第52回総会・第62回基礎問題小委員会 合同会議 議事録

平成18年9月5日開催

石会長

それでは、総会と基礎問題小委員会合同の会議を行いたいと思います。

総会ご出席の方、少しお待たせいたしまして申し訳ありませんでした。基礎小で諮って皆さんの合意を得たことを、これから総会で決定させていただきたい、このように考えております。

審議に入る前に、財務省と総務省でかなり大規模な人事異動がございました。お手元に異動状況がございますので、これをご覧いただけたらと思います。

ただ、お二人の局長にはご挨拶をいただけたらなと思っております。

最初に主税局長の石井さん、よろしくお願いします。

石井主税局長

石井でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

2年間、主税局を離れておりましたが、その前、審議官としてこの税調のメンバーの方にもいろいろお世話になっておりました。引き続き、よろしくお願いいたします。

石会長

前任の主税局長の福田さん、今度は国税庁長官になられましたが、今日お見えでございますから、何かご挨拶をいただきたいと思います。

福田国税庁長官

突然で申し訳ございません。7月28日付で、私が国税庁長官に、審議官をしておりました加藤が国税庁次長にそれぞれ代わりました。税制調査会の委員の皆様方には、本当に長い間いろいろとご指導いただきまして、ありがとうございました。改めて御礼申し上げたいと存じます。これからは皆様方にお決めいただいたことを執行する立場でございます。適正・公平な課税というのは私どもに課せられた使命でございますが、この使命を全うしたいと考えておりますので、これからも引き続き、いろいろご指導、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。

石会長

力強い決意表明をいただきまして、安心いたしました。

それでは、自治税務局長の河野さん。

河野自治税務局長

去る7月21日付をもちまして総務省自治税務局長を拝命いたしました、河野でございます。地方税いろいろ課題がたくさんございますけれども、委員の皆様のご指導を賜りまして、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

石会長

それでは、ほかの課長の方々を全部ご報告していますと時間がとられますので、紙のほうで皆さんご確認ください。

最初に、今日の本論に入る前に、夏休み前までに整理いたしました「主な論点」、それをベースにして議論するのですが、といってあまりそこに時間もとりたくないのですが、どういう形でこれまで議論を進めてきたか。夏前までの議論をもう一回思い起こす意味で、この「主な論点」の紹介を、リバイズ版が出ておりますが、永長さんからご説明ください。

永長総務課長

本年に入りましてから、いろいろ海外出張していただいたり、その後、財政全体の中での税制のご審議をいただきました。5月に入りましてから、所得税、資産課税、法人課税、国際課税、間接税と、3回に分けまして「主な論点」という作業に入っていただきました。6月30日、7月4日、7月11日と3回に分けてこの様式でやっていただいた後、7月14日に2回目の審議をしていただきました。今日、ここにご提出申し上げていますのは、この7月14日に出された意見を追加したものでございます。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。内容は各自でチェックしていただけたらと思います。

実は今日はそれとはまた別に、3年の任期が来るときに出しております「中期答申」、この取扱い方をどうしようかということで、まずお諮りいたしたいと思っております。

お手元に、「年度改正事項」という横に書いたA4版で、これまで我々が3年間何をやってきたかという紙を委員限りで配付しております。我々、3年前に小泉さんから諮問いただいた以降、3年間それなりに努力をして、それなりに様々な審議をして、世に問ういうなれば答申を出してきたかと思います。とりわけ16年6月の「わが国経済社会の構造変化の『実像』について」というのは、単に税制のみの議論ではなくて、幅広くわが国経済社会の変化についてまとめたものでありまして、いろいろな意味で評価されたものではないかと思います。

それを受けまして、金融所得課税、非営利法人、寄附金の問題、それから個人所得課税の論点整理等行いまして、右のほう、16年、17年、18年という改正の中で幾つかのものが実現しているわけであります。

同時に、毎年、年度改正について答申を出してきております。過去3年、何をやったかということをここで一応整理して、これをどう生かすかということにつきましてお諮りしたいわけであります。我々、3年間いろいろ知識を集積いたしまして、税制改革について世に問うことを出してまいりましたが、恒例でありますと、任期が終わるときに俗に言われる「卒業論文」みたいな形で中期答申を出してきております。

ただ、今回、いろいろな意味で新しい事態が出てきております。3年という機械的な期間が来るから中期答申をまとめるということでいいかどうかということを、私から問題提起をさせていただきたいのですが、実は7月に政府のほうから「骨太方針2006」というのが出まして、今後の財政健全化の目標を達成する、そこで増税の役割等も出されたわけですし、少子高齢化とか地方分権の問題等々踏まえて、ある程度、今後どういう政策課題があるかということが出たわけであります。

そこで我々として、論点整理という形で、今、永長総務課長からご説明をいただいたような程度の、いわゆる論点だけぼやっと出したような中期答申というものでいいかどうかという議論が当然あるわけです。そこで、時間的な余裕ということもございますし、何よりも税制改革というのは、政治的な土壌と申しますか、政権があって、いわゆる政策的な受け皿があって初めて税制改革というのは進むわけであります。そういう意味で今ベストタイミングかというと、必ずしもそうではない。

特に小泉さんから諮問をもらいましたが、小泉さんは今月いっぱいで辞められるわけだし、新しい首相が誰になるか、その方がどういう税制改革についての見解を示されるかもまだわかっておりません。そういう意味で、今、抽象的かつアバウトな内容の中期答申を出すのがいいかどうか。それよりは、私が今頭にあるのは、歳出・歳入一体改革である程度フレームが先にだいぶ出されたことを踏まえて、本格的な税制改革の審議を踏まえて、しかるべき将来の時期にそれを出したほうがいいのではないかという気になってきたわけであります。

つまりバブル崩壊後、日本の経済社会は大きく変化して、税制もかなり、私の言葉で言えば傷んできたわけでありまして、これから少子高齢化、あるいは財政再建を迎えるにあたって、この税制のままでいいかどうか。これはもう一度、公平、中立、簡素の視点から再度チェックする必要があるだろうと。そういう意味で本腰を入れて議論をする。我々の任期は10月5日に来ますので、結局、次期の税制調査会に送るということになるのですが、そこで何をしてもらいたいか等々のメッセージをやはり残す必要があるだろう、こう思っています。

先取りして言わせていただくと、中期答申の代わりに、仮称ではありますが「会長談話」みたいな形で、これまでやってきた成果を踏まえて、今後どういうことをやってもらいたいか、やるべきであるか、というメッセージを送るような形のものをまとめてはどうかというのが問題提起であります。

総会の前の基礎小では、この問題を提起いたしまして、ずいぶん議論いたしましたが、私の見解でいいではないかという方向性を一応支持いただきました。ただ、あくまで税調の総会が最終的な意思決定機関でございますので、総会にお出しして、皆さんからこういう形で行こうというご支持を得たいと思っています。

それができた後で第2段階として、「会長談話」の中身、内容、それにつきまして今考えておりますことを後ほどお話ししたいと思いますが、まず前段として、手続きの問題として、私の問題提起についてご質問なりご意見なり、また反対賛成、幾つかお持ちと思いますので、忌憚のないご意見を伺いたいと思います。

どなたからでも結構でございますから、どうぞ。

丹羽委員

基礎小で、会長のご意見に反対だというようなご意見はどういうご意見がございましたか。

石会長

税調のそもそもの使命から言って、3年間という中でやったことをニュートラルにまとめるのがそもそも税調の使命ではないかということならば、歳出・歳入一体改革とか、あるいは政権交代があるからといって、それとの関連で中期答申を本来の時期より後にずらすということは問題があると。「残念である」という言葉もございました。しかし、そうはいっても今の事態から言って、少し延期して本格的なものを出すのがベターではないかという意見のほうになったわけであります。

今の説明でよろしゅうございますか。一枚岩で何でもかんでもというよりは、いろいろな議論も出された上で私の提案を受け入れていただきたいというふうにご理解ください。

どうぞ。

高木委員

いろいろ政治的な動向もこれありという、そのご説明もありましたが、この政府税調というのはいろいろな立場の人が集まって税をどうすべきかということを議論する場であり、政治と税の関係についていろいろなご議論があるにしても、それはいつの時代にもある話であります。だから、しばらく延ばして、そのときの状況がどうだからといってまた延ばしたりとか、そんなようなことも含めて政治、政局みたいなことに過敏に反応する形で審議の進め方を云々するのは、基礎問題小委員会でもそういうご議論があったということでございますけれども、私ども、いかがなものかなと。

税について今税調でも、例えば財政審との合同審議だとか、骨太の方針2006が出される前後にもいろいろな議論が積み重ねられてきて、消費税のことをいろいろいじくったりする話は来年の参議院選挙にさわる、というふうなことは乗り越えていけるべく議論をしてきたのではなかったか。そんな受けとめ方もありますし、消費税問題はともかくといたしまして、例えば資産性所得に関する問題、高額所得者の最高税率の問題等、これは私どもの立場で言えば何とかしてほしいなと、そんな主張もさせていただいてきたわけですが、そういったものを全部ひっくるめて先送りだというのは、はい、そうですかというわけにはいかないのではないかなと。そんな印象も持たざるを得ないわけでございます。政治、政局、自民党総裁選挙等々、過剰に受けとめられているのではないか、こういう意見でございます。

石会長

ちょっと私の説明が舌足らずだったかもしれませんが、政治とか政局というものを大上段に振りかざして理由にして、延期したいと言うつもりはございません。100%ないかといえば、今の事態から言って、それはかえっておかしいかもしれませんが、我々として3年間やってきた、いうなれば集積を踏まえて、来るべき21世紀、これから税制の再構築をしなければいけないときに、税制全体を見渡した税制改革プランをつくらなければいけないと思っています。冒頭申し上げた、これまでやってきた3年間の実績を見ていただくとわかりますように、部品はそれなりにしっかりとしたものをつくってきたかと思います。金融所得課税にしても、個人所得課税にしても、等々あって、それを踏まえて年金税制とかいろいろなことが実現したわけであります。

ただ、税調しかできない仕事ということから言えば、税制改正、税制全体を見渡したあるべき税制の姿を、そのときどきの経済社会の変化に対応して書くべきだと思いまして、それにはもうちょっと時間が必要であろうと。これまでやって、もう少しやればよかったということもあるかもしれませんが、いずれにいたしましても、まだそれが固まっていないという意味で、今回、もう少しじっくり議論したいという趣旨と同時に、先ほど申し上げた「タイミング」というのがあると思いますので、それを見てやっていきたいという趣旨であります。木さんのおっしゃることもよくわかります。

他にいかがでしょうか。いろいろなご意見をいただいたほうがいいと思いますので。

丹羽委員

これから6カ月とか1年で、大きく経済の土台が変わるとか、経済の流れが変わるということはあまりないだろうと思いますが、誰が首相になっても、誰が次の委員になられても、今後の税制のあり方についての論点というか、問題点というのは、今までここで議論されてきたこととそれほど大きな違いは出てこないと思います。

ただ、ご指摘のように政治の季節になって、政治、政策というものが税制に与える影響が大きい分野が残されていると思います。とりわけ消費税とか、増税の一部の問題ということになりますと、やはり次の首相の判断というものも非常に大きな影響を及ぼすだろうと思います。時間がないということもあると思いますが、政治の中枢が定まらないと政策がなかなか決定できない分野も結構あると思いますので、私は判断はきわめて政治的なものにせざるを得ないだろうと。理論的にこれが絶対正しいということは、少なくともこの問題はないというふうに思いますので、私は会長一任ということに賛成であります。

石会長

他にいかがでしょうか。基礎小以外の方で、上月さんあたり、どうですか。

上月委員

政治の問題も、それから石会長の今のご説明もよくわかりますが、やはり「あるべき税制」というのを我々はずっと研究してきていますので、それを今回まとめ切れなかったというのは非常に残念だと思います。一部には、政府税調に対する存在感というような批判もありますので、できたら会長メッセージを、政治に絡まないで、もっと理論的にしっかりと皆さんに公表していただく方向でないと……。そういう理論的な方向から見ると、政治が多少でも絡んでくると、「政府税調って一体何なんだ」というような批判が起こるのではないかなと思います。

石会長

政治との距離というのは本当に難しいんですよね。ますますその距離感をどうとるかということで、政府税調の今後の役割いかんも問題になりますが、基礎小でも問題になりましたけれども、いずれ政府税調のあり方論を含めて、次期の税調で少し議論してもらったほうがいい問題ではないかと思っています。

他にいかがでしょうか。

佐竹委員

税調の本来のあるべき姿というのは片方にあると思いますけれども、これは私は、会長のメッセージの出し方にもよるのかなと。いずれ個別の税の問題はそれぞれあるわけで、まだ議論を積み上げなければならない。あるいは、この税調でおおよその方向を見い出したもの、あろうかと思います。そういう個別のものは別といたしまして、政治と絡まないというわけには絶対いかないわけです。例えば消費税の問題の方向性、あるいは、どなたがなるのか別にいたしまして、全く政権が代わったとしても、今、地方分権の推進のための新しい分権推進法は政治日程にのっているわけであります。これまではどちらかというと後追いで、例えば、分権の関係の三位一体のときは後追いで数字を合わせるために議論をしたわけでありますが、分権推進法、あるいは道州制の問題についても、いずれかなり大きな政治日程になってくるわけであります。

理論的な見地を踏まえてのそういう国税と地方税との抜本的なあり方等、そういう大きな幾つかのメッセージをきっちり出した上で、個別のものについても、これまでのまとめについてある程度発信するということで、私はこれについてはそういう形でやっていただければ、今必ずしも答申を出さなくても、税調の存在意義を揺るがすものではないと。どのような政治体制になったとしても、必要な大きなものについては触れていただく。結論は別にいたしまして、今後、議論を深めなければならないという形でも結構ですので、そういうことではないのかなと、そういう考えでございます。

石会長

他にいかがでしょうか。

どうぞ、秋山さん。

秋山委員

まず結論から申し上げますと、会長一任ということで私もよろしいかというふうに思います。この3年間、幾つかの答申を出させていただいて、成果が全くなかったというわけではないと思っておりますし、これまでの答申に盛り込まれなかったもので、まだ出していない大きな論点というのは、丹羽さんがおっしゃられたように非常に政治に絡む部分がある。だからといって政治との絡みというよりは、政府税調の答申というのは理論ももちろんですけれども、そこにはやはり現実感ですとか、実際の世の中に対するリアルなメッセージという部分も非常に重要だと思いますので、そういった意味合いで今回のご判断はよろしいかというふうに思います。

石会長

どうぞ、出口さん。

出口委員

私はやや違った見方をしているのですけれども、逆に私のような人間からすると、今までこういう時期に中期の答申を出すんだという習慣があって、それを守らなくはいけないのだというプレッシャーを感じること自体、今までの議論と違うのではないかなと。そういう意味では「あるべき税制」からしっかりした答申を出してきまして、今度の答申をいつ、どのようなタイミングで出していくのかという時期につきましては、私も会長に一任したいと思いますし、それが今がベストなのか、どういう時期がいいのかということについては、政治の問題とはそれほどかかわりない問題であって、むしろ我々の任期が今だから、今このことを議論するというよりも、やはり税ということですから、一番いいタイミングを見計らって、いい答申を出していくというスタンスであれば、これまでの議論と何ら矛盾することはないのではないかというふうに思うわけでございます。

石会長

他にいかがでしょうか。この際、しかと言っていただくというようなことがあればと思いますが。

それでは、仮に「会長談話」を出すならその中身が問題であるという点について、何人かの方からご示唆がございましたので、そっちのほうに入りまして議論を少し深めたいと思いますが、現段階におきまして、私の最初の提案として、中期答申を将来しかるべきベストタイムを見計らって出し、かつ、税制改革の基盤づくり、土俵づくりについて、税調の本来の姿を示すというような形でよろしゅうございますね。

それでは、今、何を書きたいかというメモ書の段階ですが、「会長談話」、括弧付きの会長談話でありますが、一応整理したものがございますので、委員限りでお配りいたします。それに従いまして説明させていただきたいと思います。基礎小の方は引き続き、前の文章を見ていただければと思います。

メモ書きにマルが4つついております。最初のマル2つがパート1で、3つ目のマルがパート2で、最後のマルがパート3という形で、一応私は3段階で内容をまとめればいいのかなというふうに考えております。第1と第2からなりますパート1のほうは、すでにこの総会の冒頭で申し上げました、これまでの成果なり経過なり、そういうことでございますので、あえて触れることはいたしません。

そこで、どこまで細かい内容に触れるかということにつきましては、私はこれはA4版で3~4枚程度ではないかと考えておりますので、まだ税調として詰め切っていない問題が多々あるわけです。例えば、法人税の基本税率の引上げなのか引下げなのか、あるいは維持なのか。所得税の最高税率を上げるのか、そうしないのかということは、実はまだ税調として主な意見としてまとめ切ってございません。あるいは消費税の使途の問題、目的税化について等々ございますので、そういう問題は次期の税調がしかと議論をして、しかるべき時期に税調としての改革案をまとめるべきだと思います。

第2パーツは、「基本的な視点」という形で3つ並べてございます。このネーミングにつきましては基礎小でも議論がありましたので、何かご質問があればお答えしたいと思いますが、とりあえず原案は、第1が「将来世代に対する責任ある対応」、第2が「安心できる社会の実現」、第3が「経済社会の持続的な活性化」。これを税制改革の基本的な視点として掲げたいと考えております。

従来、税調は「公平、簡素、中立」といった3つの視点から税制の中身を検討して、よりよい、つまりベターな構造にしたいと、質的にはそういうことを言ってきておりました。ただ、今、政策的な対応として、もっとそれを超えるような、また別な視点からの目標、視点があってもいいのではないかと思いまして、3つ考え出したわけでありますが、これはある意味では、上に書いてございます「基本方針2006」で言われたことの延長上にある方向だと思っています。

どういうことかといえば、歳出・歳入一体改革が7月に出たわけでありまして、そこでの税制改革の中身を詰めたいという意図がございまして、それがある意味では、中期答申を延期する、将来に延ばすという理由にもなっておりますので、当然のこと、この「基本的な視点」は「基本方針2006」とは関連があるというふうにご理解ください。

そこで、「責任ある対応」というのは何かと申しますと、これは別な言葉で言えば、将来世代に負担を転嫁しない、押しつけない。我々の世代はどちらかというと振り逃げ世代とか、押しつけ世代と言われておりますが、現世代がしっかりと対応するという意味で、これは別な言葉で言えば財政再建の必要性ということだろうと思います。

「安心できる社会の実現」というのは、今、世の中で心配されていることは、社会保障制度が将来ともに持続可能かどうかということです。年金、医療、介護、すべからくどんどん給付は削られるし、負担は増えていくし、一体どうなるかという心配を持っているわけであります。これに対しては、皆で費用を支え合って分担し合って、社会的にしっかりとしたセーフティネットをつくるという意味での安心感が与えられるシステムにしなければいけないだろうという視点から、税制改革も考えなければいけないと考えております。

それから「経済社会の持続的な活性化」。これはちょっと言葉がよくないということで、基礎小でもだいぶご意見が出ました。例えば、活力ある経済社会の持続であるとか、元気ある経済社会をどうするかというような議論も出ましたが、要は資本主義経済でありますし、かつ、市場原理の貫徹した社会でありますから、言うなれば民間の家計なり企業が、税制のディストーション(歪曲)なくして自由に自立した形で行動できるのが、一番活性化、活力に役に立つであろうと考えております。従来のように政策減税であるとか租税特別措置に頼らずして、民間が自主的に行動できる基盤をつくるべきではないかと。これを書きますとすぐ、政策減税を増やす、あるいは租特の拡大だというふうになりますが、そうではなくて、逆方向のことを私の頭の中にはイメージしております。

このほかに、地方分権というのを一本、柱に立ててはどうかという議論もございました。ただ、「経済社会の持続的な活性化」の中で、地域経済を活性化して地方分権を促進してここでやりたいとか、あるいは、少子化を食い止めて、子育ての支援を通じて活性化したいという内容を盛り込めばいいのではないか、こう考えております。

最後の第3パーツは、これがどのくらい書き込むか悩ましいところなのですが、従来、論点整理でも粗々まとめてきたところの個々の税制の改革の方向を、各項目について1行程度書き込んで、これを今後の税調の基本的な審議項目にしてもらいたいという願いを込めて書きたいと考えております。これも、具体的に文章にしたときにご議論いただきたいと考えております。

これが、今考えております「会長談話」の中身でございまして、3段階に分けてA4版で3~4枚にまとめて、世にメッセージ、つまりこれは次期税調に対するメッセージと考えていただいてもいいし、我々の過去3年間の成果を踏まえて、今後何をするかという意気込みのメッセージであると考えていただいてもいいのですけれども、そういう格好にしたいと考えております。

まだ少し時間が残っておりますので、中身について、あるいは「会長談話」の性格について、いろいろご議論を賜りたいと思います。

木さん、どうぞ。

高木委員

これは次期税調への申し送りというか、引継書みたいなものになるのだろうと思いますが、政治どうのこうのというのはあまり関係なく考えたらいいのではないかというご意見もありました。それはそれで承りますけれども、今年10月5日が任期だということで、それ以降いつ頃までに、我々が中期答申ということで意図されたレベルのものを次期税調には仕上げろとおっしゃるのか、そういうことに談話で触れられるのかどうか。あるいは、かなり時間をかけてやるということであったら、いろいろな国民の意見の聞き方があると思うのです。対話集会、タウンミーティングとかいってよくおやりになるわけで、そんなことも含めて、もう少し違った手法・手段で国民の意見を聞く機会も設けるべし、みたいなメッセージを込められるのかどうか。その2点、お伺いします。

石会長

木さんのお考えは、盛り込むべきだという要望みたいなものが入っているわけですね。もっと多様な意見を吸い上げたらいいではないかと。

高木委員

はい。

石会長

仮に中期答申を将来しかるべき時に出すといったときに、次の任期はまた3年だと思いますから、その最後のほうというよりは、1年以内、半年、1年、その辺がメドでありまして、いつまでもズルズルと延ばすことはよくないだろうと思っています。

そこであとは、論点整理の中身をもう少し内容を持たせる方向で議論してもらいたいと思いますが、当然のこと、それ以外の問題もあると思います。ですから、あまり次期の税調の中身を縛ることはいかがかと思いますので、我々がやってきたことを一応整理して、これをベースにして議論を積み上げてくれというようなことは言えると思うのです。

それから対話集会については、過去3年間、行っていなかったと思いますが、実はその前の3年間、つまり6年前あたりは、かなり全国回りまして、10数回でしたか、もっとやったかもしれません。今後、消費税論議が高まり、社会保障制度のあり方の議論が高まってきたときには、再度、対話集会は必要だと私は個人的に考えておりますので、それを入れるかどうか。これを文章にした段階で皆さんのご意見をお聞きしたいと考えております。

他にいかがでしょうか。

佐竹委員

先ほどもお話ししまして、今、会長のお話にもありましたけれども、いずれこの3つの項目というのはこの中に国税と地方税がばらまかれるわけです。ただ、かつて地方団体というのは、税調に対する認識というのはやや離れていたのですが、最近は三位一体の改革等の中から、税調に対する期待も大変大きいわけでございます。地方分権というのは全然別のマターなんですね。

ですから、こういう項目を新たに設けるというところまでは私は言いませんけれども、何らかの形で、これからの一番大きな国と地方との行政分野の再配分、あるいは、先ほど言った道州制もありますので、地方分権と税との関係というのは今後十分に議論していくべきということを、どこかにひとつつけ加えていただければ、地方団体としても税調に対する期待が大変大きいわけですので、よろしくお願い申し上げます。

石会長

わかりました。そういうことも実は頭に入れているつもりです。

他にいかがでしょうか。まだ完全な文章を書いているわけではありませんから、幾つかご要望をいただければ、かつ、税調の総意に基づいて何かまとまることがあれば、ぜひ実現したいと思っています。

どうぞ。

猪瀬委員

基本的なことですけれども、この5年、10年でライフスタイルが大きく変わりましたね。ライフスタイルが大きく変わって、当然のことながら家族の形が変わり、ニート、フリーターが増加し、政府が担う公共と違う、民間の担う公共のようなものが出てくるというふうな大きな変化があった。そういう大きな変化というものについて、基本的には構造改革であり、あるいは税制改革であるものが対応しなければならないけれども、常に既得権益であり、常に変化を認めようとしない勢力というか、そういう考え方、普通の人でもそういうふうになってしまうという部分があるわけです。だから、この5年、10年は、戦後60年の中ですごく大きな変化があった10年であるというか、考え方や人生観が変わる10年であるような、そういうことを強調したほうがよろしいかというふうに思います。

石会長

そのために「実像」把握というのをやったわけですね。具体的にやりましたので、あれはある意味では非常に評判がよかったんですよ、おこがましいのですが。評価されていたと思いますので、今の猪瀬さんのご意見を踏まえつつ、書くか、あるいは私が口頭で説明するかは別として、少しPRしていきたいと思っています。

どうぞ、河野さん。

河野委員

今日は項目だけですが、次回に文章になったものが我々に配られて、それで、俺の言ったことが載っていない、載っているという議論に必ずなると思うんですね。これは、例えば12日にやるとして、そのときに初めてこのテーブルに全部出て、3~4枚だそうですから、読めばすぐ読めるけれども、そこで議論をやって集約するという方法ですか。それも一つのやり方だと思うけれども。

石会長

「会長談話」の性格は何かというのが実は基礎小で出まして、ほかの方からも言われたのですが、考え方は2通りあるんですよね。「会長談話」だから石個人の意見を表に出して、皆さんから承認を得ない形でもいいではないか、そういう個人色の強い話でもいいではないかという考えが一つ。2つ目は、そうは言っても税調の会長というのは、税調にこれまで支えられてきたわけでありますから、税調の意見を集約した形で全体のトーンを整理すべきだと。これが後者です。機関論というか、組織論というか。

私は、やはり機関論なり組織論なりをとるべきだと思っていますし、だからこそ今日、こういう形でお忙しい皆さんに来ていただいているわけであります。来週までに私自身、今のようなご意見を聞いて文章化したものを作成して、皆さんにお諮りしたいと思います。そこで文章が100%OKとなれば、今言った機関論、組織論なりと私の意見が一致するわけでありますが、そうはいっても幾つかのところで意見が分かれる場合もあると思います。そのときはお許しをいただいて、私の個人的な責任で世に問うわけでありますし、責任は私が全部持たなければいけないわけでありますから、そこの割れたところあたりで議論が一致しなければ、それはそれで私個人の責任でやらせてもらいたいと思っていますが、ベースはあくまで税調の皆さんの意見を尊重して結果を出したいと考えています。その割合がどうなるかわかりませんし、出来ばえがどうなるかわかりませんし、皆さんのご意見がどのくらい那辺にあるかわかりませんから、出た段階で判断させていただきたい、このように考えています。そういう考え方でよろしゅうございますか。

河野委員

検討項目を並べるときに選択肢を並べるというやり方で、例えば消費税にしてもいろいろな考え方がありますねということにするのか、もう方向性は明確なのだから、方向性を明確に出しながら、その点で検討事項はこうこうですよとやるのか、書き方が項目によってずいぶん違ってくると思います。先ほど木委員がおっしゃっていたけれども、例えば最高税率がどうとか、そういうきわめて具体的な話になると、もし最高税率をやるなら消費税の税率論をやらなければいけないとか、全体のバランスの問題もあると思うので、これは若干の政治的な配慮をしながら書くしかないと思います。

石会長

そう思います。ここであまり細かい詳しいことを書いてしまって、後々の議論を縛るのはよくないと思いつつも、まだずいぶん固まっていない点もあるのです。例えば消費税で言うならば、長い目で見て将来、2桁にならなければいけないというようなことを言っているし、軽減税率は慎重にやれと言っているし、そういうことを再度書くのか、あるいは消費税率の基本税率をどうするか、軽減税率をどうするかという、その「どうするか」というところで止めておくか。それはほかのすべての項目についても影響しますよ。最高税率のところから、法人の基本税率のところからありますので、結論、イエス・オア・ノーでわかるような書き方は私は難しいと思っています。議論すべき内容と方向性がわかるぐらいの粗さというか、緻密さというか、それが精いっぱい。つまり、1行ぐらいではないかと思っています、各税のイッシューとして。

河野委員

今流行りの言葉でいえば「戦略的な曖昧さ」というのがありますね。非常に含みのある言葉なんだけど、靖国ではみんなそういう扱いをして乗り切ろうとしているところもあるわけです。あまり細かい数字を書いてしまうと、しかも短いペーパーだとおっしゃっているでしょう。それはなかなか難しい。大まかな方向が出ていれば十分だと思いますね。

猪瀬委員

日本国憲法みたいに前文だけ強調すればいいんですよ。

石会長

木さん、どうぞ。

高木委員

今の河野さんのお話、意味がもうひとつのみ込めないのですが。方向性が出ているというふうにご判断されている何点かあるのだろうと思いますが、では、その方向性が出ているということについて社会的なコンセンサスとまで言えるのでしょうか。税調内コンセンサスということでしょうか。その辺について出ているものを出ているように書けといっても、「そんなことではないのではないですか」という議論をする場だけはちゃんと持ってくださらないと。

石会長

あと何回できるかわかりませんけれども、任期中に数回持って、その辺の曖昧に対立する意見を集約する場を設けても結構ですが、ただ、「会長談話」で整理しようということに割り切った以上、それはやはり時間をかけて次期の税調で議論すべき主要なテーマにならざるを得ないだろうと思います。私は、今、税調の中で意見の割れているようなことは、項目をちゃんと出して、どことどこを検討するというような話ではないかと思っています。例えば、累進税率の総合的な見直しの前に最高税率を含めてというようなことを書くか。せいぜいその辺のことを問題の所在として書いておくのが精いっぱいで、それ以上細かい点については立ち入れないし、立ち入るべきではないという形で、とりあえずつくってきますので、そこでまたご議論いただければと考えております。

丹羽委員

賛成です。

石会長

ありがとうございます。ただ、その辺は過度の期待が高まると困るんですけどね。

そういう意味で次は12日(火曜日)を考えています。そこで今言った「会長談話」の原案をつくってまいりまして、そこでご審議をいただいて、シャンシャンとなるか、あるいは、どうか我慢してくださいというふうになるのか、その辺はわかりませんけれども、仮にそこで「会長談話」がまとまれば、それを世に発表したいと考えております。

同時に、今期の税調の会合は最後になりますので、少し時間をとってフリーディスカッションで、税調のあり方論でも結構ですし、あるいは、今後の税制改革の重点を置く点についていろいろなご意見もあろうと思いますから、そういう形で進めてみたいと思っております。

どうぞ。

高木委員

次回12日はどうしても出られませんので、事前に「会長談話」のペーパーなりお知らせいただいたら、意見があればペーパーで出させていただきたいと思います。

石会長

そこまででき上がっているかどうかわかりませんが、基本的な方向につきましては、まとまった段階でご説明にあがらせるといったことができればと思っておりますが…。

事務局から何かありますか。どうぞ、永長さん。

永長総務課長

物理的な問題がございます。それだけ一言、恐縮でございます。

石会長

どうぞ、出口さん。

出口委員

最初に会長から、個人的なあれか機関的なあれかというのがありましたけれども、12日にすると。答申についてはベストの時期を選んで答申をするということになりますと、「会長談話」を発表するベストの日というのはやはりあるわけで、そのことは、12日にするというオプションも含めて、12日にしなければならないということでもないと思います。この点を含めて会長に一任したいと思いますので、ぜひ一番いいタイミングで……。

石会長

それが難しいんですね。基礎小でも、早くやれという人と、いや、12日以降でもいいではないかという話がこれあり、いろいろな社会的な情勢とマスコミの取り上げられ方等に配慮したことだと思いますが、今日、これで「会長談話」の点を2つお認めいただければ、1週間かけて、世に問いたいと思っています。一応私は12日をベストと考えておりますので、それで進ませていただきたい、このように考えています。よろしゅうございますか。

それでは、そういう形で9月12日(火曜日)午後2時から、総会と基礎問題小委員会の合同会議を開催いたしたいと思います。これが最後の会合になるかもしれません。ご都合のつかない方もいらっしゃいますけれども、ぜひご出席賜りたい、このように思います。

そろそろ時間になりましたので、終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。