第53回総会・第63回基礎問題小委員会 合同会議 議事録
平成18年9月12日開催
〇石会長
それでは、時間になりました。お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。
今日は、前回お諮りいたしました「会長談話」の内容を皆さんにお示しして、いろいろご意見を伺いたいと思っています。また、恐らく今日で今期の税調は最後となるでありましょうから、今期を振り返り、かつ、次期の税調に対していろいろご注文もあろうかと思いますので、自由な討議という時間を設けたいと考えております。
議論に入る前に、今日、お三方から意見書が出ております。どうしても出席できないという方の意見書がお手元の資料に入っていると思いますので、適宜お目通しをいただきたいと思います。
今から私が作りました「会長談話」の中身につきまして、まず事務局から朗読していただきます。これは前回、5日でございますが、皆様からいろいろなご意見を頂戴いたしました。あの時書いておりましたのは5つか6つの項目しかなかったのでありますが、それを文章化してきました。その文章化に当たりましては、皆さんからいただきました議論を大幅に取り入れたつもりではございます。そういう形で作りましたものを、まず最初に読み上げさせていただきますが、タイトルも「会長談話」といったようなものよりは、ここに書いてありますように、「税制改革についての今後の議論に向けて」という形で、普通名詞として会長談話というのを使いたいと思っております。
それでは、恐れ入りますが、事務局のほうから朗読していただけますでしょうか。お願いします。
〇事務局
それでは、読み上げさせていただきます。
税制改革についての今後の議論に向けて(案)
1. 税制調査会は、2003年10月に総理の諮問を受け、2004年6月に経済社会の構造変化の実像について分析を行った。それを踏まえ、各年度の税制改正に関する答申、金融所得課税、個人所得課税や新たな非営利法人に対する課税について基本的考え方をとりまとめる等、あるべき税制の具体化に向けた審議を進めてきた。これらを受け、年金課税の見直し、定率減税の縮減・廃止、所得税から個人住民税への税源移譲をはじめ様々な税制改正が実現された。さらに、本年7月には各税目の今後の検討課題を整理し、今後どのような点を議論すべきかについては、概ねコンセンサスが得られたと考える。
こうした中で、政府は、本年7月の「基本方針2006」において、歳出・歳入一体改革について、2011年度の基礎的財政収支の黒字化に加えて、2010年代半ばの債務残高GDP比の安定的な引下げという財政健全化の新しい目標を示した。また、歳入改革に関し、社会保障給付の安定財源確保、経済の国際競争力強化とその活性化、子育て支援策等の充実、地方分権を推進するための地方税源の充実といった中長期的にわが国税制に求められる課題を示した。こうした要請にこたえるため税体系全般にわたる抜本的・一体的な税制改革が必要になるとしている。
これから取り組まなければならない税制改革は、バブル崩壊を経験した後の21世紀最初の抜本改革となる。税制調査会は、今後、政府の提起した諸課題について、少子・高齢化、グローバル化、地方分権の進展等の経済社会の構造変化を踏まえた考え方を的確に示す必要がある。こうした状況においては、新内閣の下での次期税制調査会で、これまでの審議の成果を踏まえつつ、「基本方針2006」において新たに示された方針に沿って検討をさらに深めるべきと考える。そして将来最も適切なタイミングで答申をまとめることが、税制改革を進める上で有意義である。
2. わが国経済社会が大きく変革する中、税制は経済社会の基盤であり、中長期的な観点から考えるとともに、納税者にとって分かりやすいものでなければならない。今後、国民各層の声に耳を傾けながら税制改革について検討を深めるに当たり、その基本的な視点は、以下の三点と考えられる。
(将来世代に対する「責任」)
わが国の危機的な財政状況は、経済成長の阻害要因となるおそれがあるばかりか、将来世代へ重い負担を先送りする深刻な問題である。国・地方を通じてあらゆる分野で行財政改革を進め、徹底した歳出の削減・効率化を図るとともに、景気変動によるその時々の税収の変動にとらわれず、制度として安定的な歳入構造を構築し、将来世代に対し責任ある対応をとらなければならない。
(「安心」できる社会)
高齢化の進展に伴い社会保障給付の増加が見込まれ、その持続可能性に対し多くの国民が不安を抱いている。こうした不安を払拭し、国民が安心して暮らせる社会を作るため、給付のあり方を検討するとともに、2009年度における基礎年金国庫負担割合の引上げへの対応を含め、必要な安定財源を確保し、負担の先送りをやめなければならない。その際、消費税をその財源として位置付けることについて、検討する必要がある。
いわゆる格差については様々な議論があるが、税制においても、必要なセーフティーネットの財源を安定的に確保するとともに、税制の所得及び資産の再分配機能が一層的確に発揮されるように検討していく必要がある。
(経済社会の持続的な「活力」)
経済社会の活力を持続させるためには、財政や社会保障を持続可能なものにするとともに、個人や企業がその能力を最大限発揮できる環境を整備する必要がある。少子化・子育て問題については、総合的な政策対応が求められており、税制においても、子育て世帯への支援を効果的に行うことが重要である。また、今後ますます重要となっていく“民間が担う公共”の支援も大切である。
さらに、活力と個性のある地域社会の実現が求められている。地方公共団体が自らの責任と判断により地域のニーズに応じた行政サービスを適切に実施できるよう地方税を充実する等、地方分権の一層の推進を図る必要がある。
3. 税制調査会は、「これまでの審議等を踏まえた主な論点」として、今回検討すべき項目を次のように整理してきた。
- 個人所得課税
- 累進税率構造(最高・最低税率 等)
- 各種控除(配偶者・扶養・給与所得控除 等)
- 所得分類の見直し
- 個人住民税(各種控除、現年課税 等)
- 金融所得課税の一体化(分離課税、税率、損益通算)
- 相続税・贈与税(課税ベース 等)
- 固定資産税(安定的な確保、負担水準の均衡化・適正化)
- 納税環境整備(納税者番号制度、申告納税の機会の拡充)
- 法人課税
- 基本税率のあり方
- 租税特別措置・非課税等特別措置の整理合理化・重点化
- 減価償却制度(耐用年数、償却可能限度額・残存価額 等)
- 多様な事業形態
- 公益法人制度改革への対応(課税ベース、寄附金税制 等)
- 地方法人課税(外形標準課税 等)
- 国際課税(租税条約、外国税額控除制度 等)
- 消費税
- 税率構造
- インボイス制度、中小特例措置
- 税収の使途
- 地方消費税
- 個別間接税その他
- 酒税・たばこ税
- 道路特定財源等のエネルギー関係諸税
- 地球温暖化問題への対応
4. 以上述べた、税制調査会におけるこれまでの審議の成果を活用し、今後、国民的な論議が深められていくことを期待したい。
〇石会長
ありがとうございました。
では、議論を始める前に、若干補足的な説明を私のほうからさせていただきます。
本文はご覧のように3つに分かれております。最初のパートがこれまでの経緯。それから、なぜ「会長談話」という形で今回こういうものをとりまとめたか。そして、いずれ適切なタイミングで税制改革を本格的に進める、いうなれば基礎あるいは土俵になるような報告書を出したいということを、ここに書いてございます。
とりわけ、次の税制改革はおそらく21世紀最初の抜本改革になるであろうと。これはある意味では将来の少子・高齢化あるいは財政赤字累増の中で、税制が非常に重要になるので、そこに対して我々は積極的に貢献するという意気込みをここに書いてあるつもりです。
2つ目は、「国民各層の声に耳を傾けながら」と書いてございますが、3つの切り口から、政策的にどう対応するかという視点で税制改革を位置づけております。従来、我々は「公平・中立・簡素」という、いうなれば租税原則に従って課税ベースをこれまで進めてまいりました。しかし、ちょっと視点を変えますと、現在、我々が政策的に対応しなければいけないその問題を、租税原則とは別な視点からいくつか作ってもいいのではないかと。
そこで、キャッチフレーズ的に言うならば、「責任」と「安心」と「活力」という3つのキーワードでこれを表したいということで、その下にいくつか文章があるわけであります。皆さんからいただきましたものは大半はここに入れたつもりでございますが、例えば「責任」のところでは、税収の変動にとらわれないで、制度として安定した歳入確保に努めて、将来世代に対して責任を持たなければいけない。
あるいは「安心」のほうでは、格差についてしっかり書けというご注文がございました。それから、何よりも社会保障制度そのものが持続可能かどうかという心配もあるわけでありまして、それに対してどう払拭するかというのも、給付のあり方とあわせて費用分担のあり方が問題になるわけでありまして、それを書き、かつ、負担を先送りしないようにということを一応最後に締めているわけであります。
それから、「活力」のほうは、ここに書いてございますように、そもそも民間が力を最大限発揮できるような環境を生むのが必要でありまして、子育て問題も含め、あるいは第三セクターの活動も含め、あるいは地域が本格的に活力ある社会の担い手になってもらわなければいけないという視点で、ここに「活力」を書いてございます。
この「活力」については、おそらく意見が分かれてくると思います。つまり、政策減税とか租税特別措置をどんどんやって、特定の者、特定の産業、特定の業種を振興すべきだといったような考え方もありますが、ここの「活力」は、税制の中立、つまり、ひずみとかゆがみをなくす形によって、民間の創意工夫を表したいという趣旨で書いてございます。
3は、これまでの論点を、つまり問題領域を箇条書きで書いたわけでございます。おそらくこの間いただきました皆さんのご要望なりご意見の中で、多分、一番反映し切れていないのがこの3のパーツではないかと思います。おそらく多くの人は、もうちょっと書き込めと、方向性を示せという趣旨でのご発言があったかとも思います。ただ、ある項目については、まだ議論が煮詰まっていないところもございます。それから、右にすべきか、左にすべきかというところで、はっきり今の段階で書いて、今後の次期税調の議論の流れにある方向性を示すのがいいかどうか、いろいろ考えました。この段階では、例えば消費税のところでもごく淡々と項目だけ書いてございます。我々の議論を踏まえて言えば、それなりのことは書き込めたかもしれませんが、書かなくてもそれなりの論点が出てくるような、そういうバックグラウンドがございますので、これでいいのかなという感じで、ここはごくシンプルに書きました。
4は言わずもがなの話でありまして、国民的な議論、我々は「国民の参加と選択」と言っておりますが、これから、何と言っても直接向き合って税制改正の必要性を説き、そして、自分のものとして考えてもらうというような視点がどうしても必要でありますので、これはこれからおそらく次期税調の大きな仕事になると思っています。いうなれば、これまでの議論を踏まえ、次なる問題として何があるかというメッセージを一応整理したということでございます。
3枚ほどのシンプルなものでありますが、あまりごてごて書くよりは、このぐらいの長さで、このぐらいの内容で十分意が伝わるのではないかという形で書き込みましたが、またいろいろ見て、ご意見もご質問もあろうかと思いますので、しばらく時間を取りまして、この「会長談話」の中身につきまして、議論をしたいと思います。
どなたでも結構でございますから、ご意見を賜れればと思います。
〇太田専門委員
キーワードが「責任」と「安心」と「活力」、3つになっているわけですけれども、これはページがまたいでいるせいもあって、1ページの終わりのところから2ページになるのですが、このキーワードとせっかく言ってきたものを強調するのであれば、「以下の三点と考えられる」というふうに振ってしまわないで、キーワードは「責任」「安心」「活力」だというのをここにまず持ってきて、その解説として、(将来世代に対する「責任」)(「安心」できる社会)というふうに……。そこに「責任」「安心」「活力」が振り込められているわけですよね。これを取り出して先のほうで強調するという、ちょっとくっきりした形にしたほうが、会長のメッセージが明確に伝わると思います。
〇石会長
新聞はそうやって作るんですね。
〇太田専門委員
はい。
〇石会長
どうぞ、ほかに。
〇岩委員
ワーディングの問題ですけど、「安心」のところですが、3行目、社会保障給付ですね。「給付のあり方を検討するとともに」となっていますが、これは通常であれば、「給付を抑制するとともに」ですよね。もしくは「あり方」という言葉を生かすのであれば、「あり方を見直す」ということですね。「抑制」のほうがいいと思いますけれども。
〇石会長
きつ過ぎるかなと思って、ぼやっとしたところもありですからね。
〇井戸委員
前回の議論に参加していないので、議論が尽くされているのにまた言っているような印象を与えるのかもしれませんが、まず、(将来世代に対する「責任」)のところですが、将来世代に対する責任というのは、こういう財政構造、ツケを回しているからいけないので、ツケを回していなければ責任を果たしたということになるのでしょうか。ここで書いてあることは何かというと、財政が悪いぞと言っているだけなんですね。財政が悪いぞと言っているのを、単に財政構造を変えていけば責任を果たしたということが言えるのかなという思いがちょっといたします。単純に考えた時に。
それから、もう一つ、税制の働きの非常に大きな役割は何かというと、ちょっと古典的理論に偏しているぞと言われるかもしれませんが、「景気変動によるその時々の税収の変動にとらわれず、安定的な歳入構造を税制として構築する」というふうに読むべきなんですね。そうすると、そういう要請も一方でありますが、一方で、よく言われたビルトインスタビライザー的な機能というのに対して、それは税制調査会としては、評価はやめたのだという印象を与えないかという懸念がちょっといたします。これが「責任」についての項目です。
それから、(「安心」できる社会)のところで、この文脈は何だろうかと読んでみましたら、「こうした不安を払拭し、国民が安心して暮らせる社会を作るために、必要な安定財源を確保し、負担の先送りをやめなければならない」、こう読むのだと思うのですが、負担の先送りと必要な安定財源を確保するというのと、結びついているのかどうか、ちょっと疑問なのです。
それと、今、負担の先送りをするようなことをしてきているのかどうか。この辺も評価が非常に分かれるところだと思いますし、それから、出てきているのが、2009年の基礎年金国庫負担の対応だけが例に挙がっているんです。それではなくて何が問題かというと、社会保障給付の増加の中身が問題なんですね。だから、いわば福祉とか、医療とか、年金とか、そういうものの高齢化に伴う増加が問題なので、基礎年金国庫負担を上げるから、消費税を上げるのだみたいな短絡した主張に結びつきはしないかという懸念がちょっといたします。
私は、税調として消費税を上げざるを得ないのだけれども、目的税化するというようなことに対しては、結論を出していないと思うのです。それにもかかわらず、「その際、消費税をその財源として位置付けることについて、検討する必要がある」というのは、ちょっと踏み込みすぎているのではないか。目的税として消費税を考えるのだというニュアンスが非常に強く出ているのではないか。そんな感じがいたします。代案を作れと言われると、ちょっと考えなければいけませんが、問題点の指摘だけさせていただきました。
〇石会長
貴重なご意見をいただきました。二、三レスポンスをしておきますが、確かに「責任」の意味は、将来世代に対する責任というわけで、言葉からいうと財政再建の必要性を言っているわけです。それだけで責任を果たせるかというと、おっしゃるとおり、現時点において、景気は少しよくなってきたとは思いますが、その問題とか、例の再分配の問題とか、あるいは公共サービスが十分にいっているか等々、あると思いますよ。ただ、それを全部ここに総花的に入れるのもどうかなと思って、一番の関心事であります将来世代に付け回してはいけないよという趣旨のことを、「責任」として狭く限定したわけです。
それから、景気変動による税収の変動云々というのは、確かにビルトインスタビライザーとは逆なことを言っていると思いますが、今、例の総裁選挙のいろいろな候補者の話を聞いていても、景気がよくなったのだから、もう税制改革は必要ないではないかというような、自然増収期待論、あるいは経済成長であれば大丈夫だという話があるのですが、いや、そうではなくて、波がある中で、自然増収も自然減収もある中で、やはり社会保障等々というのは、そういう波に関係なく増えていくわけでありますから、制度として安定したものを作れと、入れろという趣旨のことを書いたので、おそらく軸足がぶれているかもしれませんが、これはどっちか、結局その時点時点でとるしかないのだと思っています。
消費税のことは、全然触れない、この文書から一切削除するということはいかないと思いまして、ここに「検討する」とありますから、これから目的税の是か非かも含めて検討すればいいのだろうと思います。ただ、その前にかなり安心できる社会を含め社会保障のことを書いていますから、その兼ね合いで何か福祉目的税という話があるかもしれませんが、そこまで意図して書いているわけではないのです。これはまた記者会見やなにかではぜひ説明しておきたいと思っています。どうもありがとうございました。
どうぞ、河野さん。
〇河野特別委員
この3項目の指摘のうち、一番政治的に強いメッセージが出ているのは、第1の項目なんですよね。自然増収論にあまり心を奪われるなよとか、これは聞いていれば特定の候補の名前が全部浮かんでくるわけだ。これは原則的にこういう言い方が正しいとは思うんですよ。だから、これは政治的なメッセージが一番強烈なんです。ほかの2項目、3項目は、まあそんなもんかなというだけの話ですよ。ただ、2項目は、安倍さんが最近、2009年の国庫負担問題を頭に入れて、あれは法律事項だから、彼も逃げるわけにいかないから、ちらっと言っているだけのことですよ。
3番目に至っては、これは肩すかしを食うような議論になるかもしれない。さっきちょっと会長がおっしゃっていたけど、だって経済界だとか経済官庁から出ている政策減税要求というのは、骨太のやつも小さいやつもたくさんあるけれども、それはもうちょっと直裁簡明に中小企業、大企業に対する支援策みたいな話なんですよね。これを見ると、会長の哲学がここに書いてあって、そうか、子育ても考えてみれば、50年単位で見ればそういうことかとも思うし、あると思うけど、そこのところは肩すかしをくらわしているような気がしないでもない。ただ、これは見解の相違だからわからない。
僕は一番おもしろいと思ったのは、第1項目。これはあまり言葉を変えないで、すっぱりと平気で出しておいてもらいたいんだ。後々有効になると思うから。
〇石会長
サポートが出ましたね。他にいかがでしょうか。
〇川北専門委員
先ほど岩さんのほうから、「安心」のところで給付の「あり方」というのを「抑制」にしたらどうかというご意見が出たのですが、それは確かにもっともな面もあると思うのです。長期的に社会保障なり、特に年金財政なんかを考えれば、抑制せざるを得ないのかなという気は誰もがすると思うのです。実際そうしないと逆に「安心」はできなくなるのかもしれませんが、一方で、当面のことを考えれば、給付を抑制されれば不安を感じる人もかなり多いと思うので、やはりここはそんなにはっきりと「抑制」と書かないで、もとどおり「あり方」でいいのではないかという気はいたします。
〇石会長
いろいろな見方ができるということですね。他にいかがでしょうか。
よろしゅうございますか。と申し上げても、今いただきました修文含みのご意見というのを、どこまで今の段階で入れられるかとなると、ちょっと時間的にも、あるいはこの議論の進め方についても難しいと思っています。端的に申し上げると、もしそれをやるなら、もう一、二回こういう会合を開いて議論しなければいけないということだと思います。
前回もちょっと議論がありましたが、これはあくまで「会長談話」として、私の責任でまとめてきたので、いろいろなご不満、不十分な点もあろうかと思いますが、それは私が責任を持つという意味で、今申し上げたようなことにつきましては、記者会見等々のところで必要ならば触れて、税調の意見であると、今日も記者の皆さんは聞いておりますから、それについては十分理解していただけると思いますが、そういう格好で進ませていただくしかないのかなと考えております。
それを踏まえてどうぞ、菊池さん。
〇菊池委員
細かい話かもしれませんけれども、3のところでずっと羅列してありますけれども、羅列ぐあいが何となく不ぞろいというか、例えば所得分類の場合は「所得分類の見直し」と書いてありますね。その前の「各種控除」というのは何なのか。「各種控除の改廃」とか、そういうのがあれば何となくいいのだけど、どれがどういうのがあるのかは、それぞれあると思いますけれども、「見直し」とある一方で何にも言っていないという、「あり方」ならわかるけど。
〇石会長
わかりました。
〇菊池委員
例えば消費税の「税率構造」というのは、軽減税率を含んだ意味深いお言葉というふうに理解するわけですか。
〇石会長
ということですね。意味深い言葉がいっぱい並んでいるんですよ。
〇菊池委員
その辺を新聞記者が見過ごさないように、丁寧に説明していくといいのかもという気もちょっとしますけど。
〇石会長
わかりました。恐らく質問が出ますから、お答えしなければいけないと思います。
〇菊池委員
あと、どうせなら、2を次のページから始めると、3もちょうど次のページから始まるから、そのほうが見映えはいいと思いますけど。
〇石会長
なるほど。わかりました。
どうぞ、遠藤さん。
〇遠藤特別委員
この談話は、誰向けですか。国民向けですか、総理向けですか。
〇石会長
総理向けではないです。次期税調に対するメッセージですね。それを通じて国民向けということになるでしょうね。
〇遠藤特別委員
そうすると、(「安心」できる社会)の一番最後の段落で、「必要なセーフティーネットの財源を安定的に確保する」というのは、国民はわかりますかね。これは非常に難しいと思うのです。私もどういう財源なのかというのがよくわからないのですが、相当注釈する必要があるのではないかと思います。それが一つです。
それから、次の「活力」のところの最後が、非常にいいことが書いてあると思うのですが、一番最後の行に、「地方税を充実する等、地方分権の一層の推進を図る必要がある」ということで、この「等」が入ったために、この文章がものすごく弱くなっちゃっているんですよ。ですから、税制調査会の会長が言うのだから、「地方税を充実し、地方分権の一層の推進を図る必要がある」と、そこのところは断定しちゃってもいいんじゃないですか。「等」って何だという話になっちゃうと……。ほかの方法がいろいろあって、地方税の充実というのは、そのワン・オブ・ゼムなのよ、場合によってはほかの方法でもいいのよ、というようなことに受けとめられる。
〇石会長
いや、でもそれは明らかになっているところが一番強いので、「等」は、まさにほかの地方交付税も含め、手数料も含め、いろいろあるでしょう。そういうものの中で断然、地方税の充実が抜きん出ているわけですから、それはご心配なくと言いたいですがね。
〇遠藤特別委員
いや、だけどこの「等」は役人が書く文章ですよ。
〇石会長
おっしゃるとおりです。ここは大分議論しましたよ。ここはばっちり議論したところで、当事者からいえば、ここは残してくれと必死な人と、そうでない人がいましたから、結局残ったわけですが。
〇遠藤特別委員
前回出ていなかったものだから。
〇石会長
いや、前回は文章になっていないから、これは私の責任で入れたわけですよ。
〇遠藤特別委員
その辺、もう一度考慮されたほうがいいと思いますが。
〇石会長
どうぞ、津さん。
〇津委員
瑣末なことで申しわけないのですけれど、これは次期政府税調と、それからその先国民に向けてということであれば、要らないのかもしれないのですけれども、小見出しというのは立てないようにわざとなさったのかどうか。1、2、3で、4が最後にあったなというのが最後に気づいたのですが、何かもう少しそこのところに、ページを変えるということも含めて考えると、小見出しを一個入れると、ちょっとずつページを変えられるかなみたいなことを多少考えたのと……
〇石会長
小見出しというのは、具体的にどういう小見出しですか。
〇津委員
例えば、1のところに何が書いてあるかというような。
〇石会長
これまでの経過と将来のテーマ、そういうあれですね。
〇津委員
そういうこと。それから、タイトルのところの「税制改革についての今後の議論に向けて」というのは、何かすごく長くて、何となくよくわかりにくいので、例えばですけど、「税制改革」で行を変えて、「今後の議論に向けて」みたいな、そういう少しインパクトのあるほうがよいかなと思ったのですが、でも次期税調に対してということぐらいだったらば、あまり問題はないのかなとも思うのですけれども、これをマスコミの方が見て、何かお使いになることを考えると、多少そういうことが必要かしらとも思ったのですが。
〇石会長
そうすると、「今後」というのは前に出すのがいいかもしれませんね。「今後の税制改革に向けて」とかいうほうがいいのかな。まだ案の段階でありますので、タイトルぐらいはまだ直せると思います。中身について、細かい点を今から議論するのは非常に問題だと思いますが。
このタイトル等々について、何かほかにご意見ございますか。確かにこれはちょっと冗長な感じですね。
どうぞ。
〇長宗我部専門委員
僕はこのままでいいと思いますよ。税制改革についての今後の議論に向けて、橋渡しの「会長談話」でしょう。だからこのままでいいのではないですか。これまでの経緯もあるし、それを含めて今後の税制改革という意味だから。
〇石会長
そういうサポートが出ると、直しにくいということですね。
他にいかがでしょうか。
〇井戸委員
最後の3の項目のところですが、3ページの金融所得課税のところだけ一体化という方向が出ているんです。
〇石会長
これはもう報告書を出しちゃっていますからね。
〇井戸委員
他はあまり何も書いていないのですが、ここだけがちょっと……。
〇石会長
合わせるのだったら、「の一体化」を省いたほうがいいというご意見ですね。
〇井戸委員
ええ。方向は報告書を出されているのでわかっているのですけれども、バランスから見た時にです。
それから、相続税・贈与税について、「課税ベース等」ですから、負担水準なんかは「等」に入っているということですね。
〇石会長
そういうことです。あまり僕は「等」を使うのは嫌いなのですが、しかし、これだけ短い文章にしちゃうと、「等」を入れざるを得なくなったという形で、かなり妥協はしたのです。
〇井戸委員
課税ベースが広がっていくという面と、それから、負担水準をどう考えていくかという面と両面ありますので、そこを課税ベースで代表したというふうに理解しておきます。
〇石会長
わかりました。
田近さん。
〇田近委員
ストラクチャーというか、書き方の構造的な問題はもう与えられたものとして、ただ、トーンとしては「2006年基本方針」というのがあって、そこでは税制体系にわたって、抜本的・一体的に、「一体」というのは、歳出・歳入とかいろいろなものが一体だと思うのですけど、やるのだと、そういう抜本一体的な税制改革をするべきだという政府の提起した問題に税調が答えるという書きっぷりだと思うのですけれども、それを前提にした時に少し疑問に思うのは、2ページの(「安心」できる社会)の格差のところで、下3行ですけど、「いわゆる格差については様々な議論があるが、税制においても、必要なセーフティーネットの財源を安定的に確保する」、ここまではいいのですけど、「税制の所得及び資産の再分配機能が一層的確に発揮される」。そうすると、この「談話」自身が一体というところを重点に置いているわけですから、税制においても、やはりここは「社会保障と一体となって、所得及び資産の再分配機能を的確に」、僕は「一層」というのは要らないと思うのですけれども、的確に発揮される。つまり、これ、「談話」自身が一体というところが、ある意味今までのものを踏み出したというか、そういうことだと私自身は思うのですけれども、それなら「格差」のところも、税制だけでなくて社会保障と一体となってという形でないと、何か整合的でないような気がします。
あと、「一層的確に」の「一層」というのは余計だと。
〇石会長
つまり、税制の再分配機能の前に、社会保障と一体になってという話ですね。
〇田近委員
ええ。全体のストラクチャーからいって、税だけが重荷をしょって、「一層的確」にまでいく必要は何もないと僕は思う。
〇石会長
わかりました。ただ、骨太とどっぷりイコールではありませんから、その方向に沿っていろいろ我々考えているわけですから、それほどそっちのほうに引っ張られる必要はないんですよ。ただ、おっしゃる面もありますね。少し考えさせてください。
他にいかがでしょうか。翁さん。
〇翁委員
3ページの最後のところで、先ほど石会長は、次期税調への申し送りだとおっしゃっておられましたので、そういう趣旨であれば、これまでの審議の成果を活用し、さらに次期税調でこういった議論を深めて、その上でまた国民的な議論が深められていくことも期待したいということではないかなと。
〇石会長
今の中で読み切れませんか。
〇翁委員
「成果を活用し」といわれても、この成果というのは、主な論点として今まで議論してきたものが公表されているだけなので、さらにそれを深めていくということを言ったほうがいいのではないかと。
〇石会長
わかりました。
菊池さん、どうぞ。
〇菊池委員
そのすぐ上ですけれども、道路特定財源のエネルギー関係諸税で、道路特定財源というのは、一般財源化するという話ですよね。
〇石会長
そうですよ。法律的にはね。
〇菊池委員
エネルギー関係諸税というのは、環境税との問題で地球温暖化問題。これは別のような気がするのですけど。まあ、いいといえばいいんですが。
〇石会長
一般財源化はもう法律にもなっております。苦慮したのですが、この席上でも何人かの方が疑問に出されたこともあり、それから、これとさっきの「金融所得課税の一体化」という意味合いと同じような方向性が出ているということを言われればそうなのですけど、あえて道路特定財源については、もう一般財源化と言わなくてもわかっているかなと思ったのですが、菊池さんのご意見だと、それをちょっと書きつつ、エネルギー関係諸税との関係も考えたほうがいいということですね。
〇菊池委員
エネルギー関係諸税の問題というのは、結局、環境税とのかかわり合いにおいてだと思うのです。今あるのは嫌ですけど、言葉としての環境税が一言もないというのは、どうかなという気もしないでもないです。
あと、翁さんが言った「成果」というところに、括弧して、http://www何とかと入れたほうが……。
〇石会長
ホームページを入れろというの?
〇菊池委員
好きな人はそこを見てくださいというのがあっても……。
〇石会長
それは私の判断で裁量させていただくかどうか考えさせてください。それをやると、税調としては初めてですよ。
〇上月委員
本文はもう意見を言っても仕方がないと思うのですが。
〇石会長
言ってください。
〇上月委員
3番の中の納税環境整備のところですが、ほかのところをずっと見ると、「等」というのがやたらに入っているんですね。ところが納税環境整備は、論点整理の中にも、これ2つだけでなくていろいろなことがもっと入っていたと思うのです。ところが、これには「等」が入っていないのですが、これは何か意味があるのでしょうか。
〇石会長
おっしゃるとおり、入れておいたほうが整合性があるかもしれませんね。
数限りなくいろいろご注文が今後もエンドレスに出てくる可能性もありますが、できましたら、今直せる範囲の問題というのがあると思います。例えば行変えのことであるとか、「等」を入れるとか、あるいは次期税調に対してはっきりわかるようにしろとか。つまり、大きな枠を変えないで、文章として、前の話をするというような形で、全体のトーンをいじらないで、よりよい文章になるかなとは思っております。そのぐらいの権限をちょっと私に与えていただいて、そして、この「会長談話」ということを一応公表するという格好のことにさせていただいてよろしいでしょうか。
〇本間特別委員
この「会長談話」を中期答申にかえて出さざるを得なくなった環境、並びにそれを受けた石税調会長のお気持ちを察すると、私はもう会長に一任ということでよろしいのではないかと思います。反映できるところを反映していただいて。
〇石会長
字句のほうですね。
〇本間特別委員
はい。
〇石会長
今、本間さんからセコンドが出ましたけれども、よろしゅうございますか。
(「異議なし」の声あり)
では、そういう形でこれを一応税制調査会としてアプルーブしていただいたという格好で「会長談話」とし、今後の議論に向けてという形で公表したいと、このように考えています。なるべく今いただきましたことで、これが入ったほうがいいなというところは活用させていただくことにいたします。
さて、予定した時間は今日3時までなのですが、少し時間が延びてもいいのではないかと思っていますので、お時間がない方は中途でご退席していただいても結構なのですが、これまでやってきましたことを振り返りつつ、いろいろな反省点もあると思いますし、よかったなという評価もあるかもしれません。そういうのを踏まえまして、次の税調に対して、いろいろな申し送り事項もあると思いますし、お願いしたいこともあろうかと思います。そこで、今からしばらく時間を取りまして、この3年間の思いのたけを言っていただくのも結構でございますし、あるいはご自分の反省も含めて、あるいは自分の評価も含めて言っていただいてかまわないと思いますので、自由にご発言をいただく機会にしたいと思います。
どなたかございませんか。どうぞ、佐竹さん。
〇佐竹委員
3年間大変勉強させていただきましたけれども、最も住民の近くにいる立場から少し。
これは税調の議論ではないわけですけれども、税制改正の中で特に今新聞を賑わしているのが、定率減税の廃止あるいは高齢者の控除の問題等々で、金額は大したことはないのですけれども、5倍から10倍になったということ。
もう一つは、これも別に私どもの市だけの問題ではなく全国的なものですけれども、税だけではなくて、例えば国民健康保険の問題。ほぼ破綻している。これも大変な値上げをしなければならない。それから、介護保険も非常に上がっている。そうしますと、大体年金生活者の高齢者のところで、これらほとんどのものがここに集中して負担増ということになってきているわけです。一方で、若い人からは、いやいや、そんなこと言ったって、我々だってもうぎりぎりだという論調もあるわけですけれども、これはなかなか税だけの議論ではいかないわけで、ここでは税の議論ですけれども、やはりその他の様々な形の負担というものも含めて、なかなか難しいのですけれども、心の中ではそういうものを含めての議論も必要になってくるのではないのかなと。情緒的になることは我々慎むべきことなのですけれども、ほとんどの高齢者の方が私の顔を見るとそれを訴えるということで、これを、いやいや、そうじゃないのだとなかなか言えない状況になっているということで、これは全体のことなのですけれども。
ただ、問題は、介護だとか国保の場合は、それを日本全体として発信する場がないわけです。そうすると、やはりこの税調のところの発信が一番大きいものですから、どうしても税調へほかのものも含めてはね返り、意見が大きい。これが今の現場のといいますか、住民の間の素直な感覚ではないのか。そういう形でなかなか難しいのですけれども、やや感想でございます。
〇石会長
実に重要な問題だと思います。これまで社会保険料とか、あるいは社会福祉の今おっしゃったようなあたりは、税調は避けて通ってきたというか、あえて議論しなかったというのがありますが、これからますます負担を論ずる時に、税であるとか、保険料であるとか、一緒に議論しなければいけないでしょうし、その見返りとして今おっしゃったような心の問題等々ありますから、次期税調では十分にこれを議論すべきと思っています。
どうぞ、他に。村上さん。
〇村上委員
ちょっと感想を言わせていただく前に、これは「会長談話」ということで、取り扱いは総理に出されるわけでもなく、いってみればマスコミ向けの談話という形になりますね。そうしますと、3点を中心に述べられているわけですが、テレビはちょっとどうかわかりませんが、新聞は見出しとしてどういう見出しになるという想定で語られるおつもりかということです。
〇石会長
いや、わかりませんね。
〇村上委員
それが質問です。それで、この3年間、いろいろまじめにやってきたわけですけれども、結局、一般の税調に対する受けとめ方というのは、「増税調査会」なのではないかと。ところが、一番これから次期税調に先送りしなければいけない問題としては、やはり国民不安の払拭ですよね。その国民不安は、さっき佐竹さんがおっしゃったように、国保の問題などでも、すごく国民一般に広く不安があるわけですね。どんどん値上がりしていくのに対して、給付は一体どうなのだということがありますよね。そういうようなことを含めて、国民というのは、それは勝手なものですから、負担のほうを重く受けとめ、給付は少なく受けとめますから、そこのバランスをとっていくのが大事なことなので、そこに対するメッセージですよね。つまり、国民の理解を得ながら、不安を払拭し、そして負担を求めていく。そういうメッセージでないと、なかなか国民が納得して税制に対して理解を示すということは難しいのだろうと思いますね。去年のああいうこともありますけど、それはマスコミのけっこう浮薄なところでして、私を含め反省しなければいけないことですけれども、あんなことはいいとしても、あれが意外に国民一般に頭に入っているということですよ。ですから、税調はせっかくいいことをやろうとしても、なかなか理解されない。そこのところを、私先ほど聞きましたように、見出しが何が来るのかなというのは、石会長として想定しておかれたほうがいいと思います。
〇石会長
私はマスコミでも何でもないので、その辺のことはとんと疎いのですけれども、見出しというのは、こちらが言ったことをマスコミがつけてくれるのではないかと思っていますし、大体、こっちの言ったことを、へそ曲がりの人が多いとつけてくれませんからね。私はあえてそれに踏み込んでいなかったと思うけど。
大宅さんなんかは違うの? 今の返事で。任せるほかないでしょう。確かに今言ったように、「会長談話」でここに書いてあるように、「責任」「安心」「活力」を中心にやるという話ですが、これは難しいですよ。村上さんのほうも何かお考えがございますか。だったらそれを私借用して、記者会見の時にこれをやってくれ、こうだというようなことを言ってもいいぐらいに思いますけど。
〇大宅会長代理
そういう意味で、(「安心」できる社会)の項目、ここは私すごく大事だと思うのです。これをいじわるな記者が読むと、給付のあり方を検討するというのを、さっきはっきり「抑制」と言ったほうがいいと。給付は減ります。必要な安定財源を確保する。つまり増税ですよね。持続可能性に対しては不安感を抱いている。ただ、継続さえすれば安心なのねというふうに、全然安心じゃないじゃないですかと。もらうものは減るし、増税になって、何でこれが安心なんですかというふうに必ず言ってくると思うんです。そこでの石さんの答えが私は肝だと思っているんです。
〇石会長
これは当然のことを書いてある。
〇大宅会長代理
だけど、そういうふうに取らないじゃないですか。さっきの佐竹さんの話もそうだけど、こんなに増えたというふうに、みんな個々のものと大きなマクロの話と、こういうかわいそうな人がいるという話が全部ごっちゃになって必ずやりますから、だからもし持続しなかったら、完璧に破綻したら大変なわけだから、そこを縷々説いた上で、だからそれを持続するためには、このぐらいの負担増が必要なのですという話を説得しなくてはいけない。
〇石会長
あと、みんなで支え合える社会を作らなければいけないということですね。要するに、特定の者、特定の会社を大増税すればいいという意見がないわけではないけど、やはり安心とか安全は、国民がみんな受益として受けるわけだから。
〇大宅会長代理
問題は、「国民が安心して」の国民というと、みんな自分のことだと思うんですよ。これ大多数の国民なんですよ。限定しなくちゃいけない。国民というと、みんな自分のことだと思うので、そこが今一番危ないところ。
〇石会長
こういう安定したセーフティーネットを含めた社会的な基盤を作るためには、みんなで協力し合って負担を分かち合わなければいけない。それはそうですよ。負担を減らして安心なんか買えないですよ、当然。
〇大宅会長代理
そうすると、また負担増男と書かれる。
〇石会長
しようがないですよ、既に増税調査会の増税会長、増税男と言われているから。そういうことを気にしていたら、議論はできないですよ、これから。そこは皆さんも含めてですが。
〇大宅会長代理
だから、そこをちょっと丁寧に。
〇石会長
それは、しっかりと説明していく以外ないですよ。
〇大宅会長代理
この空間の部分がちょっと足りないかなという気がしています。
〇石会長
わかりました。そういうご忠告を伺っておきます。
よろしいですか、他に。何かご感想を含めて。
〇井上委員
私もこの3年間、中小企業の経営者の一人として出てきたわけですけれども、国の活力、経済の活力というのは、やはり企業あってのものだと。それがどうも大手集中に考えられている。中小企業というものが、430万社からあり、56%から付加価値を生み出し、そして、70何%の雇用を支えておる。その中小企業の活力を高めるということは、非常に大事なことだと思うのです。そういう面でも税制というものが、それをもっとバックアップする。そして、活力を高めさせるということに配慮する必要があるのではないのかなと思うわけです。
ところが、どうも中小企業に対する考え方は、性悪説というか、どうもごまかしをやっているのではないかとか、いろいろとそういうことがすぐ考えられているように思えてしようがない。そうではないのであって、もっともっと利益を確保させ、そして税を払わせ、日本を支える、本当に支えているのだということをはっきりとさせるべきであるように思うのでありまして、次の税調においては、そういう点を、事業承継税制にしても、留保金課税の問題にしても、もっともっと真剣に考えていただきたいなと思っております。
直間比率の是正というのは当然将来において行わなければいけないと思うわけですし、やはりこれだけ社会保障費というものが高くなっている。これも個人だけではないのです。企業も半分支えておるわけですから、そういった点を個人個人ということばかりが中心になるようなことでなくて、中小企業というものをもっと考えていただきたいなと思います。よろしくお願いします。
〇石会長
皆さん、井上さんのおっしゃったように、中小企業というものをそれほど冷遇もしていないし、企業を一まとめで考えていますけどね。ただ、中小企業特例の税制というのがいっぱいあるではないですか。
〇井上委員
まだまだ。
〇石会長
だから、どこまで行けるかということをみんなで諮って、次期で議論してもらったらいいと思いますけどね。それはまさにご自分の領域として重要な点をご指摘いただいたわけですね。
他にいかがでしょうか。
〇出口特別委員
石会長については、私、非常に尊敬申し上げているのですけれども、はっきりとして申し上げたいのは、ここは一委員として言いますと、税制調査会であると。それ以上でも以下でもない。増税の調査会では決してない。オプションの中でいろいろなあれはありますけれども、財政状況が非常に厳しいというメッセージはここに出ていますけれども、それ以上でもそれ以下でもないということを、一委員として、そういうふうに思っている委員がいるということを、ぜひ、口に出して言っていただく必要はありませんが、肝に据えていただきたいと思います。
さらに言いますと、ここで一番のポイントは、最も適切なタイミングで答申をまとめるということでありまして、先ほど答申の先送りという言葉が出ましたが、そういう言葉はここの中に一言も入っていないわけです。財政問題を先送りする深刻な問題であるということは出ていますが、答申を先送りするということは一言も入っておりませんで、ここで入っているのは、最も大切なタイミングで答申をまとめることで、これは我々が議論してきた構造変化の「実像」把握という流れと全く一緒でありまして、委員の任期があるからないからではなくて、税制調査会として、最も最高のタイミングで、一番納税者に納得できるものをメッセージとして送る。それは委員のために答申するわけではなくて、やはり納税者のためにする中で出てきた石会長のすばらしいアイデアだということを高く評価したいと思っています。
〇石会長
ありがとうございます。それが重要なんです。
他にいかがでしょうか。重要なことです、今の点は。
なにぶんにも3年間の審議会が今日で終わりですので、何か言っておきたいという方がいらっしゃると思いますけれども、よろしゅうございますか。
それでは、先ほど来の「会長談話」でございますが、私が大急ぎでチェックしました。最低限これだけは直したいというところだけちょっと列挙いたしますので、それを原案にしていただきたいと思います。
表題は、「今後の」を前に出したいと思います。「今後の税制改革の議論に向けて」というふうに、「今後」を前に出したほうがいいのかなと。これはある意味では私の好みであります。
それから、1ページ目の一番下、「以下」のかわりに「責任」「安心」、そして「活力」の三点が考えられるという形で、ここをクローズアップしたいと思います。
それから、2ページ目の(「安心」できる社会)の中で、例の田近さんから指摘いただいた「税制の所得及び資産の再分配」の前に、「社会保障制度と一体となった」というのを入れたいと思うし、「一層的確に」の「一層」を除いたほうがいいだろうと思います。
それから、納税環境整備のところの「等」を入れたほうがいいですね。
それから、最後の最後、「次期税制調査会の議論をはじめ国民的な議論が深められていくことを期待したい」と、たしか翁さんが言っていただいたと思います。そこをちょっと入れて、この文書の性格を的確にしたいと、このように思います。
この程度のことならば、今すぐ直して、公表の段取りには支障がないと思います。よろしゅうございますか。
他にもいろいろご注文いただいたのですけど、屋台骨がガタガタ動くまでに直すわけにはいかないと思いまして、こういう格好にさせていただきます。
それでは、このあとに記者会見がございますので、傍聴の記者の方々には、(案)がついておりますので渡しておりませんが、この(案)を取りまして、今申し上げたようなことを入れて公表させていただきたいと、このように考えております。
それでは、今日はこれで最後になりますので、起立してご挨拶いたしたいと思います。
10月5日に我々の任期が切れます。そういう意味で、3年間のこの税調の審議は終わるわけでありまして、議事の関係で今日を最後にいたしたいと、このように考えております。本来ですと、財務大臣あるいは総務大臣にお越しいただきまして、御礼も含めてご挨拶いただくということを通常は考えるのでありますが、今、ご承知のように、谷垣財務大臣は東奔西走されておりますし、竹中大臣のほうもお忙しいと思いますので、今回はその種のことはいたしません。今回は私が最後にトリを務めさせていただくという格好にさせていただきます。
簡単に今思っておりますことを二、三まとめまして申し上げたいのですが、3年前、ちょうど2003年10月に小泉首相から諮問をいただきました。それを受けまして、3年間、私はかなり密度の濃い、いい議論をこの税調はしてきたと思っております。毎年、年末になりますと、次年度に向けて来年度の税制改正の答申を3回出しましたし、それ以外にも、例の経済社会の構造変化の「実像把握」、これは税調としては画期的なことでございまして、非常に評判がよかったと思いますが、それをしたり、あるいは金融所得課税の一体化とか、あるいは非営利法人、あるいは寄附金税制、あるいは個人所得課税の論点整理等々、重要な点につきましては一通りまとめてきたなと、このように考えております。
今、出口さんからおっしゃっていただいたのですが、これを今の段階で論点整理メモにまとめてしまうよりは、やはり今後起こるであろう税制改革の中で、本格的に活用してもらうというか、税調の主体的な活躍の場として基礎作りをする、あるいは土俵作りをするところにぜひ使ってもらいたいという意味で、今回見送ったということであります。
おそらく、先ほど申し上げましたが、次の抜本改革は今いろいろな政治情勢でどうなるかわかりませんけど、総裁選の候補者の話などを聞いていますと、今年の秋ではなさそうだと、しばらく先になるのではないかということを踏まえて、おそらく次の税制改革は21世紀初めての大きな抜本改革になると思っています。
1991年にバブルが崩壊いたしまして、それ以降、財政出動の中で減税が繰り返され、日本の税制は大分傷がついた。あるいはゆがみ、ひずみがいっぱい出ているし、不公平でもあろうと思っています。そういうものを引きずって今後の少子・高齢化、あるいは財政赤字削減に向けての、何かしらの国民に対しての負担ということについて議論がいくとなると、それはやはりこれまでのいろいろな欠陥の増幅にならざるを得ないと思いますので、過去のいろいろな問題を整理しつつ、かつ、将来に向けての税制改革は、本当に大きなものになろうと思っています。
1950年代、80年代後半に、中曽根さんがシャウプ勧告以来の抜本的改革と言っておりましたけれども、おそらくそういう意気込みが内閣のほうにも、あるいは時の政権にも出てきてもらえれば、それなりの基礎作業を我々はすべきであると考えております。
税調を取り巻く環境が次第に厳しくなってきていると思っております。一つの大きな問題は、政府税調だけが税制改革の総本山でもないし、あるいは独占的な地位を保っているわけでもないわけですよね。1962年に税調が法制化され、40数年間たちました。昔は税調が問題提起をすれば、大体それに従った税制改革が実現したわけでありますが、今はそういう状態ではない。それと同時に、何といいましても、選ばなければいけない選択肢が、パイが膨らんでいる時と比べて、パイがかなり固定してきて、その受益の配分よりは負担の分かち合いというところでいろいろ問題が出てきておりますから、非常に難しい問題が出てきたなと考えております。しかし、税調でなければできない仕事というのはあるわけです。それはおそらく税制全体を見渡して、課税の公平・中立・簡素とか、その他政策目標を加味した上で、税制全体のグランドデザインを描くというのは、おそらく他の税の関係の調査会ではできないことだと思っております。
そういう意味で、おそらく政府税調というのが大きな存在価値を認められるためには、次の抜本改革に備えて、次期税調が本格的な作業をして、真の税制改革に役立つ土俵作りをしてもらうということが一番の大きな役目ではないかと思います。税調委員の皆さんの中に、次期もご活躍いただかなければならない方も多々いられると思いますけれども、今回は今回でひとまず議論を切って、次に本格的な議論をしてもらうということに対して、お願いをしておきたいと思っております。
最後になりましたが、我々税調のために、主税局あるいは自治税務局のスタッフの方々には、本当にいつも大変ご苦労をいただいております。税調メンバーを代表いたしまして、心から御礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
それでは、時間が若干過ぎておりますけれども、これにて今日の議論は終わりにいたしたいと思います。どうも長いことありがとうございました。心から感謝を申し上げたいと思います。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。