第48回総会・第57回基礎問題小委員会合同会議 議事録

平成18年6月30日開催

石会長

お暑いところをお集まりいだたきまして、ありがとうございました。時間になりましたので、税調を始めたいと思います。

5月以降、各税目について審議してきましたが、前回で一通りの議論が終わりましたので、本日以降は、これまでの議論の整理をしていきたいと思います。お手元に「これまでの審議等を踏まえた主な論点」という資料がございますが、これは、個人所得課税、資産課税、納税環境整備という3つのテーマについて、ここ数カ月でやった議論のみならず、我々は委員を3年やっているわけでありますので、この3年間、いろいろな議論をいたしました。それをベースにして今後、中期答申を出すときに、どういうところで議論を整理しなければいけないかという視点でまとめたものであります。

今日は文章についてはあまり気にしないでください。まだ文章になっていませんから。税調の専門用語で「ボキボキ」と言っています。要するに折れているわけです、述語がちゃんとしていませんから。主要なテーマだけ文章でなくて拾い出したものであります。したがって、落ちている点、あるいは追加したい点も含めて、もっと強調してほしいとか、ここは捨てないでくれとか、こういう論点もあるよというところを踏まえてご議論いただきたいと思います。当然、両論併記的になっているところもありますので、それにつきましては双方からいろいろな議論が出ることを期待いたしております。皆さん、事前にお目通しと思いますので、事務局から読み上げてもらうというよりは、中身について各々背後の事情も含めてご説明いただくことから始めたいと思います。

それでは、個人所得課税、資産課税、納税環境整備、3つの項目に分かれていますので、とりあえず説明したあとで議論を区切ってやりたいと思います。途中退室の委員の方がいらっしゃると思いますが、ぜひ言っておきたいというのは、別におしまいのほうに触れていただいても結構ですから発言していただきたいと思います。

それでは最初に、個人所得課税について、佐藤税制第一課長、林市町村税課長、関固定資産税課長、お三方からご説明をいただくことにいたしましょう。

まず最初、佐藤さん、お願いします。

佐藤税制第一課長

お手元資料「総48」という資料でございます。まず最初、個人所得課税からまいりたいと思います。

現状認識というところでございますが、過去の抜本改革におきます累進緩和をかなり行ったということで、大多数の納税者の負担はきわめて低い水準である。例えば年収700万円くらいの方を取り出しますと、所得税につきましては、昭和60年代の頭には52万円という税金でございましたが、今は17万円ということで7割減という形になっております。これは一例でございますが、ミクロに見ましても大きく下がっている、マクロ的にも負担率は下がっているということは係数でご覧いただきましたが、そのような事実関係でございます。したがって、財源調達機能、所得再分配機能が著しく低下してきているということでございます。

2つ目でございます。それを踏まえまして、本来果たすべき個人所得課税としての機能、これをこれ以上低下させるべきではないというご意見でございます。

3つ目、今後、消費税をはじめといたします抜本改革を行う場合、消費税、所得税、代表的な税目の関係でございますが、消費税が主役、所得税は脇役、こういうご意見があったところでございます。特に格差の問題の関心が高まっているということでございますので、所得税の所得再分配機能の重要性に留意する、このようなお話もあったところでございます。

次の抜本改革の中での課題ということでございますが、1つ目、税制の抜本改革の中で、消費税を含めた個人の税負担全体の構造に留意しながら、個人所得課税についての総合的見直しが必要。もちろん、個人所得課税そのものを見直すことの必要性はございますが、それも全体の税制の中での負担構造をにらみながら見直していく、このようなことでございます。

それから幾つかご議論ございました、消費税の引上げを仮に行う場合、その逆進性緩和ということで、所得税の累進度を高めるべきであるというようなお話。その場合、勤労性所得だけではなくて、金融所得を含めた資産課税全体ということもよくよく念頭に置くべきではないかというお話。

それから税源移譲の絡みで、所得税と住民税の役割が明確化されたということで、所得税につきましては所得再分配機能を担うことになったということ。住民税につきましては、むしろ比例税率化によりまして応益性とか負担分任の性格が明確化された。このような性格が明確になったことを踏まえて、これからの個人所得課税の税体系を考えていくステップにあるということでございます。

経済社会の構造変化に対応して、個人の選択に中立的で、現役世代に負担の偏らない負担構造を目指すべきというご議論もかねてからいただいております。特に少子高齢化が進展するとか、家族の形とか、働き方がずいぶん変わってきているという、いわば過去とずいぶん違う。この辺は実像把握等で見ていただいたところも踏まえまして、このようなご指摘があるところでございます。

子育ての重要性もあろうかということで、「子育ての社会化」の観点も、考えていく際、織り込むべきではないかということでございます。

以上が改革の視点に絡むものですが、次に検討課題といたしまして、各論にわたるところでございます。

課税ベース。まず1つ目は、個人の選択を阻害しない中立的な制度にしていくということで、ここにありますような、個人のライフコース全般を通じて、広く公平に負担を分かち合う構造にしていくということで、各種控除を見直していくということでございます。ただその場合、子育て等真に必要な配慮については、人的控除の集約化等々によりまして対応していくべきである。

次のページでございますけれども、その見直しにあたっては、負担の急激な変動については十分配慮しておく必要があるということでございます。

税率構造でございます。刻み数は、税源移譲によりまして、現在、所得税につきましては6段階になっているわけですが、これを簡素化の観点から減らすべきではないかというお話。

それから、最高税率に伴いまして2つご議論がございます。1つは、現在、住民税と合わせまして50%という率でございますが、勤労意欲、事業意欲の点から概ね妥当と、こういう考え方がある一方で、先ほど見ていただきました所得再分配機能を高めていくという観点に立てば、最高税率の引上げが必要ではないか、こういうご議論もあったところでございます。

最低税率でございますが、基礎控除等の諸控除を見直すということもあります。その見直し方如何によりまして、最低税率のブラケットの幅についても併せ検討し、トータルの負担をどのように考えるかという論点も必要ということでございます。

各種控除、家族に関する控除でございますが、人的控除、様々ございまして、非常に複雑化してきているということで、個々人の事情を個別に斟酌していくには自ずから税制上限界があるのではないか。価値観が多様化しているもの等、特にそうではないかということでございます。

それに関連して、できる限り簡素化、あるいは基礎控除に集約化ということを検討してはどうかということ。ただし、障害者控除のような真に配慮が必要な場合には、その控除の存置も考えるべきと。

それから、課税単位の話もちょっとございましたが、わが国の民法などの財産制度が個人単位になっているということで、課税単位も個人とするほうが自然だろうと思います。ただし、N分N乗ではなくても、個人単位課税のもとで、家族や夫婦への配慮というものが何か取り入れられないだろうかというご指摘もあったところでございます。N分N乗については、特に夫婦の働き方に対して中立という特徴もあることを踏まえたご指摘だったかと存じます。

それから、配偶者と税ということでございます。家族の共働き化が進む中で、配偶者控除については、夫婦の就労に対する中立性が損なわれるとか、いわゆる夫婦の「二重控除」の問題がございます。例えばパートのような主婦がいらっしゃる世帯におきましては、夫の配偶者控除と妻の基礎控除、これがダブルで引けるということ、これを二重控除問題と俗に申すわけでございますが、このようなご指摘もあったところでございます。

他方で、ここに書いています、結婚して夫婦になることに着目いたしまして、税制面において、夫婦の就労に対する中立性とか夫婦レベルでの税負担の公平といった、夫婦というものを税制上どのようにとらえるかという視点もまた一方で必要ではないかということで、この2つの観点をあわせて配偶者控除のあり方ということで考えていくべきではないか、このようなことだったかと存じます。

子育てと税でございます。現行の扶養控除は所得控除の形で存在しておりますが、これについては、現在、年齢如何にかかわらず一律に適用されておりますが、成人にまで適用していくことがどうかと。特にニート云々という話もございます。年齢的な適用対象範囲を適正化する検討が要るのではないかというご指摘もございました。

それから、年齢が16歳~22歳以下の者に対する加算のような形でできております特定扶養控除について、ここにありますようなことで、人的控除の簡素化の観点から見直しが要るのではないか、このようなご指摘もございました。

3ページでございます。今度は子育てへの政策的支援を重視する観点に立てば、現行の扶養控除に代えて、税額控除の導入あるいは手当の拡充といった形で講ずるほうが有効、かつわかりやすいのではないかということでございます。現行の扶養控除については、あくまで課税所得を計算する上での調整ということで行っておりますけれども、政策的観点を重視すれば税額控除のような形のほうがわかりやすい、こういう指摘だと存じます。

2つ目でございますが、税額控除ということであれば、現在ございます例えば児童手当のような、いわば純粋な手当との役割分担もあわせて考えていく必要があるというご指摘でございます。

住民税については、ここにございますように、その性格及び比例税率になったことを踏まえて、子育て支援について検討していくということでございます。

N分N乗につきましてのご議論がございましたが、課税単位の根本的な変更となることとか、非常にわかりにくいということ、それから、低所得者には基本的に効果が及ばないというようなことで、少子化対策、子育て対策には基本的にならないのではないか、このようなご指摘もございました。

高齢者に対する控除の関係でございます。世代間の公平ということで、担税力のある高齢者には、現役世代と同様の負担を求めていく必要があるということで、公的年金等控除につきましては、近年、見直しが一応行われております。そのような状況を十分踏まえながらも、給与所得控除の見直しが行われるということであれば、それとの関連も踏まえながらそのあり方について検討ということでございます。

給与所得控除でございます。ここにございますように、給与所得者の控除や申告のあり方につきましても、この仕組みそのものが被用者の事情を画一的にとらえて、概算で一律に控除する仕組みでございますので、それを勤務実態に即したものにしていくとか、特定支出控除のような実額控除の世界を広げていくことも頭に置きながら、経費が適切に反映されるような仕組みとすべきではないか、このようなご指摘がございました。

それから、給与所得者の申告機会を増やすことは、意識向上に資するということ。ただ、給与所得控除を見直す場合には、いたずらに負担増となることのないよう、人的控除の見直しとあわせて全体として必要な負担調整を行っていく、このようなバランスのとれた改正が必要ではないか、このようなこともございました。

所得分類の関係でございます。これについては、現在の所得税、10種類の所得に分類して計算する方法になっておりますが、それが、社会の変化に伴いましてそぐわない面があるということであれば、制度の合理化、簡素化の観点から見直しをしていくということで、例えば年金収入など、雑所得ということで分離されておりますが、実態に合っているかどうか、そのあたりの見直しも必要ではないか、このようなご指摘もあったところでございます。

住民税は後ほど総務省のほうからございますので、ここは飛ばさせていただきます。

引き続きまして、4ページでございます。金融所得課税。改革の視点というところでございますが、金融所得については、租税回避の問題、海外への資金シフトのおそれというようなことで、勤労性所得との差異を認め、今後とも分離課税を基本としていく。それを前提として金融所得課税の一体化を進めていくべきだと。これに対しまして、所得再分配機能等々を重視するということで、金融資産を含めた総合課税とすべき、このようなご議論もあるところでございます。

検討課題でございます。金融所得に対する課税方式については、金融商品間の中立性、簡素性の観点から、課税方式の均衡化、分離課税化を進めていくということでございます。損益通算の範囲につきましては、市況にかかわらない継続的な投資を維持していく、あるいは譲渡所得と経常所得の間の損益通算を利用した租税回避の問題といった、幾つかの観点を総合的に考えて引き続き検討ということでございます。それから、損益通算を適正に行うためには何らかの金融番号が必要であるということですが、投資家の混乱を招かないように十分配慮する必要があるというご指摘でございます。

続きまして、相続税関係でございます。相続税の負担は、まさにこれまでの様々な減税措置によりまして大幅に軽減されて、資産の再分配機能も低下している。これは現状あるわけでございます。機会の平等の確保に対する要請の高まりを考慮すると、資産の再分配機能を有する相続税の役割はそれなりの重要性を持っているというご指摘。最近のご議論としては、老後の扶養の社会化に伴って、相続時に残された資産の一部を社会に還元するといった観点もあるのではないかということでございます。これらを踏まえまして、相続税が有する資産の再分配機能を適切に発揮させる方向で見直すことを考えてはどうか、このようなお話があるところでございます。

贈与税につきましては、相続時精算課税制度が導入されております。その活用を見守るということでございます。

固定資産税はあとでということで飛ばしまして、5ページ、納税環境整備までいかさせていただきます。改革の視点でございます。納税者全員が法令を遵守しているという安心感を持てるように、真面目な納税者の視点ということで、制度・執行両面にわたるその取組みはきちっとしていく、これが基本的視点だろうと思います。

課題といたしましては、大きいのがやはり納税者番号制度でございます。これにつきましては、1つ目のポツにございますように、やはり個人情報の保護にも十分留意しながら、早期の導入を図るべきというご意見がございます。

その納税者番号につきましては、どういう番号を考えるかということで、納番として求められる基礎的条件も整理させていただいております。[1]から[5]にございますように、法律上の根拠があること、全国一律の番号であって、生涯にわたってカバーされているということ。ですから、生まれてすぐに番号があるということでございます。それから、番号を付与した後の異動を管理できる。それから4つ目です、これは大変重要ですが、民間利用が許容されるということでございます。5つ目が、プライバシー保護等を含めたセキュリティの問題。このような条件を満たすものにどういう番号があるか、そういう目で見ていく必要があろうということでございます。

3つ目のポツでございますが、それに加えまして、国民の利便性とか行政の効率性という観点から、行政共通番号のような、いわば受益を伴う分野を含めて広く活用されていることのほうが国民にアクセプトされやすいのではないか、このようなこともあったところでございます。

番号制度につきましては、これまで「基礎年金番号」「住民票コード」ということでご議論賜ってまいりましたが、最近、検討が開始されました「社会保障番号」というものもございます。これは受益を伴う番号という面もあります。民・民、民間で利用されるというようなこともございます。制度設計はこれからではございますけれども、現在、政府内で検討されておりますが、こういうことも視野に入れながらの検討があろうかということでございます。一方、「住民票コード」というものが現にあるわけでございまして、新たに制度をつくるのも非効率であろうということで、住民票コードの活用を考えるべき、このようなご議論もあったところでございます。

それから納税者番号制度、もう一つの側面でございます、資料情報収集制度の充実という点がございます。どのような取引に番号を振ってその情報を税務署に提出させるかという、この制度の議論が重要でございますが、ここはまさに外国の制度を参考にしながら、きちっと議論をしていってはどうかというご指摘があったところでございます。あわせまして、費用対効果という観点も重要というご指摘でございます。

その他でございますが、罰則の強化の検討、あるいは記帳水準をより一層向上させるような検討、あるいは6ページでございますが、給与所得者が自ら税金を計算・申告する機会を拡大していくことも大変重要だというお話。それから、個人住民税の公的年金からの特別徴収について早期に実施すべき、このようなお話があったところでございます。

国税はこんな感じでございます。

石会長

ありがとうございました。

では、住民税と固定資産税について、順次お願いします。

林市町村税課長

それでは、3ページのところでございます。下のほうですが、個人住民税でございます。10%の比例税率化が行われましたので、これによりまして広く住民が地域社会の費用を分担するという性格が非常に明確になったということでございまして、そういう点で、人的控除をはじめ各種の所得控除につきまして、所得税とは別に整理合理化を図るべきということでございます。

2点目でございますけれども、国が一律に定める政策誘導的な色彩の強い控除、これまでも景気対策といったようなことがありますし、あるいは生命保険料の控除といったようなものはありますけれども、分権の観点からも、地方税であります個人住民税においては速やかに整理すべきということでございます。

3点目でございますが、均等割の税率が低い水準にとどまっているということでございまして、先般の資料でもご紹介申し上げましたけれども、昭和30年頃と比較して、今、市町村分3,000円、県分1,000円、合わせて4,000円でございますが、昭和30年から平成16の間に平均税率で9倍ぐらいになっているわけです。他方、同じ時期で国民所得が37倍ぐらいに伸びているといったようなこともございまして、もう少し引き上げる必要があるのではないか。その際、基礎的な自治体でございます市町村を重視することを検討すべきといったことでございます。

それから4ページでございますけれども、所得課税においては、所得発生時点と税負担時点をできるだけ近づけることが望ましいということで、近年、IT化が進んできている、あるいは雇用形態が多様化しているといった情勢変化を踏まえまして、納税者等の事務負担に留意しつつ、個人住民税の現年課税の可能性について検討すべきといったようなご論議をいただいてございます。

関連して、先ほどもご紹介ありましたけれども、6ページの最後でございますけれども、個人住民税の公的年金等からの特別徴収、これは所得税や介護保険料においては既に容認されておりますので、早急に実施すべきといった点があったところでございます。

関固定資産税課長

引き続きまして、固定資産税ですけれども、4ページの一番下でございます。これまでの答申でも指摘されてきたことでございますけれども、固定資産税は平成16年度で全市町村の税収の46%を占めまして、19兆円のうち8兆7,000億円を占める、市町村税としてふさわしい基幹税目である、また税源の偏りも少ないということから、今後とも安定的な確保が重要というのが1点目でございます。

それから2点目、次のページでございますけれども、負担水準の調整でございます。従来より負担水準のばらつきにつきまして適正化を図ってきたところでございますけれども、平成18年度税制改正で、負担水準が低い土地につきまして、年々、原則5%ずつ上昇するような負担調整措置をとったところでございます。しかし、さらに今後とも負担水準の適正化・均衡化を促進する必要があるということでございます。

以上です。

石会長

ありがとうございました。

それでは、今ご説明いただいたものをテーマごとに区切って、順次議論を進めていきたいと思います。最初に個人所得課税のところ。残り1時間半もございますので、3等分すれば30分くらいですが、個人所得課税が一番重要だと思いますのでもっと時間をとっていいと思います。今日一番必要とするのはご意見ですから。このまとめについてのご質問があっても結構でございますが、いろいろな点で、今後、我々の税調としての基本的なスタンスをかためていかなければいけない。特に両論併記等あるところについては、どうぞ積極的にご意見をお出しいただきたいと思います。

それでは、1ページ目から4ページ目にわたって、相続税の前ぐらいまで、どこからでも結構でございますから、個人所得課税についてご意見をいただきたいと思います。どうぞ。

丹羽委員

ちょっと皆さんの意見とは違うかもしれませんが、私は課税最低限を引き下げるべきだと思います。社会共通の費用を負担するものとして、税は広く薄くという観点からすると、いかに低所得であっても全く税の負担がないというのは望ましくないのではないか。少なくともなにがしかの負担をして、社会に参画するという意識を醸成すべきではないかと思います。したがって当然のことですが、各種所得控除の見直しを図って課税最低限は引き下げるべきである。その上で必要な低所得者へのセーフティネットは別途考えるべきであって、課税所得についてはそういう視点でやはり考えていく必要があるのではないか。

もう一つは、徴税体制の強化と、源泉徴収からの電子納税制度を利用した申告納税ということを考えていく必要があると。特に我々サラリーマンは100%所得捕捉されるわけでありますけれども、徴税漏れをなくすためにも、社会保障と税を通じた共通番号、さっき出ておりましたけれども、導入は必要だろう。これはプライバシーの問題ではなくて、サラリーマンの不公平感を軽減するために、あるいは納税者としての社会参画の意識を持たせるためにも、給与所得の源泉徴収を申告納税にシフトすることが必要ではないか。その際に、ITの積極活用を図って電子納税制度を普及させるということを考えて議論していただきたい。

以上 、2点です。

石会長

所得控除で特にご意見はございますか。つまり、課税最低限引下げとおっしゃいましたから、何らかの所得控除を見直さなければいけないですね。基礎控除なのか、給与所得なのか等々いっぱいあります。もしおありでしたら。

丹羽委員

いっぱいいろいろな議論が出ておりますから、それはもうぜひ議論していただいたらいいと思います。

石会長

わかりました。

ほかにいかがですか。では菊池さん、どうぞ。

菊池委員

私も、結果的にあらゆる人が多少なりとも所得税を払うという方向で持っていくべきだと思いますので、諸控除の見直し、どれというのは全部ありますけれども、あと子育ての部分をどうするかも含めて、どう考えるかという大変なところはありますけれども、とにかく誰でも必ず払わなければいけないというふうに持っていく方向でやるべきだと思います。

もう一つ、消費税というのがいずれ、いずれが難しいのですけれども、近々入るというのを大前提にして所得税のほうも考えると、緩むわけですから。要するに消費税を入れるのだから所得税のほうはそんなに取らなくてもいいだろう、こういうふうになるわけですね。だけど、きっと消費税はずいぶん先ですよ。ものすごく先になると思います。ですから、消費税のことは、

それはそれとして放っといて、所得税というのはあるべき所得税の姿というのを追求していったらいいのではないかなというふうに思います。

石会長

では、川北さん。

川北委員

この最初のほうに「所得税の所得再分配機能の重要性に留意すべき」とあります。私もこれに対しては一応賛成なのですが、一方で再分配機能を高めようとすれば、いろいろな方法があると思います。一番簡単なのは最高税率を上げて累進度を高めることだと思いますが、ここ十数年、むしろ最高税率はずっと引き下げられてきて、所得税、住民税合わせて最高税率は50%というのは、これも大体コンセンサスになっています。このコンセンサスはおそらくそう簡単には変わらないというか、変えられないわけですね。そうすると、この枠内で再分配機能を高めようとすれば、手段がそうないと思うのです。一つは、丹羽さんがおっしゃったし、菊池さんもおっしゃった、課税最低限の引下げ。これは結果的に再分配機能を高めることになるわけです。

ただ、それをやるためには、これまた石会長がおっしゃったように、諸控除を見直さなければいけない。ところが、給与所得控除にしても配偶者控除にしても、相当反発が強かったと言うべきか、強いわけです。一部、特定扶養控除だとか、そういったものはおそらくそんなに反発は強くないだろう思いますが、そういった限られた枠内で所得再分配機能を高めるとすればどういう方法があり得るのか。それは事務当局にちょっと聞いてみたいと思います。

石会長

おそらくインカムブラケットを直すようなこともあるのでしょう。

では、佐藤さん。

佐藤税制第一課長

幾つかの方法があると思います。全部列挙するのもあれですが、思いつくまま申し上げますと、例えば、今ご指摘がございましたように最高税率そのものをどうするかというのはございます。ただし、最高税率というのは実は適用されている者が非常に限定されていることも事実でございますから、どの層とどの層の分配を考えるかということになりますと、シンボリックにやるという意味は当然あると思いますが、その辺、考え方と整合的でないといけないという点があると思います。

それから、例えば人的控除等々を見直して課税ベースを広げていくということになりますと、限界税率が高い方のところは、税額で見ますと大きな負担増になるということ。相対的な関係がそこで出てまいりますので、課税ベースを広げるということも一つの方法だろうと思います。

それから税率構造。実は税率自体を変えなくても、ブラケットの調整をして幅を狭めるということをいたしますと、その分、全体的に階段状が前倒しになってくるというようなこともございます。いずれにしても全体として人的控除、税率の水準、ブラケット、これを全部組み合わせまして、全体の実効税率のカーブをどう描くかということになってまいります。一つ一つはもちろん、それに伴うものが再分配に対してプラスに働いたり、あるいはマイナスに働いたりする面はあるかもしれませんけれども、その辺をトータルで考えるということが答えになるのかなと。最後、実効税率カーブというのはよくお見せいたしますが、それをどのような形にするかというところが、一つの我々の判断のポイントかなというふうに思うわけでございます。

石会長

お手元に積み重なっている資料の一番上に、個人所得課税の資料が載っていますから、折に触れてご参照いただけたらと思います。

では、田近さん。

田近委員

個人所得課税のところで先ほど説明があったように、税源移譲をして国税の個人所得課税というのが基本的には税収を確保する、それから再分配機能を果たすという二面がはっきりしてきたわけで、このまとめにもあるように、本来果たすべき財源調達、再分配機能というのをどうするか。それで、先ほど来課税ベースを広げるということは出てきていますけれども、このコンテクストでなぜ課税ベースを広げなければいけないのかというのをもっと書き込むべきではないかなと思います。

というのは、所得控除を広げていったときに、ある意味で下のほうの人は、所得が所得控除の額よりも低ければ恩恵にあずかれないわけですね。非課税所得が非常に高ければ、それ以上小さい人たちは別に非課税所得がいくら高くても効果はない。逆に、ここを強調すべきだと思うのですけれども、所得控除があると、所得の高い人たちはずっとそれを引っ張ってきて利用できる。したがって、所得控除でどれだけ減税されるかというのは所得控除額×限界税率になるわけです。そうすると、限界税率が高い人、すなわち所得の高い人ほど所得控除で得をする。

言いたいことは、再分配の観点から所得控除の問題をきちんと書き込むべきだろうと。では、上のほうはどうしたらいいのか。それは議論が出ているように、課税ベースを広げて取っていけばいい。下のほうはどうするか。そこでおそらく、この税調で実像把握以来ずっとやっている、下のほうというのは一体何なんだという議論があるだろうと。下のほうというのをこの頃考えるのですけれども、実際に所得が高くなくても社会保険料とかが高くて負担が大きい、そういうところをどうやって面倒を見るのか。それは所得控除ではないわけで、ここで議論されているように、子育て世代に対する税額控除とかいうのをもっと強く打ち出していくべきだと。では、具体的にどこで所得控除をカットするのか。人的控除の見直しも必要だし、扶養控除の見直しも必要でしょうけれども、つけ加えるとすれば、一部書いてありますけれども、やはり社会保障の受け取りサイドである公的年金等控除のほうを一段と絞るべきだと私は思います。

そういうわけで、再分配ということが国の所得税で強調されてきた、必要となってきたということを踏まえて、所得控除を、今までした議論をもう一つ踏み込んで議論すべきではないかというのがポイントです。

石会長

村上さん。

村上委員

今まで言ってきたことの繰り返しみたいなことになりますが、やはり限られた条件の中であっても所得税の持っている所得再分配機能というものを重視していく必要がある。その場合の条件として、先ほどから出ていますように控除の種類が多すぎると。これを例えば基礎控除にまとめてしまうとか、それから、給与所得控除でもやり方はいろいろとあると思います。率でいくのではなくて金額でおさえるという手もあると思います。それは経費の実態が反映されていればあまり文句は出ないわけで、今、乖離があり過ぎるから問題になっているわけです。

それから、意見としては少なかったと思いますけれども、家族の絆という観点です。私はこの前、N分N乗で言ったのですけれども、それは評判悪いのですが、そういうことを考えないで配偶者控除をポンと切ってしまうと相当の反発があります。そこをそうではなくて、いわゆる中立と言っているのですから、夫婦でもいろいろな収入のありようがあります。100万円超えている人とか、そうでない人、全くない人と。そういう人でも、ないからといってポンと切ってしまうのではなくて、基礎控除とかそういうところで何かそこに配慮をするとか、方法があると思うのです。

それからもう一つ、絶対的な条件として、消費税の引上げがいずれあることを想定していなければいけないだろうと。それから子育て税制、これも配慮しておかなければいけない。大変難しい注文ですけれども、そのあたりを配慮しながら、一つの実効税率のカーブを描いてみてもらうということだと思います。

石会長

では、宮島さん。

宮島委員

今、村上さんが最後にちょっとおっしゃったことですが、実効税率カーブを描くというときに、特に社会保障に限りませんが、これからいろいろな支出面がどういう形で階層的に分配されてくるかということが、意外と織り込んで負担率を示すことが難しくて、少し歳出面も含めて再分配機能というのは私は考えざるを得ないと思います。

そのとき一つ、私は前から申し上げていることで、あまり評判はよくないのでしょうけれども、この中で言いますと、非課税措置といいますか、ここでは主に課税所得の控除の話が中心になっていますけれども、様々な非課税所得となっているものをどういう形で見直すのかというのも、今後の特に再分配効果を考える上では私はかなり重要な意味を持っているのではないかと思っています。その非課税所得の議論がここでは少し不足していたのではないかと思っております。

それから、この場合、再分配と言っているのは、特に格差ということになりますと、所得階層間の格差が中心になっていると思いますけれども、これは世代間という問題も当然議論の対象になると思います。その点では、さっき田近さんが言ったように、年金所得課税についてはもう一段、給与所得控除との関連も含めて、強化を図ってよろしいのではないかと思っています。

あと一つ、これはここで取り上げるかどうかわかりませんが、所得の種類とか損益通算という問題に関しまして、例の事業体のほうでパススルー課税というのが組合関係でこれから少し増えてくることを考えますと、損益通算とか経費控除のあり方、それと所得種類の分け方というものを所得税のほうできちんとしておかないと、たぶん、租税回避のいろいろな手段を提供してしまうことになりかねない。この前、航空機リース事件のときに不動産所得に対してはちょっと手当をしましたけれども、そういう点を考えますと、所得種類の分類のあり方と、それの損益通算のあり方と、特に組合のパススルー課税との関係で、所得税のほうでこれはきちんと本格的にやってほしいと思います。

石会長

かなり専門的な用語が出てきました。

猪瀬委員

今の関係で。

石会長

どうぞ。

猪瀬委員

宮島さんがおっしゃったのでいろいろ気になってきたんですが、結局今回の、消費税が主役で所得税が脇役であるというところから、いろいろな位置づけはそれでオーケーとしたと思うのですが、例えば国民年金とかそういうところで、あれは実質的には税みたいなものですが、社会保険庁がちゃんと取っていないということがあるでしょう。そういうところに穴が開いたりしていると全体に公平性みたいなものが保たれていかないわけですけれども、一つ、宮島さんが言ったから聞きたいのだけれども、国税庁の場合は税というのは差押えできるわけですけれども、社会保険庁も基本的には差押えできるわけでしょう。なぜやらないのですか。そこのところが僕にはよくわからない。

その話ともう一つは、この4ページ目の上から3段目、これは宮島さんと関係ないのですけれども、総務省のほうですが、上から3行目の「個人住民税の現年課税の可能性について検討すべき」と。個人住民税の現年課税の「可能性」ではないわけで、現年課税はIT化の進展で可能性は当然前提であるから、「現年課税について検討する」でいいわけです。可能性ではなくて、「いつやるかについて検討する」というふうにしなければいけない。

何を言いたいかというと、つまり、所得税の再分配機能について本日のテーマなんだけれども、現年課税がずっとできていなかったり、国民年金を払わない人が差押えされないでいる状態とか、あちこちにボコボコ穴が開いている形になっていると、所得税の再分配機能の問題を消費税を前提にしながら考えるときにあたって、もっと周りを固めていかないといけないのではないかということをちょっと申し上げたいのですけれども、ついでに宮島さんのお答えも聞きたいです。

宮島委員

私は答える立場にないと思いますが、もちろん、社会保険についても一種の滞納処分に近い形はできる仕組みになっておりますので、今、実際にそういうことが少し始まっているようであります。ただ、国税庁のような意味での、これまでの長い間の積み重ねとノウハウはおそらく持っていないということはあると思います。

猪瀬委員

差押えというのは、国税庁の人は上手に今までの歴史があるわけでやっているわけですが、法律的には同じなわけですか。社会保険庁も差押えをしようと思えば……。国税庁と社会保険庁を一緒にしろという議論があるぐらいですから、基本的には同じだったら、たまたま名前が違って分けて同じことをやればいいわけですけれども。

石会長

では、主税局からその辺を説明していただけますか。

佐藤税制第一課長

事実関係を申し上げます。社会保険料についての取扱い、差押え云々という話でございますが、これについては、連帯納付義務がかかった上で仮に未払い等あった場合については、国税徴収法の規定を準用いたしまして、差し押さえていくという規定でございますが、基本的には同じ形になっているということでございます。

猪瀬委員

そうすると、執行体制さえあればできるということですか。今、NHKの集金人みたいな話になっているでしょう。つまり「帰れ」と言えば帰ってしまうというふうなことだと思いますけれども、そういう話ではないわけですよね。そこのところが、今の法律が同じであればなぜそういうちぐはぐになっているのかということがあって、これは納番の問題も兼ねてきますから。

福田主税局長

ちょっと補足しますと、一つの法律、徴収法でやっているのではなしに、国税徴収法があります。社会保険料、その他いろいろですけれども、「国税徴収法の例による」ということで、同じようにできるという規定になっておりますのが、同じようにできるということでございます。わかりやすく言うとそういうことでございます。今のは答えになっていないのですが、地方税のことは、知事がおられますのでお話しいただきたいと思いますが。

石会長

地方税、ではお願いします。

井戸委員

ほかのことも含めてでいいですか。

石会長

どうぞ。

井戸委員

私は、個人所得課税が所得再分配機能をあまりにも弱くし過ぎてしまっているのではないかという気がします。最高税率を上げろと言ったのも私ですけれども、最高税率をなぜ上げろと言っているかといいますと、今の高所得者の人たちの高所得の割合が、以前の高所得の人たちの割合とは度外れているのです。そういう度外れている人に50%しか持っていかれないということに対して、制度に対するものすごい不信感があるのです。それにもかかわらずさらに課税最低限を下げろとか、課税ベースを広げろといって、扶養控除をなくせとか、いわば低所得者層に対して負担をどんどん広げるような印象を与えてしまう。印象ですよ。税理論の議論ではなくて、印象を与えてしまっている。しかも、また消費税を上げようという動き。そういうことに対して個人所得課税がどう応えていくかということが問われているのだと思います。そこに対して技術論をしているだけではだめだということを、まず大前提として申し上げたいと思います。

そういうことの一環として、もう一つは相続税の問題もあります。額に汗して払っている所得税、それのほうが多いのですが、いただき物の相続税の負担が所得税負担よりも軽い。べらぼうに軽くなってしまっているのです。

石会長

税率がですね。

井戸委員

税率もそうだし、今、不公平感は何が大きいかというと住宅ですよ。都心の億ションとか何かに住んでいる人たちの相続税がほとんど払われていなくて、小さなところが払わされている、そういう不満感がたくさんあるわけです。ここも考えなければいけないし、併せまして、相続税というのは何かというと、所得税でいわば払い損なった分の一生かかっての精算という面があるのです。そういう決済をきちんとしてもらわないといけないという面で、相続税は、もっと所得税との関連で仕掛けを考えていかなければいけないのではないか、このように思います。

それから、所得の種類に応じての取扱いで、勤労性所得と資産性所得との違いにもっと着目すべきだと思います。金融資産についても、課税技術上の問題で分離課税をやろうかということで、分離課税の技術的な対応をしていこうという体系は、取りはぐれるよりはいいやという発想だと私は思っていますけれども、考えてみると、資産性所得と勤労性所得との間を全く同じように損益通算するのはなぜなのかというのは、私は論理的に本当にちゃんと説明できるのかなという疑問を持っています。やはり損益通算する範囲はもっと限定的にすべきだし、それから、損益通算をするにしても全部見なければいけないのかどうかとか、やり方を工夫しなければいけないのではないか、このように思います。

それから、資産性所得でも一時所得ですと2分の1にしてしまうのです。これは、長年かかったものが一時にポンと出てくるからというような議論で説明するのですけれども、一時所得も対象になっている所得なんていうのは、長年の成果ではなくて、本当に一時にポンと、偶発的とは言いませんけれども、偶発的な感じで出てきている所得なのです。それをなぜ2分の1にしなければいけないのか、というような素朴な疑問に我々は答えていかなければいけない。そういう素朴な疑問に対するアプローチが欠け過ぎているのではないかというふうに思います。

それで最後の徴収の話ですが、はっきり言って、社会保険料は社会保険庁に徴収させているからだめなのです。従来のように市町村に委ねてもらっていればこんな状況にならなかったのに、要は社会保険庁の仕事は全部国の仕事、だから職員も全部国、徴収も国、というような形にしてしまったところに問題がある。もし徴収の問題を議論するならば、住民税もウエートが増えたことですし、現に介護保険料もいただいているのは市町村ですし、そういう総合的な観点からすると、年金の徴収も市町村に再委任するというようなことも、徴収の仕方としては十分検討に値する話だと思います。それで社会保険庁の人員をバーンと削って、企画とか運用の面にして、実質的な運営、もっと国・地方を通じた効率的な形態を考えたほうが合理的なのではないかと思います。

石会長

出口さん。

出口委員

井戸さんのお話と重なる部分があるのですけれども、すばらしいあれで、なぜ私は繰り返すかというと、ここには経済とか法律の先生がいらっしゃいます。昨年、我々が出したものに反対があったということがあるわけですけれども、反対にもいろいろございます。いわゆる租税論上の反対とか、経済的な面での反対とかいろいろありますけれども、大事なのは社会心理的な反対というのが極めて大きかったと思うのです。それを払拭することに、今回、ぜひ主眼を置いていただきたい。

そのためには、先ほども話がありましたが、最高税率は絶対に上げるべきだと思います。どのタイミングでどういうふうに上げるか、これは戦略的に考えていただきたいのですが、前、奥野先生もおっしゃいましたけれども、我々学者というのは数字は対数で見るわけで、1,000万の次は1億だし、1億の次は10億でものを見ているわけです。これまでの議論は、2,000万の次は3,000万とか、4,000万とか、そういう目で見ていましたけれど、これはぜひ最高税率を上げる。それがどういう効果があるか、これは心理的な効果のほうが大きいと思います。だけれども、これは絶対やらなくてはいけないし、国際的に逃げたらどうするのかという話になれば、国際協調というものをぜひやっていただきたいし、なおかつ、企業には単に法令を守れと言うだけではなくて、それ以上に、今は企業として社会的責任を果たすべきだという規範的な要望があるわけです。ですから、最高税率が上がってそこで日本から逃げていくような方がいらっしゃったとしたら、我々としては税法、その他で対応する方法もあるでしょうけれども、規範というものをもう一度考え直すということもあろうかと思います。

それから心理的な面でもう一つは、一時所得の話。これは去年もありましたが、雑所得等で源泉徴収をしています。所得税の議論のときに、やはりオピニオンリーダーの発言というのはテレビ等で非常に大きいのですけれども、これまで出てきた発言の内容は、講演料を幾らもらったら幾ら取られるとか、そういう雑所得とか限界税率の一番高いところをシンボリックに感じているわけです。しかも、源泉が少なくて後から払うから重税感があるわけですが、源泉のもともとのところをもうちょっと高くする。20%にする、30%にする、あるいは50%にする。後から戻ってくるということの税務行政上とのバランス、心理的な効果、そういったものも十分に検討すべきだというふうに思います。

さらにそういう点で、これもまた怒られるかもわかりませんが、子育て減税云々というのがありますが、これは、一たん入れてもし効果がなかったら、やめられるのか。これで果たしてどの程度少子化が救えるのか。翻って、少子化というのは何がどこがどういうふうに悪いのかというと、財政のサスティナビリティのところで効いてくるというところが一番問題なわけでありまして、こういうことについては私は反対はしませんけれども、しっかりしたエビデンスを出した上でしていかないと、こういうものを安易に入れて、その後、効果がなかったときにどういうふうに対応するのか。導入するのであればそこまで考えないと、非常に問題は多くなるだろうなというふうに思います。

もう一つですが、相続税の話とかパススルーの話がありましたが、この辺はもっともだと思います。相続税等も強化したほうがいいと思います。ただ、4ページにも「機会の均等」と書いてあるわけです。結果の平等、機会の均等、これはこの場では何を意味するか、もう凝りかたまっているわけですが、では何歳のときに相続を受けているのかという実態をよく考えて、こういう言葉と実態がどの程度ギャップがあるのかを考えながら、相続税については考えていかないといけない。

なおかつ相続税については、いろいろな文化財、事業継承の問題、様々な問題を副作用的に相殺することもありますので、この辺の副作用の部分をどう考えるか、これもぜひ考えていただきたいと思います。パススルーの話とかもそうなのですが、租税回避をする輩はそんなに人数は多くないわけです。そういう人たちに租税法定主義のもとで税金を取ろうと思って、税の網の目をものすごく細かくする。それで税金をかけようというのはわかるのですが、その結果、課税をしようと思っていなかった人にまでかかってしまう税制になっていなかったのかどうか。意図せざる課税、あるいは副作用課税みたいなものがなかったのかどうか。仮にそういうような税制で引っかかった人が1人いたら、これはやはり税制全体の信頼を揺るがすことになりますから、これは、租税回避をする人を1人見逃すよりも何十倍も制度設計者としては責任が大きいということを肝に銘じたほうがいいと思います。

一つだけ例を挙げると、「公益信託」という制度がございます。これは、例えば自分の財産を社会のために役立てようとして信託にして、不特定多数の人にいろいろお金を出すわけです。当然それはいい話なのですけれども、租税回避に使う輩も信託の中にはいるので、今どういうふうになっているかというと、公益信託の財産まで相続人は、自分の所有権も何にもない、自分のものでも何にもない、そのお金を享受する人も自分でも何にもないけれども、相続財産の中に入れて相続税がかかっているわけです。こういう副作用課税のようなものを、一方で租税回避のために一生懸命網の目を細かくするのと同じくらいの力を持って消していくということを、これはなかなか簡単にはいかないと思うのですが、同時にやって初めて社会心理的な意味での信頼が得られるのではないか。冒頭、佐藤課長がおっしゃったように、所得税は多くないんですね。多くないのに、みんなが多い、多いと言っているところの理由、原因をやはり突き詰めて考えるべきではないかというふうに思います。

石会長

ちょっと座長としてお願いですけれども、今日は皆さん発言が長過ぎる。それでもう過半の時間が過ぎています。

出口委員

これ、税の話なんですよ。長過ぎるのだったら時間を延長するぐらいの、そういう発言をしてほしいですね。

石会長

発言は、終わった段階で延長を考えますけれども、お一人の方に長々とやられた日には、ほかの人が今日はいっぱい手が挙がっているんです。僕はしきれませんよ、司会を。

出口委員

だって、これは国民の税の問題ですよ。

石会長

それはそうです。今日だけで終わるのではないですよ。何回もこれからいろいろ繰り返してやるわけですから、お一人で時間を独占されるのは困ります。今はちょっと長かったかもしれないけれども、おっしゃっている意味は全部わかっていますから、これから大いに……。

出口委員

そういうことが国民に納得してもらえないと、私は主張しているわけです。

石会長

ですけれども、同じことを言うのにもうちょっと短く言える術はあるはずです。私はそれを言っているのです。

出口委員

努力します、それは。

石会長

お願いします。

遠藤委員

出口先生の話はいつも私は賛成のほうなんですけれども、子育てと税制の問題について今言われましたが、私は、中低所得者から税を厚くするという理屈が唯一通るのは、そういう人から税を集めたものを子育てをしている人に税源移譲をするというところしかないと思うのです。それはなぜかというと、子供を3人も4人も生んで一生懸命育てている人がいる。片や夫婦共稼ぎで、外国旅行に毎年1回は行っているというような人が今多いわけですよ、子供も生まずに。それは社会的におかしいでしょうと。税制で調整しなければいけないということをはっきり税制調査会で言っていいと思うのです。それは理由なんですよ。だからそこのところは、出口先生はさっきそうおっしゃったけれども、私は反対です。

それから別な話ですけれども、一つ、質問したいのですが、現状認識の1行目に「過去の抜本改革における累進緩和の結果、財源調達機能や所得再分配機能は著しく低下」とありますが、これは、過去にあった抜本改革が反省して、間違ったということを言っているのですか。それとも、そのときは理由があってやったんだけれども、その後、全体の所得水準が下がって財源調達機能が下がってしまったと。そういうことを言っているのか、どっちかということをちょっとお聞きしたい。

石会長

では、佐藤さんから説明してください。

佐藤税制第一課長

この点につきましては累次の答申でご指摘をいただいているところでございますが、事実関係として、例えば昭和62年の税制改正、平成6年の税制改正、2度ほど大きな改正がございました。そのときはまさに消費税とのセットで、いわば直間比率是正で負担を調整するというようなことで減税を行った。これはおそらくその時点の政策選択であったということだと思います。

ただし、その結果で現出いたしましたのは、やはりこのような負担が、ある意味のフラットにしていくということですので、負担が低くなった、これは事実であります。もたらしたことも事実でございますので、これからのご議論の際にこの事実にのっかってこれからどう考えていくか。社会情勢が変化しているならば、同じ路線で行くのがいいのかどうかということも合わせて、まさにここからスタート、ご議論していただきたいということかなというふうに思います。

遠藤委員

だとすれば、真ん中に書いてある「中低所得者を含めた大多数の納税者の負担は極めて低い水準」なので、なぜ高めなければいけないかという理由が要ると思うのです。

石会長

関連ですね。

では河野さん,どうぞ。

河野委員

今日は論点整理をやるんですね。論点整理のポイントというのは、太字で書くようなメッセージを次の税調に残すかどうかなのです。今、各論はいろいろな議論をやっているけれども、それは各論の話なんです、大部分は聞いていると。今、遠藤委員の言ったことは総論に近い話だったと思うけれども、どういうふうな基本的なメッセージを書き込むかということが最大の仕事なのです。各論はいままでだっていろいろな意見があるのだから、今日の議論にずいぶんそれはつけ加わっていると私は思います。

我々がここでメッセージを対社会に残すためには何が重要か。基本は、僕はこの前も言ったことがあって、この議論は繰り返しなんだけれども、これからいつの時期か、消費税を大幅に上げなければならない。こんなことはみんなわかっている。政治的な配慮は政治家がやればいい話であって、税調にしたらやらなければいけないと思っているでしょう、正直言って。だから、税収増は明らかに消費税なんです、誰が考えても。

しかし、今日は所得税の話をやっているから、所得税がどういう位置づけかということになるけど、所得税の話で我々は苦い経験を持っているのです。去年の6月。所得税で細かいことをいろいろ言ったらば、新聞、テレビに何を書かれたか。サラリーマン増税でやるのか、と言われたわけです。だから我々は引っ込むのではなくて、歳入増は基本的には所得税でやるのではありません、消費税でやるんですよ、というメッセージが一番重要なんです、この機会に税調が言うとするならば。そのかわり歳入中立だという原則でやるにしても、中だったらいろいろな議論があるわけですよ。改革すべきことが山ほどあるわけだ。書いてあるんだ、各論は全部。それをどういうふうに裁くかということは、それはまた一つの哲学が必要だと思います。

何かといったら、何人かの方がおっしゃっているけれども、所得再分配機能をいくらかでも回復させようではないかと。当税調は長い間、フラット化とか全部、その議論をしてきたのだから、長い歴史の中で我々は。反省もあるし、行き過ぎたこともあるのだから、もうちょっと考えてもいいのではないか。所得格差社会云々と政治的に言われていて、ある種それに便乗するわけではないけれども、所得税でよほど兆単位の金を取るという話ではなくて、中を組みかえることによってなにがしか。川北さんが最初に質問したこともあるけれども、どういうふうにやったらば再分配機能を回復できるのか。

私はドラスティックにできるとは思いませんよ。実は50%を上げるということは反対です。だけれども、その方向は間違っていないと思います、メッセージとしては。この議論はいずれ誰かがやるわけです。来年か再来年か知らないけれども、新しいメンバーが。そのときのために大きなメッセージを残しておくことは必要だと思います。各論は、古い人も新規の人もみんな言いますよ、俺はこれが必要だと。こんなことは書けばきりがない。おまえの意見はだめだといっても、それはお互い、立場、考えが違うのだからしようがない。基本方向だけは言わなければ論点整理にならないのです。

私がここで言いたいのは、歳入増は消費税。いつの時期か消費税。所得税では財政中立を原則とする。所得税については、所得再分配機能をもうちょっと真面目に考えてはどうかと、不利かもしれないけれども。知事が言ったことはそのとおりだと思います、基本的な考え方は。だからそれに関連して言えば、所得税の話。これは言った話もあるから繰り返しにすぎないけれども、そこにももうちょっとは。いろいろな経過があって今日の姿になっているけれども、そういう配慮もあっていいのではないかということです。

石会長

では、岩さん、お待たせしました。

岩委員

今の河野さんの話とも重なりますけれども、やはり中期ということを考えれば、私は消費税2ケタ、これを前提に所得税なり設計していかなければいけないということが一つ。

それから格差の問題ですが、あんまり格差、格差と、何でも格差だということで税を動かしていくと、これはまた税にひずみが来るのではないかという気がものすごくしているわけです。最高税率を上げるべきだという議論もあるようですけれども、今、世の中の人が金を儲けたやつに不満を持っているのは、大体が金融所得ではないですか。だったらば金融所得課税で対応することも可能だろうし、最近聞くと、途中をかなり証券化して動かしたり何だりと。これは不良債権の証券化ではないですよ。通常の人が途中、証券化したり何かということがあるわけです。これは不良債権の証券化ではなくて、税制対策の証券化でしょう。こういうことがだんだん広がっているということは、金融所得課税にひずみが出てきたのだなというふうに私は思うのです。土地税制も含めて、そこのところはバランスをとっていかないといけないのかなという気がします。

それから、河野さんがおっしゃったけれども、給与所得控除は非常に神経質な問題。去年、あれだけ、まさにサラリーマン増税と批判されたわけだから、基礎控除の拡大ときっちりセットにしていかないとなかなかここの部分は手をつけられないだろうと。基礎控除に関しては、村上さんがおっしゃったけれども、配偶者控除をすっぱり切ってしまうというのは、家族という点ではかなり反発を招くだろうし、家族の絆の希薄化はさらに進むということも言われているわけです。したがって、税制だけでどこまでそれができるのかというのはちょっと疑問に思います。

格差という点でニートとかフリーター、扶養控除からの除外というのは、これは私は賛成です。つまり、ニート、フリーターが社会の矛盾だけから来ているわけではない。親がかなり甘いという部分もあるわけですよ。そういう意味からするとニート、フリーターは除外するのは当然のことではないかと私は思っています。

石会長

翁さん。

翁委員

1ページの下のほうに「個人のライフコース全般を通じ」ということが書いてあります。私も、所得再分配機能の見直しについて、生態的な切り口だけではなくて、一人一人のライフコースに合わせて所得再分配を考えていくという視点が非常に重要ではないかと思っておりまして、その意味では子育ての税額控除というのは、今お話もありましたけれども、いろいろ問題のある扶養控除、所得控除になっている、そういったものを廃止して新たな税額控除を入れるということで、子育てを社会的に支えていくというメッセージにもなるので、賛成です。

2つ目は、さっき河野さんがおっしゃっていたのですけれども、所得税収全体を増税するというイメージがまだありますけれども、そこはニュートラルな立場に立って、そして長い目で見れば、社会保障の財源として消費税はどうしても上がっていくことが見込まれるわけですから、それを見込んだ上でどういう所得再分配を考えていくかという視点が重要だと思っております。そういうことで国民を納得させていくということが大事だと思います。

最後ですが、再分配機能の見直しというのは非常に重要ですけれども、それによってあまりに活力がそがれるようなことになっても問題である。そこは、活力を捨てるのではなくて、やはり活力も見ながら再分配機能を、より果たすべき機能を強化していくという考え方に立つべきだと思っています。

石会長

難しい選択ですね。

奥野さん、どうぞ。

奥野委員

河野さん初め皆さんおっしゃったことではありますけれども、2つのことを申し上げたいと思います。1つは、出口さんがおっしゃった、社会心理学的な問題というのが大事だと。それはものすごく大事だと思います。みんなにわかってもらえなければ、増税にしても税制改革もできないわけですから、国民にわかってもらうことをしてもらう必要は絶対あると思うのです。ただ、サラリーマン増税と批判されてしまったからものすごく腰が引けてしまうというのは、やはり政府税調がやるべきことではなくて、税率をいつ入れるかと。これは仮に政治がやるにしても、今、税は大問題である、ここに問題があるのだということをきちんと説明する責任も政府税調は持っている。

少し話が脱線しますが、そういう意味で言えば、今みたいに消費税を1%か2%上げればいいというような議論になっていると非常にまずいわけで、こういうことは本当はよくないと。景気がよくて税収が上がっているのだったら、今こそもっと税を上げて、あとに尾を引かないようにすることのほうが大事だということをはっきり発信すべきで、それはやはり我々がやるべきことだというのが一つです。

もう一つは、税制改革に関して河野さんがおっしゃったみたいに、やはりわかりやすく説明することは大事で、所得税に関しては「公平、中立、簡素」のうちの公平と簡素の2つを表に出す、それが今回大事なことだと思うのです。公平ということは何かというと、所得税というのは所得再分配なので、所得税の中で税収中立。できれば児童手当とかそういう手当も含めて、歳入中立でやったときに何が起こるのかということをみんなに提示して、その上で細かい点は国民の議論に任せることをすべきだというのが1点です。

もう一つ関連して言えば、再分配ということは今の時代では、ある年の所得の再分配をしてもしようがないわけで、ライフサイクルの中での再分配をすることをもっと表に出すべきであって、所得税も大事だけれども相続税を増税する、これをもう少し表に出すべきだと。所得税と相続税の役割の違いはどこにあるのかということをもう少しきちんと言ってほしい。

2番目は、簡素のほうです。簡素は2つあって、透明性のために控除をできるだけ整理するというのはまさにそういう意味であって、多様化していますから、簡素にしないと、誰が得をしているのか得をしていないのかが見えないし、簡素にもならないということです。もう一つ、ちょっと問題なのは、さっきから出ている金融所得とか最高税率のところです。税法で簡素にして、税法で例えば税率を上げたからといって実際に取れるのとは違うので、実際に取れるところはどうなっているのか。租税回避とか外国に逃げるとか、そういうこともあるんだということをもう少しきちんと説明して、その上で簡素ということを考えれば租税回避も少なくなるということをもう少しきちんと説明する。そこら辺は、我々の今回の税制改革の、ある意味で焦点として出したほうがいいのではないかと思います。

石会長

井上さん、どうぞ。

井上委員

相続税の問題がだいぶ問題になっておりますけれども、私としては相続税をこれ以上あげるというのは反対でして、中小企業に対する考え方というのは皆さんどういうふうに思っておられるのかなというふうに思います。中小企業はともかく自己資本比率が非常に低い。どうしても金融に頼らざるを得ない。資産というものは継承しながら事業を継続していかなければならないということからすると、それを再分配だといって取ってしまうことに問題があるのではないか。たしかに、非常に大手といいますか、今のように金融所得で大変に膨らんだものを取るというのはまた別の問題かもしれないと思いますけれども、そういった点で、相続税を上げて再分配すればいいというのは、私としては大反対だということでございます。

それから、今の所得税を上げろという問題についても、本当に今、ひと握りの人がえらい儲けている。それをマスコミが大々的に宣伝しているということであって、それは、岩委員のおっしゃった、ほとんどは金融所得によるものなわけです。そうすると、その金融所得に対する税率をどうするかということを考えるべきだろうと。今、10%にしてあること自身が問題であって、それを早く上げることを考えなければいけないのではないかというふうにも思います。

先ほどの不動産の債券化なんて、これも本当にひどいものです。そういう点も、ひずみが出ているものをどういうふうにして是正するかということであって、あとは、消費税を本来は上げなければいけないことは、もう皆さんよく理解していることで、上げるタイミングの問題だけであって、それを、今の所得だとかそういうもので一時的に逃げるということは相ならぬのではないかというふうにも思います。

以上です。

石会長

所得税の強化のところで最高税率のことをおっしゃっていたのですね。最高税率を上げるのは問題だという言い方でおっしゃったわけですね。

井上委員

はい、そうです。

石会長

そういうことですね、元来の主張からおっしゃると。

では、尾崎委員。

尾崎委員

これを拝見しますと、総論の柱の一つに個人の選択に中立的というのが何回か出てきます。だけど議論していることは、例えば子供の数を増やすとか、中立的な話をしているわけではないですね。だから、企業活動で法人税か何かの場合には、中立的であれということをおっしゃるのは結構だと思いますけれども、全体から見ていて、所得税の話で一つの柱に挙げるのはどうかなと。中立的であるということは税制全体としては重要ですよ。所得税の場合には、ほかに書いてあることと何だかそぐわないような気がしたものですから、ちょっとそれを申し上げたかったわけです。

石会長

わかりました。

では、辻山さん、お願いします。

辻山委員

今日のこの1ページに、所得再分配機能というのが全体を通じて出てきます。それ自体は特に反対というわけではないのですけれども、これまでの何回かの所得税改革の中で、結果の平等ではなくて機会の平等だとか、あるいは、経済活力との関係で言われてきたことと、ある意味で相反するようなことが、突然ではないのでしょうけれども、ここで今、出てきたのかなという印象があります。したがいまして、もしこれをやるとしても、最高税率を上げるとかいうことには直接結びつかないような気がいたします。もしやるとしたら、今出てきたような、当時の議論と経済環境が違ってきた中でもう少し整備していく。金融所得課税に対する見方とか整備とか、そういうところに行くべきなのではないかと思います。

石会長

おっしゃるとおりです。数年前と比べると所得再分配のニュアンスが税制で少し変わってきたということは。でも、これは今、世の中の動きですからしようがないけれども、もっとこれはまた議論しましょう。

上月さん、どうぞ。

上月委員

先ほど来出ています、金融資産の課税の問題です。たしかに逃げ足の速い資金を逃がさないためにという政策的な問題があるので、これはやむを得ないのかなと思いますけれども、その辺にかなり不公平が起こっているのではないのかなというのが実感としてあります。

2点目は、先ほど河野委員がおっしゃいまして、あまり中期答申にはなじまないのかもしれませんけれども、私が思いますのは、相続税の今の課税方式です。折衷式の遺産課税方式ですか、取得税方式ですか、これを本来の遺産取得税方式にしないと、今だと、同じ財産をもらっても被相続人の財産の如何によって税額が変わってきます。そういうところまで中期答申にうたっていただけるのかどうかわかりませんけれども、ちょっとその辺を。

石会長

はい。私、個人的にその問題は非常に関心があるんですよ。しかし、まだ本格的に議論していませんから、今回それが書けるかどうか、もう少し議論しましょう。

丹羽さん、お待たせしました。

丹羽委員

私は翁さんの意見に応援演説をしたいのですけれども、要するに個人も企業も働く意欲を持たせないと、国際競争力とか国際水準というものを考えながら所得の再分配ということも考えていく必要があると思います。蓄財の意欲をなくすとか、あまりにもバランスを欠いたことはよくないというふうに思います。特に市場主義社会であまりにもバッシングを強くすると、パニッシュメントみたいな税をやると、やはり日本の国の産業の活性化ということにマイナスになるのではないか。これは相続税も同じようなことがあるんですよ。しかし、今の95%程度が相続税を課されていないと。相続税にもう少し重みを持たせていくということは、社会に還元ということからもやはり考え直す部分があると思うけれども、あまりにもこれをひどくすると、またブランコが揺れ過ぎてしまう。

石会長

次に移っていいですか。大議論をしましたね。

資産課税はすでに所得税でだいぶ議論に触れていますから、納税環境整備、とりわけ納番の取扱い方云々につきまして残った時間を使いたいと思います。今日お出ししましたこの文章によりますと、5ページ以降です。固定資産税もまだ議論ができていませんから、議論していただきたいと思いますが、残った時間で納番を中心とした議論に集中したいと思います。あるいは、納税環境整備という広い意味でも結構です。

どうぞ、井戸さん。

井戸委員

私は、納税者番号制度は、税制度をどう仕掛けるかというときのベースにするか、しないかということだろうと思います。例えば金融資産についての課税を考えたときに、従前ですと、この税調はずっと、総合課税、総合課税と言ってきたのですが、納税者番号制度がなかなか導入できないという環境の中で、それだったら分離課税でもしようがないかという形で、今、制度ができている。しかし、本当に納税者番号制度が的確に動くということを前提にすると、なぜ総合課税をやらないのかというようなことも考えられますので、どこまでの税制度を構築するのかということと絡んで議論していかないといけない問題だと思います。

しかし、納税者番号制度ができないと、「悪い奴ほどよく眠る」ということわざがあると同じように、どうしても捕捉の問題で免れてしまうというところがある。だとすると、現実には今、サラリーマンの所得についてだけは実質的に納税者番号制度を入れているのと同じようなことになっていて、それ以外はなかなかそういう形になっていない。そういう状態の中でどこまで所得税制、あるいはインボイスの問題にも絡むかもしれません。そういうこととの関係で議論を進めていかなければいけないのではないかと思っております。

それから、どうせ使うなら、もうすでに住民票コードは全国に振られていまして、活用されていないだけなのです。実務的には活用しています。行政間ではものすごく活用しているのです。私どもは県税の課税でも内部的に使っています。しかし、外に見えていないだけなのです。そこまで使われているような制度が全国的に動いているにもかかわらず、また新たに付番をするとか、そういう無駄な作業をするのはやめたほうがいいのではないかと思っております。

石会長

河野さん。

河野委員

私は伝統的に数年にわたって納税者番号制度の導入論議をずっと聞いていて、個人的にはげっぷが出るほど聞いていて、いつまでたってもできない。理由は山ほどあるわけで、それぞれが勝手なことを思っているのが出てきて、政治的に実行できなかったんですよ。さっき私は今度は論点整理だねと申し上げた。次のメッセージを骨太に送るのだったら、この問題をどう真面目に考えるかということなのです。従来の考え方とすれば、ここに書いてもしようがないだろうという気持ちが半分。しかし同時に、さっき知事もおっしゃったけれども、あの人の考え方は総合課税論に立脚する非常に古典的な、石さんと同じような考え方なんだけれども、それもあるんですよ。重要なことなんだそれは、伝統的に。馬鹿にならないのだから。しかし、現実に今ここで納番制度をもう一度真面目にテーブルにのせようかなと思っている人たちの思いは、ひょっとすると、かなり大幅な消費税増税を一回こっきりでどこかでやらなければ世の中は収まらないのだから、そのときにこれがセットでないと世の中に通らないかもしれない、と思っているのではないかと思うのです。推測ですよ。だから僕は半信半疑なんだけれども、ここで基本的に考えるということについて書くのだったら、賛成。

問題は、いつかその議論をやるのでしょう、秋口か何か皆さんが。そのときは、具体的にああでもないこうでもないと並べてもだめなんだ。第1案としてこういう方式はどうだ、第2案はこうだと並べなければ、議論にならないですよ。それぞれがそれぞれの欠点をみんな突くわけだから。そうしてもらって議論が整理されれば、うまくいくのではないかと思っています。

石会長

今回の話ですか、次期以降の話ですか。

河野委員

次に大幅な消費税を上げるときです。

石会長

わかりました。どうぞ、丹羽さん。

丹羽委員

私は賛成ですね。ぜひそれを抜本的に議論して提案すべきだと思います。

それからもう一つ、私もちょっと申し上げましたけれども、社会参画の意識を持たせるために給与所得の源泉徴収を申告納税制度にして、それでITを活用するということについては、納税環境を整備する上においても非常に大事なことだと思います。事務局のほうはいかがですか。

石会長

ITと申告とサラリーマンの実額控除というものですが、何かありましたら、どうぞ。

佐藤税制第一課長

いえ、特にコメントというよりも、そういうご意見はご意見として十分成り立ち得ると思います。

丹羽委員

要するにやる気がないということですね。

石会長

いいえ、丹羽さん、その意見は結構従来から強いんですよ。

丹羽委員

強ければ、やはりそれを取り上げていったらいかがですか。

大宅会長代理

でも、全然動かない。

石会長

動かないのはあるけれども、所得控除というのは実額と概算と二本立てではないかということはこの間の論点整理にも書いてあるわけだから。問題は、どれだけアクションが動くかということでしょう。今回の中期答申は、いろいろな意見を羅列するだけよりは、やはりアクションを起こすポイントをどこに絞るかという点もあるでしょうから、まだ数回というか、来月にかけて議論がありますから、大いにその辺を言ってもらいたいと思います。

どうぞ。

岩委員

要するに総合課税、納番、申告納税、ITを含めて、これは言ってみればセットですよ。所得税の各種控除の見直しとかそういうのをやっていくわけですね。どの辺まで簡素化できるかどうかわからないけれども、ちょっとそれを見て、その次の段階なのではないかなと私は思います。

石会長

納番ですか。

岩委員

納番にしろ、何を番号で採用するかとか、それもその次の段階でいいのかなという気はしていますけれども。

石会長

尾崎さん、どうぞ。

尾崎委員

納番の話ですけれども、消費税を複数税率にするというとき、やはり何か番号制度がないと難しそうな気がします。だから所得税だけの関係ではなくて、消費税も含めて議論しないといけない話ではないかと思います。やはり何かあったほうがいいと思います。

石会長

事業者番号の話も含めての話ですね。わかりました。

どうぞ。

奥野委員

金融所得で株式等に関して総合口座でしたか、金融機関で事実上、株主の株式番号などを把握する状況になってきて、銀行もそういうことができる環境になっているわけですね。他方で、株券というのはペーパーレス化も予定されています。言いかえると、みんな株券を持っていてもしようがないので金融機関に預けようという時代が来るわけです。そのときに金融機関が付番をすると。番号をきちんとつけて、把握するということをするかしないかによって全然変わってくるわけです。そういう意味でまず第一に、時代環境として、これをやるタイミングとして非常にいいタイミングであるということが一つです。

もう一つは、村上ファンドとかいろいろなことがあって、脱税行為が横行しているということをきちんとやるためには、こういうインフラをきちんとつくらなくてはいけないという社会的な要請もあると思います。そういう意味でやはりきちんと、こういうことをやるべきであるということを柱として言うべきではないかと思います。そのときには国民の納得を得られる形というのが一番大きいので、この番号がいいとか、あの番号がいいということを言うよりも、とにかく国民が納得できる形で入れましょうということを言うのが一番いいのではないかと思います。

石会長

だいぶいろいろなご意見が出ましたけれども、もう一回もとに戻って最初からでも結構ですから、どうぞ。宮島さん。

宮島委員

今日、特に所得税の再分配機能の話が議論になりましたけれども、この間のこの税調の答申で、冒頭に必ず、税制全体、歳出面も見て判断すべきだという議論が出てくるわけですね。この議論で一体どういう整合性を持たせて議論をさせていくかというのが、最初申し上げたのはそういうことだったのです。歳出面の議論でちゃんとやれという議論をしていながら……。あれを読むと、一つ一つの税制での再分配機能というのはあまり考えなくてもいいというメッセージを、どうもこの間、税調が送ってきたというふうに理解していますので、私はあまり賛成ではないのですけれども、ただ、そういう流れから言うと、今回こうして所得税の再分配効果を取り上げることは大いに結構なのですが、冒頭に、歳出面を含めて考えろというメッセージが入ったときに、その両者が必ずしも整合性を持たないのではないかと、やや懸念がございます。

それから相続税の問題というのは、先ほど課税方式の話がありましたけれども、あるいは井戸さんから所得税の精算課税という話もありましたが、消費税だって一種の精算課税をやらなければいけない。それは被相続人に対する課税という考え方でやらなければいけないので、そういう位置づけをはっきりしなければいけない。ここを見ると、「所得、消費、資産の適切な負担」と書いてありますけれども、相互の課税ベースの補完関係というものをきちんととらえた議論をすべきだというふうに思っております。

それから、先ほど河野さんから特に税収中立という話が出ましたけれども、それはどういう意味かというのもはっきりさせる必要があって、要するに制度改正時には所得税というのは増減税が一体になって税収中立ですよと。ところがその後、所得税というのは、これは税制にもよりけりですが、弾性値が比較的大きいわけですから、税収そのものは他の税よりも増えていく可能性がある。そうすると税収中立と言っている意味は、改正時の一時点をとらえて言おうとしているのか、それとも例えば5年なりそのくらい見たときに、そこで例えば所得税の税収というのはどうあるべきかと。私は、改正時はレベニュー・ニュートラルでいいけれども、しかし、いずれ税収のウエートは上がっていくというふうにむしろ考えておきたいと思っています。これは私の考えです。

石会長

それは同じでしょう。

河野委員

当然そうですよ。

宮島委員

それはよろしいですか。

石会長

当然そうでしょう。

宮島委員

それから最後は、納税環境整備で、不公平感の是正というのが社会的には一番大事で、それを一番強調しないとおそらくうまくいかないのではないかというふうに思っています。「感」を直すということですから非常に変な話ですけれども、私は、社会保障番号という、給付と負担全体を何とか捕捉しようという考え方は、少しこれは議論をしないと難しい面があるかと思います。

石会長

ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、秋山さん。

秋山委員

ちょっと話が戻りますけれども、所得税の所得再分配機能ということを考えるにあたって、今の環境といいますか、時代背景が従前から変わってきている部分が2つあるというふうに思っています。

1つは、もともと想定していた、例えばサラリーマンというのは基本的に100%近くを給与所得で生活していると。ところが最近は、例えば個人の株取引、その他の金融取引が非常に活発になってきている。あるいは今後のことを考えると、例えば電子商取引のような部分、インターネットのオークションですとか、ああいった部分で個人の収入の一部が賄われるというようなことが、これから増えてくることを想定していくことが大切になってくるのかなと。それが先ほど来から出ている、所得税率と金融所得に対する税率のバランスを考える一つの背景だと思います。

それから2つ目の、背景が変わってきている部分で、今一番使われる言葉で言うと、格差社会という言い方になってくると思いますけれども、所得の高いほうの部分を見ると、一方で国を挙げて新産業の創造というようなことで例えば起業を奨励する。そういう背景がありつつ、最高税率の議論をする場合に、たぶん今までと違うのは、所得税の税率の刻みを考えるときに今までよりは高い部分の刻みをもう少し増やしてもいいのかなと。つまり最高税率をもう少し上げるというのであれば、今の段階の一番高いところをただ税率を上げるのではなくて、その後ろにもう一段階つけるというような形での検討はありなのかなというふうに考えるようになっています。

それから所得の低いほうのところを考えたときに、一番の問題は、生活の安定感、安心感。特にそれが子育てに響いてくる部分が大きいのではないかなというふうに思っています。例えば海外旅行に行くために子育てを躊躇するというのは、まだ余裕のある生活層だと思いますけれども、もっと所得の低い人たちでも安心して子供を生んで育てることができるようにするというふうに考えると、基本的には私は、課税最低限は引き下げて社会参画意識は持つべきだという意見には賛成ですが、そこに税額控除という形で持ってくると、結果的に、田近先生がおっしゃられたようにそこから受ける恩恵が非常に少ないという問題が出てくると思いますので、ここの部分は税の中だけで考えるのはちょっと難しいのかなと。例えば出産費用を基本的には無料化するとか、そういったことと組み合わせて考えていく方向性がいいのではないかというふうに思っております。

石会長

ほかにいかがですか。

どうぞ、小嶋さん。

小嶋委員

ただいま秋山委員から意見が出ましたけれども、たしかに低所得者層が子育てに一番困っていると思うのです。と申しますのは、東京都内の23区の中でも40%以上、給食費が払えない地区があるわけですね。その人たちというのは税では救済できない状況の中であろうかというふうに思うので、それは税以外で考えるべき問題ではないかと思っております。

それからもう1点ですけれども、相続税の問題。これは井上委員の発言に対して賛成的な意見です。と申しますのは、これは民法上の問題もありますけれども、日本の企業というのは90%以上が中小企業が支えているという状況で、その企業の経営者はかなり相続税への影響というのは受けていくと思うので、相続税を増税していくということになると、では、その企業が維持できるような方法ができるのかという問題も出てくると思います。ただ単に不労所得みたいにもらったから税をかけるということではなく、やはり将来的にそういうことを考えるのであるなら、実態をよく把握していただいた中で議論していただければ大変ありがたいというふうに思っております。

以上です。

石会長

おっしゃったのは承継税制のお話ですね。この問題もこの税調で長いこと議論しておりますので、どういうふうな表現をするか、これから考えてみたいと思います。

ほかにいかがでございますか。どうぞ。

井戸委員

これは今、現場で困っている話という意味でお聞きいただいたらありがたいのですが、今回の税制改正で定率減税を見直しました。今まで納税者でなかった人たちが納税者に浮上してしまった。非課税世帯が課税世帯に浮上してしまったのです。そうするとどこに影響が出てくるかというと、税金の面では大したことないのです、所得が浮上してもほんのちょっとですから。それが介護保険料に波及する、それから国民健康保険料に波及するという形で、今までほぼゼロだった人たち、あるいは1,000円ぐらいだった人たちが、4万円とか5万円の負担を強いられているという状況に現実にはなっていまして、我々はその現実の負担に対してどういう対応をすべきなのか。税の補てんはできませんけれども、介護保険料だとか、国民健康保険料の取扱い、トータルとしてどこまでだったらよくて、どこまでだったら悪いんだというようなことを、今、議論しているところです。

例えば公的年金控除を見直そうという議論になりますと、直ちにそういう形で波及が出てくるということもあります。そうすると、基礎控除ということを議論するときに、基礎控除というのは今まであまり年代とかは配慮せずに、最低生命維持に対する配慮ではないかというような説明の仕方をしてきたと思うのですが、ライフスタイルに応じた対応ということもある意味で考えていく必要が出てくるかもしれない。現実のこういう状況から悩んでいるという意味で申し上げるなら、これは議論を深める必要があると思います。あるいは、どうも軽減措置の話ではなさそうだなという思いもありまして、もしかすると保険料の徴収の問題かもしれないです。保険料体系の問題。ですから、その辺の全体としての負担のあり方という面を見ておく必要があるのではないかという意味で申し上げました。

石会長

自治税務局から今の井戸さんのお話についてコメントありますか。いろいろ現場を把握されていると思いますけれども。

林市町村税課長

今年の6月の個人住民税について、いよいよ公的年金控除の話と老年者控除の話、見直しが効いてきて、従前非課税、納税していない方にそれぞれ税金が発生する場合が出てきているということで、例年よりも各市町村に対する問い合わせがかなり多いということはどうもあります。それから、今お話がありました国保、あるいは介護保険に対する対応につきましても、それぞれお話がまたあるようです。

石会長

非納税者が納税者になってしまった。そこで諸々のものが社会保障関係あたりにもグッと来るというのが井戸さんの悩みですよね。

どうぞ、何かあれば。小室さん。

小室自治税務局長

対応はいろいろあると思いますけれども、一つは、税のほうで急に上がらないように経過措置を定めるという話をやっている点があります。個々具体例の話はちょっと別にしますが、もう一つは、介護保険料なり国民健康保険というのはトータルで必要な額を割り振りするわけですけれども、その中である人を住民税の額で決めているというところに激変が起きるので、それは、そちらのほうの国民健康保険なり介護のほうでいろいろ考えていただきたいという話。これは厚生労働省ともよく話して、現場で混乱が起きないように、その辺は十分注意しながらやっていかなければいけないし、今できる範囲ではやっております。

石会長

大宅さん、どうぞ。

大宅会長代理

格差問題への関心の高まりというのを、与えられた事実として世の中考えなければいけないのかというのが私は引っかかっておりまして、せっかく結果の平等から、頑張った人にはちゃんと称賛なり、いい目に遇えるということに世の中変わりつつあるなあと思ったのに、何でもかんでも格差だ、格差だと。親の収入によって私立高校を受けられないというのも格差だなんて話になって、それはないだろうというふうに思っておりますので、その意味でこうやって見ていると、いろいろなところでこの国は、金持ちはあってはならぬと。そんなことがあるからみんな子供を生まないんですよ。それから、頑張って努力したら、かわいい女の子連れてジェット機にでも乗って、それもいいなあという夢が見られればいいけれども、あんなことになったらよってたかってつぶされるんだと思ったら、やる気もなくなる。ニートにもなろうしフリーターにもなろうぜい、というのが私の感じでして、この格差問題でまたぞろ引き戻されることだけは阻止したいというふうに私は思っています。

だから、所得税の累進度を上げるというのも私は反対です。基本的には、皆さんもおっしゃっているように、消費税だったらみんなで負担するわけですから、そのほうがいい。消費税というのは国民全体を敵に回すという意味もありますけれども、所得税でどこかにフラット……、異常な大声を出されて非難されるという危険はないわけですから、私は、筋として消費税を上げることを前面に出したほうがいいというふうに思います。

河野委員

今の格差論で、あなたが言った都会住民の貧しい連中からずっと上まで、マネーゲームの中でうまく泳いでいる人間もいるわけだ。これは明らかにあるんですよ。ただ、今言われている政治論としている格差論というのは地方の格差論なんだよ。旧自治省が言っている、地方行政が全部言っている。

大宅会長代理

地方は豊かよ。

河野委員

それも一つの主観的な判断だけれども、それが政治論としては実にややこしい話だね。それが交付税とかに全部引っかかってくる話だから、公共事業、単独事業を全部含めて。今の歳出歳入一体改革でね。これは実に難しい話だ。そっちのほうがまだ難しいですよ。

石会長

その辺はいろいろありますね。

猪瀬さん、どうぞ。

猪瀬委員

基本的な問題に戻りますが、所得税の再分配機能の問題ですけれども、20年くらい前は年収700万円で50万円ぐらい払っていた。今は10数万円しか払っていないということですが、それについてどの程度国民にそういう情報の共有化というか、メディアも含めて、所得税が安くなってきているんだということについてのある種のコンセンサスというか、そういうものがどこまで行き届いているのかなというのがよくわからない。その都度、その都度のあれで、ちょっと下がった、ちょっと下がったというふうなことでやってきているので。前の消費税のときにちょっと安くしたのでしょうけれども。

もう一つは、マンションの一室か何かでフリーターみたいなお兄ちゃんが一気に10億円とか20億円儲かっても、それっきりずっとコンピュータオタクみたいにやっていて、そういうのが10%しか払っていないと。そういうことがどの程度国民に知られているのか、情報として共有されているのかということ。これは漠然と聞いているような感じで僕はお尋ねしていますけれども、そういうデータとか世論調査とか、どの程度しているのですか。これ、重要だと思うんですね。

石会長

いろいろやっているけれども、それが国民の中にどれだけ浸透しているかというところが非常に気になっているというのでしょう。

猪瀬委員

高い、高いと言うでしょう。定率減税だけでも大騒ぎになるわけだから。そういうことについてどの程度わかっていてやっているのか。あるいは、マスコミはわかっていながら、いつも面倒くさいから反対だと言っていればいいのか。その辺もよくわからないけれども……。

石会長

皆さん、わからないのではないですか。猪瀬さんのお話について何かフォローする人はいますか。そういう不満を皆さんお持ちなわけですよ。といって、今の件、事務局に聞いてもわからないよね。おそらくいろいろな調査もし、いろいろなマスコミの報道を踏まえて皆さん判断しているのでしょうが、たしかに税負担の重さ軽さというものについて共有するものが少ないというのは事実ですね。これを今後どうしていくかという問題は残っていると思います。

どうぞ、田近さん。

田近委員

2点ですけれども、1つは、格差のことで何か一つ混乱があるような感じがしています。最高税率50を上げるべきだという人と、上げないべきだと、いろいろありましたけれども、個人的に言うと5割の最高税率というのは、年貢でも五公五民というのは最高なんだろうし、国際的に見ても、あるいは、この層の人たちが勤労所得から取る人もかかってきてしまうということであれば、個人的には5割は限度なのだろうと思います。

それはそれで、問題は、課税ベースを広げて所得控除を減らせば平均の負担率は上がるわけですね。そこは重要で、最高税率は50にしても平均の負担率は上がってくる。そこはポイントで、格差の是正というときには、一生懸命働いて最高のところで税率をさわるのではなくて、平均的な負担なのだろうなと。それから、最高税率を上げればそれに対していろいろなことをやるわけです。フリンジベネフィットもまたいろいろなのが出てくるだろうし、それは目に見えているわけで、それは、少なくとも私みたいな給料の人たちが想像することができないようないろいろな方法があるのだろうなということで、格差の是正、最高税率に関しては平均と限界というのをきちんと分けなければいけない。それが第1点です。

それから地方について、井戸さんから、今年から公的年金等控除と老年者控除がとれたから税負担が増えてきた。そして介護保険とか払うようになってしまった。それは困ると。自治税務局長の小室さんから、そうではなくて、それがなぜ起きたかというと、介護保険等で保険料等の率、負担を決めるときに、地方税を払っているかどうかで決めているからいけないんだということがありました。よく考えるとこれは私は重要だと思いますけれども、地方の個人住民税が応益的に払うのだということになってきたら、いつまで地方の住民税の課税ベースを国にそろえるのだろう、もっともっと思い切ってやればいいではないですかと。つまり言いたいことは、地方の課税ベースと介護保険等の保険料の水準が同じになってもおかしくないように、住民税の課税ベースを変えることもできるわけです。そこは一つは、国税のほうで再分配機能を今日はさんざん議論した。これは重要だと思います。同時に、地方のほうがもし応益のことを10%でフラットで取っていくというのならば、地方の課税ベースもそれにふさわしい形の議論をすべきではないかと思います。

石会長

まだ若干時間はございますけれども、よろしゅうございますか。

井戸委員

田近先生、問題だと言っているわけではありません。そういう現象が生じているということです。

田近委員

問題だとおっしゃったのではないのですか。

井戸委員

そういう問題が生じているということを申し上げたわけです。税が問題だと言っているわけではないです。

石会長

皆さん、思いのたけを言っていただきましたが、よろしゅうございますか。

尾崎委員

今、株主総会シーズンですけれども、企業が配当率を上げているんですよね。だから、配当所得というのは相当増えているはずです。それが非常に低い税率で分離になっていますから、それはやはりかなり考えなくてはいけないことかもしれませんね。

石会長

奥野さん。

奥野委員

田近さんのご意見のフォローアップですけれども、社会保障の年金とか住民税とか国税とか、全部これはある意味国とか政府がやっていることなわけです。それをばらばらにやっていて、税制が変わると社会保障にものすごく変な影響が与えられるというのはやはりおかしい。国の勝手で分けていることですから、国の勝手で国民が損をするというのは何かおかしい。そういう意味で社会保障の徴収とか、国税の徴収もそうですけれども、官庁同士がもう少しうまくコーディネートするといいますか、そういうことを制度としてもできるだけ統一化していくという方向を、そろそろ考え始める時期なのではないかと思います。

石会長

そう思いますね。

それでは、時間になりましたので、次回以降の予定をお話しいたしまして、今日は散会にしたいと思います。

今日、個人所得税、資産課税、納税環境整備をやりましたが、次回は、もうご予定いただいていると思いますが、法人課税、国際課税等々の法人課税関連の話を、7月4日(火曜日)、それから7月11日が急に追加されて、皆さんの日程を狂わせたかもしれませんが、ここで総論をやりたいと思っています。というのは、今回は各論の積み上げをしていって、あと中期答申に向けてどういうスタンスで行くか。各論があって総論のほうがいいだろうと思いまして、11日には総論部分をやっていきたい、このように考えております。7月4日・7月11日、いずれも火曜日で2時-4時と考えております。

それからこれ以降の予定でございます。すでにご案内済みと思いますが、7月14日と7月21日、総会・基礎小を考えておりますので、ご出席いただけたらと思っております。

ちょうどいい時間になりました。終わりましょう。今日は、どうも白熱した議論をありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。