総会(第52回)・基礎問題小委員会(第62回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成18年9月5日(火)16:02~16:26

石会長

今日の会合が終わりました。変則的にダブルヘッダーでやりましたけれども、経過報告いたします。それと同時に今後どういう形で税調の審議を進めるかという点につきましても、現段階においてご説明をしたいと思います。

3つ4つ重要な点があったと思いますが、1つは今日、私が会長として出しました2つの点につきまして総会でご承認いただけたと理解しております。

第1点は、理由は再度申し上げませんが、中期答申を将来のしかるべき時まで延期して、要するに税制改革の基盤あるいは土俵作りについて貢献したいというのが1点。それから第2に、過去3年間随分やってきたことがあって、それはそれなりに評価も受けたし、世に問う成果もあったと考えておりますので、それを踏まえて今後どういう形で税制改革の議論をしてもらうか。つまり、次期税調に対してメッセージを送りたいという視点からの「会長談話」を作ろうということについてもご承認を得たと思っております。

そこで、メモ書きに書いておきましたように三段階に分けて、第1段階目がこれまでの経過、並びに何故将来のしかるべきタイミングなのかという理由、それから2つ目には3つの視点から述べました税制改革の基本的な視点、3つ目に今後やるべき具体的な内容について、というような「会長談話」を書くということも踏まえましてご承認をいただいたと考えております。いずれにいたしましても次回までに今日の議論を踏まえてまとめて、皆さんの了解を得たいと考えております。

それから、2つ目の点は、税調の役割なり、税調の歴史的使命なりということについて、つまり今回の機械的な3年ごとの中期答申ではなくて、より本質的な、実質的な税制改革の案を出したいということを踏まえて、税調の役割が政治的な位置づけとしてどうなのかという議論もございました。従って、今回の中期答申を将来に延ばすということについて、考え方としては政治的あるいは政局的な意味合いで税調は先送ったという、そこが理由だというような意見と、さはさりながら、もう一つの意見として、積極的に歳出・歳入一体改革を踏まえた後で、今後の21世紀の税制の再構築というのがいずれ早晩来るわけですから、それがこの秋ではなくてその先にあるだろうということを踏まえて、税調の力をためて議論したいという積極的な延ばす理由ですね。いずれにいたしましても、政治とは完全に決別しようという意見から、そうは言ったって税制改革において政治的な影響を無視できないという意見と2つあったやに思われます。大半の意見は政治的な環境なり状況を100%排除できないではないかということではないかと、このように考えております。さはさりながら20年前30年前に比べて、税制改革が政治的な決着あるいは政治家の責任で決められるということは否定できない事実でありますから、それを前提として税調のやるべきことを今後どういうような形でまとめていくか、固めていくかということが次の税調にとっても大きな問題になると考えています。つまり、政治との距離の置き方で税調の役割が随分変わってくるんじゃないかということですね。そういう意味でこの2点目も次の議論になると思います。

3点目は、これまでやってきました税の議論の中身をどれだけ申し送るかということにつきまして、原案がまだ出てませんので、検討はしにくかったんでありますが、税調の中でまだ意見が固まっていない点についてまで触れるというご意見はなかったと思います。具体的な検討項目として主要な税、つまり過去3年間様々な税を議論してきましたが、それにつきまして我々として議論を交わした点につきましての項目は最低限、整理をしなければいけないと思っています。ある意味では具体的な中身について結論をはっきり出すというような形よりは、むしろ議論の方向付けぐらいのところでいいのではないかというふうにおっしゃったんだと思いますが、私はそれはそれでいいのではないかと、このように考えております。

以上3点、申し述べましたが、いずれにいたしましても来週の火曜日に「会長談話」というものの中身を税調としてお認めいただいて、そこで必ずしも意見が100%一致しない場合には、私の責任でそこは出させてもらう点もあるかもしれませんが、世に出す「会長談話」というのを税調に出したいと、このように考えております。

以上です。

記者

今回の件で、先送りの分ですが、どうしても自民党総裁選も直前に控え政治日程に配慮したと指摘されることはやむを得ないと思うんですが、そのことについての会長のご感想を。

それともう1点、今回会長からご提案されたわけですが、答申の取りまとめ時期を何時先送りする必要があると判断されたのか、それについてお願いします。

石会長

第1点、自民党の総裁選挙云々と関係づけられて延ばしたという、それは皆さんのご判断だと思っています。私自身、そういうことは100%なかったとは言いませんが、より重要なことは第2点のご質問にありました、答申を延ばした積極的な理由ですね。これは税調の中でもメンバーの方にご説明しましたが、7月に歳出・歳入一体改革の議論が出て、一応私は戦後初めてだと思いますが、財政健全化の目標プランが歳出・歳入一体改革で世に問われたわけであります。それを踏まえて税制改革のパーツもしっかりまとめる必要があると考えておりました。今、仮に「中期答申」をまとめるとすると論点整理でやった程度の中身しか恐らく今の段階では、我々の力としてはまとめられない。私は個人的には来るべき税制改革というのは21世紀を眺めて、とりあえずバブル崩壊後に税制がかなり傷つきましたから、それを修復して今後の少子高齢化、あるいは財政再建を睨んだ公平で中立的な簡素な税制を作るというのが大きな狙いでありますから、それを作ることと時間的な問題、それと世に問うタイミングの問題という形で、先に将来のあるべき時期に延ばすのはやむを得ないと考えております。そういう意味で、より税調の中の議論を踏まえて、一番いい時に税制改革を世に問いたいというところが一番の私の積極的な理由であります。

記者

先程の総会の中で、次の税調メンバーが取りまとめる時期、半年から1年後というような具体的な時期の言及があったと思うんですが、それが今おっしゃったベストなタイミングとおっしゃるその理由をお願いします。

石会長

税制改革というのはやはりある程度、時の内閣が責任を持って、今こういう税制改革をしたいという、時の流れというか、受け皿というか、それは必要なんですよね。例えば1979年の大平さんの時の一般消費税にしても、あるいはシャウプ勧告以来の抜本税制という中曽根さんの時等々も、すべからく内閣がそういうことを踏まえてやろうと言ったときに、税調がその基礎作業として税制改革の案を作ったというのは明々白々たる事実ですから、今後もそういう時期というのが恐らくあるんだろうと思うんです。あるいは、それに近い段階でまとめられるように次期税調は早いうちから努力して整理しておく必要がある。でも木委員がおっしゃっていたように、やはり国民との間の対話というのも必要なんです。そういう意味で対話集会というのも考えつつ、我々の案を作るという意味で幾つか条件があるかと思いますが、ベストのタイミングとして余り2年も3年も先ではなくて、次の税調の任期の前半、少なくともそのくらいにとりあえず中期答申に変わるべき主体的ないい中身の税制改革案を作るべきであると、こういうように考えています。

記者

これまで3年間も議論してきたのに答申を見送られるということで、税調の存在意義というものが問われていると思うんですけれども、その辺はどうお考えになりますか。

石会長

3年間議論した中身として、例えば経済社会の実像把握みたいに大きな話をしたり、金融所得課税の一体化の議論をしたり、あるいは個人所得課税をやったり、そういった部品というものにつきましてかなり突っ込んだ議論をしてきたんです。そこで、恐らくそれを総合的にまとめて、税制改革の全体像を示すというのが次の我々の使命だと思っているんですが、それは時間的に、かつ今の段階でかなり中身にコミットしたような書き方というのは、政治主導の税制改革の中で難しかろうと思っています。また、3年ごとに中期答申を出さなければいけないという縛りは全然ないんですね。過去にも政府税調は折に触れて中期答申に代わる、あるいはそれ以上のものを出してきたつもりであります。たまたま任期切れ、たまたま政権交代の時期ということが重なったが故に、今回少し先に延ばすという判断をしましたが、これで私は政府税調の権威云々に関わるとは思っておりません。というのは、恐らく政府税調しか出来ない税制改革の審議というのはあると思うんです。それは税制全体をどういう方向で、つまりあるべき税制という視点からどう再構築するかというときには、必ず我々の出番があると思っていますから、それは今でなくて、しかるべき将来のグッドタイミングの時期にと思っています。これは皆さんもいろいろご判断があろうと思いますが、私はそう考えています。

記者

確認なんですけど、会長に対して今回答申を見送るようにという、具体的な政府与党関係者からそういう話があったのかということを確認したいということと…。

石会長

どちらかというと、私が主体的に考えたことというふうにご理解いただいて、事務局を通じて財務大臣なり官邸なりにその承認を取ったという方が、説明としてはいいかと思います。10月5日が任期ですから、今からでもしゃかりきにやって「中期答申」みたいなものを形式的に出すことは私は不可能ではないと思いますし、それでもいいかと思いましたが、問題は内容でしょう。税制改革というのが実質的に進められるような、しっかりとした内容のものを出せればそれでいいけど、私は会長としてこれまでやってきました審議結果を踏まえて、部品的には極めて優れたものになっていると思いますが、税制全体としての議論がまだ欠けていると思っているんです。例えばどういうタックスミックスで行くか、どういうものを今後伸ばしていくべきか。あと部品についても、必ずしも今日議論にもなりましたけど、所得税の最高税率について、高めるのか低めるのか、あるいは法人税の基本税率についてもっと高めるのか低めるのか、これも真っ二つに分かれているんですよね。これはちょっと議論がまだ煮詰まっていないので、そういうものが使えないとなるならば、やっぱりもう少し熟すまで議論を重ねる必要があるという意味で、私から主体的に考えたと理解してください。

記者

会長は7月の会見までは卒業論文だとおっしゃっておられたと思うんですけれども、そうすると結果的に卒業論文なしみたいな形になって、談話を出すということなんですけど、それに対する個人的なご感想をお願いします。

会長

卒業論文というのも3年ごとに確かに出してきた経緯はありますけど、ただ過去の色々な答申と我々の意見と比較して、ひとえに今の段階で書ける内容について、世に問えるだけのものができる自信がなかったということです。卒業論文だって出す間際になって引っ込める人はいっぱいいるじゃないですか。皆さんにもそういう経験をお持ちの方いるでしょう。それと同じですよ。それは駄作でも何でもいいやというならそれでいいけど、政府税調ともなるとそうもいかないだろうという意味の謙虚な、控えめな精神が芽生えたということでしょうか。

記者

先程なかなか議論がまとまらない部分も出てきたという話があったんですが、締め切りというのは、10月5日というのは3年前から設定されてきたわけで、それを受けて審議をしてきたわけですよね。今になって先送りしましょうというのは、タイミングの問題もあるんでしょうけれども、それは議論が思ったように煮詰まらなかったということなのか、それとも税調の次の答申を求められるものというのが当初想定してきたものよりも変わってきたということなのか、その辺の話をお伺いしたいのが1点。

10月、9月に出すのを諦めようと思い始めたのは、これは会長としていつ頃から先送りしようというふうに考えておられたのか、その辺を少し教えて下さい。

会長

後段のほうからお答えいたしますけれども、やはり歳出・歳入一体改革議論の中で歳出面についてはかなり細かい議論が出ていましたけれども、歳入改革については増税の幅がアバウトに出されたくらいの話ですよね。そうなりますと私の予想よりは大分後退した抽象的な内容だったと思っています。あれがもしくはもうちょっと踏み込んだ格好で出てきて、歳入改革の税制改革みたいなのができれば、それはそれで良かったんだと思います。ただ、すべからくこの秋ではなくて次の秋であるという話も、これまた巷から聞こえてくることもあり、そう急ぐこともないだろうという議論と、それからやっぱり税制改革の案を出すときには受け取ってくれる側の対応も恐らくあるんでしょう。そんなこと言うとまた政治絡みの話になりますが、それは全面的になかったと否定しませんが、それより、やはりいいものを出したいということになりますと、もうちょっと時間と我々の審議の内容を整理する必要があるということですね。

それから第1点の問題で、もうあらかじめわかっていたことじゃないかということですが、それはわかっていましたよ。ただ、問題はどれだけの内容、いい内容のものを盛り込めるかということについて、その時々で議論というものは煮詰まっていなかったということでしょう。そういう意味で、7月の段階、もう夏休みに入る前の段階で、どうでもいいから形式的に出してしまおうという選択肢もあったし、そういうことを考えないわけでもなかったけど、やはり出すならしっかりしたものを出したいと。卒論でいい点数をもらいたいということもありましたから。ただ、結果的に卒論を出さないで、我々は卒業しちゃいますからね、そこでまた1つ問題が残るかもしれませんけれども、機関として連続的に税調があるわけだから、次の人に託してそれをやってもらうのでいいじゃないかということですね。そういう意味で複合的な作用がありますから、どれがどうだということを一刀両断的に理由を言うことは難しいですね。

記者

会長として端的に今回出せないことについて、無念だとか、そういう気持ちはないんでしょうか。というのは、7月の段階では当時閣議決定された後の会見でも、出すことを前提にしてこれからこの文章を繋げていって9月まではいいという話をしていて、あのときは完全に出すことは前提になっていたと思うんですが、その後、急に状況が変わっていくわけですよね。その辺を会長として、今回談話という形になったことについて思いというのはどういう気持ちでしょうか。

会長

基礎問題小委員会の段階では、残念だ無念だというご意見がでないことはなかったです。一、二の人がそういう思いのことを述べられたし、総会でもそれに近いニュアンスの方がいらっしゃったと思います。私はこれは健全な発想だと思います。やはりちゃんと計画どおり進まなかったことについては、内心忸怩たるものがあるというのはそうだと思います。私もその点について100%ないとは言いませんが、ただ、結果的にどっちがいいかという判断ですよ。つまり今、ややお粗末というか、やや意に満たないもので形式的に、任期が来るから、10月が来るから出しちゃうかというふうに踏み切るか、それともそこはいろいろご批判はあるけれども、少し将来に力を蓄えて、しっかりしたものを出す方がいいのではないかと。従って当然のこと、残念なという気持ちが100%ないとは言いませんが、将来の期待を持つべきであると思っていますから、結果的にはそっちを選んだということですね。だから税調の中でも意見は二つに分かれていたと思いますが、ただ全員が賛成してくれたことは、今無理して意に満たないものを出すよりは、いろいろご批判はあるけれども、将来ちゃんとしたものを出すべきであるという選択を皆さんが致したということでありますので、税調として複雑な思いがあるにしても、皆さんそういうふうになったということで、私もその意見です。

記者

政治的なタイミングの問題はあるんだと思うんですけれども、ただ自ずと成り立ちから自民党には党税調がありますし、政府税調というのはあるべき税制を考えるというのが政府税調の役割であって、その時に確かにこういう状況で新しい政権になるときに、なりそうな人が余り税制の話をしていないところで出してもしようがないというのもあるのかもしれないですが、そうなると誰も言いにくいことを言わなくなったりして、そういうときに本来政府税調というのはきちんとした意見を出すべきなのではないでしょうか。

会長

そういう意見も今日何人かの人から出まして、それはそれで私も1つの意見だと思いますが、ただ、何度も申し上げていますように、税制改革をやるに当たっては時の流れというか、要するに内閣が主体的に取り組むかという場面が恐らく必要なんでしょうね。ただ、そうならないと、我々が何か骨っぽいことを言うだけでは税制改革はできないんですね。今日も何人かの人から、税制改革から政治という力を100%除くことは出来ないと言っていたと思います。やはりそこはそこで言いにくいことを言うにしても、受け止めてくれるだけの場が、あるいは背景が出てきて初めて一定効果があるんだと思います。そういう意味で、今はそういう時期ではないなという判断を私自身はしています。ですから税調が今後求められる役割は、来るべき税制改革の中のしっかりとした基盤を作る、あるいはフレームを構築する。それが出来るかどうかによって今回の延長したことの是非が問われてしかるべきだと思っています。

記者

中期答申を出さないのは初めてでしょうか。

会長

ええ、初めてだと思います。ただ、中期答申というのは過去何十年来見てみると立派なものからそうでないものから色々あります。今の税調というのはご存じのように1962年に出来たんです。昭和37年ですね。それ以来ほとんど3年ごとに出していますから、もうかなりの量になっていますけれども、その時々の税調の資質によるんだろうけれども、後世あまりへんちくりんなものを出すということのほうを、私は恐れますね。というわけで今回、先にしたというふうに理解していただいて構いません。

記者

「会長談話」というのは異例ですか。

会長

いえ「会長談話」的なものはしょっちゅうというか、出しています。「中期答申」に代わるべき「会長談話」というのではなくて、その時の、例えば私は土地税制小委員長みたいなものをやりましたけれども、小委員長談話みたいなものをやりましたし、それを後付の意味で会長もフォローしてくれたということもあります。「会長談話」というのはある意味でその時々で税調はどう思っているかというときに、会長個人の見解かどうかは、ちょっと調べてみないと分かりませんけれども、過去にあったんだと思っています。

それから今日も議論になりましたが、「会長談話」ですから個人的な色彩をどれだけ出すか、これはこれから文章を作って、来週、皆さんの合意が得られれば一枚岩でも出せるし、何か不一致のようなことがあれば私が最後に自分で責任を持たなければいけないなと思っています。皆さんに追及されるのは私だけですからね。

記者

「会長談話」ですけれども、そこでは消費税の引上げの必要については触れるんでしょうか。

会長

ええ、恐らく消費課税なり、消費税について、何かしなければいけないことを書かなければ話にならないんではないかと思いますけれども、それは文章化する段階でどこまで踏み込んだ書き方にするか、ちょっとまだ考えていません。

(以上)