けるとその期限がないというのは,大変です。何か大変かと言いますと、先ほどから申しましたように、新知見があった場合に、その新知見の下でも許可要件を充足し続けるのか、有効、安全であり続けるかということを,消費者庁が新知見を見つけてきて、モニターし続けなければならない。
 どうすればもっと楽かといいますと、定期検診をするのです。それが更新制であります。別に,安全性や有効性に疑義ないし嫌疑があるわけではない。新しい知見が発生して、あなたはおかしいのではないかという具体的な嫌疑があるわけではないんだけれども、今の最新知見はなにか、そして、それに基づくと許可要件をまだ充足しているかというのを定期的に報告してくださいというのがこの更新制度の趣旨であろうと思います。
 少し技術的な話になりますけれども、これも2種類の制度づくりが考えられます。1つは元あったような許可を例えば5年間、8年間、10年間有効ということにしまして、有効期限が切れると更新の申請をさせるというタイプです。更新時に新知見がなければ、以前と同じ申請書を出せばいいわけです。いろいろ使用実績とかも出すということになると、少し書類は膨らむかもしれませんが、いずれにせよ何年かに1回申請をし直すというタイプです。
 もう一つは、薬事法にある再評価制度とよく似ているんですけれども、許可の有効期限を決めるのではなくて、取消しの方を使うタイプも考えられます。28条3号の取消しをする必要があるか、ないかを定期的に調べるために、定期的に報告させるというタイプです。定期的に,何年経ちましたから今の段階での新知見に基づく安全性,有効性のデータを出してくださいと求めるわけです。ただ、その間も許可は有効です。更新制ではありません。許可は有効ですけれども、資料提出を義務付ける。それに基づいて、だめだなと思ったら許可を取り消す。
 以上,ふたつ考えられます。許可の有効期限を使って、許可を更新するのがひとつ。もうひとつは、許可自体は永年なんですけれども、ただし、定期的に,取消しが必要かどうかのチェックをする。定期検診を義務付けるというタイプです。
どちらもやっていることは、ほぼ一緒なんですけれども、制度のつくりとしては違います。多いのは、前者の許可の更新制です。ほとんどの許可制というのは、普通は更新制でありますので、運転免許など考えてもわかると思いますし、営業免許もそうであります。
 後者の方は、先ほど少し申しましたが、薬事法では導入しています。薬事法の再審査ないしは再評価手続というものと同じであります。
 どちらがより使いやすいのかは、私にはよくわかりません。どちらがコストパフォーマンスがいいのかはわかりませんが、理屈としては両方あり得ると思います。
 ただ、いずれにせよ現行法では、どちらも今のままではできません。立法しなければいけません。現行法はあくまでも新知見があり、これによると、もしかしてこの商品は許可要件を充足しないかもしれないので,その商品の販売業者に対して、説明を求めたがどうも納得できないという程度の嫌疑は必要です。
 それに対して許可の更新とか、あるいは再評価制度というのは、そういう嫌疑さえも必要ない。新知見があるかどうかも関係ない。とにかく定期的に定期検診をしましょうというタイプということであります。これは、立法で導入は可能であります。
 その際に、現行の制度を切り替える必要がありますけれども、現在の許可制度を立法で廃止して、許可制度なり再評価制度なりを立法し直すということになります。その経過規定は必要です。急に廃止して、来年から入ろうということになると、みんな大変なことになりますので、猶予期間を3年か5年か、あるいはもっと短くてもいいのかもしれませんが、その申請ないしは再評価の手続の手間に応じて、合理的な猶予期間があれば、これは憲法上問題なくできることであります。
 これに関連してなんですが、(2)の中で特に問を御下問いただいているわけではないんですけれども、消費者庁の方に運用をお聞きした中で出てきた問題といたしまして、新知見の報告を義務付けることはできるかという問題があります。
 現在、どうしているかというと、許可の条件として新知見があったら報告しろということを義務付けているとのことでした。そして,理屈としては、その新知見を報告しなかったら許可を取り消すことができる。こういう形で担保をしようと思っているんだけれども、あまり実際に動いているわけではなさそうです。これは適切なやり方なんだろうか、実際機能するやり方なんだろうかということが問題です。行政法的には,行政行為の附款論というどちらかというとマイナーな議論になります。法律に明示的に書いていなくても、許可制度と密接に関係する義務を課すことはできるんです。その義務に違反すれば許可を取り消すことはできます。
 ただ、問題は新知見を報告するということは、許可と本当に密接するのかということです。これは恐らく見解が分かれ得る問題で非常に微妙な感じです。許可を得ている以上、例えば許可条件として今後、新知見があったら、それに応じて有効性、安全性を維持しなさいということであれば、これは健康増進法が予定していることだと解されますので,附款として義務付けることはできるとは思うんですけれども、「新知見があったら届け出よ」というのは,少し一歩出ているような気もするんです。
 届け出るということは、当然ながらその新知見の下でも、私のものは大丈夫ですということも届け出る義務ということになります。常に安全性,有効性の要件を充足し続けるように心せよということと、同じと言えば同じような気もしますし、一歩出ている気もしますので、これが許可の条件として当然付けられるのかというのは、見解が分かれ得ます。新知見の提出義務について、できれば立法をした方がいいんではないかと思います。
 ただ、新知見の提出義務を立法することで,果たして,何がどれだけ変わるかというのは,やはり私には疑問です。新知見に気付きませんでしたということで許可取消しをするのか、あるいは新知見はあったけど,自分の商品と関係ないと判断したので報告しませんでしたと言われてしまうと、なかなか義務違反というのは難しいかもしれません。このような義務付けができたとしても,それで消費者庁の事務の効率化が促進するというわけでもなさそうです。新知見の報告義務を条件として許可に付すことによってどの程度行政が改善されるのか、法律で改善されるのかというのは、私はイメージがまだできておりません。
 以上が(2)であります。
 最後の(3)、食品としての安全性の観点からの販売停止措置等の措置が取られていない段階で消費者保護の観点から特保の表示許可を取り消し、または一時停止することが可能かということなんですが、まずは表示の一時停止は先ほど申しましたように、現行法に書いてございません。新たな義務になりますので、これは新たに立法しなければできないということです。
 許可取消のほうについては、安全性の観点から食品衛生法上の販売停止をしていない間に、特保の表示の許可を取り消すことができるかということであります。食品衛生法の安全性と健康増進法の安全性、特保等の表示許可の安全性が違うか同じかによって変わってきます。違うならば、当然これはそれぞれの法律でやればいい話です。
 ただ、実際に違うという解釈でいいのかどうかは、先ほど申しましたが、私はよくわかりません。同じなのではないかという気もするんですが。食品としては、特保の表示ができないけれども、食べてもいいというのは、それはそれで消費者が混乱するという気もしますので、両者の安全が違うという理解でいいのかどうかについては、私はやや疑問を持っておりますが、それは食品安全の専門家でなければわからないことですので、これはただの素人としての疑問ととどめておきたいと思います。
 以上であります。

○山田座長 中川先生、どうもありがとうございました。
 ただいまの中川先生の解説を基に、委員の皆様から御意見あるいは御質問がありましたら、どうぞ忌憚のない御発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 どうぞ、梅垣委員。

○梅垣委員 この再審査とかいろいろな手続に入るときの判断を誰がするかというのが非常に問題で、申請時には、食品安全委員会が安全性を審査しているわけです。それがどう関係するのかというのが問題になってくるような気がするんですけれども、そういうところはどう考えたらいいんでしょうか。

○中川教授 どう関わるかというのは、許可取消しのときにですか。

○梅垣委員 はい。

○中川教授 この制度は、法令集の5ページの内閣府令第4条と第5条を比較していただけるとよいかと思うんですが、4条の方は、最初の申請のときに、安全性については食品安全委員会が、あるいは安全性も含めて消費者委員会。5条は、同じことを許可取り消しのときにもするという趣旨なんです。5条の条文はわかりにくいところがあるんですが、要するに、同じ手続だということです。申請のときには、安全性、有効性について食品安全委員会と消費者委員会がそれぞれチェックをかける。
 許可取消のときも結局は、今、申請したら、あなたは許可できませんよということを審査し直すわけですので、それが再審査手続です。そうしますと、取り消しをするときにもやはり食品安全委員会と消費者委員会に申請のときと同じような審査をしてもらって、新知見の下で大丈夫かどうかというのをしてもらう。ですので、審査としては全く同じことだと思うんです。
 ただ、申請のときもそうですけれども、例えば非常にいい加減な申請書が出てきたときは、そんなことは実際にはないとは思いますが、それはやはり事業者が全然説明していないんですから、不許可にしますね。それと同じようなことです。
 その場合に、わざわざ食品安全委員会を通さなければいけないのかが,よくわかりません。飛ばしてもいいんではないかと思いますけれども、許可取消の場合にも、例えば新知見が出て、あなたのところは疑義があるといいますか、新知見に影響がある食品なのだから説明してくださいと言ってお願いしたところ、何も出てこない、あるいは明らかに説明になっていないというものしか出てこなかった場合には、これもわざわざ食品安全委員会を通す必要があるのかという気がするんです。食品安全委員会と消費者委員会は、専門家がいるところですから、やはり非常に微妙な事案をこそ諮問すべきだろうと思います。このデータでもって安全性があると言っていいか、有効性があると言っていいかというものをまさに審査してもらうのが本来の意義であって、だれが見てもだめですよといったものをわざわざ専門家集団に諮問する必要があるのかという気がします。
 実際はほとんどないとは思いますけれども、そういう場合には、もう飛ばしてもいいだろう。この府令では、飛ばしていいとは書いてありませんので、解釈で飛ばしていいかどうか微妙でありますけれども、そういうふうに府令をつくり変えることは十分可能だろうと思います。
 要するに、申請の場合も28条3号による許可取消の場合にも、食品安全委員会、消費者委員会の役割は同じことをやっている。許可要件を満たしているかどうかを審査しているだけだと思います。

○梅垣委員 合理的な理由がないと、いろんな問題を提起することはできないと思うんです。それをどこで判断するかというのが私は一番問題になると思うんです。だから、合理的に説明ができなければ、何も動けないわけですね。
 その合理的な判断が今の現行のところで対応できるのか、できないのかと考えたときに、誰がやるのだというところが問題になるのではないかと思うんです。

○中川教授 合理的にというのは、安全性、有効性についてですか。

○梅垣委員 そうですね。結局、科学的に評価するというのが基本になるわけですね。科学的にきっちり評価できるかどうかというのが、いろんな手続を進めるときの重要なポイントになると思うんです。
 それをどこがやるかということです。食品安全委員会だったら現行のところでやっていますからいいんでしょうけれども、別のところがやるようになってくるのかなと思ったんです。

○中川教授 それはもちろん、消費者庁なりにはやっているでしょうけれども、やはり要は食品安全委員会と消費者委員会の中の専門調査会で、それぞれが専門性を持ってやっているという仕組みだと思います。それは申請と許可取消と一緒だと思います。

○山田座長 どうぞ。

○宗林委員 何点か整理してお尋ねしたいんですが、まず1点は、私は機能性と安全性で少し考え方が違う観点を持ってもいいのではないかなと思っているんです。
 機能性につきましては、要するに、この特保の制度ができてから個別承認という形でずっとやってきたわけですけれども、その承認のための有効性の判断の仕方が、若干昔よりは変わってきたり、世界的にも例えば高血圧の定義がかわるなど、全体の軸が変わってくる部分もあったんだと思うんです。
 ですから、そういったものに対して、今の先生の御説明ですと、それを消費者庁からこれを新知見として指摘をして、個別にしていけるというやり方なのか、あるいは更新制を取り入れて、今の軸に合わせてそれが28条3号ではないですけれども、承認のときと同じような要件を満たしているかどうかで、一定期間毎に今の判断軸に合わせて満たしているかどうかというやり方もある意味あるのではないかなと思ったんです。それが1つです。
 安全性の方は、医薬品の場合ですと市販後にある程度有害事象があるということがベースになって、厚労省の部会の中に上がってくるんだろうと思うんですが、今の梅垣先生の客観的なというのは、そういう何かしら制度がないと大きなもの、重篤なもの、軽重あると思いますけれども、いわゆる機能性を持った成分が入っているので、過剰に摂ったことによる問題もあるかもしれません。そういうことがきっかけになるという客観的なものがあってはじめてこれは大丈夫なのかという指摘のポイントになるのではないかなと思います。
 もう一つ、消費者庁さんにこれはお伺いしたいんですが、エコナのときには、いわゆる食品衛生法上は販売中止にはならないけれども、要するに、特保としては表示が好ましくないかどうかという話があったかと思うので、それは先生がそこのダブルスタンダードがあるのかないのかというところに該当すると思います。
 最初の2点は、私はこう思っているところで、先生の御意見をお伺いできれば。3点目は、消費者庁さんにお尋ねしたいです。

○中川教授 2点目がよくわからなかったんですけれども、まず私の感じたことを申しますと、例えばある機能性について判定の仕方が変わってきたとします。新しい知見だとすると、それに柔軟に対応して、今の段階でなお機能性があるかと言えるかについてチェックしたいというタイプが重要なんだということであれば、更新の許可制度よりも、有効期間がありますので、その間に何もしないでいいということになりますね。それよりも、医薬品で言う再評価制度のようなもの、新知見がある場合、重点的に調べようという製品ごとに消費者庁が指定をして、この範囲の商品についてこういう見地から再度資料を提出しなさい。それでだめだったら取り消しますというタイプ、まさに薬事法の再評価制度的なものです。あれのタイプを入れていくといいかなという気がします。

○宗林委員 薬事法の場合、私もそれほど知っているわけではありませんが、最初に基本設計をしたときの治験のデータがあり、それで許可をするわけですけれども、実際にいろんな形の人が市販後に使っていかれるところで、さらに有効性が認められるかというデータを付けてということが再評価の意味の1つだろうと思うんです。
 先生のおっしゃっている今の薬事法のイメージはそうですか。

○中川教授 それは多分薬事法で言う再審査の方だと思うんですけれども、新薬の場合は、製造承認のときに治験しかしないことと関係があります。治験というのは,非常にコントロールされた状況での非常に限られたデータですから、新薬の承認は、いわば仮承認なんです。その後、実際に使ってみた臨床データを使って、さまざまな患者さんがいる中で使って、それでもまだ大丈夫かというのが再審査ですね。
 再評価というのは、新薬に限った話ではなくてすべての医薬品について新しい知見があったので、指定する範囲の医薬品についてこの新知見の下で大丈夫かについて資料提出を命ずる。提出しなかったら、それだけで承認取消ですけれども、かつ提出してもらって、それでやはり有効性がもうないということになると、取り消しになるんです。
 だから、再審査と再評価の関係でいうと、どちらにも似ていると言えますけれども、特保の場合は、特に治験というものではないのでしょうか。よく知らないんですけれども。治験と言えなくもないですかね。

○宗林委員 治験と言えば治験なんですね。

○山田座長 治験の場合集める仕組みというのが特保の制度にはそもそもない。それは食品でそういうのを集めることが実質的にどこまで可能かということもあると思いますので、この調査会では、有効性のことももちろん非常に大切なんですけれども、どちらかというと安全性の方を主にどういう判断基準をしたらいいだろうかということだろうと考えております。
 有効性ももちろん大切ですけれども、それはゼネラルに非常に重要なんですが、この判断基準といった場合の当面の問題のきっかけというのは、そういう点だっただろうと思います。ゼネラルにこれはこういう場合がある、こういう場合があるというのは非常に重要だと考えております。

○中川教授 1つこういう確認をしておきたいと思います。今の健康増進法に定められているのは、新知見だけなので、いわば再評価に近い制度があるだけなんです。再審査、すなわち最初の許可を取る前に得たデータの後、実際に販売してみて、いろんな問題が出てくる、いろんな飲み方をする人がいるということも含めて、なお大丈夫かという許可の前と後で違ったデータで検証しなさいというタイプの許可制度が全然規定されていないんです。
 だから、今、再評価との関係でお話をしたんですけれども、やはり特保の食品についても医薬品と同様に再審査的なもの、許可の前と後で違ったデータ、より広範なデータを使って、もう一度チェックしますということがもし必要だということであれば、それは立法しなければいけないと思います。現在、全然そういう規定が法律にありません。

○山田座長 どうぞ。

○平中課長補佐 消費者庁に対する質問ですけれども、エコナ製品の安全性について議論された際の経緯でございますが、消費者庁ができる以前の平成17年の時点で、厚生労働省より食品の安全性ということで高濃度にジアシルグリセロールを含む食品の安全性についてのリスク評価の依頼を行い、食品安全委員会でそれについての検討がなされていたところでございます。
 その中でさらに、エコナ関連製品についてグリシドール脂肪酸エステルが含まれるかもしれないという新たな科学的知見が出てまいりましたので、消費者庁としては、御説明がございました内閣府令第5条に言う「新たな科学的知見が生じたとき」に該当し得ると考えました。そうしますと、この条文に基づいて、食品安全委員会の意見を聞いて、消費者庁が再審査の手続を開始するということになりますので、改めて消費者庁の方から食品安全委員会に対して、再審査を行うことについての意見を求めたという経緯でございます。

○宗林委員 このグリシドールに関しての食品衛生法上の判断を求める食品安全委員会への厚労省からのリスク評価の依頼なかったんでしたか。ごめんなさい、今のことは知っていたんですが、食品衛生法上とのダブルスタンダードのところが。

○平中課長補佐 私が記憶している範囲の限りでは、厚生労働省から高濃度にジアシルグリセロールを含む食品の安全性についてリスク評価を依頼し、その観点において、食安委でリスク評価がなされており、その中でグリシドール脂肪酸エステルの件に付いても併せて検討がされていると理解しております。

○山田座長 よろしいですか。
 どうぞ。

○寺本委員 どうやっているかどうかよくわからないんですけれども、要するに、先ほど判断基準の問題というのがあって、どういう状態であるとこういうものをもう一回審査というか、いろんな調査をしないといけないかというときに、先ほど厚労省の方からそういうのが出たと。しかし、それはあくまでも厚労省の方は、その情報を得られたのは、世界的な調査の中から得られたデータからそういったことを得ているわけですね。 
 そうすると、結局そういう問題があるか否かというのを調べる主体というのが一体何なのかということがないと、結局わからないものはわからないになってしまうし、逆に言うと、消費者の方からすれば、今度は消費者の方は何となくこういう問題も起こっているというときに、それを吸い上げる機構がないと、やはりそこには客観性がない。
 もう一つ、吸い上げられたものが先ほど梅垣先生がおっしゃったように、風評ではなくて確かなものであるということを議論する場がないと、それを審査していくということの合理性がないという気がするんです。そういう機構というのは、必要な気がするんですけれども、それはどうなんでしょうか。

○平中課長補佐 御指摘の機構と言えるかどうかはわかりませんが、消費者庁において特保の表示の許可をする際には、許可書になお書きとして、「当該食品の保健の効果または安全性につき新たな知見を入手した際には、遅滞なく消費者庁まで報告すること」という条件を付しておりますので、それに従って許可を得た事業者から、何らかの新たな知見があれば、報告が消費者庁に上がってくるということを期待しております。 
 そのほかにも当然、消費者庁でも日ごろからのサーベイで何らかの知見を発見するということはあり得ると思っています。

○寺本委員 業者に義務付けているという意味になりますか。先ほどのお話で定期的にそれを義務付けているというのであれば、義務になると思うんですけれども、そうではないということになると、これは義務付けているということにはならなくなってしまうんではないかという気がするんですが、それはいかがなんでしょうか。

○平中課長補佐 消費者庁において行っているのは、定期的にということではありませんので、「新たな知見を入手した際には報告すること」と書いてあります。これにより、随時報告いただくことを期待しております。
 さらに、これが義務なのかどうか、報告がなかったときに、どのようなサンクションを講じるのかということは、明確に決めているものではございません。

○山田座長 今のお話ですけれども、報告することを義務付けるには、先ほど中川先生が言われたように、何らかの立法をする方がベターだと考えてよろしいんでしょうか。

○平中課長補佐 先生の御意見をよくお伺いしたいと思っているところですけれども、1つの考え方として、許可をする際に条件を付すということで、「新たな知見を入手した際には報告すること」という条件を許可を付与する者に対して通知すれば、仮に相手方が報告を怠った場合には、場合によっては許可を取り消すことも可能なのではないかと考えておりますが、何か明文化したというものではありません。

○山田座長 ありがとうございます。

○寺本委員 今の話で「怠った」というのは、すごく難しい表現だと思います。例えば気が付かないというケースはあるわけで、だから、先ほど私が申し上げた機構というのはどういうことかというと、世界的なレベルで何かがこういうもので問題があるんだということをサーベイするシステムがどこかにないと、結局それは怠ったか何かもわからないというケースが起こってくる可能性はあるわけですね。
 だから、そういったことをしないと、恐らくこの問題は何となく、判断基準が明確ではないというのは、どうもそのような気がするんですけれども、いかがなんでしょうか。

○平中課長補佐 現実的なところを申し上げますと、消費者庁において、この許可事務及びその後の管理も含めて担当しているのは、審査官1人となっておりますので、なかなか全体的な組織的なサーベイはできていないという現状でございます。

○山田座長 どうぞ。

○宗林委員 新たな知見ではなくて、例えば特保の有害事象に関しての事業者からの報告というは、どんな位置づけですか。ないんだろうとは思うんですが、それは義務付けるというやり方もあるかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○平中課長補佐 特保の許可をしたものについては、先ほど申し上げた許可書に付している、「安全性について新たな知見を入手した際には報告すること」という条件の中で、それも含んでいると思います。
 また、これは消費者庁の所管ではございませんけれども、厚生労働省においては、食品衛生法に基づいて健康被害の情報などは保健所を通じて収集されているとは伺っております。

○山田座長 どうぞ。

○寺本委員 その報告というのは、あくまでも事業者がつかんだ報告になるわけですね。
 例えば、どこからか事業者に対してこんなことがあったというのがときた場合に報告しろということですか。

○平中課長補佐 消費者庁が報告を求めているのは、許可をした相手方の事業者に対してだけでございます。

○寺本委員 起こり得ることとして、消費者自身にさまざまな問題があって、必ずしも事業者に対してそれを言っていない場合というのはあり得ることだと思うんです。
 医薬品でも実はそういった問題がないわけではなくて、すべてが事業者にいっているかというと、必ずしもそうではなくて、現場ではいろんな副作用だろうと思っているものはいくつもあるんだけれども、全部吸い上げられているわけではないという問題があるので、やはり吸い上げる方法がないとこの問題は非常に難しい。
 私は、特保というものの特性から考えると、安全性というのは第一担保であるわけで、そこをいかに我々が保証していくかということがないといけないんではないかと思うので、こういうことを申し上げています。

○平中課長補佐 食品衛生法に基づく仕組みでは、事業者だけではなく、医師が食中毒の患者の診断などをした際には、保健所を通じて厚生労働省へ報告されるという仕組みがあると聞いております。

○中川教授 事故情報を集めるというのは消費者安全法に基づいて、消費者庁に集約されることにはなっていますが、情報はものすごく密なものもあれば、疎のものもあるという状況ですね。

○寺本委員 だから、もしそういうものがあるんだとすれば、そういう情報を体系的に判断する。いわゆる公平に判断する、科学的に判断する。先ほどの梅垣先生の話とすごく関連しているんですけれども、そういったことがないといけないということになりますね。

○宗林委員 医薬品と比べれば全然リスクは低いだろうと思いますが、多分医薬品の場合は、事業者の報告義務は薬事法で義務付けがあり、医療従事者、例えば薬剤師さんも含めてでしょうし、一方一般の方に副作用がおきた場合は個別の副作用救済を受けるシステムが別にあるんだろうと思います。
 消費者安全法の場合、多分今は行政機関からの通知ということになっていると思いますので、この場合ですと、事業者と最低限薬剤師さんなどは結構店頭特にかかりつけ薬局でお話されることも多いので、軽微な何かお腹がゆるくなったという話も含めてですが、そういうことも網羅した形で集める仕組みはあっていいのではないかと思います。
 同じ成分の製品でも医薬品の場合は、薬物性肝炎みたいな個人との兼ね合いもあるようなものでも、医薬品を飲んでいれば入院加療以上で副作用救済が十分受けられるような仕組みが特保ではないので、例としては1か月入院してひどい目にも遭いながらも、何もなかなかできないという現状が実際にはありますので、そこまでのものになるかどうか特保の場合はわかりませんけれども、もう少し網を広くかけた形での有害事象の収集と解析というのがあっていいかなと思います。

○山田座長 どうぞ。

○中川教授 ちょうどほかの専門調査会でやっていた話とも重なりましたので、発言をいたします。事業者から集めるというものについて、すでにある制度としては、消費生活用製品安全法がありますが,それには食品が入っていないんですね。あれを拡大するということで、特保だけではなくて商品一般というもっと大きな議論を立てることはできるかもしれません。

○田島委員 違ったかもしれないんですけれども、第1項の判断基準のところでお話ししたように、今と同じでデータを持っているのは事業者である。それを集めるというのは現行法の中で基本的には可能、難しいということですか。
 新たに立法をして、そのときの判断基準というか、こういう場合、こういうことを新たにつくる必要があるということなんでしょうか。

○中川教授 現行法でできるのは、28条3号に基づく取消しをしようとするときであれば、事業者が取消しをされるのがいやである限り、なんらかの資料を当然出してくるだろうと思います。
 だから、出せと命じているわけではないんだけれども、許可を取り消されたくないというインセンティブで出してくるだろうということはできるんです。
 そのためには、しかし、ある程度こちらも疑念がなくてはいけないので、新知見を発見し、それによると、おたくの商品はおかしいという気がするから何か説明してほしいという程度のアクションは最低限しなくてはいけないんです。そのアクションに対して事業者が何もしなかった場合に、疑念が発生しますから、先ほど言ったような再審査手続を開始してよろしいということになると思うんですけども、そうなると向こうはいやいや出すだろうということであります。別にそれは義務ではないんです。許可がいらないと言えば、別に出さなくてもいいわけで、そうではなくて定期的にあるいは新しい知見があるので、一斉にもう一度出し直してくれというタイプの、具体的に疑念までいっていないんだけれども、念のためにチェックをしておこうというタイプの薬事法でいう再評価みたいなもの。そういう念のためにチェックしておこうというタイプの義務付けができない。それは、今、全然規定されていない。
 これをしようというのであれば、立法しなければなけない。

○山田座長 どうぞ。

○寺本委員 その現行法でやるとしても結局何かそういう新しい知見というものを本当にきちんとサーチできているのかという辺りが私は問題なのではないかと思うんです。
 例えばエコナの件もそうだと思っているんですけれども、あれは結局そういう形でサーチができていなければ結局わからないという問題になっていくわけですから、やはりそういった問題というのはこれから恐らく新たなものが出てくれば、どんどんあり得ると思うので、何かそういったサーチする方法というのがあった上で、それが非常に科学的に正しいので審査をしましょうという段階を踏まないと、どこも納得できない。
 何となく風評でそんなのおかしいと言われたら、だれも納得しないわけで、そこは非常にかなり力が要る仕事だと思いますので、やはり科学的に根拠があって、審査が必要だということをどこかで示すためにメカニズムが必要ではないかと思います。

○中川教授 それは本当にそのとおりだと思います。
 消費者庁の今の話だと、ほとんど人が足りていないみたいですので、やはりそれは外部の信頼できるサーベイする機関が必要なんだろうと思うんです。それがないと、いくら新知見に基づく資料提出の義務付けと言ったところできたものが正しいかどうか判断できないわけですから、結局は消費者庁が手をこまねくわけにはいかないんです。人員がないのであれば、やはり外部に委託をするしかないだろうと思うんです。

○山田座長 どうぞ。

○梅垣先生 医薬品と食品は使う環境が違うんですね。医薬品は、基本的に医師、薬剤師が管理しています。食品は、消費者が自由に使うわけです。そして問題が起きるのは、製品が問題になる場合と利用する人の体質とかが問題になる場合と2つあるんです。
 消費者が何かの健康被害を受けたと言われても、それが本当に確かかどうかというのは、医療関係者が中に入らないとわからない。その健康被害の判断が非常に難しいと思います。基本的に特保は食品形態ですね。
 我々のところで、メーカーが特保を販売していて何か問題が生じたのか、というアンケート調査をしたら、ほとんどが消化管症状です。下痢とか腹痛とか。そこまで報告するべきなのかどうかというのも問題です。基本的には客観的かつ科学的に、誰が有害事象かどうかを判断して、それに根拠があるのかないのかというのを明確にしないと、あいまいなまま行政が動き始めたら本当に風評被害みたいなものが出てしまって、大変なことになると思うんです。
 その部分をきちんと認識して考えていかないとだめなのではないかなと思います。

○中川教授 今の点はまさに消費者安全法でいろんな事故情報を集めるときに、どう解析し、どう公表するかというところで、食品だけではなくてすべての消費者事故について、今、別の専門調査会で苦心しているところです。その問題は一般的にあると思います。

○山田座長 そのほかに何かございませんか。
 どうぞ、宗林先生。

○宗林委員 先ほど安全性のということでしたので、また後でもいいんですが、私はやはり先生のお話の中の更新制でもいいのかもしれませんが、機能性の判断がそのときどきで変わっていく。20年前と今で審査自体も個別承認自体も変わってきたり、それに付せられるここまで書いていいという文言も少しずつ変わってきているということもあります。特に生活習慣病対応の特保がかなりたくさんございますので、医薬品と食品、本当にお医者さんに行かなくてはいけない人がたくさんいらっしゃる中で、自分で選択をしてどの道を選ぶかという中に特保がかなり大きな位置づけになっているということもかんがみて、今の評価基準の中で昔承認されたものも含めて、そのときどきで機能性を有しているのか。特保という位置づけで機能性が一定のところにポジションがあるのかということを見ていく必要があると思います。是非とも血圧、血糖とか、そういったものについては、それを信じて、もし効果が十分得られなかったときのそれ以上の次の大きなイベントにつながるとか、いろんなことを考えて、総合的に見ると、更新制のような制度が私は機能性の面で必ず必要だと思っています。

○山田座長 宗林先生の意見、大変重要なことだと思います。確かにいろんな判定する基準、あるいはいろんなガイドラインが変わったときに、20年前での有効性と現在の判断の中での有効性というものが、さまざまな生活環境が変わる中で、健康増進という目的のためにこの商品が消費者庁という国のお墨付きで出てくるわけですから、そういったときの、基本的には再審査になるんでしたか。

○宗林委員 更新制というやり方でもいいかなとは思いました。

○山田座長 更新なんだけれども、具体的な作業は最初の許可をやるときと変わらないということですので、そこにはやはり有効性を判断する、その時点の基準というのも変えられるべきことになることだとは思います。そのためには、やはり更新制を導入する場合でも、新たに法律的に立法ということで進まないと、今のままでは難しいということですね。確認なんですけれども。
 何かそのほかの御意見、あるいは中川先生に対する御質問はございませんでしょうか。
 私の方からよろしいでしょうか。(2)の(a)で注意喚起の表示を義務付けるというところで、法律的に新たな立法なりが必要であると御発言されたんですけれども、ここの点についてもう一度教えていただけないでしょうか。

○中川教授 現行法では、どういう表示をするかというのが決まっているんですけれども、府令8条2項を見ると、条件付き表示という規定があるんですけれども、再審査手続中であるという表示についての規定はないんですね。
 許可の表示ができない停止であるとか、なにか消費者にことさらに注意を喚起するような表示を新たに義務付けるということであれば別ですが,特定用途の表示はそのままで,それに加えて再審査手続中という記載を加える程度であれば、表示の仕方の話ですので、府令の中に条件付き表示というのがありますから、それに加えて再審査手続中という表示をせよという規定を書き込むというのはあると思います。先ほどの表示許可の一時停止とは違って、これは必ずしも法律は改正しなくてもいいかなと思います。
 ただ、気になるのは、再審査手続中と書いて、果たして消費者に意味がわかるかということなんですね。私自身もこの言葉は、今回初めて知りました。何のことだか意味がわからないようでは,表示させても意味がないのではないかと思います。危険かどう注意喚起ということの意味次第ですが,単に再審査手続中という表示を加えるという程度ならば府令の改正でできると思います。

○山田座長 ありがとうございます。
 そのほかにございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 中川先生は何か言い足りなかったところはありませんか。

○中川教授 いいえ。

○山田座長 それでは、ただいまの皆様の御議論を通じまして、このたびは3点ほどの質問を前もって中川先生にお尋ねして、その解説をしていただきました。
 再審査手続に関する点。
 再審査手続中の注意喚起の表示の義務付け、あるいは一時停止に関する点。
 また、3点目については、食品衛生法の安全性と健康増進法の安全性が同じかどうかによるということで、それは考えにくいのではないかというお話も伺いしました。
 まだ今の段階では結論としてまとまっておりませんので、これからほかのヒアリング、あるいはこれまでのヒアリングを踏まえて、論点を整理していかなくてはならないと思います。今後、難しいものでありますけれども、皆さんの御議論をまとめていきたいと考えております。
 それでは、本日のヒアリングはこれで終わりにしたいと思います。
 中川先生におかれましては、大変お忙しい中私たちの審議に御協力いただきまして、誠にありがとうございました。

≪3.閉会≫

○山田座長 それでは、本日の議事は以上になります。最後に、次回の日程について事務局の方から御説明をお願いいたします。

○原事務局長 本日、どうも大変ありがとうございました。参考にさせていただきたいと思います。
 次回以降ですけれども、参考資料としてお付けをしておりますので、ごらんになっていただきたいと思います。次回第3回になりますけれども、5月24日(火)10時~12時を予定しております。今回の繰越しになっておりますけれども、消費者庁において早急に対応すべき方策とされた論点への対応について消費者庁からお話をお聞きしたいと思います。併せて報告書の素案の検討とありますけれども、報告書のとりまとめに向けての方向性など検討をさせていただけたらと思っております。 
 事務局からは、以上です。

○山田座長 ありがとうございます。
 それでは、本日はこれにて閉会させていただきます。お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)