総会(第53回)・基礎問題小委員会(第63回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成18年9月12日(火)15:15~15:44
〇石会長
それでは、「会長談話」という形でここにお配りいたしましたものにつきまして、経過なり経緯なりあるいは内容につきまして、若干の説明をさせていただきます。
今お手元に配りました「今後の税制改革についての議論に向けて」というのは、「会長談話」の正式なタイトルでございます。お聞きになっていた方はおわかりと思いますが、原案を幾つか修正したものを最終的な文章として今お出ししておりますので、これを正式なペーパーとしてお受け取りください。
一応、「会長談話」という個人的なメッセージという性格ではありますけれども、今、1時間程でございますが、税制調査会のメンバーの皆さんから、一応一任を受けたという形で税調のペーパーにいたしたいと考えております。
お読みいただければおわかりと思いますが、第一パートではこれまでの経過、あるいは、なぜ、今、中期答申に代えてこれを出すのかといったような趣旨のこと。それから、第二パート、これは2ページ目になりますが、ここで政策的な対応として、将来やるべき税制改革のいわゆる指針ですね、ガイドラインといいますか視点といいますか、そういうものを3つにまとめたということでございます。それから、3ページ目以降は、これまで我々が3年間やってまいりました個々の税制改革の中身につきまして、項目だけでありますが列挙したということです。この第三パートの項目につきましては、もうちょっと書き込んで、方向性を打ち出すべきではないかというようなご議論もあり、それを考えないわけではなかったんでありますけど、まだ完全に意見が一致していないこともございますので、これは次の税制改革あるいは次の税調の議論の場に任せた方がいいと思って、簡単に項目だけを列挙したという性格のものでございます。
3年間のものをこの3ページにまとめるというのは、大変な仕事でありましたが、どれだけ書き込んでも、意に満ちるまでいかないわけでありまして、必要最小限のことはこの3ページに納められたかなというふうに考えております。
二、三、私が特に強調したいことを申し上げます。
最初は、2ページ目に3つの括弧書きで書いてございます、「責任」・「安心」・「活力」という、言うなれば、税制改革の今後の、あるいは現在と言うべきでしょうか、政策的な対応について、こういう短いフレーズにしたわけであります。これにつきましても、「責任」というのは財政再建のことなのかという、今日、ご質問がございましたし、それから、「安心」の方でも、これだけでは必ずしも十分ではないだろうという、そういう、もうちょっと丁寧な説明が必要ではないかというご議論もございました。さはさりながら、「責任」というところをあえて一番前に持ってきてこのことを強調したのは、この種のペーパーでは初めてではないかと思いますし、これを全面的に押し出すべきであるというような話もあり、この中身に書いてございますことにつきましては、我々が、特に私が一番言いたかったことを最初に出したということであります。これが第1点です。
第2点は、さはさりながら、「安心できる社会」の辺りで、今日も議論になりましたけれども、それでは、一体、安心できる社会をつくるためにどうするのかということで、私が一番メッセージとして訴えたいのは、やはり国民全員が協力し合って負担を分かち合う社会にならない限り、安心できる社会にはならないだろうと。こういう意味で、言うなれば、オールジャパンで制度を支え、みんなで、例えば皆年金とか皆保険とか、あるいは、俗に言われますセーフティーネットの確固たるものをつくり上げるということについては、国民各層の協力なくしては出来ないだろうということを強調したのがこの文章であります。
それから、第3点は、1ページ目の下から2行目に書いてありますが、将来最も適切なタイミングで、然るべき次の税制改革に合わせて、政府税調は、言うなれば税制改革の方向性を示す答申を出したいと思っております。それは、委員が交代するからとか、あるいは3年来たから中期答申だという、制度的な裏付けで申し上げるよりは、その事態事態に応じる必要性が一番高い。そしてまた、内閣なり、時の政権が本格的に税制改革に取り組もうというときに、政府税調がその基礎づくりをするというのが、我々に課された最も重要な任務だと思っていますので、この意味合いを、「将来最も適切なタイミングで」という言葉で表しているというふうにご理解いただきたいと思います。
以上、3点であります。あと、残った時間でいろいろ議論いたしましたが、やはりご自分の身の回りの問題について幾つか要望があり、次期の税調では議論してもらいたいということもありました。そういう意味では、税調の中でも、全国民的な視点に立って言うという面ももちろんあるんでありますが、やはりご自分の関心事について強調されるということも多々あるわけでありまして、私はこれで全体と個のバランスを考える点では重要かなと、このように考えております。
3年間にわたりまして議論してきておりましたが、今日を以て今期の政府税調の活動は終わりにしたいと思います。総括して言うならば、3年前に小泉首相から諮問をされまして、それに従いまして三度の年度改正の答申も出しましたし、その間に「実像把握」とか、金融所得課税の一体化であるとか、非営利法人の、あるいは寄付金税制の基本的な考え方とか、あるいは個人所得課税の論点整理等々、それなりに小泉さんの諮問に対しては然るべき成果はお示しできたのではないかと、自分なりに評価をいたしております。これが総括であります。
以上です。
〇記者
幹事社から1点なんですが、従来、税調は、公平・中立・簡素を言ってきましたが、今回は、責任・安心・活力となっていますけれども、会長としてはこれはどういった問題意識をお持ちなんでしょうか。
〇石会長
従来、税調は、租税原則に従って税制改革を、言うなれば旗印といいますか、クライテアリアンといいますか、持っていたわけですね。これが公平、簡素、中立、これはまさに財政学のテキストにも書いてあるようなことでございますが、これはこれで、税制改革をするときの大きな目標であることは変わりがありませんので、これはこれで堅持するつもりです。さはさりながら、現時点で、今、我が国の経済あるいは財政あるいは税制というのを見ると、政策的にやはり考えなければならない、そういう問題が、政策対応としてあるわけですね。これが、今申し上げた、責任、そして安心、そして活力です。ですから、両方とも、似たようなスローガンでありますけれども、ちょっと性格の違ったもので、これからそういう、例えば、「責任」というのは租税原則論にはない話でありますが、日本の税制・財政には責任問題というのが大きくなってきましたので、やはりそれを念頭に、これから議論していかなければいけないという趣旨で書いてあります。
〇記者
幹事社からもう1点ですが、消費税についての言及が思ったよりも少ないかなという印象を受けるんですけれども。
〇石会長
本文の方で、個別の税に触れたのは消費税だけでありますから、そういう点から言いますと、非常にウエートは高いんです。3つ目のパラグラフに個々の税目は全部並んでおりますけれども、我々として本文の一番言いたいところの中核に、消費税について検討しなければいけないと書いてあることは、ほかの税のバランスから見ると、非常に重視しているというふうにお取りいただいてもいい。ちょっとこれは、書き過ぎではないかという議論も今日あったぐらいでありまして、まだ議論が煮詰まっていない、例えば福祉目的税の議論がないのにここで書くと、そうなってしまうのではないかということもございましたけれども、これにつきましては、私どもとしては、現時点においてはこのぐらいかなというふうに考えております。
〇記者
では、各社、どうぞ。
〇石会長
よろしゅうございますか。何かどうぞ。
〇記者
前回の会見でもちょっと出た話ですけれども、今回、答申を出さないことで、その存在意義というのが問われるんじゃないかという質問に対して、必ず出番が来るというようなことを石会長この前おっしゃっていましたけれども、今度、出番が来るとは思うんですが、今度来たときに、国民の側からすると、結局税調というのは、あるべき税制というよりは政治を見ているんじゃないかと、政治寄りの姿勢で物を言っているんじゃないかというふうに思われるような危険というのはないんでしょうか。
〇石会長
それは、国民といっても多種多様な方がいらっしゃいますから、いろんな考えがあるのはやむを得ないと思います。私、個人としては、さっきから何回も説明しておりますように、3年来たからとか、中期答申を出すのが慣行だとか、そういうような機械的な、あるいはカレンダー的な意味合いで出すよりは、税制改革は、本格的に行われる時期に、我々の意見が一番反映させやすいときに、これはまさにさっき申し上げた最も適切なタイミングでまとめる。それと同時に、我々しか出来ない仕事をすればいいんだと思います。それは今日の最後の挨拶で申し上げましたが、やはり税制全体を見渡して、全ての税項目についてのあるべき姿を位置付けしつつ出すという、そういう、言うなれば、結果で判断してもらうしかない。いろいろご批判があろうかと思いますが、我々税調の仕事というのはそこにあるのだろうと思います。つまり、今、消費税が突出していますが、実は消費税を議論するときには、所得税、法人税、資産課税、全部入れて、トータルパッケージで税制を議論しなければいけないんですよね。その時代は必ずや来る。それと同時に、それが出来るのは税調だけではないかと私は思っていますので、それはそのときに我々の成果を見ていただくという形で、今みたいなご批判にはお答えすべきだと思っています。
〇記者
今回、責任・安心・活力という3つのキーワードがあったんですが、この10年以上、日本の税制改正は簡素・中立・公平という原則というのがあったと思います。これは変わっているのか、変わっていないのか。
〇石会長
いえ、堅持したいと思います。つまり、公平・中立・簡素というのは、税制のクオリティーな、質的な面での改善なり改良なり、ベターな税制を目指すときの1つの、税制内部の基準というかクライテアリアンですよね。そういうことで、今日出しました、責任とか安心とか活力というのは、税制の外で、税制に期待されている政策的な、言うなれば必要な条件ですよね。ですから、中のものと外のものと分けていただいてもいいんですけれども、両者一体となって、今後の税制改革のキーワードになると思っていますので、それをどういうふうに具体化の中に盛り込むかというところは、我々の議論がどううまくいくかという点を見ていただければと思います。
2つとも重要で、2つともコンフリクトしなくて、言うなれば1つのスローガンが2つになったというふうにお考えください。
〇記者
すみません。その活力の話なんですけど、4年前、活力か中立かという議論がありました。
〇石会長
ありましたね。
〇記者
そのときに使った「活力」とは、これ、意味合いがちょっと違うかとは思うんですが、それとの違いを説明していただけますか。
〇石会長
はい。「活力」という言い方をすると、2つの意味合いが同時に出てくるんですね。1つは、経済界なりがよく言うように、政策減税とか、あるいは租税特別措置を活用して、特定の者、特定の項目、特定の業種に対して税制上優遇を与えろというのが一番具体的なイメージですよね。もう一つは、そういうものが過度になると、税制上極めてゆがみ・ひずみが出てきて、民間の企業なり家計のビヘイビアに悪い影響を与えるんですね。つまり、税で優遇されているから今投資しようとか、税で優遇されているからどうしよう、こうしようという話にとかく結び付きがちであります。要するに、中立=活力と言ったときには、税のひずみはなくして中立にして、そして結果として民間の創意工夫を活かして、言うなれば、経済成長等々につなげてもらおうと。つまり、小泉さんが、もう官に頼るなと、民で頑張れという形で、今、日本経済は浮揚・浮上したわけでしょう。それと同じような発想ですね。
レーガン税制改革というのは1980年代にありました。第1期には、今言った政策減税的なものをばんばんやって、赤字が増えてしまって、それで活性化しなかったんですね。第2期になって、今度は課税ベースを広くして、税率を低くするという意味で、本格的に、今言った、我々の言う活力の方に行ったんですね。だから、これは私のまさに個人的な思い入れと個人的なアイデアが強いんですけれども、税制の中の中立を確保することによって活性化しようと。ただ、残念ながら、これだけでは押し通せないことがあるんですね。先程おっしゃった、3年前か何かの、経済財政諮問会議との議論のときには、法人税をどう使うかというときに、我々、試験研究費とか、あるいは設備投資に限定したような減税をやりました。これは、ある意味では、レーガン第1期の発想に近いですよね。ただ、時と場合によって、あのとき、基本税率を下げて、そして内部留保を厚くしても、全部、過去の借金返済に回ってしまうような事態のときには、特定の経済ビヘイビアに影響を与えるということも必要なんでしょう。だから、時と場合だと思いますが、一般的には、この中立=活力の方向をここでは意味しています。
〇記者
それと、言わずもがなかもしれないんですが、消費税の部分で、検討項目で、税率構造というふうな表現を使っているんですけれども、これは税率そのもの、水準というんですかね、そういうものも含まれると考えてよろしいんでしょうか。
〇石会長
はい。当然、税率水準も含まれます。標準税率、軽減税率、いろんな税率のタイプがありますからどうするかということを含めて考えようと思っています。ただ、税率水準そのものを何%にするか等々については、これまでのこともあって、今、将来2桁とは言っていますけれども、そこに深く、さらにコミットするということは恐らくしないと思います。
〇記者
すみません、内容についてですけれども、ちょっと3点程。
まず1点が、2枚目の「安心できる社会」の中で、再分配機能の部分。的確に発揮されるように検討する必要があるという点は、これは今、再分配機能が落ちているからそれを強めると。税調の中には、意見として、格差なんてないんだというような意見も、前、総会であったかと思いますけれども、その点の認識と、あと、2点目が、3つ目の活力のところで、通常、いろいろ、活力という場合、企業の法人税減税の色合いを強めることが多いと思うんですが、ここでは個人や企業という形で、余りそこまで踏み込んでいないように思うんですけれども、その考えと、あと3点目が、その下にある、「民間が担う公共の支援も大切である」という文言があるんですけど、これはあまり見たことがないなという気もするんですが、どういう意味なのか。その3点をお願いします。
〇石会長
3つ目からお答えしますが、これは、例の非営利法人と、寄付金税制の審議のときにやりましたように、要するに官と民の間で、第三セクターで活躍できる場をつくって、活性化できるだろうと。具体的に言えば、やはり寄付金税制によって、NPOとかNGOとかに大いに、官で出来ない部分あるいは民で出来ない部分を補完してもらおうという意図がここには入っています。それが「民間が担う公共」というところです。
〇記者
拡充ということも…。
〇石会長
はい、それも含めてですね。
それから、おっしゃる再分配機能等々は、所得税と相続税も含めて、資産課税でちょっと検討しなければいけないのではないかという領域の話ですね。
〇記者
再分配機能が……
〇石会長
ええ、再分配効果が大分落ちている。それに対して税制でどうするか。具体的には、相続税、課税最低限の問題とか、所得税の最高税率の問題とか、いろいろあると思います。これはこれから議論しなければいけないと、こう思っております。
第1点は何でした。
〇記者
活力です。
〇石会長
活力のところは、個人や企業がその能力を最大限発揮できるようなということになると、国際競争力云々の観点から、現行の法人税の基本税率がこのままでいいかどうかという議論は、いずれ出てくると思います。というのは、ほかの国が法人税を引き下げいたしますと、その問題は必ず出てきますので。当然、そこは国際競争上、イコールフッティングして頑張ってもらおうと。特に、一段と下げて云々かんぬんというよりは、そういう環境整備の方に重きがあるというふうに理解をしています。
〇記者
3枚目の細かいところで確認なんですけれども、各種控除の見直しなど、今回、「経済社会の構造変化を踏まえた考え方を的確に示す必要がある」というふうに指摘されているんですが、ここはやはり控除を今後見直していくべきということで。
〇石会長
これは今、たまたま書いてあるようなものを含め、特に扶養控除の税額控除化みたいなのがありますよね、子育て支援で。ああいうことを踏まえて、各種控除の見直しということを、統廃合という言葉がいいのか見直しがいいのか、あるいは縮減がいいのかはわかりませんが、そこはこのぐらいにしたということであります。
〇記者
今後のスケジュールなんですけれども、小泉首相にこの「会長談話」を持っていって説明するということがあるのかということと、あと、今後の次期政権なんですけれども、次期政権で石会長自身がもう一度税調のメンバーに指名された場合には、これはどういうふうなスタンスで臨むというようにお考えでしょうか。
〇石会長
第一点目につきましては、ありません。これは「会長談話」でありますから、答申のように持っていくわけではありません。本来ですと、今日が最後でありますから、答申がまとまればこの後手交するという、一種の慣行・儀式が残っているんですが、それはございません。
それから、第二については、これはご存じのように、税調会長というのは総理の任命で行われるわけでありまして、大体、次の総理も決まっていない段階で私が云々かんぬんするという話でもありませんから、これについては今の段階では白紙であると言わざるを得ないと思います。
〇記者
逆に、お話があれば、そういうふうに向こうから指名があれば、受けるという。
〇石会長
そのときに考えますよ。今の時点で、仮定の話でどうだこうだということはありません。私もいろいろ思うことはありますけれども、今の段階でそれをここで出して、どうだこうだというのは、ちょっとおこがましいし、時期尚早だと思っています。
〇記者
すみません。先週、税調のあり方論というか、政治との距離をどうはかるかみたいなことをおっしゃっていましたけど、今回この声明には、そういう文言は入っていないんですが、次期税調に託すという……
〇石会長
おっしゃる問題は、1つ大きなイシューで、恐らく、次期税調を始める辺りで、税調のあり方としていろいろ議論があろうかとも思っています。今回のこの、先送りということについて、ご不満の方も当然いるわけでありますし、といってグッドタイミングの方がいいという人もいるわけで、政治との距離については、今後、税調はますますその距離感を保つというのは難しくなるだろうと思っています。というのは、やはり、政治主導にならざるを得ないですね、税制改革は。なぜならば、国民の負託を受けた政治家が決断すべきことが多々あるということで、それは政治家が国民の、要するに投票のもとにおいて出てきた人が決めなければいけないという意味で、税調はそういう意味では黒子に徹すべきだと思っています。
〇記者
すみません。今のにちょっと関連しますが、そうしますと、次の税調にはどんなことを望まれますか。
〇石会長
次の税調にどんなメッセージを出すか。僕は、結局、税調しか出来ない仕事というのは、税の理論的なバックグラウンド、それから、やはり、実証的な、経験的ないろんな検証、そういうものを踏まえた上で、税制のあるべき姿というのをしっかり描くことだと思います。
グランドデザインとして。これがなくなったら、僕は税調というのは、お役御免だろう、つまり、個々ばらばらに、こっちが言ってきたからこう答える、こっちがこうだからこうというふうに、ピースミール的になるというのはまずいと思いますね。恐らく、それは党の、自民党税調との棲み分けだと思いますね。そういう、我々が広くつくった土俵の中で、然るべき政治としてジャッジメントしなければいけないことは恐らく政治家がやればいい。それは党税調だと思いますから。最近、その辺の棲み分けといいますか分業体制がうまくいっているなというふうに、私は過去3年あるいはその前からも考えています。
それからもう一つは、今期出来なかったのですが、やはり、国民との対話集会というものがどうしても必要になりますね。6年前のときには、20回位やったのかな、かなり、あるべき税制について議論はいたしました。そのときは、まだ、本格的な税制改革がホットイシューではなかったから、それほど盛り上がりはなかったんですけど、次は恐らく、消費税というのがまともに出てくる中で議論をやる、国民との対話を重ねるということはやらなければいけないと思っています。
〇記者
すみません。税は政治主導であるべきだというお話だと思うんですが、そういう状況で、今の総裁選が谷垣さんが消費税率を掲げて戦っているのに対して、いわゆる本命の安倍さんが来年秋からでいいということで、具体的な税制改正の姿を明らかにしていない。こういう状況をどうご覧になっておられますか。
〇石会長
今、お三人は、政治生命をかけて、言うなれば戦っているわけですよね。そこに、我々政府税調といえど、その議論に口を出す、コメントする、そういう立場に僕はないと思います。何を言っても、今、どっちかにどうかなるかという話でありますから。それについては、私は、例えば個人見解をどうかと言われても、今日は税調会長として出てきていますから、税調のメンバーの総意という形になったら、そういうことについては今議論もしていませんし、口出しすることがどうかということだろうと思いますので、それはノーコメントが僕は筋じゃないかと思います。現時点におきましてはね。
まあ、その内容につきましては、これから行う税制改革の中で具体的に、いつになるかわかりませんけれども、答えを出すのが筋ではないかと思っています。よろしゅうございますか。
〇記者
すみません、会長。確認ですけど、先程出た3枚目の個人所得課税の各種控除のところで。これ、去年の論点整理の中では、見直しという色がすごく強かったと思うんですが、この書き方というのは、当時の答申はまだ維持しているのか、それとも、ちょっと後退しているのか。これはどっちなんでしょうか。
〇石会長
これは、次の税調が考えるべきことだと思います。ただ、これまで議論したことから言えば、一番重要なのは扶養控除のところの税額控除化とか、年齢制限のこともあるでしょうし、配偶者とか給与所得控除について、いろいろ実像把握の面について、論点あるいは問題点を出していますからね。そういう点から、そういうのを踏まえて再検討するということでしょうね。
ほかに、「等」がついていますから、あとは生保控除にしても、あるいは勤労学生控除にしても、控除は二十幾つありますから、そういうのをトータルで考えてどうかという議論もありますので、当然のこと、論点整理でやった基礎的な作業というのは、方向性としては残ります。
〇記者
会長、よろしいでしょうか。先程の政治主導のお話なんですけれども、政治が間違えたときに、政府税調がそれを正す力はないんですか。
〇石会長
間違えたとか正しいということは、何人も一義的に言えませんよ。そこで、私は、政治的主導というふうにお任せはしていますが、ただ、特に税制というのは、やはり理屈がある世界なんですよ。これは補助金とは違うんですよ。従って、我々がしっかりと税理論的な基盤に乗っかって言っていれば、長い目で見ればそうなるんですよ。課税ベースを広げて税率を低くするなんていうのは、まさにレーガンのときに出てきて、もう20年間経っています、そうなっているんですよ。ということを踏まえれば、それはある時期に間違えるということは、僕らの目から見るとあるかもしれないけど、ほかの目から見ると正しいようなことをやっているわけですからね。だからそれは、長い目で見て評価されるべきことでしょうから、税調の累次の答申によって軌道修正というのは可能と思います。だから、その場その場で直截的に言うというよりは、過去の答申をひもといていただければわかるような、そういう書き方にしたいと思います。そこはやはり、税調の役割ではないかと思います。ウオッチャーとして。
〇記者
政治主導にならざるを得ないということの理由はさっきおっしゃっていましたけれども、これを簡単に言うと、やはりこれから増税ということを提示しなきゃいけないから、その場合には……
〇石会長
増税という言葉はちょっと生々し過ぎるんですけれども、もっと抽象的に言うならば、パイが大きく膨らんでいるときには、結局パイの分け方をやっていればよかったわけですよ。端的に言えば、税負担を低くするときの減税ですよね。今、パイがある程度の膨らみしかないようなときには、かつ、そのパイを、ギブンとされたパイの中にいろんな、安心とか安全とかの社会をつくらなきゃいけないとなると、結局はそのコストをどうやって分かち合うかというふうにいかざるを得ないんですよ。それは僕は随分、環境も状況も違ってきたと思いますから。それは恐らく政治家が、マクロ的な意味合いにおいて、配分なりを決める役割を、当然、政治責任で担うべきでしょうね。そうと思いますけどね。やはり、それは変わってきたんですね。
よろしいですか。
(以上)