第15回 集団的消費者被害救済制度専門調査会 議事録

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日時

2011年8月19日(金)14:01~15:24

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【専門委員】
 伊藤座長、三木(浩)座長代理、磯辺委員、大河内委員、沖野委員、
 窪田委員、黒沼委員、後藤委員、中村委員、三木(澄)委員
【担当委員】
 池田委員、下谷内委員、山口委員
【関係省庁等】
 消費者庁  川口審議官、加納企画官、南企画官、鈴木課長補佐
 法務省民事局  小林参事官
 最高裁判所事務総局民事局  朝倉第一課長
 国民生活センター理事長・弁護士  野々山氏
【消費者委員会事務局】
 齋藤審議官

議事次第

1.開会
2.取りまとめ2
3.その他
4.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:57KB)
【資料1】 集団的消費者被害救済制度専門調査会報告書(案) (参考資料1) 専門調査会で出された意見等の整理(PDF形式:307KB)
(参考資料2) 集団的消費者被害救済制度専門調査会報告書(案)に対する意見(大高委員提出資料)(PDF形式:20KB)
(参考資料3) 集団的消費者被害救済制度について(全国商工会連合会)(後藤委員提出資料)(PDF形式:160KB)
(参考資料4) 「財産の隠匿・散逸防止策及び行政による経済的不利益賦課制度に関する検討チーム」取りまとめ(PDF形式:434KB)

≪1.開会≫

○齋藤審議官 本日は、委員の皆様方におかれましては、お集まりいただきましてありがとうございます。ただいまから、「第15回集団的消費者被害救済制度専門調査会」を開催いたします。
 本日は、大高委員、山本委員が御欠席です。
 議事に入る前に配付資料の確認をさせていただきます。本日お配りしております資料及び参考資料は、「議事次第」の裏のページにあるとおりでございます。不足の資料がございましたら、事務局へお申し出ください。
 それでは、伊藤座長、議事進行、よろしくお願いします。

≪2.取りまとめ 2≫

○伊藤座長 早速ですが、本日の議事に入りたいと存じます。
 本日は、取りまとめの第2回として、報告書案の検討をお願いしたいと存じます。前回の調査会におきましては、これまでの議論を踏まえて専門調査会の案をお示しして、審議をいただきました。そこで本日は、前回の御議論を踏まえて、引き続き審議をお願いしたいと思いますが、修正を行ったものを資料として用意いただいております。
 それでは、前回から修正した点を中心にして、加納さんから御説明をお願いいたします。

○加納企画官 それでは、資料1でございますけれども、前回からの修文箇所につきましては見え消しの状態でお示ししております。字句に関するところもたくさんありますので、その辺は説明を割愛しまして、内容に係る分を中心に御説明したいと思います。
 まず、8ページです。7ページから「新たな訴訟制度の必要性」ということでいろいろ書いているところですけれども、「そして」の段落の最後の辺り、「公正で健全な紛争解決」を「適正」に直すとともに、「なお」のところですが、新たな訴訟制度の創設に関して、「実体法上既に認められている消費者の請求権を束ねて行使するものにすぎず、事業者に新たな義務」と。この義務というのは、勿論、実体法上の請求権に対応する義務という趣旨ですけれども、そういうものを生じさせるものではないという趣旨のことを若干修文しております。
 11ページです。C案につきまして、更に検討すべき課題が多いということを(3)のところで書いておりましたけれども、「C案については、本制度の施行後の状況を踏まえ、その長所ないし利点と考えられるところを更に加味すること等について引き続き検討すべきとの指摘もあった」、こういう御指摘をいただいておりましたので、その点を書き加えております。
 次に15ページです。被告適格のところについても前回いろいろと御意見をちょうだいしたところでありまして、特にマル2の役員等につきまして、前回、被告とすることについて「慎重に検討すべき」ということのみ書いておりましたけれども、「一律に被告適格があるとすることについては慎重に検討すべきであるが、事業者がいわゆる悪質事業者である場合などにおいては、被害救済の実効を確保する観点から、実質的な事業運営主体である者に被告適格を認めることについて、引き続き検討すべきである」ということで書いてございます。
 この点につきましては、前回の御議論の中で、悪質事業者を念頭に置きつつ一定の場合に一定の者に対して被告とすることも検討する必要があるのではないかと、おおよそそういう議論の状況であったのではないかと思われますので、その旨書いてございます。
 (4)の対象消費者のところですが、マル1で、従前マル2としていたのをずらしたということと、「なお」のところです。文章自体は変わっておりませんが、消費者に労働者などが形式的には含まれるけれども、「対象事案を類型化することにより、本制度の対象から除外すべき」と。ここのところでありますけれども、趣旨としましては対象事案を類型化すると。対象事案の類型化につきましては16~17ページで書いておりますけれども、そうすることによって、本制度の対象から自ずと除かれるのではないか。どちらかというとそういう趣旨でありますが、対象事案を類型化することはいずれにしても必要だと思われますので、類型化することにより除くということで書いております。
 16ページです。支配性の要件につきまして、この支配性という言葉自体が表現として少し強いかもしれないという御指摘もいただいていたところでありまして、括弧して優越性と。争点を比較した上での優越性という趣旨ですけれども、優越性という言葉を書き加えております。
 17ページです。支配性の要件が強いかどうかということとも関係するところですが、運用としてこのようになると考えられるのではないかということで書いております。「なお」のところですが、本制度を利用して原告が一定の対象事案に係る共通争点の確認の訴えを提起する場合、通常は裁判所に対して、当該事案における損害がどのような広がりを持つか、どの程度の規模の被害者が存在するかといった事案の概要を示すことが求められると考えられます。そうしますと、支配性(優越性)の要件を争う事業者側から、それがないことを基礎づける事情を示していくことに、少なくとも運用としてはそうなるのではないかと思われますので、その旨書き加えております。
 17~18ページですけれども、特に18ページの上のところで、有価証券報告書虚偽記載等の事案に関しては、前回、金融商品取引法の規定との整合性等の観点から更に検討を進めるべきという御指摘をいただきました。そういう意見が割と多かったのではないかと思われますので、その旨書き加えております。
 次の段落の製品事故等につきましては、「慎重に検討する」という書き方がやや消極的ではないかという御指摘もいただいておりましたので、「本制度施行後の状況を踏まえ、引き続き検討」という形で修文をしております。
 少し飛ばしまして、26ページをごらんいただければと思います。(4)の通知・公告費用の負担のところです。原則として、申立団体、適格団体が費用を負担することとしつつ、一定の場合には相手方に負担させる手続を設けるということを書いておりましたけれども、前回、一段階目の手続で責任原因が認められているということを踏まえますと、むしろ原則として相手方事業者が負担すべきこととするのが適当ではないかという御指摘もいただきましたので、その旨指摘があったという形で書き加えております。
 併せまして、通知・公告を実効的なものとする観点からの環境整備も必要であるということで、後ろの方でそれ出てきますけれども、関係がわかるような形で「なお」の段落を書き加えております。
 26~27ページにかけまして、情報提供命令に関しまして、26ページの一番下の「なお」の段落のところで、「第三者に対する情報提供命令は認めないこととする」という書き方のみしておりましたけれども、第三者が任意に提供することまで阻害する必要はないのではないかということで御意見をいただきましたので、その旨、引き続き検討すべきという形で書き加えております。
 32ページをごらんいただきたいと思います。(3)の適格団体の報酬及び費用という形で書いていたものですけれども、実質的に言いますと、費用にかかわる部分が多いのではないかということにかんがみまして、報酬の記載ぶりについて少し検討すべきであるという御指摘をいただきましたので、「報酬」を消しまして「費用等」と。ただ、費用等の中には報酬となり得るものがあると思われますので、そこは、「その際」という(3)の2段落目のところで書き加えております。
 弁護士の関与につきまして、見え消し部分のところですけれども、理事として必置するかどうかについては、慎重に検討すべきであるという御指摘もいただいたところであります。ここは、今後の法制化作業の中でむしろきちんとした検討をしていくべきと思われますので、理事としての必置というところにつきましては削除という形で修文をしております。
 最後、33ページの第5の2ポツ、適格団体への支援というところです。支援の内容が限定的ではないかという御指摘もいただきましたので、抽象的な書き方になりますけれども、適格団体が設立されるような支援、更に、設立された後の適格団体の活動に対する支援を図るという趣旨の文言を書き加えております。
 本文の修正については、以上でございます。

○伊藤座長 それでは、もう一度確認をいただきながら御意見をちょうだいしたいと思いますが、まず、12ページの手続の枠組みなどに関する記述、この辺りまでに関しまして、御意見があればお願いしたいと思います。
 どうぞ、野々山さん、お願いします。

○野々山理事長 11ページのところで、C案について指摘する記述を入れていただいたことについては評価をしております。ただ、「指摘もあった」という表現なので、ややネガティブかなという印象を持っております。C案については引き続きこれから必要になってくるだろうと思われる内容を持っていますので、積極的に今後も検討をしていただきたいということを指摘させていただきたいと思います。

○伊藤座長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 もしよろしいようであれば、次の「第3 一段階目の手続」、ページ数で申しますと23ページの辺りまでになりますけれども、この部分に関して、御意見があればお願いしたいと存じます。
 どうぞ、三木さん、お願いします。

○三木浩一座長代理 これは言葉だけの問題ですが、16ページ以降に括弧書きで「優越性」というのを入れていただいたのは、これまでの何人かの委員からの指摘に応えたものだと思いますが、支配性と書いて「(優越性)」と入れるよりも、単純に優越性と言う方が事柄の実質に合っているのではないかと思います。先ほど御説明があったように、この支配性ないし優越性というのは争点相互間の優越の問題ですので、単純に優越性という言葉のみにしてもいいのではないかと思います。いずれにしても、事柄の実質はつくられる法制度の規定の中に盛り込まれるわけで、それを代表する言葉にすぎませんので、特に支配性でなければいけないという理由があれば伺いたいですけれども、繰り返しになりますが、事柄の実質を考えると「優越性」でよいのではないかと思います。

○伊藤座長 ただいまの三木委員からの御発言に関して、他の方はいかがでしょうか。

○野々山理事長 私は三木座長代理がおっしゃった意見に賛成です。もともとこの「支配性」という言葉を要件に入れることに対する懸念もありますし、言葉の強さということもありますので、「優越性」という文言で統一した方がいいと思っております。
 もう一点、この関係では、16ページの(5)の最後のところに、「二段階目の手続に加入した多数の消費者について、個々の消費者ごとに相当程度の審理が必要となることがない程度になっている状態」という文言で具体的な定義がされています。これはこれでそのこと自体は抽象的にはわかるわけですけれども、具体的な事案に当てはめた場合どうなのかの問題があります。一つは、典型的な例としてよく挙げられている、敷金返還請求における各自の使用状況による過失の存在がある場合というのがあります。それから勧誘等について、マニュアル化はされていますけれども、個々の勧誘は一定の違いがある場合があります。あと、NOVA事件において典型的にあらわれましたように、キャンセル料条項がありますが、その無効が争われた場合に、取り消した時期によって返還されるキャンセル料が異なってくる場合があります。これらはいずれも、個々の消費者ごとに異なっているわけですけれども、ここで言う「相当程度の審理が必要となる」ということに当たらないと私は考えていますが、そういう理解でいいのかどうかということです。

○伊藤座長 今の野々山さんの御指摘のうち、後半の方はなかなか難しい問題だと思いますが、加納さん、どうぞお願いします。

○加納企画官 具体的な事例は最終的にどう当てはめるかということになるので、何とも言えないところはございますけれども、例えば敷金の事例で言いますと、裁判例でも各種ありまして、実際に原状回復費用がどの程度なのかということを算定するに当たって行われている審理がどの程度のものかということでありまして、その使用状況を写真で写してそれを持ってきたり、そういうようなことがされている程度ではないかと思うわけであります。その程度であれば、「相当程度の審理が必要となることがない程度」と言っていいのではないかというふうには思っております。ただ、事案によっては中身が複雑であることもあり得るのではないかというふうに思っております。
 勧誘の案件につきましては、共通性がそもそもあるのかというところが別途、問題になり得るのではないかと思われるところであります。勧誘文言というのは厳密には千差万別ですから、そういった場合にはそもそも争点としての共通性がないということで、別の要件によってこの制度には当てはまらないこともあるのではないかと思います。勿論、共通性が認められるということで、典型的にはパンフレットなどによる勧誘が想定されますけれども、そういう場合であれば共通性があり、かつ支配性なり優越性があるということであれば制度にのってくるわけです。
 NOVAの事例につきましては、確かに計算方法の違い等いろいろございますけれども、ある程度のグルーピングといいますか、この時期に解約したのだったら大体こういう計算方式で算定できるという形で、ある程度の整理ができるのであれば、「相当程度の審理が必要となることがない程度」になっているというふうに言ってよいのではないかと思います。

○伊藤座長 野々山さん、よろしいですか。

○野々山理事長 はい。

○伊藤座長 ありがとうございました。
 それから、先ほど三木委員のおっしゃった支配性と優越性の概念ですが、法律家が議論すると、難しい話が出てくるかもしれませんが、実質においては、先ほど三木さんがおっしゃったように考えていることは同じです。言葉の問題という面があれば最終的にはお任せいただいて、この場の全体の雰囲気を踏まえて文言を調整したいと思いますが、どうでしょうか。
 どうぞ、中村委員。

○中村委員 私は学者ではございませんので、支配性、優越性ということについて、これがどうだとかあれがどうだということを論じることはできないのですけれども、企業の間では、支配性を維持してほしいということでの意見が出ているところでありますので、その点も踏まえて決めていただきたいというふうに思います。

○伊藤座長 どうぞ、朝倉さん。

○朝倉課長 今の点ですけれども、最終的には個別の事案において裁判官が支配性なり優越性なりをどのように判断するかということですから、条文の中でどのように中身を規定するかというところが大事だろうと思います。言葉については、ある意味ラベルの色みたいなものでございますし、法制上の問題もいろいろあろうかと思いますので、むしろ法制的な観点から最終的に決めていただいて、ここでは、中身がこれでよければこれでいいのではないかというふうに思うところでございます。
 それから、私が申し上げることではないのかもしれませんが、先ほど野々山理事長がおっしゃった点については、これも個々の裁判官がどう判断するかということになりますけれども、仮に私が担当したとしましたら、先ほどの事例は全部入るのではないか、大丈夫なのではないかなというふうに思うところです。勧誘のところはマニュアル化されているという事例でございましたので、そういう事例であれば入れるのではないかと思いますし、敷金についても、よほど特殊な不動産であれば別でしょうけれども、一般的な不動産であれば大丈夫なのではないかと思います。キャンセル料のところは、それこそ学納金なども全く同じ状況でございますので、これを除外する理由はないのではないか、これは全く個人的な一裁判官としての感想でございます。

○伊藤座長 ありがとうございました。
 では、ただいまの点、文言については、中村委員、三木委員の御発言も踏まえて、報告書の表現をどうするかということについてはお任せいただければと思います。もちろん、皆様から見て、ここでの審議とは内容が違うということにならないように十分気をつけたいと思います。ほかに一段階目の手続ではいかがでしょうか。
 どうぞ、池田委員。

○池田委員 17ページ、18ページの対象事案のところです。私ども事業者の立場から意見をいろいろ申し上げさせていただいた点をご配慮いただき、ありがとうございます。まず、お礼を申し上げたいと思います。
 有価証券の問題と個人情報の問題は、事業者側からすると、やはり「慎重に検討」ということをお願いしたいと思います。特に有価証券の場合、前回も随分議論になりました。個人情報についても、個人情報保護法ができた当時と現在の個人情報のボリューム、内容というのは格段の差があるわけです。今後、恐らく個人情報に対する考え方については、いろいろな意見が出てくると思いますので、ここで一概に500円や1,000円のお詫びが確立しているからといって、単純に対象事案として入れていけるものではないと考えます。やはりこれも更に慎重に検討していく必要があるだろうと思います。

○伊藤座長 池田委員がおっしゃったような趣旨で、ここでもそういう御指摘があったことを消費者委員会に報告して、またそこでしかるべく審議をしていただくことになるかと思います。
 ほかにはいかがでしょうか。
 どうぞ、山口委員。

○山口委員 同じ消費者委員会の委員なのに一々反論して恐縮ですが、本当に立場性の違いと、これまで体験してきたことの違いによってのやむを得ないところでございまして、池田委員の真摯な態度については敬意を表するところでありますが、個人情報流出の問題と有価証券虚偽報告の問題につきまして、大高委員からも書面で意見が出ておりますけれども、やや消極に過ぎる取りまとめになっているのではないかという危惧を申し述べたいと思います。
 そもそもこの集団的消費者被害の救済制度のある意味では原点というものが、個人情報の流出と有価証券虚偽報告の問題でございます。個人情報流出の問題は、もう何回も申し上げたところですが、原告、つまり流出された側の消費者として訴訟を起こして苦労しても認められる金額は非常にわずかなわけです。誠意のある事業者の場合にはほとんど円満に解決するわけですが、誠意のない事業者の場合には、消費者としては泣き寝入りを余儀なくされるケースがほとんどなわけです。そういう場合、この制度によって救済が図られる枠組みが広がれば、事業者の方もより慎重になるでしょうし、万一事故が起こった場合にも、事業者の信用と、紛争になることを防ぐ観点での事前の適切な対処が望まれるようになるのではないかという観点からして、個人情報の流出の問題につきましてはこういう取りまとめでいいのではないかと思います。
 有価証券虚偽報告の問題につきましては、例えば韓国では、独自に既にクラスアクション的な制度の枠組みができていると聞き及んでおりますし、一番この種の集団的消費者被害の救済になじむ事案だと思います。ただ、前回、黒沼先生が御指摘になったように、金融商品取引法との整合性の問題もありますので、なお検討するべき部分があることは勿論でありますが、基本的には、制度の対象となるものと考えられるけれども、なお金融商品取引法における規定との整合性にも配慮する必要があると。前々回辺り、急に消極論あるいは慎重論も出てきたわけですが、基本的に入れる前提で議論が進んできたのではないかという認識を私は持っております。その意味では、「制度の対象になると考えられるけれども、なお慎重に検討する必要がある部分がある」という取りまとめにできないものかと思います。ここは池田さんと私の意見は対立しておりますので、あとは座長に御一任とならざるを得ないのかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

○伊藤座長 個人情報につきましては、池田委員、山口委員からお話がございましたが、こういう形で消費者委員会に報告をして、そこでまた、しかるべく審議をいただければと思います。それから、有価証券報告書、金商法との関係については、確かに山口委員のおっしゃるような御意見も有力なものとして本調査会で述べられたわけですが、前回も出ておりましたように、この点についての審議が十分時間をとってされたかというと、やや懸念もございます。こういう形での取りまとめにさせていただいて、いろいろ御意見はあるかと思いますが、皆様の一致できる点ということで、この辺りで御了解賜れればありがたいと思います。
 そういたしましたら、二段階目の手続から、その後の「制度の実効性を高めるための方策」のところまでに関して、御意見をお願いしたいと思います。
 野々山さん、お願いします。

○野々山理事長 2点あります。いずれも、きょう欠席されている大高委員が指摘されていることですが、大高委員の資料の7番に書いてある、21ページの「訴えの取下げ」の関係のところです。請求の放棄や請求の認諾をする場合については、その訴訟主体は他の適格消費者団体へ通知ないし内閣総理大臣へ報告をすることになっています。訴えの取下げの判決があった後に訴えの取下げをする場合、この記述では、共通争点の確認の訴えは、もはや他の適格消費者団体も訴えを提起することができないという整理となっていますので、同様の通知ないし報告が要るのではないかというのが1点であります。
 もう一つは、大高委員の9番の「また」以下のところです。これは今後の検討として指摘させていただくということになりますが、26ページにおいて「相手方事業者による協力」ということがあります。特に情報提供命令という形で重要な規定を設けていく方向性が示されているわけですが、サンクション、もしこれに違反した場合にどうなるのかについて、不十分であると考えられますので今後、立法化に当たって検討をしていただきたいということの2点であります。

○伊藤座長 野々山さんからの御発言の前半の部分、つまり判決が言い渡された後の訴えの取下げに関する部分に関しては、加納さん、何かございますか。

○加納企画官 その旨、修文させていただきたいと思います。

○伊藤座長 わかりました。それでは、そこは御指摘を踏まえて検討してもらうことにしましょう。
 それから、26ページの辺りで、命令に対してそれに従わない場合の制裁に関して、加納さん、いかがでしょうか。何か御説明いただくようなことはございますか。

○加納企画官 基本的には27ページのマル3番のところで、情報提供に応じない場合の事業者側の費用負担というのがございまして、サンクションではないのですが、これがある程度実効性の確保として機能するのではないかと考えてございました。
 あらかじめ負担しなければならないということについては、最初の費用の持ち出しというか、その部分をどうするかということも含んでの御指摘かもしれないというふうにこれを読みながら思ったのですが、その点につきましては、26ページの(4)に今回いろいろ書き加えておりまして、その中の検討で併せてしていくということではないかと思います。

○伊藤座長 そうすると、基本的には27ページのマル3、マル4での記述にしたがって、付随的には、(4)の費用負担の問題の中で検討するということのようですけれども、よろしゅうございますか。
 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ、大河内委員。

○大河内委員 適格消費者団体への支援のところですけれども。

○伊藤座長 33ページですね。

○大河内委員 そうです。PIO-NETについては相談員さんの方からいろいろ御懸念や心配が出ていましたけれど、この情報全体が国民全体のものということもありますし、それに、適格消費者団体に向けての配備ということを考えると、そんなに問題はないのではないかと思います。
 もう一つは、財政支援について全く触れられていないところですけれど、今のところ、この制度が適格消費者団体だけが原告になるということになっていること、また今までの適格消費者団体がいわば志で運営されていたという面が大きく、これから、損害賠償というお金をめぐって更に難しい運営が必要になるということも考え合わせると、消費者から見て安定的・継続的に信頼のできる組織になるためには、財政支援が必須ではないかというふうに思っています。

○伊藤座長 これも、本報告書の中にどこまで明示的に書くことがどうかという問題がございますけれども、ただいまのような御意見があることは間違いございませんし、また、それはそれで十分理由があるものかと思いますが、この点、加納さん、何か御発言がありましたらお願いします。

○加納企画官 適格団体に対する財政支援の在り方につきましては、消費者庁の設置法の附則にも書かれているところでございます。消費者庁としていろいろ検討を進めておりますので、それも踏まえて、今の御指摘も併せて検討させていただきたいと思います。

○伊藤座長 どうぞ、磯辺委員お願いします。

○磯辺委員 32ページの適格消費者団体の業務遂行に係る費用等のところです。表現ぶりが少し後退したような印象を持つわけで、その点は残念かなと思いますが、「費用等の中には、性質上、報酬となり得るものもある」ということを明示されていますので、報告書の取りまとめとしてはこれで進めていただきつつ、法文化に当たってはやはりADR法同様に、明示的に報酬を受けることができるというふうに定めていただきたいと思っております。「費用等」ということで狭く限定された実費ということにならないように、この制度を活用するための適正な人件費等も受け取れるように、法文化に当たってはきちんと明示をお願いしたいということでございます。
 それと、適格消費者団体の支援は、前回、私が申し上げた意見を考慮していただいて、より幅広く環境整備を図り、適格消費者団体が設立されるように支援すること等を補記していただきました。ありがとうございます。
 更に、「具体的には」のところで書かれています内容が、現在、実際に検討されていたり、着手されている内容ということで列記されておりますけれども、先ほどの財政支援の問題も含めて、具体的に検討されるべき事項がまだこれから出てくるのではないかと思いますので、これからの可能性も含み込むような包括的な表現をお願いできればというふうに思っております。

○伊藤座長 どうぞ、三木澄子委員お願いします。

○三木澄子委員 33ページの適格消費者団体への支援というところで、勿論、財政支援、それから情報支援というのはとても大切なことだと思っております。ただ、先ほど大河内委員がおっしゃった、PIO-NET導入、端末の配備に関しては、すごく相談員として懸念しているとこの前も申し上げたのですが、この件に関しては、基本計画にもこういう記載をされているというのを聞いています。今後の検討という、一つの案というように私どもは受けとめておりますが、本当にそれは慎重に慎重に審議していただきたいと思っております。

○伊藤座長 それでは、「終わりに」の部分まで含めまして、御意見はございますか。
 下谷内委員、お願いします。

○下谷内委員 同じところで申し訳ないのですが、32~33ページにかけて、費用等につきましては、先ほど磯辺委員もおっしゃられたように、「所要の規定の整備を行う」と書いてありまして、そこで検討されるのであろうと思っております。必ずそこのところは検討をしていただきたいということが1点。
 PIO-NETにつきましては、現場の相談員が今、このPIO-NETの情報というのは国の共有財産ということであり、またいろいろな情報が入っているということで、各地の相談員が入れたものは一番と思っていらっしゃるように思われます。確かに相談員は努力をして御相談者からお話をお聞きして、それをどのように解決するか、そして、どのように消費者の思っているような解決方法を探るかということで、非常に大事なPIO-NETシステムだと思っております。
 ただ、そこのところにおきまして、聞き取りをしてそこまで入力するための非常な労力を使っております。これはもともと、何度も申し上げるのですが、相談員が、全国どこでも被害を受けた人たちに公正な救済ができるということで設置されたものでありまして、それがいろいろな省庁への共有ということに経過的になったことは事実です。ですが、余りにも広げ過ぎて、それを管理する人がどの程度の責任を持って管理し、運営していかれるかということは非常に問題かと思っております。今度、そこに確実に必要な情報を入力できるかとなると、やはりいささか心配であります。ですから、もしこういう形で端末が配置されるのであれば、それを運営・管理していく者の責任というか、重要性について、もう少し書いていただくような方向でなければ非常に難しいだろうなと感じております。
 確かにこの情報というのは非常に多いのですが、これは御相談者、消費者からのものだけであって、ほかの各省庁のものが入っているわけではありません。そういうことも踏まえて、PIO-NETの端末の配置につきましては多分いろいろお書きになると思いますので、慎重に文言の中にそれを書いていただきたいということが1点と、課徴金制度というのを消費者庁の方で考えられていると。もともと私どもは、課徴金制度について適格団体に分配をしていただける方法はないだろうかということを申し上げておりましたので、そういうことを踏まえて御検討、財政支援をしていただければいいのではないかというふうに思います。

○伊藤座長 わかりました。ほかにいかがでしょうか。
 そういたしますと、何点かについて御意見をちょうだいした部分がありますが、私が承っている限りでは、実質において、この報告書案の内容を大きく変える趣旨の御意見ではなかったように思います。ただ、それぞれの御指摘がございますので、もしよろしければ、御指摘に関しましては、私の責任で、表現などに関してしかるべく修正、場合によってはどのような形で御意見盛り込めるのか等を検討したいと思います。恐縮ですが、その辺りはお任せいただけますでしょうか。

(「はい」と声あり)

○伊藤座長 ありがとうございます。
 そういうことになりますと、実質に関しては、本日、この報告書の内容が確定いたしました。ただいま申しましたような字句の修正や加筆等は若干あるかもしれませんけれども、報告書として確定いたしまして、私から消費者委員会に報告させていただきたいと思います。

≪3.その他≫

○伊藤座長 引き続きまして、消費者庁の「財産の隠匿・散逸防止策及び行政による経済的不利益賦課制度に関する検討チーム」で取りまとめが行われたと聞いておりますので、消費者庁の南企画官から参考資料4についての報告をお願いいたします。

○南企画官 ただいま御紹介にあずかりました、消費者庁で企画官をしております南でございます。本日は、この専門調査会にお招きいただきまして、また、我々の取りまとめた検討結果について、報告をさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。
 それでは、参考資料4に基づきまして、昨日、公表されました、今、座長から御紹介がございました「財産の隠匿・散逸防止策及び行政による経済的不利益賦課制度に関する検討チーム」取りまとめ、これについて概要を御紹介させていただければと思います。
 1枚めくっていただきますと、1ページ目がございまして、まず、「はじめに」として、経緯を書いております。この専門調査会で検討されております新たな訴訟とともに、消費者庁の方で設置法附則6項を踏まえやってきたわけですが、昨年9月の研究会報告書において検討の場を分かちましょうということになったわけで、行政的手法の方は、消費者庁に次長を主査とする検討チームを設けまして、昨年12月から9回やってきておりました。去る8月5日、最終会合を迎えまして、座長一任の下、昨日、策定・公表に至ったわけでございます。
 中身でございますが、第1は、「財産事案における消費者被害の現状」でございます。課題の認識でございますが、ここで検討すべきは、いわゆる悪質商法でして、実態のない投資話であるとか、換金困難な外国通貨取引であるとか、まさに消費者の財産をかすめとる、こういったものが横行している。特にこういった悪質商法をやる輩がターゲットにするのは、お年寄りなど、自主的かつ合理的な判断をするに当たっての情報を十分有していない方、こういった方を主にターゲットにするわけですが、一方で、我々だれもがそうした悪質行為の被害者になり得る可能性はあるわけでございます。
 そういった消費者にとって極めて深刻な財産被害が生じている状況にあるわけですが、では、行政として何ができるかでございます。行政ツールとしましては、各種の個別業法、あるいは業法ではないのですが、特定の取引あるいは取引方法に着目した特商法等の法律、消費者安全法、こういったものがございます。しかしながら、2ページの真ん中辺から、それぞれ限界があるということをるる書いております。
 特に消費者庁が所管している消費者安全法は、消費者保護の観点から、消費者事故等が生じた場合に広く対応することができます。何をするかといいますと、消費者への注意喚起、個別業法を所管している官庁に対する措置請求が可能になります。更に生命・身体に関して、消費者事故等に加え更に重大事故等が生じた場合には、消費者庁自らが直接当該事業者に措置を講じることができます。勧告、正当な理由なく勧告に従わない場合等の命令等が設けられております。他方、今の安全法におきまして、財産分野について消費者事故等が発生した場合の注意喚起、あるいは他省庁への措置要求は設けられているわけですが、残念ながら、消費者庁自らが財産分野に関して事業者に直接措置をとることができないという限界がございます。
 これについて簡単に図にまとめたものが、この報告書の最後のページでして、こちらをごらんいただければと思います。現行の我が国に消費者保護法制の体系図をあらわしたものでございますが、左側が生命・身体、右側が財産でございます。ただいま申し上げましたとおり、各省庁所管法で何かあれば各省庁が対応するわけでございますが、仮に各省庁が把握する前に消費者庁が情報収集、あるいは情報を集約して消費者事故等を発見した場合は、生命・身体について措置要求あるいは注意喚起、財産についても措置要求あるいは注意喚起ができるわけでございます。
 更に、他省庁の所管法、あるいは消費者庁自らが持っている各個別法のすき間に該当するものについては、生命・身体に関する重大事故等の場合に、消費者庁は、直接事業者へ勧告・命令等ができる。ところが、財産事案に関して、各省庁所管法、あるいは消費者庁の所管している各個別法のすき間があった場合には事業者への措置権限がない。これが、ただいま申し上げました限界ということでございます。
 本文に戻っていただければと思います。3ページの真ん中、マルが書いてありまして、基本的には被害回復というのは、我が国においては、自分で裁判においてやっていただくことが前提ですが、悪質な事業者というのは確信犯的にやっております。財産を隠匿・散逸する場合が多く、真っ当な訴訟手続で仮に被害者が勝訴判決を得たとしても既に財産はなくなっているということで、自力でやろうとしても限界があるということを書いております。
 3ページの第2でございますが、改めてここで我々としまして検討すべき課題を整理いたしました。いわゆる悪質商法に相当する事案に対する消費者被害について、行政として対応できていない。行政による適切な措置を講じる必要性が高い。そういった被害回復のためには、当然、財産の隠匿・散逸防止のための対策を講じる必要があります。しかし、よくよく考えてみますと、悪質な事業者の場合は、ひとたび消費者被害が発生すると、その回復は極めて困難です。要するに結果が発生してしまっては遅くて、結果を発生させないことが重要ではないかということで、そもそも消費者被害を発生させない、拡大させない、これが重要だということで、可能な限りすき間のない対策を講じる必要性が高い。
 そういったことに関しまして、消費者安全法上の消費者庁による事業者への措置は生命・身体に係るものに限定されております。更に、安全法が設置されたときの附則2項におきまして、「消費者の財産に対する重大な被害を含め重大事故等の範囲について検討を加え、必要な措置を講ずるもの」とされております。そして、2つの観点から検討する必要があるだろうということで、そもそも消費者被害の発生・拡大を防ぐ必要がある。もう一つは、現実問題として消費者被害の完全なる根絶は不可能ですから、やはり財産の隠匿・散逸防止のための措置も検討しなければいけないだろうということでございます。
 1つ目の被害の発生・拡大防止のための措置でございますが、これが第3において検討されております。まず、必要性ですが、先ほど来申し上げている悪質商法というのは、犯罪行為に該当するものもあり、本来であれば司法当局が刑事手続で法的責任を問うという事例もあるかと思います。しかしながら、そもそも発動において刑事手続というのはラストリゾートとして謙抑的である。あるいは仮に捜査に着手しても、捜査、更にはその後の公判継続の間に消費者被害がますます拡大を続ける可能性があります。したがいまして、消費者庁として被害発生・拡大防止のため、消費者への注意喚起にとどまらず、悪質な行為をしている事業者に対しても必要な行政措置を行うための規定が必要ではないか。
 「なお」と書いておりますが、先ほど御紹介した消費者保護法制の全体の体系図としましては、各個別法で対応することもあり得るわけでございます。しかしながら、何かが起こった場合にそれらの個別法で法改正なりをして対策を講じていては、やはり時間の関係で遅い、その間に消費者被害が拡大してしまう、という問題がございます。したがいまして、いわゆる緊急避難的にすき間に対応する法律として設けられた安全法に、消費者庁の財産事案に関する事業者への措置権限を設けることが必要ではないか。
 4ページの2ですが、行政措置の対象行為・要件等について記載しております。行政措置を導入するに際しては、規制が余り広すぎてちゃんとしたビジネスをやっている方の事業活動を萎縮させても困りますから、規制対象となる行為の外延、更に、どういった場合に発動されるかということを明確にする必要がある。更に要件としまして、個別法では対応できないすき間について対応することになります。
 そして、先ほど来申し上げておりますように、対応したいのは悪質商法、いわゆる真っ当なビジネス主体ではないということがありますので、これはあくまでアイデアの一つでございますが、振り込め詐欺救済法の「振込利用犯罪行為」という定義規定があります。詐欺、その他の人の財産を害する犯罪行為、あるいは出資法、ねずみ講防止法、こういった何らかの財産に関する罪を規定した法律における定義規定を参考に対象行為を規定することが考えられるのではないか。
 次に、「また」のところですが、行政措置といった場合、下は指示・勧告から上は停止命令、あるいは業務停止命令といった重いものまでいろいろあるわけでございます。こういったものは、当該行政法規が達成しようとしている目的にとって、また、その目的を達成するための手段として、必要かつ十分なものであるかという観点から検討されるべきである。消費者安全法に行政措置権限を導入するに当たっては、消費者被害の発生・拡大防止のために必要かつ十分であるという観点も必要でしょうし、現行の安全法の生命・身体に対する措置体系も十分踏まえながら検討をする必要があるでしょう。
 次に、経済的不利益賦課制度の話が5ページの3でございます。これらが仮に導入されましたら、間接的に消費者被害の発生・拡大を防止することが可能だと思われます。検討チームでは、網羅的に悪質商法を前提に検討してきたわけでございますが、偽装表示、被害者が特定できない事案、こういった個々の被害者が損害を請求しにくい事案については一定の実効性を有することが考えられるわけですが、一方で、悪質な商法、詐欺的な商法、こういった人たちは、確信的にとにかく金もうけをしたら逃げてしまうおうという人ですので、事業の継続を予定していない。こういった事案では課徴金などは有効に機能しないかもしれないということがございます。
 更に、先ほども御意見がございましたが、被害者の被害回復・救済という場合において、行政が徴収する何らかの金銭を個々の被害者に配分する措置を設けないと、かえって消費者の被害回復の邪魔になってしまうのではないかという考え方もございます。したがいまして、実際の被害者へ配分することも、法制度上、可能かどうか。可能だとした場合、その手続をどうするかという問題があります。こうしたことを踏まえまして、やはり何らかの具体的な個別法を前提に検討を深めていく必要があるのではないか。
 その点、参考としまして、消費者庁が所管している法律の一つとして景品表示法があります。これは、消費者庁設置と同時に公取委から消費者庁に移管されたわけですが、公取委が所管していたころ、平成20年に課徴金の導入を内容とする景表法の改正法案が国会に提出されております。しかしながら審議未了で廃案となり、その後、消費者庁設置構想が持ち上がったために、消費者庁が景表法を所管するに至ったときには、課徴金の導入は見送られたという経緯もございます。こういったことも踏まえ、引き続き検討を行うことが適当だろうと。
 続きまして、行政措置に関連する制度として、6ページの4、調査権限でございます。行政調査権限は何のためにあるかというと、行政法規によって与えられた行政措置を発動するに当たって、違反行為の構成要件に該当する事実を把握するために設けられるものでありまして、それは措置の内容に見合った必要かつ十分なものであることが必要です。現行の安全法も、例えば生命・身体の重大事故等について、勧告等をするため、あるいは注意喚起等をするため、22条に調査権限が設けられているわけですが、果たして今の22条で新たな行政措置を発動するに十分かどうか。こういったことも検討しなければいけないということが書いてあります。
 2つ目の大きなテーマ、財産の隠匿・散逸防止のための措置の検討が、7ページの第4からございます。先ほど申しましたとおり、被害の発生・拡大防止も重要ですが、消費者被害の完全な根絶は不可能ですから、財産の隠匿・散逸防止策も必要なわけでございます。まず、何か新たな制度を導入する以前に、今、持っているツールを活用してはどうかということで2番に書いております。
 一つは、振り込め詐欺救済法というものがございます。これは、財産に関する一定の犯罪行為であって、その財産を得る方法として預金口座が使われた場合に、金融機関による当該口座の凍結、更には失権等の措置を講ずるための法律ですが、これを積極的に活用していこうという話でございます。今でも消費者庁を含め関係省庁は一生懸命これを活用しているわけですが、更に、例えば、消費者庁として都道府県等に助言するとか、そういったことを書いております。
 一つ、制度的なアイデアとして、8ページの下の方でございます。先ほど、安全法に行政措置を導入してはどうかという話をしたのですが、その対象行為として振り込め詐欺救済法に関連する犯罪行為に該当する行為などが規定された場合、当然、新たな措置を発動するための調査の過程で、犯罪利用口座の情報を入手する可能性は事の流れとしてあるわけでございます。この場合、何もなくても消費者庁としては積極的に金融機関に情報提供をするわけですが、これが法制的に可能かどうかというのは、今後、検討しなければいけませんが、消費者庁がそういった情報に接した場合、金融機関に情報提供をすることを義務づける規定を法制的に設けることも考えられるのではないか。そうしますと、安全法に行政措置を導入することによって、消費者被害の発生・拡大防止とともに、更に、預貯金ということで限られてはおりますが、財産の隠匿・散逸防止の効果も併せて期待できるのではないかということが考えられます。
 もう一つ、制度として、会社解散命令・管理命令の活用ということが書いてありますが、こちらは要件が厳しく、近年、そういった事例は存在しないということでございます。
 3番目、財産の散逸防止策のもう一つの目玉としまして、消費者庁自身による破産手続開始の申立てを検討いたしました。破産手続というのは、裁判所が破産手続開始決定をすると、破産管財人が破産者の財産を破産財団として管理・監督していくということで、破産者が自由にその処分を行えなくなる。かつ、預貯金に限らず破産者のすべての財産が対象になりますので、財産の包括的な保全策としては有効ではないかということでございます。
 検討した結果でございますが、いわゆる破綻必至の投資・利殖詐欺事案、そういった悪質商法の場合、要はやり逃げ・食い逃げ的なところがあるわけでございますが、迅速かつ包括的な財産保全がなされないと、多数の消費者に深刻な影響が生じます。一方で、個々の債権者、すなわち個々の消費者自身による財産保全というのは非常に難しい。悪質商法をやっている人たちの資産状況を把握する術もないということで、早期の段階で行われることは期待できないということがございます。この点、行政機関が持っている破産手続申立の例として、いわゆる更生特例法というものがございまして、金融庁その他の一定の金融機関等を監督する監督庁に破産手続開始申立権が認められています。こういった例も踏まえますと、消費者庁が消費者保護の観点から破産手続開始の申立権限を持つことはそれなりに意義があるのではないか。
 かつ、「また」のところで書いていますが、破産開始申立というのは別に行政処分ではありませんで、あくまで破産手続開始のトリガーにすぎない。更に、破産手続が開始されてしまえば、通常は裁判所の監督下にある破産管財人が淡々と進めていくということでございますので、それなりに消費者庁が持ってもいいのではないか、合理性があるのではないかということが書いてあります。
 さはさりながら10ページの下、マル1としまして、破産というのは、お金を貸した人、借りた人の関係で債権者なり債務者が申し立てていくことになっています。先ほど申し上げました更生特例法ですと、金融機関の監督官庁が申立をすることになっているところを、それらのいずれでもない消費者庁がそういう権限を持つとした場合、その法的根拠はどのように考えるべきか、こういった大きな課題がある。
 2つ目としまして、先ほど申し上げたとおり、あくまで破産手続開始申立というのはトリガーにすぎないわけですが、やはり法人たる事業者の消滅につながる措置ですから、何でもやれるということになると影響が大き過ぎる。やはり対象事案や要件を考える必要があるだろうということでございます。
 マル3でございますが、そもそも消費者庁が破産申立権限を行使するに当たってその事実を把握することができるか。金融庁であれば常に金融機関をウォッチしているわけでございますが、消費者庁と事業者はそういう関係にはない。更に消費者庁の体制の問題もございます。
 以上の検討を踏まえまして、第5で結論としてまとめておりますが、一つは、消費者安全法に消費者被害の発生・拡大を防止するための行政措置を導入することが考えられまして、これは消費者の利益の擁護のために大きな意義を有することになる。調査権限の拡充も必要となる。振り込め詐欺救済法とのリンケージを法制的に図られれば、消費者被害の拡大防止とともに財産の隠匿・散逸防止の意義も有する。一方で、法制的に対象行為、要件などの詳細を詰めなければいけませんから、そういったものを引き続き検討することが適当である。
 更に、経済的不利益賦課制度は、具体的な個別法を前提に引き続き検討を行って制度設計を詳細に詰める必要がありますし、破産についても先ほど申し上げましたような課題がございますので、引き続き検討を行うことが適当である。
 消費者庁としましては、これまで次長を主査とする、ある意味クローズドな場で議論していたわけでございますが、今後は、各論点の専門家等を集めて研究会を開催し、引き続き議論を深めていきたい、このように考えております。
 以上でございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 ただいまの御説明に関して、御意見、御質問等ございましたら、お願いいたします。
 どうぞ、山口委員。

○山口委員 今日の取りまとめと昨日の検討チームの取りまとめ、相まって、ようやく多数消費者の被害の抑止、あるいは救済に係る措置の形ができるのではないかと思っております。本当に昨日、こういう形で取りまとめていただいてよかったなと感謝申し上げます。
 一言だけ、付言させていただきますと、10ページですけれども、消費者庁による破産申立の必要性といいますか、これは本当に切実でございまして、特にマル1番とマル2番で、保全の必要性、あるいは消費者自らの早期の破産申立は期待できないということが情報収集の観点から書かれておりますが、もう一つ、実は深刻な問題があります。予納金の問題でございます。最近の多数消費者が被害に遭う大型悪質商法被害事件では、かなり高額の予納金を破産申立の段階で裁判所が指示するわけです。これが被害弁護団をつくって申立をする際の大きなネックになっておりまして、申立資金を集めるのに苦労しております。
 といいますのは、例えば未公開株の事案などでは、破産申立をしても実際に被害者の配当がどの程度得られるか全く先の見通しがないわけです。そうしますと、被害者の皆さんから一律3万円、5万円をいただくことさえはばかられるわけです。被害弁護団として3万円、5万円を出していただいたけれども、ほとんど配当ができないという場合、責任を持てるのかというような議論がございます。今、問題になっておりますので出していいと思いますが、例えば安愚楽牧場の倒産事件でも、一説には5,000万円ほどの予納金が必要というふうに言われております。一体どうやってそんなお金を被害者の団体の中で集めるのかということで途方に暮れております。これを消費者庁がしかるべき時期に迅速な破産申立ができるようにしていただければ、予納金の問題はクリアーできるという点で、実際にこの種の問題を扱っている弁護士の立場からしますと、非常に切実だということを付言させていただきたいと思います。

○伊藤座長 南さん、何かございますか。

○南企画官 当然ながら、これは検討チームの取りまとめの結果にすぎませんから、問題としてマル1からマル3まで挙げておりますが、問題がこれに限られるわけではございません。山口委員おっしゃったような問題も含め、まず論点を洗い出した上で引き続き検討を行ってまいりたいと思います。

○伊藤座長 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ、中村委員お願いします。

○中村委員 私からは若干批判的な発言をさせていただきたいと思います。その趣旨としましては、そもそもこの検討は、悪質事業者の対応について検討することが目的でございまして、悪質事業者に対して財産の隠匿・散逸の防止であるとか、財産的不利益賦課制度というものについて考えるということであったと思います。それについて時間的制約があるという、いろいろな条件については理解をしているつもりではございますけれども、少なくとも今の時点の取りまとめに関しましては、結論として、今の課題の対策としては全く不十分なのではないかというふうに私は思っております。
 その意味合いはどういうことかと申し上げますと、そもそも悪質事業者についての取り締まりというのは、一般の事業者にとっても、公正な競争という観点からきちっとやっていただきたいと思っているわけですけれども、他方、今回提案していただきました消費者安全法の拡張につきましては、こういった悪質事業者に必ずしも適用されるものではなく、結果としては一般事業者に対して過大な行政の権力の行使となるのではないか、というのが少し心配なところでございます。
 生命・身体の安全に関しましては、当然のことながら、例えば会社に対して財産権を多少制限しても法を優先しなければならないという制約がございます。そういった目的によって、すき間事案について緊急措置をとることは必要なこととして理解ができるところでございますけれども、これを財産に拡張した場合、いわゆるすき間事案と言われている、明確な法制が定められていないところについて行政権限を行使することに関しましては、大げさに申し上げれば、法治国家の基盤を崩す可能性を秘めているのではないかというふうに私は感じております。ですから、このようなことを検討するということでございましたら、今後、事業者の意見も含めまして、経済的な効果でありますとか、いろいろな意味で慎重な検討をした上で決定をしていただきたいと思うところでございます。
 また、課徴金の記述に関しましても、6ページに景品表示法の引用がされておりまして、景表法に関する課徴金の導入の検討は別といたしまして、悪質事業者に対する対策というところで言及がされているのは若干違和感を感じるところでございます。ここも、結局のところ悪質事業者については放置されて、一般事業者への規制に走っていくのではないかというのを懸念しているところでございます。その点、まず緊急に対策をしなければいけない悪質の事業者にきちっと的を絞った対策をもう少し考えていただきたいと思うところでございます。

○伊藤座長 先ほどの南さんの言葉をお借りすると、今まではクローズドなところで議論をしてきたけれども、今後はより開かれた形での議論を進めることになるというお話でしたので、ただいまの中村委員のような御意見も、当然、その中で審議の対象になるものと思います。
 南さん、何かございますか。

○南企画官 座長に言っていただいたとおりです。改めて申し上げますと、委員おっしゃったように、行政措置を導入するに当たりましては、規制が広範になり過ぎてしまったら事業者の予見可能性を阻害してしまって、かえって真っ当なビジネスをしている方の事業活動を萎縮させてしまう。これは本末転倒な話でございまして、そういった点も含めまして、いかに悪質なものをターゲットにできるかということを、今後、オープンな場で法制的に詳細を詰めていきたいと考えております。

○伊藤座長 三木澄子委員、お願いします。

○三木澄子委員 私の方は消費生活の相談現場ですので、今回の財産隠匿・散逸防止というこの検討チームの中身を御報告いただいて、私どもはすごく期待しております。まさしく現場では、ここに掲げている悪質商法的なもので、業者と交渉が困難な案件に関してはすごく困っておりますので、こういう制度はできるだけ早くやっていただきたいと思っております。
 特に金融機関の犯罪利用された口座の情報を消費者庁から通知・報告できるとのこと、振り込め詐欺救済法では消費生活の現場ではなかなか口座凍結など行使できないわけです。ですから、消費者庁が間に入ってやっていただけるとなれば、すごく助かるなと思っております。現状では、弁護士さんや警察の方に基本的にお願いする形が多いのですが、このようなケースに関しては消費者庁に早く導入していただいて、利用できることを本当に期待しております。消費者庁がこういう場で力をますます発揮していただいて、消費生活現場等で利用できるよう法体制を整備していただければと思っております。

○伊藤座長 いろいろな方面からの貴重な御意見をありがとうございました。これは私が申し上げるべき立場ではありませんが、今後、こちらの課題につきましても審議・検討をして、消費者被害救済の実効性を確保する方策ができればと思いますので、よろしくお願いいたします。

≪4.閉会≫

○伊藤座長 それでは、よろしいでしょうか。以上で、本日予定をいたしました議事はすべて終えていただいたことになります。
 一言、私からごあいさつを申し上げたいと思います。
 昨年の10月に第1回の専門調査会を開催いたしまして、本日の第15回まで、毎回かなりの長時間にわたり、密度の濃い審議をしていただきました。多様な御意見がございましたので、どういう形で取りまとめられるのかにつきましては、若干の危惧の念を抱いた時期もございましたが、委員各位の御協力をいただきまして、本日、このような形での報告書を取りまとめることができました。
 その間におきましては、やや強引な取りまとめをしたという印象を持たれた方もおいでになるかと思います。その点をおわび申し上げるとともに、このような形で報告書を取りまとめることができました点につきまして、改めて皆様にお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、最後に事務局から事務連絡がございますようですので、お願いいたします。

○齋藤審議官 事務連絡を申す前に、事務局といたしましても、座長をはじめ委員の皆様、大変難しい問題でございますが、精力的に御審議、また御協力いただきまして、本日、こういう形で取りまとめができるようになったことに関しまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
 事務連絡でございますけれども、消費者委員会への報告につきましては、先ほど伊藤座長からも御発言がございましたが、8月26日の消費者委員会で、報告書に基づき御報告をいただくことを予定しております。
 事務局からは以上でございます。

○伊藤座長 それでは、第15回、最後の調査会になりましたが、本日はこれで終了させていただきます。
 長い間、御協力いただきまして、ありがとうございました。重ねて御礼申し上げます。

(以上)