総会(第49回)・基礎問題小委員会(第58回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成18年7月4日(火)16:08~16:29

石会長

それでは、税調と基礎問題小委員会合同会議が終わりましたので、ご報告をいたします。

今日は、法人課税、国際課税、そして消費税、消費税の中に個別消費税等ございますが、4つの問題について議論いたしましたが、その前に丹羽委員から、経済界を代表してご意見をいただくということをいたしました。

本来、連合の労働組合の代表でございます高木委員と、お二人一緒にと思ったのですが、ちょっと時間的な制約もございましたし、お二人の都合も合わなかったので、今日は丹羽さん、次回は高木さんという形で各々のご意見を伺うということであります。丹羽さんのご意見につきましても、非常に活発な議論があったし、法人税改革ということを今後どういうふうに進めるかという切り口も、幾つか見つかったと思ってます。

それでは、今日の議論の成果といいますか、この結果をどう受け止めて、どういうふうに今後の審議に持っていくかということで、まとまった段階の議論を少し整理しておきたいと思います。

1つは、丹羽さんからの問題提起もあったんですが、法人税というのは企業の活性化、あるいは経済の活性化、この視点からやはり扱うべきであると。これに関しましては、大方の委員も納得はしたようでございますが、従って、法人税の基本税率の問題、国際的に高いじゃないかという視点も出されました。それから減価償却ですね。この減価償却も、国際的に見て日本の減価償却制度がいいのか悪いのかという議論。要するに、この辺の問題を踏まえつつ、法人税の役割を再確認する必要があるかなとは思っております。

それから第2番目の問題は、地方法人課税の問題でありまして、外形標準課税の対象が1億円以上の大規模になっているわけでございますが、この対象範囲をどうするか。経済界の方、あるいは一部の学者から出ておりますが、地方法人課税を地方税から取って、税源移譲いろいろ考えて、ここで移すべきだという議論があるのですが、そういう議論をめぐって、地方を代表される委員から大変な反発があったということだと思います。この扱い方はどうするか、これからいろいろな問題を絡んでいると思います。地方の法人課税、特に法人事業税の役割につきましては、この辺、しかと議論しなければいけないかなと考えております。

3点以降は間接税、特に消費税の問題でございます。消費税につきましては、もうかねがね我々随分意見を交わしておりますので、今日は再確認という形だったと思いますが、やはり3つありました。

1つは軽減税率です。2つ目がインボイス。それから3つ目が使途の問題、つまり目的税が是か否か。あるいは使途をどうするかという議論であったと思います。軽減税率にかなり時間を割きました。そういうわけで、軽減税率につきまして、まだ意見が集約されておりません。ぜひ認めてほしいという側と、それからやはり実施に当たっては、食料品を仮に入れるとすると、その範囲の問題等々大変難しい問題があるので、慎重に扱った方がいいんじゃないかという議論がございました。

そういう意味では、我々過去の答申に書きましたように、やはり標準税率の高さによるんだろうと思います。ほかの国でも、標準税率が高ければその半分にするとか、3分の1ぐらいにするとかいう軽減税率を入れております。そういう意味では日本の標準税率が一挙に欧州並みにいくという段階ではございませんから、その議論を踏まえれば軽減税率は特に問題ないと思います。ただ、少なくとも上げるならば5%残してくれという、そういう議論もあろうかと思いますので、その議論をこれから進めたいと思います。

それと同時に、なぜ入れるかという議論をしなければいけないですね。そういう意味で、逆に逆進的な負担であるのを是正すべきということを軽減税率に求めるならば、これはある意味で高所得者、低所得者、ともに食料品などを使うわけでありますから、この視点からの議論というのはかなり弱い。そういう意味で、歳出構造全体から見て逆進性を直すという、我々のかねてからの主張の議論になっていくのかなという感じはいたしております。

インボイスにつきましては、ある意味ではかなり今日は支持があったのではないかと思いますし、消費税の仕組み自体の改善につながるという視点、これは税調としては大いに強調しなければいけない問題だと思いますので、その議論をしていきたいと、このように考えております。

それから使途の方も、お一人が申されたように、高い税率あるいはその時の軽減税率を入れるか入れないかの議論も、ひとえに使途、つまり社会福祉に充てるなら、このように非常に大きなリターンがあるならば高い付加価値税率、あるいはたまたまデンマークの話が出ましたけど、軽減税率なしで25%払ってもいいよと。ただ、見返りがあるからということでしょう。そういう意味では、そういう議論の方に話がいくのかいかないのか、これもこれからの議論の接点であろうと考えております。

いずれにいたしましても、今の3点セットを軸にしてですね、これから消費税の議論は回っていくなという感じでございます。

4点目は、その他の税としてたばこ税、それから酒税もちょっと触れられましたが、その問題。それから、地方の個別消費税として娯楽施設利用税であるとか、遊興飲食税等々の復活という議論もございまして、地方の税体系の中で個別の消費税をどうするかという議論も多分残っているだろうと思います。たばこ、酒はですね、最近小刻みにいろいろな形で負担が変わっておりますが、構造自体、酒はこの間やっと4分類にしましたし、たばこはこの間上がったばかりでありますので、その位置づけをちゃんとして、将来の方向性が示せればなと思っておりますが、ここはちょっと今回並べてみた議論の中での主流ではないかもしれません。

以上、4つの領域について議論いたしました。2回程個別の税のパーツについてある意味では改革の方向を議論いたしましたので、次回はそれを受けまして総論の部分を7月11日の火曜日にやりたいと思ってます。総論の部分というのは、税制改革いかにあるべきか、あるいはどこに狙い目があるのか。あるいは、歳出・歳入一体改革の議論が、今大きく話題を呼んでおりますが、その中で当然のこと歳出削減、あるいは行財政改革をベースにした後で、税という負担をどれだけ導入しなければいけないかどうかであります。今日も一部議論になっておりましたが、税調は政治的な決定という意味での負担増の将来展望みたいなことよりは、税の専門的な領域を議論する集団として、恐らく税制の公平・中立・簡素も含め、あるべき税制として議論する、言うならば質的な改革の問題を議論するという点にこれから力的を置くべきではないかと、このように考えておりまして、議論もそっちの方へ行くと思います。

そういう意味で、総論の方は歳出・歳入一体改革とりまとめが7日に出るそうですから、その方向性を受け、我々としてどういう形で中期答申の、言うなれば基本的な最初の導入部、あるいは全体像を整理するかという点に意見を絞っていきたいと思ってます。

あと2回程、今月この総会・基礎問題小委員会を考えておりますが、14日、21日というふうに次第にこの中身を深めていきたいと考えております。

以上です。

記者

記者から2、3点お聞きします。

まず1点目の法人税の話で、法人税の実効税率の水準の問題が今日も議論ありましたけれども、今日の総会でもあったのですが、委員のバックグラウンドによって大きくその見解が決まると思うのですけれども、会長は今後その意見を集約する上で、どういった視点を重視して、その提言の方向に持っていくのか、聞かせてください。

石会長

税によって、グローバル化の中で影響を受けやすい税、比較的受けない税っていろいろあると思うんですけど、法人税が一番国際的な意味で他の国の動向を見なければいけないと思います。

そういう意味で、これまで幾つか議論されましたけど、日本の法人税率の高さは相対的にだんだん高くなってきたかもしれない。ドイツが10%下げるという声もある。いずれ、アメリカもそうかもしれない。という意味で、国際的なレベルでどうするかという議論が1つどうしても出てきますね。

そういう視点から議論いたしますが、来年、再来年の税制改革で云々の話じゃなくて、長い目で見てやっぱり企業課税のあり方、つまり経済の活性化とか企業のあり方という点から見ると、法人税はどんどんどんどん引き上げるという方向ではないのかなという感じは、個人的にはいたしております。

記者

2点目は消費税の話で、その引き上げ幅とかについて、かねてから会長というのはひとえに政治判断だとおっしゃいましたけれども、そうは言っても、その一方で今年の骨太方針では、具体論の明示されるのに、判断を見送ったというように受け止められても仕方がないなという現実がありました。そういった、今の政治状況というか、政治判断というのをどう見るかというのが1点。

もう一点、それではその政府税調はとなった時に、1月、2月でしたか、政府税調はその引き上げ幅というのを盛り込まないとおっしゃってましたけど、その考えを確認したいのと。

あと、前回の3年前の答申では2桁に引き上げる必要性がとか、これが今後の税体系全体の見直しの基本になると言及されてますけれども、こういった方針というのは踏襲されていくのか、その辺りを。

石会長

これまでの税調の意見の基本的な方向は変わりないと思ってます。タイミングとか税の幅は、まさに政治的に国民の付託を受けた政治家が決着すべきところでありまして、経済財政諮問会議でやらない、自民党税調でやらないという話を、我々税調が先乗りするということもあり得ないでしょうし、それは従来と同じことです。

それから2桁の議論は、何か来年でも再来年でもすぐやるようなふうにとられると大変なんだけど、あれはやっぱり10年、15年先の日本の少子高齢化の下での社会保障制度の持続可能性を求めるとか、これだけたまってしまった赤字をどうするかという時に、当然起こってくる話であり、相当先の話を言っているわけで、これを今変える必要はないだろうと思ってます。ですから、今のご質問については、政府税調基本的スタンスは変わりない、そういうことです。

記者

部分的なことなんですけれども、中期答申というのは、これは9月自民党総裁選ありますけれども、小泉首相に提出するのか、それともポスト小泉に。

石会長

まだ議論が、今日も非常に活発な議論をいただきまして、まとめていく段階ですが、まだどの段階で、まとめの方向性が出てくるかよく分からないんですよ。おっしゃるとおり小泉さんに諮問もらったんだから小泉さんに出すべきだという意見と、もうおやめになる人に出してもしようがないんじゃないかという意見と二通りあって、今、私個人的にも判断しかねております。ひとえに税調の中の審議のまとまり具合によります。つまり8月になるとやっぱり夏休みというイメージもありますから。その辺はまだ時期的には不確定です。まだ決めかねてます。

記者

今、法人税のところで、長期的に見てどんどん引き上げる状況にはないという話をされてましたけれども、これまで議論にありましたのは、割と減価償却の辺りで減税するというような方向性だったと思うのですが、それに加えて法人税の税率自体も引き下げていく方向にあるというふうに少し変わってきているんでしょうか。

石会長

ひとえに私申し上げたように、グローバル化された世界でのいわゆる国際競争力をどうしていくかという視点ですからね。他の主要先進国の動向にかなり僕は影響されると思う。そういう意味では、甚だ他者に対し依存し過ぎだと思いますが、これぞまさにグローバル化された中での企業活動ですからね。そういった視点からの議論が重要だろうと思います。つまり他国は法人税率をどんどん引き上げるという、そういう動きは今のところないんですよ。きっと今後もないでしょう。これだけタックス・コンペティションというか、税の間の競争が起こりますとね。

そういう意味で、長い目で見るとさっき申し上げたようにどんどん引き上げる方向ではないと言ったのは、1つの考え方だと思ってますし、そうなるのではないかと思います。

記者

それは今のまま留めるということなのか、より下げていく方向なのか。

会長

ですから、他国がどれだけ下げるかですよ。今、一番日本に拮抗しているのが、アメリカとドイツですよ。アメリカ、ドイツ、そのまま下げるという情報も入ってますからね。その時にまた考えなければいけないと思いますが、上げるということはないでしょう、あの2つの国は。そうなると、恐らく日本にも影響が出てくるだろうということだと思います。

記者

先程、幹事さんの質問にもありましたが、歳出・歳入一体改革のところで、その歳入面のところを引き上げ幅とか、時期とかは明示しなかったと。それで、それは諮問会議、税調でもやらないと、いわゆる党税調でもやらないことを政府税調は踏み込んでは言わないとおっしゃったのですが、私の印象としては、何でそんな腰抜けなんだよと思うところが実はあって、選挙があるから……。

会長

僕ら選挙と関係ないよ。

記者

そうじゃないです。その諮問会議なり、今回の一定の議論は、やっぱり選挙のことを意識してそこを主に隠しているのかなという印象は私にはあるのですが。

会長

ああ、こっちじゃなくて、向こうがですか。

記者

全然こちらではなくて、あちらは、政治判断だからこそ、ちゃんともっとやれよと思うところが正直あるのですが、会長はどうお考えですか。

会長

僕は政治家ではないし、まさに選挙に打って出る人の環境なり立場なりというのは大変だと思います。僕にはわかりませんよ。それは僕ら政府税調というのは、国民の代表という位置づけだけど、別に付託を直接受けているわけでもないし。そういうことから言うと、減税ならまだしも、増税の時代にそういうことをどんどん言う立場ではないと、前からご説明しているとおりでありまして、その考えには変わりはございません。

僕は10年来、もっと前かな、政府税調は税率とかタイミングについて明確な答えを出すようなことをやっておりません。今回それを覆すという状況にもないと思ってますので、従来の慣行を守りたいと思って、それが筋だと思ってます。

記者

あと今日会議の中で、大分軽減税率についていろいろな皆さんお考えがあるんだなというふうに感じたんですけども、例えば2011年度にプライマリーバランスのニーズのところをみなすとして、換算すると1から2だったり、そういう数%というのが大体浮かび上がってきてますが、その2桁を超えないときの今の増税する時に、軽減税率というのは必要なのか。言い直せば、どれぐらいの税率のアップの時に、軽減税率というのは導入が必要だとお考えでしょうか。

会長

我々として、欧州先進国の2桁レベルに達するまでは入れない方がいいと、常に答えは出しております。問題はその後、欧州先進国並の2桁というのが何%かということに尽きますね、恐らく。それは表を見て判断してください。お渡しした表というか、グラフがあるでしょう。

ただ、それは今までの税調の話ですから、当然また意見が変わればそこで修正もすることは、皆さんの合意に基づいてあるかもしれない。ただ、従来の意見は皆さんの意見でまとめたんですから、それを変える大きな理由があるかどうかですね。

記者

現状の欧州の2桁税率を見ると、少ないところでたしか15%ぐらいだったと記憶しているのですが、ということは今言われているのは5%ぐらい上げて10%にするとか、大体消費税については国内そういう議論だと思うのですけれども、多くてですね、その議論で言うならば今のところ軽減税率は要らないということなんですか。

会長

これまで累次の答申で書いた意見を変えなければ、そういうことでしょう。ただ、それについて、やはり国民に対して理解してもらえるようにやれという意見も、今後の議論の中で出てこないとも限りませんからね。それはこれからの、最後の段階までの詰め、せめぎあいの議論になってくるかと思ってます。

記者

もう一点、歳出・歳入一体改革の絡みなんですけど、7日に閣議決定になるとはいえ、昨日の段階でほぼ最終形であると、与謝野大臣なんかも言っているわけですけれども、今回の、特に歳入部分を見て、上げ幅とか消費税については、時期なんかについてはきちんと明示されてなくて、いろいろな今後の税制改革の方向性みたいな話を、例えば少子化対策とか、経済活性化とか、そういうのを出すに留まっているわけですけれども、今後それを見て、もうご覧になっていると思いますが、中期答申に向けてどういうふうな形で反映させるのでしょうか。

会長

歳入改革と税制改革は、自ずからちょっと違ってくる面もあろうかと思います。税だけやれませんからね、歳入は。それで、歳入改革の中の税のパーツも、そう細かくつっこんで議論を展開するわけでもないですよね、歳出・歳入一体改革の中ではね。まして、あれは経済成長の見通しとか、歳出の削減が一体どのぐらいできるのか等々不確定事項があるから、ある意味では今から、歳入面が一番難しいと思います。経済の動向に税収は影響しますからね。

私は今から5年先、10年先縛れないという意見もわからないわけではないんですよね。そういう意味で「ぼやかした」というみなさんの批判も、ある意味ではそうなのかと思いつつ、同情しているんですけどね。我々として、そこで少ない情報等々で思い切ったことをそこに盛り込むかどうか。というよりは、さっき言ったように、構造的な問題が、我々税調に課された問題だと思いますから、税調らしい議論となれば恐らく税のパーツもいろいろな内在する問題とか歪みとか、そういう問題を整理しつつ、改革の方向を出すべきだと思ってますから。もちろん、歳出・歳入一体改革を念頭には置きますけれど、それに直接コミットするということはそう多くの部分で出てこないとは思いますね。

(以上)