第1回 集団的消費者被害救済制度専門調査会 議事録

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日時

2010年10月28日(木)10:00~12:00

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【専門委員】
 伊藤座長、磯辺委員、大河内委員、窪田委員、中村委員、三木(浩)委員、三木(澄)委員
【担当委員】
 池田委員、山口委員
【関係省庁等】
 消費者庁  福嶋長官、松田次長、加納企画官、鈴木課長補佐
 法務省民事局  佐藤参事官
 最高裁判所事務総局民事局  朝倉第一課長
 国民生活センター理事長・弁護士  野々山氏
【消費者委員会事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.集団的消費者被害救済制度専門調査会の進め方について
3.これまでの集団的消費者被害救済制度の検討等について
4.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第 (PDF形式:56KB)
【資料1】集団的消費者被害救済制度専門調査会の進め方について (PDF形式:115KB)
【資料2-1】集団的消費者被害回復制度等に関する研究会報告書(平成21年8月内閣府) 【資料2-2】集団的消費者被害救済制度研究会報告書(平成22年9月消費者庁) 【資料2-3】「集団的消費者被害救済制度」に関する意見募集の結果の概要について (PDF形式:28KB)
(参考資料1)消費者委員会集団的消費者被害救済制度専門調査会専門委員名簿 (PDF形式:12KB)
(参考資料2)消費者委員会運営規程 (PDF形式:70KB)
(参考資料3)消費者委員会集団的消費者被害救済制度専門調査会設置・運営規程 (PDF形式:95KB)

≪1.開会≫

○原事務局長 おはようございます。皆様、本日は冷たい雨の中、朝早くから、お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。ただいまから「消費者委員会集団的消費者被害救済制度専門調査会」の第1回会合を開催いたします。私は、消費者委員会の事務局長を務めております原です。どうぞよろしくお願いいたします。
 集団的消費者被害救済制度専門調査会については、本日が発足後初めての会合となります。お手元の参考資料1に委員名簿をお付けしております。お名前、御所属などを御確認いただきたいと思います。
 この専門調査会の担当委員として、消費者委員会から、池田委員、下谷内委員、山口委員が今後の専門調査会の調査審議に参画をいたします。また、関係省庁等からとして、消費者庁、法務省、最高裁判所、国民生活センターに御参加をいただいております。本日は、消費者庁より、福嶋長官にも御出席をいただいております。
 なお、当専門調査会での調査審議を踏まえ、今後、消費者庁から消費者委員会に対し諮問をする予定とのことでございます。そのため消費者庁には、当専門調査会において、資料提供などの御協力を今後お願いしたいと考えております。
 本日は、所用により、大高委員、沖野委員、黒沼委員、桑原委員、山本委員と消費者委員会の下谷内委員が御欠席となっております。
 本専門調査会の座長については、10月22日の第37回消費者委員会において、松本委員長から指名があり、伊藤眞委員に務めていただくこととなっております。
 それでは、伊藤座長、議事進行をどうぞよろしくお願いいたします。

○伊藤座長 ただいま御紹介がございましたような経緯で、本専門調査会の座長を務めさせていただくこととなりました伊藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、第1回の会合でございますので、最初に本専門調査会を消費者委員会に置くことになりました経緯につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

○原事務局長 集団的消費者被害救済制度専門調査会を消費者委員会に置くことになった経緯などについて、御説明をさせていただきたいと思います。
 消費者庁及び消費者委員会設置法附則第6項において、同法の施行後3年を目途として、加害者の財産の隠匿または散逸の防止に関する制度を含め、多数の消費者に被害を生じさせたものの、不当な収益を剥奪し、被害者を救済するための制度について検討を加え、必要な措置を講ずるものとされております。
 また、平成22年3月30日に閣議決定をしております消費者基本計画においては、集団的消費者被害救済制度について、平成22年夏を目途に論点の整理を行い、平成23年夏を目途に制度の詳細を含めた結論を得るとされているところ、平成22年9月、消費者庁において、集団的消費者被害救済制度研究会の報告書がとりまとめられ、公表されているところです。
 そこで消費者委員会においては、第32回消費者委員会において、お手元の参考資料3に付けてありますが「消費者委員会 集団的消費者被害救済制度専門調査会 設置・運営規程」が決定され、消費者委員会の下に専門調査会を設置することといたしました。
 その後、本日お集まりの皆様の委員としての任命などの所要の手続を進め、本日、第1回の会議を開くこととなった次第です。皆様におかれましては、今後の審議をどうぞよろしくお願いいたします。
 事務局からは、以上です。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、次に、座長代理についてお諮りしたいと存じます。
 集団的消費者被害救済制度専門調査会設置・運営規程第2条第4項では、座長があらかじめ座長代理を指名することになっております。
 そこで、座長代理につきましては、三木浩一委員にお願いしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

○三木(浩)委員 よろしくお願いいたします。

○伊藤座長 次に、委員の皆様に、簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。
 なお、委員の方は勿論ですが、このテーブルにおつきになっていらっしゃる方に関しては、これからの御発言などもあるかと存じますので、併せて自己紹介もお願いしたいと存じます。
 それでは、三木委員から、順番でお願いします。

○三木(浩)委員 慶應義塾大学で民事訴訟法を専攻しております三木と申します。
 先立ちます消費者庁の研究会にも参加して、引き続きです。よろしくお願いいたします。

○三木(澄)委員 私は、職場が京都の八幡市生活情報センターで消費生活の専門相談員をしております三木澄子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 大切な、この制度に向けて、微力ながら頑張りたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○池田委員 消費者委員会の委員をしております、アサヒビールの池田でございます。担当委員として出席させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○野々山理事長 国民生活センターの理事長の野々山といいます。
 私は、国民生活センター理事長就任以前は、弁護士として、あるいは適格消費者団体の活動として訴訟等もやってきましたので、そういう知見も含めて、機会があれば発言をさせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

○朝倉課長 最高裁事務総局民事局の第一課長をしております朝倉でございます。もともとは裁判官で、今も裁判官ですが、つくる以上は是非とも実務で機能するような制度にしていただきたいと思っておりまして、実際の裁判での私自身の経験や私の見聞きしている経験などを踏まえて、場合によっては発言させていただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

○佐藤参事官 法務省民事局で参事官をしております佐藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私自身は、民事局で民事訴訟法とか倒産法などの民事手続法関係の担当をしているということでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○福嶋長官 消費者庁長官の福嶋です。皆様には大変お世話になります。
 また改めて消費者庁として皆様の御意見を踏まえながら、諮問をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○松田次長 消費者庁次長の松田でございます。よろしくお願いいたします。

○加納企画官 消費者庁企画課の加納でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○鈴木課長補佐 消費者庁企画課の鈴木でございます。よろしくお願いします。

○斎藤審議官 消費者委員会事務局で原事務局長と一緒に仕事をしております斎藤と申します。どうぞよろしくお願いします。

○原事務局長 後先になりましたけれども、消費者委員会の事務局長を担当しております原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

○磯辺委員 適格消費者団体であります消費者機構日本で事務局長を務めております磯辺と申します。消費者庁の研究会からの引き続きの参加ということで、私どもは差止請求の制度を今、活用させていただいておりまして、損害賠償請求権とかの必要性というのも非常に感じているところでして、その辺の立場から、今後御議論に参加させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○大河内委員 主婦連合会という消費者団体からまいりました大河内と申します。
 皆さんとはちょっと立場が違いまして、消費者として被害を回復していただきたい方の立場ですので、皆さんのお話を聞きながら参加したいと思っております。よろしくお願いいたします。

○窪田委員 神戸大学で民法を専攻しております窪田と申します。消費者庁の研究会以来の引き続きの参加となります。どうぞよろしくお願いいたします。

○中村委員 セブン&アイ・ホールディングスで法務部を担当しております中村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 お手元の参考資料3の「消費者委員会 集団的消費者被害救済制度専門調査会 設置・運営規程」に記載のとおりでございますが、本日の会議につきましては、公開で行いたいと存じます。
 また、議事録につきましても、後日公開することといたします。
 それでは、議事に入る前に、事務局から配付資料の確認をお願いします。

○原事務局長 配付資料ですけれども「(第1回)議事次第」と書きました裏に配付資料一覧を付けております。
 資料1として、後ほど説明させていただきますけれども「集団的消費者被害救済制度専門調査会の進め方について」。
 資料2は、1、2、3と枝番が付いておりますが、これまで平成21年8月内閣府、平成22年9月消費者庁、それぞれ集団的消費者被害回復制度についての研究会の報告書がまとめられておりますので、その資料。
 資料2-3として「『集団的消費者被害救済制度』に関する意見募集の結果の概要について」をお付けしております。
 参考資料については、先ほど御紹介をしたとおりです。
 不足がございましたら、審議の途中でもお申し出いただけたらと思います。

○伊藤座長 ありがとうございました。

≪2.集団的消費者被害救済制度専門調査会の進め方について≫

○伊藤座長 それでは、議事に入りたいと存じます。
 議事次第にございますとおり、本日は、「集団的消費者被害救済制度専門調査会の進め方について」と「これまでの集団的消費者被害救済制度の検討等について」を議題として取り上げたいと存じます。
 まず、前者についての審議を行いたいと思いますが、設置・運営規程の第3条によりますと、本専門調査会は委員会の求めに応じて、調査審議するとされております。
 先般、10月22日の第37回消費者委員会におきまして、お手元の資料1「集団的消費者被害救済制度専門調査会の進め方について」がとりまとめられているところでございまして、この進め方に沿いまして、調査審議を行うことが求められております。
 そこで事務局から、資料1の説明をお願いいたします。

○原事務局長 資料1をごらんいただきたいと思います。「集団的消費者被害救済制度専門調査会の進め方について 平成22年10月 消費者委員会」としております。
 表のページの後ろに、2、3、4ページ目と付けてございますけれども、集団的消費者被害救済制度については、平成14年、2000年前後、司法制度改革推進計画の中の司法へのアクセスの改善というところでも、少額多数被害への対応ということが検討項目としては掲げられておりました。
 その後、平成18年に消費者契約法を改正して、消費者団体訴訟制度の導入ということで、これは消費者契約法の一部を改正して、差止請求を導入いたしました。
 平成20年に消費者契約法を改正して、対象の拡大を図ったところです。
 3ページに入りまして、消費者庁及び消費者委員会設置法で、今後の検討を進めるようにというのは、先ほど御説明をしたとおりです。
 4ページに、消費者基本計画での書きぶりをお付けしております。施策番号110です。
 また1ページに戻っていただきたいのですが、本専門調査会を設置することについての趣旨は、1.に掲げられたとおりで、先ほど御説明をしたとおりです。
 「2.主な審議事項」ですけれども、こうした1.に掲げられている趣旨を踏まえまして、主な審議事項として「(1)集合訴訟制度について」及び「(2)その他」ということで、(1)に関連する重要事項の検討が掲げられております。
 審議事項は、集合訴訟制度の項目が中心に掲げられておりますが、これは消費者被害を救済する制度については、どのような制度設計にしたとしても、最終的には被害者の有する請求権を確定する必要があるため、請求権を確定する手続である民事訴訟手続を充実することが基本になると考えており、まずは民事訴訟制度を中心とした検討をこの場では行いたいと考えております。
 具体的な審議事項につきましては、記載のとおりでございますが、消費者庁における集団的消費者被害救済制度研究会の報告書における整理を踏まえて、更に御検討をいただければと考えております。
 なお、行政による経済的不利益賦課制度や財産保全制度については、集合訴訟制度の検討の進捗度合いを見ながら、本専門調査会の審議課題として取り上げることも検討していきたいと考えております。
 「3.スケジュール」です。
 本日は第1回を開催しておりますけれども、この後、まずこれまでの消費者庁における検討状況について御説明をいただき、これを踏まえた上で、本専門調査会の今後の運営について、委員の皆様から幅広く意見などをちょうだいしたいと考えております。
 第2回目以降は、ここに記載のとおり、先ほど御説明した主な審議事項を中心に、本格的な審議に入っていくわけですけれども、具体的な検討などについては、本日の委員の皆様の御意見を踏まえて、座長と御相談をしながら決めていきたいと考えております。
 事務局からは、以上です。

○伊藤座長 それでは、ただいま主な審議事項、スケジュールなどについて事務局から説明をしていただきましたが、その内容などに関連いたしまして、御質問、御意見等がある方はお願いいたします。どうぞ御自由に御発言ください。

○原事務局長 山口委員が見えられたので、ごあいさつをお願いします。

○伊藤座長 そうですね、失礼しました。
 先ほど皆さんに自己紹介をしていただいたものですから、簡単にお名前と御所属だけで結構ですのでお願いいたします。

○山口委員 どうも遅刻いたしまして、申し訳ございません。委員の山口と申します。何とかこの審議を通して、いい制度ができますように、よろしくお願いいたします。

○伊藤座長 こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、ただいまの原事務局長からの説明に関しての御質問等をお願いいたします。
 野々山さん、どうぞ。

○野々山理事長 この調査会の最終的な目標というか、最終的なとりまとめの到達点としては、ほぼ法案に直結するような形のものを目指すという理解でよろしいのでしょうか。

○原事務局長 消費者基本計画を先ほど御説明いたしましたけれども、資料1の4ページに書かれておりますように、平成23年夏を目途に制度の詳細を含めた結論を得ますということで、今、おっしゃられているように、目指しているところはそういったところですが、今後の検討というところに委ねられる部分もあると思います。

○伊藤座長 直結というのはいろんなニュアンスを含んでいると思いますけれども、いかがでしょうか。

○野々山理事長 いわゆる従来の審議会で言うと、最終報告という形になるのかという趣旨です。

○伊藤座長 そこは事務局の方や御関係の方で何か御発言があればお願いします。

○原事務局長 では、消費者庁の御見解もお願いします。

○松田次長 消費者庁でございます。基本的には、この調査会の検討をもって詰めをいただいて、それを踏まえて本格的な法案作成作業に入るということで、来年夏でございますから、その次の通常国会とか、それはまだまだ今後の検討ということでございますけれども、一応視野に入れながら進める。そういう意味で、これまでの研究会が第1ステージとすれば、この調査会が第2ステージとして、法案の基本的な詰めをまとめていただくというふうに大いに期待をしているところでございます。

○伊藤座長 よろしいでしょうか。そういう意味でも、ここで活発な議論をお願いするとともに、具体的な法案の基礎に結びつくような形での意見のとりまとめができればと考えておりますので、是非御協力を賜れればと存じます。
 ほかにいかがでしょうか。磯辺委員、どうぞ。

○磯辺委員 1点質問なんですけれども、先ほどの御説明の中で、行政機関による経済的不利益賦課制度なり、財産保全の制度についても、この調査会でタイミングを見ながら検討するという趣旨の御説明だったと思いますが、当初、民事訴訟手続の集合型訴訟について主に検討するという認識だったのですが、その辺のスケジュール感なり、どの程度のことの議論が想定されるのかということについて、御予定がわかる範囲で御説明いただけるとありがたいです。

○伊藤座長 原事務局長、どうぞ。

○原事務局長 そこについては、消費者庁の側でもう一方の検討を進めるという準備もございますので、消費者庁の側から少し御回答をお願いしたいと思います。

○伊藤座長 では、加納さん、どうぞ。

○加納企画官 先ほど、行政機関による経済的不利益賦課制度、財産保全制度について、原事務局長から御説明があった点ですけれども、現在、消費者庁の方でそれらの課題については、別途何らかの形で検討を進めていきたいということで準備を進めておるところでございます。
 その進捗状況を踏まえて、また必要に応じ、消費者委員会の方に報告するということも考えていきたいと思っておりますが、この専門調査会につきましては、基本的には民事訴訟制度を中心として検討するということでお願いできればと思っております。

○伊藤座長 福嶋長官、お願いします。

○福嶋長官 先ほど申し上げたように、こちらの集合訴訟を中心としたものについては、皆様の意見を踏まえて、諮問という形をとりたいと思っていますが、もう一方で、消費者庁で並行して検討しつつ、それは同じ諮問という手続ということでは考えておりません。何らかの意見を聞かせていただくことはとても有益で、消費者委員会本体も含めて、その辺はまた今後、消費者委員会の方と協議をさせていただけたらと思っております。

○伊藤座長 磯辺委員、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。

○磯辺委員 よくわかりました。

○伊藤座長 ほかにいかがでしょうか。
 もし他に特段の御意見がございませんようでしたら、ただいま御質問等がございまして、内容的には御了解いただいたと存じますが、資料1の進め方に基づきまして、専門調査会を運営してまいりたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

≪3.これまでの集団的消費者被害救済制度の検討等について≫

○伊藤座長 引き続きまして、これまでの集団的消費者被害救済制度の検討等についての議事に移りたいと思います。
 この調査会の審議を始めるに当たりまして、先ほど御紹介がございました平成21年8月、内閣府によりとりまとめられました研究会報告書、22年9月に消費者庁によりとりまとめられました研究会報告書、そして集団的消費者被害救済制度に関する意見募集の概要というものがございますが、それぞれの内容等について確認しておきたいと思いますので、消費者庁の加納企画官から説明をお願いいたします。

○加納企画官 それでは、順次、資料2-1、2-2、2-3につきまして、概略を御説明させていただきたいと思います。
 まず、資料2-1です。「『集団的消費者被害回復制度等に関する研究会』とりまとめ」という横長の4枚物のペーパー、報告書の本体そのものという形でお付けしております。
 この集団的消費者被害回復制度等に関する研究会は、消費者庁の創設に先立ちまして、旧内閣府国民生活局に国民生活局長の私的研究会として設置いたしました。そして、この研究会におきまして、関連する国内外の制度の運用状況であるとか、内容等について調査研究を行うということを主な目的として開催したものでございます。
 この報告書の方では、消費者被害の状況であるとか、具体的な被害事例の整理等についても行っております。これにつきましては、更にその後、データをリバイズしたものを後の消費者庁の研究会の方で掲載するようにしておりますので、その詳細はそちらの方で御説明したいと思います。
 概要版の2枚目をごらんいただきたいと思います。
 この研究会では、まず現在の既存の制度が集団的な消費者被害事案においてどのように機能しているのかということを検証することから始めまして、幾つかの制度について、その制度の現状等について確認する作業を行いました。
 概要はここに書いてあるとおりでございますが、消費者団体訴訟制度や選定当事者制度、被害回復給付金支給制度、課徴金などなどについて、その制度の運用状況や問題点等について検討したところでございます。
 ポイントだけ、このペーパーに沿って御説明させていただきたいと思います。
 まず、消費者団体訴訟制度は、平成18年の消費者契約法の改正によって導入されたものでございます。内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体が、消費者契約法上の不当な行為について差止請求をすることができるという制度でございます。
 これによって、被害の発生拡大を防ぐことは可能という建付になっておりますけれども、過去の被害の回復についての対応は限界があるということで書かせていただいておりまして、現在、適格消費者団体が幾つかの差止請求の事案をしておりますが、その差止請求の事案の中において、例えば同種の契約条項について、過去の被害回復というのがどの程度図られているのかということについてはわからないところがあるという御意見を適格消費者団体からもちょうだいしたところでありまして、そうしたところに現在の団体訴訟制度の限界ないし課題があるのではないかということが議論されました。
 次は、選定当事者制度でございます。これは現在の民事訴訟法でも既に設けられている制度でございます。共同の利益を有する多数者の中から代表者を選んで訴訟追行権を授与し、選定者全員のために当事者として訴訟を追行させる制度となっておりまして、平成8年の民事訴訟法改正におきましては、いわゆる追加的選定制度を導入されるなどの一定の手当が講じられており、消費者被害のような少額多数制度においても機能することを期待されたという制度改正であったと聞いております。
 また、この選定当事者制度につきましては、平成8年の民事訴訟法改正以前から同様であったようでございますが、詳細はよくわかりませんが、利用件数は少ない状況のようでありまして、余り活用されているとは言えないのではないかという議論がこの研究会ではされておりました。
 次に、被害回復給付金支給制度でございます。これは組織犯罪処罰法という法律がございまして、その法律に違反する行為につき、犯人から没収した財産を原資としまして、その財産から被害回復給付金という形で、被害者の方に対して給付金を支給するという制度でございます。
 これにつきましては、不当な収益の剥奪及び被害者救済制度の先行的な例として参考になると評価したところでございますが、先ほど申し上げましたとおり、組織犯罪処罰法の対象事案についてこのような措置を設けているところでございまして、典型的な最近の事例では、ヤミ金の事例であるとか、あるいはマネーロンダリングの事案などのように、被害者が個別請求権を行使することによって被害回復を図ることが著しく困難な場合ということに限定をして、このような制度の対象としていると聞き及んでいるところでございまして、それ以外の制度の対象とならない消費者被害事案についてどのように対処していくかというところは、まだ課題として残されているのではないかということが認識されたところでございます。
 次に、課徴金でございます。これは現行制度としては、独禁法あるいは金融商品取引法、最近では公認会計士法の改正によって導入された制度でございます。違反行為を抑止するための行政上の措置として、行政庁が違反者に金銭的不利益を課すという制度でございまして、例えば独禁法であればカルテルとか、金商法であればインサイダー取引であるとか、そういった特定の行為類型について経済的な不利益ということで、金銭を徴収することができるという制度でございます。
 これにつきましては、公正取引委員会や金融庁等におきまして執行されているところであり、不法な収益を剥奪する制度として機能しているとは評価できると考えておりますけれども、徴収した金員は国庫に帰属するとなっておりまして、そこから更に被害回復につなげることとするかどうかというのは検討の余地があるということが議論されました。
 次に、緊急停止命令でございます。これは独禁法や金商法等に既に導入されている制度でございます。比較法的に言いますと、アメリカにおけるインジャンクション制度というものがございますが、それに淵源を発していると思われる制度でございます。公正取引委員会や金融庁長官等が裁判所に対し、違法行為について停止を命じるよう、申し立てることができるという制度でございます。
 従前から、いわゆる違法収益の剥奪制度ということが議論されたときに、裁判所に対して行政庁が訴えを起こすことが議論されることが多々ございましたが、それはアメリカにおけるFTC、日本の公正取引委員会のようなところでございますが、あるいはSEC、日本の証券取引等監視委員会のような組織でございますが、そういった行政機関が裁判所に対してインジャンクションという形で命令を申し立てるという制度を想定した議論が行われていたところかと認識しております。そういったインジャンクションに類似する既存の我が国における制度として参考になり得るものとしては、この緊急停止命令制度があるのではないかと研究会では議論をしたところでございます。
 行政庁が裁判所に申立てをし、裁判所が行為の停止等を命ずる手続があるという点で、そういう意味では違法収益の剥奪制度ということで、世の中で言われている議論をする上で参考になると考えられておりますが、実際の運用件数は非常に少ないと関係省庁から聞いておるところでありまして、独禁法においても、導入後、一けたにとどまっている。金商法については、旧証券取引法以来、戦後間もなくの時期から導入されているようですが、現在まで1件もないと聞いておりまして、活用はされていないということを踏まえる必要があるということかと思います。
 振り込め詐欺救済法でございます。これは平成19年12月に法律が成立しまして、平成20年6月から施行されている法律でございますが、振込利用犯罪行為というものを特定しまして、その被害者に対する被害回復分配金の支払手続等を定めた制度でございます。
 若干付言して申し上げますと、その犯罪利用口座という形で使われた口座を一定の手続を経て凍結しまして、その凍結をした口座の資金を原資としまして、被害者に対して支給しているという手続でございます。
 平成20年6月からの運用以来、2年少し経ったところでございますが、かなり件数も重ねられており、支給された金額も数十億円という形で蓄積されているようでございまして、それなりに実績が上げられております。
 分配方法や分配金と損害賠償請求権との関係、あるいは少額で分配困難な場合や残余が生じた場合の処理等について参考になるということで書いておりますが、分配金と損害賠償請求権との関係につきましては、個々の損害賠償請求権は分配を受けた限度で消滅するという形で民事上の調整ルールが設けられておりますし、残余が生じた場合につきましては、犯罪被害者等への支援のために活用することができるという規定が設けられておりまして、現在、金融庁の方でこの使途についてどうするかという議論をするためのプロジェクトチームが立ち上げられたところでございますけれども、残余の金銭の使い方について参考になるところがあるのではないかと考えております。
 以上が国内制度でございます。
 3ページは、関連する諸外国の制度ということで、集合訴訟型と利益剥奪型の2つに大きく分けまして検討いたしました。
 集合訴訟制度について「オプト・アウト型」あるいは「オプト・イン型」と書いてございます。これにつきましては、後ほど消費者庁の研究会の報告書を御説明する際にイメージ図を付けておりますので、そちらの方でまた重ねて御説明したいと思います。
 正確なところは、もっと定義づけ等が必要かと思いますが、概略として申し上げますと、オプト・アウト型につきましては、個別の権利者の授権や届出等を要しないで訴訟手続を行うもの。オプト・イン型につきましては、授権ないし届出を要するものと積極的な行為を要するものと分けて整理しております。
 まず、オプト・アウト型につきましては、アメリカのクラス・アクションであるとか、パレンス・パトリー訴訟、父権訴訟と呼ばれることもありますけれども、これが該当するのではないかと考えられているところでありまして、共通点を持つ一定の範囲の人々を代表して、1人または数名の者のために訴え、または訴えられる訴訟形態と言えるかと思います。
 これにつきましては、少額請求権のように消費者個人が自ら単独で請求することが実質的に困難な件について、その行使を実効的なものとする被害者救済制度として参考になるのではないかと考えて、研究会では検討を行いました。
 オプト・アウト型クラス・アクションの制度については、既にさまざまな議論がされていたところでございますけれども、ポイントとしては、特に判決の効力がクラスに有利と不利とを問わず、オプト・アウトをしなかったクラス構成員に及ぶとされているところ、いわゆる手続保障の問題などが仮に我が国に導入するとした場合には、非常に大きなハードルになるのではないかと。
 そのほか、消費者全体の損害を一括して認定するという損害賠償額の認定の手法であるとか、その損害賠償額として事業者などから支払わせた金銭を個々の消費者に分配するとした場合の分配方法等についてどうするのかといったところにつきましては、十分な検討を要するのではないかと整理したところでございます。
 こういったものを踏まえまして、消費者庁の研究会で集合訴訟手続のモデル案ということで、幾つかの案をお示ししているところでございまして、それについては、また後ほど御説明したいと思います。
 併用型につきましては、オプト・イン型とオプト・アウト型を併用するという訴訟形態も諸外国の中にはあるということでございます。
 二段階型でございますけれども、ブラジルの制度などがそれに該当するのではないかと考えられているところでございますが、手続を二段階に分けまして、共通争点としての責任原因の存否を判断する手続と個別争点である損害額などを判断する手続との二段階に分けるという手続のようでございます。
 この手続を二段階に分けるということにつきましては、現在の我が国における、いわゆる集団訴訟等において、総論部分と各論部分とに分けるということと似たところもございますし、適格消費者団体の差止請求につきましても、不当条項という形で共通するところについて不当性を判断し、その後に個別に個々の消費者が判決を事実上活用することによって、被害回復を図るといったことを想定しておりますので、我が国の訴訟手続に比較的整合的ではないのかという議論がされました。
 ただし、ブラジルの制度においてそうだと言われておりますけれども、判決の効力が消費者に有利なように片面的に拡張するという制度のようでございまして、これにつきましては事業者サイドからしますと、手続が公平と言えるのかといった問題点もあろうかと思いまして、そういったところが問題になるのではないかと指摘をしております。
 利益剥奪型につきましては、消費者団体などによるものとしまして、1つはドイツの不正競争防止法に既に導入されているものがある。
 それから、行政庁によるものとして、先ほど緊急停止命令のところで若干触れさせていただきましたが、アメリカのFTCやSECなどによる裁判所に対するインジャンクションの申立制度があるということでありまして、こういったものについても検討いたしました。
 4ページでは、今後の検討の方向性ということで書いてございます。
 なお、資料2-1の報告書本体の方では、本文の方に今、申し上げたようなことを書いておりますとか、字が大変小さくて恐縮ですけれども、資料の参考17~19までお付けしている縦長の資料がございまして、諸外国の制度について比較整理を試みたものでございますので、また御参考にしていただければありがたいと思っております。
 続きまして、資料2-2につきまして御説明したいと思います。
 集団的消費者被害救済制度研究会は、消費者庁が昨年9月に発足いたしまして、その後に内閣府時代の研究会を引き継ぐような形で新たに集団的被害救済制度という形で、消費者庁長官の私的研究機関として設けられた研究会でございます。
 資料2-2は、先ほどの資料2-1の概要と同じような4枚ものでございまして、あと報告書本体で白表紙をお付けしているものと思います。
 資料2-2を御説明する前に、恐縮ですけれども、白表紙本体の目次をごらんいただきたいと思います。目次では「I 研究会開催の経緯」「II 集団的消費者被害の実態」という形で書いてございます。
 概要版の方をごらんいただきますと、いきなり「II 集団的消費者被害の実態」という形で書いておりまして、Iはどこに行ったんですかということですが、Iは目次の方で言うところの「研究会開催の経緯」でございます。
 IIIも飛ばしておりますけれども、「国内制度の分析」というところでございます。経緯等は設置法の附則等でございまして、国内制度の分析につきましては、先ほどるる御説明申し上げたような消費者団体訴訟制度や選定当事者制度がどうなっているかということが中心でございますので、また御参照いただければと思います。
 中身につきましては「IV 集合訴訟制度」「V 行政による経済的不利益賦課制度」「VI 保全制度」でございまして、そのポイントについては、概要版の方で簡単に書かせていただいております。
 参考資料をごらんいただきたいと思います。報告書の後半部分に、ページ数がわかりにくくて恐縮ですけれども、参考資料という形でお付けしておりまして、参考資料の3ページに「資料3」としまして、消費生活相談の件数等のデータに関するものを若干お付けしております。
 参考資料3は、国民生活センターのPIO-NETという消費生活センターの苦情相談に関するデータベースのようなものがございますけれども、それに見る相談件数の推移という形で書いております。 最近若干減少しておりますが、90万件ぐらいということで推移しておりまして、まだ相談件数は多い状況ではないかと考えられているところでございます。
 4ページですが、その内訳ということで取引、5ページに安全・品質という形で、どういった相談内容が多いのかということについて書かせていただいております。
 取引の方は、2009年度に関して言いますと、サラ金やフリーローン、アダルト情報サイトといったものが上位の方に来ておりますけれども、商品一般、賃貸アパートであるとか、健康食品、新聞等の問題等もあるところでございます。
 6ページに資料5がございます。これはPIO-NET情報に寄せられている相談につきまして、金額がどれぐらいのものかというのもデータとして取っておりますので、それを棒グラフでお示ししたものでございます。
 ごらんいただきますと、例えば自動車のようなところでは、比較的金額が多いものもございますけれども、例えば移動通信サービスであるとか、賃貸ものというところを見ますと、この図が見にくくて恐縮ですが、50万円未満が多いということでありまして、50万円というのを少額と見るか、多額と見るかというのは評価の余地があるところですが、一般的には訴訟においては少額と見られているのではないかと思われるところでございまして、こういう少額事案が比較的消費者紛争においては多いのではないかと思われるところでございます。
 7ページ以下、資料6としまして、集団的消費者被害事案の整理を試みております。
 これは4つの区分を試みておりまして、被害者の特定が容易か、困難か。被害内容は定型的か個別性があるかという2つの視点をマトリックスしまして、4つに整理させていただいたものでございます。
 といいますのも、最終的に訴訟で判決ということを考えました場合、被告は原告に対して金幾ら幾ら支払えという判決主文になろうかと想定されるところでありまして、やはり、被害者そして被害内容、支払われる金額がはっきり特定できないと、恐らく判決主文にはならないと考えられるところでございます。また、行政処分で何かするということにしましても、その処分の内容を確定しないといけないと考えられるところでありますので、最終的には被害者と被害内容の特定がどこまでできるのかというのが非常に重要になってくるのではないかと考えた次第でありまして、そういったことから4つの区分を試みたところでございます。
 「1.被害者の特定が比較的容易であり、被害内容が定型的と思われる事案」としましては、例えば学納金返還事案。消費者契約法に基づく不当利得返還請求が問題となる事案でございますけれども、被害者の特定は受験生名簿といったものである程度可能ではないかと思われることであるとか、被害内容につきましても、消費者契約法の適用により、平均的な損害額を超える部分について無効されるとなった場合、支払い済みの授業料等の金額は幾らかというところを見れば、おのずとその金額が明らかになるだろうというところでございまして、定型的ではないかと考えた次第でございます。
 あとは英会話学校の事案であるとか、個人情報流出事案など、幾つかの案件について書かせていただいております。
 8ページに行きますと、ねずみ講事案であるとか、預託商法事案とか、幾つかのものがございます。これらにつきましては、不当な勧誘という点に着目しますと個別性が強いのではないかと思われるところでございますが、他方で、例えばねずみ講のように当該商法自体が強い違法性を持っていて、破綻必至であると、公序良俗無効という形で、そのシステムそのものに着目をし、不当利得返還請求が生じるんだという判断がされるという裁判例もあるようでございまして、そうした場合、その被害者の属性であるとか、そういった問題が余り出てこなくて、システム自体が違法かどうかというところが共通争点としてかなり浮上してくるのではないか。
 そうした場合に、あとは被害者の特定はそういった名簿などで特定が可能ではないか。その金額についても、支払い済み金額であるということで特定が可能ではないかということで、場合によっては1.の類型の方に浮上してくるのではないかと思われるところでありまして、そういう趣旨で書いております。
 もっとも、6ページのとろで二重で括弧をしているところにつきましては、細かい字で恐縮ですけれども、7ページの一番下に※で注記をしておりまして「二重線枠内は、悪質商法事案であるが、事案内容によっては2.にも4.にもなり得る」。やはり、システム自体が強度な違法性とまでは言えない場合には、勧誘の過程でも詐欺行為があったのか、なかったのかとか、消費者契約法で言うところの不実告知があったのか、なかったのかとか、そういった個別的な判断が要するということも十分考えられるわけでありまして、そういった場合には、被害内容の個別性というものが出てくるのではないかと考えられるとこであり、一概に1.の類型に整理できるものではないかと考えておりまして、その点は注記させていただいているところでございます。
 9ページの2.です。被害者の特定は比較的容易と思われるが、被害内容の個別性が強いと思われる事案として、例えば悪質リフォーム事案や敷金返還請求事案などについて書いております。
 悪質リフォーム事案につきましては、本当は床下が腐っていないのに、腐っているよということを欺罔して、不必要な床下換気扇のようなものを設置するという事案でございますけれども、その際、だれに勧誘したのかということは事業者の名簿等から特定することはできるだろうと思いますが、勧誘文言がどうであったかというところが争点として浮上してくると思われますので、それは勧誘者と非勧誘者との間で個別に異なり得るのではないかと考えておるところでございまして、そういう意味では、被害内容の個別性が強いのではないかと整理しております。
 10ページ、3.です。被害者の特定は困難であるが、被害内容は定型的と思われる事案として、灯油カルテル事案であるとか、偽装表示事案という形で書いてございます。
 例えば灯油カルテル事案につきましては、闇カルテルという形で石油の販売価格をつり上げたという事案でございますけれども、その場合の消費者が被った差額といいますのは、適性価格と実際につり上げられた価格との差額というのが損害額になるのではないかと想定されるところではありますが、そういう意味では、被害内容は皆さん割と同じと考えられるところですが、被害者、末端消費者、エンドユーザーは一体どこにいるのかというのは、例えばカルテルをした業者が把握しているわけでもなく、流通過程を追っていく必要があるのではないかと考えられるところでありまして、そういう意味では非常に困難なところがあると考えられるところでございます。
 最後11ページ、4.被害者の特定が困難であり、被害内容の個別性が強いと思われる事案ということで書いてございます。薬害事案であるとか、食中毒事案という形で書いてございます。
 例えば薬害事案につきましては、薬品の不良によって多数の被害者が生じたという事案でございますけれども、投薬を受けた者がどこに存在するのかというのは、なかなか把握するのは難しいところがあろうかと思いますし、被害内容につきましても、被害がどのように発生したのか。障害の内容も千差万別であろうと思いますので、そういう意味では個別性が強いと思われますので、最終的に損害賠償請求権を確定しようとすると、個別に見ていかざるを得ないのではないかと考えるところでございまして、こういった事案もあるのではないかと整理したところでございます。
 概要版の方に戻っていただいて恐縮ですけれども「II 集団的消費者被害の実態」につきましては、今まで申し上げたようなことをまとめたものでございます。少額被害が多いということであるとか、集団的消費者被害の事例については、訴訟に適する事案と訴訟での対応が困難な事案という形で、ある程度整理をしていく必要があるのではないかということが問題意識として挙げられたところでございます。例えば偽装表示事案につきましては、先ほどカルテルについて申し上げましたが、結局、被害者がどこに存在しているかということを把握するのはなかなか難しいところがございますので、そういう事案についてどうするのか。また、差額についてどのように把握するのか、損害をどのように把握するのかということについても難しいところがあるのではないかということが議論されました。
 また、悪質商法事案につきましては、結局、訴訟で判決を得たとしましても、それを強制執行するまで時間がかかる。その間に財産の隠匿や散逸等によって判決が絵に描いた餅に終わるということも想定されるところでありまして、そういう事案におきましては、訴訟手続というよりは、財産の保全手続のようなものが必要ではないかと考えられるところでありまして、そういった問題意識をまとめてございます。
 矢印の2つ目ですけれども、集合訴訟の類型は被害者の特定が容易で、被害内容が定型的な事案、例としては不当条項に関する事案などと書いておりますが、そうしたものはなじみやすいと考えられるところでございますが、そのほかどのようなものが取り込めるかについて検討する必要があるとまとめたところでございます。
 「IV 集合訴訟制度」についてでございます。これにつきましては、先ほどの白表紙の末尾のところで、参考資料の47ページ以下、資料20というところでイメージ図をまとめておりますので、そちらを御参照いただきたいと思います。
 こちらは関連制度のイメージ図ということで、I~VIIまで、選定当事者制度以下、幾つかの制度について概略を書いております。
 まず「I 選定当事者制度」につきましては、先ほど、内閣府時代の研究会で触れられたところを申し上げましたけれども、既に今の民事訴訟法で存在している制度でございますが、事業者の利益侵害行為により多数の消費者に被害が発生したという場合、その中で消費者が代表者である選定当事者を選定しまして、その選定されました代表者が選定した人の請求権を代表して訴訟状を請求するという制度でございます。
 これにつきましては、イメージ図の消費者のところに実線と点線の丸印を書き分けておりますけれども、これは意味がございまして、判決の効力は選定をした者についてのみ及ぶ。選定をしなかった者には判決の効力は及ばないという制度でございます。
 ただし、これにつきましては、余り活用されていないのではないかと言われているところでございまして、そこを更にどう考えていくかというのが大きな課題になってくるものではないかと認識をしております。
 「II オプト・アウト型(アメリカのクラス・アクションなど)」につきましても、先ほど少し先行して申し上げましたが、事業者の利益侵害行為によって被害を受けた消費者が多数生じている場合に、その中から適切な者を裁判所が許可手続という形で認定する。その代表者として選ばれた者が消費者全体の請求権を一括して訴訟状を行使するという制度でございまして、一括行使という形で非常に紛争に一回的な解決を図るとともに、いわゆる利益の剥奪という効果も徹底するという非常に強力な効果をもたらそうというものだと思われます。
 ただ、判決の効力は消費者全体に及ぶという点でありまして、代表者が勝った場合は消費者にとって非常にメリットは大きいということだと思いますが、負けた場合は、負けた判決の効力が及ぶということでございまして、自ら預かり知らないところで自分の請求権について敗訴判決の効力が及ぶというところについて、憲法上の問題もあるのではないかということが言われております。
 そこでアメリカの制度におきましては、当該手続に巻き込まれたくない人は除外をするオプト・アウト手続というものをすることによって、判決の効力が及ぼされないということは可能だとしておるところでございますけれども、このオプト・アウトをしようとすれば、代表者による訴訟が追行されているということを知らなければならないということでありまして、知るためには手続に関して通知あるいは公告をするということが必要になってくるということでありまして、現にアメリカにおきましては、テレビ広告であるとか、新聞広告、インターネットのメールであるとかといったことで通知・公告を行うことがされているようでございます。
 ただし、そうした場合、テレビ広告を1本映すにしましても、非常に大きな金額がかかるということでございますので、費用をだれが負担するのかとか、仮にこれを我が国に導入するとした場合には、かなり大きな問題になってくるのではないかと思われるところでございます。
 48ページの「III 二段階の訴訟手続」ということで、ブラジルやフランスの制度を書いてございます。手続を二段階に分けまして、責任原因判決について手続追行主体が訴訟を起こして、そこを確定する。二段階目に、個々の消費者が損害額などの個別の争点を争うという手続を別途設けるというところでございます。
 IVは、ドイツにおける消費者団体等による利益剥奪請求。
 Vは、行政による利益剥奪制度と書いてございます。
 VIは、課徴金制度という形で書いておりまして、これは事業者の違法効果が行われた場合に、行政庁がその事業者から金銭を徴収することができる制度でございます。
 VIIは、被害回給付金支給制度という形で書いております。
 概要版の方に戻っていただきまして、「IV 集合訴訟制度」についてです。
 集合訴訟制度につきましては、これまでの検討を踏まえ、オプト・イン、オプト・アウトの二段階方式という形で書いております。このオプト・イン、オプト・アウトの二段階というのは、今、御説明申し上げたとおりでございます。
 手続モデルとして4つほど示しまして、それぞれ制度設計上の課題について分析したと書いております。
 2、3枚目をごらんいただきたいと思います。この消費者庁の研究会では、集合訴訟制度の手続モデル案ということで、A案~D案まで4つのモデル案を提示させていただいております。
 このうち、順番が逆になって恐縮ですけれども、C案がアメリカのクラス・アクション、いわゆるオプト・アウトの制度をイメージしつつ、念頭に置いて書いたものでございまして、手続追行主体の提訴及び追行許可の審理を経た後、通知・公告をして、オプト・アウト手続をかませる。それで審理をしまして、最終的には対象消費者の総意に対して支払うべき、いわゆる総額判決いう形で進んだ。判決の効力は有利にも不利にも及ぶという制度でございます。
 これに対しまして、D案の方は、現行のオプト・イン型に比較的近いのではないかと考えられる制度でございますけれども、手続追行主体の提訴、手続追行許可の審理の後に通知・公告するということを含んではどうかというものでございまして、そういうことでできるだけ多数の消費者の請求権を束ねるということを可能にしようということを考えたものでございます。
 戻りまして、A案の方は、いわゆる二段階型というものを想定したイメージ図でございまして、一段階目は責任原因についての判決を行うということにしておりまして、二段階目において債権の確定手続を行う。この債権確定手続については、まだイメージが固まっていないところがございますけれども、簡易な手続で個々の消費者の請求金額を確定していくんだと。それで確定されない場合には、給付判決という形で訴訟手続に乗せていくんだというイメージでございます。
 このA案の判決につきましては、不利な判決の効力は及ばないと書いているところでございまして、ここはどう考えるかというのは、A案においてさまざまな考え方があるところでございまして、ただこれにつきましては、今後、第2回以降の専門調査会において、その考え方を具体的なところで提示させていただければと思っているところでございますが、1つの考え方としましては、この責任原因の手続における訴訟物は何なのかというところも絡むところでございまして、それは個々の請求権とは別の確認できる地位のようなものがあるんだと仮に考えますと、その訴訟物が個々の請求権とは異なるんだということでありまして、そうした場合、その訴訟物が異なるがゆえに、第一段階目の判決というのは、個々の請求権の効力には及ばないんだと整理できるのではないかという考え方で、研究会の報告書では書いたりしておるところでございます。ここについては、更に詳細な検討を要するのではないかと認識しておるところでございます。
 B案につきましては、A案とC案の折衷案のようなものでございますが、オプト・アウト手続であるものの、二段階的に仕組んだものということでございまして、オプト・アウトの申し出の後に、共通争点、責任原因については判断する。ただ、総額判決ということを考えますと、やはり被害内容がまちまちであるような事案ではなかなか難しいのではないかと考えられるところでございますので、やはりそこは個別に債権の確定手続などがどうしても必要になってくるのではないか。そうした場合は、二段階の手続をB案に置いても見直せる必要があるということで、B案というものを考えてございます。
 これらのモデル案につきまして、メリット、デメリットとして3ページ目の方ですけれども、幾つかまとめております。
 まず、C案につきましては、メリットとして総額を支払わせるということですので、収益の吐き出しという点では非常に効果が強い。または紛争の1回解決に資するのではないかというメリットがあると指摘されておりますけれども、デメリットとして、自ら関与していない敗訴判決の効力が及ぶといったことが問題であるとか、通知・公告の負担の問題であるとか、あるいは総額判決ということを考えますと、対象事案はおのずと限定されるのではないかといった問題であるとか、そういったことがデメリットとして指摘されております。
 また、A案につきましては、メリットとして不利な判決の効果が消費者に及ばないということで、手続保障の問題は起きないんだということにしておりますけれども、逆に不利な判決が及ばないということがどのように説明できるのかということで、制度設計上の課題ということで、一段階目の判決の効力の説明と書いておりますが、ここは非常に大きな問題ではないかと思われるところでございます。
 こういったメリット、デメリットがあるということを踏まえまして、今後検討すべき論点ということで、手続追行主体、適格性の判断の方法、通知・公告の要否、費用負担の問題、和解や取り下げなどの問題といったものがあるのではないかと考えておるところでございまして、これは先ほど原事務局長から御説明のございました資料1の今後の検討課題のところで書かせていただいたものと共通しております。
 最後に、4ページ、行政による経済的不利益賦課制度、財産保全制度でございます。
 これにつきましては、まず、対象となる違法行為としまして、やはり民事訴訟が有効に機能しないものというのは、消費者被害においてはたくさんありますので、民事訴訟ですべてカバーすることが可能なわけではないという問題意識でございまして、何らかの別途行政的な手法でやるとか、財産保全制度のようなものが要るのではないかと考えておりまして、そういうことを書いております。
 その不利益賦課の方法につきましては、違法行為の抑止のため一定の金銭、課徴金などが近いのではないかと思っておりますが、そういったものであるとか、収益そのものの納付を命じるものであるとか、違法状態の是正回復、いわゆる原状回復措置という形で命じるものなどがあり得るのではないかという整理をしております。
 今後の論点としましては、賦課する金銭の算定方法であるとか、違法行為の特定方法、あるいは調査の方法などについて検討すべきではないかという整理をしております。
 最後に、財産保全制度であります。とりわけ悪質商法事案というものを考えた場合に、やはりこういった制度を別途設けることが不可欠ではないかと考えられるところでございまして、ただ、これはいわゆる刑事手続で先ほど御紹介しました被害回復給付金支給制度などもあるところでありまして、それとの役割分担、連携をある程度念頭に置く必要があるのではないかと考えておるところでございます。
 その保全の方法としましては、包括的な保全の方法であるとか、私法上の契約の効果として取引の停止。これは振り込め詐欺救済法などを念頭に置いております。といいますのは、銀行口座の凍結というのは、銀行取引約定に基づいて凍結しているということでありますので、「私法上の契約の効果として」と書かせていただいておりますが、そういった方法があるのではないかということを書いております。
 今後検討すべき論点としては、やはり早期に悪質事案を摘発することが必要になってくるかと思いますので、そういう情報の収集であるとか、他方で、これは非常に強力な効果を伴うわけでありまして、企業活動を行っている事業者の例えば銀行口座を凍結しようとしているわけですので、場合によっては、企業活動は一発で倒産に追い込まれるということもあり得るという、非常に重大な効果を引き起こす可能性のある制度になる可能性があるのではないかと思っておりまして、そうした場合、やはり事前手続をどうするかというのも当然大きな論点になってこようかと思ったところでございます。
 以上、御説明申し上げましたけれども、以上のような観点で、消費者庁で研究会を行い、その報告書をとりまとめたところでございます。
 なお、この研究会の報告書につきましては、意見募集を行いまして、それが資料2-3でお付けしているところでございますので、最後に簡単ではございますが、その意見募集の概要について御説明したいと思います。
 1枚目に、実施期間や意見の提出者等について書かせていただいたところでございまして、33名の方から御意見をちょうだいしたところでございます。
 1枚めくっていただきまして、別添というところで主な意見の概要等ということで書いてございます。
 順序が逆になって恐縮ですけれども、5ページの「その他」というところがございまして、総論的なところはここに書かせていただいておるところであります。被害救済制度を早期に創設すべきであるといった御意見、あるいは政府の設置法の附則に書かれたことについて、最大限の努力をすべきであるという御意見など、幾つか寄せられているところでございます。
 上から5つ目のところでは、適格消費者団体につきましても支援の充実強化が必要ではないかということが書かれております。
 他方で、制度の濫用防止をすることが必要であるという御意見もございます。
 戻っていただきまして、1ページの集合訴訟制度です。先ほど申し上げたところと一緒ですが、制度の濫訴の防止策を講じるべきであるという御意見もございます。
 手続追行主体につきましては、適格消費者団体について一定の役割を果たせる制度の構築を求めるという御意見が幾つか寄せられているところでございます。
 2ページに行きまして、手続モデルというところでございます。これは今、申し上げましたA案~D案までということについて、御意見という形で整理しているものでございますが、A案とC案という形で2つの制度を検討すべきだという御意見が最初に方にございます。
 真ん中より下辺りでは、A~D案のいずれも慎重に検証すべき問題点を含んでいる。
 その下ですが、A案について片面的既判力を認める点で問題であるという御意見もございます。
 総額判決については可能とすべきであるという御意見もあれば、採用すべきでないという御意見もあったところでございます。
 3ページに行きまして、行政による経済的不利益賦課制度についてです。
 一番上のところですけれども、制度の対象となる事案の限定及び明確化を図るべきであるという御意見。
 真ん中よりやや下のところですが、二重処罰とならないように配慮すべきという御意見等も寄せられているところでございます。
 最後に、4ページ、財産保全制度でございます。
 一番上の御意見ですが、悪質商法事案への対処という観点から、財産保全制度を検討すべきであるという御意見もございますが、下から3つ目のところでありますけれども、対象となる事案の限定及び明確化を図るべきであるという御意見もいただいたところでございます。
 以上が意見募集の結果の概要でございます。
 とりあえず、私の方からの御説明としては、以上でございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。この専門調査会の今後の審議におきましても、ただいま御紹介いただきました2つの研究会報告書、特に本年9月に公表された報告書が重要な参考資料となるものと思います。
 どうしても事柄の性質上、法律用語あるいは法的概念が出てくることはやむを得ないと思いますが、本日は、そういったものについての御質問も含めて、自由に御質問、御意見をちょうだいいたしたいと存じます。
 どうぞ、どなたからでも結構でございますので、よろしくお願いいたします。
 野々山さん、どうぞ。

○野々山理事長 今の報告に対する質問ということではないのですが、今後の進め方についてです。現在4つのモデル案が出されているわけですね。前回の研究会の目的は、日本で考えられる制度を抽出して、その中でメリット、デメリットというものを考えていく。それも抽出する。それから今後、その中で検討すべき論点というものを上げていくというのが作業で、その成果が今説明のあった御報告だと考えています。そして、この調査会については、はみ出るものもあるのかもしれませんが、今後はこれらの4つのモデル案を基本として、そのどれか、あるいはその組み合わせ、あるいは複数ということを基本として、最終的に日本でどういう集合訴訟がいいのかということについて収れんさせていく議論をしていくことを考えているのかというのが1点。
 それから、その議論をする上においては、さまざまな論点があるわけですが、その論点というのは、それぞれの制度について非常に密接に絡んできているわけでありまして、一つひとつの論点と収れんさせていく方向性というものをどのように組み合わせて今後議論していくかについて、御説明をいただきたいと思っております。

○伊藤座長 これは説明というよりは、まさに委員の間で議論をしていただくべき問題かと思いますが、とりあえず何か事務局の方でおっしゃることがあればお願いします。

○加納企画官 消費者庁としてどのようにこの専門調査会に関係をさせていただくかというところもあるのですが、まさにその4つのモデル案を研究会として整理させていただいたところでございまして、それは今回の専門調査会の議論の出発点として位置づけていただければいいのではないかと思います。
 ただ、そのどれを選択するかとか、それを消費者被害における集合訴訟制度の役割をどうするかとか、行政的な不利益賦課制度をどうするかとか、そういったところもあろうかと思いますので、そこはむしろこの専門調査会の中で御議論いただいて、それを見据えながら、消費者庁としても審議に御協力させていただきたいと思っております。
 個別論点につきましては、当然、手続法の検討をしていくということになりますから、個別論点も検討しなければなりませんし、個別論点を検討していく中で、モデルが果たしてこれでよかったのかという全体像と個別論点をある程度行ったり来たりという検討もしなければならないのではないかと思われますので、そこは必要に応じて、ある程度個別論点を検討した上で、全体像についても御検討いただいた進行を検討していただくことになるのではないかと思います。

○伊藤座長 ただいまの野々山さんや加納さんからの御発言に関して、委員の方で何か御発言はございますか。
 三木委員、どうぞ。

○三木(浩)委員 お2人の発言に対してということではないんですけれども、行政による経済的不利益賦課制度と財産保全制度の2つと、この専門調査会との関係ということですが、先ほど御説明があったように、ここの2つそれ自体の直接的な検討は、この専門調査会の対象ではないと。別途、消費者庁の方で並行してというか、検討は進められるということだと思いますが、ただ、この専門調査会で集合訴訟を検討する際に、例えばそのような消費者被害類型は、経済的不利益賦課制度の方で賄うべきだとか、そちらで対応した方がより効率的であるとか、あるいは犯罪性が高いので財産保全制度を始めとした悪徳商法事案の対応がある程度見通しが立つのであれば、そちらに譲るべきだとか、そのような議論をしないといけない場面が出てくるのではないかと思います。
 したがって、これは要望ですが、並行して行われる経済的不利益賦課制度と財産保全制度の検討状況とか見通しというものを、余りこの専門調査会の最終版で示されても、そういった振り分けみたいな議論に生かせませんので、これは難しい制度ですから、早くといっても、事務局の方でやれることとやれないことがあるとは思いますので、抽象的な形での要望になりますが、やはりかなり早い段階で、例えばですけれども、何かつくれそうだとか、場合によっては、再来年の通常国会とかのタイミングで対応するのは難しそうだとか、何でも結構ですが、ある程度早めのそのようなことの情報が折々を示していただけるとありがたいとは思います。

○伊藤座長 今の点、加納さん、どうぞ。

○加納企画官 この点は、消費者庁の検討状況について、また御相談させていただくなり、御報告させていただく機会を設けさせていただければと思います。

○伊藤座長 わかりました。
 中村委員、どうぞ。

○中村委員 今の三木先生の御意見と一部同じで、一部違うんですけれども、今回の調査会の基になっております、資料の中にもございます消費者庁及び消費者委員会設置法附則におきましても、もともと「加害者の財産の隠匿または散逸の防止に関する制度を含め、多数の消費者に被害を生じさせたものの不当な収益を剥奪し、被害者を救済するための制度を検討する」と書いてございまして、また、参議院の付帯決議におきましても、これをベースとして、こうした検討に当たって、「父権訴訟、適格消費者団体による損害賠償等団体訴訟制度、課徴金制度等の活用を含めた幅広い検討を行う」ということで決議がされているというのは、今回の前提になると認識をしております。
 そうした中で、まずここで言われておりますもともとの目的でございます財産散逸の防止というところは、よく消費者に被害が起こって、被害に対しての損害賠償を求めようといたしますと、例えば計画倒産をするでありますとか、そういうことをして賠償の原資がなくなるということを意識されているのではないかと見ているわけです。
 そういうふうに考えますと、ここでいう加害者というのは、財産を隠匿したり、そういう計画倒産などをするような悪質な業者というのが主に念頭に置かれているような感じがしております。
 そういうことで、これを素直に読みますと、求められている対象事案というのは、いわゆる悪徳事業者が行う悪徳商法による被害の救済のように思われます。そういうふうにいたしますと、思い浮かびますのは、この例に載っておりますのは、預託商法でありますとか、悪質なリフォームでありますとか、最近の高齢者の被害等も特に問題になっておりますけれども、こういう事案が一番国民としても、皆さんとしても懸念されている事案なのではないかと思うわけですが、この今回の報告書の45ページのところに、今の御説明でもございましたが、「このような事業者は責任追及が始まると、法人を解散させるなどして、財産を散逸にさせる例が多く、債務超過となっていることも多いため、一般的には民事訴訟での被害回復が困難なことも多い」と書かれているところであります。この部分については、私も同意見でございます。
 ただ、そうしますと、今回集合訴訟の議論ということなんですが、これが先行していて、行政による経済的な不利益賦課制度であったり、財産の保全制度の検討が後になっているというのは、若干納得がいかないというところがございます。こういう悪意の事業者というのは、集合訴訟を起こしても財産を隠したり、逃げたりしてしまうということもございますから、こういう事業者による被害を解決することがまず先決だということだとすれば、行政的な手段というのも早急に解決、検討していくというのが妥当だと考えております。
 また逆に、集合訴訟でこういう悪質商法等を対象としようということでしたら、この対象として悪質商法を明確にした中で制度設計をすべきなのではないかと思います。
 このように申し上げておりますのは、本当に助けなければならない消費者被害を救おうとしてつくったのに、ふたを開けてみると想定した対象には使われないで、普通の事業者の普通の事業で、今まで一般消費者の方が問題とは思っていなかったような事案がどんどん訴えられて、これに対して企業は対応をしなければならないということで、勿論全部負けるということではございませんけれども、やはり企業として訴訟に対応するということになりますと、コストが相当高くなったり、あるいは裁判官の方によって違う判断が出て、いろいろ困ったことが起こる。こういったことで、その結果として、コストを商品に転化せざるを得なくなって、結局のところ、一般の消費者の方に迷惑がかかることが起こらないかということを心配しているところでございます。今回のパブリック・コメントにもございました濫訴の危険ということでございます。
 こういう話をいたしますと、コストをそういう場合に消費者に転化するのはけしからぬといったような意見もあるかとは思いますけれども、普通の企業というのは、消費者や国民の皆様に対して、利益を吸い上げて奪っているという存在ではなくて、サービスを提供して、一般の国民が働いている集合体ということでありますから、それができないとなると存在ができなくなるということでありまして、訴訟が起こされるような企業は問題があって、つぶれればいいということでもないのではないかということで思っているわけです。
 そういうことですので、今回集合訴訟ということを検討していくに当たっては、この目的が何なのか、何を助けようとしているのかということをきちんと議論して、それに基づいて一番いい制度をつくっていくというところを考えていただきたいということでございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 ただいま、三木委員や中村委員からの御発言を踏まえましても、行政による不利益賦課制度や財産保全制度が、総体としての被害者救済制度の中で集合訴訟制度と密接な関係を持つということにつきましては、恐らく共通した認識があるかと思います。
 また、集合訴訟制度を設計する場合においても、一体どういう被害を想定してということとの関係で、不利益賦課制度等に関してどのような制度設計がされるのかに関する情報も大変重要かと思いますので、その辺りは消費者庁、具体的には加納さんがしかるべき時期に、適切な情報をこちらにも提供していただき、それを踏まえて、本調査会の第一次的な任務である集合訴訟の基本的な制度設計について御審議いただくということかと思います。冒頭の原事務局長からの発言もそういう趣旨と私は理解しております。
 ほかにいかがでしょうか。磯辺委員、どうぞ。

○磯辺委員 先ほどの中村委員の御発言との関係で、私の考えるところを申し上げさせていただきたいと思います。
 消費者庁及び消費者委員会設置法の附則の読み方なんですが、確かに冒頭から、加害者の財産の隠匿または散逸の防止に関する制度ということで入っておりますけれども、これはこの制度を含めということで、「多数の消費者に被害を生じさせたものの不当な利益を剥奪し、被害を救済するための制度」というところが主文でございますので、そのうちの一部については、そういう散逸の防止に関する制度も必要という位置づけかと思います。そういう意味では、多数の消費者被害を生じさせた者に対する、特に私どもの立場から言うと被害救済の制度ということを是非実現したいと思いますし、そのための集合訴訟型の検討会ということが1点。
 それと現実の消費者被害は、やはり相対的には少額多数の被害が多いということで、この後の議論の中で具体的な検討をしていけばいいと思いますけれども、現行の民事訴訟制度では、少額であるがゆえに権利回復をあきらめざるを得ないという実態が多々あろうかと思いますので、そういった点の手当が必要ということも考えているところを申し述べさせていただきます。

○伊藤座長 どうでしょうか。第1回の審議でもございますので、山口委員、三木委員、大河内委員、何か御疑問や、確認をしておきたい点がございましたら、御遠慮なく御発言いただければと存じます。
 山口委員、どうぞ。

○山口委員 私自身は悪徳商法の被害救済をこの数十年間ずっとやってまいりまして、せっかく裁判で勝っても、既にそのときには台湾など外国に財産が散逸していたという事案をたくさん経験してまいりましたものですから、消費者庁ができて最初の最も重要な課題がこのテーマで、特に保全をしっかりやってもらわないと話にならないということで、早くその制度の枠組みをつくってくださいねということを、再三お願いしてきたところです。また、この前の前の三木座長の下での内閣府での審議、あるいは消費者庁での審議もずっと注目して見守ってまいりました。
 しかし、その中でつくづく思うのは、先ほど加納さんからも説明がありましたけれども、保全の制度は非常に難しい。だれがどういう枠組みでどういう要件の下で保全をするのか。広げ過ぎるとかなり恐ろしい制度になってしまいます。かといって、実効性がある制度でなければ困るというところで、どこでだれがどういう要件の下でやるのか。それこそRCCみたいな、整理回収機構のような別組織をつくらないと動かないのではないかということも含めて、かなり大きな枠組みを含めて検討しなければいけないので、なかなか先行した三木座長の下での内閣府での検討でも、確かに難しそうだなと、なかなか議論が深まっておらぬなと、正直言って思っていました。
 そういう観点でいいますと、確かにこの訴訟制度による救済の方の検討が先行せざるを得ないという実情はしようがないかなと思います。恐らく先ほど三木先生の方は、早めに消費者庁との検討結果をここに出して、それを見据えながらの法案はどれがいいか決めようねという話もあったように聞こえましたけれども、正直本音から言いますと、消費者庁の検討はかなり時間がかかるのではないかと思っています。どこでだれがどういう検討をするのか早く決めてくださいと、再三消費者庁にお願いしているのですが、その枠組みも人選もなかなか難しいということで、ちょっと検討に時間がかかるのかなと思っていますので、余りそちらの消費者庁の検討を当てにすると、計画が狂ってくるのではないかと思います。
 したがいまして、中村委員の的確な御意見もありましたけれども、要するに今、少額被害で訴訟制度によって救済すればいいんだが、だれも立ち上がらない。例えば100万円未満の被害というのは、弁護士のところに行っても、費用対効果で、被害者も弁護士に費用を払ってまで、訴訟であえて被害回復しようとしません。ましてや10万円、20万円となりますと、被害者の方もほとんど立ち上がりません。
 例えば、近時のFOIとか、その他いわゆる虚偽情報に基づいて株式を買って、それがばれて株価が暴落して問題になっているという事案がございます。弁護団は身近にたくさんおりますので聞いてみますと、100万円以上の被害者は、弁護士に頼んででも、費用を払ってでも被害回復をやろうと思うけれども、やはり100万円未満の被害者はなかなかそこまではならないという実情は、弁護士の方から聞きます。そういうことを考えますと、先ほど磯辺さんがおっしゃったように、とりあえず少額あるいはお年寄りの被害者などで、なかなか立ち上がらない被害者をどう効果的に救済して、できれば被害還付をするのか。あるいは違法事業者のやりどくを許さないための制度は、勿論行政的な、課徴金的な制度で取り上げることもあり得ると思うんですが、的確な訴訟制度によって迅速に回復するための枠組みを、もし可能であれば、A、B、C、Dの中でどれがいいのか。そこら辺をきちんとした議論を踏まえて、この会で説得力をもって出していただけないだろうかと。それもできれば早めに出していただくことを期待しておりまして、そこら辺で私どもとしてもお手伝いできること、情報提供や枠組み設定を含めて、是非そこら辺について議論して、深めていただきたいなと。私はA、B、C、Dのどれがいいのか白紙なんですが、あるいは2つの制度が必要なのかもしれませんが、そこら辺は是非率直な議論で、いい制度、枠組みをつくっていただきたいなと思っております。

○伊藤座長 わかりました。
 三木委員、どうぞ。

○三木(澄)委員 私は消費生活相談の現場におりますので、長年の相談の中で、山口先生がおっしゃったように、本当に少額な被害、ここの中では大体50万円までを言っておられるんですけれども、勿論そういうものとか、100万円前後のものというのは結構ありますが、それでも消費者は回復ができずにあきらめている方が多かったと思います。おっしゃるように、年齢層もあり、若年者や高齢者などは特にそういう傾向が強かったかなと思います。
 現在では、消費者被害のいろいろな集団の弁護団をつくられて、訴訟等で対応されてはいるんですけれども、なかなかそこに乗り切れない方のために、こういう集合的な被害回復制度というのは、できるだけ早く制定をしていただきたいなとは思っております。
 あと、消費生活ではほとんど悪質業者のケースが多いんですけれども、本当に破綻してしまう、倒産してしまう業者、いなくなってしまうというケースの場合に、それを早い段階で阻止できるような制度ですね。そういうものを早く構築していただきたく思っております。

○伊藤座長 大河内委員、どうぞ。

○大河内委員 今日は発言するつもりはなかったんですけれども、消費者被害ということについて、私たちは物を買った後に、知らなかった、その物についてもっと知識があったら買わなかったのに、とかそんな風に思う、そのことが消費者被害だと、消費者被害についてかなり幅広く考えておりますので、消費者被害についての、この場での共通理解のために、次回からの議論に期待しております。
 制度をよいものにすることについては、努力したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○伊藤座長 窪田委員は研究会の段階からいろいろ御尽力いただいておりますが、何かお願いできますでしょうか。

○窪田委員 私自身は、先ほど中村委員からお話があったことを含めて、また、山口委員の御意見を含めて、なるほどと思ってずっと伺っておりました。
 この問題の難しさというのは、前提となる事件類型というのはかなりさまざまなものが含まれているということにあるのだろうと思います。また、それに対応するというしくみという点でも複数の問題があって、特に財産の保全といった形の話、あるいは訴訟手続をどう含むのかといった点については、多分かなり性格の異なるケースが幾つも出てくるのだろうと思います。
 最終的には、どれか1個ですべてを解決しなければいけないという形ではなくて、それぞれについての適合性を考えながら、この局面の問題を解決していくということになるのだろうと思いますが、その場合でも、この問題に対してはこの手段でというように、1対1の対応という形になるのではなく、複数の措置の組み合わせも考えられるということを前提にして、議論していくことになるのだろうと思います。
 そういう意味では、これからどうやって議論していくのかということ自体が大変に難しいなと思います。その点については、やはり三木委員からも御指摘があった点ですが、他の制度をどう仕組んでいくのかということについては、ある程度の見通しというのがないと、やはり議論がしにくいということになりますし、また、そうでないと、先行した作業でいっぱいに手を広げなければいけないということになりかねないと思いますので、どの段階であるかはともかく、消費者庁での御議論について情報をいただけたら、それを踏まえて議論していくことになるのだろうなと思って、ご意見を伺っておりました。
 また、野々山さんから御指摘があったことでもございますけれども、A、B、C、Dのうちどれにするのかという点に関しても、かなりいろんな論点があり、それをすり合わせていく上で行ったり来たりしなければいけないだろうなと思いつつも、ある程度絞り込みをしていかないと、いつまで経っても制度がつくれない、入口の議論だけで終わってしまうということになると思いますので、その点は何か工夫して議論していく必要があるだろうなと思いました。感想めいたことで恐縮なんですが、以上のことを感じておりました。

○伊藤座長 ありがとうございました。この専門調査会で一定の結論といいますか、方向性を示す時期までの時間は、そう余裕があるわけでもないかと思いますので、やはりこれまでの研究会報告書の中で示された選択肢、具体的にはA案ないしD案を踏まえて、ここでの大方の御意見で、基本的にはA案ないしD案のいずれかの考え方に沿いつつ、具体的な内容に関しては、それぞれの長所、短所として言われているようなことをどうやって生かし、あるいは解決するのかという形での御議論をお願いせざるを得ないかと思います。
 ただ、その際に、財産保全などとの関係で、先ほど山口委員から、なかなか早急には難しいだろうという御発言がございまして、私も何となくの感想として、そう容易なものではないとは思いますが、ただ、そちらの方面の検討状況に関して、適宜情報をいただくことを前提として、ここでの審議をお願いできればと、ただいまの皆様の御発言を伺いながら、感じておったところでございます。
 もしほかに今日の段階で御意見があれば、承りたいと思います。
 朝倉さん、どうぞ。

○朝倉課長 今のお話を伺っていて、今、主に検討されているのは集合訴訟なのですね。集合訴訟制度ができますと、運営していくのは私どもになる訳ですが、そのような立場から、お話を伺っていての感想でございます。
 先ほどお話になっていて、消費者被害というものを救済するために、少額多数の被害を救済することが必要だということもよくわかりますし、そういう場合に、結局のところ、自分が利益を上げようと思ってやっている人たちがそういう危害を生じさせているわけですから、不当な収益を剥奪しなければいけないというのもよくわかります。
 ただ一方で、消費者庁の研究会とは違って、集合訴訟を扱うフォーラムが先行してしまったが故に、その期待を全部訴訟に背負わせようというのは、また難しい話なのでございます。先ほど山口委員がこれに期待するとおっしゃられてしまったので、荷が重くなっているのですが、現実問題として、不当収益の剥奪の検討に多少余計に時間がかかるということがあるとしても、だからといって、司法手続で裁判所がきちんと訴訟で背負うべきものと、そうではなくて行政機関等がきちんと背負うべきものというのは、全体像を見ながら、どこがやるのがこの国全体の仕組みとして、被害を一番合理的に回復できるのかという大きなビジョンを持ち、もともとの目的を見失わずに、何でもかんでも司法制度に入れてしまえばいいということにならないようにしていただけるとありがたいと思っているところでございます。
 個別のところに話が行くと、どうしてもそういう議論になりがちのような気がいたしますので、冒頭に1つだけ申し上げました。

○伊藤座長 わかりました。
 佐藤さん、今日は何か特に御発言ございますか。

○佐藤参事官 私は特に新しい点はないので、皆さんがおっしゃったようなことの繰り返しで恐縮ですが、私どもは民事訴訟法を所管しているということがございまして、この観点からの意見となりますが、この新しい訴訟制度は民事訴訟のある意味特別な形になり、新しい制度が設けられることが前提になると思います。その場合、従来の民事訴訟法の考え方、あるいは他の規定との整合性を取らなければいけないだろうという観点で、私どもの方で参加させていただいて、貢献させていただければと考えてございます。
 2番目といたしましては、民事手続を仕組んでいく上において、やはり何でも入れようとすると、どうしても極端な事例を想定しつつ、立法をせざるを得ないということがあると思います。例えば、非常に価格の大きい個別性の強い事案まで入れようとすると、それに応じた手続保障を仕組んでいかなければいけない。そうすると、手続は重くなっていくという面もありますので、ある程度どういう事件をターゲットにしていくのかという観点は、最終的にどういう形になるかは別にして、大事なのではないかと考えております。
 3番目といたしましては、手続を検討していく上で非常に難しいのは、1つの制度、単純な制度ではなくて、モデルの中で個別論点や共通論点がいろいろ出てくる、いわば縦の糸が何本か、横の糸は複数あって組み合わされるという関係にございますので、そのあたりが検討していく上では難しいのではないかと思っております。そういう意味では、縦の流れも見ながら、横の流れも見つつ、制度を絞っていくという形にならざるを得ないだろうなと考えております。これは全くの感想であり、ごく当たり前のことかもしれません。以上でございます。

○伊藤座長 ただいま、皆さんそれぞれから、この調査会の審議の進め方についての御意見、要望あるいは御注意などをいただきました。第2回目以降は、さらに踏み込んだ具体的内容についての御意見をいただきたいと思いますし、また、本日ちょうだいした御意見につきましては、今後の運営に是非生かしていくことを検討させていただければと思います。この程度でよろしければ、第1回の実質的な審議は、ここで閉じさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
 朝倉さん、どうぞ。

○朝倉課長 申し訳ありません。1点だけ言い忘れてしまいました。
 集合訴訟を審理・運営するのは基本的に私どもであるという話を先ほど申し上げましたが、仮に集合訴訟ができたときに、その制度をきちんと機能させるためには、環境整備というものが非常に重要だろうと思います。パブリック・コメントにも出ている適格消費者団体が集合訴訟制度を追行できるようにという話と同時に、消費者庁の研究会の段階でも、それだけの資力があるかなどといったような話も大分お聞きしたところでございます。絵に描いた餅にならないようにするためには環境整備が必要であり、環境整備がどこまでできるかと訴訟制度をどのように仕組むかというものは相関関係にあると思いますので、その辺の検討というものも、恐らく消費者庁が中心となって消費者行政の方できちんと検討していただいて、折々に還元していただく必要があるのではないかと思っております。

○伊藤座長 わかりました。御指摘ありがとうございます。
 山口委員、どうぞ。

○山口委員 消費者委員会で検討している未公開株、その他詐欺的被害の救済の関係で、こんな議論があるということだけ御紹介しておきたいと思います。
 未公開株の悪質業者、これはほとんど詐欺的と言っていいと思うんですが、そういう事業者による消費者被害は、特にお年寄りが被害に遭うことが多くて、これを何とかしなければいかぬのではないかということで、消費者委員会でも提言をさせていただいたところではあります。金融庁が中心でいろいろ御苦心をいただいてまいりました。消費者委員会から見ると、まだまだと言わざるを得ないんですけれども、その中で1つ議論が出ておりますのは、これはアメリカから来た制度ということで、金融庁の方で悪質業者、無登録の事業者で違法行為を繰り返しやっているということがわかった場合には、裁判所に対して差止命令を求めることができるという制度がございます。全く利用されていない制度です。今度、未公開株の問題の対策で、金融庁でどういうことをやられたかといいますと、その差止命令に対して違反した場合には、3億円以下の罰金を課すという新しい制度をつくられました。
 ただ、この具体的な執行については、率直に言いますとなかなか難しいようでありまして、やはり動かない。私どもは、いちいち裁判所をかませなくていいのではないか。悪質業者、無登録の事業者がそもそも未公開株を売ること自体が法律違反、懲役3年以下の犯罪行為なんだから、いちいち裁判所に申し立てをして、差止ということをやらなくても、行政処分でやればいいではないか。現実に、ファンドその他は、違法行為を繰り返して、消費者から数十億円、数百人単位、あるいは千人単位の消費者から、これはファンドですから、これは無登録事業者ではありませんが、ファンドが数十億円集めて、それで金融庁が業務停止命令を出した段階では、既にもうその集めたお金は雲散霧消している。被害者に返ってこないという実情がございます。この辺は行政的な手続で、行政庁、金融庁がどの程度の権限を持つことが妥当なのか。それを裁判所をかませるということなりますと、なぜそれが機能しないのか。率直に言うと、やはり裁判所が納得していただけるような資料をいちいち集めるのは行政庁としては大変で、やはり行政の組織判断で業務停止命令を出すことまではできるけれども、裁判所で裁判官が求める一から十までの証拠をそろえて、それで裁判所の決定をいただくというのは、なかなか手間がかかってしようがないというところで、役に立たない制度になってしまっているという事情がございます。そこで行政手続による被害者救済あるいは保全とかいう問題と絡めて、現実にもう金融庁などでは、ここで議論されてもおかしくない、あるいは別のグループで検討されてもおかしくないようなテーマで苦しんでおられる。横で見ている私どもとしても、何とかならないのかなと思っているという問題がございます。
 これの問題は、恐らくここで議論される訴訟制度とは別のところで検討されなければいかぬ問題だろうなと私などは思っておりまして、先ほど朝倉さんの方から、何でもかんでも訴訟でというのは困るとおっしゃったとおりで、私もそのとおりだと思いますので、そこでどこまでをこの制度の中で実現して、現実のものにするのかというところで、余り欲張り過ぎても困るし、かといって機能しない制度でも困るというところで、本当に微妙なところですが、よろしくお願いいたします。

○伊藤座長 わかりました。貴重な御意見、ありがとうございました。

≪4.閉会≫

○伊藤座長 それでは、大体予定の時間になっておりますので、次回の日程につきまして、事務局からの説明をお願いします。

○原事務局長 ありがとうございました。次回の専門調査会については、11月15日月曜日の9時半~12時半ということで、次回以降、3時間の審議時間を予定しております。議題は、集団的消費者被害の実態及び制度の対象となる消費者被害についてと、先ほど消費者庁側から示されました集団的被害者救済制度研究会の報告書において示された集合訴訟手続モデルについての御紹介などを予定しております。
 第3回目以降の具体的なスケジュール、内容につきましては、次回までに座長とも御相談させていただいて、決めさせていただきたいと考えております。
 事務局からは、以上です。

○伊藤座長 他に特段の御発言がなければ、本日はこれで閉会にさせていただきます。
 御多忙のところ、ありがとうございました。どうぞ次回またよろしくお願いいたします。

(以上)