第50回総会・第59回基礎問題小委員会 合同会議 議事録
平成18年7月11日開催
〇石会長
それでは、時間になりましたので、税調を開始いたしたいと思います。暑いところをどうもありがとうございました。
今日は幾つかテーマを用意してございまして、最初に、7月7日に、いわゆる骨太の方針、正確に言いますと「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」というのが閣議決定されましたので、それを含めた最近の歳出・歳入一体改革の動きについて、内閣府の川口参事官からご説明いただく予定であります。
それから、平素、経済界と労働界は、いつも様々なご提言をされておりますが、前回、丹羽さんに経済界のご意見を聞きましたので、今日は木さんのほうから労働界のご意見を伺おうということを考えております。その後で、前回までの審議に引き続き、税制改革の総論部分につきまして、木さんの議論とあわせまして議論を詰めていきたいと、このような段取りで考えております。
それでは、最初、内閣府政策統括官付の川口参事官のほうから、この間出ました歳出・歳入一体改革、その動向を踏まえまして、骨太の方針をご説明いただきたいと思います。今日はお忙しいところをありがとうございます。よろしくお願いします。
〇内閣府 川口参事官
内閣府の川口でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、資料でございますけれども、2つ配付させていただいておりまして、骨太の方針2006の第3章及び、経済財政諮問会議の7月7日、前回、民間議員からまとめて配付された、歳出・歳入一体改革に関連いたしまして、今まで資料として配付されたものを再度取りまとめて提出したもの、その2つを配付させていただいております。
15ページからでございますが、時間の関係で、先生方、ご通読いただければ、通常この場でもご議論されているようなことが数多く並んでおりますので、ポイントを絞って5点ご説明をさせていただきたいと思います。
最初、1点目でございますが、16ページをお開きいただければと思います。(2)の「財政健全化の時間軸と目標」というところでございますが、骨太の方針では、小泉内閣の財政健全化を第I期、その後、第II期、第III期というふうに財政健全化の時間軸をつくりまして、それぞれ目標を立てております。この第II期、2010年代初頭までの目標についてがご説明したい1点目でございます。
ご覧いただきますと、財政健全化の第一歩である基礎的財政収支黒字化を確実に実現するというふうにしておりまして、第I期と同程度の財政健全化努力を継続し、2011年度には国・地方の基礎的財政収支を確実に黒字化するとしております。第I期と同程度の財政健全化努力というのは大体、GDP比で言えば1年間に0.5%、収支を改善していくということでございますが、その前提でいきますと、2006年度に大体GDP比で2.4%というぐらいに基礎的財政収支の赤字となってきておりますので、2011年度には黒字化できるだろうということで、年度を切りまして、2011年度には、国・地方合わせた基礎的財政収支を確実に黒字化するとしております。
それからあわせまして、国、これは一般会計だけではございませんで、SNAベースの中央政府という考え方でございますが、国の基礎的財政収支についても、できる限り均衡を回復させることを目指すと。上は、「確実に黒字化する」ですが、こちらは「目指す」というふうにしております。それから地方については、「黒字基調を維持する」ということでございます。
これが1点目でございます。
次に2点目でございますが、財政健全化第III期の目標でございまして、すぐ下に書いてございます。これは2010年代初頭から2010年代半ばにかけましてということでございますが、ここについて、今まで政府として閣議決定をした目標はございませんでしたが、このたび、ここに政府として明確にコミットした目標ができたということでございます。
その内容でございますが、基礎的財政収支の黒字化を2011年度に達成した後も、国・地方を通じ収支改善努力を継続し、一定の黒字幅を確保するということでございます。その際、安定的な経済成長を維持しつつ、債務残高GDP比の発散を止め、安定的に引き下げる。要するに債務残高GDP比を安定的に引き下げることを確保すると。これは国・地方合わせたベースでございます。それから国についても、同じように、債務残高GDP比を安定的に引き下げる。これは「目指す」ということでちょっと引いた表現になっております。
この一定の黒字幅がどういうものかということは、経済環境にもよりますので、債務残高GDP比を安定的に引き下げられるような一定の黒字幅ということでございますが、参考資料をご覧いただきますと、別の資料の5-3というところをご覧いただきますと、政府としての閣議決定ベースではございませんが、民間議員のほうで提出した資料を一部抜粋した形で資料は配付しております。
[1]のところをご覧いただきますと、「金利が成長率を1%程度上回るといった『堅実な前提』では、名目GDP比2%程度が必要」と。「金利と成長率が概ね等しい場合には、1/2%程度で十分」ということが書いてございます。
ちなみに、2006年度のGDP比、基礎的財政収支は2.4%程度の赤字でございますので、2011年度にちょうどゼロになった後、同じようなペースで2015年ぐらいまでいきますと、概ね2%程度の黒字になるということでございます。
引き続きまして3点目を申し上げたいと思いますが、3点目は第II期目標の達成に向けてどのように達成していくかということでございますが、骨太の方針の18ページをお開きいただきたいと思います。18ページ、(4)というところがございますが、第II期でございますので、2011年度にプライマリー黒字化を確実に達成すると。そのためにどのような方法でいくかということでございます。
まず1つ目のポツに書いてございますのは経済の見通しでございまして、ここについては名目経済成長率3%程度の堅実な前提に基づくということでございます。これはいろいろ議論、もう少し高いものを目指すべきという議論ございましたが、目指すべきものと堅実な前提に置くべきものは少し違うだろうということで、財政健全化の前提としては名目経済成長率3%程度を前提にするということで、プルーデンスの重視という考え方でございます。
2つ目にございますように、この前提の下で、2011年度に国・地方の基礎的財政収支を黒字化するために必要となる対応額は16.5兆円程度と試算されるということでございます。16.5兆円といいますのは、現在の2006年度の基礎的財政収支の赤字額よりも若干大きめの金額になっておりまして、歳出につきまして、先生方ご案内のように、社会保障費は、現在までの制度改革を織り込んで、それが着実に実行されたとしても、将来、自然増があり増加していくということがございますし、人件費も概ねGDP比と同じような伸びが見込まれると。公共投資、その他経費につきましても、GDP比一定という前提で計算をいたしますと、2011年度に大体16.5兆円程度のなお基礎的財政収支の赤字が見込まれるということでございまして、その分を歳出削減または歳入増で埋めないと、2011年度には黒字にならないということでございます。
この3つ目のポツでございますが、ある程度の幅をもって対応するということですが、5年間の改革工程を念頭に置きながら、確実に目標達成に必要な措置を実施していくと。要対応額を満たさない部分については、歳入改革による増収措置で対応するということでございます。
そこで、18ページ、一番下ですが、過去5年間の改革実績も踏まえながら、ゼロベースから聖域なく歳出を見直すということでございまして、19ページ、「各分野における歳出改革の具体的内容」というのがございます。これは「別紙」がございまして、37ページ以降に具体的な歳出改革を分野別に決めております。決め方は、与党でご検討いただいたということがもとになっておりますので、各分野の事情に応じましていろいろな決まり方をしておりますが、37ページ以降も閣議決定でございます。それらを整理いたしましたのが47ページでございまして、47ページに集計がしてあるということでございます。
48ページにまいりますが、「今後5年間の歳出改革の概要」ということでございます。2006年度の歳出ベース、SNAベースで書いておりまして、2011年度には自然体だとどうなるかということがありまして、そこから、自然体から2011年度価格ベースで削減額を計算しているということが削減額というところでございます。そこを見ますと、14.3兆円~11.4兆円程度の削減策がまとめられておりますので、残り、要対応額からこの金額を引きますと大体2兆円~5兆円程度のさらに対応すべき要対応額というのが残るということでございます。
それからまた19ページにお戻りいただきまして、次に4点目でございますが、「歳入改革」ということでございます。歳入改革につきましては、1つ目のポツに、要対応額と歳出削減額の差額は、主に税制改革により対応するということが書いてございまして、2つ目に、中長期的な基本的な、あるいは政策的課題4点、社会保障給付の安定財源の確保、経済の活性化、子育て支援等の充実、地方分権の推進等が書かれてございます。
20ページをお開きいただきますと、4行目でございます。これらの要請にこたえるには、税体系全般にわたる抜本的・一体的な改革が必要であるとした上で、その後書いてございますが、ちょっと関連するところで少しお戻りいただきますと、17ページに、この歳入改革に関係がある原則がありますので、ちょっとご覧いただきますと、原則5というところにございます。「将来世代に負担を先送りしない社会保障制度を確立する」という原則がII期、III期を通じた原則として決められておりまして、18ページをお開きいただきますと、18ページの一番上に、「新たな国民負担は官の肥大化には振り向けず、国民に還元する」ということが書かれております。
また20ページにお戻りいただきまして、こういう原則を受けまして、20ページの、先ほどの「抜本的・一体的な改革が必要となる」というところの後でございますが、「特に、社会保障給付の安定的な財源を確保するために、消費税をその財源としてより明確に位置付けることについては、給付と財源の対応関係の適合性を検討する」ということが書かれております。
その次のポツの最後のほうでございます。「これらを考えれば」ということですが、「今後の税制改革では、単に2011年度単年度における黒字という目標が達成さえすればよいというのではなく、改革後の税制が構造的持続的に上記の中長期的な目標を達成し得る体質を備えなければならない」ということでございます。
中長期的な目標は、先ほどの4点もございますが、国・地方それぞれの債務残高、GDP比を発散させず安定的に引き下げることが必要とされているということも書かれておるわけでございます。ストックをにらんだ、中期をにらんだ対応が必要ということでございます。
それで、1つ飛びまして、「以上を踏まえた税制改革については」ということで、税制改革のスケジュールについては従来の日程を確認しております。
それから大きな、私がご説明したい最後、5点目でございますが、中長期的な選択肢についてでございますが、骨太21ページの[2]というところをご覧いただければと思います。中長期的な選択肢ということでございますが、第II期、2011年度までは、選択肢を決めるまでもなく、歳出について具体的な決定もなされましたし、残る部分についても、基本的には税制改革、歳入増収措置によるということが決まっておりますので、選択肢と議論されるべきは第III期ということになるわけですが、III期につきましては、第III期の目標達成に向け、一定の基礎的財政収支の黒字幅を念頭に置いた歳出・歳入の組み合わせが選択肢となるということが書かれております。
それから3つ目のポツですが、そこで歳出のほうについては、「行政サービス水準に対する国民意識を踏まえ、様々な選択肢が考えられる」と。
その次のポツですが、「歳入面では、歳出面での対応とあわせ目標達成が可能となる収支改善努力を行う」ということでございまして、目標達成ということでは、「債務残高GDP比の発散を止め、安定的に引き下げることが確保される」ということでございます。
「今後の取組」ということで、以上の方針に沿いまして、歳出・歳入一体改革の具体化を推進するということでございます。
なお、この中長期的な選択肢については、諮問会議の中で民間議員から資料が提出されておりますので簡単にご紹介したいと思いますが、別の資料の5-1というところでございます。「中長期の『選択肢』について」とございます。これは先ほどの第II期において14.3兆円の歳出削減がなされた場合についてのケースでございまして、その結果、第II期に残された要対応額が16.5から14.3を引いた分、2兆円強、GDP比で言えば2分の1%程度。これがございますが、その後、第III期どうするかということについての選択肢の一つの有識者議員の出されたペーパーでございます。
この[2]のところをご覧いただきますと、歳出改革の選択肢といたしまして、2006年に歳出総額が21%。これは利払いを除いたベースでございますが、GDP比で21%ということでございます。それを2011年度には14.3%の歳出削減をいたしますと19%程度に下がるということでございまして、これが2010年代半ばには、自然体であれば社会保障の増加があって、191/2%程度に上がりますので、ここから歳出削減を努力をするということでございます。
2011年度と比較して1%ポイント程度下げるということになりますと18%ということですが、ここから自然体との間で幾つかの選択肢があるだろうということでございます。一方、歳入改革の選択肢でございますが、これは2010年代半ばでどの程度のプライマリーバランスを確保するかということによりまして残りが計算されるわけでございまして、[1]歳出・歳入改革の組合わせの例で、GDP比2%程度の黒字のところをご覧いただきますと、歳入改革のところが+2%から+1%という幅を持って示されているということでございます。
行ったり来たりで恐縮でございますが、この資料の(参考)というところにまいりまして、「現行消費税収及び増収措置によって社会保障費はどの程度カバーされるかの割合」ということでございますが、第II期の1/2%と、このGDP比、第III期の歳入改革の合計のイメージで幾つかの場合が示されておりますが、それぞれの場合、どの程度社会保障公費負担をカバーするかと。1/2%の場合は4割強、それから6割弱、7割強ということでございまして、社会保障公費負担の構成比は、ちなみに、その下に要素棒グラフで示されておりますので、大体の目安がわかるということでございます。
これは諮問会議に提出された資料ということではございますが、こうしたものも踏まえながら議論を行いまして、骨太の21ページができたということでご紹介をいたします。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。大変わかりやすくご説明いただきました。新聞では一通り目を通しても、今のようなご説明をいただかないとなかなかわからんというのが実態かと思います。
それでは、若干時間をいただいておりますので、皆さんお聞きになった範囲で、ご質問なりご意見を賜りたいと思います。どなたでも結構でございますから。
どうぞ、川北さん。
〇川北委員
2点ちょっとお聞きしたいのですが、まず16ページです。
〇石会長
どっちの資料ですか。
〇川北委員
骨太です。2011年度に基礎的財政収支を確実に黒字化するとありますね。従来はたしか、本文には2010年代初頭とあって、参考資料で例えば13年度とか12年度とか11年度というふうにやってきたと思うのですが、確認ですが、今回初めてですね。こういう形で11年度と明確に出したのは。
〇内閣府 川口参事官
はい。ご指摘のとおり、1月の閣議決定では2010年代初頭ということを目標にしておりまして、内閣府の参考試算において2011年度も可能であることを示したまでですが、今回の骨太によって初めて、2011年度ということを目標にいたしました。
〇川北委員
わかりました。それとあともう一点ですが、原則1から原則7までありますよね。これはたしか4月に中間取りまとめが出たときも、やはり原則1から7まであったと思うのですが、7で、「新たな国民負担は官の肥大化には振り向けず、国民に還元する」と。たしかこういう趣旨のことが書いてあったように記憶しているのですけれども、その説明の部分で、中間取りまとめではたしか別のことが書いてあったと思うのですよね。もう少し具体的に。例えば勤労世代には負担を求めずとか、国際競争力云々とか、あと経済活動に中立的とか、わりと具体的なことが書いてあったと思うのですが、今回読むとあまりそうではないと思うのですが、このように表現が変わったのはなぜですか。
〇内閣府 川口参事官
基本としては、4月7日に経済財政諮問会議で中間取りまとめをしまして7本の原則を立てたのはご指摘のとおりでございますが、原則の大きな一行のタイトルのところを基本的に残しまして、その下のところは、その後の議論を踏まえていろいろ調整して変わっているということでございます。ご指摘がありました、経済の活性化を重視した税制改革を推進するという部分がございましたけれども、そこの部分は基本的には、先ほどご紹介しました19ページの歳入改革のほうでまとめて書くということだったものですから、原則のほうは少し短めにまとめております。
〇石会長
よろしゅうございますか。ほかにどうでしょうか。
どうぞ、中里さん。
〇中里委員
税収見積もりのことですけれども、こういうことをここで申し上げるべきかどうかちょっとわからないのですが、30年ぐらい前から、日本の税収見積もりは、再来年まで見るとかいうことで非常に難しくなっているということで、5月31日に何兆円も税収が入るというようなシステムになっていると。あれは技術的、かなり本質的なのかも、私、よくわからないのですが、学生から質問受けてどう答えていいかわからなかったのですが、うまく変えるとか、そういうことはもう難しいのでしょうか。
〇石会長
あれはたしか70年代に、2カ月、法人税を特にやったという話ですね。これはちょっと川口さんに聞いてもあれでしょうけれども、そういうのは税調でかなり問題があるから、ちょっと永長さん、何か説明あれば。
〇永長総務課長
今ご指摘のとおり、昭和50年代半ばに、3月期決算法人、これは3月期決算、すでに発生しておると。その納税が2カ月おくれになるということで、発生主義の考え方に即してということで税収の所属区分を変えたわけでございます。もちろん、実現しているのは新年度になってからですから、新年度の税収だという説明も両方可能でございます。それぞれに考え方があるわけですが、変更するとなると、ワンショットの年度でとんでもない税収減が生じるということになりまして、それではそれを赤字公債で賄うのかと、このような話にもなると。ものの考え方それぞれ所得区分についてはあって、どちらをとるのかというのは政策判断でございます。変えるとなると、摩擦的ではありますが、1カ年度においてものすごい赤字になると、こういうことでございます。
〇石会長
税調でもかねてそれは問題になったことがありますよね。今の、猛烈に赤字になるというところで脅されてだめになってしまうのですよ、普通は。
〇中里委員
増税のときにはいいのではないですか。
〇石会長
まあそんな感じしますけどね。議論続けましょう。ほかにどうでしょうか。よろしゅうございますか。
私から聞くのは何ですが、これはまとめられて政治的に非常にインパクトが強いと思うし、今後の大きな指針になると思いますが、これは閣議決定をしたわけですね。
〇内閣府 川口参事官
はい。7月7日に、経済財政諮問会議で諮問答申の後、直後に閣議決定しております。
〇石会長
閣議決定というのはどれだけ今後の縛り、それは閣議決定ですから最高なのでしょうが、大枠では縛られても、個々の部分についてこれからどうやって担保して、個々の歳出カット等々やっていくかということについて、事務局でもいろいろお話もあったと思いますけれども、その辺何かご報告いただくことがあればちょっと教えてください。
〇内閣府 川口参事官
はい。歳出改革は37ページ以降ということでございますが、これはこういう個々の決定を前提にして、各年度、予算に具体化していくということになりますが、地方についてはおそらく、国としてできることは、地方財政計画を作成する際にこういう前提を、これを反映していくということだと思いますし、その他、国の予算においては、当然、ここの37ページ以降にあることを議論していくということだと思います。
例えば社会保障につきましては、雇用保険、生活保護については2007年度に早速議論を行うということになっておりますので、この辺は経済財政諮問会議でも「予算の全体像」ということを7月7日議論いたしましたが、その中で雇用保険、生活保護について早速19年度予算で取り組むべしという意見が提出されております。
それから例えば公共事業でございますが、41ページ以降でございますが、公共事業費は、ご案内のように、毎年度3%減というのをシーリングで続けてきておるわけですが、基本的には、この3%減というのを基本的に継続するということが書かれておりますので、これを毎年度の予算の中で確認していくということかと思います。
ただ、この下のほうに若干留保ございまして、これからGDPが毎年3%程度で上がっていくと、デフレからも脱却するということでございますので、GDPとの関係といっても、同じマイナス3%でも、より名目3%するのはなかなか大変になるということもございますので、そうした経済成長との関係も勘案した対応も視野に入れる必要があるということで若干幅のある書き方をしておりまして、48ページをご覧いただきますと、公共投資のところなどは削減額が5.6兆円程度から3.9兆円程度となっております。これは国・地方ともマイナス1%ということも視野に入っているわけでございますが、こういう少ないほうの金額を積み重ねていくと11.4兆円になると。ただ、最低でも11.4兆円の歳出削減を行うと。可能であれば14.3兆円にいくということで、この範囲で、毎年の予算編成の中で実現していくということで閣議決定していると理解しております。
〇石会長
ありがとうございました。ほかによろしゅうございますか。
それでは、川口参事官には大変お忙しいところ来ていただきましてありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
(内閣府・川口参事官退室)
〇石会長
それでは、次の議題に移りたいと思います。前回、経済界を代表して丹羽さんからご意見をいただきましたが、今日は、労働界を代表いたしまして木さんのほうから、働く者の立場から見た今後の税制改革のあり方ということにつきましてお話を伺うことになっております。どうもお忙しいところをありがとうございました。よろしくお願いします。
〇木委員
意見を発表させていただく機会をいただきまして、本当にありがとうございます。こういう機会をいただきましていろいろ意見を申し上げたいと思いますが、どうぞ、言わせてやったからそれでいいだろうということではなくて、よろしくご配慮を賜りたいと思います。また、途中で若干エモーショナルな発言等ありましたら、どうぞこの場に免じてお許しを賜りたいと思います。
お手元にレジュメのようなものをお届けいたしておりますが、それの後段の部分に若干の資料をつけておりますので、ご参照いただきながらお聞きを賜りたいと思います。
最初にはもう言わずもがなの話かと存じますが、税制改革を通じてどのような社会を目指すのかということで、3点書かせていただいております。「雇用と老後の不安を取り除き、くらしの安心を保障できる社会」。私ども労働者は生活等を運動領域としている者として、今、労働者が何を一番不安に思っているかというと、やはり、突き詰めると雇用と老後というところにいってしまいます。そういう意味で、雇用は大分改善してきたというご認識もおありになるようですが、例えば有効求人倍率が1を超えたと言いますが、いわゆるフルタイマー、正社員型の雇用についての有効求人倍率はまだ0.6台でございまして、現在の改善はパートだとか派遣、契約社員等、いわゆる非典型と言われる人たちの雇用の数が増えたと。ちょっとシニカルな言い方をさせていただければ、不安定雇用といいますか、フリーターの再生産が続いておるという、そんなとらえ方もできるのではないかと思います。
それからもう一つは、働くことについてのご認識、あるいは働くことが持っておる価値といったものをどのように考えていくのか。日本の社会は全就業者の中の86%ほどがどこかで働かせていただいて賃金を得て生活しておるという、まさに世界に冠たる雇用社会でございます。その冠たる雇用社会である日本の中で、働くことの意義、別の言葉で言えば勤労観といった面もあろうかと思いますが、そういったものが若干、認識という意味でぶれ始めている、そんな懸念が出てきているのではないかという心配をいたしております。
それから1.25という数字が最近マスコミの皆さんの間で行き交っておりますが、少子・高齢化の問題、特に子育て支援等の議論がいろいろございますが、安心して子供を産み育て、そしてその子供たちがすこやかに、伸びやかに育っていける社会、こんな社会にしていくために税がどんな役割を果たすのかという、若干抽象的な議論になるかもしれませんが、そんな視点が大事かなと思っておるところでございます。
次に、そのような税制であってほしいなということでございますが、現在の税制についてどんな認識をしているかということについて、5点にわたって申し上げてみたいと思います。
格差の拡大だとか二極化だというような議論がいろいろございますが、これについては、格差は別に広がってないのだとか、格差が開いてなぜ悪いのだとか、いろんなご議論も出ておりますけれども、そういった議論を今日はする余裕ありませんので、簡単に、格差の拡大にかかわることと税の関係について申し上げてみたいと思います。
先ほど来申し上げておりますように、この10年といいますか、15年といいますか、いわゆる不安定雇用と呼びならわされておりましたパートタイマー、あるいは派遣労働者、それから有期契約の契約社員等が非常に増えてきておりまして、同時に、このことは1人当たりの所得の大きな下方移動を伴っております。一方で、高額所得者、富裕層の優遇税制がずっとあるという中で、税のとらえ方という意味でも、格差の拡大が進んでいるのだろうということは申し上げていいと思っております。
それから税制が本来持つべき所得再配分機能、これは皆さん方もすでにいろんなところでご指摘になっておられますが、その所得再配分機能がやはり大分衰えてきている。これも所得税の最高税率の引下げ、法人税率を下げてこられた、同じく相続税率も引き下げてこられたということにかかわっているのかもしれません。
参考資料のほうの1と2をご参照いただきたいと思います。まず参考資料1でございますが、今申し上げました雇用の関係で、「役員を除く雇用者数と非典型労働者数の推移」ということで、このグラフを見ていただければ極めて顕著。ただ、これは右と左の軸の数字が、左のほうは4,000万、右のほうは1,600万。本当はずらしてやりますと、こんな交差するというところではもちろんないわけでございますが、いわゆる正規の職員、従業員はこのように減ってきておりますし、一方で非正規の、非正規というのはパート、アルバイト、あるいは派遣関係、契約社員等々でございますが、これはもう1,600万人に近いところまでいっているという状況がございますことはつとにご高承のとおりだと思います。
次の参考資料2でございますが、そういう状況を反映いたしまして、1997年と2004年、この両年度をちょっと比較して、どういった所得階層がどのように増えたり減ったりしているかというものを見た図でございます。国税庁のほうでお出しになっている民間給与の実態調査よりつくられた表でございます。
所得は300万円以下のところ、特に200万円以下のところが急増しております。この辺の人たちの多くはパートタイマー、あるいは派遣労働者ということでございまして、数が多いかどうか、とらえ方はいろいろありますが、2,500万円か、あるいは2,500万円超のところが、右側のほうで少し小さなマルにしてありますが、こういったところが増えておりますということでございます。
それから3点目には、税制にかかわりますいわゆる不公平、とりわけ資産所得の格差、これは捕捉も含めましてですね。それから当然、所得のほうの捕捉格差、それから消費税にかかわります益税の問題など、いろいろかねてから指摘されておりますが、この制度をめぐりますいろんな不公平の問題がございます。
参考資料3を見ていただきたいと思います。これは本税調でお出しいただいた資料でございます。「個人所得課税、社会保険料、消費税を含めた実効負担率」というこのグラフでございますが、右側の下のほうに小さく給与収入という、虫めがねで見ていただくような文字が入っておりますが、所得の多いところほど利子・配当所得も持っておられると。勤労所得収入だけでこういうグラフをつくるのはいかがかなと。この中に例えば利子・配当所得等も入れてこういう表を所得階層別につくっていただくと、このカーブはどういうことになるのか。多分、推計でございますが、右肩上がりの最後のほうは負担率の意味では寝てくるのではないかなと、下がってくるのではないかなということが容易に推計されるわけだろうと思います。
容易に推計されるだけではどうかと思いまして、事務局の方にそういう要素も入れてこの表をもう一遍つくり直してくださいというお願いを申し上げましたが、データが十分にございませんというご反応、ご返事だったと思いますが、おつくりになっていただけませんでした。
ということは、その辺の、特に利子・配当所得、資産所得の面での捕捉が十分に行い得てない。あるいは行えるとしても、ある一定の累計の中でのデータしかおとりになれない。そういう意味では、資産所得捕捉等の問題は非常に深刻ではないかなと思っております。
それから先ほどの骨太の方針等のご説明の中にも出ておりましたが、社会保障財源の問題。これにつきましては、いろいろ制度の変更論議が行われるたびに制度不信を増幅し、その結果としてかどうかは、いろいろ因果関係、究明してみなければなりませんが、国民年金、あるいは国民健康保険の世界等で空洞化の問題がどんどん深刻になっております。そんなことも織り交ぜながら、負担増・給付削減というこの悪循環の中で、多くの国民、労働者は、自分たちの将来の年金、あるいは社会保障全般につきまして不安を高めておると。そういったことの影響が、先ほど申し上げました雇用と老後という、特に老後のほうの不安感を高めているのに非常にかかわっているのではないかなと。5番目のことはもう言わずもがなのことだと思います。
そういう中でこれから税制の問題をいろいろ議論していくわけですが、私どもとしては、3ページに書かせていただきましたような5点にわたる視点を大事にしていただきたいと思っております。「公平・中立・簡素」、中でも「公平」の視点が大切かなと。言い換えますと、「乏しからざるを憂えず、等しからざるを憂う」という、そんな面もある日本の社会かと思っております。
それから、やはり「勤労に重く、資産に軽い」、こういう税制ではないかなという認識に立ち、この辺の感覚を少し修正していただく必要があるのかなと。あるいは所得・資産の再配分機能の再構築をお願いしたいと思います。
それから納税者の権利という観念ももう少し強めた議論をお願いしたい。
それから社会保障財源は消費税に特化したかのような議論がございますが、やはり税制全体で検討し、税と保険料の役割分担等も明らかにしながら考えていくべきではないかと。
地方と中央の関係でいろんな議論も、これは本税調、あるいは財政審も含めてございましたが、地方の主体性を高めるという意味でも、地方財政基盤の強化を意識しておく必要があるのかなと。
さすれば、そういう中で具体的にどのように個別税目等を考えていくのかというので、4ページ以降、所得税から触れさせていただいております。
所得税、「勤労に重く、資産に軽い税制」の見直しということを申し上げましたが、1つには最高税率の引上げ。今は地方税と合わせて、三位一体の問題の調整の後に、両方合わせて50%ということかと思いますが、これを恒久的減税を行っていただいた前に戻していただきたいと思っております。具体的には、戻してくださいということは60%になろうかと思います。
「所得税最高税率・法人税率の推移」という表を参考資料5につけておきましたが、これはもう皆さん十分ご承知の数字でございます。それから金融所得に関します優遇の見直し、それから金融所得につきましても、累進的な課税をお考えいただくこともあっていいのではないかなと。もちろん中期的には納番制度等を整備していただきながら総合課税化を行っていただくということ。
それから給与所得控除、昨年の6月に出されました本税調の所得税等に関しますいろんなご議論の中間報告の内容を拝見して、全国の労働者は唖然としたわけでございます。ここまで勤労所得者に所得税等で迫ってくるのかという意味で、非常に大きな拒絶感を感じた労働者が多かったと思います。
それから各種控除はもちろん見直しを絶対やったらいかんということを申し上げるつもりはありませんが、そういう意味では、税負担のあり方については中立であってほしい。あるいは公平性の確保を原則とすべきだと。当たり前のことかと思っております。
具体的なものとしては、所得控除の原則税額控除化。子育て支援につきましては、税制よりやはり手当ということになるのかなと。義務教育前の子供さんに対する扶養手当は、児童手当の拡充に振り替えていただいたらどうかと。それから夫婦の就労選択に中立的な税制であってほしいと。
それから給与所得者につきましては、申告納税につきましての選択制をぜひ入れていただきたいということもお願いしておきたいと思います。課税最低限についてのいろいろなご議論ありますが、参考資料4、10ページになりますが、ご覧いただければと思います。これはもう皆さんご承知のことでございますが、かつていろいろなご議論がございましたけれども、今申し上げました控除の関係等は、配偶者控除を廃止して特定扶養控除を縮小した場合は、そこに220万という数字が入っておりますが、こんなに下げるのですかということでございます。
その次に消費税の関係でございますが、これにつきましてもいろんなご議論がございます。これも釈迦に説法のお話でございますが、消費税の益税、逆進性の問題、そういった問題をいろいろクリアしていただくために制度を改善していただくとすれば、インボイス方式を入れていただくこと不可避かなと。あるいは軽減税率の導入の問題、それから目的税論がいろいろございますが、私どもは目的税論を頭から否定するものではもちろんございません。いろんなご検討をしていただく必要があると思いますが、例えば消費税的な税と年金に関します必要額を目的税的に観念するということはあってもいいのではないかと、そんなふうに思っている部分もございます。
相続税につきましても、先ほど来申し上げましたが、資産再配分機能の強化、具体的に言えば最高税率の引上げ等をご検討いただくべきではないかと。例の事業承継の問題等々のかかわり合いの調整、かつて井上さんもいろいろご発言になっておられましたが、その辺、何かいいお知恵があるのかないのかということかなと思っております。
法人税負担はこれ以上はもう下げる必要なしと。私ども、法人税払っている財源は、そこで働いている者もかかわって稼いだ中から払っているわけでございますという、そういう側面がもちろんありますけれども、法人税負担はもうこれ以上引き下げる必要はないのではないかなと。租税特別措置等で時代の使命を終えたものはもう見直していけばいいだろうと思いますし、それから新たな社団・財団等に関します税制につきましては、公益活動を促進するという観点からアプローチをすべきものかなと。あるいはNPO、公益活動に対する寄附金制度につきましては、拡充をしていったらいいのではないかなと。
それから地方税につきましては、これにつきましても法人の税負担を減らせというご議論がありますが、やはりいろんなインフラ等含めまして、企業が地域の中で存在し事業活動をやっておるという意味での応分の負担は当然のことではないかなと思います。寄附金制度の問題も議論ございます。
それから納税環境ということでは、納税者番号制度をできるだけ早くやはり導入していただくべきかと。それから納税執行体制につきましても、一層の強化、効率化を図っていただけたらと思います。
大変はしょった説明になったと思いますが、皆さん方、意味はもうすでにお話をお聞きいただいただけでご理解いただけるものと思います。どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。ありがとうございました。
〇石会長
どうもありがとうございました。大変率直なご意見を賜ったと思います。
今のご意見に対して即質疑応答という方法もございますが、前回の丹羽さんのときも、これを踏まえて次の総論部分、あのときはたしか法人課税、国際課税が問題になってましたので、丹羽さんのテーマと合致しておりましたので、事務局から整理いただきました論点整理を含めて議論いたしました。今日も、木さんのお話は、今日我々議論いたします総論部分とかなり一致しておりますので、その中で木さんに対していろいろご質問になりたい方はご発言いただくという形で、少し先に進ませていただきます。
もうすでにお手元のほうに郵送されていたと思いますが、これまでの議論を整理いたしました論点整理メモの総論部分が配付されております。これは、前回もご説明いたしましたように、ずうっとこれまでやってきました3年に及ぶ我々の活動を踏まえまして、税調としてどういう基本的スタンスをとるかという点で事務局にまとめてもらったものであります。
2枚紙でございまして、すでにお読みいただいていると思いますが、そうはいっても、もう一回記憶を新たにするという意味で、永長さんのほうからごく簡単に、まとめた視点なりをご説明いただきたいと思います。
永長さん、ちょっと簡単にお願いします。
〇永長総務課長
お手元の「総50-4」の資料でございます。最初の[基本的考え方]の「わが国税制を取り巻く状況(経済社会の構造変化)」、これは例の実像把握の作業でまとめていただいたものの骨子でございます。1つ目が「ポストバブルから安定成長の時代へ」ということで、特に3つ目のポツで、財政健全化の道筋を国民に明示し、予測可能性の高い財政政策の実行が必要である。
2つ目が、「少子・高齢化の進展」。これに関しましても、3つ目で申し上げますと、持続可能な社会保障制度のため、制度の効率化と安定財源の確保が要請されているということでございます。
3つ目のマルは、「家族のかたち、働き方、価値観・ライフスタイルの多様化」ということでございます。これは所得税で言うと人的控除のご議論にも関連するところでございます。
4つ目が、「分配に関する意識の高まり」。先ほど木委員からもお話しございました。貯蓄を持っていない世帯が増加するとか、若年層におけるニート、フリーターというのが増加しておる。格差の問題いろいろございますが、要するに再チャレンジができる社会への要請と、こういったこともご指摘いただいております。
5つ目のマルが、「社会や『公共』に対する意識の変化」ということで、家族、それから「カイシャ」が果たしてきたケア機能が低下してきている。国というか政府が果たすべきセーフティネット機能の役割が増大している。「政府が担う公共」とは違って、「民間が担う公共」という役割も出てきたではないかと、こういうご指摘でございました。
その次が地方分権でございます。三位一体改革等により、分権が進展しているということでございます。
次が、「グローバル化の進行」。それから次のページには、「環境負荷の増大・多様化」について、幾つかの論点をここで整理してございます。
その次に「わが国税制に課せられた課題」というふうに整理しております。今申し上げた経済社会の構造変化に対応するということになるわけですが、それを税制に引き移してみた場合、どういう課題があろうかということでございます。
1つ目が、「経済社会の構造変化に対応した公平・公正な税制の構築」。
2つ目が、「安心」でございます。先ほども出てまいりましたが、持続可能な社会保障制度、それから財政の健全化の実現により、将来に対する国民の不安を払拭する必要があろうということ。
3つ目のマルが、「活力」でございます。自由な選択を妨げない、経済活動に中立的な税制の構築。それから安定的な歳入構造の構築。これがいわゆる財政に対する信認確保を通じ経済の活力強化にも貢献するであろうということ。
その次のマルが、納税者の信頼確保ということで、「簡素でわかりやすい」ということですが、平等に負担を分かち合う制度への要請があるのではないか。それからまじめな納税者のための納税環境整備。また、円滑な執行の可能性が税制に対する信頼の確保のためには重要であるということでございます。
最後のマルが、「分権型社会にふさわしい税制の構築」ということで、地方の自主性、自立性を高め、活力と個性のある地域社会を実現していくためには、地方税の充実確保が必要である。また、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系の構築が重要と、こういったご指摘でございます。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
残った時間で、木さんに対するご質問と、今説明を受けました総論部分をまとめたいと思います。おそらくその部分は我々税調の基本的な姿勢、基本的な理念等々をあらわす一番重要なポイントでもあろうかと思っています。特に中期答申の中で最初のほうに来るわけでございますから、これを我々の言いたいことを一番あらわすところという形で酌み取っていただきまして、いろいろご議論いただきたいと思います。もちろん個別のパーツも非常に重要でありますが、その部分がおそらく今回の答申の一つのキーになるのではないかと考えております。
それでは、まだ今日は時間がございますから。といっても、皆さんの発言が重なってくるとだんだん発言の機会がなくなってきますから、どうぞ早めにご発言ください。どなたでも結構です。
川北さん。
〇川北委員
木さんに1点お聞きしたいのですが、税制についての本題からややずれるかもしれませんが、このレジュメにたまたま出てきたものですからお聞きしたいと思うのですが、格差の拡大という問題です。この格差の拡大については何か政府関係者から、それは誤解であると言ったり、そういう議論もありますが、いろんな統計から見る限りは、格差が拡大しているのはどうやら事実らしいとは私は思っているのですけれども、それと、いわゆる小泉改革と称するものと関連性があるのかないのか、これについてはどういうふうに見ていらっしゃるわけですか。これは木さん個人ないしは連合としての考え、どちらでも結構ですが。
〇木委員
ご承知のように、バブルがはじけました後、失われた十年とか十何年とかいう話がいろいろあります中で、今日の格差社会と言われるのに一番大きな影響を与えてきたのは、やはり私は企業のビヘイビアといいますか、企業が生き残りだ、企業経営構造改革だということで、特に人にかかわりまして、正社員、フルタイマーをパートタイマーにどんどん置きかえていった、あるいは労働条件を大分引き下げた。これは賃金だけではなくて時間も含めてですね。そういう中で急激に労働分配率を下げた。そういう意味では平均所得が下がっていくのは当たり前で、それに加えて、特にパート、派遣等に非常にスピード速く置きかえたということが所得の二極化に非常に大きくかかわったと。
そういう意味では、日本経済について皆さんにいつも申し上げておりますのは、やはり産業、企業をおかしくしたら社会が荒れるということだと。そういう意味での経営責任たるものは、もちろん背に腹はかえられないという状況があることは承知してますが、その辺が一番大きいのかなと。
ただ、そういう状況を踏まえて、格差がここまで拡大するのに政策的な対応、財政的な部分も含めまして、小泉内閣、あるいはそれ以前の内閣がとってきた施策が的確だったかという意味で申し上げれば、いろいろ申し上げたい面もあるということかなと思います。
また家計の可処分所得という面から見ますれば、99年に定率減税等やっていただきましたが、その後いろんな、年金の保険料、税制の一部を直して、それに余りある部分を国民負担増という格好で持っていかれましたし、一方で給付はどんどん下げたと。どんどんかどうか、その程度はいろんな評価があろうかと思いますが。
そういう中で、もう一つは、かかわって、ゼロ金利政策というのでしょうか、そういう累計、日銀の総裁の国会での答弁によりましても、百何十兆円という数字が、広い意味でいう家計、民間部分から抜かれていったというようなこともかかわって、家計の貯蓄率はものすごく落ちておりますし、それからちょっときわものの話だと言って怒られるかもしれませんが、足立区の就学児童を持つ家計に対する就学援助というのでしょうか、学費の援助なり給食代、修学旅行の補助等の世帯がもう5割近いというような実態。あるいは、これは制度の問題があるとか言っていろいろなご議論もあるようですが、特に都会地では生活保護世帯の比率が非常に高まっている。
いろんなものがありまして、頑張っている人を妬む風潮だなんていうご答弁等を聞いて、それをテレビで見、あるいは新聞で読んだ連中はもうげんなりしてます。そういうご評価に対してですね。そんなことで、格差拡大は誤解だなんていうご認識がもしベースになっていて、そういうことを強く確信犯のように思っておられるとしたら、聖徳太子さんのことを評した言葉ではないですが、「民のかまどをご存じか」というようなことを申し上げたい。ここは演説の場ではありませんので、これぐらいにさせていただきます。
〇田近委員
総論の「これまでの審議等を踏まえた主な論点」ですけれども、今回の中期答申をどういうスタンスで書くのかという一番重要なところだと私は思うのですけれども、端的にいって、このまとめ方が何か弱いと思うのは、今回、中期答申を書く最大の目的というのは、90年代通じて財政拡張してきて、そのツケが公債の負担になってあらわれたということで、やはり最初から書くべきことは、財政再建のために果たす税制の役割は何なのだと。やはりそれは税収を確保することなのだと。そして、2枚目の「経済に活力をもたらす税制の構築」というところで、そこで安定的な歳入構造の構築は内外の市場の信認確保につながるということで、最初にやはり、今回の中期答申は、その役割は何なのかというのはもっと明確に書くべきだ。それは税収確保だと。そしてそれが日本の信認を高めることなのだと。
それから、この際、結局ほうっておけば消費税云々という話になってしまうわけで、その前に、構造的に正すべき税制の問題は一体何なのだということだと思います。このメモで足りないと思うのは、その意味では特定財源の話が明示的に書いてない。そういうところできちんと税をとっていくべきだと。
それから、木さんのおっしゃるとおり、格差拡大に対してもどうするかということですけれども、ちょっと長めになるといけないのでこれで終わりますけれども、木さんのお話は、あるところまではわかるのですけれども、出された問題に何か答えが、問題はわかるのですけれども、問題と答えがずれたという印象を持つのですけれども、木さんのおっしゃったのは、非正規の労働者が多くなって、100万、200万、300万弱ぐらいの層が増えたと。その人たちに給与所得控除を増やしてあげたって何の役にも立たないわけですよね。そもそも控除はいっぱいあるわけで、そのいっぱいある控除をさらに増やしたって負担が減るわけではない。そもそも税金も払ってないわけですよね。
むしろ社会保障、社会保険料をどうするかという問題があるし、だから、もはや所得控除を大きくして負担を減らすという話はもうやめると。きちんと税をとって、とった税から再配分するというふうな、それが私の言葉で言えばひずみの是正ですけれども、それがあるだろうということで、今日はこの紙全体を眺めてどうアイデアをつくっていくかですから、この紙がいい悪いではないですけれども、私としてはやはり、中期答申の今度のねらいは何なのか。それは税収確保だ。それが日本の信認を高めることだと。そして、そのときに正すべき税制のひずみとは一体何なのかというのをもっとこの際メリハリをつけて書くべきだと。というのは、議論が消費税に集約される前に、やはり税調としての見識を示すべきだとは思います。
〇石会長
貴重なご意見だと思います。木さん、問題提起と、もう少し詳しく聞きたいという話がございましたが、何かございますか。
〇木委員
例えば所得税につきましては、あるいは住民税も含めての議論かもしれませんが、お配りした資料の参考資料4をさっき見ていただきましたけれども、これは325を220のようにアプローチされる、そういうアプローチは私はもうというか、もちろん、今パートやら派遣で働いている200万以下の人たちがそういう恩恵を受ける。それは田近さんおっしゃるとおりでございます。けれども、現にこの辺の影響を受ける勤労者、サラリーマンはいっぱいおるわけですから、その人はどうなってもいいなんていう論議は簡単にうんと言うわけにはいけないということです。
〇石会長
ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
どうぞ、尾崎さん。
〇尾崎委員
今の税収の確保のお話ですけれども、私の間違いかもしれませんけれども、「国民に安心を与える税制の構築」というのがありまして、「将来に対する国民の不安を払拭する必要」というのが書いてありますね。これはおそらく、役所の言葉では増税ということではないかと、税収確保ということではないかという気がするのですけれども、そういう意味ではないのですか。
〇石会長
いや、そうでしょう。
〇尾崎委員
だけど、はっきり書いたっていいですよね。
〇石会長
それはそうでしょうね。なんかよろいの下に衣が見えてもいかんですから、おっしゃるとおりでしょうね。
〇尾崎委員
それからもう一ついいですか。一番最後の「分権型社会にふさわしい税制の構築」ですが、先ほど骨太の方針を伺いながら、ぱらぱらとめくって見ておりましたら、39ページの上のほうの四角は地方の話ですけれども、39ページの上の真ん中辺からちょっと下のところに交付税の話がありまして、「算定の簡素化を図る」と書いてあるのですね。これは、私、どういう意味なのか全然わからないのですけれども、もし何らかの簡素化が図られるのであれば、実はその地方消費税というのが国の税を課税標準として、それに一定の税率でかけるというところは地方交付税と同じわけですね。どこが違うのかというと、配分の方法が違うわけですね。もし地方交付税が算定の簡素化を図られるようであれば、一つの消費税に地方消費税とそれから交付税と両方がかかっているというような状況を避けて、地方消費税をむしろ交付税の中に取り込んでしまったらどうかという気がするのですね。そうすると非常に簡明になると思うわけです。
今の地方交付税というのは、確かに算定の仕方は違いますから、そこに意味があると思いますけれども、今度どういう算定の仕方になるかによるのですが、もし本当に簡単な形でつくられるのであれば、むしろ一緒にしてしまって、そして全体として配分してやれば、困っている地方団体に交付税が行き届くと、そういう原資ができるということではないかと思うのです。別段、交付税カットしろと言っているわけではないですよ、全然。そういう形でむしろ交付税が増える話になるのですけれども、税制としては、地方交付税と、それから地方消費税が同じものにかかっているというのはやはり変ですから、この際整理ができたらしたほうがよろしいのではないかと思いました。
〇石会長
おっしゃる意味は、消費税を、今、交付税対象のほうに入れてますよね。それと地方消費税をまた入れてますよね。一緒にしてしまえということですね。
〇尾崎委員
同じ国の消費税に対して25%と29%でかかっているわけですね。両方一緒にしてかけてしまえば、そして地方財源として、交付税として適切に配分されればよろしいのではないかという意味です。
〇石会長
これは算定の簡素化というのを実現した後の話になりますね。
〇尾崎委員
いいえいいえ、それが何だかわからないものですから何とも言えないのですけどね。
〇石会長
これは多分先のプランだと思うけれども、人口と面積で分けるといったことを受けているのではないかと思いますが、わかりません。そういう意味でいいね、岡崎さん。
〇岡崎審議官
我々の部分と若干ずれているのですけれども、この文脈、国税について云々かんぬんで算定の簡素化を図るというのはおそらく、交付税のうちの需要の計算、基準財政需要の計算がなかなか複雑で細かくてわかりづらいというところに着目して、今、会長が人口と面積と言われましたけれども、そのとおりかどうか別にして、もう少しわかりやすい算定になるように、簡素なやり方をやろうという文脈ではないかと思っております。地方税と地方交付税の合わせた簡素化という文脈ではないのではないかと理解しています。
〇石会長
いかがでしょうか。どうぞ、岩さん。
〇岩委員
地方消費税にちょっと関するというか、分権型の一番最後のところですね。ポツ1、ポツ2を合わせてみると、ポツ1のほうで地方税の充実確保が必要と。ポツ2で、税源の偏在性が少なく、税収の安定性云々というようなことが書かれてますが、これを読めば、やはり地方消費税の充実なのかなというふうに読めてしまうわけですよね。そうすると、国税である消費税のかなりの増税というのは不可避だろうと大方は見てますが、さらにこの地方消費税がそれに乗っかってくると、かなりの大幅になるのではないのかなと。
つまり、地方と国の財政を見た場合に、すでに地方はPB、黒になっているわけですね。問題は国の問題ですよね。やはり国債残高のGDP引下げまで視野に入れていくと、どうやったって国税の消費税の問題が第一義的に来る。しかも、つまり、国債残高というのが民の活動、民間の成長、これの阻害要因にもなってくるわけですね。長期金利云々でですね。とすると、やはりあまり地方消費税云々を強く打ち出すのはいかがなものかと私は思いますけれども。
〇石会長
わかりました。実際の個別の項目のところでまた議論いたましょう。
どうぞ、田近さん。
〇田近委員
今の岩さんの発言とも関係するのですけれども、さっきの僕の話ともあれですけれども、今度の中期答申の送りたいメッセージとしてはやはり、税収をどう確保するか。尾崎さんおっしゃるように、それは結果的には増税になるとしても、消費税に訴える前に、どう税収を確保するか。それは、国においては、やはり個人所得税ならば課税ベースを見直す。これは一部税調でも申し上げたのですけれども、地方も、僕は、非常に千載一隅のチャンスというか、機会だと思うのは、地方にいく所得税が移譲されて、10%でフラットでかけられると。そのときに地方の課税ベースを広げればぐっととれるはずだと思うのですよね。
だから、国・地方合わせて所得税の税収確保の力をどうやって高めるかと。国は国で努力すべきだし、地方も地方で、この10%にフラットになったというのはやはり日本の長い税制の歴史でも画期的なことだったと思うので、そういう課税自主権、あるいは、それぞれ国・地方が税を最大限に生かすというふうなこともあってもいいのではないかと思います。
〇石会長
ありがとうございます。
どうぞ、神野さん。
〇神野委員
私は、このまとめ方がわりといいのではないかと思います。1つは、「わが国税制に課せられた課題」については、いわゆる四大課税原則を言っているという理解で多分いいかと思うのですね。まず公平の原則が第1に挙げられ、第2番目は財政政策上の原則というふうに多分考えていいのではないかと思いますので、つまり、必要な公共サービスを調達するという意味ですね。財源を調達する。それから3番目で、これは国民経済上の原則が挙げられ、私はいつも税制で簡素というのは税務行政上に限るべきだと思ってますので、そうでない限りは精緻にしておくということが重要だと思ってますから、ここでも、4番目は税務行政上の原則を言っていただく。これは四大原則を一応入れながら、さらに税源配分と言いましょうか、分権型社会にふさわしいどういう税制を構築していくのかということ、つまり、抜本的な税制改革ということを最後につけ加えて4つでまとめられているということでいいのではないかと思います。
独自課税でいくか、今の問題は、私の言葉を使えば、まず国税と地方税との税源利用可能性をきちっと分けてから、その後で初めて地方独自の努力をどこまでやっていくのかという話だと思いますので、問題は、5番目で言っているのは、税源利用可能性をどういうふうに、つまり、税源配分をどうやって見直していくのかという問題だと思いますので、後で議論になるのかもしれませんが、私の場合には、まずそこをきちっとやるということでございます。
網羅的に一応書いてあるので、論点はかなりまとめられ、かつ、公平の原則など先に持ってきているというのは、メリハリも一応つけて、この4つの原則というのは相互に対立する可能性があるのですが、一応の優先度を入れているということで考えれば、よいまとめ方なのではないかと思います。
〇石会長
神野さん、地方消費税、例の国から地方の配分等々のチャネルに、今議論が2つ3つ出ましたけれども、どうお考えですか。
〇神野委員
配分の仕方は、付加価値税とか所得税とかいうのは国と地方の役割分担にあわせて分けないと、今の社会というか、政府がある程度、今まで共同体や家族や何かでやっていたことを吸収して担っていくということを考えると、国と地方にあわせた行政任務を配分したのにあわせて基幹税を配分するというやり方をとらざるを得ないのではないかと思います。
〇石会長
佐竹さん、どうぞ。
〇佐竹委員
今、神野委員から、ほぼ私の考えと同じことをおっしゃっていただきましたけれども、いずれ、私ども地方の立場からしますと、同じ仕事をしていて税をたくさんいただくと、そういうものではなくて、やはり国と地方との仕事の区分けというものを、それの見合いという状況があるわけでございます。現在の流れからしますと、やはり分権改革と。かなり地方へ仕事が来ている。本来地方の現場でやるべき仕事、国から移ってきているというものに対して、傾向としてはやはり地方税全体の充実というのは論理的に合うのかなと、そんな気がします。
ただ、地方消費税、消費税論議についてはまたいろいろそのときに、仕事の配分、あるいは流れというものがあるでしょうから、議論が出てくるのは当然だと思います。
もう一つ、これは税の議論ではないかもしれませんけれども、非常に税の議論に実はつながるところが出てくるのかなと思いますけれども、例えば家族、会社が果たしてきたケア機能の低下、あるいは家族の形、中にはライフスタイルの多様化、今いろんな戦後の流れというものはあるわけですけれども、それを全部肯定してかかるのかどうかというのが非常にあるのではないのか。
最近、様々な新聞等で学者の先生方がいろいろ、家族機能をさらに付加することによって、少子化の問題、あるいは介護の問題、これはなかなか、経済社会が昔と違ってきますので、すぐすべてそのようにはならないのですけれども、やはり社会のあり方というものを全部肯定して、その流れが当然だといって、それで税を組むのか。
私ども、大分人口の流動もなくなってます。昔は工業化社会ということで、出稼ぎ、あるいは地方から全部ということで、核家族化が当然であったわけですけれども、我々、地元でも核家族。同じ地域でも核家族。果たしてそれがいいのかどうか。全体的に、介護の問題、医療福祉の問題、それから出生率の問題なんか見ますと、どちらかというと、家族主義的な地域がわりと数字が望ましい状況だとしますと、これを税制の中で直接リンクさせることは別にいたしまして、主な総論としては、1つちょっと税制とは離れるでしょうけれども、最終的な税負担のといいますか、行政負担の軽減に結びつくような社会のあり方というものも若干加味してもよろしいのではないのかなと。端的にいうと家族主義だとか、そういうことが今の世の中には必要ではないのかと、そんな感じがします。
〇石会長
ありがとうございました。
どうぞ。
〇島田委員
二、三ちょっとコメントがありますが、「国民に安心を与える税制の構築」というところで、「社会保障制度と財政健全化の実現により、国民の不安を払拭する」。この読み方は、先ほど、税をとりましょうねという議論が根本にあるということですけれども、その前提として、社会保障制度のスリム化、財政のスリム化ということをできるだけやった上で、税の負担が増えるにしても、それを最小限にすると。そういう考え方ではないかと私は読んでいるので、ということは、社会保障と財政健全化のところはやはりしっかりやってくださいねと書き込むことはとても重要なのではないかということですね。
それから次の「経済に活力をもたらす税制の構築」で、中立的な税制、大変結構ですが、これはできるだけフラットといいますか、タックス基盤を広くして、みんなが負担するということだと私は理解してますけれども、それからもう一つは、日本が貯蓄率下がっていって、長期的に人口高齢化のもとで資金不足的な経済になっていくと考えられますけれども、海外から投資を入れなければいけないということが出てくるので、ぜひ投資が海外から入りやすいような税制、ディファードタックスみたいな議論がありますけれども、もうそろそろしっかり書き込んでもいいのではないか。
それから最後のところで、「分権型社会にふさわしい税制」というのですが、書き出しに「地方の自主性、自立性を高め」という議論がありますよね。さっき、交付税と一緒にしたら計算が簡単になってわかりやすいのではないかという議論がありましたけれども、交付税と税はやはり趣旨が違うので、交付税は土地と人口でわかりやすくというのは私は賛成ですけれども、やはり地方が頑張ったところは税収が増えるといいますか、あるいは消費税でも、地方が人をどんどん呼び込んで消費をしてもらうというところで税収が落ちるということも考える必要があるのではないか。やはり人口が減っていく社会の中で地方が生き抜いていくというのは大変なことですから、そこら辺のところを、地方の努力が報いられるような工夫というのがあってもいいのかなと思います。
それから子供のところ、ちょっと冒頭にもかかわりますが、少子化、子育て、大変重要ですけれども、税金を払ってない家族がたくさんいるわけですね。この人たちもやはり子育てに大変苦労している。今度は逆に、相当高額所得で、子供をとても持つ余裕がないという人たちもいるので、税金を払っている人たちについては、フランスなんか、N分N乗方式をやって成功したと言われてますけれども、もう一回考える必要があるのではないか。それから税金を払ってない人たちは、これは社会保障の充実の話だろうと思うのですね。そこら辺のところをメリハリつけて書かれるといいのではないかと思います。
〇石会長
木さんも、その辺は手当てでやれというふうに繰り返しおっしゃってますから、そういう問題意識だと思います。
ほかにどうぞ。
〇尾崎委員
今のお話ですけれども、地方消費税というのは各地方団体が頑張れる性格のものではないのですね。全くそこのところは交付税と同じで、国の税務署が集めたお金を違う基準で分け、配分しているというだけのことなのですね。この地方消費税のために何人の人が働いているのか分かりませんけれども、もしこれを交付税と一緒にしてしまえば、地方の財政負担も減るわけですよ。定員の削減もできるわけですよね。だから、何かフィクションでやっている形なのです。もともとの、そもそも消費税をつくったときに地方にあった幾つかの消費税を廃止したという経緯がありますから、それはよくわかるのですが、これだけ大改革をやろうとしているときには、実態にあわせて、特に地方交付税の計算方法が変わってくるのであれば、それにあわせて一緒にしてしまうほうが合理的であると思うし、制度の簡素化、それから地方の経費の削減ということに役立つのではないかと思うわけです。
〇石会長
また後でその辺も含めてもう少し議論いたしましょう。ほかにいかがでしょうか。
どうぞ、河野さん。
〇河野委員
冒頭、会長がおっしゃっていたけれども、骨太というのが一応決まって、細かい説明を今日受けて、税調はそれを受けてどういうふうな締めくくりの仕方をするのかというお話だったのですよね。それで2つぐらい思いがあって、もう新聞報道にさんざん書かれているし、政治的動機は何だとか、選挙絡みがこうだとか、全部知っている話ですから。お互いに。それをここに挙げつらって何かと言うつもりは、書生みたいなこと言いたくない。
ただ、明らかに少し税調としての姿勢を示すのなら、第II期と第III期があって、第III期もいろいろ書いてあるけれども、いろいろ漠然と方向性について書いてあるだけのことなのですよ。それはまあ政治決定だから一番重いことだとはわかってますけどね。税調、ものを言うときに、第II期はもう決まっている話ですからね、実は。いろんなことあったって。第III期についてどの程度のものを中長期に、ここは政治家の集団ではないから、書けるのかなというのが、世間から見て、やはり多少違ったことを言っているな、しかし、まあそれも本筋だなというふうになるかどうかということが、言葉の使い方、ワーディングとしては一番微妙なところだと思うのですね。
この骨太に消費税と書いてあるのは、どこか1カ所出てくるのだ。隠しているわけではないけれども、やはりわかっているのだ、そんなことは。だけど、作文はそういうことになっている。それなら我々のほうは、うちは税調だから筋を通して、向こうは税の政治をやっているわけだから、こっちは税の制度をやっているわけだから、少しまじめに書生っぽく書こうかという議論もあるし、これまたいろんな議論が分かれるところでね。そんなことだったら、もう石さんにゲタ預けてしまおうと思ってね。
〇石会長
困りますよ。
〇河野委員
いやいや、言うのもはばかるから、という気がするのですよ。ただ、今日の事務方が用意した2枚目のごく簡略なペーパーを読むと、それでもわが国税制に課せられた課題といろいろ書いてあるでしょう。これは何も2~3年でなくなる話でもないし、5年、10年でも全部、基本は、どこにウェイト置くかは時々の状況によって違うと思いますけれども、このようなまとめ方だったら、別段どこかに異論が出る話では僕はないと思っているのです。だから、今まとめるのだったら、このぐらいのことをまとめておくのかということかなと。石さん、本当はもうちょっと激しいことを言うタイプの人だから、冗談じゃないと思っているかもしれないと思うし、メンバーだっていろいろだと思うけれども、僕はこの辺はもうしようがないと思って。
ただ1点だけ、今までの税制論議、我々やっていて、公平・公正とか、活力だとかいう言葉、随分使ったのですよ。国民に安心を与える税制、これは消費税を増やして安心与えるという話だから。安心というのを2番目に持ってきたというのは、随分大胆でもあるし、新鮮でもあるし、本当にそういうことかなと。つまり、これで初めて福祉関係のあれが持続的に先を見通せるという話でしょう。そういう意味では、安心というのは、従来の我々の議論ではそんなにまじめにやった話ではないと思うのですね。だから、これはある意味では新鮮さがこの中に込められていて、さっき尾崎さんも言っていたけれども、持続的な社会保障制度、財政健全化の実現により将来に対する国民の不安を払拭するということは、要するに別の言葉で言えば別の言葉があるわけですよね。だけど、そんなことはよく読んでもらえばわかると。一々細かく小学校の生徒に教えるように書く必要はないのだというふうに割り切るしかここはないと思ってますけどね。
いろいろ言いましたけれども、要するになかなかデリケートな話なので、総合的にまとめるときには、ひとつ断定的に会長がまとめてもらう。異議を我々言うけれども。場合によっては、必要ならば。だけど、それしかまとめようがないのではないかという気がしますね。
〇石会長
まだ時間ございますから、大いに議論していただいて、少なくともベイシックな方向は固めていただいてというのが前提になるかと思います。まだ時間が十分ございますので。
どうぞ、神津さん。
〇神津委員
さっきちょっと佐竹さんがおっしゃったことで、今の社会のあり方で、家族とかライフスタイルとか価値観とかが多様化していて、それらすべてがよろしいかというようなお話が出たと思うのですけれども、すべてが好ましいとは私も全く思ってはいないのですけれども、好むと好まざるとにかかわらず、この多様化というのは、極度に家族主義的に走るような家庭というものも含めて多様化というのは当分、余程ドラスティックな制度改革や意識変化が起こっても、慣性の法則ではないですけれども、しばらく続くことは間違いないだろうと思います。
というのは、ちょっとつまらないことですけれども、この前、私、同窓会がありまして、孫がいる人から、9カ月の子供を抱いてくる人までいました。孫は今度お受験だと言うのですね。小学校。そういう孫のお受験に奔走するおばあちゃんである私の同級生と、ようやく、今がぎりぎりだと言って子供を産んだ、9カ月の子供を本当に宝のように同窓会場に連れてくる人までいまして、ニートの息子が部屋から出ないのをどうするかとか、お受験の孫をどうするかとか、新生児に離乳食はどのぐらいからやるかという、話の多様性といったら、普通の同窓会で話されていることとは、10年前の同窓会とはおよそ違うわけです。そのぐらい女の人生は多様化してます。本当に。
それを思うと、だから、少子化、高齢化、ライフスタイルの多様化というものは現実に進んでいて、その人たちはそこから路線が変わらないわけですから、当然このまま進んでいく。それで、私は何を言いたいかというと、さっき神野委員は、簡素と言うよりはある意味で精緻でなければならないということもおっしゃっていたので、この辺をどうやって考えたらいいのかと思うのは、家族単位で考えることというのもある意味で税制の中では必要ではあるけれども、やはりこれからしばらくのことを考えたときには、個にどのぐらい税という概念を植えつけるか。植えつけるかというのは変ですが、税を考えるための税制をつくるかということも私はやはりもうそろそろというか、非常に考えなければいけない時代になってきているのではないかなと。個が自分の生きていく上での税というものを考えるような、制度に持っていくという話ではないのですけれども、個人の税に関しては、個というものをもう少しやはり我々は考える時代に来ているのではないかなと思いました。
〇石会長
迫力のある話でしたね。ありがとうございました。どうでしょうか。ほかに。
翁さん、どうぞ。
〇翁委員
さっき骨太の方針との関係がございましたけれども、私も、骨太の方針というのは2011年までの比較的短期の、第II期のところにかなり議論が集約されていて、第III期のところは、明らかに名目GDPに比べて債務残高比率を引き下げていくということについてはコミットしてますけれども、それについていろいろな選択肢を示しているだけで、かなり踏み込んだ議論は避けているということだと思うのですね。
これに関しましては、税調としては、今までいろいろ社会保障の人口の動向とかそういったことを見てきて、中長期的に見て、社会保障に対してどういう財源をつけていくのか、そういう議論をしてきたわけですから、やはり中長期の観点に立っていろいろ議論を投げかけていくという姿勢が非常に重要なのではないかなと思います。
それで、例えば「経済に活力をもたらす税制の構築」の2つ目のところで、「安定的な歳入構造の構築は、内外の市場の信認を通じ」と書いてありますけれども、多分その間には、これがおそらくコミットしている財政健全化のルールというのが一応第III期に示されているわけですけれども、そういうことがマーケット全体で共有されて、それが信認されることによって初めて、財政規律をここの国はきちんとやろうとしているのだということで長期金利の安定につながっていく話だと思いますので、そういうことを明確にわかりやすく書いていくことが重要ではないか。
あと最後、「分権型社会にふさわしい税制の構築」というのも、私、これを読んだとき、すごくあいまいな感じを受けて、1つ目のポツのところでは地方の自主性ということを言っていて、これだと課税自主権の活用とか自主財源を見つけていくという話かと読めるのですけれども、2つ目のポツのところでは、何か地方消費税を感じさせる話をしていて、何となく全体的に、具体的に何を言おうとしているのかわかりにくいなという印象です。
〇石会長
全体として具体的に案は出てこないのですから、これから皆で固めていけばいいと、こんなふうに考えてますが。ほかにどうですか。
井上さん、何かございますでしょう。
〇井上委員
ともかく、今グローバルな時代を迎えておるということで、日本にもどんどんと海外の企業も進出してくるような状況、条件といいますか、そういうものをつくっていかなければいけない。そういうときに、例えば直接税。法人税とか、そのようなとりやすいところから税をとるという感覚であってはいけないのではないかと思うわけでして、そうするとどうするのだというと、結果的にいうと、間接税の方向にどうしてもいかざるを得ないだろうと思います。
ただ、それはタイミングの問題だということであるわけですけれども、ともかくプライマリーバランスを均衡化するために、まずは歳出の削減ということ、これはもう徹底してやるということが方針として出ておるわけですけれども、まだまだ、それもこれで十分なのかなと。何か、人を減らせばいい、給料下げればいいということだけでいいのかと。そう簡単なことではないですけれども、もっとやはり予算の仕組み、そういうものまで何かいじっていく必要もあるのではないのかなと。
よく言うのですけれども、農業の公共投資や何かにしても、本当に必要なのかと。一方においては地方でそんなところに投資してもらったって意味がないよというようなことも随分あるわけですから、そういうこともいじらなければいけないのではないか。もっと徹底したことをやるならば、国民もその間接税を上げるということについても理解度をもっと示していくだろうと思ってます。
それから今の金融所得、これに対して今特別措置がとられておりますよね。5年間という。これは景気が非常に悪いときにああいう措置をとったわけであって、非常に世の中の景気が回復していくということになり、今回も配当が1兆円というようなことを聞くと、やはりもうこれを改定しなければいけないのではないのかと。もう5年たってからだということの必要性がないのではないかとも思っております。税についてもある程度は機敏に変更していくということだって必要なのではないのかなと思います。
〇石会長
ありがとうございました。なかなか途中で変えるというのは難しいかもしれませんけれども、ご提案があったということで。
上月さん、どうぞ。
〇上月委員
私も、いろんなところで税金のお話をしますと、なぜ政府税調は増税ばかり言うのだとか言って随分おしかりを受けるのですが、ただ、「国民に安心を与える税制の構築」というのは、これは非常に、ここにいると私たちなんかはひしひしと感じるのですけれども、なかなか一般の国民の皆さんというのがまだそこまで実感されてないというのか、PR不足なのかどうかよくわかりませんけれども、そういうのを非常に感じます。ですから、こういうところはしっかり書き込んでいただけたらなと思います。
それからもう一点、木委員にちょっとお聞きしたいのですけれども、給与所得控除の縮小は容認できないという言葉がありました一方で、給与所得者の申告納税選択制を導入するのだとおっしゃってますが、これは今の場合は給与所得控除が大きくて、申告納税をする必要がないということではないかと思うのですが、その辺はどのようにお考えになっているのかということと、もう一点は、「夫婦の就労選択に中立な税制の確立」とお書きになってますが、これはどのようにお考えになっているか。例えば配偶者控除は要らないとおっしゃっているのか、その辺をちょっとお聞きしたいと思います。
〇木委員
まず後のほうの夫婦云々の部分でございますが、要するに、例えば働き方によって税の負担の形態が違ったりレベルが違ったりということは、あまり税の世界がお節介を焼く世界ではないのではないかなと。子育ての関係等含めて、例えばN分N乗の問題だとか、フランスではうまくいったとかいうお話も聞いたりしますが、その辺は日本の社会にどういう税がふさわしいのか、いろいろご議論いただいたらいいのではないかと、そんなふうに思っているわけでございます。
あと、年末調整していただいて、だから、そういうルールの中でちゃんと徴税されているから申告なんかする必要ないではないかというご議論だろうと思うのですが、1つは、国民と税に関する認識、関心という観点からも、もっと国民がみずからも関与して納税していくという観点もございますし、それから今の制度を前提にすれば、今、上月さんがおっしゃったようなことかもしれませんが、申告型の納税にしていただくべくいろんな制度もまたお考えいただけるという面もあるのではないかなと。もっと税金をとろうという立場の人からは、そんな甘ったるいことを許すわけにいくかというご議論が、田近委員あたりからすぐ出てくるのではないかと思いますが、そんな面も含めて、じゃもう申告はやらんでいいのだという今のルールが本当にいいのかと。そういう意味では、ちょっと手間だけれども、申告の作業をしてみようではないかという人にそういう手段を与えても、何も悪いことではないのではという、そんな思いでございます。
〇上月委員
おっしゃるとおりで、私も給与所得者の確定申告というのは導入するべきだと思ってますけれども、今現在は、給与所得控除というのがかなり、大き過ぎると言ってはいけないかもしれませんが、多いのですね。ですから、確定申告をする必要がない。ある意味ね。そういう現実だと思うのですが、その点についてはどのようにお考えになってますか。
〇木委員
給与所得控除が大きいというご議論があることは承知いたしておりますが、また財務省のほうは雇用の多様化を理由に、給与所得者であることを理由にして一律の考慮をする時代ではないというようなコメントもしておられるということを聞いておりますが、この辺の認識は私も問題だと思っております。
雇用の多様化というのは一部の給与所得者に限った話であり、大多数の雇用労働者にとりましては、雇用の多様化というのは非常に不安、あるいは不安定なイメージを与えているという、その辺のことについてどんなふうにご認識なのかと。だから、高額所得者、例えば給与収入が2,000万円以上もあるような方も含めて青天井の控除になっている、そういった部分の見直しについては議論の余地はあるのではないかと思っておりますが、その前に金融資産などに関する課税の見直しをやっていただくのがまず先ではないかなと。ざっくばらんに言うとそんなことでございます。
〇河野委員
木さんね、加藤寛さんが税調会長のときに、自分で申告したらどうだという議論、大々的にやったのですよね。調べたのだ、徹底的に。どちらが有利かと。そうしたら、絶対にこれをやる人はほとんどいないだろうということになった。それは理由があるのですよ。品目全部調べたのだから、当時。すごい作業だったと思うけどね。だから、これはもうちょっと現実的に考えたほうがいいのではないかということがアドバイス。
2番目。これは伝統的な連合の哲学だから、そう簡単に変えてくださいとかそんなこと言わないけれども、金融所得に対する優遇、見直し、累進課税、あるいは中期的には総合課税化という議論ね。これはもう税制学者の中で伝統的にある大きなロジックの一つなのだけれども、だからといって、これから連合の方が看板おろすことはないと思うし、それはそれで構わないと思いますけれども、現実にはこの話はなかなか実態から外れた議論になっていると私は思うのですよ。木さん、そんなことあるかと言われるかもしれないけれどもね。これはこれから至るところで連合として意見を表明されることはあると思うし、民主党の関係も全部あると思うけれども、こういうところの実態に即した議論も内部でやってみて、それでも一応頑張ってみるかと。スローガンとして。それならいいけれども、実際上これをやるのだということになったらえらいことだと思うのです。
あまり細かい税制のことで木さんに質問しようと思いませんけれども、2つだけちょっと申し上げておきたい。
〇石会長
あるいはご意見として聞いておかれますか。
〇木委員
今の仕組みでやったら、申告制にしたって絶対得せんようにしてあるという制度になっているわけですから、それは検証されたらそういうことになるのでしょう。だけど、納税者として、ですから各種控除の金額の設定の仕方、例えば基礎控除がどうだとかいろんな、本当に今の額がどうだという検証も含めて多分おやりになったのだろうと思いますけれども、その辺のことをもう一遍再吟味していただくということだってあっていいと思っているのです。
だから、税の歴史もよくわかりませんが、一種の戦時税制みたいなことで始まった源泉徴収で全部100%捕捉されてという意味で、ひがみ根性だとよく言われるのだけれども、ひがみたくもなるというところもちょっとあるということをわかってくれないといけないのかなあと。この辺はエモーショナルな話ですみません。論理的ではありません。
〇石会長
では太田さん、どうぞ。
〇太田委員
さっき河野さんと翁さんが言われた、どの辺にターゲットというか、どのぐらいの期間を見て書くかというのは大変重要な話だと思うのですね。この骨太の方針って自分で骨太と言うのはどうかと思うのだけれども、名前がついてしまっているからしようがないですね。仮称。相当変な名称だと思いますが、それはともかくとして、それによれば、「2011年までの歳出改革について」、47ページにあって、「歳出改革で対応しきれない要対応額(2~5兆円)については、歳入改革によって対応することとなるが」云々と書いてある。つまり、消費税率1~2%上げればそれで終わってしまうという話なのですよね。消費税という名前を出すかどうかはともかくとして。
つまり、だから、消費税を2011年までにやるかどうかはともかくとして、それが実現すれば終わってしまうという話がその枠の中であり、それを踏まえた答申みたいなものを出すのか、あるいは、それプラス、もうちょっと長期の視点を加えて出すかということだろうと思います。いろいろ不確定要因があるが、景気はものすごくよくなってきている。デフレも脱出した。ゼロ金利も解除しようかと言っていますけれども、アメリカあたりから、ややドルの信認に絡んだ暗雲が少しもくもくとわき上がりつつあるかなという感じもするわけですし、そういうことを思うと、97年のときの東南アジアの通貨危機みたいな話も連想されるわけで、それをどうやって予測するかということは難しいのですが、しかし、税調がもし書くとしたら、97年ではなくて、2011年までの、1~2%、消費税上げてしまえば終わってしまうという話、それも実は大問題なわけですが、そういうものプラス、その先ということをかなり明確に出しておく必要があるのではないかと思います。
〇石会長
第III期目の問題ですね。またいずれ議論したいと思います。
どうぞ、中里さん。
〇中里委員
5~6年前だったか、記憶が定かでないのですが、多分、税制調査会の調査だったと思うのですけれども、イギリスのインランドレベニューにまいりまして、中庭のほうから入り口があって、入り口のところにレリーフがかかっていて、納税者の権利章典というのが銅のレリーフで入ってましてね。私、読んでみたのですけれども、納税者の権利を我々は徹底的に守ると書いてあって、なるほどと思ったのですが、その後に、In return, we request you.そのかわり納税者に対して適正な情報を出せ、法律に従え、適正に納税しろという義務をくっつけているのですね。納税者の権利義務章典なわけですよ。納税というのは、義務を履行する際にどういう権利かという、そういう話ですから、やはり国家の根幹にかかわる話で、さすがイギリス、両者のバランスがとれていて、義務は負わせるけれども、きちっと権利も守る。しかし、権利も守らせるけれども、義務を負わせるというところがあると思うのですね。
それでちょっと気になるのですが、このメモの2ページ目の「わが国税制に課せられた課題」というところですけれども、神野委員がおっしゃったように、4つの原則、だから、1番目が公平で、3番目が多分効率、4番目が簡素で、5番目が地方分権ですよね。2番目というのは本来、法律家ですから体系にこだわるのですが、これは一番最初に論理的にはいくべき話、あるいは一番最後でもいいでしょうけれども、私は一番最初ではないかと。憲法に納税の義務とあるわけですから、国を支えるために、租税というのを中心に国家運営を図っていくというのが日本国憲法の理念ですから、河野委員がおっしゃったとおり、ここは政治を語る場ではありませんので、あるべき理屈をきちっと述べていくところであり、このように2番目に入れるというのが何か、それはいろんな理由があるのでしょうけれども、体系的ではないなという気がいたします。
〇石会長
まだ順番決めているわけではないですから、ご心配なく。
今の中里さんの意見に関して、どうぞ。
〇佐竹委員
ちょっとそれに関連してですけれども、大変現場の感覚でもの言って申しわけございませんけれども、「国民に安心を与える税制の構築」と書かれますと、大体90%の国民は、税金が安くなると思うのですね。そういうふうにとらえるのですよ。ここの書き方はやはり、日本人というのは受益と負担の原則というのがあまり頭になくて、大体、年金、いろいろ払っている方は全部それでやられているものだと思っている。税から相当こういう負担があるなんて思っている人はほとんどいない。ですから、ここら辺の書き方というのは、少しくどくてもきちっと、こういうものであって、もしこれがこうであれば給付は半分になると、どちらを選ぶかという話も、ここで選ばせる話ではないですけれども、そこをきっちり書かないといけないのではないか。安心というと、ああ、これは減税になるなと、ほとんどの人はそう思うのです。そこはきちっと現実を書くことが必要ではないのかなという感じがします。
〇石会長
国民がちゃんと負担して、というのを入れるのですな、多分。ほかにいかがでしょうか。ほぼ時間になりましたが、よろしゅうございますか。
実質的な審議は今日で終わりにしたいとは思っているのです。というのは、年明けから社会保障も含めて様々な検討をし、かつ、6月に入りましてから3度ほどでございますが、各個別の税制、今日は総論をやりましたけれども、議論を積み上げてまいりました。次回、一応14日を予定してございまして、これはまさに総括編という形で、これまでの議論を振り返ってフリートーキングにして、今日の総論のあたりの基本理念も含めて議論をまとめていきたいと思っています。
おそらく秋、9月になるのでしょうか、いずれにしても、我々任期中に中期答申をまとめなければいけませんから、それをベースにして、また夏休み明けから議論したいと思ってます。
そこで、一応予備として21日をとっていただいてますが、14日に集中的に議論いたしますと、ほぼ今日の議論の整理もできて、それなりに夏休み前の議論は一応固められると考えております。そこで、一応この金曜日で総会と基礎問題小委員会の合同会議をくくりまして夏休みに入りたいと考えております。
夏休み明けは、いつから始めるかまだ決めていませんが、いずれにいたしましても、最終的にまとめる前には文章化もしなければいけませんし、今日も大分議論が分かれているところもありますから、もう数回、何回になるかまだ分かりませんが、集まりまして、率直な意見の交換をしながら最終的な答申をまとめていく作業を夏休み明けにいたしたいと考えております。
そういう意味で、金曜日は、前にやりましたことを整理しながら、夏休み前の課題を終わりにしたいと考えています。7月14日、午後2時から4時、場所はまた財務省の4階ですが、その会議場でまたご議論いただきたいと考えております。よろしゅうございますか。
ではどうも長時間ありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。