第49回総会・第58回基礎問題小委員会 合同会議 議事録
平成18年7月4日開催
〇石会長
時間になりましたので、税調を始めたいと思います。
今日は、前回に引き続きまして、法人課税、国際課税、消費税等につきまして、これまでの議論の整理を進めていきたいと考えております。
また、平素、経済界並びに労働界は税制について様々な提言をされておりますので、そこでご活躍の丹羽委員と木委員からご意見を賜りたいと、私から、特にお願いをいたしました。1日で2人というのも大変なので、分けまして、今日は丹羽さん、次回に木さんという形で、この論点の整理の前にご発言いただきたいと思います。おそらく丹羽さんの主要なポイントは法人課税であろうと思いますので、今日の最初のテーマと多分ドッキングすると思います。そこで、丹羽さんのお話を伺ってから法人課税の説明を受けて、法人課税全体で意見を交換したいと、このように考えております。今日の主な論点も、すでにお手元に事前に配付されていると思いますので、あまり細かいことは申し上げません。
それでは、丹羽さん、短い時間でございますが、よろしくお願いいたします。
〇丹羽委員
本日はこういう会で意見を述べる機会をいただきまして、ありがとうございます。時間に制限がありますので、早速お話をさせていただきたいと思います。資料として、私としては珍しく、レジュメと参考資料を添付したものを用意しておりますので、適宜ご参照いただきたいと思います。
まず、7月7日の閣議で骨太方針が決定されると聞いております。消費税については明確にすることを先送りされているようですが、歳出改革そのものはもちろん必要なことですし結構なことですが、肝心なのは、企業においてもそうでありますけれども、これをやり遂げることができるかどうかということかと思います。これがやり遂げられなければ、税制改革を含めてすべての制度改革について国民の信頼が得られないと。あるいは政府与党の方々にはこの辺を心して取り組んでいただく必要があるだろうと思います。
まずは2011年度のプライマリーバランスの黒字化が達成できたにしても、それは財政再建に向けての第一歩にすぎないわけでありまして、GDP比で150%を超えている国・地方の長期債務残高、削減していく道筋を示していく必要があるということは、税制改革の方向性を考える際に常に共有していく必要があろうかと思います。
経済は明るさを取り戻しておる状況でありますが、わが国にとっても本格的な改革を実現に移す、私は最後の好機かもしれないということでありまして、この機会をとらえて果断に改革を進めるということが後々の世代に対する我々の大きな責任であろうかと思います。私は今の世代は食い逃げ世代と言っておりますけれども、そういう後ろ指を指されることのないようにこれから心していく必要があるかと思います。
まず最初は、わが国を取り巻く内外の環境についてでありますけれども、言うまでもなく、外にあってはグローバルな競争の激化、内にあっては人口減少社会の出現ということに直面しているわけであります。世界の市場はますますボーダレス化しておりまして、最近もGM、日産、ルノーの話、あるいはミタルとアルセロールの鉄鋼の話、グローバル化が進んでおります。企業は国の内外においてますます厳しい競争にさらされているわけであります。諸外国は自国の経済発展を目指して、市場統合、あるいは経済連携協定を通じた市場の拡大、税制、会計基準、金融市場、こういったビジネスインフラの整備を通して企業や優秀な人材を誘致しようとしております。いわば国家間競争を展開しているわけであります。
わが国としても、経済の活力を維持していくためには、そういったグローバルな競争に打ち勝っていかなければいけないという状況にあるわけでありますが、この国家間競争につきまして、やはり日本は非常に危機意識が薄いと、経済界を代表して、私は痛切に感じております。
一方、内にあっては、人口増加を前提とした経済社会の枠組みが崩れてきているわけでありまして、今後少なくとも20~30年の間に人口が減少し続ける中で、持続可能な経済社会の枠組みを構築していく必要があることは言うまでもありません。
情報通信技術の活用とともに、女性、高齢者、さらには外国人、これまで以上に持てる能力を発揮できる社会的インフラが不可欠であろうかと思います。実は私は今名古屋から帰ってきたのですけれども、愛知県にはブラジル人が10万人働いているというわけでありまして、近々にポルトガル語のラジオ局が開設されるようであります。つまり、外国人をいかに内に取り込んで労働力化していくかということはもうすぐそこまで来ているということであります。
以上申し上げた2点が、税制改革の方向性を考えるに当たり大きな前提要因だろうと思います。
2番目に、「税制改革に当たって必要な視点」として4つのことを申し上げたいと思います。1つは、今申し上げたような社会経済状況の変化の中で税制というものを考える際に、単に安定的な税源の確保という観点だけではなくて、経済活動を阻害せず、むしろ経済活動の拡大を図ることによって税収増を実現するという視点を重視すべきということであります。すでに05年の税収増はまさにこれを実証しているわけでありまして、税収へのインパクトがいかに経済成長と密接な関係にあるかということかと思います。
例えば、もう皆さんご承知のように、過去3年間の実質経済成長率は2.3、1.7、3.2ということで着実に増加しているわけでありまして、これによって、昨年に比べると、従業員の給与は6兆4,000億円上昇している。あるいは配当は3,000億円増えている。あるいは法人所得は4兆6,000億増えた。あるいは設備投資額が8兆4,000億増えたということで、家計所得だけ見ても7兆円増えている。というようなことで、経済活動の成長拡大ということが税収増に結びつくということの一つの例であります。
税制改革を通じた企業競争力の強化、あるいはわが国の目指す産業構造の変化への対応を図るという点で、2つ目は、税制改革が財政、社会保障制度、あるいは行政改革と一体のものだということでありまして、税制改革を実現していくためには従来以上に、そうした制度改革との歩調をあわせた一体改革が不可欠であるということであります。この辺は特に政府与党、あるいは官の方々にも、この一体改革ということをぜひ念頭に置いていただく必要があるかと思います。
3つ目としては、税制についても、抜本的な改革を進めるに当たって、国民の理解、あるいは信頼、納得感というものが何よりも必要であります。税制改革の必要性については、パンフレットを1,000万部配ったからといって理解が得られるということではありません。やるべきことをやったということではないということでありまして、クロヨンや益税など、国民の不公平感を醸成する制度上の問題点がすべて解消しているわけではないことであります。給料や年金の手取りが1,000円、1万円減少すれば、実際の日々の生活に影響してくる人たちもたくさんおられるわけでありまして、このことを承知した上で改革を進めるべきでありまして、決して机上の案だけで進めるべきでないということであります。将来の負担増に対する国民の理解、納得を得るためにも、国民に対するコミュニケーションの方法についてはもっと改善、工夫していく余地があるのではないかと思います。
4つ目は、あるべき税制改革の方向性と実現可能な税制改革の方向性とは必ずしも一致しないということでありまして、それらを峻別して臨むべきではないかと思います。税制改革の実現を期すためには、持続性が必要であります。また、これからの情勢の変化というものを的確にとらえていく必要もあります。論理だけですべて解決できるというものでもないことは当然でありまして、現実に企業、あるいは国民一人一人の税負担が増加することに直面した場合に、そうした人々の理解を得る方法は必ずしも論理だけではないと言えます。いかなる改革案であれ、改革内容の実現可能性、あるいは時間軸というものを、あるべき論を忘れないにしても、それとは別に考えていく必要があるかと思います。そういう視点から私の意見を少し申し上げたいと思います。
1つは、国際競争力の強化に資する法人課税の見直しであります。わが国の法人実効税率が約40%であります。これは参考資料1、ページの5と6をご参照いただきたいと思います。欧州主要国、あるいは近隣アジア諸国に比べて高水準にとどまっております。米国では、それほどの差はないと言われておりますけれども、連邦法人税率が35%であるにもかかわらず、様々な制度によって実質的な連邦法人税率の負担が20%前半にまで低下しているという報告も受けております。
これにつきましては、例えば実効税率で見ますと、日本が39.5に対して韓国は27.5でありまして、約12.5%の格差があるわけであります。これにつきましては8ページをご覧いただくといいかと思います。現在、サムスンとトヨタの比較をしてみますと、同じような利益を上げた場合でも、約1,600億円のキャッシュフローの差がつくということでありまして、この税額だけでも大きな差がつくわけであります。また、本日の新聞にも出ておりましたが、ドイツが実効税率を10%下げるという方向に動いておりまして、またアイルランドの首相によりますと、競争力アップのために、今後10年間、様々な税制を行い投資資本の流入を図りたいということであります。
そのようなことを考えますと、法人税率というものの差が企業の競争力に大きな格差をつけてくるということであります。グローバルな国家間競争を勝ち抜くための重要な手段として、法人の実効税率の引下げを位置づけて、これによって国内企業の競争力を確保するとともに、対内の直接投資の拡大を実現することを目指していく必要があるかと思います。
経済活動は、当然、設備投資、あるいは雇用機会の拡大をもたらすわけでありまして、結果として、あらゆる税収の基盤を強固にすることになるのではないか。企業においても、経費の削減、あるいは投資機会の縮小による金利負担の削減を図り目先の収支のつじつまを合わせても、それで持続的な改革ができるということではありません。成長があってこそ改革が実現できるのではないか。という意味で、私はやはり経済成長、あるいは拡大というものが税収を拡大するにおいて根本的なテーマであろうかと思います。
したがいまして、わが国においても中長期的には、成長戦略の一環として法人実効税率の引下げに踏み込むべきであるかと思います。また、短期的に見ますと、減価償却制度の見直し、あるいは償却資産に係る固定資産税の廃止等によりまして、企業の設備投資を後押しする必要があるかと思います。
外国税額控除制度につきましても、企業が国際的に不利益をこうむらないような制度にする必要があります。減価償却の資料のところに出ておりますけれども、例えば減価償却制度の見直しにつきましても、日本の設備の老朽化が進んでいるわけであります。15年間で約2年7カ月ほどの老朽化が、全産業で見ますと日本で進んでおります。そのためには償却可能限度額の撤廃。日本は今95%まででございますが、他国は100%になっている。日本だけであります。あるいは法的耐用年数の短縮、これは少なくとも他国並みにする必要がある。現在、日本が最長であります。あるいは設備区分が388区分になっております。大ぐくりをして、アメリカの3区分、韓国の4区分、このような方向へ持っていきませんと、コストアップになり、技術革新への対応がおくれることになるだろうと思われます。
移転価格税制につきましても、税制の内容の是非以前に、その運用ルールをもっと明確にして、企業に対して予見可能なものとしていく必要があるわけであります。一部企業が新聞で報道されておりますように、移転価格税制におきましても、かなりこの決着に時間がかかると思われます。その間決算が確定できないというような問題も起きるわけでありまして、この辺につきましても、運用ルールをもっと明確にする必要があるかと思います。
次に租税の特別措置法ですが、検証はもちろん必要でありますけれども、役割を終えたものについては廃止等をしていくことはやむを得ないと思います。ただし、すべての租税特別措置法を廃止にするのではなくて、必要な研究開発促進税についてはむしろ強化することが必要ではないか。メリハリをつけたものにしていく必要があるわけであります。
特に国際競争力強化という面で言いますと、中国、アメリカは逆に減税、あるいは支援策を講じているということでありまして、国際競争力をつけるにおいても、とりわけ技術の研究開発促進につきましてはそれなりの措置を講じないと、日本としてはほとんど資源を持ってないわけでありまして、人材と技術以外は、日本が将来、国際的なステータスを持ち、あるいは競争力に打ち勝つためには人と技術しかないわけでありまして、この技術の面においての危機感が非常に薄いと考えざるを得ないわけでありまして、例えばブッシュ大統領は今回のステート・オブ・ザ・ユニオンにおきましても、1月においてリサーチという言葉を7回も使用したということでありまして、あるいはまた技術系の人材の育成にどれほどの力を注ぐかを述べております。
それに対して日本は、首相は一度もというか、ほとんどこの技術については、首相の指針、施政方針演説では述べてないと私は思います。これほど国の危機感の違いがあるということを申し上げておきたいと思いますし、こういったものについて日本としてはもっと力を注ぐべきであると、あるいは税制の面で支援していくべきであるかと思います。
次に地方の法人課税についてでありますが、地方行政は住民の負担で住民が望むサービスを提供するのが基本であります。これは7ページと13ページに資料を出していると思います。受益と負担の関係がわかりやすいことは当然重要であります。地方行政を支える財源として、個人所得税と居住用の資産に対する固定資産税を中心にするとともに、税源の偏在、あるいは景気変動による影響への観点から、地方行政の効率化と歳出の見直しを前提に、地方消費税を拡充して、地方における税源として活用することも必要と考えます。
企業は地方において、法人所得課税以外にも、固定資産税、あるいは事業所税など、多大な負担をしているわけであります。地方における法人所得課税については、国に集約するなどして段階的に廃止をし、国家間の競争戦略の一環としてその水準が決定されるのが望ましいと私は思います。また、本来の意味での課税自主権は、住民が選挙権の行使によって行政サービスの水準と、それに見合った負担を選択することによって発揮されることが基本でありまして、選挙権を持たない企業に対する超過課税、あるいは法定外税については慎重であるべきだと思います。
次に個人所得課税についてでありますが、個人所得課税については、個人の能力発揮と負担の公平性の観点に立った見直しが必要と思います。所得課税については国の基幹税として位置づけられるものでありまして、一定の再分配機能を有する必要はありますけれども、その一方で、個人の活力、あるいは勤労意欲を損なわないことも重要と思います。また、所得水準の低い高齢者、就労しようにも就労できない。結果、低所得に甘んじているような人たちに対しては過重な税負担増を避ける配慮は当然必要かと思います。
先般も所得課税の上限を50%以上という声が出ておりますけれども、グローバルな市場社会で競争原理に反するのはいかがかと思いますし、もちろんセーフティネットは別の視点で論ずるべき、あるいは考えるべきと思います。
今後、社会保険料を含めた公的負担が増加していく中で、国民が公平感を実感できることはこれまで以上に重要でありまして、そのためにも、所得捕捉の公平性を図ることが必要です。現行制度の効率的な面は残しながら、社会保障と税を通じた共通番号による一元的なシステムづくりに取り組むべきであるかと思います。
世代間の不公平の是正、あるいは機会の平等を図る観点から、相続税についても当然見直すべき時期に来ていると思いますけれども、しかしながら、備蓄の美徳とか貯蓄の大切さというものをなくすような方策はよくはないと思います。いずれにいたしましても、バランスのとれた考え方をしていく必要があるかと思います。
消費税については、歳出改革の実施等によっても、高齢化に伴う社会保障関係費の増加が避けられない以上、また経済活力、国際競争の観点から、企業や個人への直接税による税収増に頼ることに限界がある以上、今後は消費税を重視していかざるを得ないと思われます。いつ、どの程度というのは、これから歳出削減を徹底して進めていく中で考えていく必要があります。経済情勢、あるいは税率引上げの影響を十分見極めながらも、徐々に消費税率を上げざるを得ないと思われます。ただし、徹底的な歳出改革を必ず実行していくということが大前提になるかと思います。
最後に、企業で例えば痛みを伴う改革を推し進めようとすれば、正しいといいますか、信念を持った経営者と社員の理解が前提であります。これから税制改革を実現していくためには、やはりそうした政治家の強いリーダーシップと国民の理解が欠かせないということ、これが何にも増して必要だということを強く感じております。そのことを申し上げて、終わりたいと思います。
〇石会長
ありがとうございました。日ごろのお考えのほんの一端を今日お述べいただいたと思いますので、まだこれからもいろいろ本格的な議論にご参加いただきたいと思います。
今の丹羽さんのお話に直接質問したいという方もいらっしゃるかと思いますが、時間の関係もございますし、今日は、法人課税等の議論もございますので、その際に合わせてご発言いただきたいと思います。
いずれにいたしましても、丹羽さんから、法人税について基本税率が高い、あるいは減価償却が問題であるというようなご批判も出ておりますし、あるいは地方法人税に関しましても、これはそろそろ撤廃してもいいではないかという話、あるいは移転価格税制、国際課税につきましても少し問題提起がございました。これから主な論点についてご説明いただきますが、事務局の方々にはぜひその点を留意して、まず、反論というわけでもないけれども、日ごろ考えていることを言っていただきたい。それを受けて、我々税調は積極的に各々意見を交わすという段取りがいいかと思います。
それでは、法人課税、国際課税につきまして、佐川さん、米田さん、武内さん、各々短い時間ではございますが、資料はすでにお読みいただいているわけですから、簡単に論点の所在だけおっしゃっていただければと思います。では佐川さんから。
〇佐川税制第三課長
それでは、今、丹羽委員のほうからのご議論が法人課税を中心としてというところにございましたので、「検討課題」のところでマルが6つございますが、とりあえず国税のところでは、今お話がありましたのは、国際課税のところは後ほどご説明ありますので、最初のマルの「税率」のところと3番目のマルの「減価償却制度」のところについて少し読ませていただきます。
まず「検討課題」の「税率」でございますが、今お話ございましたように、国際競争力の観点から税率を引き下げるべきとの意見もございました。ただ、法人税率につきましては、すでにほかの先進諸国並みとなっており、引き下げる状況にはなく、また、国際競争力維持の観点を踏まえれば、当面、現在の水準を維持することが適当というご意見もございました。
それからアジア諸国との競争という観点も大事であって、そういう観点から税率を引き下げるべきというご意見もございましたが、これらの諸国では、税金という話だけではなく、人件費、地代、社会資本、その他もろもろの制度が大きく異なっていることも十分踏まえる必要があるというご意見もございました。
それから「地方法人課税」のところにつきましては、諸外国と比較して、今おっしゃいましたように、税率が高いというご意見もございます。そのかわり地方団体の役割や歳出構造などを無視して諸外国と単純に税率を比較するということが適当なのかどうかと。また、法人が地方の行政サービスから受益していることを考えれば、現状の負担は妥当ではないかというご意見もございました。
次のマルを飛ばして、次の2ページの「減価償却制度」の話でございますが、まず減価償却制度の考え方でございますが、期間損益を適正に計算するという観点から見れば、償却資産の取得価額を使用期間にわたって費用配分するものであるということでございます。そういうご意見でございます。償却可能限度額について、国際的整合性の観点から、耐用年数経過後も使用している場合には備忘価額に達するまで償却を認めるべき。要するに国際的にゼロにすべきだと、100%まで償却を認めるべきという今の丹羽先生のご意見もございます。それからその次の法定耐用年数の話、あるいは簡素・柔軟性について検討と。この2ポツと3ポツのこの3点について、今、丹羽委員のほうからご紹介というか、ご要求と申しますか、そういうご議論があったということだろうと思っております。
ただ、その下のポツでございますが、現行の法定耐用年数は実際の使用年数より大幅に短いということをどう考えるかというのは、一番上のことでございますが、減価償却そのものは期間損益、収益に対して費用を配分するという考え方でございますので、実際に使用年数が長ければ法定耐用年数そのものも使用年数にあわせるということもあるのではないかというご意見でございます。
それから減価償却制度については、すべての業種に関係し、課税所得の額に大きく影響することから、償却資産の使用実態、あるいは諸外国の状況について広範かつ十分な調査を行う必要がある。それから生産設備の新陳代謝を促進する観点、あるいは財政の影響に配意することが必要。それから減価償却制度の見直しは抜本改革の中で総合的に行う必要ということでございます。
それで、今、石会長のほうから、事務方がもう少し解説をというお話もございましたので、今のところで少しだけ敷衍させていただきますと、よく一部の報道等でございますが、減価償却のところで、丹羽委員の資料の9ページにもございましたが、償却可能限度額100%への見直しと、現行95%だというようなお話がありますが、ややフレーズだけ見ると誤解を招くかもしれませんので確認的にご説明申し上げますが、法定耐用年数10年の機械がございますれば、それを仮に5年で使い切ってしまって除却するということであれば、それは当然、5年で100%償却できるわけでございますし、通例、耐用年数10年のものは10年で使い切って除却するということで、その場で100%除却できるということでございまして、この残存価額の話は、法定耐用年数10年のものを10年を超えて使っている場合について最後5%が残るということについて、黒字企業の方々がそこについても費用化してほしいというお話がここの話でございます。
そうしますと、生産設備の新陳代謝というお話が経済界からもございますが、10年の耐用年数のものを10年以上使っている人にとってのご要求ということと生産設備の新陳代謝ということがどのように結びつくのかというようなご議論もあろうかと思っております。とりあえず、減価償却、そのような観点であろうかと思います。
いずれにしましても、いろんな業種に関係しますので、ここにもございますように、かなり広範な調査を行いながら地に足のついた議論をしていくということが必要かと考えているところでございます。
それからその下のマルのところは多様な事業形態への対応の話、それから公益法人制度改革への対応の話というのがございます。
国税については以上でございますので、最後、地方法人課税のところを。
〇石会長
米田さん、お願いします。
〇米田都道府県税課長
それでは、地方独自の問題について、地方法人課税、3つ問題点を提起させていただいております。いずれも法人事業税についてでございます。
まず最初、外形標準課税でございますが、平成16年の4月1日以降開始された事業年度から適用されているものでございまして、1つ目はその意義をご指摘いただいたということでございます。
2つ目のところにつきましては、減資の問題でございます。対象が資本金1億円超の法人にこの外形標準課税が限られているということで、資本金を1億円以下にするというような減資というのが見られるということで、今後その状況について注視すべきであるというご意見でございました。
3点目は、欠損金の繰越控除の関連でございます。現在、法人事業税につきましては、7年間、欠損金の繰越控除が認められているわけでございますけれども、法人事業税というのが応益課税という性格を非常に強く有しているという観点から見れば、その年々の黒字、赤字は影響するにしても、その以前の赤字分まで持ってくるのはいかがかというようなご意見でございました。
以上です。
〇石会長
ありがとうございました。
それでは、国際課税について、武内さん、お願いします。
〇武内参事官
国際課税でございます。3ページ目をご覧いただきたいと思いますが、まず視点でございますけれども、3つあろうかと思っております。経済活動の実態の変化への対応というものを十分踏まえなければならない。さはさりながら、税の公平性、中立性の確保、租税回避行為の防止も図らなければならないと。さらには確実な執行の確保、絵に書いたモチではいけないと。それから手続の整備、事務負担を軽減することも十分視野に入れなければいけないということが3つの視点かと思います。
検討課題、3つ挙げさせていただいております。1つは、わが国の課税権の範囲でございまして、外国法人や非居住者が日本で所得を稼いでいる場合にはちゃんと課税できるようにしているかどうか。とりわけ今後問題になりますのは、クロスボーダーの組織再編につきまして、適切に対応を図っていく必要があろうかと思っております。また、あわせて、わが国企業の場合であっても、本来わが国で課税すべきものについてきちんと課税できてないものがあるのではないかということについては、引き続きフォローしていく必要があろうかと思っております。
それから次、外国税額控除制度でございます。丹羽委員からの資料にも入れていただいております。これをご覧いただいてもおわかりいただけますように、わが国の制度、諸外国の制度それぞれ特性がございます。緩い面があればきつい面もあると。そういった中で、わが国としても、わが国企業の国際競争力にも配慮して、それから配当という形で日本にお金が戻ってくるというような面ももちろん考えながらも、他方でタックスプランニングに長けているような会社だけが枠をうまく使って、外国税額控除制度で日本での納税額を抑えることができるというようなことについても何らかの手立てが必要ではないかと考えてございます。
3つ目、外国子会社合算税制、過少資本税制、移転価格税制とございますけれども、この中では特に移転価格税制につきまして、丹羽委員からもご指摘いただきましたし、最近新聞で報じられてますものですから、皆様方、委員の先生方もご関心をお持ちかと思っております。
確かに、丹羽委員の資料にもございますけれども、移転価格税制での課税実績額、平成16年度には随分増えてございます。これは特に課税を強化したということではなくて、個々の個別の事案の積み上げの結果こうなったわけでございますけれども、背景を一言申し上げさせていただけたらと思ってございます。
最近、わが国企業の海外への拠点の移転というものが非常に多く行われてございます。そういった中で最近目につきますのが、海外の製造拠点なら製造拠点の移管に伴いまして、例えば特許権だとかトレードマークだとかノウハウだとか、そういう無形の資産についてどう取り扱うのかと。海外子会社にただであげているような形になっているものについては、やはり日本の親会社の方に所得が生じたと考えるべきではないか。そういったものが目新しい事例の一つ。
さらにはもう一つ、企業グループ内の役務提供取引という言い方をさせていただいてございますけれども、企画調整、予算の作成、経営指導の実施、試験研究開発、いわゆるR&Dの活動の成果、そういったものについても、本社で一生懸命お金をかけてそういうことをやって、子会社がそれを活用したときには、子会社のほうの所得からは経費が引かれないというのはやはり問題ではないかと。そういう問題意識から、移転価格税制を使いまして、最近そういった新しい方面につきましてもいろいろと庁のほうでやってきておると。そういったことがある意味、最近の新聞報道にも反映されているバックグラウンドにあるのかなと私ども推測するわけでございますけれども、ことほどさように、国際課税の世界は、企業の経営活動、経済活動の実態を追いかけながらやっていかなければならないわけでございますから、時と場合によってはおやっと思われることもあろうかと思いますけれども、私どもも、よくも悪くも実態を一生懸命追いかけながら地道にやっていきたいと思ってますので、引き続きご指導をお願いしたいと思います。
以上です。
〇石会長
ありがとうございました。
それでは、法人課税、国際課税、2つにつきまして、丹羽さんのプレゼンテーションを踏まえ、かつ、事務局からご説明があった内容につきまして、委員の方から積極的にご意見を賜りたいと思います。特に丹羽さんに今日は質問したいという人もいるかと思いますから、ご遠慮なく。
佐竹さん、どうぞ。
〇佐竹委員
地方の法人課税のお話がちょっとございましたけれども、これをできれば縮小というご趣旨のご意見でございますが、我々、地方の立場からするとやや違和感が感じられるというのは、今、地方分権の推進という中で、やはり経済の自立というところが一番我々に課せられた課題であるわけでございます。そういう中で、かなり全体的に逼迫している地方財政の中でも、我々、すべての自治体がそうかどうかは別にいたしましても、大半の自治体で、産業政策に対する予算の確保、ここはほとんど単独費であります。農業以外のものについてはほとんど単独費。例えば都道府県にあっては、研究開発機関、これは地方中小企業ばかりではなく、私どものところは大企業もほとんどそこを使っております。
我々、市町村レベルになりますと、中小企業の金融政策、あるいは人材育成等と非常に大きなウェイトといいますか、予算の確保というものはほかのものに比べて優先度を上げて今やっておるわけでして、それは市民に対する説明としては、いずれ産業政策をきっちりやることによって地方の経済力をつけると。それは法人課税としてこれが還元されるというところが市民に対する説明でありますけれども、そこら辺との、やや実態との、法人課税が非常に全体として圧縮されますと、そこら辺の意気込みと、もう一つは、諸外国の地方の経済政策と私ども日本の経済政策が、日本の場合はかなり地方が持っているところは多いのでありますね。私も、産業政策、長く県でもやっておりましたけれども、実際の県内の技術行政になっているのはほとんど地方機関なのです。国は一部の主要プロジェクトといいますか、大企業向けはやってますけれども、そういうことからしますとどういうふうな道筋になるのかなと、ややそういう違和感が感じられます。
〇石会長
今、丹羽さんに対するご意見ですね。
〇佐竹委員
はい。
〇石会長
何かございますか。
〇丹羽委員
一遍にぐっと変えるということは大変にインパクトもあるし、障害も出るかと思うのですけれども、基本的な考え方として、個人所得税と、それから居住用の資産に対する固定資産税をやはり中心に据えていく。また、地方の消費税を拡充していくということが基本ではないかと思っておりまして、もちろん、経済が成長すれば、当然のことながら、先ほど申し上げたように、給与所得は上がるでしょうし、あるいはまた配当も増えるでしょうし、そのような面で税収もかなり上がっていくのではないかと。これは私の資料の13ページにありますように、日本の法人所得課税、特に地方の税収構成の中で非常に高いのですね。これはやはり国税に統一していく必要があるのではないかと。そういう中で地方税の構成も見直していく必要があるかと思うのですね。これだけ急にとってしまうということはもちろん正しくないわけでありますから、そういう視点で、国税と地方税の関係の中で、この地方の法人税というものも考えていただく必要があると、こういう趣旨であります。
〇石会長
当然、かわり財源も念頭に入れというお話ですね。
遠藤さん、どうぞ。
〇遠藤委員
地方法人所得課税の撤廃、税率引下げというので、今、佐竹委員からお話がありましたけれども、実際問題として、我々、地方に勤務してますけれども、県庁に勤務すれば、県民と県内の大企業、中小企業、同じなのですよ。やはり住民的感覚を持っているのですよ。行政府としては。そして企業誘致をするためにいろんなことをやるのですね。それはやはり知事なり市町村長なりが、県民、それから企業の充実を図るためにやるのであって、そういう企業も含めて税金が入ってくるのでそういうことをやるので、税金が入ってこなければやりませんよ、それは。ですから、そういう点をやはりちょっと大企業の方々にも理解をしていただきたいなと思います。
〇石会長
では、岩さん、関連ならどうぞ。
〇岩委員
地方消費税の拡充ということをおっしゃられたのですけれども、これは消費税全体の中でどういうふうなイメージをお持ちなのか。つまり、国税である消費税は、財政再建、それから社会保障と切っても切れない。丹羽さんも財政再建が必要だとおっしゃっているわけで、では地方消費税と国税である消費税の全体的なイメージというのはどういうふうにお考えなのか、ちょっと伺いたいと思います。
〇石会長
ではあわせて何かお答えがあれば。
〇丹羽委員
先ほどの第1点の企業の誘致ということでありますけれども、企業の誘致は必ずしも企業の法人所得課税を増やすということではなくて、やはり雇用を拡大するという面も非常に大きいと私は思いますし、そういう中で、個人所得税というものに焦点をあわせて先ほど申し上げたわけでありまして、地方消費税と国の消費税をどのような配分をするかということについては、私はきちっと計算したことがございませんし、やはりこれはバランスをとって考えるしかないと。今、私の知識の中ではそれぐらいしか答えはございません。
〇石会長
岩さんは地方消費税の性格をお尋ねだったのですか。
〇岩委員
ええ。今が1%でしょう。だから、今後消費税を上げていく場合、どんな具体的なイメージを持っているかと。
〇石会長
わかりました。今からバランスをお考えになるというお考えですから、これからの問題でしょうね。
今の関係ですか。どうぞ。
〇井戸委員
何か私も言わないといけないような気がして。
〇石会長
そんなこともないですけどね。わかりますから。
〇井戸委員
私はバランスの問題だと思うのですね。廃止まで言われてしまうと、法人というのは東京だけで活動しているのかと。じゃどうぞ勝手に活動してくださいと、こう言いたくなるのですが、そうではなくて、おっしゃっておられる意味が、例えば変動性の非常に激しい所得課税から消費課税のほうにウェイトを移したほうが変動は税体系としては少なくなるぞとか、そういうタックスミックスとしてどう考えるのだというようなことも含めておっしゃっておられるとすると、一つの提案でないかと思います。
あわせまして、もう一つ大事なことは、もともと法人事業税は、所得を課税標準にとってますのは、いわば便宜的に所得を課税標準としてとっているのであって、本来的に言いますと、昭和25年にシャウプ税制を提案されたのは加算型の付加価値税だったわけでありますから、そういうことを考えてくると、もっと適切な課税標準、例えば外形標準課税に全部一本化するとか、そういうことも一つの、将来の目標としては考えられてもいい。ただ、法人は事業税払わなくていいぞと言われますと、例えば県の行政との関係で言いますと、今も事業税、物税として、固定資産税と同じ位置づけになっているのですね。そのような性格を持っている税として負担をしていただいている。たまたま所得が課税標準として借用されているのだ。だから、その中で法人の県との関係での税負担のあり方をどう考えるかと、こういう観点でご議論を賜ったらありがたいなと、こう思います。
〇石会長
固定資産税の設備関係も同じような話ですね。当然のこと。
〇井戸委員
そうです。
〇石会長
それでは、丹羽さん、特によろしいですね。何かあれば。
〇丹羽委員
さっき申し上げたように、地方の法人所得課税が存在する国というのは非常に少ないのですよね。国際的に見ましてもね。そういうことも考えると、この13ページの表につけてありますように、私も、一気にオール・オア・ナッシングで事が済むような社会ではありませんから、やはり今おっしゃったように全体の中でバランスをとってやっていく必要があるかと思うのです。
〇石会長
関連ですか。どうぞ、村上さん。
〇村上委員
今の丹羽委員さんのプレゼンテーションで、ちょっと悪く解釈すれば、法人二税とかそういうものを地方消費税に置きかえるというようなご意図があるのかなというふうにちょっと聞こえるので、そんなことはないとは思いますけれども、ちょっとそういうふうに聞こえることと、それからもう一つ、減価償却に関して日本が一番おくれているような、そういう認識を示されたかと思うのですけれども、日本の約300万ある企業ですよね。全体見ると、多分いろんなケースがあって、例えばサムスンとシャープ、あるいは松下との競争の関係とかよくおっしゃるけれども、それは非常に限られたドッグイヤーのような、非常に短いサイクルの償却が必要な業種、あるいは企業だし、それから、そうではなくて、装置産業みたいに、いや、もう16年でいいのですよというところもあるわけですよね。それから中小企業になると、今度は実際上、償却そのものが負担になっていると。それで、赤字だという企業もたくさんあると思うのですよね。したがって、こういう政府税調でものを言うときは、いろんな実態を相当調べて、これが本当に日本の企業にふさわしい償却制度かというのを探り出さないといけないだろうと思うのですよね。だから、あまり表にポーンと、償却制度は日本は遅れているから早く見直せと、95ではなくて100だというふうに一足飛びにいくのはどうかなと私は思います。それから95から100といっても大変な金になりますよね。相当の減税額になるのではないですか。
〇石会長
それは後で調べてもらいましょう。
〇丹羽委員
それは私の思いつきで申し上げているわけではございませんで、やはりそれなりに経済産業省とかいろんなところに問い合わせをして申し上げているわけでありまして、特に私が気をつけているのは、やはり設備の老朽化というのが進んでいるわけでありますし、それから95%で5%の残存簿価を持っているのはもう日本だけなのですね。これはできるだけ早く償却して、耐用年数以内でも償却して新しい設備投資に持っていく。そして生産性を上げる。これがまた最終的に税収につながるのだという考え方なのですね。
したがいまして、必ずしもほかがそうだから100%にしろよというような暴論ではないということと、それからサムスンとシャープの話も出ましたけれども、これはもう実効税率の問題でしてね。特にトヨタとサムスンを、ちょっとシャープばかり言うとあれだから調べてみたのですよね。そうすると、例えばトヨタは売り上げ21兆、サムスンが8兆、それで税引き前の利益がトヨタが2兆873億、サムスンは1兆3,400、法人税は、トヨタが、日本で言うと7,951億、サムスンは2,400億なのですね。日本と韓国の法人実効税率は12ポイント、差があるのです。それでいきますと、税後の利益がトヨタは1兆3,700億、そしてサムスンが税後の利益は1兆1,700億なのですね。それだけ税引き前で大きな差があっても税引き後で同じぐらいになってくる。
もしサムスンが日本に立地するということになると、やはり1,600億ぐらいの負担が増えるわけですね。そういうことを考えると、実効税率によって、この1,600億がどういうことかというと、シャープの液晶工場の亀山の設備投資総額なのですね。それほど大きいですよということをちょっと申し上げておきます。
〇石会長
では尾崎さん、お待たせしました。どうぞ。
〇尾崎委員
経営の知識がないものですから、極めて基礎的なことを教えていただきたいのですが、2点ありまして、1つは、企業の財務、例えばPLを考えてみますと、売り上げがありまして、仮に売り上げ2,000億と預金を考えてみますと、税引き前で7%の利益があるとしますと、税引き前で大体140億ぐらいの利益があるわけですね。そこで今度は税金を適用しますね。仮に実効税率を5%下げたとして、7億円ぐらい、そこで税引き後の利益が増えるわけですね。サムスンだ、トヨタだと言われると何か想像もつかないのですけれども、一般的に考えると、その程度の話でそれが本当に国際競争力の強化に顕著な影響を与えるものかどうかということについて、感覚がないのですね。それをちょっとご説明いただけたらというのが1つ。
それからもう一つは、資金の流れを考えてみますと、現在、政府は大赤字、それで個人はやっとトントンぐらいですよね。そうすると、黒字になっているのは企業だけなのですよ。企業はお金をたくさん持っているという状況にあって、どうしてそれが設備投資やら国際競争力強化のために使われないで、もっぱら銀行に対する返済に充てられているのかと。それは税制を少しいじれば本当に変わるのかということの感覚もよくわからないのですね。その辺のところを教えていただきたい。
〇石会長
よろしくお願いします。
〇丹羽委員
感覚をお教えするといっても、ちょっと私も、どのようにご説明を申し上げていいか、数字というのはお話しできますけれども、感覚的にどの程度の感覚を持っているのかということなのでございましょうが、さっき申し上げたように、例えば日本と韓国の実効税率が12ポイントの差があると。その中で実際のキャッシュフローにどれぐらいの余裕ができるかということをお考えいただければ、新しい設備投資に自金でどれぐらいできるかという問題になってくるわけで、これはもう企業の競争力からいって非常に大きな差が出るだろうと思います。
1億2億はどうってことないと、なかなか1千何百億というとよくわからないけれども、1億2億でそんなに差があるのかということですが、企業それぞれにとってみると、12ポイントの差というのはやはり大きなものだと思うのですね。収益力が12ポイント差がつくということは、やはり非常に大きな問題だろうと思うのです。感覚的にどうかと言われますと、各企業によって感覚は多少、200億の売り上げのところと2,000億、2兆円の売り上げのところというのはやはり違うと思いますけれども、そういうことで、各々の企業によってそのインパクトがやはり12%あるのだと考えていく必要があるかと思います。12%もうけるというのは大変なことなのですよ。
〇石会長
では河野さん。
〇河野委員
皆さんがまだお聞きにならないので、基本的なスタンスを確認しておきたいのですよ。いいですか。この文章によれば、「税制改革への意見」で、(法人課税を中心として)と書いてあるのですね。我々の常識では、議論の流れは、法人課税はもちろん当然議論の対象になるし、所得税もなるのだけれども、どう考えても、消費税を中心に議論して、それだけではなくて、これは政治家の言い方も我々の言い方も全部同じだけれども、ほかも全部込み込みで話しましょうねと、こうなっているわけ。そうすると、法人税中心というのは、たまたま言葉がこうなってしまっているので、事務方のミスプリントかもしらんけれども、全体としての構想からすれば、今度の税制改革、来年か再来年かわからないけれども、全体を考えて、その中で法人税も考えるというのが普通の考え方だと思うのですよ。
それに関連して言うと、これはひょっとして、お話を聞いていると、消費税の話はどうやら、議論の流れからすると、来年以降の話らしいと。大体皆さんそういうふうな流れになっているわけだ。そうすると、このペーパーでおっしゃりたいことは、消費税はそうかもしれないなと。しかし、国際競争力、その他の観点からすれば、年末にも、今年の末ですよ、年度改正の中でも、今おっしゃったことについて全面的に100%できるとは思っていらっしゃらないと思うけれども、しかし、前進的に一歩でも二歩でも踏み出したいものだとお考えになっていらっしゃるのか。つまり、先行して法人課税の問題を議論してもらいたいのだというのが本当のお話なのか。それならそれでみんなの受け取り方も少しずつ違ってくると思いますけどね。そこのところの基本的なスタンスの問題を聞きたい。
〇石会長
ほかの方も同じ疑問かもしれません。どうぞ。
〇丹羽委員
今おっしゃったように、今日は法人課税を中心に私がプレゼンテーションするということでありますから、全体をプレゼンテーションするというより、私の立場から言って、企業のサイドで法人課税。それから、今ご指摘のように、一気にできるとは私は思っておりません。やはりグラジュアリーに、いろんな全体の中で少しずつ一歩でも二歩でも前進をしていただきたい、こういう趣旨であります。
〇石会長
私もお願いの趣旨として、経済界の代表の丹羽さんですから、全般的にやってはいただきたいけれども、やはり自分の守備範囲といえば法人課税になるだろうという意味で、法人課税という形で僕のほうは受けとめさせていただいたので、ほかのことについてはいずれまた積極的なご発言があろうかと思いますので、お聞きください。
では、林さん、どうぞ。
〇林委員
1点は法人間の受取配当の話なのですけれども、いわゆる二重課税をどう考えるのかということだと思うのですね。これは連結納税制度が導入されたときに、法人間の受取配当の益金不算入が圧縮されましたね。これはやはり二重課税ということをどうとらえるかによって、この改正の評価が違ってくると思うのですね。ですから、このあたり、要するに受取配当、とりわけ関係法人からの受取配当、これは今のままでいいのかどうか。これはやはり二重課税というぐあいにとらえていくべきなのかどうかという、この法人税の性格というか、根拠の話になるかもしれませんけれども、ここはきちっと押さえておかなければいけないということが1点と、これはどのようにお考えなのかということが1つご質問です。
それからもう一つは地方法人課税なのですけれども、今日は、論点のところでいただいた資料で、2ページの地方法人課税のポツの1つ目ですが、「充実に努めていくことが必要」というぐあいに書かれているわけですね。この場合の充実というのは、税率を上げるという充実。これは今資本金が1億円以上という形になっているわけで、そういう意味では、10%超えないですね。もう1%ぐらいしか外形標準課税の対象になっていない。これを資本金を下げていくといいますか、下げることによって充実するということができれば、2つ目のポツの減資の問題というのはある程度片がつくわけですね。
〇石会長
今の話は直接丹羽さんへの質問ではないのですね。今はもっと広い意味ですから、第1点のことだけ後でお答えいただくと。
〇林委員
それで、要するに減資の問題というのは、やはり今の1億円ということがあるので減資の問題が出てくるので、これを対象を広げるということでクリアすることも可能だしという、今後、外形課税を充実させていくといったときに、対象を広げる形で、これはおそらく地方法人課税の問題とつながってくるだろうという気がするわけですね。ですから、今後充実していくという場合に、やはり早く外形課税をフルに導入するというような形で進めていくというぐあいに考えていけば、この2つ目のポツの問題は、これは非常に短期的な問題だととらえることも可能だし、それから3つ目のポツも、これも所得割だとか付加価値割だとか資本割とか、非常に複雑な仕組みになっていて、完全に、いわゆる付加価値を導入していないということによって出てくる問題であると考えれば、これも地方法人課税の改革のときに議論したように、外形課税が今非常に中途半端な形で導入されているので、これを中長期的に導入していくことになれば、この2つ目、3つ目のポツの問題はクリアできるので、ここはやはり短期の問題と、もう少し長い目で見る問題というようにきちっと分けて議論すべきなのか、あるいは、中期答申では、やはり将来的にはフルに大いに課税としてふさわしい法人事業税に変えていくというような形で提案するのか、そこらはきちっとしておかないといけないのではないか。
〇石会長
第2点はご意見として承ってよろしいですね。
〇林委員
はい。
〇石会長
では法人間の配当の損金算入云々で、丹羽さんのほうから何か具体的にお考えがあれば。二重課税でよいかどうか。
〇丹羽委員
非常に難しい問題でして、我々も賛否両論といいますか、社内でもそういう話が出ておりますけれども、やはりこの国の税体系の中でどういう折り合いをつけていくかというようなことでありまして、答え、今持っておりません。
〇石会長
では、宮島さん。
〇宮島委員
今の前半の林さんの意見と若干重複するわけでありますけれども、今日は法人税ですから、法人の所得に係る税の負担側の大小の問題の議論なのですけれども、その経済の活性化の関連が、我々は、法人の所得に対する課税というのは、ある意味では株主に対する配当の課税なり、あるいはキャピタルゲインの課税と両方結びつけていつも考えて議論することが多いわけですね。そうすると、法人税の税率だけの実効税率が重い高いかという議論と、それから所得税のほうでの配当に対する課税の仕方、二重課税の調整をやっているかどうかとか、それとあわせて見て、株主の税負担というのが1つはいろんな活性化であるとか何かという議論に、今の世の中の議論というのは、一方はそういう議論は当然あると思うのですね。
ところが、私も不勉強ですが、法人税の実効税率だけ比べてやってみる。ただ、アメリカは二重課税の調整を全くやってない国ですから、法人課税と、おそらく株主の配当課税というのは足し合わせて考えなければならない。日本は税額控除、調整してますし、ヨーロッパ諸国は一部インピュテーション並べて調整したりしている。だから、そういう法人所得に対する、法人段階と、それから株主段階との課税を合わせてみてちょっと議論をできればしたいと思ってまして、経営者の方にとっては法人税が問題だとは思いますけれども、やはり少し資本所得とかそういうもの全体の水準というのがどうなっているかということを、私はできれば主税局のほうにもそういう観点でもし資料をつくってもらえれば、この数年、特に日本では特定口座などを設けて、配当課税ですとか譲渡益課税についてはかなり思い切った税の軽減を図っていることもありますし、そういう面でちょっとあわせて議論できればというのが私の気持ちです。ですから、これは単に意見でございます。
〇石会長
丹羽さんに経営者として、法人税の転嫁の問題についてお答えいただきたい。要するに法人段階だけの話ではなくて、もっとその先、配当とかキャピタルゲインでだれが負担しているのだと。これは学者的に言うなら転嫁の問題ですから、これについてどうお考えかというので、もしお答えがあれば。
〇丹羽委員
私、学者ではありませんけれども、私の感覚、経営者としての考えから言いますと、企業への課税は、企業が一義的に負担者であると。しかしながら、実質にはやはり消費者とか労働者とか投資家、国民全体が負担するということになるわけでありまして、それは一義的に企業が負担しているということだと思うのですね。これを減らすということは、それだけ消費者、労働者、投資家にリターンがいくのだということになるわけでありますね。というのは、法人税が下がれば、実効税率が下がれば、それだけプラスは最終的には、長期的に見て、やはり消費者であり、国民であり、投資家に回っていくのだと考えているのです。全部企業がひとり占めしてそれをとってしまうということではなくて、やはり実効税率を下げるということはそういう意味で経済の成長を促して国際競争力も高めていくことができるのだと。ということで、私は、この法人課税の大きな主張のところは、国際競争力、経済成長力を高めるという意味で非常に重要だと申し上げたと。
〇石会長
今、宮島さんから大変難しい宿題が事務局に出て、法人税の負担はだれがしているか。こんなこと言ったってすぐ出てこないよね。でも、最近の動向等々で、もし調査があればいずれ出していただく。今何かお答えございますか。
〇佐川税制第三課長
石会長おっしゃるとおりで、かなり古いところからの政府税調の答申をずうっと今も見てきておりますけれども、基本的に宮島先生のご提案、私、ここにも平成8年のを持っておりますが、どういうふうに展開するかというと、法人擬制説の立場に立てば、もちろんそういう二重課税の問題を完全に調整すべきだという議論もありますが、ここでの長年の議論はそういうことではなくて、いろんなところに転嫁が起きているので、なかなかこれは結論が難しいというのが積年の政府税調の今の段階の議論だと理解しております。
〇石会長
そういうことなのですね。
では、井上さん、お待たせしました。
〇井上委員
私は中小企業の経営者でして、大企業ということよりも中小企業の立場に立ってものを申していても、今の丹羽委員のおっしゃることについては大賛成ということです。ともかく企業をいかにして拡大化させるといいますか、ことによって、元気にさせる、企業に利益をもたらさせる。そういうことによって、結果的にはそれは給料にはね返る。そして配当にもなる。それからいろいろな面で回っていくわけですよね、その利益は。設備投資にも当然なるということになるわけです。そして経済が非常に発展していくということになるわけでして、そのために、今回のドイツだって、10%下げて実効税率25%にしようよと言っているのはそこにあるわけですよね。もうけたものを何でも税でとってしまえば、じゃあとどうなるのだということになので、税にとられる前にもっと回すことを考えるべきではないのかと思います。
農業の場合に所得補償するなんていう話も出ているわけですけれども、農業なんかとは全然違うわけで、企業がともかく食えないと何もできないと。やはり肥やして税というか、肥やして周りに回して、そこで税をとるのだということではないかと。直接的に企業からとるということばかりを考えるべきではないと思います。そういう点をよく考えていただきたいと。
それから林委員からも外形の問題が出ました。外形を下げればいいではないかと。1億の枠をという話が出ているわけですけれども、そこになると中小企業の領域になってくる。中小企業というものがなかなか利益が出てない。それはもうつぶしてしまえばいいと言うのだったら別なわけですけれども、中小企業は99.7%、4,000万の雇用を確保しておるわけで、それによってやはり資金というものは回っていく。それによって給料を従業員は確保して、そしてそこから住民税だとかそういう地方税についても払っておるわけですから、ともかく企業からとるということばかりではなくて、回り回ってもっと細かくとる方法を考えるべきだろうということになると、もう消費税ということになるのかもしれませんけれども、どうもとりやすいところからとるという考え方にならないようにぜひともしていただきたいと思います。
〇石会長
ありがとうございました。
上月さん、最後でいいですか。まだ後にいっぱい議論が残っていますので。
〇上月委員
法人税というわけではないのですけれども、実は所得捕捉の公平性という問題が出ております。これはここの税調でも何度か議論されまして、大体何となく私もわかっているつもりなのですが、丹羽委員は経済界の代表として非常に影響力のある方ですのであえてお伺いしたいと思うのですけれども、所得捕捉が公平でない、不公平だとおっしゃるのはどういうところで不公平だと思われるのか、そして納番制を導入することによってそれがどう解消できるとお考えになっているのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
〇丹羽委員
厳しいご質問をいただきました。私は、非常に簡単に申し上げれば、サラリーマンは全部捕捉されますが、サラリーマン以外は必ずしも全部捕捉されてないだろうと。ということもありますし、やはり公平に確実に捕捉するためには、私はアメリカに住んでおりまして、ソーシャルセキュリティナンバーというのをもらって、何をやるにもそのナンバーを書かないといけない。全部に書くということで捕捉されてしまいまして、そのナンバー書かなければ何もできないというようなことになりまして、この制度は私は非常にフェアでいいのではないかと思うのです。
そういう意味から言いまして、私が申し上げている背番号制、あるいはナンバー制につきましても、社会保障もそうですし、すべての所得に対して捕捉するためには、プライバシーの問題よりもそういう共通の番号制を維持するということが私は非常に大事ではないかと。そういう意味で申し上げているわけであります。
〇石会長
上月さん、よろしいですか。自営業者も頑張っているということをいつもおっしゃっているから。
それでは、井堀さん、最後で。
〇井堀委員
法人課税を軽減するというのは、経済の活性化、国際競争力の観点から非常に重要だと思うのですけれども、この話は、やはりデータを使って、どの程度法人税の基本税率を下げるとか、あるいは政策的な減税をすることが具体的に経済の活性化なりGDPの増加なり税収の増加に結びつくのかどうか、あるいはほかの国と比べて日本の法人税率が高いことがどの程度結果として日本の国際的な経済競争力を阻害することになっているかということについて、ある程度データを使った議論をしないと、どうも法人税だけ減税すると政治的に、その裏側にあるのは消費税の増税ですから、なかなか政治的にうまくいかないということなのですね。
これは政府税調でどこまで出せるかはよくわかりませんが、ご存じのように、数年前から、今日、本間委員はご欠席ですけれども、諮問会議のほうでも、要するに法人税の減税でどの程度経済活性するかに関してはいろんなデータを使った幾つかのリサーチも行われているはずですので、そういったものも含めて、具体的に経済の活性化に法人税の軽減がこれまでどの程度効果があったのかないのかをきちんと検証することも踏まえないと、単に法人税を減税することが必要かどうかということを定性的に議論するだけではあまり生産的な議論にならないと思うので、ぜひそういった資料も出していただければと思います。
〇石会長
井堀さん自身、何かやったものがあるんじゃないですか。
〇井堀委員
個人的にはあれですけれども、とにかくここは非常に、ほかの課税ベースと違って法人税に関してはデータで動きやすいところなので、そこをちゃんと出したほうがいいと思います。
〇石会長
経済財政諮問会議でいろいろやっているとか、ほかの省庁でやっているのもあるだろうし、それからいろいろアンケートもした、特に試験研究費等々の減税をしたときに、研究開発費減税したときに、アンケートもあるから、必要なものをまた出していただくということも必要かと思います。
どうぞ。
〇井戸委員
法人税負担だけを企業の負担として議論していっていいのかどうかということを最後に申し上げておかなければいけないと思うのです。例えば社会保険負担とか、雇用保険負担とか、年金負担とか、いわゆる企業として企業活動を行っていくに際していろんな負担があるわけで、それを企業ベースでは基本的に全体としてとらえて、総合負担の議論を今まで資料としても出されてきたと思うのです。そこのときに、法人税の負担だけ国際比較して、それで重い軽いというだけでは法人の実質負担の議論に結びつきにくいのではないか。法人税の負担を議論するときはその辺もにらむ必要があるのではないかと。その点だけ申し上げておきます。
〇石会長
机の上に積んである過去の資料の中にも、企業全体の負担という意味で、社会保険負担等々、出しているのがあったと思いますので、そういうのも再度持ち出しまして議論しなければいけないなと思っています。
それでは、まだおありかと思いますが、消費税のほうに話を移していきたいと思っています。消費税本体のほかに、酒税、たばこ税、エネルギー関係諸税等々のことにつきまして、では税制二課長の羽深さんと都道府県課税課長の米田さん、お二人からご説明を伺います。
では、羽深さん、お願いします。
〇羽深税制第二課長
3ページからでございます。まず消費税の「改革の視点」ですが、上のポツ3つは消費税の特性について触れておりまして、安定的な歳入構造ですとか、それから所得に対しては逆進的ですけれども、他方で消費に対しては比例的なので平等ではないかとか、ライフサイクルを通じた見方ということもあるのではないかとか、あるいは勤労世代に過度の負担を求めずに経済活動に中立的といろいろな見方があるということで、消費税の位置づけについては、最後のポツですけれども、そういう特性も念頭に置いてこの社会情勢等々踏まえて検討していく必要があるというご意見でございます。
それから次の検討課題ですが、最初の「税率構造」、これは軽減税率の問題でございまして、将来、消費税率が2桁になった場合には食料品等に対する軽減税率の採用の是非が検討課題。これが従来からのスタンスでございます。1つは、国民の理解を得るためには必要ではないかというご意見があります。
それから、おめくりいただきまして4ページですが、他方で軽減税率についてはいろいろ問題もありまして、事務的な負担ですとか、公平な線引きができないのではないかとかいうこともあるので、単一税率が望ましいというご意見もございます。
それから、税収との関係で、軽減税率を入れますと、その分だけ減収が生ずるので標準税率を上げなければいけないのではないかとか、それから低所得者に対する配慮については、税制全体とか、あるいは財政全体、歳出も含めて見るべきではないかと、こんなご意見もございました。
それから今度は消費税の透明性・信頼性を高めるための取り組みということで、インボイスの関係でございまして、インボイスを入れれば、それは制度の信頼性が増すのではないかというご意見。他方で、今の帳簿方式でもできるのではないかというご意見もございました。
いずれにしましても、免税事業者が非常に減ってきたということも踏まえまして、インボイスが定着しているヨーロッパ諸国の実態等も踏まえ、その導入について検討すべきではないかという意見がございました。
それから下の2つのマルは、ちょっとまた毛色が違う。下から1つ目のマルのところは、免税点制度のもとでいろいろな租税回避行為等がありますので、これに対する対応がどうかという指摘。それから一番最後のところは、簡易課税等の中小企業特例について、その適用状況を踏まえつつ必要な見直しを行うべきとのご指摘がございました。
それから次のものが「使途」でございますけれども、これは主に社会保障財源との関係でございます。2つ目のポツにありますように、社会保障のための安定的な財源の確保というのが財政全体にとっての重要な課題であると。
そのために、次の3つ目のポツですが、社会保障の給付の公費負担の財源としては、ここに書いてあるような特色が求められるのではないかと。1つは、負担が勤労者の世代に集中しないで国民全体が広く公平に負担することが適当というご議論があります。あるいは経済動向に左右されない安定的な財源であるべきというご議論がございます。
それからその次のポツですが、社会保障の歳入と歳出がリンクするということが、それによって無駄な歳出を削るということを前提として目的税化の意味があるのではないかという議論がございました。
他方で、消費税は基幹税なので、厳格な意味の目的税というのは問題ではないかというご指摘もございました。
こういうご議論を踏まえまして、社会保障の安定的な財源が求められるという中で、財源として求められる要素と、それから消費税の持つ特性とを踏まえて検討していく必要があるというご議論でございます。
それから5ページの冒頭は地方消費税で、これは後で総務省からお話があると思います。
それから酒税・たばこ税ですが、これは従来、嗜好品ということで高い税率ですけれども、今度とも消費動向等を踏まえて適切な負担水準を確保するべきというご意見。お酒については、態様の変化を踏まえ、中立性・公平性の観点からあり方について検討。たばこについても、その負担割合の状況とか消費動向、あるいは諸外国が非常に高いということもあります。そういうことも踏まえて負担のあり方について検討していくべきとのご意見がございました。
それからエネルギー関係諸税につきましては、道路の関係が主でございますけれども、最初のポツでは、いろいろな消費抑制の観点等々を踏まえて、現行の税負担水準を引き下げることは適当でないと。これが従来からのスタンスでございます。
道路特定財源については、2つ目のポツですけれども、行政改革の法律の中で、現行の税率水準を維持し、一般財源化を前提にそのあり方の見直しを行うということが決まっておりますので、それをやっていく必要があるというご指摘。
それからその次の2つのポツは、地方の道路に関するご指摘がございまして、地方の道路需要ですとか交通網との関係でのご指摘がありました。これはまた後ほど総務省から補足のご説明があるかもしれません。
一番最後のポツが、自動車関係諸税については複雑とのご指摘がありますので、その税体系について検討というご指摘がございました。
6ページが「地球温暖化問題への対応」。環境税の関係でございまして、京都議定書の目標達成計画がありますので、その着実な実施が重要であるとのご指摘。それから環境税については、もろもろのことを踏まえて総合的に検討というご指摘がございました。
以上でございます。
〇石会長
では米田さん、お願いします。
〇米田都道府県税課長
それでは地方関係、ちょっとお戻りいただきまして5ページの一番上、地方消費税でございます。地方消費税、ご承知のように、平成6年の税制改正で決まったものですが、それの趣旨、特性を1つ目のポツで書いてございます。税収の偏在性が少ないとか、安定的な基幹税目ということで、今後ともに充実を目指すことが必要というようなご指摘がございました。
2つ目は、消費税のほうで社会保障財源というところで多々ご議論がございました。その議論に際しましては、社会保障に係る地方の役割の重要性。例えばということで、介護保険ですと公費負担の2分の1というのを地方が持っている等々ございます。そういう点に十分留意する必要があるというご意見があったということでございます。
なお、先ほど、下のエネルギー関係諸税の下から3つ目と下から2つ目、この2つ、地方の道路財源ということです。国の道路特定財源でオーバーフロー問題ということがございますけれども、基本的に地方のほうはそういう状況にはないということを踏まえたご意見だったと思います。
以上です。
〇石会長
ありがとうございました。
それでは、残った時間、消費税並びに個別消費税、2つの領域についていろいろご意見を賜りたいと思います。
どうぞ、神津さん。
〇神津委員
多分、致し方ないなとか、当然だろうなとは思いながらも、何となくしっくり来ないということを2つだけ申し上げたいと思います。
1つは、今の消費税のことで、国民の負担というのは社会保障費と租税というふうにいつも二本立て。これはもう十分よくわかっていることなのですけれども、その片方の社会保障制度の存続のためにというか、そのために、その財源に消費税を充てる。租税の部分を充てる。それをしかも目的税化するというようなところ、これは流れとしては全然わからないことはなくて、当然だろうなといろんなことを見ていればわかるのですけれども、でも何となく、ここがちょっと私の頭の中ではしっくりしない。わざわざ二本立てになっているものの片方が片方のというところがちょっと私の頭の中でいつまでたってもきっちりしないので、何かきっちりした説明ってあるのかというのが1つ。
それと同じことがエネルギー関係諸税のところなのですけれども、道路特定財源を一般財源化する。これも流れの中では当然なのだろうな、そうなのだろうなとは思うのですけれども、例えば道路特定財源の部分の都会と地方では税負担がかなり違っていて、税負担の差、都道府県別の差というのをどこかで見た記憶があるのですけれども、私、頭の中ではっきりしてないので、ここで言うことは決して正しいことではないと思うのですけれども、多分すごく低かったのが大阪かなんかで、すごく高かったのが和歌山かなんかだったような気がするのです。ごめんなさい。ちょっとこれは正確ではないですが。その差が結構大きかったことを私は覚えておりまして、とすると、応益負担ではないですけれども、これが一般財源化したときに、地方のそういう納税者の人に、これは納税者に対する理解を得ることが大切と書いてあるけれども、一体ここの部分も、一般財源化したときにどういうふうにここのところを説明するのかということ。頭ではわかっているのですけれども、よく説明しようとすると、あるいは説明を請われたときに、言うときにちょっと言葉に詰まるという、2点をちょっと申し上げました。
〇石会長
ありがとうございます。前段ですが、社会保障というのは、ご存じのように、年金、医療、介護、福祉等々あって、これが社会保障給付になってますね。それで、3分の1が税金なのですよ。残りが保険料と自己負担等々ですけどね。したがって、3分の1というのは、今28兆ぐらいあるのですけれども、これはほうっておくと42兆ぐらいになってしまうと。今言った将来的に見てね。そこの税の問題はその28兆のところに絡むのですね。基礎年金もこれから3分の1から2分の1になりますしね。だから、我々として議論すべきことは、今言った税金のパーツのところがどんどん増えていくというところで、それは果たして目的税にしていいかどうかなんていうところが1つポイントなのですよ。
ただ、おっしゃるとおり、社会保険料等、別に保険料が片やありますから、それとの絡みでいつも混乱しがちですが、税調として言えば、そういった税金投入のルートを通じて社会保障制度をいかに持続可能にするかというあたりがポイントだと思いますけどね。
〇神津委員
それは3分の1以上になると。
〇石会長
いやいや、今3分の1入っているのですよ。税金の部分が。3分の1のままでも、今言ったように、十何兆増えるのですよ。高齢化に伴って、年金、医療、介護がどんどん増えるから。その増え方のところを、やはり税も増やさなければいけないだろうという議論ですよね。
では、羽深さんのほうから、今の説明、補足してください。
〇羽深税制第二課長
例えば国で申しますと、今、予算上、社会保障の財源に充てられているわけですけれども、それが12兆ぐらい経費としてあるのですけれども、実際はそこは消費税から回っているのは7.4兆円しかございませんで、いわゆるすき間があるわけでございまして、この社会保障の経費がこれからどんどん増えていくということになりますと、すき間の部分は、つまり、どうしたらいいのだということで非常に持続可能性についての不安が一方であるということで、そういうことも含めて考えていきたいと、そんなことでございます。
〇石会長
ますます混乱するかな。では一般財源化のところ、いいですか。もしくは総務省のほうで説明あるなら。今、和歌山県と大阪の話が出たけれども。
〇米田都道府県課長
先ほど、都道府県ごとに随分税金の格差があるというような、お手元の資料、厚い束の資料のほとんど一番後ろの資料の6ページに、以前ご説明いたしました軽油引取税、自動車取得税の人口1人当たり税収の指数が載っております。地方税(個別間接税)、「総46-7」という束の6ページでございますが、これをご覧いただくと、かなり各県別に差があるように見えるわけでございますが、これはあくまでも人口1人当たりの指数化をしたものでございます。したがって、同じ軽油を買ったり同じ自動車を買ったときに、それで各県で税負担が違うというわけではございません。これはそこの地域でどれだけ軽油が売れているかということであったり、それから自動車であれば、高級な車、税負担の高い車、それとも軽、安いほうの車があるのかというところと非常に関係があるというものでございます。
したがいまして、ここのところで一般財源化されたときにどのように説明をするのかということにつきましては、必ずしも税収の格差そのものが一般財源化の説明にはいかないとは思います。ただ、以前にもこちらでご説明、ご指摘ございましたとおり、どちらかといえば、これを見れば、地方部のほうで1人当たりの負担が高いような状況になっておりまして、そういう意味で、今の論点整理メモにもございますとおり、地方部のほうがむしろ道路の需要というのは大きいし、そのあたりと十分勘案した議論が求められるというご指摘をいただいたのではないかと感じております。
〇石会長
当然まだまだ根が深いので、今のご説明で全部納得しているとは思わないけれども、まだ次に問題がありますから、移りましょう。
では、川北さん。
〇川北委員
もう一回軽減税率の話をちょっとしたいのですが、前々回この話が出て、一方で2桁になったときには必要だという、これは従来からの論議ですが、一方で、これをやると、例えば単一税率が望ましい。つまり、簡素という点で非常に問題があると。一方で、軽減税率を設ければ標準税率を高くしなければいけなくなるというようなことで問題があるという意見、非常に多かったと思うのですがね。
ただ、その際に菊池さんからちょっと指摘があったと思うのですが、「総47-2」の17ページに主要国の付加価値税の概要という資料があって、ここには各国の、特にヨーロッパの国で新聞が軽減税率、ないしは非課税、ないしはゼロ税率というのが適用されているという指摘があったわけですね。実際そういうふうに書かれてあります。ということで、なぜ新聞がそういうふうになっているのかという理由ですが、もちろんいろいろあると思うのですが、文化を守るとか、国富を守るだとか。基本的には、やはり議会制民主主義というのか、民主政治を保障するためというのが大きな理由ではないかと思うのですね。
つまり、昔、ジェファーソンでしたかね。新聞なき政府か、政府なき新聞か、どちらかをとるのなら政府なき新聞をとるというようなことを言ったと思うのですが、要するに、民主政治を保障するためには多様な言論が必要であるということだと思うのですよね。そのためには、もちろんメディアは新聞だけではありませんけれども、あえてここで新聞だけに特定して言わせてもらえれば、新聞協会に加盟している会社、六十何社かあると思いますが、そういう多様な言論があるからこそ一定の民主主義が保障されているということだと思うのですね。
その際に、もし消費税がさらに、何%か知りませんが、上げられた場合、相当経営的に打撃を受けるという可能性があるわけですね。その際にやはりある程度軽減税率なり、今さらゼロ税率で非課税というのはおそらく難しいかもしれませんが、そういうことも一度ひとつ留意しておく必要があるのではないかと思うわけです。
〇石会長
税調の会長としてお願いしたいのですけれども、個別の業態のそういうことを言っていただくのはご遠慮いただきたい。税調はみんな国民の代表で入ってきているわけですから。これは典型的に、軽減税率にするといろいろなところからいろんなものが出てくるという典型なのですよ。新聞も水も雑誌も本も全部出てきますよ、これから。それを、新聞の方がいるというので新聞だけ強く言われると、ほかの業態の方、ここにいらっしゃらないメンバーの方いっぱいいますから、不公平ですよ、それは。そういうことでご理解ください。おっしゃりたいことはわかりますよ。したがって、川北さんも国民の代表として、新聞がなくなるとこの社会大変だという視点でおっしゃったのですが、ただ、川北さんもやはり新聞業界のご出身だから、そういう意味で、実はこの税調も、たばこだ、酒だ等々、証券界がどうだといっぱいあったのですよ。これまでいろいろ業界のことをバックに背負っている方が。したがって、この軽減税率の問題になりますと、今おっしゃったように、もうワーワー出てくるのは目に見えておりますので、ぜひお願いは、国民的な見地に立ってご議論を賜りたいとお願いしたい。
〇川北委員
それはよくわかってます。確かにこれは業界の利害にかかわっている問題かもしれませんが、やはり国民全体にかかわっている問題だと思うので、あえて指摘させていただきました。
〇石会長
わかりました。わかりましたけれども、直接の方がそれを言ってはいけないので、間接的にだれか、全然関係ない人が言うならまだいいけどね。
今の関係ですか。では中里さん。
〇中里委員
記憶が確かではないのですけれども、前に税制調査会でデンマークに出張させていただいたことがございまして、たしかデンマークは25%で単一税率だったのではないでしょうか。大変すばらしい国で、民主主義も発展しているようですし、どうして食料品であれ何であれ全部25%で大丈夫なのか、国民の反対が起きないのか、デンマークでどういう議論をしているのかを、私、デンマーク語読めませんのであれですが、主税局であればどなたか読める方いらっしゃると思いますので、これはおもしろい論点なので、ぜひ調べて報告していただきたいと思います。
〇石会長
宿題ですね。また難しい宿題出ました。
では遠藤さん。
〇遠藤委員
軽減税率の話ですが、ちょっと先月ドイツに行ったら、ドイツは16%で、食料品は7%だと言ってましたが、それで、ドイツでできるのに日本で軽減税率ができないというのはどういうわけですか。
〇石会長
それは税率が低いからでしょう。まだ5%で。
〇遠藤委員
いやいや、ここに書いてあるのは、いろいろな問題点があるから単一税率が望ましいと、こう書いてあるわけですよ。
〇石会長
これは別に税調の意見が集約されたわけではなくて、両論併記で書いてありますから。遠藤さんのご意見はそれは別なほうに書けばいいので。ただ、我々、調査に大分行きました。行きまして一番の問題は、やはり軽減税率を入れると大変なのですよ、徴税上。食料品の定義さえ難しいわけですよ。それに新聞だ、書籍だ、水だ、薬品だ等々出てきたときにどんどん膨らんでいくということで、極力納税者側も、低い税率のとき、例えば5から7になるとか、せいぜい10になるところぐらいは一本化がいいというご意見があったので、それを紹介してます。
ただ、将来的に2桁をかなり超えるようなときになったら、今遠藤さんがおっしゃったように、ドイツみたいに、19になれば7にしろとか、その意見は当然出てきますよ。そのとき考えましょうというのがこの一つの提案ですけれども、まだ決めておりませんから、そういうことを調査したはずです。
〇遠藤委員
聞きたいのは、ドイツと日本と事情が違うので難しいのですよと、そういう点はあるのかなと。
〇石会長
いやいや、どこの国も大変なので、その大変さをまた日本も追うかねという議論ですよ、ここは。これは調査に行けばわかりますよ。すごい資料で、こんなことやっちゃいけないよと税務当局は全部言いますよ。どこに行っても。それをあえて言っているのです。この報告書はね。
今の関係ですか。
〇尾崎委員
はい。インボイスの話なのですけれども、今の軽減税率のような複数税率になったときにインボイスを採用すると。それが事業者の事業をする上での負担になるとよく考えられているのですけれども、それは実は違いまして、インボイスがあればインボイスに書かれているとおりに整理すればいいということでして、自分でこれが食料品であるかどうかの判断をする必要がないということなのですね。一番最初に発行する人は、自分の売っているものですから、自分が何%適用かというのはきちんと調べて、何%と書きますね。それを受け取った人はそれで分類していけばいいわけです。だから非常に事業者の方の手間暇が省けるというところがインボイスのメリットなのですが、世の中に、あんなものをつくったら大変だと、煩瑣であるとおっしゃる方がかなりいらっしゃいますので、それは全く逆だということを申し上げたかったわけです。
〇石会長
最初の仕分けが難しいのですよ。これを食料品として5%にするかと。その問題ですね。
どうぞ、水野さん。
〇水野委員
軽減税率の問題で。賛否両論の意見が出ているわけですけれども、一番最後に、低所得者層に対しては、税制全体、さらには歳出面を含めて財政全般の中で検討する必要があると、こういう意見が出ておりますけれども、前にも申し上げたのですけれども、カナダなどは財政支出でいわゆる低所得者の負担をカバーするとか、あるいは昨年の11月、ブッシュ政権のもとで出た報告書では、アメリカが付加価値税を入れた場合には、人的控除も含めて家族控除という税額控除をつくって、それで対応すると。こういう提案がなされておりまして、だんだん、歳出、あるいは税額控除という形で、いわゆる食料品等、生活にかかる負担を救済していくという方向が若干見られますので、これについても十分検討していくのがよろしいのではないかと思います。
〇石会長
ありがとうございました。ほかにどうぞ。
岡田さん。
〇岡田委員
私の周りの消費者というのは、やはり軽減税率にしてほしいと。極端なことを言いますと、せめてお米だけでも無税にしてほしいという声もあるぐらいですけれども、それはこちらに置きまして、ほかの対応で経済的に困っている方に負担がかからないようにしていただけるのであればそれはそれでいいのですけれども、手続の部分で、一般の国民がわざわざ申告するとかいうことになるとちょっと大変かなと思います。ですから、事業者の方が大変だということと同じように消費者のほうも大変だという部分で、どちらがより負担が大きいかというと、やはり一般国民、消費者のほうが負担が大きくなるものですから。
〇石会長
軽減税率は、消費者ではなく事業者は関係するかもしれないけれども、ただ、5%の領域と7%の領域では、インボイスでもあれば仕分けしてやればという形で、それは当然これからチェックはしますけれども、それほど、それが理由になってということがあるかどうか。
〇岡田委員
私、税制を5%、7%ということではなくて、差をつけるということで、ちょっと思い違いしてました。
〇石会長
では出口さん、どうぞ。
〇出口委員
この問題、難しい問題ですけれども、税調の中で難しい問題、2種類あると思うのですよ。利害調整が難しい問題と、本当に難問というやつですね。納税義務者がわからなくなっている。例えば自然人と法人を対象にしていたのが、これがややこしくなると非常に難しい問題があると。この問題を税調で議論するには、私はやはり3つ条件があると思います。
1つは、やはり国のことをちゃんと考えているという視点。国の将来を考えていると。2つ目が、石会長が先ほど、ああいう利害関係でものを言うなとバシッとおっしゃいましたが、これは国民の信頼を得るということだと思うのです。そこから出てきた結果なのかそうでないのかというのは大変大事なことで。
3つ目は、これは中里先生が去年の秋おっしゃったことですけれども、税調というのは専門性に裏づけられて超然としているのだと。これを示すには、過去どうだったかということもそうですが、ほかの部分でも、先ほど言ったいわゆる難問、利害調整でない難問に対して非常にきっちりとした答え、これは諸外国でも出せない。なかなか横を見てわかるような問題でもない。それからいろんな国がいろんな形でやっていますから、語学も大変ですけれども、それからそうはいっても租税というのは文化ですから、日本独自のものというのもある。こういうものを全部やってようやく問題を……4つと言ったのに3つになりましたけれども、とりあえず。それで、出てくる答えも大事なのですが、そのプロセスですね。それをぜひ考えながら議論していただけるとおのずと道は開けると。それが本当に国民のためになってくる。
最後の1点が、それから納税者にやさしい眼差しを忘れないこと。これは一つの税だけで考えるのではなくて、トータルで。やはりいろいろ税をかけるときにいろいろ困る人が出てくる。それを忘れた議論ではなくて、そこをいろんな手を使って、歳出だけではない方法もあると思います。今回非常にいい、そういう意味では我々の専門性を試される別のボールが投げられていると思うので、そこまでしゃべるとまた長くなりますからやめますが、ぜひそういうことでやっていただければと思います。
〇石会長
次回続けてまたご発言ください。
では佐竹さん、どうぞ。
〇佐竹委員
今の出口委員の話はまさしくごもっともで、この軽減税率は一般論としてはわかるのですけれども、実際に、特に日本の場合、それぞれの立場の分捕り合戦になると大変なことになって、消費税そのものがぶっ飛ぶ可能性が出てくるのですね。それからこの軽減税率の扱いについては、やはり相当きっちりした根拠といろいろな考察が必要であろうと思います。
例えば食料品だって、もしかしたら食料品以外のところの簡単な形でできるものを軽減税率にしたほうが公平性が保たれるかもしれないです。ですから、やはり一つの見方だけではない見方が必要かなと。それは、今、出口委員のおっしゃっているような感じのですね。
それから道路関係については、これは私の意見というよりも今後の方向。今、地方も道路はできるだけつくらないというのは、これからコストがかかります。管理コスト。これは我々も大きく伸びている。ただ、相当これから管理コストがかかるということ。
もう一つは、公共交通機関が地方はほとんどだめになっている。今はお年寄りは免許持ってませんけれども、これからは全部免許持ちます。しかも、身障者にも対応できるような車がどんどんできてます。そうしますと、特に公共交通機関のない地方は車への依存度は今以上に高まるということは確かです。
もう一つは、消費税の社会保障目的税化というところで、今現実に我々、これは国の方針でもありますが、給付をできるだけ抑えるためには予防ということで、つまり、予防のところは地方自治体がほとんど監督という形になっていると。実際、例えば私どものほうでコミュニティセンターをつくるのですけれども、半分の住民、その中の半分は老人の様々な形の病気にならないためのいろんな施設だとか体育だとか、そんな指導だとか。ですから、一概に社会保障目的税的な形のときには給付だけに偏らない、どうすればいいかという現実があります。
最後、これは税調の中の議論ではないでしょうけれども、たまたま私、きのうミネアポリスから帰ってきまして、いろいろ勉強してきたのですけれども、ミネアポリスでは、そこはミネソタ州、州単位ですけれども、食料品は課税が軽減措置がなされてます。ただし、どうも食料品の店で買うものは食料品以外も減免になるのですね。食料品を主に売っているところで買うのはそういう形で。もう一つは、使い道は一般財源みたいでした。というのは、州政府にずうっと主要な政策があります。そこにレシートをポンと放り込むのですね。そうすると、次の年にその集約した順序、ある程度予算つけるときにそれを参酌すると。これはここの議論ではないですけれども、たまたま2~3日前に見てきましたので、ちょっとご報告させていただきました。
〇石会長
これはミネソタ州の小売売上税の話ですね。連邦の付加価値税というよりは。まさにそういう面もあるかもしれません。あっちのほうが簡単かもしれないですね。最終段階で非課税にするというだけの話で。お店単位ですか。おもしろいですね。そうすると、食料品屋の定義は難しいですね。
〇佐竹委員
そこを聞きましたら、アメリカは万事あまり厳密にはやらないと。
〇石会長
宮島さん。
〇宮島委員
さっき、単一税率とか軽減税率という話が出ましたけれども、実はこれは後の使途の話と実際絡んでいる話だと僕は思いますけどね。要するに、例えば社会保障とか、低所得者に支出を、財源に増やすということになれば、税率は単一税率という考え方。これは中里さんが言ったように、実はデンマークですと25%ですが、そのかわりとてつもない給付を出してますから、それは両にらみの話に私はなるだろうと思います。
ただ、ちょっと気をつけなければいけないのは、この中に例えば歳出面含めて全体で見ろという議論がありますけれども、私はそういう議論が最近はだんだん中心になってきたように思いますけれども、ただ、その場合には、まさに典型がデンマークとかスウェーデンとか北欧諸国でありますので、政府の規模とか国民負担が相当重くなることは逆にちょっと考えておかないといけないだろうと。つまり、仕組みのとり方によって政府の規模や何かがかなり決められてしまうという面があると思いますので、その辺は、一貫しないで、いいとこ取りばかりしようとするとちょっと無理があるというのは一つの意見です。
それから、これは、河野さんが言っているように、消費税が中心になっていく議論でしょうけれども、ただ、読んでいて、私はもう少し、これは学者の議論だと言われればそのままで結構ですが、例えば政府が消費税を負担するのだということがどれだけ知られているのかどうか、非常に疑わしい。消費者が負担すると言っているけれども、しかし、一般政府、一般会計とか、全部、消費税を負担するわけですね。だから、今、経済諮問会議で消費税の税収は国民に直接返すみたいなことを言ってますけれども、しかし、政府が消費税率上げていて、民間から資材を調達したときに当然消費税込みで価格上がるわけですから、それはどうするのですかね。ですから、この前の試算では7分の1ぐらいが政府が負担することになるというのがもう公になってますから、そういうことに対してやはりちゃんと認識を持ってもらわないと、消費税の性格上、私は必要があるのではないかと思ってます。
それから、さっき尾崎さんがおっしゃいましたように、会長のほうから、そう簡単ではないと言いましたが、私は前から、インボイスはやはり導入すべきだと。これは別に複数税率を入れるから必要だというのではなくて、これをとれば簡易課税の必要性がなくなる。それからいわゆる95%ルールという非課税取引が5%未満の場合の概算控除も必要なくなる。それだけ消費税の仕組みが非常に透明化する。そういう意味での透明化が信頼感をもたらすということが私は大事ではないかと思ってますので、そのことをもう一度強調しておきます。
〇石会長
どうぞ、尾崎さん。
〇尾崎委員
政府のようなところが税の負担をしませんと、政府に売った人が負担することになってしまうわけですね。だから最終負担者としてやはり政府が税金を払わないと、つまり、仕入控除ができなくなってしまうわけです。売り上げがなくて。そういうことで、政府までつかまえて最終消費者ということになっております。
〇石会長
業者の側から見ると、民間と政府とはイコール・フッティングしないとまずいのですよね。おそらく。コンピュータ入れるにしてもね。その問題があるのですね。
どうぞ、井上さん。
〇井上委員
消費税の問題ですけれども、目的税化の問題。これはこの前も反対したつもりですけれども、どうも日本の場合には目的税化すると、単年度予算ということから、それを何としても使い切らないといかんという問題が出てきて、結局はほかの方面に使われる可能性が十分あると。それが今までの前例なわけですよね。ですから、それと同時に、足りなければ増やせと。そうしたら、消費税またどんどん増やせ増やせということになるのではないかということの心配もあります。
あと軽減税率の問題。これはぜひともやってもらいたいというのは、日本の食料品というのは非常に高いですよ。これは何でかというと、もとは20%ぐらいのものが大体5倍ぐらいで売られていると。そういう流通機構にある高いものを国民は買わされているということなのですよね。スイカ4分の1で1,000円ですよ。
〇猪瀬委員
食料品とは限らないですよ。
〇井上委員
まあ、それは食料品ではないけれども、ともかく非常に高いということがあって、やはりぜひともそういう必要品というか必需品については軽減税率を何としても入れるべきだろうと。
それからあとたばこ。これは前にも言ってますけれども、1円というのはもっと上げるべきだと。年々上げてもいいのではないですか。1円ずつ。というふうに思います。
それからあと娯楽施設利用税というのは昔あったのですよ。パチンコ屋さん、これは今はもうギャンブル場なわけですよね。5万円からみんな使える。そういうところが娯楽施設事業税として使われていいだろうと。むしろゴルフ利用税なんていうのは廃止すべきだと。これは健康維持のためにもね。というふうにも思いますので、そういうような健康的なものは排除し、そうでないものについては利用税をつけるというぐらいに考えるべきではないかと思います。
〇石会長
いろいろあるのですね。
どうぞ、猪瀬さん。
〇猪瀬委員
今の話、極めて乱暴な話が一部入っていたのでね。食料品もそうですけれども、たばこの問題も、これは便利な財布みたいに、ちょっと足りなくなったら、じゃ20円、また20円とやっていけばいいというちょっと安易なところね。だから、厚労省の健康の問題についての話と税の話は別だということだけれども、税の話は税の話としてきちんとしなければいけないけれども、漠然としたムードで、健康被害があるからたばこを値上げするというのは論理的には結びついてないのですね、これは全然。大体、喫煙者が49%以下になった途端にバッシングになりましたから、一気に流れは変わったわけですけれどもね。それはそれで個人的趣味のことを言っているのではなくて、時々20円みたいな形で、位置づけもなく掘り起こしていってもしようがないなという感じがある。そこは客観的に、やはり国民に説明できるようなやり方をしないといけないと思いますね。
〇石会長
河野さん、どうぞ。
〇河野委員
一番重要なことが消費税の基本的な視点の中に抜けているのですよ。何かというと、消費税は3段階で考えないといかんなということになっているでしょう。とにかく基礎年金については何かやらなければいかんなと。これはみんなの常識になっているのだから。2番目はプライマリーバランスを何とかしなければいかんな。ここまでは政治家が全部責任を負うということになっている。今まで。
問題はそこから先の話。視野の外にあると言っているわけだ。責任者は。だけど、政府税調は何も政治家ではないからね。視野の外にあると思ってないのだ、我々は。ここのところにいろいろな議論が出ているけれども、一番の基本は、政府税調が税制をまじめに考える政治家でない人間の集団だとすれば、ホップステップジャンプで考えないといけませんよというぐらいのことは書いておかないと無責任だ。
2番目にたばこの話ね。私もたばこ飲んでいる希少人種だから。だけど、もし健康被害にあるやつに対して税金かけるのだったら、酒もかけなければいかんですよ。酒乱のほうがもっとひどいのだから。我々よりはるかに。そっちのことを言わないで、とりやすいからというのはちょっと議論が混同し過ぎている。もしそれをやるのだったら、病気を予防するためには新しい税制をつくるというような柱を立てればいいのだよ。議論もやらないで、一番便宜で、1本1円からとすぐやるのは、これは安直過ぎるよ。いくら税調のメンバーだって、それはと思いますな。
〇石会長
お酒も上がっているのですよ。ちょっぴりずつは。けんか両成敗になっていると思いますから。
菊池さん、どうぞ。
〇菊池委員
消費税ですけれども、僕は基本的に、なかなか上げられない、どうせ上げられないとは思っているのですが、そういっても、上げると、そのときのあれによりますけれども、子供だとかね。僕、食料なんて、絶対食べるわけだから、むしろ加重税にすればいいと思うのですけれども。絶対、どうしようもないわけですから。選択の余地なくて食べるものは倍の税率でもいいと思うのですけれども、でも、介護だとか、医者だとか、新聞も出てきますけれども、文化だ、音楽だで幾らでも出てきますから、それはここで理屈に合わないという理屈述べてもいいのですけれども、それを防ぐための手立てとして、奥田さんが言った、毎年1%ずつ上げていくという、あれなんかは、ゆでガエル状態であきらめかけて、15%ぐらいの消費税、みんなが普通に払うのはまあ仕方がないなというところにもっていく手段としては、もう一回まじめに考えてもいいのではないかなという余計な話なのですが。
〇石会長
余計な気もするけれども。
上野さん、どうぞ。
〇上野委員
軽減税率の話ですけれども、消費税の税率がかなり高くなれば軽減税率というのを考えざるを得ないだろうというのは基本的にそういうことだろうと思うのですが、例えば食料品と言ってみても、キャビアは対象にするのかとか、お米だけなのかとか、要するに必需品みたいなものであるかそうでないかと非常にいろいろあって、キャビアまでやるならこっちの別なものだって軽減税率にすべきではないかとかいうような議論、必ず出てくると思うのですね。それはやはりどの範囲で軽減税率を適用するのかということを非常に難しくする。それから単純な原料からだんだん加工段階に上がっていくようなときにどこかで線を引かなければならないということになると、これまた大変な話になる。そういうことで、おそらく技術的な問題というのは大変大きいだろうと思うわけでして、避けられるなら避けたほうがいいというのが私の気持ちです。
したがいまして、この軽減税率というのを入れるか入れないかという一本の議論でやれないのではないかと。どれぐらいの消費税率に持っていくかというそことの兼ね合いで最終的には考えざるを得ない。若干逆立ちした議論になりますけれども、わずかなところの議論の差になるのならば、むしろ軽減税率を入れないところにおさめたほうがいいという判断だって僕はあると思いますね。逆に税率を決める際にこれが一つの決め手になるということさえ僕はあるのではないかと思います。
〇石会長
なるほど。新しい見解ですね。
では、井戸さん。
〇井戸委員
上野さんのお話にも似通うのですけれども、軽減税率の対象範囲をどうやって決めるかというのはものすごく難しいと思うのですね。例えば食料品は非課税だと言ってみても、食料品の定義はものすごく難しいですね。あるいは加工品はどうするのだとか、おせんべいはどうするのだとかね。
〇石会長
せんべいは食料品でしょう。
〇井戸委員
ですけど、それじゃおせんべいの入っている割合でどうするのだとか、いろんな議論がかなり出てきて、私も非常に若いころ担当した電気・ガス税というのがあったのですが、この電気・ガス税を担当したときの非課税の範囲の議論がものすごく複雑で、どうするかがなかなか決まらない。党税調で決まっていたわけですよ。そういうような党税調で決まっていくような仕掛けというのになるのだよということをよく前提として考えていかないと理論倒れになるおそれがある。このことを1つ申し上げたいと思います。
それからもう一つ、消費税の税率を上げていくのだとすると、率にもよりますけれども、税の基本は担税力だと。担税力の指標をどういう形でつかまえていくのだということからすると、何も井上さんの話に藉口するわけではないですけれども、消費税を入れるときにやめてしまったのですが、料理飲食等消費税とか娯楽施設利用税のような発想というのは、酒とかたばこで残っているのですね、そういう発想が。だとすると、もう一度、我々の生活の中でぜいたく品だとか嗜好品だとか、担税力があると言われているようなものに対する課税のあり方というのを、消費税等のベースにしながら、どういう負担を求めていくのが適当なのかという議論は検討すべきなのではないかなと思います。
〇石会長
地方の個別消費税の問題ですね。
そろそろ時間なのですが、あとご発言のご希望は、遠藤さんと秋山さんとお二人でよろしいですか。
では遠藤さん、どうぞ。
〇遠藤委員
消費税というのは、私は社会保障制度と関係づけるべきだと思うのです。逆にいうと、国民は社会保障制度というのは今までやってきて、変えてほしくないのですよ。できれば今のままにしておいてほしいわけですね。だけど、それでは財源が足りないからどうするかという話なので、その足りないところを消費税で補うのか、あるいは消費税で補うには高過ぎるから、制度というものをこれだけ落とすか、そういうことを国民に選択してもらうというシステムがこれからどうしても必要になってくると思うのですよね。さっき言われたように、社会保障費が猛烈に大きくなってくるということになると。ですから、制度と税負担というのを国民にわかりやすくするためには、目的税化というか、その関連を、直接というか密接に関連しているということが国民にわかるような、そういう税と制度のシステムというのをつくっていくべきだと思います。
〇石会長
それは目的税のご主張ですか。
〇遠藤委員
目的税がだめならですね。だけど、例えば1%なり2%上げるときには、その目的税的な、消費税と同じシステムであるいは名前を変えるとか、そういうことができないかと。要するに国民にわかりやすくするということですよね。
〇石会長
では秋山さん、お待たせしました。
〇秋山委員
軽減税率の問題についてちょっと簡単にコメントしたいのですけれども、食料品がまず挙げられるのですが、軽減税率の問題を何の問題として語るかというところがポイントだと思います。例えば文化の問題だとして語るのであれば、例えば食料品全般、もしくは逆にジャンクフードと伝統的な食材を分けるのだとかいうような議論がないとなかなかわかりにくいでしょうし、むしろ実は文化的な問題ではなくて、今議論になっている、根底にあるのは、低所得者層の重税感というところが一つの大きなポイントではないかと思います。
実はそういう問題について語っているのに、食料品一般、あるいは食料品の範囲をどこまでかという議論に終始してしまうと、結局、本来恩恵を与えたい人と、別に恩恵をもらってもあまりインパクトがないような人をまとめて考えてしまうことになる。そうであれば、何の問題としてとらえたときに、あるいは低所得者層の重税感ということを考えたときに、それは消費税の食料品について軽減税率を図るのではなくて、あるいは一定の所得レベル以下の人に対して、もしくは育ち盛りの子供がいる家庭に対して特別な配慮をするというような説明の仕方のほうがわかりやすいのではないのかなと思います。
〇石会長
わかりました。よろしゅうございますか。ちょうど時間が、ちょっと超えましたけれども、今日は大変活発な議論をいただきましてありがとうございました。特に丹羽さん、ありがとうございました。
次回以降の予定をお話しして散会にしたいと思いますが、次回は7月11日火曜日、2~4時で、会場が大幅に変わりまして、三田の共用会議所になります。初めて行かれる方もいらっしゃるかと思いますけれども、よろしくお願いいたします。それから、その後は14日、21日を予定しております。全部2~4時であります。ですから、この会合は11日、14日、21日と3回開くということで日程の確保をしていただければと思います。よろしゅうございますか。
それでは、どうも長い間ありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。