第51回総会・第60回基礎問題小委員会 合同会議 議事録
平成18年7月14日開催
〇石会長
猛暑の中をお集まりいただきまして、ありがとうございました。外の暑さに負けず、ホットに今日は議論を交わしてください。夏休み前で、できたら今日で最後にしたいと思っていますので、いろいろな意味で締めの言葉を皆さんからいただきたいと思っています。
まず、お手元に「これまでの審議等を踏まえた主な論点」が配られております。これについて議論いたしますが、その前に、前回、意見陳述をしていただきました木委員から補足的な資料が出ております。これにつきまして、せっかくでありますから、木さんから何か補足的な説明はございますか。では、ご説明ください。
〇木委員
前回はどうもありがとうございました。前回もちょっと申し上げましたが、事務局からお出しいただいた、いわゆる負担率に関する資料がございます。その見方について意見を申し上げたわけでございますが、それの延長線上みたいな資料ですけれども、若干の作業をしてみましたので、ご報告し、ご理解を賜りたいと思います。
一つは、表1で、これは所得税・住民税の実効負担率、今の制度ではこうなっているのではないかということです。ただ、いただいた資料では2,500万円くらいまでになっておりましたので、対象者がどれくらいいるかはともかくとしまして、1億円ぐらいをとって表にしてみましたもの、これは現行でございます。
2番目の表は、所得が多い方については、いわゆる給与所得といいますか、それだけではなくて資産所得のウエートが高くなっておられる方が多いであろうという想定のもとにある仮定をいたしまして、その総所得といいますか、そういうものを踏まえて総合課税型で課税をする。そのケースは後ほど申し上げますが、金融所得等含めて実効負担率を若干推計してみますと、こういう表にお示ししたような状況になるということでございます。いろいろな想定が入っておりますから、若干乱暴だというご批判があるかもしれませんが、大きな構造はこうなっているのだろうというふうにご理解をいただけたらと思います。
その次の表3でございます。事務局からいただいた資料は給与所得だけでございましたが、各所得も合算をして総合課税型にしてみたときにどういう実効税率になるのかというものを、これもラフでございますが、試算してみました。下の薄い色のところは現行の実効税率ということで示されているものですが、それを他の所得等を合算し総合課税をしたという想定で計算してみますと、黒く塗ってある部分のようなことになるのではないかと思います。
なお、一番低いところだけポコッと出ておりまして、まだその辺の作業がきちっと細かくできておりませんので、なぜなのだというご指摘があるかもしれませんが、現行の負担率が200万円以下より高くなっている、そういう表になっております。統計を単純に合算した結果そんな数字が出たということでございます。取り急ぎ作成した資料でございますので、詳細な要因はさらに検証しなければならないと思っておりますが、いろいろな意味での控除がこの辺の層は少ないということの影響ではないか、そんなふうに思うわけでございます。
こんな見方をしてみますと、特に高額所得者のところのとらえ方という意味で、例えば資産所得に対する課税の現状、あるいは高額所得者のところの課税率をずっと引き下げてまいりました、そんなものの影響もこういう形で出てきているのではないかというふうに申し上げていいだろうと思っております。
なお、せっかく時間をいただきましたので、若干その他の点についても、後ほど議論の場もあるかもしれませんが、特に税制がなす所得再配分機能の低下がいろいろ指摘されておりましたし、あるいは、今あるこういう議論がどこまで通用するのかどうかわかりませんが、税とビルトイン・スタビライザーといいますか、その辺の関係につきましても、景気との関係で税が果たすべき役割の機能が劣化しているのではないかなと。そんなようなことについてもいろいろご意見があるのではないかと思っております。
あと、論点ペーパーの内容等につきましては、また後ほどその場所に来たときに発言させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
〇石会長
ありがとうございました。一見いたしまして、金融所得の分離課税がどれだけ累進税率にインパクトを与えているかという点がこの計算によってわかると思いますし、総合課税の視点から見て、現行分離課税、それの10%配当と株の譲渡益がそうでございますから、高額所得者ほど株あるいは配当をもらっていますから、当然、こういう結果になると思います。大変貴重な資料をいただいております。
ただ、事務局から見まして何かもしコメントがあれば。
では、佐藤さん。
〇佐藤税制第一課長
資料に3つシートがありまして、1つ目は、先ほどお話がありましたように、今までお出ししておりますものの拡充版ということでございますが、表の2、例えば注3にございます仮定の置き方とか、あるいは、次の表3における計算、バックデータがどういう感じになっているのか、そのあたり、現実との関係でどこまでフィットしたものかどうか、そのあたりは少し私どもも問題意識は持つところでございます。
あと一つだけ、表のつくり以外に、もとよりこの税調でも金融小委員会の中で、金融所得に対する課税のあり方というご議論もいただいてきたわけでございます。その中でもちろん総合課税というご議論もあるわけでございますが、一方、金融所得の特性といいますか、そういうものについても十分考えた上で勤労所得との課税のバランスを考えていく、こういうようなこともあったかと思います。そのあたりを考えながらこの辺をご覧いただければと思います。
〇石会長
ありがとうございました。
どうぞ。
〇木委員
そういう意味で精査していただいて、主税局のほうでこういう表をおつくりになるとどういう表になるのかというのを、ぜひつくって提示していただきたいと思います。よろしくお願いします。
〇石会長
では、よろしくお願いします。
木さんに対してまたいろいろご質問あろうかと思いますが、今日のこの論点整理の中で累進度の問題等々また話題になります。あるいは金融所得課税の取扱い方も問題になりますので、そこで集中的にこの辺のご議論を賜ればと思っております。
それでは、今日の本論にいきたいと思います。すでにお手元に郵送でお配りしていますから、一々読み上げることも説明することもないかと思いますが、前回まで扱いました内容につきまして、若干皆さんのご意見を聞いて加筆・補正しているところもあろうかと思いますので、その辺を中心にいたしまして、ざっとページをめくるような感じで今日の配付資料をごく簡単にご説明いただけますか。
では、永長さんお願いします。
〇永長総務課長
「これまでの審議等を踏まえた主な論点」でございます。ページをめくるという感じで目を通していただければと思います。
1ページ目が、「基本的考え方」ということで、これは前回も申し上げましたように、実像把握の成果を整理したものでございます。
次の2ページが、そういった認識を踏まえまして「わが国税制に課せられた課題」という整理でございます。1つ目が公平・公正、2つ目が安心。実は「国民に安心を与える税制の構築」という言い方が、むしろ減税を意味しているようにとれるのではないかというご指摘もございました。「国民が安心できる持続可能な社会保障制度と財政健全化を実現する」、そういう税制の構築と、かみ砕いてございます。
それから、その次が活力。2つ目のポツ、安定的な歳入構造の構築が活力につながる、そのロジックがわかりにくいというご指摘もございまして、「長期金利の安定等を通じ」、こういったことを加筆しております。
それから4つ目が「簡素でわかりやすい」、5つ目が分権型社会ということで、課税自主権というご指摘もございましたので、3つ目のポツに加筆しております。
以下、各個別税目でございます。2ページ目の下から「個人所得課税」。改革の視点ということで、次のページの2つ目のポツでございますが、「消費税が主役で所得税は脇役」と。ここもかみ砕いてというご指摘がございまして、「消費税で歳入増を図り、所得税は税収中立を原則とする」、こういったことも加筆しております。
その下の所得再分配機能ですが、その前のページ、それからこのページの頭に、もっと所得再分配機能をと、こういうご指摘もあるわけでございますが、片方で必要以上に強調するのは適当ではないのではないか、こういうご指摘もございました。
それから、所得課税についての検討課題というのが下のほうにございます。課税ベース、それから税率構造。次の4ページでございますが、各種控除の見直しということで、例えば3つ目でございますが、「人的控除の見直しに当たっては、それによる個々の負担変動の程度や影響人員について十分配慮する必要」があるのではないか、こういうご指摘が加筆されております。
その下に、配偶者と税、子育てと税とございます。次のページで申しますと、頭から2つ目、「子育て支援を税制面で対応することについては、施策とその効果等を見極めた上で、その実施を検討すべき」、こういうご指摘を追加しております。
その次が高齢者に関する控除、給与所得に関する控除。ここも4つ目のポツでございますが、「給与所得控除の見直しに当たっては、現在それが果たしている機能を十分に踏まえる必要」がある、こういうご指摘がございました。
その下に、所得分類、個人住民税の課題がございます。
次のページでございますが、金融所得課税の検討課題というところ、4つポツがございますが、追加いたしましたのは4つ目でございます。「税制全体の所得再分配機能を考えるに当たっては、現行の配当・株式譲渡益に対する優遇税率(10%)の取扱いも含め、勤労性所得に対する税率と金融所得に対する税率とのバランスに留意すべきではないか」。先ほどの木委員からのご指摘にも関連するところでございます。
次に相続税・贈与税でございますが、下の2つ、ポツを追加しております。中小企業の事業承継という問題についてのご指摘を2つ追加しております。
その次のページ、7ページに固定資産税、その下から、これは全税に絡む話でございますが、納税環境整備、その中で納番の話でございます。一番下のポツ、「受益と税・社会保険料をあわせた公的負担について考えることが必要である」、こういうご指摘を追加しております。
次の8ページでございます。納税環境整備、「その他」ということで、1つ目のポツ、所得捕捉向上、こういう観点を強調すべきであるというご指摘があり、追加しております。
8ページ、下半分は法人課税でございます。改革の視点ということで幾つか事項が並んでおります。
次の9ページでございますが、税率、租特、減価償却、多様な事業形態への対応と、各項目についてのご指摘がございます。
次の10ページ、公益法人制度改革への対応、地方法人課税ときて、その下、国際課税。このあたりはすべて前回どおりでございますが、改革の視点の中には、「企業活動によりストレートかつダイナミックに影響する状況を踏まえ」、こういったことを書いてございます。
次の11ページ、ここから消費税でございます。改革の視点、これは変更しておりませんが、検討課題について幾つか追加しております。下からのほうがいいでしょうか、4つ目のポツ、「仮に軽減税率」というところですが、後半で「高額所得者は消費が大きいため軽減税率による恩恵が低所得者よりも大きくなる」、こういうご指摘を追加しております。
さらにその下、軽減税率を採用する場合には、インボイス方式の導入が不可欠である。次の下から2つ目のポツ、これも追加しておりますが、軽減税率を採用するかどうかは、消費税の使途が低所得者層に対する支出かどうかということとも関係があるのではないか、こういうご指摘がございました。
次のページ、12ページにインボイスの関係がございます。2つ目、3つ目、追加しておりますが、インボイス方式の導入により、事業者の事務負担が軽減される面があるのではないか。同様に、簡易課税制度等の必要性も小さくなるのではないか、こういうご指摘を追加しております。
使途に関しましては、一番下のポツ、「社会保障制度を維持するためには財源が足りないので、国民に対して、消費税率を上げるか、制度を見直すかという選択を迫る議論をするためにも、制度と税負担を結び付けて分かりやすく示す必要」があるのではないかというご指摘。
さらにその次のページ、2つ目のポツ、方向は若干逆になるわけですが、「目的税化した場合、税収が余れば無駄使いにつながり、逆に税収が足りなければ増やせということになりかねないのではないか」、こういうご指摘もございました。
その13ページ、2つ目のマルが地方消費税。
その次が、その他間接税ということで、酒・たばこ税、ここも下2つのポツを追加しております。「たばこについては、健康増進や生活習慣病対策の観点からの議論も行うべきではないか」というご意見。次のポツでは若干ベクトルが逆になりますが、別々に考えるべきではないか、こういうご指摘もございました。
13ページ下がエネルギー関係諸税、この辺は特段変更はございません。
最終ページ、特定財源の続きとして、地球温暖化問題への対応については、このようになっております。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
14ページございますので、中ほどで区切って前半・後半と分けてご意見を賜りたいと思っています。法人課税の前までワンラウンドにいたしましょうか。ちょうど8ページの真ん中あたりまで最初のパートといたしまして、ご意見を賜りたいと思います。ベクトルが逆になっているというご説明もございましたように、右に行くか左に行くかで別なことが両論併記的に書いてある箇所もございます。我々としては、いずれ答申を書く段階においてはその方向を見極めなければいけないということもありますので、今日は、この中の文章の書き方ではなくて中身で、こういう点を強調したい、ここはちょっと問題だとか、ご意見をぜひいただいて、この流れに沿って答申はおそらく文章化されていくわけでありますから、それにつきましてご自分の意見を言い、答申作成の参考にさせていただきたい、このように考えております。途中退室でやむを得ずという方は後段についても、どうぞ。前半の部分でもあとのほうに触れていただいて構いませんから、遠慮なくその辺はご発言ください。
それでは最初、法人課税の前までひと括りにいたしまして、幾つか問題があろうかと思いますので、率直なご意見をいただきたいと思います。どなたからでも結構ですから、ご発言ください。
どうぞ、宮島さん。
〇宮島委員
1つは、2ページでございますけれども、これはあとの個別のところでは頻繁に出てくるのですが、少しまとめてここに書き込んでいただきたいのは、一言でいえば租税回避ということでございます。ここには「国民に信頼される簡素でわかりやすい税制の構築」というのがございまして、そこの中に幾つか書いてありますけれども、最近少し見ておりますと、租税回避をめぐって訴訟でありますとか、それが頻発している。国際課税の領域もそうですし、あらゆる領域でそういう問題が起こっていて、そのことが、真面目な納税者にとっては税制の信頼ということに対していろいろな影響を及ぼしかねないということがありますので、国民に信頼される簡素でわかりやすい、「わかりやすい」というのは明確という意味がおそらくあると思いますけれども、そういう税制を構築して、できるだけ租税回避が生ずることを封じることができるような税制が必要であろうということを、できれば初めのところに少し盛り込んでいただけないかというのが一つ要望でございます。
それとその前半で言いますと、比較的ここで議論をしてきたわりには非常にあっさりした書き方になっているのが、5ページの所得分類のところでありまして、ポツが1つしかないんですね。これはもう少し何か書き込んだらいいのではないでしょうか。例えば不動産所得の議論もございましたし、ポツ1つというのは、何か議論があまりにも結果的には寂しかったものではないかという気がしております。とりあえず前半ではその2つの件だけ。
〇石会長
個別の所得のカテゴリーの中でどれをどう直したいということが、今の時点ではっきり言えるかどうかという配慮がおそらく皆さんの中にもあるし、事務局にもあるのだと思いますが、その辺でポツを2つぐらい、あるいは3つぐらいにできるかどうかでしょうね。考えてみましょう。
それから前段のほうは、納税環境整備のところにはちょっと書いてあるけれども、総論の中で、租税回避あるいは脱税みたいなことについて、しかと踏まえておけというご指示ですね。それは安心という視点からも重要でしょうね。ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。菊池さん、どうぞ。
〇菊池委員
同じ2ページですけれども、「分権型社会にふさわしい税制の構築」とあります。分権型社会はまだできていないという認識なので、だから税制によって分権型社会ができていくかどうか、ということではないかと思うのです。今、小泉さんですから、三位一体というのが残っていて、分権型社会に向かって日本は進んでいくというのは何となく前提になっていますけれども、次の人は何を言うかわからないというのが一つと、要するに税制によって分権型社会を築いていくべきであるというふうな税調としての考えなのか。そうではなくて、向こうのほうで分権型にするよと言うから、それに合わせて税制も考えましょうかという考えなのか、はっきりしていない気がします。私もどっちがいいのかわからないのですけれども、何となくいいかげんな表現ではいけないのではないかという気がします。
〇石会長
流れとしては地方分権、三位一体があって、まだ志半ばですけれども、方向としては言っているのだから、その段階で税制をどう対応させるかという視点を書けというわけで、税制を直したからといってそんなに地方分権が加速度的になるわけではないでしょうね。今の流れの中で地方税をどうするべきかというところを、もうちょっとはっきり書いたほうがいいのではないか。でも、10%になったし、住民税はフラット化。あるいは、課税自主権の点から様々な法定外目的税等もできたし、などという芽は出ているわけです。そういう点を強調するということでしょうかね。
〇石会長
どうぞ。
〇井戸委員
今の点に関連して言いますと、我々自身は当面は国と地方の税源配分が1対1を目指すべきだと。いわば地方分権を推進する税制上の目標としては、国の歳出と地方の歳出を比べた場合に4対6というのが最終支出ベースでの比較ですので。4対6は、これはいろいろ議論がありますが、少なくとも現状の6対4を5対5にしていくべきだというのを一つの目標として、いろいろな形で議論しているわけです。そういう意味から、税調が5対5というようなことはとても今の段階で言えないから、「地方税の充実確保が必要」という文意の中には、そういうような意見もあるぞというようなことを踏まえて書いていただいているのではないかなと。こういうふうには思うのです。
ただ、菊池委員がおっしゃったように、まだ志半ばの段階で分権型社会にふさわしいと決めつけてしまっていいのかというのは、やはり表現の工夫が要るかもしれません。ただ我々としては、昨日も知事会を終えてきたばかりでありますが、少なくとも1対1は目指そうではないかというふうに衆議一決しておりますので、ぜひご協力をお願い申し上げたいと存じます。
〇石会長
猪瀬さん、どうぞ。
〇猪瀬委員
少し関連しての話ですけれども、地方分権ということで、自己責任というか自主性というか、そういうことで今の流れの中であえてつけ加えるのは、6ページの上から3行目の個人住民税の現年課税です。これは前は「可能性について検討すべき」と。可能性がとれて「検討すべき」になったので一歩前進したのですけれども、今、それこそ予算が4対6から、6対4ではなくても5対5だと言っているときに、1年半遅れてお金を徴収しているということがあるのはどう考えてもおかしいわけで、そういう場合に急がなければいけない。つまり、現年課税について「可能性を検討すべき」の可能性がとれて「検討すべき」で一歩前進しているのですけれども、しかし、あまり現実感がない。
課税の合理化とか効率化というのは国と地方両方でやるのですが、そういう部分で行政のスリム化にもつながることだし、地方分権にもつながるということですが、私、ちょっと考えていたのですけれども、ある年に現年課税をやったら2年分取られます。1年分、個人住民税は11兆円ぐらいだと思いますけれども、11兆円減税したらどうですか。そうすると、これを誰が払うかという問題になる。それは交付税、仕送りはするわけですが、そういう配分の中で地方債11兆円増やせばいいだけの話ですが、各市町村単位の自己責任でその分を払ってもらうことにして、行政改革ということでいろいろやってもらって。11兆円減税、これ、いけませんかね。このくらい大きい話をしたほうがこういうものは進みますよ。
〇石会長
どうぞ、井戸さん。
〇井戸委員
今の猪瀬さんのは、観念をどうするかというふうに考えれば解決する話で、住民税は前年所得課税だと称していますけれども、現在の所得から払っているのです。ポケットから。ですから課税標準を去年の所得をベースに計算しているけれども、もしそれが現年に変われば、課税標準が現年の課税標準に置きかわるというだけですので、猪瀬さんがおっしゃっておられるようなことになるんです。
〇石会長
結果的にね。
〇井戸委員
ええ、結果的に。
〇猪瀬委員
でも、ある年、2年分になってしまいますね。
〇井戸委員
いいえ、2年分にならないのです。
〇石会長
形式的に過去のを借りているだけだから、切りかえるだけだから、頭の切りかえで済むよというのはきわめて柔軟な発想ですが、それが受け入れられるかどうか。
〇猪瀬委員
表現としては面白くないということですね。僕みたいに言ったほうが面白いわけです、それは。
〇石会長
今の現年課税のケースはそれほど嫌だ嫌だと言っているわけではなくて、いろいろ問題があると。したがって9月に入りましたら、1回、現年課税をやるにあたっての難しいところを事務局から整理してもらいたいと思います。それで、すぐできるか、ちょっと時間がかかるのか、これは我々で検討すべきだと思います。
今の井戸さんと猪瀬さんの発現について何かありますか。住民税の現年課税を減税してしまうというのか、解釈を変えればいいではないかということについて、急にはお答えしにくいとは思いますけれども、何かあれば。
〇林市町村税課長
今のお話の中で、3兆円の税源移譲をいただくと12兆円レベルになりまして、2年分、ある年取らければならないのか、それとも井戸委員が言われたように観念の切りかえというようなことでできるのか。その辺はまたいろいろな議論があろうかと思いますので難しいと思いますけれども、それ以外に技術的な面とか、あるいは市町村行政の中における所得捕捉の関係、それとリンクした社会保障の関係とか、我々も勉強していく過程の中でいろいろ問題が出てきておりまして、その辺も含めて、また機会をいただいてご説明させていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。
〇石会長
井戸さんのスイッチ論についてはまだ勉強しようということですね。でも、考え方によると柔軟だとは思いますけれども、それを減税と言うかどうかですね。
〇井戸委員
会長、いいですか。今の点は実を言いますと、私が住民税を担当していた頃にはかなり常識的な議論で、つまり課税標準を何に求めるかという話なのです。技術的に現年の課税標準がなかなか、市町村が賦課課税方式ですので、直ちに課税標準になるべき資料が入る仕組みになっていなかったから、やむなく三税協力という形で所得税の申告と合わせて課税標準を市町村が取得して、それで課税事務をやったという仕掛けを編み出したわけです。ですから、課税標準というのを計算するべき資料がどのような形で、あまり国民的な負担もなく各市町村に集まるかということが、できるかできないかというポイントなのです。負担がどうだとか、財政収入がどうだとか、そんな議論とは全然違う話だと思います。
〇石会長
それしかなかったということですね。井戸さんが言うと説得力ありますね。
では、田近さん、どうぞ。
〇田近委員
地方分権と税のところです。前回、三田の会議所で指摘したこととかぶるのですけれども、この答申の重要な役割は財政健全化をこれからやっていこうと。そうすることによって内外の市場の信認が確保できるというのが、私は今回の答申の非常に重要なベースになると思います。その上で、もうすでに議論が出てきている地方分権絡みで、どういうふうな税との関係を議論するかということで、2、3カ所出ている、2ページの「分権型社会にふさわしい税制の構築」というところです。私はこう思うのですけれども、大きな日本の財政再建の中で税がどういう役割を果たすかというときに、国と地方の税の分捕り合戦といいますか、そういうニュアンスはあまり出すべきではない。それはここでもさんざん議論したわけで、税調としても、どうやって国全体の大きなゴールに貢献していくのだろう、という書きぶりなのだろうと思います。
そういう意味で2ページの「分権型社会にふさわしい税制の構築」で、「地方の自主性、自立性を高め、活力と個性のある地域社会を実現していくためには、地方税の充実確保」と。充実はわかりますけれども、どうも、この「確保」というのが気になるのですが、分捕りという範囲でなくて議論する以上は、やはりここは分権ということを尊重して充実していくべきなのだろうというふうに思います。あとは、まだ8ページまでですから、消費税、地方消費税の扱い等がこの答申でも重要な課題になってくるだろうと。それはまたあとで触れたいと思います。
〇石会長
具体的には「充実」だけで十分だということですか。
〇田近委員
そういうことです。
〇石会長
では、林さん。
〇林委員
1ページ目の5つ目のマルで、「政府が果たすべきセーフティーネット機能の役割の増大」というのがあります。ある面そうなのですが、果たして今のセーフティーネットが本当の意味でのセーフティーネットかどうかということも、一度議論しなければいけない部分がある。というのは、いざというときの最後の砦としてのセーフティーネットなのか、それとも幅広くセーフティーネットを考えるのか。きちんとセーフティーネットのあるべき姿も一方で考えておかないと、ただセーフティーネットの機能が増大するだろうということでは……。
というのは、次のところに「『政府が担う公共』とは異なる『民間が担う公共』」というのがあって、そこではどちらかというと、セーフティーネットだけに限りませんけれども、民でやれることは民でやりましょうという話をうたっているわけです。ですから、例えばナショナル・ミニマムのあり方とかも含めてセーフティーネットのあり方が今問われているのだろうという気がします。これ、非常に難しいですけれども、増大するということだけではなくて、そのあたり、セーフティーネットのあるべき姿についても、やはり検討課題だということは書き込んだほうがいいのではないかという気がちょっといたします。
それから宮島先生がおっしゃったところで、真面目な納税者のための納税環境を整備するというのは非常に重要なのですが、その中には不公平感といいますか、そういうものが一方であって、これは租税回避をできるだけ小さくするということともつながりますけれども、今後、税が上がっていくときに、税の執行体制といいますか、適正な徴収ということを基本的なところできちっと押さえておく必要があるのではないかという気がいたします。それは要するに徴税の側の問題と同時に納税者の側の問題というのがあって、先ほどの現年課税に関しても、現年課税すれば、例えば源泉徴収義務者が年末調整をしなければならないとか、地方税も同じように年末調整しなければいけない、場合によっては確定申告しなければいけない。そういうことが一方でありますので、税のあり方という執行を考えるときには、納税者側の問題も含めて税務行政というように考えていく必要があるということを、どこかでうたっていただいたらいいのかなという気がいたします。
〇石会長
つまり納税者側から言えば、納税協力コストが少し高まるよということですね。
〇林委員
はい。ですから、どちらが受け持つかという話なので。
〇石会長
そういうことですね。ただ、セーフティーネットは大いに必要だけれども、さらっと書くぐらいが精いっぱいではないかと思っています。あるべき姿まであまり深みにはまると、我々としてはやや範囲が逸脱するかもしれませんが、問題意識は大いに持つべきだと思います。
では、水野さん、どうぞ。
〇水野委員
4ページから5ページにかけて、各種の控除ですが、配偶者、それから子育ての問題があります。これは大体は給与所得者に関連してくる問題でありますが、給与所得といいますか、いわゆる勤労世代の就労形態がだんだん変わりつつある。だんだん終身雇用制というものが薄れてきて、それとともに退職金の問題なども会社ごとに変わってくるという点があるわけです。今年の18年度の税制改正で業績連動型給与というようなものが入って、いわば給与所得者も、一つの形というよりいろいろなものが出てきているということです。
ここではニート、フリーター、これらも給与所得に入れていいかどうかまた別ですけれども、SOHOと言われたようなグループがあったり、この給与所得について控除の面と収入の面、両方から取り上げて検討していただいたほうがいいかなと思っております。簡単に言いますと、給与所得の雇用形態が多様化しているということです。
〇石会長
では、尾崎さん。
〇尾崎委員
5ページの上から5行目、「高齢者に関する控除」というのがありまして、最初のポツで「世代間の公平を図る観点から、担税力のある高齢者には、現役世代と同様、能力に応じた負担を求めていく必要」と書いてあります。担税力のある高齢者というのは、今、何か特別に優遇されているのですか。年金を除いてですよ。年金はその次のポツに書いてあるものですから。何か優遇されていますか。
〇石会長
年金だけですかね。
〇尾崎委員
私、高齢者ですけれども、何だかすごい得をしているように思われているけれども、実は何も得をしていない。きちんと払うべきものは払っているんですね。これ、誤解を生んでしまうと思うのです。
ちょっと補わせていただきたいのですが、非常に少子化の話というのは重視しているし、これは重要だと思います。私も賛成なのですが、少子化の問題の前に労働力人口の減少という話があるわけです。これのほうが経済の活性化のためには怖いわけです。労働力人口の減少をどうやって補うかというときに、高齢者、女性、この2つが中心なんですね。これを全体として読んでいくと、その点に目配りがないという印象を受けますから、ちょっと触れておかれたほうがいいのではないかと思います。
n
〇石会長
はい。
関連ですか。
〇田近委員
「世代間の公平を図る観点から、担税力のある高齢者には」云々ですが、これ、どこまで負担とか公平を考えるかですけれども、現に高齢者医療を考えても給付の半分は公費です。つい先々週くらいに通った医療保険の改革でも、さらにそれを制度化していこうと。介護保険もそうですね。そういう意味で私がここを読んだのは、もちろん税調としては具体的には、公的年金等控除を少し見直してきたけれども、さらに一層見直すべきだと。私自身もこのことを言っていましたが、ただ前段としては、今の若い人とのバランスで考えて、高齢者というのは社会保障の面で給付を受けているのだから、担税力のある人には負担を求めていくと。そういう意味で一般的に解釈すれば、そういうのは当たっているのかなと思います。
むしろ全体的に指摘が足りないと思うのは、現役世代の低所得者で負担が重いのは、高齢者に対するサービス等があるから社会保険料が高いわけです。それで負担が大きくなっているという面もあるわけです。これは読み方次第ですけれども、尾崎さんは、税という世界だけで読めばそうかもしれません。つまり、税という世界だけで高齢者に何か特別なことを年金以外にしているのか、というのはそうかもしれないけれども、全体から見れば意味は通るのではないかなと思います。
〇石会長
文章を書くときにその辺もちょっと配慮したような、もっとわかりやすい文章にしないといけないかもしれませんね。たしかに後期高齢者の医療制度は独立するし、高齢者の自己負担も高くなってきました。いろいろあるから、私も高齢者の一人だけど、田近さんみたいにまだ若い人と比べると、何やらまた別な視点が出てくるかもしれない。また議論しましょう。
関連ですか。
〇猪瀬委員
たしかに表面は尾崎さんが言われたようによくないけれども、高齢者の比率がこれから上がっていくことは事実なので、やはりどこかで強調しておかないと、団塊の世代がどんどん定年になって高齢者が一気に増えます。何歳から高齢者かよくわからないけれども。
ただ、日銀総裁が3億円ぐらい持っているのは全然おかしいと思わなかったけれども、年金が800万円か700万円、あれは実はびっくりしました。あんなにもらうのかなというのはちょっと驚いたんですけれども、彼の場合、特別多いなと思った。あれは特別で、普通の多い人がいる場合はどんどん層が厚くなってくるわけですから、やはりそこは、尾崎さんがおっしゃるのはわかるけれども、表現を変えた形で、比率が上がっていくということでかなり考えなければいけないと思います。
〇石会長
記述を、税負担も含め社会保障給付も含め、少し工夫すべきだということですね。
では、出口さん。
〇出口委員
まず、財政に対する危機感が少しトーンダウンしているのではないかなという印象を一つ持っています。そうでないのかもわからないですけれども、ちょっと印象だけなので、それはご検討いただけたらと思います。
2ページの一番下のところで、これは昨年の反省をすごく踏まえて、今回、非常に重要なメッセージだと思いますが、「中低所得者を含めた大多数の納税者の負担は極めて低い水準」ということです。これはたしかにそうなのですが、極めて高いとか低いとか、それから「中低所得者を含めた」というのは、当然、高所得者が入っていると思いますけれども、ここのところは、先ほど尾崎さんのご意見もありましたが、納税者一人一人を何によって比べるかによって全部主観的に違ってきて、非常に反発を受けやすいところではないかと思います。
その点でここのところは、事務局が非常に明快な数字を提示されたと思うのですが、ああいう事実だけきちっと出して、高いとか低いとかは税調が言うのではなくて、外部の方に言っていただくというか、そういうことも必要なのではないだろうかと。極めて低いと言うと、いや高いんだという声がすぐ挙がってくるのではないかという心配があります。
2つ目は、同じページの一番の上のほうの最初のマルです。マルポツでないところですけれども、これまでの議論の中では信託等という言葉も出てきております。先ほどの租税回避との関連もあるのですが、私法上いろいろな制度改革が行われていて、それに対する対応が税調側でも求められていると思います。これに対してはしっかりと納税義務者とか課税ベースの範囲について、かなり専門的な形での対応を行っていくというメッセージをきっちり出していったほうがいいのではないかと思います。
それから最後になりますけれども、ちょっと林委員の意見とは異なるのですが、これだけの財政赤字を何とか解消していくためには、真面目な納税者に対するメッセージ、納税者とともにこれを解決していくのだと。租税回避に対してはやはり強いメッセージを出さないといけないですが、そこは逆に言うとみんな税当局者もわかっているわけで、真面目な納税者に対して我々も一緒に期待しているんだということも、今回、出す意味は私は非常にあると思います。
〇石会長
ありがとうございました。大いに参考にさせていただきます。
では、上野さん、お待たせしました。
〇上野委員
ちょっと説明しにくいような感じを持っているのですけれども、今の出口さんの最初のご発言の部分にも関係があると思いますが、全体を読んでみて、この間の骨太や何かで出ていた「小さな政府」と。これから消費税を中心として税収増を図っていかなければならないと一般的に考えられていると思いますけれども、そういうことを考えていく場合に、やはり骨太の方針で書かれている「小さな政府」というものが前提で考えられるべきだと。今後の税収増、というと怒られるかもしれませんが、これからの税制を考えていく際の基本的なスタンスとして、骨太の考え方や何かに合わせた考え方を踏まえながら行くんだという趣旨は要るのではないかという気がします。骨太は骨太、こちらは別だという考え方もあるいはあるのかもしれないと思うのですが、政府全体の基本的な経済財政施策ということになれば、平仄は合うべきではないかというふうに思います。
それからそのことは、将来消費税を上げるという場合であっても、必要な税収が何に充てられるんだと。税収が先にありきではなくて、どういう目的のためにこれが使われるんだということがまず先にあって、しかるがゆえにこれだけの消費税の税率の増税が必要なんだという話になるようにすべきではないか。これは、消費税の税率を変えるということになると、この間、単年度で変えていくというわけにはなかなかいかないから、相当中長期にものを考えて決めていく必要があるだろうという議論もありました。そうなると、その時々の例えば骨太の考え方で言えば、第II期の場合には、消費税の増税はこういうのに充てるんだという考え方が出てくるべきだと思うし、第III期では、歳入歳出の均衡化は図られたのだから、今度は政府の持っている赤字の削減に充てられるというようなことがきっちりあって、必要な消費税なり何なりのあるべき姿を考えていくと。
そうなると、例の特別の目的税なのか、それとも一般財源なのかという議論にも関係があると私は思いますけれども、税法学とでもいいますか、そういうディフィニションの議論としてこれを目的税にするかどうかという議論は、やや私はわからないところがあるのですが、何に使われるかということだけは明確にしておくべきだということを、ここに書いておく必要があるのではないかという気がします。
〇石会長
今思うに、小さな政府論というのは本格的にやった記憶があまりないんですよね。したがって骨太に依存すればいいだろうという発想で来たかもしれません。税調として、この辺の前のほうに書くべきことでしょうね。これは文章のあたりで少し並べて書きたいと思います。
〇上野委員
追加しますと、あの骨太の結論が出るにあたっては歳出削減を徹底的にやったわけです。だからそのことを踏まえて、そういう作業の上の結論だということは非常に大事なのではないかという気がします。
〇石会長
おっしゃるとおりです。今まで、歳出・歳入一体改革の骨太を待ってきて議論しているわけですから、その延長上に物事を置かなければいけない。
岩さん、今の関連ですか。
〇岩委員
ちょっと関連で。私も全く賛成で、骨太の7原則の中の1つに、安定的財源は何に使うんだということがあるでしょう。あれはつまり、官の肥大化ではなくて、あくまでも国民に還元するんだというふうな話ですね。国民に還元ということは、社会保障であれば社会保障給付に限るということ。もう一つは国債の償還です。この2つでしょう。それはやはり明確にしておかないとまずいのではないかなというふうに思います。
〇石会長
では、田中さん、お待たせしました。
〇田中委員
3ページの上から2ポツ目に「格差問題への関心」とございます。たしかにこの問題を提起される人が、今、日本の中でかなりあることは承知の上で申し上げるのですが、私は、現代の貧困の問題は社会科学的に見てあらゆるアプローチが必要だというふうに思いますが、ここで「格差問題への関心」というのはいかがかなと思います。
一つは、まずグローバルなことですが、日本で税金のことを議論するのは、国際社会とは何の関係もなしに日本列島だけの話だということでいいのかどうか。もし格差と言うならば、日本と周辺アジア諸国の間に所得格差があるとか、あるいは、現在テロが頻発するところにおける問題をどう考えるのか。歳出・歳入一体改革の中でODAもこれまで削ってきているわけです。そういうグローバルにある格差問題というものは知らない、日本列島の中で少し金持ちが出始めたな、面白くないという類いの話だとすると、これはやはり問題ではないか。
それから2番目に、マイナスの所得税という概念でも入れれば税制と貧困の問題は関連してきますけれども、我々が取り組むべき課題として現代の貧困があるということだったら、その話は、普通の考え方でいえば税のあり方とは関連を持たないと私は思います。今までの我々の議論の仕方からすれば。だとすれば、ここで格差問題といって国内消費用の議論をするのかなというのが私の感じで、少なくとも英文にして出すという趣旨があれば、何言ってるんだろうなあという反応を受けると思います。少なくともWTOドーハ・ラウンドで貧困の問題に対応しよう、農業を通じて途上国にキャパシティ・ビルディングを何とか考えようという議論の中で、日本ではなかなかこの議論が根づかないのです。少なくとも世界の貧困の問題についてはなかなか議論が入らない中で、日本の中で格差問題をやっている、その絵というのは、政府の調査会で公認するのかなという気がいたします。
〇石会長
具体的に所得税の再分配というのが引っかかって議論して、ここにかなり書いているんですね。そうすると田中さんの前段で、格差社会を口に出すなということになると、所得税の累進の程度、機能等々についてまで、それは書かなくていいというご意見になりますか。
〇田中委員
それはもう教科書に書いてある話ですから、教科書を変えようとは思いません。所得税の持つ所得再分配機能について言及することは何もおかしい話ではない。
〇井戸委員
会長、すみません、今の点で。
〇石会長
どうぞ。
〇井戸委員
格差問題をどうとらえるかというのはいろいろな考え方がありますけれども、その格差問題が発生しているか、発生していないかということももちろんですが、例えば社会保障の財源を何に求めるかというときに、税にもっと負担を求めるということになったら、当然、税の問題になってくるんですね。したがって、所得再分配とか社会保障とかを考えたときに税とは切り離せないのではないか。だから、国内問題としても当然視点を持っておかないといけないのではないだろうかと思います。
ただ、コップの中の嵐みたいなことばかり言っていていいのかという田中さんのご指摘は、もっと別の次元で考えるべきなのではないか、こんな気がいたします。
〇石会長
それぞれ見解があるところですね。
では、川北さん、お待たせしました。
〇川北委員
たまたま今のと関連のある話でして、まず所得再分配の問題ですが、格差問題に関して言えば、これはやはり取り上げざるを得ないのではないかという気がします。というのは、この数年間ずっと議論があって、特に今年になってから議論が相当高まっていますけれども、例えば財務省の財務総合政策研究所が先月出した研究発表があります。あれの一番最初にあった、千葉大の大石さんという方の論文をたまたま読んだのですけれども、その中を見れば、1987年~2002年にかけてジニ係数が相当高まっていると。生の数字では相当高まっているのですが、一方、税とか歳出の修正をかけて、なおかつ高齢化したり世帯規模が縮小している、そういう修正をかけた上でもなおかつ相当高まっていると。2002年レベルでたしか0.35くらいにはいったと思いますけれども、これは国際的に見ても相当高い数字であるということで、もともと日本は所得が平等であるという社会だったのが、この十数年、相当それがそうでなくなってきた。しかも、それが国際的に見てもかなり不平等であるということが示されたわけです。
こういう現状で、所得再分配機能をもう一度見直したらどうかという論議が出てきたのではないかと思います。ですから、これは相当強調すべきであると私は思います。一方、強調すべきでないという意見もあったと思いますけれども、仮に両論併記になるとしても、強調するべきだと私は思っています。
それともう一つ、これに関連して、所得税と住民税を合わせた最高税率、今は50%で、これもこの十数年のいろいろな税制改革の結果、こういう結果になって、これが大体コンセンサスになっていると。何回か前にも私はこれを変えるのは難しいだろうと言ったと思いますけれども、それは客観的に見て難しいであろうということであって、これは上げるべきではないと思っているわけではない。むしろ上げるべきだと私は思っています。
〇石会長
木さん、どうぞ。
〇木委員
いろいろなご議論がありますが、二、三点、申し上げたいと思います。
一つは、総論のところにも所得税のところにも「簡素で」という言葉が何カ所か使ってあります。簡素というのは別に悪い概念ではもちろんないのだろうと思いますが、簡素という論理よりもっと大切な、例えば公平だとか。公平とか何とかを捨象されるご意思ではないだろうと思いますが、簡素という名のもとに公平という概念をどこかへやってしまわないように、どうぞよろしくお願い申し上げたいなと。
それから、個人所得税の現状認識の「極めて低い」という表現、これは先ほどどなたかからもございましたが、高い低いと重い軽い、いろいろな概念がこういう表現にはかかわるわけですね。そういう意味ではその辺も十分吟味した表現を。それで、客観的に見てこういう表現が妥当だというなら、それはそういう表現を使ったらいいだろうと思いますが、「極めて低い」だけで言い放すのはどうなんでしょうかねと。
それから、ここに財源調達機能という言葉が出ております。これは私、前回も申し上げたと思いますが、雇用形態の多様化等の中で、所得階層別に見たかなりの移動があって、いわゆる低所得層と言われる層があれだけ増えていることと財源調達機能というのは無関係ではないわけです。やはりその辺の議論も含めてどうなんだということを、吟味しておかなければいけないのではないかと思います。
それから高齢者の問題で、尾崎さん、あるいはそれに対するご反論のご意見もございましたが、いずれにしてもこの辺の議論が社会的にちょっと混濁しているのではないかなと。5月、6月、住民税を払うときに、お年寄りたちが、住民税がこういうふうに上がって、いざ払う段になって大騒ぎになったと。全国の市役所、区役所、役場で。その間、新聞の投書欄などを見ていたら、何で俺らはこんな目に遇うんだというその種の投書がいっぱい出ていた。
だから、医療保険、介護の問題の負担増、年金に関するいろいろな控除の議論、それから、今もございましたようにジニ係数をめぐる議論やら何やらを含めまして、政府は、高齢者世帯の数が増えたらジニ係数が上がるのは当たり前だみたいな論のようですが、本当にそういうとらえ方でいいのか。それを我々は、例えばこの場で言えば税の世界は、高齢者が非常に負担感が高まっている。少なくともご本人たちはそう思っている人が多い。そういう現状の中で、社会的に言ってこの議論は、整理するというとあれでございますが、何が本当なのかということをきちんとお互いに議論して、我々こんな目にばかり遇っているという何かひがみみたいな話ばかり増幅するような話でもいかんと思いますから、そういう議論をした上で議論を整理していかないといけないのではないかと思います。
それから、何度も申し上げているのでまたかという話かもしれませんが、先ほどちょっとご意見がございましたように、所得税、住民税5割、このままでいいと私は思っていません。ましてや消費税の議論を始めるなら、これをこのままにしておいて消費税を上げろなんていう議論には、我々は参加できない。そんなことを申し上げておきます。
〇石会長
何か関連で。どうぞ。
〇猪瀬委員
今の議論の流れですが、木さんがおっしゃりたいことはわかるけれども、「格差問題への関心の高まりを踏まえ」というのは、これはこのまま全部削除したほうがいいと思います。なぜならば、この論理としては「所得税は税収中立を原則とし、再分配機能の重要性に留意すべきである」ということで十分なわけです。格差問題への関心というのは単なる朝日新聞のキャンペーンなのです。実態は違うわけです。担税力のある高齢者もいれば、そうではない高齢者もいるわけであって、それは別の話なのです。関心の高まりというのは気分で書いているわけであって、いろいろな意見があるけれども、おそらく事実ではないと思います。関心が高まっているというのはつくられた関心の高まりであり、あるいはホリエモンとか村上ファンドとか、そういう現象面で逮捕されたりしていろいろなことがあって、関心の高まりということはありますけれども、論理としては、こういう気分的な表現は必要ないのではないかということです。
〇石会長
わかりました。文章を書くときに再度チェックしましょう。
では、大宅さん。
〇大宅会長代理
私も、格差問題が与えられた事実のように言うのはいかがなものかという発言をこの間もさせていただきましたが、ジニ係数云々で学者の方たちはいろいろ言っていらっしゃるけれども、共通の認識というのがあるように私は思えないんですね。だから、まずそれをちゃんとやった上でないと、私も格差問題というのを何か嬉しそうに入れるのはすごく嫌です。なぜ嫌かというと、やっと出てきた活力ですよね。それがまたぞろ、金持ちはあってはならぬと。金持ちと、普通の人なり貧乏な人なりの差が開くのが嫌だといって金持ちをたたく。みんなで仲良く貧乏するという図式がそんなに幸せなのかというのが、私はどうしてもわからないので、それはやめていただきたい。誰が喜ぶかというと、先祖返りしてばらまきをする人たちが、そうよ、そうよ、格差よといって喜ぶだけなのではないかというふうに思います。
その関連で2ページの一番下のところ、「過去の抜本改革における累進緩和の結果」というのと「中低所得者を含めた大多数の納税者の負担は極めて低い」というのは、これは別につながらないと私は思います。累進を下げるというのは高い金持ちのところを下げるという話であって、何も課税最低限度を上げる必要はなかったんですね。だけど、日本の場合はそれをセットにしたからなったのであって、中低所得者を含めた大多数の納税者の負担が低くなったのは減税を重ねたからであって、累進を緩和するというのは50%まで下げたという話であって、こことここがつながるのはおかしいというふうに思います。
〇石会長
インカムブラケットを変えたということが影響しているのです。
〇大宅会長代理
でも、累進というのは、その下のほうまで累進というのですか。累進というのはどんどん幅が高くなるということではないですか。
〇石会長
同じ税率でも、対応されるインカムブラケットが幅が広がる・縮まるで、累進度は変わりますからね。ちょっと佐藤さんのほうから説明を。
〇大宅会長代理
ついでにもう一つ。1ページのところに、私が一番期待しているのは民間が担う公共ということなのです。税金で集めてどなたかお利口な方たちが恣意的に分配をするということのほうが嫌で、お金持ちの人は、自分はこういうところに出したいんだといったら、直接行ったほうがずっと効率的だと思います。その上に「セーフティーネット機能の役割の増大」と。これが、セーフティーネットという名前のもとに絶対また無駄遣いがやたら増えるんですよ。だから、さっきどなたかがおっしゃったナショナル・ミニマムというか、本当にどこまでを政府がやらなければいけないのかということを徹底的にやるというのが、一番大事なのではないかというふうに思います。
〇石会長
過去の減税と今の点、佐藤さんから説明してもらいましょう。
それからもう一つ、今、アメリカでえらい大金持ちがビル・ゲイツに寄附したときに、あれは税金がかかっているのかかかっていないのかという質問が出ていました。今日でなくていいけれども、その辺事実がわかれば、これは皆さん関心があるところかもしれないから、いずれいつかで結構です。
では、最初の点だけ。
〇佐藤税制第一課長
基礎資料でいろいろお話し申し上げた経緯を思い起こしていただきますと、昭和62年くらいの大きな改正、平成6年の改正と、所得税で大きな改正が2度ほどございました。そのときは、消費税の導入ないしは消費税を引き上げることとの関連で直間比率是正、したがって所得税についての大幅な税負担ということでございますが、そのときの手法といたしまして、ご指摘ございましたように課税最低限の引上げもございましたし、税率構造のブラケットの拡充、あるいは税率全体を低くするというようなことで、いわばセットとして行ったわけですが、全体としての所得税の実効税率の形状というのが、その前後を比べますと、およそすべての階層においていわゆる寝た形になっているという意味におきましてフラット化しております。
累進緩和と、この累進という言葉が若干ひっかかりかと思いますが、気持ちとしましては全体としてフラット化をする。結果としまして全体の負担水準が下がり、全体の分配機能が、寝るために分配機能が落ちるという両方の効果が同時に出てきた。その結果として、水準で見れば下がる、それから分配機能が落ちる。こういうことが同時に起こったということをここであらわしたいということですが、若干言葉足らずの部分があると思いますので、工夫は必要かと思います。
〇石会長
遠藤さん、お待たせしました。
〇遠藤委員
2ページの2つ目のマルで、社会保障制度と財政健全化が一緒になっているんですね、税制の構築で。これは若干違和感を感じるので、主税局に質問したいのですが、この間新聞を見ていましたから、17年度の税収のトータルは49兆円になりましたと出ていたわけです。当初予算が44兆円くらいでしたから、5兆円も増えたということになると思うのですけれども、これは17年度の特別な状況なのかどうかということが一つ。
それからもう一つは、いつも銀行のことを言って恐縮ですけれども、銀行がもし繰越損失がなければ、17年度はどのくらい税金を納められたのかということをお聞きしたいわけです。なぜそういうことを言うかというと、18年度の予算におけるプライマリーバランスがたしか11兆6,000億円だと聞いているわけですが、そのときに税収を46兆円弱で見込んでいるわけです。去年、当初予算から5兆円も増えるということになれば、50兆円台になるんですね。これは主税局は、今からどのくらいになりますとは口が裂けても言えないでしょうからお聞きしませんが、おそらく5~6兆円、自然増収が今のままの経済情勢であれば増えるのではないかと思います。そうすると、プライマリーバランス自体が5~6兆円になってしまう。
例えば19年度では、私の知る限りでは交付税が国税の一定割合に加算している部分が1兆4,000億円あるわけですから、こんなのはなくなるわけでありまして、その分は歳出も落ちる。必ず落ちることになるわけで、2010年代の初頭にプライマリーバランスが16兆円と試算していますけれども、そんなにならないのではないかということを危惧しているので、その最初の2つの質問に答えていただきたいと思います。それによってちょっと敷衍させていただきたいと思います。
〇石会長
現段階でお答えいただけるような材料はございますか。
〇永長総務課長
今ご指摘の点ですが、17年度の税収はご指摘のとおり、当初予算が44兆円で、実は補正を3兆円いたしました。これは去年の年末。足して47兆円、これが補正後予算でございましたが、その対補正後の数字であと2兆円増えて、結果、決算見通しとしては49兆円。今ご指摘のとおりでございます。
この要因はいろいろございますが、ほとんどは企業収益。一つは法人税への効き方。法人税が見込みよりもかなり大きくなっていると。実はこの法人税、俗に言う自然増収、これで3カ年、2兆円規模の自然増収が続いております。これはある種前代未聞の自然増収になっております。
さらに、企業収益が好調であるということで配当に回る。利益がたくさん出ると配当になります。また、いろいろな思惑もあって配当性向を上げるということもしておりますので、これは配当に対する課税ということで所得税にも効いてくる。煎じ詰めれば企業収益の動向の見方、この辺がカギになってこようかと思います。
実は18年度予算、今おっしゃったように46兆円弱の当初予算を組んでおりますが、これは、先ほど申し上げた17年度の補正後の税収3兆円を上乗せした税収をベースに46兆円弱という数字を見込んでおります。そういう意味では土台があと2兆円足されたということは確かでございますが、今ご指摘のように、18年度予算というのはまだ実は歳入として1%ぐらいしか進捗しておりません。これは今後の推移次第ということでございます。
〇遠藤委員
銀行の話はどうですか。
〇永長総務課長
銀行につきましては、メガバンクの当期利益は大体3兆円でございます。もちろん、繰欠のみならず特別損失等々もございますが、そういったものがない、当期利益にそのまま法人税率30%を掛けるとした場合には約1兆円、こういう数字になります。
〇遠藤委員
ありがとうございました。そうすると、プライマリーバランスの問題というのはかなり小さくなってくるのではないかなと心配をするわけです。
〇石会長
心配することないのではないですか。
〇遠藤委員
一緒に書いてあるから、こういう書き方でいいのかどうかということを心配するという意味です。逆に言うと、社会保障制度のほうは必ず歳出が大きくなる要因を抱えているわけなので、マルの2番目の「社会保障給付をはじめとする歳出の削減・効率化を図った上」というのを先に出すのがいいのかどうかですね。
〇石会長
書き方ですね。
〇遠藤委員
はい。それは12ページの消費税のところで書いてありますけれども、社会保障制度をどうするかという制度の問題と、それから、増税というか、消費税をどうするかという問題とをリンクさせて、国民が選択しやすくするようにするというところを強調したほうがいいのではないかと。だから財政健全化が必要であれば、財政健全化というのをもう少し絞って数字的裏付けをきちっと予測した上でやらないと、国民には、両方一緒くたになってわけがわからない話になりはしないかなと、そういうことを心配します。
〇石会長
遠藤さん、財政健全化というのはプライマリーバランスだけではないですよね。当然、その次のステップであるわけです。膨大な赤字が積み重なっているわけですから。それまで踏まえて言えば、当然、みんなで負担し合ってやらない限り消す方向に行かないですね。だから、プライマリーバランスの話だけをあまりここで出すことはないのではないですか。自然増収で減るというだけで大いに結構なので、自然増収がどんどん出てきたら、さらに次のステップとして財政再建を早めたらいいのだから、その心配はあまり要らないのではないですか。
〇遠藤委員
仮にプライマリーバランスが黒字になったとすれば、あまり大きな問題にしなくてもいいわけでしょう。
〇石会長
そのあとにまたドカッと借金のかたまりがあるじゃないですか。
〇遠藤委員
だけどそれは、長い目で解消するかどうかという話でしょうね。
〇石会長
そういうことですよ。
では、尾崎さん。
〇尾崎委員
遠藤さんが大変いい指摘をしてくださったのですけれども、我々は税の構造を検討していると。そのときの景気によって税収が増えたり減ったりすることは当然あるわけで、そうではなくて構造としてどういう制度がいいのかという議論をしているわけですから、あんまり税収に引きずられるのはよくないと思うのです。プライマリーバランスということになってくると関係はある。もちろんありますよ。あるけれども、構造の議論をきちっとしていくべきだと。その話を総論の一番最初に書いていただきたいと、実は言おうと思っていたのです。ちょうど遠藤さんがいいことをおっしゃってくださったものですから。
〇石会長
はい。
関連どうぞ、翁さん。
〇翁委員
ここで言わんとすることはやはり中長期的な視点だと思います。短期的にはわりと楽観できる状況、景気の情勢を見ていてもあれですけれども、中長期的には非常に深刻。人口要因で。そういった視点に立ってこの問題を議論しているのだ、ということが出るようにしていただきたいと思います。
〇石会長
関連の関連ですか。
〇岩委員
要するにプライマリーバランスの話をしても、11年度でも成長率名目3%でしょう。かなり高い成長率を見込んで、それに弾性値をかけているわけでしょう。だから遠藤さんが言うように、そういうふうになればいいけれども、それはちょっとね。
〇石会長
ならないかもしれないですね。
では、全体的にどうぞ。
〇河野委員
今までの議論は、原則的なポジションはこうではないかと、原則に沿って各税目について、俺はここに関心があると。今日は、この前の会長の発言みたいに、夏休みに入るから言いたいことを全部言おうと皆さん集まっているわけだ。皆さんそれを言っているわけだ。
それで、私がちょっと局面を変えた議論の仕方をこれからしてもらいたいと思っていることは、年末、年度答申を税調がやるときには消費税は入らないわけです。これは政治で決まっているから、それで一向に構わない。実はほかの税目がいくらでもある。それで所得税のどこか、子育てのことに関心のある人もいるし、いろいろな人が関心の度合いが違うわけです、それぞれ見れば。だから、9月頃にまた勉強会をやるというから、そのときには、これから秋、消費税のことは別にして、自分はどういう項目を年度末までに議論すべきだと思うかという、優先順位を5つぐらい書いてもらえばいいんですよ。それでなければそれぞれ勝手なことを言うだけですから。それでもいいんですよ。いいけれども、まとまらない。今度新しい総理が諮問するならば、誰か知らないけれども、それを頭に置いて、我々は議論をたくさんやったけれども、年末までにやる議論はこれが焦点ではないかと。消費税が先だとかそんなことは一向に構わない。だけども、そういうふうな優先順位を見識のある各委員に聞く。いろいろ勝手なことを言っているだけだから、それぞれ力点が違うのだから。そのほうが間違いなく問題の整理になると思います。
それからもう一つ、格差論。これはほとんど全部政治論。どういう立場に立とうと政治論、はっきり言って。今の総理に近い人が言うことで決まっているから。そうでない人はまた違うかもしれない。それからまた、総理に対する距離感と関係なしに大宅さんみたいに言う人もいる。これは彼女の持論だからね。これは立場によってみんな違う。だから、次の総理になる人はひょっとすればこれを看板に掲げるかもしれない。これは全部政治論。だから、いろいろな議論があって一向に構わないという話だけですよ。
〇石会長
前段の河野さんのご提案を事務局と相談して、もし実行できるなら実行したいと思います。というのは、ときどき税調の委員の方には宿題的にアンケートを出して、紙に意見を整理して書いてもらうということも過去にやったことがございますから、それがこの9月冒頭になるかもしれません。それはまたお願いベースで事を起こすかもしれませんから、よろしく。
それでは、あとは最後までカバーしてください。どうぞ、井戸さん。
〇井戸委員
先ほどの5ページの世代間の公平の話とかかわるのですが、やはり高齢化社会における負担のあり方について総論的なコメントが要るのではないだろうかと。2ページの「経済社会の構造変化に対応した公平・公正の税制の構築」というところに、社会保障と絡めまして、高齢者に対する給付等と負担のあり方みたいな考え方を、少し整理しておく必要があるのではないかというのが一つです。
それから、これは宮島委員もちょっと触れられたのですが、5ページの所得分類のところで、先ほどの木委員の話ではありませんけれども、高所得者に対する実効税率が落ちているのではないかと言っておられる所以は、勤労性所得と資産性所得との課税のあり方が問われているのだと思います。ですからそういう意味では、勤労性所得と資産性所得の課税のあり方、あるいは所得区分も、私は実を言うと、分類所得税のほうがある意味で正確なのではないか、こう思っているぐらいです。それはそれとして、勤労性と資産性はやはり取扱いも分けなければいけない、負担のあり方も分けなければいけない。そういう意味からすると損益通算を安易に勤労性所得と資産性所得との間で認めてはいけない、ということをぜひ強調させていただきたいと思います。
それから、6ページの株式なり配当に対する課税のあり方については、これは整理されておられますので、その点についても触れさせていただいたのですが、8ページの下に「事業形態の選択に中立的な税制を構築することが求められている」と。組合形態とか、任意のファンドとか、匿名組合とか、そういうことを念頭に置いた議論だと思うのですが、この「事業形態の選択に中立的」だけでは問題なので、所得の捕捉とか、税としてそういう匿名性をどこまで認めるのかとか、そういう面も十分に勘案して考えないとおかしいということを強調させていただきたいと思います。
それから、これは地方税全般で書いたほうがいいのか、所得税から住民税への移譲の関係で書いたほうがいいのかというのがありますが、税の痛みといいますか、今度は10%一律になりますから、住民税としての税の痛みがかなり上がるのです。見かけ上だけですけれども、今度のこの6月は実際に上がったのですが、そうではなくて見かけ上、上がるのです。それは税の痛みという意味ではかなり受け取られる可能性があります。だとすると、それに対して市町村、あるいは県もそうですが、社会的な給付と負担との関係を、さらに地方自治の立場で言うと望ましいんだとか、何かそういうことを敷衍しておく必要があるのではないかなと。単に所得税から住民税に移譲されただけの問題ではないんだということを、ぜひ触れておいていただく必要があると思います。
もう一つそれに関連して、しっかり取れと。徴収が所得税のときだったらきつくて、住民税になったら緩いよということにならないような、地方団体としての責務もあるわけです。その点は私も今いろいろなことを考えていますけれども、そういう面も触れておいていただいたほうが望ましいのではないかと思います。
〇石会長
徴税のほうの領域でおっしゃっているわけですね。
〇井戸委員
納税者に説明していくときに、何か手がかりがあったほうがありがたいなという思いもあるものですから。
〇石会長
勤労性所得と資産性所得のところは、金融所得課税、6ページで、分けてという言い方でここでトーンとして書かれていますが、もうちょっと中身としては議論したいと思いますが、「勤労性所得との差異を認め、今後とも分離課税を基本とし」というのは、まさに井戸さんがおっしゃるようにはっきり峻別しろという趣旨をここで言っているわけです。当然、損益通算も両者の間で安易にやらないということですね。
ほかにいかがですか。後ろのほうまでカバーしてご発言ください。
どうぞ、上野さん。
〇上野委員
各種控除のところで、家族に関する控除等、人的控除の整理というようなことが書いてありますが、この部分は地方税や何かにもかかわるのですかね。かかわるんだということになった場合に、3番目のポツのところで「人的控除の見直しに当たっては、それによる個々の負担変動の程度や影響人員について十分配慮する必要」があると。このことの配慮の仕方として、地方税の場合にはどういうようなことが考えられるのか、ちょっと教えてほしいのですが。
〇石会長
なかなかそこまでかたまってはいないと思いますが、何かありますれば。今、質問が出ましたが、つまり地方所得税、住民税の控除の将来の持っていき方ですね。何かそこについて、今の段階でお答えいただけるようなことがあれば。なければ結構ですけれども。
〇林市町村税課長
10%の比例税率化ということと、それから、税負担水準が多くの方にとって非常に上がってきたということもありますので、それについて、今、具体的にお答えできることはないのですけれども、問題意識を持って検討していきたいというふうに思っております。
〇上野委員
そういうことがちょっと気になりましてね。井戸さんのご発言もあるのですけれども、控除の整理をやったら、比較の問題として、一定税率のときにはかなり低所得層に効いてくるのではないのかなというような気がするものですから、そこは配慮をどうやってやるのだろうというのが気になる、こういうことです。
〇石会長
個人住民税のところの5ページ目の下のマル3つには「所得税とは独立して、整理合理化を」と書いてありますから、いうなれば所得税と一体化した進め方とは違った、独自の方向で控除を見直したり等々されるのだろうと、私は期待していますけどね。
どうぞ、出口さん。
〇出口委員
やや、井戸さんとも、これまでの発言とも重なって恐縮ですけれども、8ページの最後のところと、9ページの最後のところ、たまたま同じようなことが同じような形で、「中立的」ということと、「歪みをもたらすことがないよう」となっています。私法上の変化に対して、先ほども申し上げましたけれども、非常に難問を突きつけられていまして、昨年度の我々の答申は、ある意味でちょっと踏み込んだものを出したわけでありますので、これについては十分に専門的な意味で配慮していく必要があるだろうと思っています。
もう一つ、大事なポイントとして、12ページの一番上でございます。消費税の軽減税率に関連してその導入の是非について、配慮の必要な者にどう配慮するかということで、「歳出や税額控除で対応すべきではないか」ということですが、私どもの平成17年度の税制改正の答申では、この部分で、「民間非営利活動の広がりをも踏まえつつ」というところがかなり大事なポイントとして入っていました。そこをあえて落とすと、またぞろ大宅委員のおっしゃるような問題も生じてこようかと思いますので、ぜひお願いいたしたいと思います。
〇石会長
尾崎さん、どうぞ。
〇尾崎委員
13ページの一番上のマルの地方消費税です。前回私は、骨太の方針の説明を受けまして、地方交付税の算定の仕方を変えるように書いてあったものですから、それなら地方消費税と一緒にしてしまったらどうかということを申し上げたのですけれども、これは主な論点ですから、私の言ったことは瑣末なことだと思われたのかどうかわかりませんが、何も書いてないんですよね。そのかわり、「地方分権の推進、地域福祉の充実等のために創設された地方消費税」というのですけれども、地方消費税というのは地方分権の推進のために創設されましたかね。ちょっと時間的にどうかなという気もするのですけれども。
それから、「税収の偏在性が少なく」というのですけれども、地方消費税というのは要するに再配分して渡しているわけですから、偏在性が少ないのは当たり前なんですね。その前の段階で言いますとものすごく偏在しているのです。だから、あのとき時間をいただいて2回発言して、地方の人員の削減であるとか経費の節約のためにもいいのではないかということを申し上げたのですけれども、何も書いていなくて、そのとき発言があったかどうかわからないようなことが書いてあるというのは、これはどういうことなんですかね。
〇石会長
尾崎さんのお話は一応記者レクでもご説明しましたけれども、この全体の意見の中で、そういうご意見があったという形でそうフォローの風が吹かなかったような印象を持ちましたのでね。つまり尾崎さんの、2つまとめてしまえというやつ、そういう趣旨のご発言でしたね。
〇尾崎委員
そうです。こういうことを考えたらいかがですか、と。
〇石会長
ご発言があったのは事実です。ここに書く書かないのジャッジメントはかなり恣意的でありまして、将来的にこれをどうやって答申に持っていくかという視点で一応論点を挙げているわけなので、尾崎さん、今日は再度ご発言がございましたから、そういう意味で議論のたたき台というか、何か盛り込みたいと思います。ただ、全体として税調の中で続いてご発言がそう多くなかったのではないかと思ったものですから、ここで挙げていないのです。
どうぞ。
〇井戸委員
今の点は私どもからすると、私どもというよりも、おっしゃるとおりですが、地方消費税の仕掛けをつくったときに、現実の消費のメルクマールをどういう形で求めるかと。ただ、消費税の税収の集め方は、おっしゃったように本店所在のところで集めます、申告納付されますから。しかし、現実の消費はどこで行われているか。消費の現実の実態に合わせて、各地方消費税の課税標準をつくっていくべきではないかという技術的な検討の中から、課税標準を配分するような形で議論がされていったのではなかったかなと、このように思っています。
それとあわせまして、そういう意味で法人課税等に比べると、もしそういう仕掛けを認めるのだとすると偏在性がより少ない。したがって我々から見ると、地方消費税のほうが偏在性の少ない税だという意味では地方税性に富んでいるのではないか、こういうふうに思っています。
特に今回、知事会等が勉強した結果で意見書として出させていただいているのは、どちらかというと偏在性に富んでいるほうを地方独立税のほうに回して、偏在性の高いほうを交付税の原資にしていくことが考えられるのではないかというようなことも背景に踏まえながら、将来、タックスミックスを検討していくべきではないか、というようなことも申し上げているということではないかと思います。
〇尾崎委員
釈迦に説法で申し訳ないのですけれども、地方消費税というのは課税標準が国の消費税なんですね。それに25%の税率で掛けているわけです。だから課税標準というのは決して地方の消費ではないわけです。そういう額を確保して、それを一定の基準に従って再配分して、それを配っているわけです。だから偏在しないのは当たり前なのです。上手に分けるためにある一定の方式を考えてやっておられるわけですから。だけど、税そのものは国の税を課税標準にしているわけですから、地方交付税と同じなのです、そこは。
〇井戸委員
そこはそういう仕掛けにしただけなのです。
〇尾崎委員
仕掛け直しましょうと言っているのです。
〇井戸委員
国税の一定割合にしたほうが納税者にとって利便性が高いから、ということでそういう仕掛けにしたはずなのです。本質的な地方消費税の議論の中では、消費の実態にどう反映した課税標準を求めていくかということを基本に議論していったはずです。ところが、現実のもう既に先行している国税という消費税制度がありますから、それとの関連であのような仕掛けが採用された。私はそういうふうに理解しています。
〇石会長
この議論は百年戦争になるような様々な問題を含んでいまして、私も創設したときの小委員会に属しておりました。今おふたりのおっしゃるような議論がワンワン出て、侃々諤々議論して今の格好になっているので、いろいろな意見を入れたという意味では妥協かもしれません。ただ今後、国税の消費税率が上がったときには、この問題、おそらくまた議論をしなければいけないでしょうね。したがってそのつもりではおりますけれども、まだ消費税についてはっきりしたことが言えない段階で地方消費税のことまで言えるのかどうかとなると、答申の段階では大まかに書かなければいけないなと思っています。
そういう意味で尾崎さんのお出しになっている問題を、最終的にどこまで答申に書き込むかどうかは一応お諮りしたいと思いますが、決して無視しているわけではございませんので、皆さんの議論の中に入れておいていただけたらと思います。
〇猪瀬委員
今の論点を整理したものというのはないんですか。
〇石会長
ありますよ。地方消費税に関する会合があって、そこで事の経過を書いています。そもそも簡単に言うと、所得型消費税を考えているから、府県ごとに集めた段階で府県の所得にしてしまえと言ったのは消費税の本質から言うとおかしい、負担は最終消費者だからというわけで、仙台で取った事業者間の付加価値税的な消費税を仙台のものにしてはまずいだろうと。例えば仙台のかまぼこで消費者が川崎あるいは横浜と。そっちの税収になるべきだという議論をだいぶしましたよ。そういう議論を書いてあります。
〇猪瀬委員
論争の整理は。
〇石会長
あります。もしご希望ならば、事務局のほうで整理してもらいます。
どうぞ。
〇菊池委員
一つは、尾崎さんと同じことを言おうと思ったのですけれども、それのもとというのは、私がこの前一回休んだ間にずいぶん進んだなという思いがあるのは、消費税で、社会保障財源であるのはあたかも当たり前の前提みたいになっているので、私はそこは反対なんです。税金を何に使うかというのをはっきりさせたら、ほかの税金どうするんだという話になりますし、消費税を社会保障に使うというのを明確にすると必然的に地方消費税というのが出てくるわけですから、そうなってきた場合、もし目的税にするのだったら、地方消費税というのは別項目でとってもらわないとおかしいわけで、消費税全体と地方消費税と別々の税金にすべきだと私は思います。もし目的税にするなら。
私は目的税は反対ですから嫌ですけれども、にもかかわらず「目的税化」と、何だかわけわからないですね。党税調が「化」というなら、政治的に「化」にでもしなければ実現しませんからいいんですけれども、この税調で「化」というのは何なんだというのは、最後はどっちかに決めなければいけないと思います。
〇石会長
ここは、まだ決め打ち的にどっちだとベクトルを一方方向に書いていないのですから。
〇菊池委員
やるたび、化、化と言っておけば、「化」で終わってしまいますよ。
〇石会長
たまたまそういうことを言った人がいるから引用しただけの話でありまして、これは最後まで生き残らないでしょう、菊池さんが頑張れば。大丈夫ですよ。
〇菊池委員
はい。
〇石会長
今の関連ですか。どうぞ。
〇田近委員
尾崎さんと今の菊池さんに続けてですけれども、地方消費税をどう考えたらいいかというのは、私も『昭和財政史』というのを書かせていただいて、さんざんその経緯は読みましたけれども、そのときそのときいろいろ議論も振れていたというような記憶があります。尾崎さんのおっしゃったような考え方、つまり1%、地方消費税にしないで交付税であげたらどうだという考え方もあるわけで、論点としては出してもいいと思います。問題は菊池さんのおっしゃったところで、前段の、消費税を今後増税したときにどうするかというところが政策的な現実的な問題になってきて、それは地方消費税のあり方に関する考え方を判断にいろいろ考えるのでしょうけれども、そういう意味で地方消費税の論点が、尾崎さんのおっしゃったようなことも十分あり得るのだろうなということです。
問題は目的税化ですけれども、現実的には政治力学から言って社会保障を消費税で埋めるわけにもいかない。それだけで埋まらないのだから、目的税化ということで消費税の増税の環境が多少整うならいいかというのが現状認識の一つと、そうではなくて、ドイツがやったみたいに、消費税を上げたときには一定割合は財政再建に役立たせると。実質的にはお金はそんな色がなくて動くわけだから、同じようなことかもしれませんけれども、私はまだここは答えが出ていないのですけれども、税調として、現実的なことを言えば、社会保障給付費を消費税と対応させる。少なくとも増税した部分の消費税と対応させるということでも財源は足りないのだから、しようがないかと思うか、それではまだ財政再建に対する税調の答申として腰が抜けているかと。そこは私も、まだどちらがいいのかというのは……。
〇石会長
この夏休み中に考えておいてください。
では、猪瀬さん。
〇猪瀬委員
先ほど菊池さんのおっしゃった目的税化というのがありました。そこのところは今いろいろな意見があるけれども、それを言葉として抑制しないと、後ろのほうの道路特定財源の一般財源化というのと矛盾してしまうわけです。それから、道路特定財源の一般財源化のところで言い訳がちょっと多すぎるんですね。後ろのほうのポツの言い訳。やはり一般財源化と強く言い切って、ポツは別にこんなにいっぱい立てる必要はないのではないですか。
〇石会長
こういう意見もあったから。
〇猪瀬委員
ただ、今菊池さんが言ったところの、こっちのほうの目的税化をあまり強調してしまったらまずいよということであります。以上です。
〇石会長
岩さん。
〇岩委員
まだワーディングの段階までは来ていないからあれなんですけれども、ちょっと気になるのは消費税の使途のところ。目的税かどうかはまた別の議論として、使途として社会保障のためというだけでいいのかということなのです。さっきも申し上げましたけれども、給付をきっちり押さえておかないと、人件費だ何だかんだといって一般行政経費にこれが使われたのではたまらない。ここはきっちり押さえておいたほうがいいと思います。
〇石会長
遠藤さん、どうぞ。
〇遠藤委員
前回休んだものですから、さっき議論がよくわからなかったのですが、地方消費税を交付税にするというのは私は反対です。地方消費税というのは地方税なので、不交付団体にも収入にされるわけで、交付税にしてしまうと不交付団体には行かなくなるわけです。ですから、その議論には私は反対です。
〇石会長
どうぞ。
〇井戸委員
これは前々回のときも私は申し上げたと思いますが、歳出・歳入一体改革のフレームの論議のときに、国のフレームで2006年から2011年の5年間で社会保障給付費が6兆円増える。地方のほうも、年金の支払者としての負担が増えるのが1兆円弱あるのですけれども、それをとっておいても、年金以外の社会保障給付等の関係でほぼ1対1対応で3兆円ほど増えるのです。国が増えている年金の増が3兆円で、社会保障関係が3兆円。地方のほうも3兆円、同時に増えるということを十分認識してほしいということを申し上げました。ここにも書いてありますけれども、そういうことも踏まえた上で、地方消費税なり消費税の目的税化も議論していただく必要がある。これだけ指摘させていただきます。
〇石会長
関連、関連で皆さん言ってくるけれども、ひとまず関連は打ち切って、新しい問題提起を。
上月さん。
〇上月委員
全然違うのですが、7ページの1行目に相続時精算課税制度というのがあります。これは若い世代に資産を移転するということで、消費を活性化するというのでかなり活用される方も増えてきていると思います。「活用を期待」とだけ書いてありますが、できれば例えば対象年齢を引き下げる等をして、制度をもう少し皆さんに使いやすくして普及すればいいのではないかなというのが1点。
もう一つは、納税環境整備の中にe-Taxの普及・促進というのが全然ないのですが、こういうのは要らないのでしょうか。
〇石会長
わかりました、e-Tax ですね。
秋山さん、どうぞ。
〇秋山委員
ちょっと私も、盛り上がった議論のあとで言いにくいような話なのですけれども、今日改めてこの論点整理をざっと読んで、法人税のところについてちょっと違和感を感じる部分がありましたので、指摘させていただきたいというふうに思っております。
ページで言いますと、9ページの税率のあたりの書きぶりですけれども、「国際競争力の観点から」ということで、例えば丹羽委員のご発言ですとか、あるいは井上委員のご発言で、国際競争力の観点から税率の引下げといいますか、バランスも少し考えるべきだというご指摘が力強く再三あったのかなと。私自身もその意見には賛同であったのですけれども、ここのところが両論併記ではなくて、むしろ引き下げる必要はないと、言い切りの論調になっているところが非常に気になります。
実は国際競争力という言葉自体は、骨太の方針の中でも歳入改革の中でキーワードとして挙げられています。今回のこの論点整理の最初の総論のところでも、どこがそれに当たるのかなというふうに見たときに、2ページ目の経済活力というところかなと思うのですが、ここには、どちらかというと「長期金利の安定を通じて」というようなところしか書かれていない。諮問会議から出たペーパーの中で、今後の中長期的な経済再建を考える中で幾つかのシナリオの重要なパラメーターになっているものの2つは、1つが金利であり、もう1つは経済成長率であるということを考えると、特に企業活動の国際競争力というところをもう少し強調してもらってもいいのかなというふうに思います。
〇石会長
少なくとも顔出しはしておくべきだったでしょうね、一挙に結論に飛ばないで。
関連ですか。
〇田近委員
私もその指摘をさせていただこうと思ったのですけれども、9ページ、租税特別措置のところで、税率を下げることはできる、できないという議論の背後にあるのは、この厳しい財政事情でもし税率に手をつけられるとすれば、やはり租税特別措置等を、ここに書いてあるようにどれだけ大胆に整理合理化できるか。下の減価償却のところはポツが10個ぐらいついて書いてあるわけですね。乱暴なことを言えば、減価償却の制度なんて今度見直さないで、そのかわり課税ベースを広げて税率を下げるという選択、まあ、経団連はそれを言ってこなかったから、彼らは彼らの考え方がむしろあるでしょうけれども、まだ日本で法人税で、「引き続き、既存の措置の整理合理化を大胆に進めるべき」というときに、一体何ができるのかという、イメージをとらえるようなものをぜひ書いていただきたい。書くべきだと思います。
〇石会長
ただ、増税の方向になるんですよね。
〇田近委員
だから現実的な選択としては、税率を、このまま法人税を下げろといっても誰も受け入れないですよね。
〇石会長
いや、わからないですよ。
〇田近委員
それはわからない。わかりませんけれども、ここが重要だと思うのですが、税率は下げてもレベニュー・ニュートラルはあり得るわけですね。
〇石会長
当然ありますよ。それは前から言っている話ですけれども、この辺の組合せも重要かもしれません。
林さん、どうぞ。
〇林委員
11ページの下から4つ目のポツで、「高額所得者は消費が大きいため軽減税率による恩恵が低所得者よりも大きくなることにも留意が必要」というのがあります。これは、要するに軽減税額が大きくなるのでということだろうと思うのですが、どう留意をすればいいのかということなのです。この言い方を裏返してみれば、高額所得者は同じ税率でも税額が多いのだからそれでいいじゃないか、というようにも読めるんですね。その留意というのが、どうするのだろうと。つまり、逆進的であっても構わないという話なのかどうか。これを言っていることを裏返せば、要するに税額が大きいのだからという話になってしまうので、ちょっとその留意の仕方がよくわからないという感じがいたします。
〇石会長
どなたか発言があったのを受けたのだと思いますがね。
〇林委員
そうだと思いますけれども、ちょっと。
それからもう1点は、地方法人課税のところで、外形標準課税は充実すべきだという具合に書いてあるわけですが、そのあとのポツともう1つのポツも、外形標準課税を充実することによって解決できる問題なので、それも踏まえて文章として外形標準課税の充実・強化ということにしていただいたほうが、充実・強化の意味がもう少しクリアになるのではないかという気がいたします。以上です。
〇石会長
だいぶ燃えて発言、意見がございましたけれども、ほかに。まだ5~6分ありますから、どうぞ。
岡田さん。
〇岡田委員
全く離れてしまうのですけれども、納税者番号制度のところです。私自身も個人的に、何か番号つけられて管理されていくのは嫌だなあというふうに感じてまいりました。ところが、今、法務省で戸籍法の改正をしています。その中でやはり本人確認というところで、本当に方法がないのです。結局、戸籍は改正できないのかとかいうことで、今、堂々巡りしているような段階なのですが、本当に番号制が採用されることによって公平に税金を負担していただくということであれば、やはり国民に対してこの部分を理解させるようにしなければいけないのではないか。たぶん、感覚的に拒絶しているというのが強いのではないかなというふうに思います。
〇石会長
その感覚的な拒絶をどうやってアクセプトしてもらうかということの、文章力でやるのか、実際の説得でやるのか、対話集会とかいろいろありますけれども、それはぜひ必要だとお考えですね。わかりました。
では、水野さん。
〇水野委員
法人課税のところですが、8ページの一番下に「事業形態の選択に中立的な税制を構築すること」、それから9ページ、一番下のマルに「多様な事業形態への対応」となっていまして、どちらも中立性のことを挙げています。一つは、組合ですとか信託、これは8ページに出てきますけれども、これは事業体という名前、ほぼ定着しているのではないかと思いますが、事業形態という言葉になっているんですね。事業形態というと、通常、個人企業と法人の企業を比べた場合というのでずっと伝統的に使ってきたものです。税制調査会の答申でも、ちょっとここは使い方が今までと違いますので。まあ、それでよければいいのですけれども、どういうものかなという感じがいたします。
〇石会長
どこをどう直したいというご提案ですか。
〇水野委員
8ページの一番下です。
〇石会長
「多様な形態」を事業体に変えるのですか。
〇水野委員
多様な形態……。
〇石会長
ではなくて事業体にするのですか。
〇水野委員
それはそれでいいのかなあ。
〇石会長
事業体という言葉をどこかに使いたいわけですね。
〇水野委員
そういうことです。
〇石会長
わかりました。
〇水野委員
それと、このことについて中立性があるのですが、もう一つは、事業体というのはある意味で課税を逃れるために使われる。特に組合、匿名組合などはそうですから、いわゆる「公平を確保する」という一言も必要でしょうと思います。
〇石会長
所得捕捉にも留意すべきだというご発言がたしか井戸さんからあったのかな。そういう点を踏まえて少し書きましょう。
辻山さん、どうぞ。
〇辻山委員
先ほどの議論に戻ってしまうのですが、私は、先ほど上野委員が途中でご発言になったことに非常に賛成でして、中身の話はまた機会があると思いますけれども、全体にかぶるイメージとして、これまでの議論の中で出てきた、小さな政府であるとか、機会均等であるとか、あるいは、これまでは累進緩和ということも出ていたと思います。その辺のことが、全体を通して見るとよく読み取れないのかなという感じがいたします。
ただ、累進緩和といって最高税率を据え置いても、先ほど出てきた勤労所得と資産所得の課税のあり方の再検討とか、そういったものでいわゆる格差の問題に別の角度から対処できるのかなという感じはしています。
それからもう一つ、消費税の問題で今の話とのかかわりで、直間比率というのがずっと議論されてきて、その中で間接税の問題にシフトしてきたということがあります。その点についても、もちろん社会保障制度等の財源確保というのもありますけれども、全体の税の枠組みの中で、直間比率の見直しの問題がベースにあってここに進んできたと。これまでの進んできたところについて、少し書かれていてもいいのかなという感じがしています。
〇石会長
直間比率というのは、今、やや死語化しているんですよ。間接税を高めないで所得税が落ちてしまったから直間比率が是正されたので、本来の趣旨とは違うんですよね。ただ、そういう過去の経緯も少し踏まえて書きたいとは思います。
どうぞ。
〇井戸委員
2回前にも申し上げたのですけれども、例えばパチンコに対して娯楽施設利用税がかかっていたのに、もうやめてしまったんですね。今のパチンコのあの担税力を見て、それだけでいいのか。しかもギャンブル王国化しておいていいのかという問題意識とか、あるいは料理飲食等消費税、これも、贅沢という言い方がいいのかどうか……。
〇石会長
井戸さんのところで執行体制は大丈夫ですか。
〇井戸委員
それはできますよ。
〇石会長
そうなると地方個別消費税の拡充ですね。
〇井戸委員
ですから、その辺の検討も要らないのかなと。抜けていますのでね。
〇石会長
わかりました。
はい、最後にどうぞ。
〇川北委員
さっきの水野さんの発言に関連してですが、事業形態というのか、事業体というふうに言っていいのかそれはともかくとして、「中立的な税制を構築する」という場合は何を意味しているのでしょうか。例えば、今度の新会社法で認められた日本版LLCよりも、前からあった日本版LLPのほうが税制面では有利だと言われていますね。中立的にするとすれば、LLPに対する課税強化をするというようなことを意図するわけですか。
〇石会長
税によって有利なほうに事業体の選択が行くのは課税の中立に反するというけれども、それはあくまで観念的に言っているわけで、この辺はどうですかね。完全にそこを中立にできるかどうかわからないけれども、趣旨はたぶん、中立のほうに向けて頑張るということでしょう。水野さん、そのへん完全中立にできますか。事業体の選択において、税が。
〇水野委員
新しくできた合同会社というのは完全に法人税の対象になりますので、一般の組合とは全然違うというところから出発しているんですね。だから難しいと思いますが。
〇石会長
よろしゅうございますか。
一段落つけたいと思いますが、ちょうど今、4時であります。今日の議論の締めをする必要があるのかもしれませんが、いずれにいたしましても、年初来様々な議論を繰り返してきまして、6月の末から4回ほど、個別の税制について総論まで含めて議論をいたしました。そこでこういう論点整理まで来たのですが、今日、皆さんのご意見を聞いていますと、まだまだベクトルは必ずしも同方向に行っていない箇所もいっぱいございます。そういう意味で、文章化したときにそれに即してご議論いただくのは9月以降になるかと思いますが、その中で、強弱の置き方とか、文章の書き方とか、いろいろまたご意見を伺いつつ最後にまとめていきたいと考えております。
暑いこともありますから、これで夏休みに入るのがいいのかなと思っていますので、ぜひ英気を養って、9月からまた議論再開にご参加いただきたいと思っています。
事務局から何か連絡事項はございますか。いずれにしましても、まだ9月の段階でいつというのは決まっておりませんが、決まり次第なるべく早くお伝えしたい。8月前半くらいまでに9月の予定はお伝えしたいと思っています。そういう段取りでよろしいですね。要するにまだ固めておりませんが、9月の初めからと思っていまして、火・金あたりに会合がセットされると思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
今日は、大変活発なご議論をいただきまして、お互いの理解もずいぶん深まったし議論も進んだと思います。どうもありがとうございました。これにて散会いたしたいと思います。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。