総会(第50回)・基礎問題小委員会(第59回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成18年7月11日(火)16:24~16:37
〇石会長
今日は、場所を変えて、三田共用会議所で税調審議をしましたので、お聞きになっていない方もいらっしゃると思いますが、どういう議論があったかということをご紹介したいと思っております。今日は3つのことをやりました。1つは、歳出・歳入一体改革につきまして、骨太の方針を内閣府の川口参事官から聞きました。それから2つ目、前回の経済界代表で丹羽さんからご意見を聞いたのと同じように、労働界代表で高木さんの方から、働く立場を代表した税制改革への見解を聞きました。3つ目が、これまでの我々の基本的な姿勢を示します総論の部分について、論点を整理してもらって、それにつきまして高木さんの話と併せて議論をいたしました。
3、4点、重要な点があったと思いますが、まず1点目は、高木さんのお話の中で、恐らく皆さんと同様に、税調のこれまでの議論を踏まえ、我々が今後議論しなければいけない論点を幾つかご提示いただいたと、このように考えております。必ずしもそれが全部我々の意見に活かされるということではございませんけれども、所得税改革の見直しで、最高税率を上げてはどうかというご提案もございましたし、あるいは金融所得課税、これは強化しないと、働く方とのギャップが出てくる。あるいはサラリーマン、給与所得者の申告納税を認めろとか、あるいはこれからの税制全体の中で、やはり安心とか老後とか、雇用とかという視点から、抜本的に見直してくれというご意見があり、これから高木さんの出された問題、あるいは前回の丹羽さんの出された問題を踏まえまして、議論を深めていきたい。これが第1点であります。
第2点は、今日の総論に関することでございますし、それから骨太の方針にも絡む話でありますが、何人かの委員から第II期まで、つまり2011年までの歳出・歳入一体改革のプランは出たけど、それ以降の第III期についてまだ確固たるもの出ていない。債務残高のGDP比を2%減らすというぐらいの大まかな話でございますから、税調としてはそこに何か具体的な問題を盛り込めないかという議論がありました。それから従来、公平、簡素、中立という視点から税制改革をまとめて参りましたけれども、今度は「安心を与える税制」といういわゆるキーワードについては、安心を与える税制というとすぐ減税の方ばかりとられてしまうというご意見もございましたけれども、もうちょっと言葉を丁寧にして、国民全体で負担しながら社会保障制度全般について支えるといったような視点から、国民生活のインフラを作ろうといったような、こういう議論は1つの我々としてのメッセージになるのではないかという議論もあり、これも少し深めていきたいと考えております。
それから、あえて総論の中に入れるべきだと思いますが、これから消費税の改革が避けて通れなくなって、その前に税制全般の見直しの中で所得税というものをどう位置づけるか。とりわけ格差社会の是正等々もございました、それから、税収確保という視点から課税ベースの拡大等々もあるだろうという形で、この議論も深めていかなければいけないかなと。特に、格差社会の是正についての所得再分配の機能ということについて、高木さんがかなり強調されておりましたが、前回も申し上げたような我々税調の共通の理解にその辺がなっているかなと、このように思っております。
それから第3点になりますが、地方税を絡めたことで国と地方の税源配分の問題というのは、やはり浮上してこようかと思います。とりわけ今日は地方消費税につきまして、立場の異なる方から議論が幾つか出されまして、これにつきまして議論をこれからまとめていくということが重要になってこようかと考えております。これも今日、ある方向が固まったというわけではありませんけれども、地方交付税がらみの話も含めて議論になったと思います。
最後にその他ということでございますが、税制改革そのものというよりは我々、総論部分として家族のあり方、家族機能の復権というか復活というか、そういう点について何人の方々からご意見もあり、我々、例の「実像把握」のところで幾つか具体的なデータを踏まえつつ、この辺の議論をいたしましたので、今日はたまたま家族だけ出て参りましたが、それ以外のところで少子高齢化の問題、あるいは分配に関する問題等々出てくると思いますので、これをベースにこれから議論を固めていきたいと、このように考えております。
といったわけで、年明け以来、何回も議論を重ねてきました。6月に入ってから、特に論点の整理という形で個別の税目につきまして、改革の方向を整理して参りました。これを踏まえまして、今日で一応総論まで来ましたので、この金曜日、総括という意味を含めてフリーディスカッションをして、我々の基本的な骨組みに対する考えをまとめていきたいと考えております。
当初、もうちょっと詰められるかと思いましたけど、7月も後半に入って参りますので、これから一応夏休みという形にして、9月以降、中期答申に向けての個別な文章化も含めて進めていきたいと考えております。我々の任期中にとりあえずまとめなければいけませんので、9月以降も少し頻度を多くして、税調をしなければいけないかなというふうなスケジュール感を持っております。以上です。
〇記者
幹事からまず。今日の議論の総論の部分の話なんですが、どういうメッセージを軸にしているかと。前回3年前というのは少子高齢社会という大きなテーマでございましたけれども、それに加味すべき論点になり観点、現時点で会長、いかがですか。
〇石会長
今日、2、3ございましたけど、家族というものをどうとらえるか。つまり、その機能の復活という視点からのご議論もありますし、それから、そうは言っても、現実は、しばらくは、確実に元に戻らないのではないかと。そういう意味では個の立場を重視した形がそもそも現実的ではないかというご議論もございました。そういう意味で少子高齢化、家族、その2つは恐らく社会保障制度の持続可能性に絡めて非常に大きな論点なので、我々としてもそこに対して何か具体的な強いインパクトを与えるようなメッセージが出せないかなと思っています。
これに対してもう1つは、やはり会社の役割がバブル崩壊後大分変わってきたという形で、家族、会社とかという組織持続型のセーフティネットが必ずしも十全に機能していないという辺りが、税制改革の議論の根っこにあるのかなというふうには考えています。その辺が少し新しい視点かと思います。
従って、先程申しました安心を与える税制なんていうのは、こういうものをベースにしての議論だと思います。
〇記者
その点に関してお聞きしたいんですが、意見の流れが財政再建のための税収確保を中心にするべきという話がありましたが、その点はいかがでしょうか。
〇石会長
従来、我々は答申の総論の中で、枕言葉的になっていましたよね、あるいは柱書き等々の中で。恐らくそういう位置づけにするか、それとも今の歳出・歳入一体改革の具体的なスキームが出て、2段階、つまり第II期と第III期の具体的なものがいろいろ出てきましたから、やはりその中で言わんとしていることも、税収確保の機能の再認識ということだと思いますが、そういうことは当然我々の柱にはなると思っています。
〇記者
それに関してなのですが、骨太は2010年代半ばの債務残高のGDP比と。これは第III期ですね。これを踏まえてというか…。
〇石会長
今日、第II期まではとりあえず決まってしまっただろうと、政治的にも。第III期について何かもう少し具体的に税調として問題提起できないかというご発言がございましたから、それにつきましてまとめる段階で何か具体化できるかどうかは議論の対象になると思います。ただ、今日はまだそこまで行っていませんから、内容についてはまだ具体化は難しいと思う。今日の段階について、わかりませんけどね。そういう発想だと思います。
〇記者
中期答申を出す時期なんですけれども、先程のスケジュール感で言うと、9月に入ってから文章化するというお話でしたが、そうなると今の総理に出すというよりは次の…。
〇石会長
実は、正直言って悩んでいるんですよ。ちょっとまだ定かではない。二通りあると思いますね。小泉さんから我々は諮問をもらったんですよ。従って、小泉さんが首相在任中に諮問の答えを答申の形で出すということは当然あり得ますけどね。もう一つは、それ以降、秋の話でしょう。我々の任期にも絡みますのでね。まあ、任期は延長すればいいというだけの話もあるかもしれませんけど。新しい政権の中に、どういうふうにこの税制改革の問題をとけ込ませるかという問題が残るので、実は今のところ全く、その辺どっちにしようか決めかねています。ただ、9月前半にはまとめておきたいと思います。話としましてね。いずれにせよ、どっちかまだ決めかねています。
〇記者
個別の話なんですけど、地方消費税が今日随分議論になりまして、一方、税収の安定、地方税の安定という意味で重要だという話と、あと地方交付税の絡みで、いっそなくしてしまえばいいんじゃないかという議論もあったかと思うんですが、会長ご自身は地方消費税というのはどのようにお考えですか。
〇会長
これは、ずっと歴史のある話ですから、恐らく国と地方の財源配分を巡って、地方消費税について賛否両論がかなりあると思いますね。これからの議論で。一刀両断的にどっちがどうだと、ある意味では非常に既得権というか、市民権を得た税として、なかなか元に返すのは難しいと思います。地方分権という視点から見れば、自らの税源として集めて、個々の自治体の税源になっていないという点では不満が残るかもしれない。ただ、さはさりながら、地方に安定した税源と言えばこれしかないじゃないかと言われれば、そうかもしれないし、これは非常に悩ましいところですね、今後どうするか。それと同時に、地方交付税の対象に入っているのと、それから地方消費税というのと2つのチャネルがあって、それを一本にしてしまったらどうかという提案も今日あったわけです。そういう意味で、議論するにはかなり時間がかかると思いますが、今後の大きな課題だと思っています。
(以上)