第7回 集団的消費者被害救済制度専門調査会 議事録

最新情報

日時

2011年2月17日(木)9:30~11:53

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【専門委員】
 伊藤座長、三木(浩)座長代理、磯辺委員、大河内委員、大高委員、沖野委員、
 窪田委員、黒沼委員、桑原委員、中村委員、三木(澄)委員、山本委員
【担当委員】
 池田委員、下谷内委員、山口委員
【関係省庁等】
 消費者庁  加納企画官、鈴木課長補佐
 法務省民事局  坂本参事官
 最高裁判所事務総局民事局  朝倉第一課長
 国民生活センター理事長・弁護士  野々山氏
【消費者委員会事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.訴訟手続に係る論点について4 (個別争点を効率的に処理するための方策等)
3.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:56KB)
【資料1】 本日検討する論点について(消費者庁提出資料)(PDF形式:417KB)
【資料2】 国内制度における簡易な手続について(消費者庁提出資料) 【資料3】 消費者被害の事案の概要等(消費者庁提出資料)(PDF形式:122KB)
(参考資料1) 前回(第6回)までの専門調査会で出された意見等の整理(消費者庁提出資料)(PDF形式:222KB)
(参考資料2) 集団的消費者被害救済制度専門調査会今後のスケジュールについて(PDF形式:64KB)

≪1.開会≫

○原事務局長 おはようございます。時間になりましたので、始めさせていただきたいと思います。朝早くからお集まりいただきまして、ありがとうございました。ただいまから第7回「集団的消費者被害救済制度専門調査会」を開催いたしたいと思います。
 議事に入る前に配付資料の確認をさせていただきます。配付資料一覧は議事次第と書いたものの後ろに付けております。
 資料1「本日検討する論点について」。
 資料2-1と資料2-2ですけれども、資料1の論点の説明に際して参考のためにということで「国内制度における簡易な手続について」を資料2として準備されています。
 資料3「消費者被害の事案の概要等について」を消費者庁から御準備いただいております。
 参考資料1「前回(第6回)までの専門調査会で出された意見等の整理」。
 参考資料2「集団的消費者被害救済制度専門調査会今後のスケジュールについて」ということで、前回もお示ししておりますけれども、前回は7月以降は入っておりませんでしたが、裏のページに7月以降のスケジュールも入れさせていただいております。
 不足の資料がございましたら、事務局までお申し出いただければと思っております。
 それでは、伊藤座長、議事進行をどうぞよろしくお願いいたします。

○伊藤座長 おはようございます。ただいま事務局長から説明がございました今後のスケジュールについて、何か御質問はございますでしょうか。よろしゅうございますか。

≪2.訴訟手続に係る論点について4 (個別争点を効率的に処理するための方策等)≫

○伊藤座長 そういたしましたら、本日の議題を取り上げたいと存じます。
 本日は前回第6回の議論に引き続きまして、訴訟手続に係る論点についてマル4といたしまして、個別争点を効率的に処理するための方策を中心に検討していきたいと思います。
 まず資料1の本日検討する論点「1.総論」を取り上げます。総論部分におきましては、いわゆる二段階目の手続の在り方について、その参考となります国内の制度における簡易な手続等についての資料を作成してもらっています。
 それでは、加納さんから説明をお願いいたします。

○加納企画官 それでは、資料1でございますけれども、御説明をさせていただきたいと思います。
 資料1の1ページの総論部分ですが、「(1)基本的な考え方」を書いております。いわゆる二段階型というA案、B案の議論をさせていただいておりますけれども、その二段階目の手続につきましては「一段階目で共通争点に関し事業者の責任ないし違法性などが認められた後、個別争点について審理し、最終的には個々の消費者の請求権の存否について判断し、よって、個々の消費者の権利実現を実効的にするための手続」として位置づけられるものと考えております。
 そういたしますと、二段階目の手続を検討するに当たりましては、個別争点についてどういう審理をしなければならないかというのを踏まえた上で、審理の簡素化や当事者の合意による解決を得やすくするなど、消費者が簡易迅速に権利救済を得られるようにすることを可能とする手続の在り方について、検討するのが適当と考えられるところでございます。
 個別争点にはどういうものがあるかということについて、6ページの参考1で若干ペーパーを準備しております。「マル1具体例の検討」でございますが、学納金の事件、敷金返還の事件、個人情報流出の事件と3つほど御紹介しております。このうち学納金事件と敷金返還請求事件については、いずれも財産的な損害に関するもの。それに対して個人情報流出事件については、非財産的な損害に関するものと思うところでございます。
 学納金返還請求訴訟における共通争点と個別争点については、ここに書かせていただいたとおりあるのではないかと思われるところでありまして、ただ、学納金につきましては共通争点の内容と個別争点の内容と比較しますと、かなり共通争点のところが大きいのかなと思われるところでございます。個別争点につきましては納入済み授業料等の額や入学辞退の有無及びその時期という感じで、実際上の裁判例において争われているようでありまして、それについてどういう審理をするかということについて下の方に書いておりますけれども、額につきましては例えば領収書などを持っているとか、あるいは大学の記録等で簡単に確認することができると思われますが、入学辞退の有無や時期につきましては、一定の証拠調べをする場合もあり得ると思われるところであります。
 敷金返還請求訴訟における共通争点、個別争点はここに書いたとおりでありますけれども、個別争点の賃借人が負担すべき原状回復義務の範囲につきましては、下に書いてありますように不動産の汚損・破損の有無、それに関する賃借人の故意・過失の有無や補修費用の算定などを踏まえる必要がありまして、これについても一定の証拠調べを要するのではないかと思われるところでありますが、実際の裁判例を見ておりますと当事者間で必ずしも大きく争われていない例も多いようでありまして、そういう場合には個別争点の審理について労力をかけているというわけではないように思われます。
 個人情報流出事件につきましては先ほど申し上げましたように、非財産的な損害に関するものでありまして、その具体的な内容につきましては一番下の行の辺りですけれども、自己の個人情報が社会に広く流布し、悪用されるのではないかとの不安による精神的な苦痛というものが考えられるところでありますが、更に迷惑メールやダイレクトメール、いたずら電話等の事情があれば、その苦痛が大きくなるということでありまして、一定の証拠調べをすることもあるというところであります。
 マル2はざっと整理をさせていただきましたけれども、事案により個別争点について簡易かつ定型的に事実認定及び法的な判断をすることができることもあれば、一定の証拠調べをしなければならなくなることもあると思われるところでありますが、そもそも何が個別争点になるかについては応訴態度にもよると考えられてございまして、先ほど敷金の事件について少しだけ申し上げましたが、一応理念としては考えられるけれども、実際はそんな大きな争点にならないことも多いであろうと思います。
 本文に戻らせていただきまして、1ページ(1)については以上でございますが、「(2)国内制度における簡易迅速な処理を行う手続について」でございます。マル1に書いておりますけれども、参考となる現行の制度の状況として一定の整理をしてみたものですが、ここでは大量の請求権についての簡易迅速な処理を行う手続という観点だけではなく、広く現行制度で簡易迅速な審理を挙げるという観点から取り上げたものでございます。
 1ページのア、2ページのイ、ウという形で、ここに書いている制度についてまとめております。
 これに関しまして資料2-1ですが、それぞれの制度、手続の内容、特徴などにつきまして一覧表で書いてみたというものでありまして、今後二段階目の手続を考えるに当たりまして、これらの項目について一つひとつ検討していって、中身を決めていく必要があるのではないかと思われるところであります。
 資料2-1の1枚目は破産手続における簡易な手続、2枚目は労働審判、刑事訴訟手続に伴う犯罪被害者等の損害賠償請求に係る裁判手続の特例と、いわゆる損害賠償命令制度というものを挙げております。
 3枚目は少額訴訟と手形・小切手訴訟というものを挙げております。
 これらについてどういう観点から挙げたかということにつきましては、資料1にも書いてあるところですが、破産手続につきましてはたくさんの当事者が登場するという手続、2枚目の労働審判、損害賠償命令制度につきましては手続の性質というところに書いてございますけれども、非訟事件として位置づけられる。それが不服がある場合には訴訟手続に移行するという観点のものでございます。
 3枚目の少額訴訟と手形・小切手訴訟につきましては、手続の対象は一定の金銭債権としておりますけれども、一応訴訟手続ではあるが、審理の在り方等につきまして簡易迅速に行うことを目的として、一定の特別な規定を設けているというものでございます。
 表に基づきまして概括的に御説明させていただきますと、例えば1ページ目の破産手続におきましては、手続の性質として非訟としての性格を持つというところでありますとか、手続の公開というところで審尋をするということが書いてあります。後でその言葉の意味については注記しているところがございますので、御参照いただければと思います。その他のところで一定の主張の制限ということも書かせていただいております。
 2枚目は労働審判及び損害賠償命令制度でございます。手続の当事者や管轄につきましてはここに書いてあるとおりでありまして、手続の性質で非訟としての性質を持つ。手続の公開等につきましては労働審判においては審理は非公開で行う。損害賠償命令につきましては任意的口頭弁論。口頭弁論を必ずやらなければいけないというものではない。審尋をすることができるということが書いてあります。その他のところですが、労働審判では原則3回以内の期日であるとか、損害賠償命令につきましては原則4回以内であるということが書いております。
 手続費用につきましては、労働審判については民事訴訟費用に関する法律において、一定の特別な規定が設けられておりまして、通常の訴訟よりは安くできるようであります。損害賠償命令については2,000円という定額で、比較的安い値段となっているかと思います。
 裁判の内容・効力につきましては、労働審判については一番下のところですけれども、適法な異議の申立てがないときは裁判上の和解と同一の効力を有する。損害賠償命令につきましては一番下のところですが、確定判決と同一の効力を有するという形になってございます。
 先ほど手続費用について損害賠償命令制度は2,000円と申し上げましたけれども、その命令について異議があるという場合には、異議申立ての手続費用が別途かかるということでありまして、目的の価額によって算定した額から2,000円を控除した額ということでありまして、当初より訴えを提起した場合の訴額と2,000円の差額を払うということではないかと思います。
 訴訟における判決の内容ですが、損害賠償命令につきましてはその損害賠償命令を認可しなければならないという、認可という独特な制度が設けられてございます。
 3枚目にいきまして少額訴訟、手形・小切手訴訟でございますけれども、少額訴訟につきましては手続の対象ということで60万円以下の金銭。少額とは何かというのは専門調査会でも議論の対象になっていると思いますが、ここでは60万円という形で決めている。 手形・小切手訴訟については手形や小切手に関する金銭の支払請求権が対象になるということでございます。
 手続の特徴ですけれども、少額訴訟においては証拠調べの方法という真ん中辺りのところで、即時に取り調べることができる証拠に限るとか、手形・小切手訴訟においては原則として書証に限られるという規定が設けられております。
 期日につきましては、少額訴訟においてはその他というところで1回でやる。手形・小切手ついても同様でございますけれども、こういった規定が設けられてございます。
 資料2-2でそれぞれの手続のイメージ図を書かせていただいております。これについては適宜御参照いただければと思います。
 資料1の2ページマル2に戻らせていただきまして、上記の制度を概観するとということで、今るる御説明しましたア~ウという観点で、2~3ページに書かせていただいております。
 説明は割愛させていただきまして4ページでありますが、マル3にこれらの制度を参考にするとということで書いておりますけれども、審理を簡素化する手法として幾つかあるのではないか。これに限られるということではございませんが、特徴的なものを幾つかピックアップしてみますと、口頭弁論によらず審尋をする。先ほど審尋という言葉が出ましたけれども、下の注記に書いてありますように、関係人に対して無方式で個別的に書面または口頭による陳述の機会を与えることでございますが、そういうものがある。2つ目のポツは証拠調べの制限、3つ目は期日に関する制限などが考えられるというところでありまして、こうした制度を参考にしながら、後ほど二段階目の手続の在り方について更に検討させていただければと思っております。
 「(3)実効的な権利救済について」でございますが、一段階目の手続で共通争点について事業者の責任や違法性などが確認された段階での手続であるということでございますので、簡易・迅速に実行的な権利救済を図るという観点から、二段階目の手続の在り方としましては審理を簡素化するということと、更にできる限り当事者の合意による解決を促進することが考えられるとさせていただいておりまして、具体的にはということですが、紛争全体を見越した上での紛争の一回的解決を図るとともに、合わせて審理の効率化や手続の円滑化を図る必要もあると思いますけれども、できる限り一段階目の手続追行主体などが、対象消費者の請求をとりまとめることとすることが考えられるのではないか。
 もう一つは、一段階目の判決の効力がどういうものかというものは、更に検討しなければならないところでありますけれども、例えば対象消費者が裁判外でも当該判決による結果を有利に活用することができることとすることなどによりまして、弁護士会の紛争解決センターや国民生活センターあるいは民事調停などの、いわゆる裁判外紛争解決手続(ADR)を活用することも考えられるのではないかと思われるところでございます。
 それぞれADRにつきましては参考2~参考4という形で、ポンチ絵でありますとかデータ等を掲げております。
民事調停について1点だけ付言させていただきますと、民事調停のポンチ絵が16ページにございますけれども、ここで調停の申立てという形で書いてございますが、現行の民事調停法におきましては、民事調停法20条に付調停制度というものがございまして、受訴裁判所が適当であると認めるときに職権で事件を調停に付した上、他の裁判所や自分の裁判所で処理することができるという規定がございまして、申立人による調停のほか、裁判所の判断で調停に付することもございます。こちらはペーパーはございませんけれども、口頭で補足させていただきますが、ADRも活用することも考えられるとしております。
 「更に」のところでは、権利救済を実効的に行うという観点から、執行の場面におきましても手続追行主体がとりまとめて執行を行うことも考えられるのではないかとしております。
 「(4)まとめ」ですが、以上を踏まえましてということで、二段階目の手続の在り方は基本的にどう考えるかということですけれども、簡易な手続において個別争点について書証等による事実認定に及びそれを踏まえた判断をするか、当事者の合意による解決を促すこととしつつ、それらが困難な場合には適宜、通常の訴訟手続に移行することを可能とすることが考えられる。これらについてどのように考えるかということで、御意見をちょうだいできればと思っております。
 なお書きのところですが、二段階目における簡易な手続と通常の訴訟手続の関係、これも自由な論点になってくると思いますけれども、これにつきましては二段階目の簡易な手続に関する検討を踏まえた上で、改めて検討することとしてはどうかとしておりますので、この点も御意見をちょうだいできればと思います。
 1につきましては私の方からの御説明は以上でございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。やや技術的な概念等は出てこざるを得ないところでありますが、基本的な考え方としては、一段階目で責任や違法性があると判断されたことを前提としまして、個々の消費者の権利をどのように保護するか、それをめぐる紛争をどう解決するかという視点から、二段階目の手続を考えることになります。消費者の権利や事業者の義務にかかる紛争ですから、本来ですと、訴訟手続による解決が我が国の制度から言うと本則になりますけれども、それは双方の当事者にとって、非常に負担も大きいし時間もかかるというので、簡易迅速な解決手続を考えざるを得ない。簡易迅速といったときに2種類あって、まず、裁判所の判断の手続を簡易迅速にすることも考えられますし、また、当事者間の合意によって簡易迅速な紛争の解決を図ることも考えられます。そのために、紹介いただいたような既存の制度を参考にして考えていくのがいいでしょうということかと思います。
 ただ、いずれにしてもそれが実際に機能するためには、やはり消費者が持っている請求権をできる限り一つの手続の中に取り込んでいく仕組みを考えないと、うまくいかないと思います。そのための1つの考え方として、手続追行主体によって多くの消費者の権利を集約をすることも考えられる方策です。加納さんに今、説明していただいたことを私自身の意見も含めまして簡単に表現すると、こんなことになろうかと思いますが、どうぞただいまの点についての御質問等ございましたらお願いいたします。

○大高委員 ただいまの総論に関する事務局の御説明については、基本的には大きな違和感はなく、非常によくまとめられているのではないかと思います。それを踏まえまして2点ほど申し上げたいと思います。
 総論にありますように、二段階型の集合訴訟における二段階目については、基本的にはできるだけ簡易な手続として、それで対応できないものについては通常訴訟に移行させるという基本的な発想自体は、非常に賛成できるところです。そうすると、いわゆる二段階型の二段階目のときの本則的な手続と、通常の訴訟をどう仕分けていくかというところが、非常に重要な問題になってくるのかと思います。
 これはまさしくどのような審理を要するのかということによって、簡易迅速な審理になじむのかそうでないのかというところになるんだと思いますが、これについてはいわゆる抽象的な事件の類型によって分けられるのではなくて、まさしく個々具体的な事件において、実際に届出をされて第二段階に参加してきた具体的な被害者についてどうかというように、個々具体的に考えるべき問題ではないかと思います。
 加納さんからの御説明にもありましたように、例えば資料の参考1の敷金返還訴訟で、個別争点については一定の証拠調べを要すると考えられると書いてございますけれども、これもすべての届出をした人について原状回復義務の範囲が争いになるというわけではなくて、多くのものについてはそれがなく、特に重い審理を要せずともまとまることは十分に考えられるところであります。
 また、例えばこれまでも議論になっている人身損害が問題になるようなケースでも、確かに証人尋問であるとか、場合によっては医学的な鑑定をしなければ結論が出ない事案もありますけれども、私も以前に損保会社の代理人として交通事故の示談交渉をした経験もございますが、多くのそういった人身被害の解決において、ほとんどは被害者の方から出していただいた書面的な資料、被害者の方からの聞き取りなど、そういったところでおおむね損保会社の方も納得をして示談をしている。それでまとまらなかった事案が訴訟提起に至っているという実態がございますので、まさしく人によって変わってくる問題である。具体的な訴訟について争いがあるかどうかによって、変わってくる問題ではないかと思っております。
 2点目として、加納さんから御指摘のあった4ページ目の実効的な権利救済のために、審理の効率化や手続の円滑化の観点から、できる限り一段階目の手続追行主体等が対象消費者の請求をとりまとめることが望ましいという意見に、非常に賛成をいたします。勿論、この観点から通知公告をいかに実効化するかという議論が出てくるわけですけれども、それ以外にも例えば、これは私もまだ定見があるわけではないんですが、対象消費者の氏名や住所がわかっていて、かつ、損害額が定型的であるというものについては、その対象消費者の氏名などが特定できている範囲に限られると思いますけれども、具体的な届出等がなくとも第二段階目の審理を対象にしていくとか、そういった広く対象消費者を取り込んでいく方策について、いろいろ工夫をしてもいいのではないかと感じております。
 これは関係ないところですが、ちょっと御紹介ということで、席上に今回、日本弁護士連合会からの「カナダにおけるクラスアクションの実情調査報告書」を、お配りをお願いしております。これは日弁連で昨年9月末から10月頭にかけてカナダのオタワとバンクーバーにまいりまして、現地のクラスアクションの実情調査をしてきた調査報告書でございます。これまで既に御紹介されておりますように、カナダのクラスアクション制度はオプト・アウト方式を基本としつつ、二段階型を取り入れた非常にユニークな制度でございまして、非常に効果をあげつつ、比較的リーズナブルに運用されているということで調査をしてまいりました。
 既にこれまで山本和彦委員や三木浩一座長代理なども、既に調査をされて御報告されているところでありますけれども、実務家の観点からいろいろと見て報告をまとめておりますので、御一読いただければと思います。非常に大部な部分がありますので、可能であれば私の方で簡単に要約したものを次回か次々回にはお出しをして、皆様の参考になるようにしたいと思っておりますので、御紹介をさせていただきました。ありがとうございます。

○伊藤座長 御意見と資料の御紹介、提出ありがとうございました。ただいまの大高委員の御発言に関連してでも、あるいはそのほかの点でも結構ですが、総論部分の考え方について御質問、御意見等なおございますでしょうか。

○坂本参事官 今の大高委員の御意見に対する感想的なところも含めて、ちょっと申し上げさせていただきたいと思います。
 大高委員の御発言や、先ほどの加納企画官の御説明にもありましたように、個々の事件によって変わってくるというのはそのとおりだろうと思います。他方で、この手続を使えるような事件あるいは簡易迅速な手続に適当な事件というのは何なのかということを考えるときに、個々の事件によって違いますねということになってしまうと、それでは一体どうやって切り分けていくのだろうという問題が生じてくると思います。したがって、できるだけ共通争点で決着がついていって、定型的な証拠によって判断していくことができるということが基本になる、そこがベースなのかなというのが雑駁な感想です。
 ここから先は、個人的な経験に基づく感想的なところもあるのですけれども、先ほど敷金の例が挙がっておりましたが、関西地方で行われていた敷引き特約のようなものが問題となる事件であれば、それほど個々の事件による差異は大きくないのかもしれませんけれども、私が経験した事件の中では、修繕の工事代金が高過ぎるとか、そもそもその工事が必要だったのかというところが争われている事件も結構ございまして、一概にそう簡単にいけるのかなというのが感想でございます。
 また、先ほど大高委員から、人身損害でも多くは示談で解決しているというお話がありましたが、それはそのとおりだろうと思います。交通事故の事件などでも、和解が成立している事件数は、訴訟になっても多いと認識しております。ただ、示談で解決することができている方々につきましては、ある意味こういう手続を利用しなくても、その前段階でうまく紛争解決ができており、それで解決できないような人たちをどう救っていくのかという観点が必要なのかなというのが、感想でございます。

○伊藤座長 ありがとうございました。私どもが構想する手続の対象事件をどう把握するかという、これは前に議論をいただいたところではありますが、その点についてまだ共通した認識が形成されておりませんので、その辺りと関係して、今、結論を出すことが容易でない部分がございますけれども、それはそれとして御意見をちょうだいできればと思います。池田委員、どうぞ。

○池田委員 事業を経営していた立場から言いますと、先程からの説明にあるように、二段階目はできるだけ簡素な手続であることが大前提ではないか、と思います。少なくとも訴える側、訴えられる側にとって、訴訟を提起する目的というのは、まず多数の消費者で、少額訴訟であるということですから、できるだけスピーディーに解決していくことが、両者にとって大事なことだと思います。そうすると、できれば事業者側にとっては一段階目の共通争点の段階で、できるだけ明快な結論が出て、この段階でこの打ち合わせの冒頭にありました和解手続で解決していくという形になっていくことが、一番望ましい手続だろうと思います。むしろ二段階目で色々なことを想定しなければいけないような案件については、本来きちんと訴訟で対処すべき事柄ではないか、そうでなければ新しい仕組みをつくる、あるいは検討していく意味合いがだんだん薄れていくのではないか、と感じております。

○伊藤座長 その点は実際上のことを考えると誠におっしゃるとおりで、恐らく次回辺りに一段階目の手続において、どういう形での和解あるいは合意による解決が図られるのかということも、また御議論いただきたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。桑原委員、どうぞ。

○桑原委員 私もただいまの御意見に全く同感でございまして、表現は適切でないかもしれませんが、一段階目で基本的な決着がついているわけでございますから、特に小規模な事業者の立場に立つと、二段階目はできるだけ早くしてくれという気持ちになる方が圧倒的に多いのではないか。
 先般も申し上げましたけれども、小規模の立場の経営者というのは自分1人で何役もやっておりまして、社長をやったり営業部長をやったり経理部長をやったり、法務担当部門の人材もいないし組織もないことを考えますと、経営者自身がこの問題に長い時間関わることによる時間的喪失が大きいことが一番、小規模な企業にとって大きな打撃になるわけでございますから、一段階目である程度先が見えている問題でございますから迅速に、とりわけ当事者の合意による紛争解決の道を、是非とも選択できるような仕組みにしていただくのが必要ではないか。多くの場合は当事者同士の合意による紛争解決を望む方の方が圧倒的に数としては多いと思われますので、その辺をよろしく御配慮いただきたいということでございます。

○伊藤座長 わかりました。御意見の趣旨はよく理解できました。野々山さん、お願いします。

○野々山理事長 私も二段階目の手続について簡易迅速な手続あるいは当事者の合意を旨とする手続を設けることについては賛意を表するものでありますけれども、これについて入口で事件をかなり限定するというのは、いかがなものかという意見を持っております。
 一段階目で主要な争点として一定の結論が出た後に、その結果を踏まえて和解で解決することはよくあることでございます。先ほど訴訟になる前に示談で解決することが多い場合もあるという御意見が坂本参事官からありましたけれども、やはり本件の場合ですと一段階目が出たから和解をしようというインセンティブが働くことは、十分あり得ると思います。そのときに和解の席が設けられて、そこである程度解決ができるということは勧められていいのではないかと思っています。そのために最初からそういう道を入口で閉じてしまう、いたずらにこの訴訟の対象を限定をするのはいかがなものかと思います。
 そこで和解できないものとか、あるいは簡易な手続ができないもの等については通常の訴訟に移行せざるを得ないと思います。それは一定の結論が出ていますから、その後、個人の関係でやることで、最初からばらばらと通常訴訟が起こるということよりは、簡易な手続でずっと迅速に紛争解決していくと考えます。

○伊藤座長 山口委員、お願いします。

○山口委員 私自身が経験した、意図的に二段階でやった裁判手続を3つほど御紹介したいと思います。1つは山一抵当証券です。2,000~3,000人ぐらい、トータル数十億円の抵当証券、これは山一證券が倒産したために返って来ない資金になったということで、最初は損害賠償請求手続だったんですけれども、山一證券が破産した後は破産手続の中で司法的に対応したわけです。責任を認めることが前提になった上で、いつも集団的な破産事件になりますと管財人と被害弁護団とで金額の折衝をするわけですけれども、ここでもめたことはほとんどございません。何百人、何千人あるいは何万人という集団的な損害賠償請求で、裁判所を間に挟んで被害弁護団と管財人あるいは管財人の後ろにいる破産会社の経理担当者といろいろ詰めるわけですが、ほとんど事実上の手続の中で要するに非訟手続と言ってもいいし、訴訟外での交渉でほぼ詰まっていく。この抵当証券の場合には裁判所の御意向もありまして、弁護士会の仲裁センターにあえて仲裁申立てをして、そこで公的な金額を確定しまして払っていただくという手続をいたしました。
 次に、これは集合訴訟にどの程度マッチするかどうかはっきりしないところもありますが、ワラントです。特殊な金融商品ですが、この集団的な損害賠償請求手続をしたことがございます。たしか原告は30~40人いましたけれども、これについては1年ほどの弁論を経た上で、一定程度支払うべきであろうという裁判所の判断がございまして、先ほど加納さんから説明がありました付調停になりました。調停で証券会社ごとに4つほどに野村証券グループ、大和証券グループ、日興証券グループということでグループに分けまして、それぞれの調停のグループで、これは実は過失相殺を何割問うかということで主婦か高齢者かサラリーマンか学歴がどうかということに沿って、それぞれのグループが各グループ10人足らずいましたけれども、それについて過失相殺の割合を、勿論金額の特定もそうですが、やりました。その際にはこの調停の場に具体的な販売担当者が来まして、その販売担当者から事実上審尋という形になりますが、事情を聞いて、その上で調停委員がこれは何割方はどうだということをずばりと言われまして、双方が基本的にそれを受け入れるという処理手続をいたしました。
 3番目は、この枠組みに合致するかどうか疑問のところもありますが、明らかに顕著に二段階でやった手続が中華航空機の墜落事故でございます。この場合には百何十名の遺族について、それぞれ中華航空の責任があるかないかの大論争をした上で、これはたしか2年ほどかかったと思いますが、それぞれの遺族について被害弁護団が、逸失利益あるいはその他の損害の事情を証明する資料を百何十名について提出いたしまして、その上で勿論被告側から、これはおかしいのではないかとか、収入の証明としては不十分ではないかという指摘を受けまして、裁判所の指導、指揮の下に百何十名についての損害額の確定手続をしていきました。これは結局判決になりましたので非訟事件的な手続でしたけれども、尋問を全くしないでそれぞれの資料を闘わせて、基本的に原告が資料を出して、それを被告側の事業者が問題点を指摘するという形でやりました。
 特に難しかったのは台湾人やフィリピン人の遺族がおりましたので、台湾やフィリピンの収入証明がこれで足りるのかどうか。あるいは逸失利益の計算の仕方がどうあるべきなのかということでは、グループとしての問題がありまして、これは一審では確定せずに控訴審で更にもんで、控訴審で和解となりましたけれども、そういうことがありました。
 私自身は先ほど来、議論があるように第二段階は簡易迅速を旨とするということで全く異論はありませんし、そうするべきだと思いますが、事案の性格によって多様な手続が考えられるので、余り枠はめをしないでお互いの工夫ができるような枠組み設定があればいいのかなと思います。

○伊藤座長 そういたしましたら、一段階目の判断が出て、当該事業者の責任ないし違法性を認めるという判断が出ていることを前提にいたしますと、二段階目の手続としてはそれが裁判所の判断による形をとるか、または合意による解決の形をとるかを問わず、簡易迅速な解決を図る。このことが消費者にとって、事業者の利益にとっても望ましいという判断に関しては、皆さんの共通認識があるように存じます。更にそのことを踏まえると、むしろ一段階目での和解といったことについても、十分検討する必要があるという御指摘もございました。
 そこで、ただいまの御議論を前提にして具体的な問題、二段階目の手続の在り方について御議論いただきたいと思いますので、よろしければ資料1-2「2.二段階目の簡易な手続の在り方について」を取り上げたいと存じます。

○黒沼委員 申し訳ございません。発言をし忘れていました。4ページのところで「一段階目の手続追行主体等が対象消費者の取りまとめることとすることが考えられる」という点について、発言させていただきたいと思います。
 このとりまとめの意味にもよるのですけれども、例えば一段階目の手続追行主体が、対象消費者のうち誰が請求権を持っているか、あるいはその者が本当に該当するような時期に契約をしたかどうかということを自ら判断して、それ以外のものは受けつけない。それ以外のものは第二段階目の手続に入っていけないということになりますと、少し問題かなと思っています。ですから、とりまとめることはいいのですが、第一段階目の手続追行主体に受け付けてもらえなかった人も、第一段階目の判決を利用した手続に入っていけるような仕組みにしていただければと思います。

○伊藤座長 わかりました。今の御指摘の問題は当然考えなければいけない問題かと思います。ここで基本的なとりまとめることにするというのは、考え方の方向を提示しているだけでございますので、ただいまの黒沼委員の御発言の趣旨も踏まえまして、具体的な二段階目の手続の在り方についての審議をお願いしたいと思います。この点についても資料を作成してもらっておりますので、加納さんから説明をお願いいたします。

○加納企画官 資料1の17ページでございます。二段階目の簡易な手続の在り方ということで「(1)手続の枠組みと論点」で全体のイメージについて御説明をしております。
 18~19ページについては(2)としまして主体の問題、(3)としまして裁判所の問題と分けさせていただきましたので、一括して御説明をさせていただければと思います。
 「(1)手続の枠組みと論点」でございますが、マル1に書かせていただいておりますけれども、対象消費者の個々の請求権の存否については、裁判外紛争解決手続の活用や手続追行主体と相手方事業者の交渉により解決することもあり得るが、裁判所における簡易な手続を新たに設ける場合には、以下のような手続が考えられるのではないかということで、マル2に書かせていただいております。
 「マル2手続の枠組みのイメージと論点」ということで(i)からずっと書いてございますが、これにつきまして20ページに参考5ということで図を書いております。(i)(ii)ということで一段階目の判決で通知・公告するということでありまして、「(iii)二段階目の手続の申立て」から二段階目に入ってくるという太線の枠が、二段階目の手続ではないかと思っておりますが、二段階目の手続を申し立てて、その次に個別争点を効率的に処理するための審理をする。基本的には当事者の合意による解決を促していくということで、ここでかなりの割合については解決を図っていくことができればよいのではないかと思いますけれども、合意に至らない場合には裁判所による決定という形にする。異議が申し立てられない場合にはそれで手続が終了することとし、異議が申し立てられた場合には通常の司法手続へ移行することとしております。通常の訴訟手続による審理を踏まえまして判決という形でやればどうかと思っております。
 それぞれ点線のところで、例えば二段階目の手続の申立てにつきまして右上に手続の性質でありますとか、一段階目の手続との連続性でありますとか、こういった事柄について検討すべき課題があるのではないかと思われるところでありまして、論点出しという形で書いてみたものでございます。これら以外にも論点はたくさんあるかと思いますけれども、大きなところとしてはこんな感じではないかと思ってございますので、論点がほかにあるのではないかという形で御意見等をいただければと思います。
 大体こういう手続になるのではないかというものでありますが、本文17ページに戻っていただきまして、(i)からずっと書いているものはそういうものであります。この中で(iv)でございますけれども、個別争点を効率的に処理するための審理、当事者の合意による解決の促進ということで、どういうものがあるかということにつきましては、これに決め打ちをしているということではございませんが、例えば審理の簡素化については証拠方法の制限を設けるであるとか、当事者の合意による解決を促進ということについては主張整理の在り方について一定の規定を設けるとか、調停の活用や和解の規律などに関する規定を設けることが考えられるのではないかということで、お示しをしております。
 以上が二段階目の手続の大枠であります。
 続きまして18ページ(2)でありますけれども、主体という形で取り上げております。マル1に書いてございますが、二段階目の手続におきましては個々の対象消費者が個別に主張立証を行うことよりも、1つの手続追行主体が授権を受けて主張・立証をまとめて行う方が、多数の消費者に関する審理を効率的な行い、手続を円滑に進めることができるのではないか。対象消費者にとっても手続追行主体に委ねることができる方が、便宜ではないかと考えられるところであります。
 二段階目の手続において簡易・迅速な解決を図るという観点からは、当事者の合意による解決を促進する必要があると思われるところでありますけれども、手続追行主体が請求をとりまとめるということで紛争全体の規模が把握できるとともに、交渉窓口が一本化されるということでありますので、相手方にとっても非常にメリットがあるのではないかと思われるところでありまして、こうした当事者の合意による解決が促進されるのではないかと思われるところであります。
 マル2ですが、そこで事案を熟知している一段階目の手続における手続追行主体が、対象消費者から授権を受けて二段階目の手続を追行するなど、極力、一段階目の手続追行主体が対象消費者の請求権をとりまとめることが考えられるところでございます。
 ただ、先ほど黒沼先生から御意見があったかと思いますけれども、手続に加入したいと申し出た消費者について、対象消費者には含まれないのではないかと手続追行主体が考える場合もあるのではないかと思われるところでありまして、そうした場合などの取扱いについては検討することも考えられるのではないかと思われます。
 マル3でありますけれども、一段階目の手続追行主体が二段階目で対象消費者の請求をとりまとめる。とりまとめるとはどういうことなんですかということなんですが、1つの考え方としては任意的訴訟担当とすることが考えられるのではないかと思われます。この任意的訴訟担当につきましては21ページ以下の参考6でありまして、意義や類例を書いております。
 意義に書いておりますけれども、訴訟担当というものにつきましては訴訟物たる権利関係について本案判決を求め、または求められる訴訟上の地位をいうということでございまして、2段落目に書いておりますが、当事者適格というのは基本的には訴訟物である権利関係の主体に求めるのが原則でありますけれども、権利義務の主体以外の第三者が主体に代わって当事者適格を認められる場合があり、訴訟担当はそのような場合であるということでありまして、訴訟担当には法の規定に基づいて担当者に当事者適格認められる法定訴訟担当と、権利関係の主体が訴訟追行権を第三者に授与し、第三者がその授権に基づいて当事者適格を取得する任意的訴訟担当とがあるというものでございます。
 任意的訴訟担当につきましては2.でこういった例があるということで書かせていただいております。今回は法律で書けば法律で規定した任意的訴訟担当になるということであうと思いますけれども、3.におきましては法律で認められたもの以外にどういう場合に任意的訴訟が認められるかということで、最高裁の判決でありますとか、学説における判例の理解ということで御紹介をしております。
 本文に戻っていただきまして18ページでありますけれども、こういう任意的訴訟担当が考えられるのではないかと書いておりまして、マル3の2段落目ですが、一段階目の手続における手続追行主体について、多数の消費者の利益の擁護を図るため、共通争点を確認するという役割を果たすにふさわしい存在として認められる者を、手続追行主体とすることが考えられるところでございますけれども、こうした主体であれば二段階目で対象消費者の請求権をとりまとめることとしても、対象消費者の利益を害するとは言えず、弁護士代理及び訴訟信託の原則の潜脱があれば弊害になるということであろうと思いますが、そういうものがないと考えられますので、手続追行主体が授権を受けるということで合理性もあるのではないかと書いております。
 19ページ(3)はどこの裁判所でやるかということでございますが、マル1に書いておりますけれども、一段階目と二段階目の手続の関係はどうかというのは更に検討する必要があるということで、一定程度の連続性はあるのではないかと思われるところでありまして、そういう観点からいたしますと、二段階目の手続も一段階目の手続の受訴裁判所が引き続き行うというのが自然であるとも考えられるとしております。
 マル2ですが、土地管轄の定めにつきましてはここに書いておりますように、裁判所に合理的に配分するという司法制度上の要請、申立人あるいは相手方の便宜などを踏まえて定められると考えられるところでありまして、こういった観点からしますと個々の対象消費者の同種請求が、多数の裁判所に係属するよりも1か所に集中させる方が、司法制度全体としては効率的な処理を行うことができると考えられるところでありますし、手続追行主体も相手方も1か所に集中させる方が、手続追行主体に伴う負担も軽減されるであろうということであります。
 対象者自身は全国に散在していることもあり得ると思いますけれども、申立てを手続追行主体がとりまとめるということであれば、ある程度不都合は解消されるのではないかと思われるところでありまして、ただ、そうすることにより当事者の合意による解決が促進されると思われるところでありますので、対象消費者にとっても相手方にとっても利益になるのではないかと考えてございまして、マル3でありますが、基本的には一段階目の受訴裁判所が二段階目の手続もやるというのがよいのではないかと考えられるところであります。この辺について御意見をちょうだいできればと思います。
 二段階目の手続の論点につきましては20ページの参考5に書かせていただきましたとおり、それ以外にも幾つかの論点があると思います。とりわけ審理の簡素化であるとか当事者の合意による解決を促進するための規律の在り方は重要であろうかと思いますが、この点については次回以降、また資料としてお示しできればと考えておりまして、今回は(2)、(3)という形で主体と裁判所の論点という形で提示させていただいております。
 2.につきましては私の方からは以上でございます。

○伊藤座長 ただいまの説明は(1)ないし(3)の3つの部分に分かれております。相互に関連するところでは勿論ありますけれども、ここでの審議の順序としては、それぞれについての意見交換をお願いするという形で進みたいと存じます。そこでまず「(1)手続の枠組みと論点」に関しまして今、御説明があった20ページ参考5の流れ図などを適宜御参照いただきながら、御質問、御意見等をお願いできればと存じます。

○三木浩一座長代理 事務局のイメージでいきますと、一段階目の判決があった後に二段階目の手続の申立てというものが原則として想定されています。これは要するに2つの訴訟があるという前提で、その間の連続性をどうするかという問題意識で組まれています。そういう考え方で制度をつくることもあり得るでしょうけれども、もともと1個の訴訟の共通争点と個別争点ですので、果たして二段階目の手続の申立てというものを必要とするのかどうか自体も、検討してみればいいだろうと思います。
 すなわち、例えばですが、当事者から異議がなければ当然に二段階目に移行するという制度であるとか、ほかの仕組みも考えられるかもしれません。いずれにしても、考え方としてこれは事務局も言っていたように、一段階目と二段階目が違う裁判所というのは、ややこの制度をつくる前提としては考えにくいところで、例えこの事務局案で言うように申立てのようなものがあり、要するに第一の訴訟と第二の訴訟みたいにつくるとしても、そこは同じ裁判所というのが恐らく望ましいんだろうと思います。
 後の論点とも関係してくるので、そちらで述べる部分も後でありますでしょうが、(1)の枠組みを考えるに当たっても、二段階目で何を主としてやるのかというのをある程度想定しないと、それが簡易な手続であるにしても、それが判断手続なのか、それとも裁判所による和解あるいは調停委員会による調停も一種の和解ですが、それなのか。勿論その両方の制度を組むことは可能なんですけれども、どちらをメインストリームとして考えるかということは多少関係してくるかなという気がします。
 前半の議論に少し戻る部分もあるんですが、二段階目を簡易な裁判手続で組むということ自体は、それがうまく仕組めれば、そしてそれに見合う事件がこの制度の対象に主としてなるのであれば、それは望ましいことだろうと思いますけれども、簡易な手続というものについては幾つか踏まえておかなければいけない点があろうかと思います。特に訴訟の御専門でない方がたくさんいらっしゃるので、簡易な手続と言うと簡易で終わってしまう。それならハッピーなんですが、現在ある制度もそうですけれども、簡易な手続というのは他方で当事者、それは原告、被告双方ですけれども、その手続保障を犠牲にするという面がありますので、制度の多くと言っていいか、制度の中には簡易な手続の結果について当事者のどちらか一方あるいは双方に不満があれば、異議を述べれば通常訴訟に移行することが保障されているという制度が少なくありません。
 簡易な手続と言っても、そういったものを用意しないと手続保障としては持たない、あるいは憲法的な問題が生じることになるとしたら、簡易な手続と言っても結局は異議によって通常訴訟に移行して、かえって時間がかかるということになりかねませんので、簡易な手続というものが我々が議論している二段階目として、果たしてどういう形で組めるのか。想定される事件との関係で例えば余りうまく組めないとか、通常訴訟に移行する事件がある程度生じてくるということが想定される場合、二段階目のメインストリームは調停や和解ということを想定せざるを得ない、あるいは想定する方が望ましいのかもしれないということになります。
 二段階目の調停が和解の場合には、一段階目で手続を追行した主体が二段階目の調停や和解もやることも考えられますし、調停や和解というのは少し違った当事者のあれが絡まってきたり、被害者にしてみれば自分たちの中から自分たちの痛みを共有している者を、和解の代表者にしたいということだってあり得るかもしれませんので、一段階目と二段階目の連続性ということについても、その二段階目が判断手続なのか和解的な手続なのかということは、多少関係してくるかなと。総論的な話ではあります。各論についてはまた述べたいと思います。

○伊藤座長 二段階目の手続は、先ほどの議論にもございましたとおり、合意による解決と、裁判所の判断による解決という2つの側面がございまして、合意の方は比較的問題がないようには思いますけれども、簡易な判断の手続となりますと、今、三木委員の御指摘のように、それについて不満や不服、これは両方の側でありうるかと思いますが、それをどのように解決する手段を用意しておくのか、それが余りにも重たくなると、かえって簡易な手続としての意味がなくなってしまうのではないかという問題もあろうかと思います。中村委員、どうぞ。

○中村委員 ただいま三木先生のお話を聞きながらも思っていたんですが、前段の議論でいろんなものについて、この仕組みが使えるようになるといいのではないかという御意見もありまして、お気持ちとしてはわかるんですけれども、そもそもこの議論といいますのは消費者の訴訟に載ってこないような少額多数の被害を救っていこう、上がってこないものについて乗せていこうことで始まっていると思うんです。そうしたときに、ここで余りにもいろんなものを取り込んでいこうとすると、本来の趣旨から若干違ってくるのではないかという感じがしております。
 少額多数であるからこそ、簡易な形で解決をするということもあっていいのではないかということでございまして、例えば人身損害、先ほど飛行機の事例がございましたけれども、そういったものにまでこういう形で取り組もうとすると、実際には私の被害は違うんだ、いろんな形で解決したいということも出てくるわけでございまして、そうなってきますと、そもそもの普通の損害賠償の事件でやるべき事柄なのではないかと考えております。そういうことなので、今、議論をしています集団訴訟につきましては、少額多数ということを意識しながら一段階目の中で損害というものが、ほぼ画一的な形で解決ができる事案ということを前提というか、そもそもそういう設計にして、二段階目になってみたら大変な事件になってしまったというようなことについては、この手続に入れるというのはいかがなものなのかなと思っています。
 以上でございます。

○伊藤座長 先ほど申し上げたことの繰り返しにもなりますけれども、対象事件をどうとらえるかは、この調査会の冒頭からいろいろ御意見があるところで、まだその辺りについての共通の認識が形成されておりませんので、どうしても今のような個別の問題に対する影響が出てこざるを得ないかと思います。とはいえ、その前提をここで解決してしまうというのは難しいところですので、もう少し自由に御意見をちょうだいできればと存じます。朝倉さん、どうぞ。

○朝倉課長 総論と各論とが両方混ざったコメントになるかもしれませんが、二段階目を考えるときに、おそらく基本的にはもともと少額多数の消費者被害というものを少なくともターゲットにしていることについては、どなたも異論がないところかと思います。そうするとそのような方々がなかなか訴訟を起こせないという問題をクリアしつつ、事業者側もまとめて対応できることで何らかの解決を図り、裁判所も多数のものをきちんと処理できることが大事ではないかと思っております。
 そういう意味で、例えば対象消費者が20人、30人のものであれば、今の制度と余り変わらないものをつくっても構わないということになるのかもしれませんが、数万人単位のものを念頭に置いて、それでも機能するというものをきちんとつくっておく必要があろうかと思います。
 そのときには、先ほど何人かの委員がおっしゃられたように、少なくとも少額多数の被害であれば短期間のうちに解決できるようにしておくことが、消費者側にとっても事業者側にとっても大事なことでしょうし、どうなるかわからない状態で消費者に申出を求めることは、消費者側にとって非常に大変だと思うところです。
 その意味で、一段階目で話合いによる解決ができれば、それはそれでいいわけですけれども、一段階目で話合いができずに判決となり、そして裁判所が関与しないと解決ができないという段階のものとして二段階目を考えるとするならば、それは事務局が考えているように簡易な手続というものをつくる必要があるというのは、そのとおりだと思います。
 そのときの考え方ですが、争いがない人たちというのは先ほど大高委員の話にもありましたけれども、対象消費者が2万人いた場合に、例えば半分ぐらいの人が争いがないとします。争いがあるのは、大まかに言うと2つあると思います。権利者であるかどうかという問題と、金額がどうか。そうしますと、まずは争いがあるかないかを整理して、争いのない人についてはぱっと解決してしまえばいいだろうと思うわけです。そうしますと早く終わります。更に、山口委員のお話にもありましたが、事案によっては裁判所がグループ分けをして何らかの見解を示したら、それによって解決するものもあるだろうと思いますから、裁判所が何について争いがあるのかということを把握し、その点について見解を示すことで終わる、当事者が納得するという事案も、簡易な手続の2つ目の段階としてあるだろうと思います。それでも納得しないものについては、先ほどの三木座長代理のお話にもありましたが、もともと憲法上訴訟で争うことができるわけですから、それは訴訟でやらざるを得ない。そういう意味でそういった実質的には3段階の、最初の二段階目までが簡易な手続だと思いますが、そういうものをつくるのがいいのではないかと思うところであります。
 前から申し上げておりますけれども、現行制度で一番似ているのは破産の査定の手続ではないかと思っておりまして、構造はちょっと違うのですが、今、言ったような基本的な考え方、届出をし、争いがあるかどうかを確認して、争いのないものについてはそれで終わりにし、争いがあるものについて裁判所が査定という名前の下に見解を示し、その段階で終わらないものについては訴訟手続に行くという大きな流れになっているのかなと思いました。
 その場合に、三木座長代理のおっしゃるように、最終的に争いになるのであれば、初めから訴訟に行った方がいいのではないかという事件も中にはあるとは思うのですが、仮に対象消費者が2万人いた場合に初めから訴訟ということになりますと、早く終わる人についても全部引っ張られてしまうことになりますし、2万人について応訴するというのは事業者にとっても大変ですし、2万人分の訴訟を審理するというのは裁判所も非常に大変なことでございます。そういう意味で、例えば、簡易な手続で最初の一段階目で6割終わり、裁判所が所見を示したら何割か終わり、それで残るものが事案によって1割になるのか、5%になるのか、2割になるのかはわかりませんが、残りを訴訟手続で審理する。もしくは訴訟に行かないで全部終わるという幸福な事案もあるでしょうし、訴訟手続に行ってしまったものについては、そこにエネルギーを集中するという手続にしてはどうかと思うところであります。
 そういう意味で事務局に出していただいている20ページの参考5のイメージというのは、大枠においては異論ないところでございます。

○伊藤座長 山本委員、お願いします。

○山本委員 今の朝倉さんの御発言は、私も基本的にはそういうことかなと思っています。三木座長代理が言われたように、大半の被告が全うな事業者であるような場合においては、責任原因が確定されれば後は基本的には個別の和解で、そもそも第二段階には来ないで和解で終わることが多いのではないかと思いますし、第二段階目に来たとしても、何らかの裁判所の和解であったり調停であったりという合意によって、解決できることが多いのではないかと思います。
 ただ、その中にはどうしてもこの消費者個人は被害者ではないのではないかとか、やはりこの額には納得できないということは勿論残るんだろうと思いますし、そこはかなり絞られたものに対して裁判がなされる。それに対して更に一旦裁判がなされて、異議申立てで通常訴訟に移行するというのは更にその中のほんの一部。それが普通のイメージなのかなと思っています。
 問題だと思うのは、被告側がそういう合理的な対応をせずに、とにかく自分は話し合いにも応じないし、裁判所が決定したとしても、それに異議を申し立てて全部訴訟でやってもらうという不合理な態度に出、それも憲法の裁判を受ける権利からすれば、それを制約するというのはなかなか難しい。例えば調停がなされた場合にも和解に応じるような義務を課す、あるいは一旦決定がなされた後、不合理な理由によって異議を申し立てられないという制度をつくる。幾つかのところでそういう制度をつくろうと試みたことは、例えば特定調停の制度について、不合理な調停にかわる決定に対して異議を述べるような業者に対して、そういう不合理なものはできないようにしようとか、いろんなことを考えられたことはあるかと思いますが、いずれも憲法上の問題があって、それをクリアすることは極めて難しいというか、不可能に近いということだろうと思います。したがって、それは訴訟にいかざるを得ないことになるんだろうと思います。
 ただ、そういうことが起こらないようにするために、どういうことを考えていくのかということは、直接それを制約することは難しいだろうと思いますが、間接的にそういうことが起こらないようにどういうことを考えたらいいのかということは、考えていく必要があるのかなと思っております。

○伊藤座長 黒沼委員、お願いします。

○黒沼委員 二段階目の訴訟で、どのように簡易迅速な手続を踏むのかというのが1つ問題なのですけれども、例えば証拠方法を制限して書証に限るとした場合には、書証がない人は簡素な手続では保護されない可能性があるわけです。そういうときに異議申立てによって通常訴訟への移行の道を開いておくことが必要だと思うのですが、先ほどの先走った発言とも関係してきてしまうのですけれども、異議申立てを手続追行主体がとりまとめるというときに、例えば今のような書証がないために簡素な手続ではだめだったという人については、異議をしてくれるんでしょうか。もししてくれないとしたら、個別に異議を申し立てる道を残しておかないとまずいのではないかと思うのですけれども、この点はどう考えたらよいのでしょうか。

○伊藤座長 そこはどうでしょうか。加納さんに事務局の考え方を説明していただきましょう。

○加納企画官 例えば書証に限るかどうかというところは、事務局として特にそうすべきだと思っているわけではございませんので、他の例があるということで、そういうものが参考になるというふうに書かせていただいたに過ぎません。
 対象消費者に書証も何もないという場合にどうするかということについては、また別途そういった場合でも、例えば対象消費者かどうかを確定する資料を何らかの形で、例えば事業者から出してもらうとか、別途の手続的な手当を設けることは考えられるのではないかと思いますので、そこのところにつきましては今回論点としてはお示ししておりませんけれども、また次回以降お示しできればと考えてございます。
 黒沼委員が最初に申し上げた、私は対象消費者だと思うんだけれども、手続追行主体はあなたは違うのではないですかと言ってしまった場合はどうかという点については、重要な論点ではないかと思われるところでありまして、その点18ページ(2)マル2の2段落目で少し触れさせていただいておりますが、これについてどうするかというのは、まだ事務局としてもこうだという枠組みまで考えているところではございませんので、ここも検討した上でお示しできればと思いますけれども、今の御発言では例えばそういうふうに対象消費者と手続追行主体の間で、紛争があったような場合にどうするかということだと思いますので、その点についても検討させていただければと思います。

○伊藤座長 異議申立てのとりまとめについてのイメージはどうでしょうか。ここでは、手続追行主体がとりまとめることとするかどうかという問題の所在が指摘されていますが、黒沼さんの御意見は、先ほどからの議論によると、異議申立てはむしろ個別の消費者が行うと受け止められるようですけれども、考え方としてはいかがでしょうか。

○加納企画官 その点につきましても重要なポイントではないかと思うわけですけれども、基本的には事務局としましては極力手続追行主体がとりまとめて、申立てといいますか、二段階目に入るための手続をとるというのがよいのではないかと考えておりますが、個別にそういう手続を活用するということを全く認めないかどうかについては、別途検討させていただければと思います。

○伊藤座長 これもまた先の論点になりますから、いずれにしてもある程度の手続の枠組みのイメージがかたまったところで、立ち入って検討する機会があればと思います。三木委員どうぞ。

○三木浩一座長代理 議論が混乱しがちなのは、安易な手続と和解とか調停による手続の関係が全く別なものではないということです。
 先ほど朝倉さんが倒産手続の査定のイメージでお話になって、裁判所が査定の判断を下す。それで異議がなければそのままその内容を主として大勢の人はそれでおさまるでしょうし、そうでない人は異議を述べて訴訟に移行する。前者の異議がなくてそのままおさまるというのは、一種の和解で終わっているということで、私が言っている和解と変わらないわけです。
 他方で私が以前から言っている、和解で終わらせるのがメインのストリームになるべきだと言っている意味ですが、私も東京地裁の調停委員を今となっては長年やっているんですけれども、事件にも勿論よりますが、多くの事件では調停委員会なり裁判所なりが査定と呼びはしないですけれども、一種の査定的な判断をしないと、なかなか和解はまとめられないんです。なので、和解中心といってもその種の判断を示してあげることが必要な事件については、やはり査定というようなものに近いことをするわけです。その結果として和解が成立するということですから、簡易な手続をとるというのは和解的な処理が二段階目で行われるというのと矛盾する概念ではないわけです。反対に簡易な手続をとって、それが最終的に和解で終わらないということは、基本的には異議が述べられて訴訟に移行するということですから、結局二段階目で少なくとも私の認識では、朝倉さんがしゃべっていることと私がしゃべっていることは、違うことを言っているように聞こえた方もいらっしゃるかもしれませんけれども、かなりの程度ダブっている。今うなずいておられますから、そうだと思うんですが、そういうことなので、その辺は議論の誤解があってはいけないと思いましたので申し上げました。

○伊藤座長 関連して朝倉さんからお願いします。

○朝倉課長 先ほど私は、三木委員がおっしゃった合意によって解決するということを、手続的に考えた場合にどうなるかということを言ってみたつもりなので、基本的な考え方は同じです。
 先ほど事務局が簡易な手続には3類型あり3つ目の類型が訴訟手続を簡易にするものであると整理されましたが、そのような手続を簡易な手続として考えているわけではございません。最終的に当事者が異議を述べているというのは合意をしないということですから、当事者の合意による解決をいかにシステム化していくかということでございます。
 私が1つ大事だと思いますのは、二段階目にどのような手続を選択するかというところで当事者が争うようになってしまいますと、入口で時間がかかってしまいますので、そこのところはできるだけシステム化しておくのがいいのではないか。特に少額多数の被害ということを念頭に置いて、それが合理的に解決される方法というものをきちんと置いておくということが大事なのではないかと思っているところです。

○伊藤座長 大高委員、お願いいたします。

○大高委員 既にこれは何人かの委員からも述べられて、重なるところでありますけれども、私も基本的には20ページに書いてある参考5の二段階目の手続の枠組みのイメージについては、大枠では賛同するものです。これまでも議論に出ておりますように、今回やろうとしている制度の最初に念頭に置くべきものは少額多数であるとか、もしくは一定共通争点が大変な事件であって、一定の解決のメリットがある事件となるんでしょうけれども、少なくとも第二段階を簡易迅速に救済していくということを念頭に置いていくということはあるんだろうと思います。
 ただ、どんなに個別争点がシンプルな事件であっても、当然争いがある人というのは出てくるわけで、それは勿論事業者側の方が争う場合もあれば、消費者側が納得をしないという場合もありますので、どんなシンプルと呼ばれる事件の類型であっても、通常訴訟に移行して、とことん納得いくまで争うというルートは残さざるを得ないと考えると、やはりシンプルな事件を念頭に置きつつも、参考5のようなスキームを考えていくしかないんだろうなと思っております。
 そうだとすると、こういうような形で簡易迅速な、最終的には裁判所が一定の決定なり判断を出しつつ、通常訴訟にも移行できるというシステムをとるのであれば、いわゆるこれまで出てきたような個別争点が抽象的にはヘビーであるような事件についても、十分この枠組みの中に乗せていけるのではないかというのが私のイメージです。勿論これまで、先ほど朝倉課長からあったように、被害者のタイプを3つの類型に分けていただいて非常にわかりやすいと思いますし、その3つのタイプ、要するに決定までの段階で終わる人とそうでない人の割合というのは、事件の類型によってほぼ99%簡易なルートで解決する事件もあれば、その割合が残念ながら7割、6割と下がってくる事件も勿論あるのかもしれませんけれども、20ページに書いてある参考5の枠組み自体は、一定の汎用性があるスキームではないかというイメージを持っているところです。
 論点をここでは出していただいているんですが、17ページで書いていただいている論点が論点のすべてではないという御趣旨で、ほかにも多々あるんだろうと思いますが、何点か気づいた点を申し上げておきたいと思います。
 1つはA案をとるかB案をとるかによって、要するにオプト・アウトにするのかそうでないのかで変わってくるところもあると思うんですが、被害者が届出の期限をどのように設定して、かつ、期限を超えた人をどう取り扱っていくのかというのは、考えていくべき議論の1つかなと思っています。
 これは今日の(2)の議論にも関係してくるところですけれども、第一段階もしくは第二段階目の手続追行主体、第二段階でイニシアチブをとる主体について、どのようにそのインセンティブを確保していくか。端的に言えば費用の償還といった問題は非常に重要な問題になっています。その点をどう考えるのか。この辺りはやはり論点として非常に重要なものではないか。ほかにも多々あると思いますが、一応私の気づいたところということで御指摘をしておきたいと思います。
 以上です。

○伊藤座長 中村委員、どうぞ。

○中村委員 先ほど山本委員がおっしゃられたことに若干コメントしたいんですけれども、合理的な事業者は和解をするだろうという御意見がございまして、まず一般的な日本の事業者は、そもそも自分たちに責任があり、申し出られた損害の額が合理的なものであれば、訴訟というのはレピュテーションの問題もありますし、費用の問題も相当かかりますので、訴訟にならないで解決すると思うんです。それがどうしても訴訟になってしまう案件というのは、責任のところで見解が一致しない場合もありますし、あるいは立証の問題で証拠をいただけないこともありますし、損害の金額が事業者が考えているものとかけ離れたような申し出があるといった場合に訴訟になってくるということでございますので、少なくとも多数という形になってきたときに、多くの消費者の方については和解ということで済むということだと思うんですが、必ずしも事業者が和解にできるということではないということは御理解をいただきたいと思います。

○伊藤座長 三木委員、どうぞ。

○三木浩一座長代理 3回目の発言で申し訳ございませんけれども、今の中村委員の御発言にも関連しますし、その前の山本委員の御発言にも関連する点で若干述べたいと思います。
 先ほどから、あるいは以前から再三再四言っていますように、二段階目の手続はそれを簡易な手続と呼ぼうが何と呼ぼうが、最終的には和解で終えるのが望ましいということは恐らく争いはないんですが、そうすると、どうやって和解を効果的に調達するかという仕組みを考えておかないと、勿論、今の制度があって裁判所はいつでも和解を監視できるわけですし、当事者だって自発的にいつでも和解できるわけですから、それを自然の流れに任せたのであれば制度をつくる意味がないわけです。
 繰り返しますが、和解と言っても当事者が自発的に話し合って、裁判所がやさしく慈父のように見守るという和解は考えられないので、基本的には裁判所なり、後でちょっと申しますけれども、それは調停委員会を使う手も勿論ありますから、それがある程度役割を果たさなければいけないような仕組みというのは当然考えられるわけです。
 基本的には日本の裁判所の和解なり裁判所における調停等はもともとそうですが、和解と言っても一応主催者が何か判断を示して、それを当事者が判決と違って強制的には押しつけられない、飲むか飲まないかの判断をする。あるいは案を示して、その案についていろいろ意見が出て、第二案、第三案を出していって合意に達するというので、何か案が出るわけです。あるいは先ほどの朝倉さんの言葉で言うと査定が出るわけです。
 当然、裁判所なり調停委員会なりはそれが望ましいと思って出すわけですが、一方、当事者が裁判所なり調停委員会の目から見れば、不合理な形で飲まないということは当然あるわけです。そのときに先ほど山本委員がおっしゃったように、それを押し付けるということは恐らく無理だと思うんです。例え不合理であってもそれを飲まない。徹底的に訴訟なり何なりで争うという自由は保障されているんだと思います。なので、そういう制度はつくりたくてもつくれない。
 ただ、諸外国の制度で見ていって、今から申し上げるのは1つの参考であって、これが必ず唯一望ましいという意味ではありませんけれども、たしかカナダのブリティッシュコロンビアにあったかと思います。記憶がはっきりしませんので違っていれば申し訳ないですが、調停案のようなものが出て、それを例えば事業者の側が括弧つきですけれども、不合理な理由で蹴る。それが訴訟に移行して、結果的には調停案と同じような判決が出る。要するに判決が出たその内容としては、調停案を蹴ったことが不合理であるということが明らかになるような形で判決が出るという場合には、そのことによって相手方当事者、今の例で言うと原告の側は、よけいな手間と費用を裁判でかけさせられたわけですから、それに見合う出費プラスαを負担させるという制度はたしか現に存在します。
 それはインセンティブとして和解の段階で翻って不合理な理由で蹴ると、後でそういう形で合理的なサンクションが来るということで、無茶な和解の蹴り方はできなくなる。あるいは蹴るならそのリスクを覚悟しろという制度があったりしまして、繰り返しますけれども、その制度が唯一望ましいということを申し上げているのではないですが、いずれにしても我々が二段階目の和解なり合意による解決を考える場合には、それを効果的に推進するための制度的な担保も併せて考える必要があろうということであります。

○伊藤座長 山本委員、どうぞ。

○山本委員 私も今の三木座長代理の提案は、私の理解している限りでは英米法の国においてはかなり一般的にADRを促進するとして、そういう制度があると理解しておりますが、いずれにしても訴訟費用等を使って合理的な方向にコントロールするということは、十分在り得るべき選択肢かなと思っております。

○伊藤座長 (2)、(3)の論点もありますので一応先に進みたいと思いますが、ここで構想している手続の対象となる典型的な紛争、つまり少額多数の被害者が想定されるような紛争に関して言うと、事務局から説明があったような意味での簡易な手続、その簡易な手続というのはかなり大義的な概念ですけれども、当事者間の合意形成を図りつつ、場合によっては裁判所が判断を示して、当事者がその判断に服するという形で解決されることが期待されますし、裁判所の判断に不服がある当事者に対しては、それに対して異議を言うとか、あるいは通常の訴訟で解決を求めるという道を残すという枠組みに関しては、それほど御異論がないように思います。
 勿論手続の細部に入りますと、先ほど大高委員から御発言があったような、例えば届出の期限をどうするかとかという問題がございますし、また、個別争点の比重が大きいような紛争類型については、それをこの手続の適用範囲に含めるかどうかということになりますと、なおいろいろ御意見があるところかと思います。
 以上のような集約で、皆様方の議論の内容と大きくずれていないのであれば、次の(2)の二段階目の手続における手続追行主体に対して、いわゆるとりまとめ的な役割を期待するかということで、これは先ほど黒沼委員からも御指摘がございまして、いろんな御意見があるところかと思いますので、こちらについての審議をお願いしたいと存じます。山口委員、どうぞ。

○山口委員 ここがとても深刻な問題でありまして、2つ問題があるんです。1つは第一段階で苦労した訴訟主体。苦労した、あるいは実費がかかった場合に第二段階の人はその費用負担をどうするんだろうかという点。実際の裁判の手続の中では非常に重要な意味が出てくるのではないかと思うんです。いわゆるフリーライド問題です。要するに第一段階で随分苦労したかもしれないが、それは知らないということで、グループ関係なしに別のグループに乗っかるというような場合にどうするのかということがございます。黒沼先生から先ほども御指摘がありましたが、私は原則としては第一段階で汗をかいた訴訟主体がとりまとめるのが原則とするのが、合理的ではないかと思うんです。
 勿論、あのグループは嫌いだから自分は独自にやりたいという場合には、これは独自の訴訟手続でなさればいいわけです。勿論、第一段階での責任があるという判決は、社会的には既に仮に最高裁まで確定していれば誰でも援用できるわけですから、この集合訴訟の中でやらなくても別の類型でやることは防ぎようがないわけですから、第一段階で汗をかいた訴訟主体が、勿論訴訟主体が了解する場合は別ですけれども、そうでない限りは私は原則としてとりまとめも、第一段階で汗をかいた主体がやるということがいいのではないか。
 もう一つ理由がございまして、仮に第一段階の責任があるという判断が確定した場合に、悪質な事業者がテレビ宣伝がうまいような法律事務所と提携をして、こういう第一段階の判断が確定しました、うちで安くとりまとめますからいらっしゃいと言ってまとめたという場合、第一段階で汗をかいた訴訟主体はどうなるんだろうか。あるいは非常に不当な第二段階での出来レースの和解をどうやって防げるんだろうかということを考えますと、この訴訟主体をどうするかというのは非常に微妙な問題が出てくると思います。
 以上です。

○伊藤座長 第一段階、第二段階という手続を仕組んで、それが合理的に機能するためには第一段階、第二段階を通じて、手続追行主体が個々の消費者請求権についても、説明の仕方は先ほど加納さんからあったように、一様ではないかと思いますが、それはともかくとして、とりまとめるという仕組みを設けることが必要なのではないかという御意見のように承りましたが、磯辺委員、お願いします。

○磯辺委員 二段階目の簡易な手続の範囲においては、第一段階目の手続追行主体が引き続き手続追行主体としてとりまとめていくということが、事案をよく知っているということもありますし、それまでの被害者の実情等も把握していることもあると思いますので、適当かと思います。
 ただ、その後更に簡易な手続の中でおさまらずに異議申立てをされて、二段階目の手続で通常の訴訟手続に移行するという場合には、これは多分一段階目の手続追行主体にとっても、想定をしていなかったような論点などが新たに出てくることもあるかと思いますので、その点については必ずしも一段階目の手続追行主体がとりまとめるというふうには、しなくてもいいのではないかと思います。
 併せて先ほどの論点についてですが、これは専門家の方々の中では当たり前のことなのかもしれないんですけれども、簡易な手続という場合に手続費用が通常の訴訟で行うよりも非常に安いということで、簡易な手続を選ぶことに被害者側にとってメリットが感じられるということが必要です。手続費用の面についても御検討をお願いします。また、先ほど大高委員もおっしゃいましたが、手続追行主体が何らかの形で費用が回収できるという仕組みもビルトインしないと、今の差止め請求訴訟のように全部持出してやるということになると持続的な制度となりませんので、その点も是非御検討お願いできればと思います。
 以上です。

○伊藤座長 窪田委員、お願いします。

○窪田委員 基本的な部分で十分理解できていない点があると思いますので、その点も含めて確認をさせていただけたらと思います。
 先ほど黒沼委員から御指摘があった部分で、山口委員からも御発言があった部分にも関連すると思いますが、基本的には裁判を受ける権利をなくすことはできない以上、異議申立てという形でいくのか、最初から通常の訴訟でいくのかという形はともかく、それについて争えないといけないというのは当然だろうと思います。ただ、そのイメージを前提としますと、結局簡易な手続を第一段階で手続追行主体となったものが中心となってやる。言わば排他的にするということになるのだと思います。
 その場合、調停前置主義ではありませんが、簡易な手続前置主義といった形で問題が処理されることになると思いますし、それについて朝倉課長から御発言のあったところだろうと思います。私自身、そうしたしくみ自体は大変によく理解できます。
 また、一般的に手続追行主体というものが第一段階の状況でも非常によくわかっているので、まとめることが実際にも妥当だろうし、相手方との関係でもより紛争解決に資するだろうということも、よくわかります。
 ただ、その両者を組み合わせて排他的に手続追行主体のみが簡易な手続を用いることができるということを、うまく説明できるのかどうかという点が若干気になっております。破産手続の場合でも最終的にこういうプロセスで解決していくことがあったとしても、そこでは誰かが破産債権とりまとめて行うということは必要はないわけです。個々に申し出をしてきてくれたことに対して判断をすればいいということだと理解しております。その意味で、当事者をまず一本化しなければいけないということは、必ずしも含まれていないのだろうと思います。
 その点では、問題となるのはあくまで簡易な手続を利用するということについてですから、裁判を受ける権利を保障するというほどの深刻な問題ではないということなのかもしれないのですが、第一段階での手続追行主体に任意的訴訟担当という形で授権をしない限り、簡易な手続を利用することはできないということがうまく説明できるのかどうなのかという点だけ、少しはっきりさせておく必要があるのではないかという気がいたします。
 もちろん、この点についても、もう既に一定の御発言はあったということだと思いますし、実質的にそれは妥当なのではないかということだったのだと思いますが、法的な説明として十分なのかなという気がいたしました。何か既にお考えがあるのだったら教えていただきたいと思いますし、また御検討していただけたらと思います。

○伊藤座長 今の御発言は大変重要な問題で、手続追行主体によるとりまとめの必要があるという意味では、先ほど何人かの委員がおっしゃられた通りの認識が共通しているように存じますが、二段階目の手続追行主体をそのような形に限定し、請求権の主体たる消費者やその授権を受けた他の団体などが二段階目の手続を利用することを認めないこととなると、その根拠が問われることになります。そうなると、窪田委員がおっしゃったような問題は当然検討しなければならないことで、まだ事務局としても確立された考え方はないかと思いますので、そういう点も踏まえて今回あるいは今後引き続いて御意見をちょうだいできればと思いますが、もし加納さん何かございましたら。

○加納企画官 特にございません。

○伊藤座長 三木委員、どうぞ。

○三木浩一座長代理 窪田委員の御発言、御意見は当然の御疑問だと思います。理論的な説明が恐らく難しい部分があると同時に、現実の問題としてそういうものを当事者というのは、一段階目の訴訟を追行した代表当事者が望むのかという問題は、実は別途あるように思います。
 先ほど山口委員は一段階目の訴訟追行した人が二段階目をやらないと、費用の回収や報酬が得られないという文脈でおっしゃいましたが、そういうことを考える場合に、この訴訟の対象としてどういう事件を想定しているかということと関係するんだろうと思います。
 山口委員がおっしゃったようなものは、主としては大型の不法行為事件、薬害や航空機事故などの弁護団方の事件を想定すると妥当するんですが、仮に今度の制度が主として使われるのが少額の消費者被害であって、かつ、一段階目の手続を追行する主体が主として適格消費者団体だということになると、それは山口委員の御懸念とは違う状況が生じてくるように思います。それは単なる私の推測だけではなくて、外国の例で参考になるものがあります。
 韓国の集団調停制度というものがあって、調停という名前がついていますけれども、最終的に我々が議論するような二段階型の手続なんですが、最終的に判決のようなものが出されるんです。ただ、それが拘束力がないという意味で調停と呼んでいるだけで、別に話し合いを促進しているわけではない制度です。
 一段階目の手続追行主体は日本で今、議論されているように適格消費者団体に限るというような狭いものではないですけれども、一定の団体とか公的な公共団体などに限られているんですが、例えば消費者団体が一段階目の手続を追行する。一定の段階で公示をして、対象となる被害者たちを募るわけです。それが参加してくるというときに、一段階目を追行した主体に授権することもできるし、二段階目で参加してきた人たちの中で、例えば100人被害者が参加してきた、あるいは1,000人参加してきたというと、その100人、1,000人の中から代表者を選びなさいという仕組みになっているわけです。むしろ代表者を選ぶのは原則でして、必ず代表者を選びなさい。代表者が選べなかった、あるいはあえて消費者団体に二段階目も委任したいという場合には、それもできるという制度だったと思います。
 原則は消費者たちの中から二段階目の手続の代表者を選ぶとなっています。それは消費者団体の側から見ても、当然そういうものが原則でないと困ると言っていました。というのは、一段階目の手続というのは共通争点を審理するわけですから、いわば公益的といいますか、消費者団体の本来の目的に沿った消費者の一般的な保護という活動ですけれども、二段階目は個々の消費者が自分たちのお金を取り返すのを代わってやってくれというわけですから、一種の弁護士に対する委任と同じようなものなわけです。
 つまり二段階目の手続においては、代表者となる人というのは弁護士的な役割を演じることになるわけです。それは消費者団体はとてもやっていられないし、したくもない。また、弁護士さんならそれなりの報酬がとれるかもしれないけれども、これは今度どういう仕組みをつくるかによりますが、適格消費者団体が弁護士のような形で自由に報酬契約を結んで報酬がとれるようになるのかどうか。とれないとすれば、それこそ労を多くして山口委員が懸念されたような益は出ないわけです。むしろ自分たちの私益のために団体はやるわけですから、被害者たちの中から代表者を選んで自分たちでやってくれと。一段階目の手続は消費者団体が起こして、そこまでの役割は果たしたんだから、二段階目はそちらでやってくれというようなことでやっていることが多いように聞いております。
 ということですので、実際問題としても私は消費者団体なり一段階目の手続を行ったものに二段階目の手続追行についても、授権ができるという仕組みをつくること自体は望ましいと思いますけれども、それが窪田委員が懸念されたように、それしかできないという仕組みになった場合には、一方で消費者側の裁判を受ける権利といいますか、そちらの問題があると同時に消費者団体の側でもそれしか選択肢がないとすると、困るのではないかということを今、申し上げているわけであります。
 勿論、現行のままでも最高裁の判例などもありますからできるのかもしれませんけれども、当然のこととして二段階目に適格消費者団体が任意的訴訟担当の授権者になれることにはなっていないので、その意味で適格団体が二段階目も授権を受けられるという仕組みをつくる必要はあるのかもしれませんが、繰り返しますけれども、それしかできないという制度は果たしていかがなものかということは、十二分に考える必要があろうかと思います。

○伊藤座長 大高委員、どうぞ。

○大高委員 既にこの点については既に議論が出尽くしたところかと思いますけれども、私の意見としては18ページにまとめてありますように、第一段階目の訴訟追行主体がとりまとめを極力できるようにするとの方向性については、これまで述べられた費用とか、そういったものもありますけれども、訴訟追行主体のインセンティブを向上させるという側面もありますので、基本的には賛同できるかなと思っています。
 ただ、これまでも議論がありますように、訴訟追行主体に委ねることのみを唯一のルートにするかどうかについては、非常に難しい問題があるのかなということは認識しております。この点について私はまだ定見がないところでありますけれども、個々の被害者が独自に申立て等をなし得る道を残すとしても、何らかの形で第一段階目を少なくとも担う訴訟追行主体のインセンティブが害されないような手当というものは、考えていかなければいけないのではないかとは思っているところです。
 以上です。

○伊藤座長 山本委員、お願いします。

○山本委員 私自身は二段階目について、第一段階目の手続追行主体にとりまとめを強制するといいますか、第一段階目の手続追行主体に授権しなければ第二段階目に入ってこられない制度は、それなりに合理的なものかなと思っています。実質的な理由については今までいろんな方が言われたとおりで、恐らく被告にとっても、あるいは裁判所にとっても窓口が一本化するということは、手続を合理的に進める上で重要だろうと思いますし、多くの消費者にとっても自分に代わって手続を追行してくれる主体がいるというのは合理的な話で、そのためにもできるだけ多くの主体、消費者から授権を得て訴訟を追行するという仕組みにするのが、恐らく合理的だろうと思います。
 窪田委員が言われた理論的な点というのは確かになかなか難しいところで、これは結局言わば任意的訴訟担当を強制することになるわけで、原理的に矛盾しているのではないかという気は確かにわかるのですが、ただ、この制度をつくろうとしている趣旨というのは、やはり個々の消費者が自ら手続を追行していくということは難しいだろうということ、特に少額多数の事件を念頭に置いて難しいだろうということを前提にしていて、そのためにこういうものをつくるわけなので、どうしても手続追行主体に対する授権が嫌で、自分でやりたいという手続追行意欲が非常に旺盛な人については、この手続に乗らずに別の本来の権利救済の手続に行ってくださいというのは、それなりに説明できないことはないのかなと。勿論そのためには第一段階目の手続追行主体が、それを担うにふさわしいようなものに限定される必要はあると思いますし、更に司法上の義務として善管の守秘義務とか公平誠実義務といった義務を、手続追行について課していく必要があるのかもしれません。そういうようなことを前提にしながら授権を強制していくことは、あり得るのかなと思っています。
 一旦授権をした後のことなんですけれども、その後、離脱できるかという問題があって、それについても検討する必要があると思うんですが、私自身は勿論一旦授権したんだけれども、手続の追行の仕方が全く不満だとか、あるいは和解をしようとしているが、和解の内容が不満だという場合には、個々の消費者に離脱の権利を認めるべき必要性があると思っています。その場合も、離脱した後は通常の訴訟手続で訴訟を追行する権利が認められれば足りると思っています。
 更に難しいのは先ほど来黒沼委員が言われている、この手続に乗りたいんだけれども、手続追行主体が認めてくれない。拒絶されているというような場合とか、あるいは第一段階で査定決定みたいなものが出たときに、自分は異議を言いたいんだけれども、手続追行主体が異議を言ってくれない。そういった場合の取扱いは非常に難しいように思います。そういう場合はあきらめて普通の訴訟に行ってもらうというのも1つの選択肢ですが、私はそういう場合は非常に例外的な場合として個別に追行できるという余地を認め、それは言わば手続に乗ることを拒絶されている部分があって、それは消費者の責任ではないように思いますので、何らかの救済の手段というものがあり得るかなと思っていますけれども、原則としては強制するという形でいいのかなと思っています。

○伊藤座長 窪田委員、お願いします。

○窪田委員 生産的でない話をして申し訳ありませんが、もう少しだけ確認をさせていただけたらと思います。制度のイメージをつかみたいということがあって、私自身は今、どちらの立場というのは明確にできるほど信念を持っているわけではありませんが、今、議論が出ていることを前提としますと、第二段階についても第一段階での手続追行主体が訴訟の追行主体になることができるという制度の整備をしなければいけない。そして排他的にその手続追行主体を通じて第二段階を処理するということであれば、任意的訴訟担当を拒絶するというのか何なのか、ともかくそこの部分も整備しなければいけないということになるだろうと思いますが、あともう一点、これは三木座長代理の御発言とも関係すると思いますが、第一段階で手続追行主体となったものは、第二段階でも手続追行主体とならなければならないということが多分義務づけられるし、それが不可欠なことになるということなんだろうと思います。それはそれで間違いない理解ということでよろしいでしょうか。

○伊藤座長 どうでしょうか。朝倉さん、お願いします。

○朝倉課長 私がお答えするのが適当かどうかわからないですが、この制度を利用する以上、手続追行主体が一段階目の終了時点で離脱することは考えてはおりません。利用するのであれば最後まで責任を持って手続を追行するというのが私のイメージです。場合によっては執行段階まで責任を持って行うべきではないかと思っております。手続の途中で投げ出されるのは我々から考えると一番困ります。投げ出すパターンというのは一段階目が終わったときもありますけれども、手続の途中で投げ出してしまうと結局二次被害を生むだけの話です。このことは、裁判所としても大いに迷惑ですし、被害者にとっても大いに迷惑で、事業者もどうしていいかわからなくなってしまって大いに迷惑ということになりますので、手続追行主体には最後まで手続を追行していただきたい。

○伊藤座長 池田委員、お願いします。

○池田委員 私も今の話は非常に意を同じとするところです。第一段階目でもそういう議論があったと思いますけれども、もともと手続追行主体は消費者の信頼を得る団体であるべきです。今、考えられるのはそれが適格消費者団体なので、そういう話になってきていると思います。すなわち、一段階目、二段階目をするにしても、やはりそういう信頼を得る団体であるべきであり、それを公的に何らかの方法で認知する、又は資格要件をつくっていくことが大事になってくるのではないかと思います。もっとも、現在の差止め請求における適格消費者団体がイコールということではないと思いますので、改めてこういう手続追行主体についての要件というのは、きちんと議論する必要があるのではないでしょうか。
 我々事業者にとりましても、思いつきで訴訟を提起されて途中で投げ出されることは全く想定されるような議論ではないと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

○窪田委員 先ほどの質問ですが、少しだけその趣旨を説明させていただきますと、1つは当初から問題になっている点なのですが、どういう事件を想定するのかというもので随分幅があるんだろうと思います。共通争点が8割程度の重みを持っていて後の部分は軽いというのだったら、比較的負担なしに第二段階は処理ができることになるだろうと思います。
 ところが、共通争点は確かに重要ではあるかもしれないけれども、個別の紛争解決においては個々の個別の被害者の需要というものが大変に重要であるというものになってきますと、恐らく第二段階での負担というのは非常に大きいわけです。始めた以上は最後まで責任を持ちなさいということで説明をしますと、場合によっては第一段階の訴訟を提起するという際に、マイナスのインセンティブを与えるというか、訴訟追行主体となることに非常に慎重になってしまう可能性があるのではないか。その点が懸念されたものですから、ご質問をさせて頂きました。一般論としては第一段階をやった以上は第二段階をやってもらうというのが当然だろうと思うのですが、どうもどういう事件類型を想定して何を考えていくのかということで、ずれが出てくるのではないか。あるいは少し考えておく必要があるのかなと思いました。

○伊藤座長 それはおっしゃるとおりだと思います。三木委員、お願いします。

○三木浩一座長代理 先ほどの窪田委員と朝倉さんのやりとりの中身自体は、私もそのとおりだと思います。すなわち仮に山本委員が言うように、一段階目の手続追行主体に二段階目を委任するのは強制だということになると、手続追行主体は必ずそれを受ける義務があるようにしないとおかしいわけです。したがって、一段階目をやった後に二段階目を消費者の側、千人の集団がみんなこの人に委ねたいと思っていて、かつ、適格消費者団体も自分はやりたくないと思っていて、しかも千人が委任する人が立派な人であったとしても、それはできないという仕組みになってしまう。それが果たしていいかということもありますし、最後に窪田委員がおっしゃったように、事件にもよるでしょうし適格団体にもよるかもしれないけれども、どれだれ事件を拾ってくれるのか。ニーズがある事件についても二の足を踏むことがどこまで出てくるのかという問題が生じます。
 現に先ほど例に出した韓国では、私が訪問した団体の御意見でほかの団体はもしかしたら違うかもしれませんが、二段階目をやるインセンティブというのは消費者団体の側には余りないと言っていました。したがって二段階目が強制されるのであれば、一段階目もやらない事件は出てくるだろうということは言っていました。
 もう一点、山本委員の御発言はやや議論をミスリードしているところが先ほどあったと思います。というのは、二段階目で自分が訴訟をやりたいという人は、この訴訟で救われるべき人ではないんだから自分で訴訟をやればいいのではないかという趣旨で、強制が望ましいとおっしゃったんですが、そういうことではなくて、二段階目は自分で自分の訴訟をしたいというのではなくて、例えば千人なら千人の被害者たちを代表して、適格団体ではなくて、この人に訴訟をやってもらいたい。あるいはこの人と言ってもその人は自分の訴訟をやるわけではなくて、千人いれば恐らくはちゃんとした弁護士さんを立てて訴訟をやる、あるいは訴訟ではなくて二段階目の簡易な手続をやるわけでしょうから、何もそれが適格団体でなければいけないということではないし、むしろ二段階目の個別争点の立証とか回収について長けている立派な弁護士さんに頼んでやりたいというときに、そちらの方でやりたいというのであれば、それは何も自分でやりたい人が自分でやるという話とは違うと思います。

○伊藤座長 若干、議論の整理をさせていだきたいと思いますが、下谷内委員、先にお願いします。

○下谷内委員 先生方の御議論はなかなか難しいんですが、現実的に考えますと、やはり第一段階目の手続追行主体が二段階目をするというのがいいのではないか。当初、私は面倒くさいことは二段階もやりたくないなと思ったんですけれども、ただ、いろんな御議論を拝聴いたしまして、やはり一段階目に受けるときに、特に少額多数の消費者被害ということを前提にしておりますと、高齢者の方だとか若年者の方がいらっしゃることが非常に多いかと思います。そういたしますと、第一段階目で受けるときはそれなりに問題視をして受けるものだろうと思います。受ける団体もお金を求めるわけではありませんので、そういたしますとその中でかなり論議されまして、そこに関わる団体の中には当然弁護士さんも学識経験者もいらっしゃいますので、消費者問題について深く考えられるのではないかと思います。
 それがやはり責任を持ってそこの第一段階目の主体がするということが、説明が難しくて何て言っていいのかわからないんですけれども、そういうところで一段階目の判断ができたのであれば、二段階目も当然そこの団体が受けるべきではないかと思います。そして、そこからそこの団体はちょっと嫌だからほかのというふうに消費者の方がおっしゃられるときに、一番私が懸念するのは、特に消費者問題におきましては悪質な事業者がおりますので、私どもはいつも悪質事業者しか対峙しておりませんので、そちらの方からの巻き返しが図られるのが非常に怖いです。そちらの方に行ってしまうということが考えられますので、そのときは通常訴訟にその方たちがされるのは一向に構わないかと思いますが、この集団的被害制度の中で続けていくというのは、私は余り賛成できないかと思います。通常訴訟で勝手にやってくださいというのはできるかと思いますけれども、今の消費者被害の現状から見ると非常に問題かと思います。
 先ほど言わなくて申し訳ないんですが、17ページの枠組みのところなんですけれども、マル2のv、viなんですが、異議申立ては手続追行主体がとりまとめることとするかとなっておりますけれども、20ページの図柄からいきますと非常に難しく感じております。したがいまして、これにつきましても通常訴訟となるのであれば、とりまとめも主体がやるかと書いておりますので、それはまた別個の問題になるのではないかと感じております。よろしくお願いします。

○伊藤座長 ただいまの御意見を承っておりますと、一段階目と二段階目の手続の連続性を確保するという視点、そして、費用ということが1つの例として出されましたけれども、この一段階目と二段階目によって構成される全体の手続の機能を十全に発揮させるということからすると、一段階目の手続追行主体に二段階目の手続の追行についての義務のようなものを課して、二段階目の手続はその手続追行主体しか利用できない。これが恐らく強制ということの実質的な意味だと思いますが、そういう仕組みにすべきだという御意見が多数あったように思います。その場合には、二段階目を手続追行主体に委ねることをしない消費者は、一般の訴訟手続等を利用して、自らの力で権利実現を目指すことになります。
 これに対して、二段階目の手続追行主体を一段階目の手続追行主体で、かつ、個別消費者から授権を受けた者限定する根拠は一体何なのか、そこは相当慎重に検討しないと合理的な説明ができないのではないかという問題提起や、二段階目の手続追行に関しては、一段階目の手続追行主体に限定しないで、その手続追行主体と並んで、他の主体も二段階目の手続を利用する余地を排斥するまでの必要はないのではないかという御意見も、有力だったように思います。
 これも今の段階でそのどちらかにとりまとめることは難しいかと思いますが、今日の段階での審議の内容の一応の整理ということでは、私がただいま申し上げたことでいかがでしょうか。ずれているというのがあれば御指摘をいただければよろしいかと思います。それでは、そのような整理を前提として、今後の共通認識の形成に向けて皆様方に御尽力いただきたいと思います。
 それでは、よろしければ、(3)の二段階目の手続を行う裁判所に関してですが、マル1について、つまり一段階目と二段階目の手続が連続しているという側面を強調すれば、同一の裁判所が二段階目の手続を行うことが必然である。これは今までの議論を伺っていますと、どういう立場をとられる方であっても余り御異論がないように承りましたが、この点はよろしいでしょうか。それでは、そのようにとりまとめさせていただきます。
 次のマル2はなかなか難しいところでありまして、二段階目の簡易な手続が各地の裁判所に同時に係属する可能性を認めるのか、それとも何らかの意味で特定の裁判所に集中をさせるような仕組みを考えるのがいいのか、難しいところかと思いますが、ここはいかがでしょうか。朝倉さん、どうぞ。

○朝倉課長 手続追行主体が1つ、相手方も企業(事業者)が1つということであれば、各地の裁判所でばらばらにやる理由が余りないと思います。対象消費者自体は北海道から沖縄までばらばらになる可能性がありますので、そのためにあっちこっち行ってやっていたら、それだけで時間がかかってしまって、下手なエネルギーとお金を使うだけではないでしょうか。
 裁判所としましても先ほど申し上げましたように、争いがあるかどうかというのを確認する手続の次に裁判所がグループに応じて見解を示す際には、ばらばらであればよくわかりませんので、全体像が見える中で示していく方がいいと思いますから、1つにする方が裁判所にとってもいい審理ができるということではないかと思います。
 そういう意味で、1か所にするとウィン・ウィン・シチュエーション(WIN-WIN SITUATION)でみんなハッピーということではないかと思ったところです。

○伊藤座長 いかがでしょうか。手続の合理的な進行という点からも、集中させる仕組みを検討する方がいいという御意見のようですが、大高委員、どうぞ。

○大高委員 私も基本的には朝倉課長の意見に賛同するものです。第一段階の訴訟追行主体に委ねることだけを唯一のルートにするかどうかについては、議論のあるところですけれども、仮に個々の被害者独自の申立てルートを確保するにせよ、第二段階目は集団的に審理をするというところにメリットの1つがあると考えますので、もとの第一段階目をどこの管轄に認めるかという議論はあるんですけれども、一旦特定の裁判所で係属した以上は、そこで最後まで面倒を見ていただくというのが妥当なんだろうなと思っています。
 これは今後の論点になると思うんですが、仮に異議などで通常訴訟に移行した場合については別途、移送の規定を整備するとか、事案によっては申立てをした被害者のもっと近い地方裁判所等に移すという道は考えてもいいのかなと。これはちょっと私も結論としてかたまった意見はありませんけれども、論点としては考え得るのかなと思っています。

○伊藤座長 山本委員、どうぞ。

○山本委員 最後に大高委員が言われたことは、私もそのように考えていました。破産手続だったと思いますが、管轄を一部の大規模裁判所に集中していても債権査定の異議の訴えが出たような場合には、もとの管轄といいますか、債権者の便宜な裁判所に移送することができるという規定もあったと思いますので、どの程度出るかわかりませんが、個々の消費者個別の争点が問題になるようなところで異議があるのであれば、むしろ消費者の便宜な地に移送することは、余地としては残しておいてもよいかなと思っています。

○伊藤座長 三木委員、どうぞ。

○三木浩一座長代理 今まで出た御意見に基本的に賛成です。その上で付け加えるとすれば、今、異議が出た場合のことをおっしゃいまして、その点は私も同感ですが、異議が出なくても特定の裁判所が集中的に二段階目を扱っていて、その中で二段階目は個別争点を扱うわけですから、2回の異なる集団、サブグループができるかつくるべき事案というのはあり得るわけです。むしろサブグループができても、集中された裁判所でそのサブグループを扱うことが差し支えない場合にはそれで結構だと思いますけれども、特定のサブグループについては例えば札幌でやってくれということが仮にあった場合には、そのサブグループを分離して移送することが事後的にできる制度というのは、工夫してもいいかもしれないと思います。

○伊藤座長 ほかに今の点はいかがでしょうか。
 そういたしますと、マル2の点についても、手続の合理的進行や紛争の早期の解決という点から特定の裁判所に集中させるような方向で考え、かつ、ただいま山本委員、三木委員、大高委員からも御発言がありましたが、問題になる事案に応じては、別の裁判所が二段階目の手続を主宰する余地を残しておくことが、望ましいのではないか。この点も恐らく御異論がないところかと思いますので、そのような方向での共通の認識ができたという取扱いにさせていただきます。
 若干時間がございますが、本日取り上げました論点全体について、皆様方の中で何か御発言があればお願いをしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。進め方や今後の論点として想定されるような問題について、あらかじめ是非この点はということで御発言があれば、お願いをいたします。

○野々山理事長 今後のスケジュールの関係ですが、資料を見ますと平成23年4月に中間報告を出すことになっており、現在はA案とB案の検討をしていますが、あとC案、D案というものがあります。特にC案についてはどこで議論をするのか、あるいはしないのかということをあらかじめわかれば、教えていただきたいのですが。

○伊藤座長 加納さん、お願いします。

○加納企画官 スケジュール表にございます4月の中間的報告といいますのは、第9回までの議論について消費者委員会の本体の方に御報告することを想定しておりまして、それまでにC案の議論が出れば当然含まれていることですけれども、そこに入っていなければ、その時点の中間報告の中ではA案、B案の議論について御報告をする。それを踏まえて、消費者委員会の御意見も踏まえまして、第10回以降の議論に進めさせていただければと思っております。

○伊藤座長 いかがでしょうか。

○野々山理事長 今のお話ですと、とにかく第9回までやって、そこまでの中身については中間報告をするということで、第9回までにC案が検討されれば中間報告にC案のことも入るし、出なければその後の議論だという理解なのでしょうか。

○伊藤座長 そうですね。加納さん、いかがですか。

○加納企画官 C案は今まで現実的にも殆ど議論しておりませんけれども、当初において、A案とB案を中心的にやりましょうということで、この場では大体共通の御認識をいただけたのではないかと消費者庁としては思っておりますが、それ以外にどうしても例えばC案についてやるべきであるということであれば、それはまた別途検討させていただきたいと思います。

○伊藤座長 野々山さん、どうぞ。

○野々山理事長 私はやるべきだと思っております。A案、B案を中心に行うことはそれで結構かと思いますけれども、そこにC案が乗ってくる可能性というのは十分あるわけですし、あるいはA案の延長線上に出てくる、B案の延長線上に出てくることも十分考えられるわけです。今後の最終的な判決等の手続の議論の中で出てくる可能性もあるかと思いますけれども、そこは是非議論をしていただきたいと思っております。

○伊藤座長 わかりました。C案については今までは議論していませんが、確かに今、野々山さんがおっしゃったように、とりあえずA案、B案を中心にしてということでやってまいりましたので、事務局とも相談をしながらC案についても議論の機会を設けることにいたしましょう。中村委員、どうぞ。

○中村委員 今までA案、B案ということでやってまいりまして、今C案をということが出てまいりました中では、経済界の中ではD案という意見も根強いところでありますので、もしそういうことであれば、そもそもAからDについてどうなのかという議論をもう一回やっていただければと思っております。

○伊藤座長 そうですね。そういう意味では決してC案やD案についての議論の機会を排除しているわけではありません。ただ、皆様方も御了解いただいているかと思いますが、A案、B案を中心にして個別論点に相当立ち入って審議をしていただいておりますので、C案、D案についてもここで意見交換の機会を設けること自体を否定するつもりはございませんけれども、それで振出に戻るのでは、これまでの審議が無意味になってしまいますので、A案などに関する今までの議論の重みを十分御了解賜った上で、C案、D案についても意見交換の機会を持てればと思いますが、そういうことでよろしいですね。

≪3.閉会≫

○伊藤座長 それでは、ほかに特に御発言がなければ本日の専門調査会はこの程度にさせていただきたいと思います。事務局から次回の日程などについての連絡をお願いいたします。

○原事務局長 どうもありがとうございました。次回は第8回になりますけれども、3月3日木曜日の14時からお願いしたいと思います。議題は訴訟手続に係る論点マル5といたしまして、今日の話の中にも出ておましたけれども、和解の規律、その他の訴訟手続における個別の論点を中心に御検討をいただけたらと思っております。会場は今日と同様、ここの場所で開催の予定です。
 事務局からは以上です。

○伊藤座長 お聞きいただきましたように、次回の論点もこれまでと同様に重要な問題になるかと思いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。
 本日はこれにて閉会させていただきます。御多忙のところありがとうございました。

(以上)