第46回総会・第55回基礎問題小委員会合同会議 議事録

平成18年6月2日開催

石会長

それでは、時間になりました。総会と基礎問題小委員会合同会議を開きたいと思います。

ご案内のとおり、政府は、昨日からクールビズということで軽装を励行しており、事務方の税調出席についても同様にさせて頂きたいとのことであります。税調の委員の方々も、よろしければ軽装でご出席下さい。

今日は三つテーマがございます。法人課税、国際課税、個別間接税、この三つにつきまして事務局からそれぞれご説明していただきまして、議論を深めていきたいと思います。

それでは、最初に法人課税につきまして、佐川税制第三課長と米田都道府県税課長から各々ご説明を聞いて、議論をいたしたいと思います。

では、佐川さんから始めてください。

佐川税制第三課長

それでは、肩の上の番号「総46-1」「資料(法人課税関係)」についてご説明させていただきます。少しページ数がございますので、簡潔に説明をさせていただきたいと思います。

1ページでございますが、法人税収の推移が載っておりまして、ここ数年の景気の上昇もございまして、17年度補正は12.5兆円、18年度予算で13.1兆円ということでございます。昨日4月分の税収の発表がございまして、法人税のほうはまだ5月にならないと大きなウエイトのところが出てきませんので、確定的なことは申し上げられませんが、大分経常利益の伸びがいいという報道もございますので、17年度補正はここからさらに少し伸びるということが予想されるところでございます。

それから、その裏づけとして2ページ、3ページでございますが、2ページの経常利益の推移で見ますと、16年度はバブル期を大きく超えているということでございます。

3ページでございますが、特別損失等を処理したあとの税引前当期純利益で見ましても、16年度、バブル期とまではいきませんけれども、大分いいところまでいっている。17年度もかなりいいところにいくのではないかと予想されるところでございます。

4ページでございますが、欠損法人割合の推移でございまして、ご承知のとおり、中小企業が多ございますので、全法人と1億円未満の法人はほとんど同じようなグラフになっておりまして、下の点線のところが大法人でございます。景気の回復に伴いまして、欠損法人比率もやや下がってきてはおりますが、まだ67%台ということで、高い割合になっているというのがこの4ページでございます。

それで、この4ページに関連して5ページでございますが、4ページの表は昭和60年以降の欠損法人割合をとっているわけでございますが、この5ページを見ますと、昭和26年からとっておりまして、古いところから少し欠損法人割合というものを見てみたわけでございます。4ページまでは60年までだったわけでございますが、ずっと遡って見ますと、昭和50年ぐらいまでのところで見ますと、その前後がございますけれども、欠損法人割合が大体3割前後のところで動いていて、昭和50年のところから少しはね上がって、5割前後で動いている。あるいはバブル崩壊以降、6割、7割になってきているということでございます。

肩や下のほうの昭和50年、統計上の理由から昭和50年以降しかないのですが、下のほうの折れ線グラフは、倒産発生率でございます。これを見ますと、昭和50年ぐらいが大体右の表0.9%から1%ぐらいだったのですが、ずっと景気がよくなって下がってきて、景気が悪くなっても大体このぐらいの倒産比率ということでございまして、この欠損法人割合の推移と倒産比率をどう見るのかなというのが、正直申しましてまだ分析もし切れていませんし、勉強もしていないところですが、こんなことも少し見ながら、どういう関係があるのか少し勉強もしてみたいなとは思っております。これが5ページの欠損法人割合の推移の表でございます。

それから、6ページでございますが、所得金額と繰越欠損金額の推移でございます。これも近年のデータを見ますと、14年ぐらいから15、16年と所得金額、あるいは繰越控除額のところも含めて伸びてきているわけでございまして、そういう意味では、景気の回復とともに少し伸びてきているわけでございますが、ただ、下のほうの翌期繰越欠損金額を見ますと、11年、12年に比べますと随分よくなっておりますが、やはり15年、16年と大体70兆円台で横ばっているような感じでございまして、やはり企業によっても、いい企業は所得が伸びて繰欠を使っておりますけれども、業績の悪い企業が引き続き欠損が出ているというようなことが、この表から読み取れるということでございます。

ここまでが税収の話でございまして、7ページ以降が法人税率の推移でございます。この表は何度かご覧になっていただいていると思いますが、過去の42%から始まって、随時法人税率を引き下げて、現在30%、国際水準並みへの引下げということになっているわけでございまして、それが8ページの主要国の法人税率の推移ということで見ますと、これも各国ともに、やはり国際競争力という観点から法人税率を下げてきているわけでございまして、概ね左から右下がりに落ちてきているのが主要先進国の法人税基本税率の推移でございます。現在、日、英で30、米、仏が上にあって、ドイツが下にあるというのが現状でございます。

9ページはそれを縦の棒の表にしただけでございまして、高さで見ると大体こういう感じでございまして、カナダや中国がついている表ということでございます。

それから、10ページのところでございますが、これが地方法人課税も加えたところの法人所得課税の実効税率の国際比較でございますが、これも私どもとしましては、概ね先進国水準になっているのではないかと考えているところでございます。これは都市別の実効税率が載っているということでございます。

それから、11ページでございます。最近、今までの棒グラフのように主要先進国との比較だけではなくて、アジアとの競争なのですと。したがいまして、アジアの法人税率との関係も重要ではないかというご指摘も聞こえてくるわけでございます。したがいまして、アジア主要都市の投資関連コストの比較では、下から三つ目の箱のところに、各アジアの都市の法人税率を載せていただいているわけでございますが、ただ、本当に投資をするという場合につきましては、大変税率も重要でございますが、それ以外に、例えば上から見ますと、賃金なり、地価なり、通信費なり、公共料金なりというコスト、あるいは語学の問題、法制度の問題と、いろいろなことがありながら、企業としては投資先を選んでいるというのが実態ではないかと思いまして、2005年11月の調査のJETROの表を載せていただいているわけでございます。数字のほうはご覧いただければと思います。

それで、今の11ページの細かい表を棒グラフに直してみて、それぞれのアジアの主要都市の間でどういうふうになっているかというのが12ページ、13ページの同じJETROの表でございますので、ここはご参考にしていただければと思うわけでございます。

それから、14ページでございます。法人税と社会保険料の負担の国際比較という表でございまして、それぞれの国に2本ずつ棒グラフが立っているわけでございます。左側の薄いほうが法人所得税負担の名目GDP比、右側の少し濃い表の棒グラフが社会保険料事業主負担の名目GDP比でございます。

これを見ますと、要するに法人としてどういうふうに負担をしているかというと、法人所得税だけ見ても、なかなか本当の負担のところはわからないのではないかということでございまして、例えば右側のヨーロッパの大陸諸国などを見ますと、もちろん国民負担率はそもそも高いわけでございますが、社会保険料負担というのも企業が随分負担しているなというのが見て取れるわけでございます。ただ、一般には左側の法人負担だけ見て、日本は随分高いのではないかというご議論もございますが、その点につきましてのご説明も少しこのあとの表で説明をさせていただきたいと思います。

まず、15ページでございます。これは受益者から見た場合、企業負担がどうなっているかという日米比較だけでございます。所得課税と保険料に係る日米比較を見ていただきますが、まず上のほうの箱が法人所得課税でございまして、これは東京とロサンゼルスを比べますと、概ね法人税率はとんとんというところでございます。

下のほうの箱でございますが、企業負担分保険料というのがございまして、公的保険のところを考えますと、日本のほうは年金、雇用、労災、医療と足しますと13.75%になっているわけでございます。右側の米国のほうでございますが、これも下から四つ、年金、雇用、労災、公的医療と公的保険を足しますと、約11%でございますが、その上に民間医療保険が乗っております。右の四角に書いてございますが、アメリカは公的医療保険というのは、高齢者や低所得者向けのメディケア、メディケイトといったものを除いては存在しませんので、企業が従業員のために民間医療保険の負担をしているわけでございます。そうしたマクロの統計ではございますが、そういうものを乗せますと、企業負担が19.55%となるという事実関係でございます。

ただ、もちろん上の法人税率は利益に対する率でございますし、下の保険料率は人件費に対する率でございますので、上の40と13が同じ数字ではないということはご留意いただければと思うわけでございます。

それから、16ページ、これもご参考でございますが、先ほど申しましたように、法人税のGDP比の率が高い、低いという議論のときに、どのぐらい法人税の課税対象となる法人数があるかという問題もあろうかと思いまして、ご参考に載せさせていただいておりますが、例えば各国のGDPが参考に下にありまして、日本とイギリスとフランスを見ていただきますと、イギリス、フランスは概ねGDPで半分、法人課税の対象となる法人数も概ね日本の半分程度で、経済規模に比してこういうことかなと。

一方、アメリカの場合はGDPが2.5倍あるに従って、法人数が概ね日本並み、あるいは日本より小さいというようなことでございまして、これはご承知のとおり、構成員課税を法人が選べるといったようなこともございまして、法人課税の対象となる法人が少ない。

あるいはドイツの場合も、GDPが6割でございますが、法人の数は大変少なく、4分の1ぐらいになっているわけでございまして、ここも合名・合資等が構成員課税になっているということもございまして、この法人課税の対象となる法人数の問題もあろうかと思って、ご参考に載せさせていただいているわけでございます。

17ページは特殊要因のご説明でございまして、たまたま先ほどの米国の法人税のGDP比が少し低く見えているのは、2003年のところをとっているというのも少しございます。アメリカの法人税収の推移ですが、2000年のITバブルの崩壊と、2001年の9・11の同時多発テロということもございまして、2001年以降大変景気が悪くなりまして、そのために景気後退の対策として、租税特別措置で減価償却で大変な減税を、2004年で切れておりますけれども、この3、4年間しておりまして、ちょうどそこのボトムのところが2003年でございます。最近、租特が切れたこともございまして、2005年度以降、こういう法人税収になっているという特殊要因のご説明でございます。

したがいまして、18ページでございますが、昨年の税調での法人税率の議論につきましては、ここにあるとおり、「既に他の先進諸国並みとなっており、(中略)当面、現在の水準を維持することが適当である。」といったような答申をいただいているところでございます。

次に19ページ以降、減価償却制度でございますが、ここは中身の説明は皆さんよくご承知のとおりでございますので、省かせていただきますが、20ページ、21ページのところでございます。特に21ページのところでございまして、経済産業省あるいは経済界の方から、減価償却についてのいろいろご要望を承っているところでございます。

大きく言いますと三つ要望がございまして、この21ページの一番下にあります償却可能限度額あるいは残存価額のところを100%にしてほしいというような話、あるいは償却期間のところは、まちまちなのでございますが、全体に短縮化してほしいというのが2番目。3番目に、機械・装置等につきまして、少し分類が細かすぎるのではないか、そこを合理化してほしいといったような、大きく三つの要望が出ているということを承知しているところでございます。

参考でございますが、22ページです。昨年、経済産業省なり経団連が実際に調査をしまして、機械・装置について、530社を対象にして平均法定耐用年数が10.1年のところを、実際どのぐらい使っているのかというのを見ますと、16.5年ということでございまして、こういう現実に収益と費用を対応するという関係の減価償却制度について、法定耐用年数と使用年数がこれだけ乖離があることについてどう考えるかといったことも、これから経済界等と議論させていただきたいと思っているわけでございます。

23ページはご参考でございますが、昨年の与党の税制改正大綱の検討事項の中に、9として減価償却制度につきまして、2行目の最後でございますが、「税制の抜本的改革と合わせ、総合的に見直しを検討する」といったようなことが検討事項に書かれているというご参考でございます。

24ページが租特の関係でございまして、政府税調のほうから毎回、整理合理化をきちんとしてほしいというご指摘もいただいております。一番右に改正後の項目数が載っているわけでございますが、だんだん小さくなってきておりまして、18年度は64ということで、17年度よりさらに減らしてきているという状況でございます。

25ページはご参考でございますが、企業関係の租特について、18年度ベース、現在ベースで概ね1兆880億円、そのうち大きなものが研究開発税制、あるいは中小企業投資促進税制といったところが大きなところでございます。

26ページは、昨年の税調の答申をいただいたところでございます。

27ページでございます。これも、近年の主な法人税制改正の動向ということで、ご説明を省略させていただきます。

28ページ以降ですが、公益法人制度改革のポイントということでございまして、5月26日、先週の金曜日に成立をいたしました法律でございます。大きくご説明しますと、左側が現行の公益法人制度、いろいろご批判もございまして、主務官庁制あるいは許可主義といったものをどうするかというご議論がありまして、右側、新たな制度でございますが、それを直して主務官庁制・許可主義を廃止し、法人の設立そのものと公益性の判断を分離するのだということで、箱が二つに分かれているところでございます。上のほうの箱が、法人の設立、登記のみで設立というのが、右にありますように一般社団、一般財団に関する法律、下のほうの箱が、第三者委員会が認定して公益性があると認めた場合には、いろいろな恩典が出るということで、公益社団・公益財団に関する法律ということでございます。一番下の二重丸にありますように、法律は通って、施行は平成20年度中、現行の公益法人の移行期間は5年を予定をしているというのが制度の概略でございます。

したがいまして、税でございますが、次の29ページでございます。現行は民法34条法人は収益事業課税になっていますが、主務大臣の認定がありますと、特定公益増進法人になって、寄附金の優遇があるといったことになりますが、昨年度いただきましたワーキンググループの報告等に基づきまして、新たなイメージは、準則でできる一般社団・一般財団で、独立した委員会の認定があれば公益社団・公益財団になって、そこで課税上の措置、あるいは寄附金優遇上の措置ができるというイメージでございます。

ただ、新制度施行は平成20年度中までの間に措置というふうに下に書いてございますが、例えば残余財産の帰属の態様とか、公益法人に係る財務上の規制といったところは、政令・府令等に委ねられておるわけでございまして、政令・府令等は第三者委員会が来年度にできてからきちんと表に出てくるということでございますので、そうしたものも踏まえながらきちんと税制上の措置も検討していきたいと考えております。

30ページは昨年の報告でございますので、省略をさせていただきます。

31ページも現行の寄附金に関する税制の概要でございます。これも全体の公益法人税制を考えるに当たって、寄附金税制についても検討していくということになろうかと思います。

32ページ、認定NPO法人制度の概要でございます。詳細は説明を省略させていただきますが、右側の式にありますように、今年も国の補助金や会費が分子に入るといったようなことで、このパブリック・サポート・テストの条件を緩和しているといったような改正をさせていただいております。

ちなみにご参考ですが、今、5月1日現在で40法人というふうに右下に書いてございますが、昨日、6月1日現在を調べてみますと、42法人ということで、2法人増えているということでございます。

以下、33、34ページと認定NPO法人の概要がついておりまして、35ページが昨年の税調の答申ということでございますので、説明は省略させていただきます。

国税は以上でございます。

石会長

地方税を米田さん、お願いいたします。

米田都道府県税課長

それでは、お手元資料「総46-2」というのがございます。「資料(地方法人課税等関係)」をご覧いただきたいと存じます。

まず、1ページでございますが、地方税の中で法人課税のウエイトがどのようなものになっているかということを示したものでございます。黒く塗りつぶしておりますところが法人関係でございます。地方税全体では21.4%、7兆1,000億円、道府県税のほうを見ますと、法人二税34.4%、さらに市町村税のほうにいきますと、法人市町村民税で大体10%強というような状況でございます。

なお、(注)の5番をご覧いただきますと、法人二税とございますが、これは法人の住民税と法人の事業税を合わせたものということになっております。

2ページ以下、若干詳しくご説明をいたします。

まず2ページでございます。これは法人住民税の概要、上の四角のほうに趣旨を書いてございます。事務所等を有する法人、その事務所等が所在する都道府県、市町村が課税をしております。個人の住民税と同様、均等割と法人税割という二本立てになっておりまして、それぞれ県、市町村が課税をしております。

続きまして3ページでございます。法人の事業税でございます。上のほうに趣旨が書いてございますが、法人が行う事業そのものに課される税、地方公共団体の行政サービスに必要な経費を分担するという応益原則に基づいた税でございます。したがいまして、(注)のところに書いてございますとおり、法人事業税は法人の所得計算において損金算入される。そういう費用性を持っているということでございます。

実際にどのように課税をされるかということで、下に絵のようなものが書いてございますけれども、法人の規模、業種等の区分に従いまして、大きく三つございますけれども、この三つの方法の一つが適用されるということになります。例えば中段をご覧いただきますと、資本金1億円以下の普通法人でございますが、これは所得に対しまして9.6%の税率で課税されるということになります。

一番上の資本金1億円超の普通法人につきましては、そこに書きましたとおり、所得課税以外に外形標準課税が入っておるということでございます。次の4ページに外形標準課税を詳しく書いてございます。

4ページでございますが、平成15年度の税制改正におきまして、資本金1億円を超える法人に対しまして、平成16年4月1日以降開始の事業年度から適用されております。

その下に制度設計の考え方が書いてございますが、4分の1が外形、4分の3は従来の所得課税という考え方に基づきまして、下の箱をご覧いただきたいと存じますが、所得による課税分が従来の税率9.6%を7.2%という形で低減をいたします。一方で右のほうに付加価値割、資本割という外形部分を加えたということになっております。その詳しい付加価値割、さらに資本割につきましては、5ページ、6ページにやや詳しく解説をしておりますけれども、説明は省略させていただきます。

続きまして、7ページをご覧いただきたいと存じます。現在の対象になっている法人がどれぐらいあるのかということでございますけれども、結局、資本金1億円超の法人というのがどれぐらいあるのだろうかということです。利益法人で、右のほうに網掛けになってございます1.7万社、下の欠損法人のほうで1.5万社、合わせまして3.2万社が対象となっております。全法人の1.3%程度ということでございます。

そこで8ページでございます。最近、ニュース等でも非常に「減資」ということが話題になっておりますけれども、この減資の状況につきまして、県へ照会をしました結果、平成17年3月決算の普通法人のベースで見たものがこれでございまして、減資によりまして資本金が1億円以下になって、外形標準課税の対象外となった法人というのが、1,000社強あるというような状況でございます。

続きまして、9ページをご覧いただきたいと思います。これは外形標準課税が本格化いたしました最初の申告分でございます平成17年3月決算、その対象法人の年税額がどの程度のものかということを、速報値としてとりまとめたものでございます。ちょっと見にくうございますけれども、左のほうから欠損法人の一番下の計のところをご覧いただきますと、欠損法人の対象が7,200社余り、その外形分の税額というのが1,681億円というふうにご覧いただきたいと存じます。利益法人で申しますと、1万社強が所得割で1兆4,000億円、外形分で3,670億円という納税額になったということでございます。

それを平均的にどのようなものかというのを、イメージということで次の10ページをご覧いただきますと、1社当たりの姿が出ております。資本金の区分で「1億円超10億円未満」というところをご覧いただきますと、売上高は平均で82億円程度、従業者数が194人というのが平均的なものでございまして、そのうち欠損法人が外形分で360万円、利益法人のほうの区分にいきますと、所得割が3,300万円の課税に対しまして、外形分が940万円というようなものが普通でございます。というようにご覧をいただければと存じます。

続きまして11ページでございます。これは国税と同様に税収の推移を表したものでございます。平成元年度がピークでございます。10兆8,000億円ということでございますが、ここをピークにいたしまして、平成14年にボトムになりました。その後やや盛り返している状況でございます。理由といたしましては、もちろん景気の状況がございますけれども、ご承知のとおり、累次の減税の影響がかなり大きいような状況でございます。

その状況を12ページ、次のページでご覧いただきたいと存じます。法人二税でございますけれども、まず法人事業税の表面税率が下のほうに書いてございまして、12から現在は7.2に落ちてきているということでございます。

もう一方の法人の住民税でございますが、(注)の3のところにも書いてございますとおり、法人税額が課税標準でございますので、法人税の税率の軽減ということが、そのまま法人住民税のほうは影響が出てくるというものでございます。それを合わせましたものが上に「法人二税実効税率」と書かせていただいたものでございまして、ピーク17.4というのが、現在11.56になっているというわけでございます。

13ページは、国際的な観点から実効税率を比較したものでございます。ご参考でございます。

14ページ、これもご参考でございますけれども、国と地方の税率を比べる際に、財政の果たす役割がどうかということでつけさせていただいたものでございます。内政に関連するもの、かなり地方団体の手で実施される割合が高いということで、合計をご覧いただきますと、国と地方が4対6になっているということでございます。国際的に見ますと、ドイツとかカナダといった連邦制をとっている国の状態にかなり近いと言われておるようでございます。

続きまして15ページ、ここからは地方税独自の分割の問題でございます。ご承知のとおり、事務所等を有する法人に、その事務所が所在する地方団体が課税をするわけでございますが、その事務所が2以上の地方団体にある場合に、どこがどれだけ課税をするのかという調整が必要になってまいります。そこで分割基準というのを定めまして、分割をしております。

下のほうにイメージを書いてございます。例えば法人税額が10億円の企業があったという場合でございます。本社に従業員数が100人、工場に同じく400人いるというのを念頭に置いていただきますと、従業者数の総数が500人でございますので、(注)に書いてございますとおり、法人住民税の法人税割の分割基準というのは、従業者数で按分するということになっておりますので、実際に10億円を例えばX県のほうでございますと、500分の100ということでございますので、2億円が分配。Y県のほうは残りの8億円ということになってまいります。それぞれその税率を掛けて、X県は1,000万円、Y県で4,000万円、計5,000万円の税額を納めていただくことになります。

なお、これはおわかりのとおり、どこに事務所があっても、総額の5,000万円は変わらない。これのやりとりの問題であるということでございます。

続きまして16ページでございます。今申し上げました分割基準でございますが、法人事業税のほうで平成17年度税制改正がございました。どこであったかと申しますと、このうちの非製造業のうち二つ目の箱、運輸・通信業、サービス業等でございます。従来はすべて従業者数で按分をしておりましたけれども、改正後は半分を事務所の数、半分を従来どおり従業者数で行うということになります。そういたしますと、いわゆる支店を持っている地方団体では、その影響でかなり増収が図られてくるというものでございます。

次の17ページをご覧いただきますと、その影響を試算をしたものでございますけれども、北海道等でかなりの増収が見込まれる一方、東京、大阪が大きな減収になる。いずれにいたしましても、ゼロサムでございますけれども、東京の税収がかなりダウンになるという効果がございます。

続きまして18ページでございます。これはいわゆる偏在度を示す資料でございまして、人口1人当たりの税収を平均を100といたしまして、各県別に示したものでございます。このうち真ん中の法人二税をご覧いただきますと、一番高いところが東京都、一番低いところが沖縄県でございまして、これの比率が、下にも書いてございますとおり、7.0ということになっております。

大変失礼しました。一番低いところは青森県の38でございます。青森県と東京都を比較すると、7.0になっているということでございます。これはやはり法人の企業活動の大きさが税収に反映するということでございますので、このような数値になっているということでございます。

次の19ページが同じようなことを市町村税のほうでやってみたものでございます。

20ページをご覧いただきますと、それを合わせて全体として見たものの推移でございます。平成元年度と平成16年度を比べますと、全体として人口1人当たりの税収額の偏在度を見てみますと、一番高いところと一番低いところ、4.7倍の差がございましたけれども、16年度で比べますと3.1になったということでございますが、これは最も大きな影響は、偏在度が非常に低い地方消費税が平成元年度ではなかったものが16年度では入ったというような影響でございます。

そこで一番下をご覧いただきますと、16年度には入っていないのですけれども、この偏在度に影響を与える税制改正といたしまして、先ほどご説明をいたしました法人事業税の分割基準の見直し、さらには本年度行われましたいわゆる税源移譲の結果、個人住民税が10%の税率フラット化がございました。このような影響がいずれもこの偏在度を低くするような方向に働いてくることが期待されるというものでございます。

続きまして21ページは、非課税等特別措置の全体の絵でございますけれども、ここでご覧いただきたいのは、事業税のところの真ん中にございます社会保険診療報酬の非課税措置でございます。この点につきましては、従来から当審議会でたびたびご指摘をいただいておるものでございます。次の22ページに詳しい説明を書かせていただいております。いずれにいたしましても、この社会保険診療報酬、二つございますが、地方税独自のものでございまして、実質的に非課税の扱いというような点について、何とかならないかというような点のご指摘を従来からちょうだいしているものでございます。

23ページ以下、非営利法人関係でございます。現行の法人に対する地方税の課税の仕方というのを掲げたものでございます。これまで何度も見ていただいたものでございますので、説明は省略させていただきます。

次の24ページは寄附金の関係でございます。個人の住民税につきましては、そこに掲げました三つの寄附金を対象に寄附金控除を行っているという現状でございます。

25ページは、昨年の「基本的考え方」におきまして、この寄附金税制について答申をちょうだいしております。真ん中辺にもございますとおり、「個人住民税の性格にあった寄附金控除の仕組みは、『民間が行う公共』の領域の役割が重要となっていることも踏まえながら、基本的に条例などにより地方公共団体によって独自に構築されるべきである。その際……」ということで、控除を行う地方団体と寄附金による当該地域の受益との対応関係等々を留意せよということでございます。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

今、国税と地方税、両方にわたりまして法人課税をご説明いただきました。すでに事前に、これまでの答申で法人課税についてどういうことを議論したか、指摘事項を整理した文章がいっていると思っております。お目通しいただいていると思います。そういうのをベースにいたしまして、これから法人課税はいかなる方向で改革をさらに進めるかという点につきまして、ご議論をいただきたいと思います。どなたでも結構ですから、しばらく時間を取って法人課税を議論したいと思います。

どうぞ、丹羽さん。

丹羽委員

法人税ですので、私、最初に一言申し上げたいと思います。

増税の流れのときに、こういう法人の実効課税を見直すべきだというのはどうかという議論もあるかと思うのですが、まず一般論として、税制の基本原則は「公平・中立・簡素」と言われておりますけれども、これに最近私は「安定」というのを「安定歳入」ということで加える必要があると思います。過去の社会状況と違って、グローバリゼーション、あるいは人口減少が進むということで、安定的な税収の確保というのは目指す必要があるだろう。

そうなると、法人税というのは、景気の波にかなり影響されやすい部分がありまして、やはり消費税というような安定した税収に軸足を移していく必要があるだろう。これは一般論として私は思うわけでありますが、ただ、法人税を見る場合に、やはり安定収入ということを考えると、「成長」ということをもっと強く打ち出していく必要がある。

歳出歳入一体改革の成功のために、やはり持続的な経済成長を実現する必要があるわけでありまして、税制においても、経済の活性化の努力とか成長力の強化ということが必要になるわけでありまして、そういう意味で、現状、税制が特に、先ほど出ておりましたような減価償却制度におきましても、非常に複雑な税制になっておりまして、どの程度経済成長するかということと、複雑な税制度を簡素化するということを基本として考えていただきたいと思います。

すでに説明がありましたけれども、諸外国は、企業の国際競争力の強化あるいは海外からの投資を呼び込むという、これは非常に大事なことでありますが、その戦略として法人の実効税率の引下げに踏み切っているわけでありまして、先ほどもちょっと説明がありましたけれども、国際比較というのがありましたが、国際比較の実効税率を見てみると、先ほどの説明と違いまして、国と地方の法人実効税率の国際比較というのは、我々、今経済界がやっているのは、欧米というよりもやはりアジアです。特に中国、韓国、台湾、タイ。これらと比べますと、やはり国際競争力の面で、日本の実効税率は国・地方を合わせると10%ぐらい高いのです。それから、仏、英と比べると6~7%高いということが言えるわけでありまして、そういう意味からいっても、特にアジア圏の国々に対しても、これまで以上に競争相手として我々意識をせざるを得ないということでありまして、数字面から言いましても、先ほどの説明とはちょっと違うわけで、先ほどの資料は、法人税はあまりいじらないで、国際競争力から見てもそこそこではないかという資料を出していただいておりますが、そうではないよというデータは、特にアジア国との比較においては、実効税率の面ではっきりと言えるだろうと思うのです。

アメリカにおいても、最近はやはり税制改革論議の中で、経済成長に焦点をあてているわけでありまして、特に国際競争力という面からいっても、アメリカもそういう方向にあるということであります。

したがって、日本としても、国と地方を通じた法人実効税率の引下げ、あるいは競争力を高めるための減価償却制度の見直しに踏み込むべきではないかと私は思います。

償却の問題につきましては、先ほどありましたように、95%までというのは日本だけです。やはり他国と同じように100%まで見直していくべきではないかと思います。法定耐用年数につきましても、主要国中最大に長いということであります。それから、減価償却制度は、先ほど幾つかの区分とありましたが、設備投資のほうで388の区分に分けておられます。これは実に複雑でありまして、あらゆる投資をするときに、一々388も区分されたのではかなわないということがありますので、これはぜひとも見直していく必要があるだろう。

この減価償却制度については、長い間改革が行われておりません。早急に償却可能限度額の取得価額の100%への引上げと耐用年数の短縮ということ、また分類の大括り化、この三つをぜひ進めていただきたいと思います。

石会長

思いのたけを言っていただいた感じですね。

欧米だけではなく、アジア関係も資料の中の11ページに一応は出ておりますが、改めてまたお出しいただくとしましょうか。

では、出口さん、田近さんの順でいきましょう。

出口委員

減価償却が長い間変わらなかったということですが、非営利の問題は110年ぶりの民法改正という大問題がありましたわけで、ちょっとそのことに絡んで発言させていただきたいと思います。

昨日、合計特殊出生率が1.25という大問題が出てきましたけれども、こういう複雑な現象の中で、我々今歳入と歳出を考えながら税制を議論していくわけですが、様々な要因が複雑に絡み合っている中で、どう対応していいかわからない。社会保障の全体が崩れている。

少子化は何が悪いのかということを考えると、これまたなかなか難しいので、合計特殊出生率が人口再生産水準を下回ったのは、何遍も言いますけれども70年代です。そのときに何を議論していたのかというと、人口爆発だと。エネルギー問題である。あのときオイルショックがありましたから。当時もエネルギー弾性値が盛んに使われて、シミュレーションされていたわけです。どうやって人口を減らすのかということを、あの当時実は議論していたわけです。

なぜ今この少子化が問題かというと、まさに社会保障の前提が崩れて、財政の持続可能性に直接影響を与えかねないというところが問題。そのときに、いろいろな対応の仕方があると思います。歳出で対応する方法もあるでしょうし、歳入で対応する方法もあるでしょうけど、全部そういうことでやろうとすると、ものすごく画一性の過剰コストというのがかかるわけです。例えば経済的な問題で子どもが産めない人がいるかもわからないけれども、ではいくらぐらいのサポートをしたら子どもを産む気になるのかというのが全然わからない中で、一体いくらぐらいの負担を今の財政状況の中でやっていくのか。だけど、拱手傍観していていいのかという話の中で、第3の手段として、300ぐらい要因があるとしたら、300ぐらいやり方があって、それを民間の人たちが新しい「民間が担う公共」としてやっていきましょうよというのが、今回の民法改正の大きな枠組みではないかなと思うわけです。

そういう点で、今回の新しい法律が、そうした民のロジックが貫徹できるような形で税制もバックアップできるのかどうか。これは民間の団体の自発的な公益活動というのが立法趣旨として提案されているのですが、猪瀬委員が何回もご指摘になるとおり、この民の部分が全部官に乗っ取られているというか、大事なのはポストだけになっていて、全然社会的に役割がないというのが現在の状況だと思います。これを民間部門が、みんながいろいろな地域でいろいろな要因を考えながらやっていくという方法をとるために、どういうスタイル、制度にしていったらいいのかというのを、十分に考えていかなくてはいけないのだろうと思います。

その点で、今回、公益性ということで22項目出ています。22項目プラス、1項目はその他政令ということなのですが、22項目の中に少子化という問題は全然出ていないわけです。例えば、ある意味ではこうした問題を含めて、公益の判断、これは大事なのですけれども、あまりここをガチガチにして、結局、天下りの役人がいるところだけがメリットを独占するというような制度にならないようにしていかなくてはいけないだろうなということで、110年ぶりですから、長くなりますが、三つ言わせていただきます。

一つは、昨年の提案の一番のポイントは、私法上の公益性の判断を、税法上も乗っていこうよということだったと思いますが、今回の新法では、公益目的事業というのと、それ以外の収益事業等というのを区分して経理しなさいということになっているわけです。現在の法人税法上の収益事業というのは、これは全く公法上の収益事業で、これも猪瀬委員が何度かいろいろのところでご指摘のとおり、むちゃくちゃなわけでありまして、これを昨年の答申では、実態調査し、範囲を見直していくべきだということが書かれてあります。これは、事務当局は本当に労が多くて、ここで税収が上がるわけではありませんから、なかなかやるインセンティブが働かないと思います。だからこそこの税調で、ここはしっかり公益目的事業というものが新法でうたわれたわけですから、そのことについてよくよく考えた上で、収益事業の範囲を見直していくということを考えていく必要があるだろうというのが1点。

2点目が、昨年の議論では、考え方が平面図で公益の団体と、その他間に共益的な団体が入っていましたが、今回の制度は2階建てになっておりまして、一般の社団とか財団になった上で公益性を判断するという時間差がここで入ってくるわけです。そうしますと、ここでも、すごく頑張ってやろうと思っている市民たちからすると、2階に上がるのに時間がかかって、例えば財団として大きな金額を拠出しても、ある一定期間はガバッとそれが益金という形で法人税の対象になるとか、そういうことになりかねないわけでありまして、去年、我々は遡及的な課税をしていこうということを提言したわけでありますから、なるべく公益のところに乗せて、その上で変なのが混じっていたらどっと取ってしまうというようにすれば、かえって変なのが混じってこないだろうと思うわけであります。

3点目は、これは非常に大事なことでございますが、人格なき社団も含めて、一般のところも含めて、納税義務者、課税ベース、挙証責任、こういった点をよくよく実態に合わせて制度設計しないと、いろいろな問題が生じるだろうということを非常に憂慮しているわけでありまして、どういうことかといいますと、今の法人税法22条の益金の考え方は、金儲けをするということを前提に益金を考えていますので、非営利の論理というのは、例えばボランティアがいっぱい入ってくるとか、いろいろロジックが違うところがあるわけです。そういった問題をどういうふうに整合していくのか。これも制度設計する上では非常に難しい問題だと思います。一方では租税回避に使われるという問題もありますので、大変難しい問題で、この部分をやってもなかなか税収が上がらないのではないかと思うかもわかりませんが、先ほど申し上げたように、あえて歳入歳出の順番で言いますけれども、歳入歳出を含めた財政改革ということを考えた場合に、非常に今の時点で中長期的に財政再建に向けて切り札になる、今回の税調のいわば目玉になるだろうと思って、発言させていただきます。

石会長

ありがとうございました。いずれにいたしましても、非営利法人の税制は来年度以降になると思いますが、そのとき本格的に議論をしたいと思います。

では田近さん。

田近委員

法人税全般について、少し意見を述べさせていただきますけれども、三課長の思いはよくわかるというか、おそらく今日の報告の1枚で、これまでの答申を引いて、法人税についてはすでに他の先進国並みで、引き下げる状況にないということで、この状態でなかなか引き下げられない。それ自身は難しい問題だなということは、この場で全員共有していると思うのですけれども、だからそういう状況で税調が何をするかというのがあると私は思います。

それで、二つ、三つ申し上げたいのですが、一つは、税調の法人税の資料もなかなか歴史的ではあるのですけれども、現実に対応し切れていない点です。まず、法人の法定税率を各国比較しつつ、14ページを見ていただきたいのですけれども、14ページは左の薄いほうが法人税収のGDP比ですけれども、日本とそこそこの法定税率のアメリカが2.1しかない。ドイツは日本より高いはずなのに1.8だと。つまり、法定税率というのが実態的なものを示していないということは明らかで、それがゆえに実はアメリカがすごい問題で、石先生たちも調査に行かれて、報告があったかもしれませんけれども、なぜこんなにアメリカが低いのだと。おそらくそれは国外に所得が逃げる等々の問題で取れていないのではないかということを考えると、まず第1点は、これから税調で法人税の議論をするときに、国際的な課税の側面も同時に議論しないと議論にならないと思います。外国税額控除も含めて、あるいはもっと実態的に日本の企業がどこで儲けているのだ、どこで税を払っているのだ、というようなことを国際比較でぜひやってもらいたい。それが第1点です。

第2点は、5ページです。欠損法人ですけれども、上のほうの折れ線グラフが欠損法人の割合で、細かなことはなしに、昭和50年のところでぴょこんと上がるわけです。ぴょこんと上がるのは非常に明らかで、このとき、給与所得控除の天井がなくなって青天井になった。そこで小規模事業の人たちが法人成りもしたけれども、そこで利益を給与所得に分けて欠損法人が増えた。その後も高く推移して、平成2年からどうして増えるかは、おそらく利益が減っているので、それまでどおりいろいろ所得をばら撒いたら、欠損法人が増えちゃったというのが実態かなと思うのです。言いたいのは、ここもやはり重要な問題で、法人税だけ見ていてもわからない。個人所得税と同時に見ないといけない。そうすると、問題が給与所得控除の問題であるならば、それをどうするか。給与所得控除を使って、所得をこういう中小企業がばら撒いたのがいけないというのは一つの考えかもしれませんが、膨大な給与所得控除を認めておいて、これが起きたから企業は欠損法人になってけしからんと言うのもおかしい。したがって、これも同時に見なければいけないのだろう。

第3は、やはり地方との問題も重要なのだろうというのをつくづく感じました。僕は不勉強で知らなかったのですけれども、減資の状況ということで、これはぜひもっと詳細な情報を提供していただきたい。つまり、外形標準課税が行われて、1億円以上が外形標準課税に適用されるならば、資本金を1億円以下にしてしまう。この表は読み方が難しいのですけれども。

石会長

どこの表ですか。

田近委員

地方のほうの8ページです。僕は情報があまりないので、間違えていることを言ったら修正していただきたいのですが、減資の状況ということで、外形標準課税が導入されたので、減資により資本金が1億円以下になった。これはもちろんいろいろな理由があったのでしょうけれども、100億円以上の法人が1億円以下になったのが29とあるのは、何なのだろう。少なくとも非常に興味深いし、重要な表だと思うので、外形標準課税が入る何年か前からも追いかけて、どういうことが起きたのかというのは説明いただけたらと思います。

あともう一つは、日本は国税で法人税が30%で、これを下げるというのは現実的でないだろう。ただ、地方のほうがいかんせん高い。今日いただいた実効税率のほうも、外形標準課税が入ったので、法人事業税が7.2%で計算している。これもまたちょっとおかしな話で、外形標準課税で所得割の部分が9.6から7.2になると、法人税の実効税率が下がるのかという話で、そこも検討しなければいけないということ。

長くなってすみません。申し上げたかったのは、法人税のものが、現状はわかるのですが、非常に重要な問題なので、税調として一体どういう問題を検討するか。私は国際課税の問題、個人との問題、それから地方との問題、まだありますけれども、その辺の分析も、今この状況だからなおさら加えて検討していくべきだと思います。

石会長

ありがとうございました。国際課税はあとのテーマになりますから、おそらくそういう説明もあると思います。

減資のところだけちょっとご説明いただけますか。

米田都道府県税課長

減資につきましては、資料にも(注)で書いてございますとおり、17年3月決算のものを初めてこういう形で都道府県に問い合わせをいたしましたので、申しわけございません、実態がどうか、さらに過去のものは今のところ手元にはございません。

石会長

もう少し調べて。特に100億円が1億円になってしまうと今疑問を持たれていましたから。

河野さん。

河野委員

3点ほど質問と意見を述べたいのです。

第1は、今、田近さんが言われた欠損法人割合の推移という5ページの摩訶不思議な実績表です。倒産率は下がっているのに欠損法人の割合は上がっている。今、先生はある仮説でこういう理由があってこうなったのではないかとおっしゃっていて、ということはそこを直すべきだというように続くと思うのだけど、実際の税務当局、これは国税庁で実際に徴収している人たちを含めて、なぜこんなことが起こっているのだと。こんなことは理解不可能ですよ。日本の企業は何ぼ赤字を続けてもつぶれない。これは何だ、どこでからくりがあるのだ、だれがこんなことを合法的にやることを許しているのだ、ということはかねてからの疑問なので、この際だから明確に事務当局に答えてもらいたい。

2番目、法人税率論議というのは二つやり方があるんです。一つは、客観的な世間の常識とはちょっと離れたところというか、今の例えば歳入歳出一体改革だとか、消費税中心にやるのだとか、もう明々白々なわけだ。そのときに法人税問題を持ち出すことの政治的な賢明さはどうかということが一つの留意点なのです。しかしそんなことは知らないと。そんな話は政治家が裁けと。税調だから、純粋に税の理屈で議論をやろうではないかと、この二つあるのです。今のところの議論は、お互いに後のほうで議論をやっている。丹羽さんだってわかっていて、冒頭おっしゃっているのだから。財界が全部政治で動いているとは思わない。しかし、それはここで今言い出したらきりがないから、純粋に税の理論としてやりましょうよという話になっている。

そこで質問がある。国税の場合の比較論を延々とやっていて、今度もさらに補強材料がここに出ているんです。だから財務省は法人税の実効税率問題は俺のところの話ではないぞと。今、田近さんがおっしゃったけど、これは経産省もみんなの議論もそうなっているのだけど、地方税のほうに問題があるのではないかと。実効税率の話ですから、法人課税全体の話だから。だからここで答えてもらいたいのは、地方当局のほうに、今そういう議論があるけれども、それに対して理論的にあなた方はどう反論するのだと。この議論の流れに対して。そのことをこの際だから、いい勉強だから、教えてもらいたい。

あと最後に政治的にどうするかという話は、これは実は容易な話ではないんだ。消費税をやるわけだから。時差出勤でまず消費税をやって、1年か2年たったあとにというのは、それも一つのやり方。同時にやったら政治が責任を負わなければならない。

2番目に減価償却の話。これはだれがどう考えたって、いつの時期に提案したって、直すのは当たり前なんです。ただ、これまた大変な話だと私は思う。

石会長

佐川さんのほうから例の倒産・欠損のところと、米田さんのほうから法人税を地方税はどう考えているかという、二つ質問が出ましたから、お答えください。

佐川税制第三課長

5ページのほうの欠損法人の話は、そういう意味では、冒頭少し言いわけがましく説明したのでございますが、4ページ以降、5ページに至って、随分古くなっているところから、このはね上がりぐあいをどうかというのは、実はまだきちんと分析をし切れておりません。田近先生にご指摘いただいたようなこともあるのかもしれませんが、いずれにしても、今、河野さんからご指摘いただきましたように、現場も含めて少しきちんと勉強させていただきたいというのがこの5ページの表だと思っております。

それから、1点、先ほど田近先生のご指摘で、国際課税のお話もございまして、そこは別途あるのかもしれませんが、そういうご指摘もあろうかと思いまして、14ページの法人税負担、GDPの話につきましては、16ページの表における会社数の話、例えばご参考までに申し上げますと、ドイツの場合、人的企業の割合が7割で、いわゆる法人税の対象となるような法人の割合が2割を切るといったようなことになっていまして、日本の場合ですと、法人数250数万に対して、個人事業者が180万といったような法人数の問題もありまして、日本の法人税の負担だけが一方的に高いかというようなご指摘ではなかろうかと思いますので、こういった資料を後ろ2、3枚つけさせていただいているというのが実態でございます。

福田主税局長

それから、もう一つだけ、国税のほうの欠損法人割合という表現ですけれども、税務上の欠損法人割合ですので、商売していて損が出ているというイメージが出ているかもわかりませんが、それはちょっと別です。まさに河野委員がおっしゃいますように、毎年毎年商売をやっていて赤字なのに、何でそんな法人が10年も続くのかというのは、それはそういうことはないわけで、赤のところもあるでしょうけれども、基本的には黒になっていて、いろいろな税務上の計算をして、最後に赤になっているということですので、そこだけちょっと補足させていただきます。

大宅会長代理

今急に始まった話ではないので、今から勉強すると言われると、ちょっと待ってよという感じです。

佐川税制第三課長

そういう点も含めまして反省しますが、一生懸命勉強させていただきたいと思います。

田近委員

僕の趣旨は、赤になったというのは事実だけど、赤がいけないと必ずしも言っているわけではなくて、逆に言えば、結果的に赤になっておかしくないだろうと言っているわけです。赤にしたほうが得だからやっているのでしょうけど、そもそも得なような制度を作っているわけですよね。では、それを抜本的に直すには、個人所得税で給与所得控除を、わかっている人はみんなわかっているのですけど、そこをやらなければいけないわけですよね。その問題ですね。

石会長

日本だけ7割で赤字がずっと続いているけど、ほかの国はどうなっているのかなという疑問も当然出てきますよね。ほかの国は7割も赤字があって企業が永続しているのですかね。ゴーイングコンサーンで。そのような疑問がいっぱいありますので。

猪瀬委員

それ知りたいですね。本当に今のは知りたいな。

石会長

今のは宿題で。

丹羽さん、何か情報がありますか。

丹羽委員

中小企業は非常に苦戦しているという現れです。97%が中小企業ですから。先ほど資料が出ましたけれども、その資料でもう少し分析したいとおっしゃるなら、もっともだと思うのです。例えばドイツなどは法人の課税が少ないということなのでしょうから、やはり大企業が多いということでしょうね。日本は中小企業がものすごく多くて、苦戦しているという証拠なんですね。

猪瀬委員

違いますよ。だって、僕はこの場で昔言ったんですから、西武は税金を払っていないと、それはおかしいじゃないかと。大企業でしょう。

丹羽委員

私は民間の立場で申し上げたのだけど、それは猪瀬さんのおっしゃる部分もあると思いますね。

それから、もう一つ実効税率について、国際比較の数字を見ているのですけど、やはり私が言ったのに対して、ちょっと違うと思うのです。

石会長

一回出してくれませんか。経団連がやられているでしょう。

丹羽委員

けっこう出ていますよ。

石会長

これは要するに事務局が作った文書だから。

丹羽委員

私持っていますよ。2006年1月現在の税率で、国と地方の法人実効税率の国際比較というのは、経団連も経産省も出していますよ。それを見ますと、明らかに、例えば韓国が27.5とか、台湾は25.0とか、ただし日本は40.0とか、そういうのが出ているのです。

石会長

それは租特とか政策減税や何かを全部突っ込んで、最終的なやつで計算しているんですよね。これは昔から20~30年来問題になっているところなんですよ。いずれそういうのも精査しましょう。

尾崎委員

これは欠損法人数なのでしょう。そうしますと、大多数は零細企業ですから、要するに日銭が入っていれば回っている。だけど、それを事業年度ごとに切って計算すれば赤字だというのはたくさんありますよ。そういうことだと思いますね。

石会長

今の関連ですか。では井戸さん。

井戸委員

今の主税局長のお話ではありませんけれども、繰越欠損金の期間を5年から7年に延ばしてしまったのです。ところが、一方でこれだけ欠損法人がたくさんあって、それを繰り越せるような仕掛けにしてあるわけですね。しかも、税務計算上、赤字が出てもおかしくないのだとおっしゃっておられるのだとすると、5年を7年にして、さらに繰越控除を認めているというのは、どうかなと。これは景気対策のためではないと説明されてはいるのですけれども、私はやはり従前の5年に戻すべきではないかと思っています。

石会長

というご意見が出ました。

米田さん、お待たせしました。

米田都道府県税課長

先ほど、地方法人の関係の実効税率のお話がございました。もう一度資料をご覧いただきたいと思います。地方のほうの13ページ、それとあわせて14ページとをご覧いただきたいと存じます。

国際的に見ましたときに、日本の地方の法人税率が高いのではないかというご指摘でございます。ほかの国で見ますと、アメリカ、ドイツ、ここにちょっとございませんが、カナダといった国で、地方の法人のウエイトが高いわけでございますが、いずれもこういう国を見ますと、国と地方の財政支出の割合というところと非常に関連をしている。そういうような地方の財政支出というのを賄うために、この法人課税というのがあるのではないかと私どもは思っているということ。

それから、その前の12ページをご覧いただきますと、そうはいいましても、国とあわせて地方の法人課税の実効税率というのも、近年かなり大幅に下げてきたということが見ていただけるのではないかと思います。

遠藤委員

先ほど河野さんから、国税の法人税の税率は世界的にいいのだけれども、地方税が入るから高くなって問題があるというように聞こえたのですけれども、そういうことですか。

河野委員

そういう意見が財界からも経産省からもあるということを申し上げた。

遠藤委員

それは、要するに法人税に対する課税の問題は、昨日、今日出てきた話ではなくて、歴史的にずっとそういうふうに来たんですよ。ですから、もし議論をするのなら、それで高いというのなら、両方合わせたところで考えるべきであって、地方があるから、地方だけ下げればいいという論理にはならないと思います。

井戸委員

それに関連して。

地方の法人課税が、例えば今、産業構造審議会などではゼロにしろなんていう無茶な議論をしているのです。私は、法人というのはどこでどう活動されているのだろうか、東京だけで活動されているのだろうか、金融機関の金融活動みたいなものと法人のいろいろな活動形態は違いますので、地方において法人も法人県民であったり、法人市民であったりするわけで、その法人県民とか法人市民が、法人関係の所得に対する負担をしないでいいのかという基本的な議論から始めないと、単に数字の比較だけで地方の法人課税はおかしいのではないかというような議論で一蹴されるのは、本当に心外だと思っております。

石会長

お立場上、当然そういうご意見があると思います。

法人税で大分時間を取ってしまいましたが、法人税に対して発言したいと思われている方は、村上さんと岩さん、上月さん、井上さんですね。では岩さんからどうぞ、お待たせしました。

岩委員

2点ばかり。丹羽さんの話にちょっと疑問を感じているもので。

減価償却についてきっちりいろいろ議論した上で適正化というのは必要でしょう。それはわかりますが、国際競争でアジアを重視しろと。総論的にはそうですよ。だけれども、そのアジアというのは、ほとんど中国が念頭にあるわけです。これはだれの頭もそうなのだから。

では中国と比較していいのかという問題があるわけです。つまり、税率だけ見ても全く意味がない。これは執行体制の問題が一つ。それ以外に、税以外に地域開発協力金とか、そういう地方の政府、イコール地方の党委員会だけれども、ここへの上納金がものすごい金額である。これはほとんど実態は知られていない。一回ジェービックか何かが数年前に調査したぐらいです。それぐらいしか資料がないのだから。だけど、これはめちゃくちゃなことがそこで行われていると聞いている。つまり、そういう状況の国と国際比較しても、競争力比較にはならないということが1点。したがって、国際比較はやはり先進国とやらないと意味がないのではないかということです。

それから、もう1点、地方の法人課税のほうの問題が出ていますが、これは地方のほうを減税しろという声が大多数ですよね。確かにそうなのかもしれない。ただし、これは財政全体から見た場合、地方の財源が少なくなって、財源不足というのは、今の財政の仕組みからいけば、財源補償機能がついているわけですから、ここで地方交付税が出ていくということになると、結局は国の減税と同じということになるわけです。つまり、そういう仕組みも頭に入れながらこれは議論しないと、これまためちゃくちゃになるのではないかというような疑問をちょっと持っております。

石会長

丹羽さん、いろいろあると思いますけれども、短くお願いします。

丹羽委員

一言だけ。

中国の問題は別として、日韓の税率の格差は今12%あります。サムスンの税引後利益は、12%を日本並みにするだけで1,600億円減ります。これはサムスンとの競争ということからいうと、やはりこの分も頭に入れないと、中国だけではないということをちょっと申し上げておきます。

石会長

いろいろとケーススタディが出てくる。

猪瀬委員

中国の税制について、一度資料を作っていただけるとありがたい。

石会長

なかなか難しいでしょうね。まあ、いずれやってもらいましょう。

猪瀬委員

産経新聞的にいえば今みたいなことになると思うし、ただ、基本的なことがわからないもので。

石会長

事務局の努力をまた期待しましょう。

村上さん、お待たせしました。

村上委員

法人税の議論というのは、確かにずっと国際競争力ということを配慮しながら税調はものを言ってきていると思うのです。それは引き続きそうですし、最近は成長政策の中で論じようとされているようですけれども、丹羽さんもお立場上そうなるのだと思うのですけれども、やはり税調としては、財政再建という視点を忘れてはいけないのではないか。その中で法人税の位置づけというのがどうなのか。消費税に任せておけばいいという議論は通らないと思いますよ。なかなかそこは難しい問題で、財政再建の中でどう位置づけるか。

それから、勉強のために後で教えていただきたいのですが、法人の実効税率というのは、確かにどこを取るかで全然違うわけです。国が悪い、地方が悪いという話でもないし、地方だって、どこの国のどこの地方を取っているかで全然違っているわけですから。それと構成要素です。何と何を入れて議論しているか。例えば研究開発税制のようなことがきちんと計算の上でされているかどうか。その点、もうちょっと全体として比較すると本当はどうなのかを知りたいと思います。

もう一つは、欠損法人の問題をずっと長く議論されているわけで、その要因は研究していただきたいと思うのですが、中小企業のほとんど、いわゆる個人企業の給与所得控除の部分がかなり効いているという感じが、どなたかが指摘されましたけれども、そういうことであれば、そういうところを直していくとか、あるいは、欠損を出しながらずっと存続しているのがおかしいということであれば、例えば地方で採用したような外形標準方式をやってみるとか、いろいろな方法がある。それから、地方についても、法人所得課税が高いというのであれば、外形標準の幅をもっと広げる手があるのではないかと思いますが、その辺は研究する必要があるなと思います。

石会長

法人税ががぜん盛り上がっていますので、何でしたらもう少し続けてもいいと思っています。そのかわり個人間接税のほうは別途後に回す可能性もあります。

今、村上さんの質問がありましたね。研究開発などのところまで含めて、法人の負担の中身がどうか。何かお答えができれば。

佐川税制第三課長

確かに課税ベースをどこまで取るか、租特をどうやって取るかというのは、実は難しい比較でございまして、一番わかりやすいのは、多分、個別の企業を各国の税制にあてはめてみることができれば一番いいなと思っておりますので、できるかどうか研究させていただきたいと思います。

石会長

よろしくお願いをいたします。

上月さん。

上月委員

大企業のお話はよくここでも出るのですけれども、90何%にわたる零細の同族会社の話というのはなかなかこういうところでは出ませんで、現実の問題として、非常に赤字というのは、皆同族の小さい企業だというお話なのですが、その人たちが一体どうやってやっているのだというようなお話がありますけれども、現実には、それなりにその人たちも努力しているわけです。ただ、問題は留保金課税なんていうのがありまして、同族会社であるがゆえに留保金課税が行われる。

これについては、今のところは所得税も法人税も税負担の金額というのは、導入当時から見ると随分格差が縮小しておりますし、中小零細企業というのは、特に直接金融によって資金を得られるわけではありませんので、特に自己資本の充実強化というのは非常に必要ですし、また、今、国際競争力が大企業だけではなくて中小企業にもそういう問題が起こってきております。今、国の税収がこういう状態ですので、決して今すぐにとは言いませんけれども、やはり同族・非同族でこういう差があるということも一つは不公平ではないかなという問題もあります。

繰越欠損の問題ですけれども、例えば欠損がずっと重なってくると、資産を売却する、あるいは債権を放棄していただいたとかいうようなことで、何とかやりくりをずっとやっているわけですが、そういうときにも留保金課税の問題は引っかかってくるというようなことで、ぜひこれをご検討いただきたいと思います。

確かに中小零細というのは、税収にとってあまり大きな貢献もできていませんし、非常に肩身が狭い思いをします。ただ、やはり雇用という問題では貢献もできているのではないかと思いますので、少しその辺のご配慮もお願いできたらなと思います。私が言う問題ではないかもしれませんが。

石会長

留保金課税の問題は前から議論になっていますが、留保金課税を見直すということは、縮小しようということですが、赤字欠損会社の存在は、これがあるがゆえに欠損が多いというようなことは言えるのですか。

上月委員

いいえ、それは言えないと思います。ただ、財政の基盤というのが、やはり小さい企業は脆弱なのです。そこで自己資本の充実ができていないということは、結局、赤字が数期続くともう維持ができなくなりますので、資産売却をしたり、あるいは、借入れがあるものを放棄するというような形で、債権放棄というようなことでしのいでいこうとするわけです。結局、キャッシュフローが回りませんので。そのときに留保金課税が少し問題になるかなということです。

石会長

岡田さん、お手が挙がりましたね。

岡田委員

非営利法人に関してですけれども、先ほど出口委員のほうからお話が出ましたので、そのとおりなのですが、私、消費者センターへ勤めていて、今一番困るのがNPO法人で、非営利法人といっても、むしろ利益を上げているのではないかというような団体が目立ちます。今度それが緩くなるということになると、第三者機関の監査に期待するしかないというのが一つ。

あと消費者センターで公益法人というと、やはり業界の社団法人であったり財団法人なのですけど、今回、消費者基本法の中で、業界の団体の責任というのも明記されたのですけれども、たくさんある割には消費者の権利の擁護とか支援とか、その辺の役割を果たしているのは本当に少ないのです。ですから、そういうところも見直していただくような形にしてほしい。次に機会があるというので、そのとき、いわゆる消費者レベルでの、そういう非営利法人に関して、いろいろ意見を言わせていただければと思います。

石会長

よろしくお願いします。

では、井上さん。

井上委員

中小企業が赤字をずっと続けて、実際に継続できるのかというお話がちらっと出ていましたけれども、先ほど福田主税局長からもお話が出ましたけれども、この赤字企業というのは入れ替わっているということは事実なのです。継続してやっていたら、とっくにその企業はなくなるということで、やはり努力をしながら黒字を何とか出してやっていこうということで、日々中小企業は努力をしている。

しかし、一方において、借入金利は中小企業は高い。大手からの支払い条件は非常に悪い。本当に大手の企業で6ヵ月据置きの4ヵ月とか、1年かかって金が回収できる。特に設備投資なんかはそうですよ。大手の企業は非常に支払い条件が悪い、そういうところにもついていかなければいけないというようなこと、これにもすごく高い金利がかかるということなんですよね。そういった点の負担を受けながら、何とか努力して、みんな中小企業というのはやっているのだということを、よく理解しておいてもらわなければいけない。そして、ともかく雇用、今、2,800万ぐらいですか、それを抱えているのは中小企業なのだということをよく理解していただかないといけない。

今、井戸委員から話が出ましたけれども、繰欠を7年にしたのが悪いのではないかと。それはとんでもない話であって、むしろ海外から比べれば10年くらいにすべきなのです。やはりそういう状況をもうちょっと理解して発言をしてもらわないと困ると思います。

石会長

反論ですか。どうぞ。

井戸委員

反論というよりも、私、事業税の所得計算において、繰越控除を認めていくということについては、いかがかなと基本的に思っているのです。といいますのは、事業税はもともと法人活動と地方におけるいろいろな諸行政サービスとの応益関係に基づいて課税されている。だから物税だと言われているし、法人税の所得計算上も必要経費として控除されています。そういう性格の税ですので、赤字のときまで、応益関係だからといって取るわけにはいきませんけれども、少なくとも黒字転換したときは、過去の赤字が繰り越してきて差し引かれるのではなくて、当該年度で所得計算上黒になれば、それに応じて事業税は支払っていただく。こういう仕掛けが私は筋なのではないかと思います。特に事業税の性格から、と思っておりますことが一つ。

それから、先ほど減資の議論が出ましたけれども、今、資本金で区分していますね。例えば外形標準課税なども資本金で区分している。それから、それを資本等の金額、つまり資本準備金も入れれば、今のような一種の逋脱行為みたいなことはできないですね。ですから、そういうような意味での見直し、これは実を言いますと、均等割の課税をどうするかということにかかわりますが、検討していいのではないかと思います。

丹羽委員

村上さんの先ほどの件について、少しご説明しておきたいと思うのですが、我々経済界としても、ただ単に法人税を引き下げろと言っているわけではなくて、全体を見て、税収を上げていくという意味において、一番最初に申し上げた成長というもの、あるいは安定した収入を得るということからいうと、どういう形になるかということ。例えばさっきの日韓のサムスンの問題でも、1,600億円の税引後というのは、シャウプの液晶工場の年間の投資金額なんです。そういうものに税収というものによって新しい投資のインセンティブというものがつくということです。それから、法人税が低くなることによって、従業員の所得のアップというのは、理論的につながっていく部分があるわけです。

そういうことを考えると、法人税で国際的な競争力を持たせるということは、海外からも日本に来る新しい工場が立ち上がる可能性もあるわけですし、そういう意味で、私は経済全般において、中国、韓国、台湾、タイ、そういうところと比較して同じようなレベルに、そこまでいかなくても、少なくともそれに近いレベルで置くということが、経済全般の成長に非常に役立つのだということで、税収的にもプラスになるという考えであります。

村上委員

ちょっと伺いたいのは、今、丹羽さんのおっしゃっているのは、法人基本税率を下げろということなのですか。

丹羽委員

法定税率ではなくて、要するに実効税率の話だと思います。

村上委員

私はその場合には、全体の企業の税負担というのはどうなっているのか。それを個別に代表的なケースを計算してみて、本当にこれで国際競争力がどうなのかというのを検証してみる必要があるのではないかということを言ったわけです。

基本税率を下げるなんていう議論は、ちょっと消費税をやろうかというときに、議論してもしようがない話だと思うので。

丹羽委員

国税ではなくて、トータルの法人実効税率のお話であります。

石会長

地方税もあるし、それから租特を入れたときのあれもあるし、トータルをおっしゃっているわけですね。それはまた資料をお出しいただきましょう。

では、高木さん、お待たせしました。

高木委員

質問というか、こういう資料がないのかということなのですが、付加価値の配分構造みたいな観念の中で、法人あるいは個人、個人もいろいろな税にかかる関わり合い方があると思いますが、担税力だとか、応能・応益だとか、それから、付加価値の中には生産性の伸びと税制構造というか、法人税は今ものすごく下げられた。我々、労働分配率と資本分配率、それに関わる税というのはどういう実態になっているのか。その辺のスコープから何かいい資料を作っていただければありがたいと思います。

それから、国際比較ですが、各国の税制は、それぞれ経済の発展レベルによって、あるいは財政の規模によって、お金の集め方は当然違うのだろうと思うのですが、その辺、例えば法人税の実効税率のところだけピンポイントで抜き出して比較してみて、それは競争力という意味では関わり合いが出てくるのかもしれませんが、そこにはそれぞれの国に生活している国民もいっぱいおるわけで、そういう面も含めて、トータルのスキームでどうなのか。

経済の発展レベルによって、法人の所得は全部、途上国も先進国もパラレルであるなんていうことではそもそもないのだろうと思うのです。その辺についても、いろいろな社会の総合的な仕組みを、全部やれといったら大変でしょうから、主だったものについて背景分析をしていただいて、だからその国はこういうことをやっているのだということで見ていかないといけないのではないか。そういう資料があったら、よろしくお願いしたいということです。

石会長

おそらく後段でおっしゃったのは、マクロ的に見た一国の経済規模と租税負担、あるいは社会保険料負担みたいに、通常租税負担に使われているのだと思いますが、一層もっときめの細かいものをということだろうと思います。

それから、前段でおっしゃった所得分配に対して、つまり、賃金の部分、あるいは内部留保の部分等々、それに対してどのぐらい税負担が各々かかっているかは、ずっと前に一回お出しいただいたこともあるかと思いますが、今、高木さんのおっしゃったような視点から、一国を上げて作ったパイをどう分けて、どう負担しているかという視点から、何かあればまた事務局にもお願いしておきたいと思います。

では宮島さん。

宮島委員

私もそういう分析をぜひしていただきたいと思います。ただ、私は時々聞いていると、ここはまだいいのですが、負担するという言葉が非常に乱用されている可能性がありまして、納税義務があるということと、税を最終的に負担するということは、必ずしも同じではないので、その辺のところをはっきりしてもらわないと、何でもかんでも納税義務があるものは全部負担ですよという形で集められたのでは、かなりミスリーディングな結果になる可能性がありますので、その辺のところを気にしてほしい。

石会長

転嫁の問題をおっしゃっているの?

宮島委員

そうです。例えば先ほどの事業税というのは、一体どう考えるか。確かにその部分にもかけられますけれども、一方で法人税で損金算入されますので、それは租税効果で転嫁されるという面が一面であったり、それから、ここに並んでいる事業主の保険料負担なども、これは当然、人件費の一部で転嫁されるということがある程度前提になっているわけですから、どういう足し合わせの仕方をするかということは、特に分配を考えたときには、ちょっと慎重になる必要。

石会長

しかし、転嫁の問題は、付加価値論的なところもあるから。ただ、それは十分に視野に入れて議論しなければいけませんでしょうね。

尾崎委員

企業の行動を決める上で、税の負担というのは確かに大きな要素だと思うのですけれども、例えば国際競争力なんていう問題を考えても、現実に行われているのは配当率をどんどん上げてしまって、要するに、企業の行動としては、たまった利益を流出してしまうようなことが今行われているわけですね。しかも、その配当所得に対する税率は非常に低いというような構造に今の税制はなってしまっているので、本当に法人税率について配慮を加えれば、それを留保してしかるべき投資をして、あるいは研究開発にあてて、競争力を高めるように企業が行動するのかどうかということが、今ひとつよくわからないですね。

それから、さっきの資料のように、欠損法人の数ですが、税制の問題を考える上で、あまり意味がないのではないですか。しかも、今度、会社法を改正して、非常にわずかな資本で会社を作ることもできるようになっていますから、先ほどどなたかの意見にありましたように、入れ替わりはどんどん激しくなると思います。そうすると、赤字の企業が多いからというのは、むしろもっとファンダメンタルズが変わってきていて、そのためにそういうことが起きているということだと思うのです。必ずしも脱税とか何とか、そういうような話ではないのだろうと思います。それで、小さな会社のオヤジさんというのは、一遍もらったものを随分また出していますよ。何となく企業にまた注ぎ込んでいる。貸すとか何とかという形で。それで会社がもっているというところがあります。私はそういうところばかりに融資するのを8年間やっていたものですから、実態はそういうものだと思います。

丹羽委員

今の話ですけど、今まで配当が低かったから、配当を高める動きが出ていますし、村上さんのようなファンドがプレッシャーをかけている部分もあるでしょうけれども、基本的に企業は、例えば100収益が上がれば、やはり新しいところに投資をどれぐらいするか、配当性向を何%ぐらいにするかということで決めていくと思うのです。だから、むやみに配当を高めて、企業価値というか、株主のベネフィットを得るためにということだけで、あるいはそれを主軸にして行動はしていないということを申し上げておきたいと思います。

尾崎委員

現実はどんどん増えていますよね。

丹羽委員

現実は、今まで低かったから。ただし、配当性向が6割、7割というのは、企業経営として最悪だと思います。だから、配当性向は30%とか20%、今20数%だと思いますが、その近辺はやはり経営者としては十分配慮しているということを申し上げておきたいと思います。

もう一つは、さっきおっしゃった欠損の会社です。これは意味は全くないわけではなくて、日本のような場合は97%は中小企業ですから、それは相当の数の中小企業が苦戦をしている、かなりしんどいぞということで、一つの意味はある。こういうことだと思います。でも、税の問題からいうと、それほどの意味はない。

尾崎委員

それはむしろ倒産の数だと思いますけどね。

石会長

さて、今日は臨場感あふれるご意見がいっぱいあって、法人課税の議論をもう1時間半やっていますが、では、上野さんをもって最後にしましょうか。

上野委員

自分の無知をさらけ出すような話ですが、欠損法人の数であるとか、配当も関係があるのかもしれませんが、先ほど主税局長のお話で、税会計と企業会計は違うのだと、こういう話がございましたね。その辺の違いがいろいろはね返ってきているところがあるのではないかという気がしまして、特に企業会計のほうは随分変わってきていますから、税会計との間の差というのは広がっているのではないか。事態の両方をにらんで、正しく認識するという意味で、大きな差がどういうところにあるのか、意味のあるところで結構だと思うのですけれども、お示しをいただければ勉強できるのではないかと思うのです。

石会長

企業会計、税会計、営業会計の違いを一回昔資料を出していただいたことがあるかもしれませんが、再度、新しい視点からちょっと用意してください。

それでは、次にいきましょうか。国際課税、これも企業に関係があるかもしれません。武内さん、よろしくお願いします。

武内参事官

それでは、国際課税について説明させていただきたいと思います。お手元の資料、「平成18.6.2 総46-4 基礎小55-4」に従いまして、国際課税の問題、これから検討していきたいことを中心に説明させていただけたらと思います。

まず1ページ目でございますけれども、これはご案内のように、国際課税の役割につきまして、我が国の課税権の確保が片一方にあり、もう一方では経済交流の促進、我が国経済の活性化という果たさなければいけない目的、役割がもう一つある。このバランスをどうとっていくのか。とりわけ先ほど来お話がございますように、経済のグローバル化等が進む中、しかも各企業が各国の税制の変化を目ざとく見つけて、一番自分のところに利するような形で企業活動をしていこうとしている中で、どこら辺にバランスをとるのかというのが非常に難しい課題でございます。

国際課税、二つの大きな柱がございます。一つは国内法の関係でございまして、本日はその関係を中心に説明させていただけたらと思いますけれども、もう一つ、租税条約ネットワークの拡充、これももう一つの大きな柱でございます。

国内法の関係でございますけれども、2ページをご覧いただきますと、我が国の国内法に定めてありますところの国際課税の制度等が一覧として掲げてあります。これらのものにつきまして検討をするに際しましては、私どもとしましては、経済活動の実態の変化に日本の税制が追いついていっているのかという観点が一つ。二つ目としましては、税制の公平性、中立性の確保はできているのか、租税回避行為にはきちんと対応できているのかということも視点の一つとして考えてございます。さらには、制度はできたけれども、確実に執行ができていないのではないか、そのようなことがないのか、というような観点からの改正もいくつかさせていただいてございます。

これから順次各項目につきまして、今後の検討課題を説明させていただけたらと思います。

まず最初に3ページでございますけれども、我が国の課税権の範囲ということがございます。我が国の課税権の範囲、ここに一覧表がございますけれども、例えば非永住者制度につきましては、昨年見直しをさせていただいておりまして、今後もこの課税権の範囲をきちんと確保するということが大事なことかと思ってございます。

今後の検討課題で一つ具体的な例を挙げさせていただいてございます。ここに「ダブルSPC」というふうにございますけれども、これは特別目的会社ということでございまして、国内法の定め方と条約の定め方との違いを使いまして、本来は租税条約の締結相手国に設立された会社であれば、課税されるべき利子所得につきまして、あえてタックス・ヘイブンにもう一つ特別目的会社を設立することにより、そこを迂回させ、実際払われるべき利子に対する課税を免れるというようなスキームがダブルSPCスキームでございます。これはある意味、我が国の課税権を確保し切れていないものでございますから、必要な手当てをしたいと思っております。

他方で、これはダブルSPCだけの問題にはとどまりませんで、日本の企業にも関係してございます。日本の企業がユーロ市場で発行する社債利子についての特例措置もあわせて考えませんと、内外無差別の関係からも問題がございますので、こういったことも今後検討してまいりたいと思ってございます。これが3ページに掲げさせていただきました今後の検討課題でございます。

4ページ目、外国税額控除制度でございます。これは二重課税を回避するための制度でございまして、先ほど来、田近先生を初めとしまして、いろいろと折に触れまして法人税の関連でお話がございました。我が国の外国税額控除制度につきましても、これまで基本方針あるいは17年度答申におきまして、現在の制度というのは、控除限度額の流用などによる課税ベースの浸食を防止する観点から、制度を不断に見直し、適正化を検討していく必要があるというような答申、方針をいただいております。すなわち、比較的今までの制度は甘すぎるのではないかという観点からのご指摘でございます。

他方で、アメリカ等の動きにもありますように、配当の還流を促進するために、諸外国でいろいろなことをやっているのではないか。そういった観点から、外国税額控除制度というものを違う角度から光をあてて考えるべきではないかというご意見もちょうだいしております。そういったことを踏まえながら、これから外国税額控除制度につきましての見直しを検討してまいりたいと思ってございます。

続きまして5ページ目に移らさせていただきます。外国子会社合算税制でございます。これはいわゆるタックス・ヘイブン税制でございまして、我が国の企業が外国で儲けたお金につきまして、作為的に外国に子会社を作って、そこにためてしまうということにつきまして、対応するための制度でございます。これにつきましても、グローバルな経済環境の中での企業の活動実態を踏まえまして、合算対象子会社の範囲を見直して、どこまでが合算されるべき所得なのか、どこまでが外国子会社が、なるほどその外国になければならないのか、というものの線引きを順次見直していきたいと思ってございます。

続きまして6ページでございます。移転価格税制も企業の方たちとお話させていただきますと、非常に関心の高い税制でございます。我が国企業が海外の企業との間で取引するに際しまして、適当な価格で取引をされたのか。もし仮に移転価格という作為的な価格が設定されますと、一方の利益が他方に移転することが可能になりますものですから、これに対応するための制度でございます。これにつきましては、16年度、18年度と計算方法につきまして手当てをさせていただきました。

他方で企業の方からよくおっしゃられますのは、この移転価格課税というものは、どうしても不確実性が排除されていない。企業活動をやるに際して、非常に見通しがつきにくいというお話をちょうだいしてございます。これにつきましては、事前確認制度を活用してくださいということで、これを一層推進してまいりたいと思いますけれども、あわせて不確実性を排除するための環境整備としてやれることはないのかなということを、今後検討してまいりたいと思ってございます。

続きまして7ページ、過少資本税制でございます。これも詳細は省きますけれども、企業が資金を海外の関連企業から引っ張ってくるときの形態につきまして、果たしてこれがいいものなのか、悪いものなのかというのを、順次見直してまいりたいと思ってございます。

8ページでございます。国際課税はこれらのいろいろな制度のほかに、手続の簡素化とか、それから非居住者・外国法人が受け取る利子所得に対する主な非課税措置、そういったものもございますし、それから、17年度改正のときにお諮りいたしました租税回避のための措置などにつきましても、講じさせていただいております。しかしながら、まだまだその他の措置でも講じなければならないと考えているものもございます。

具体的に申しますと、それは9ページをご覧いただきたいのでございますけれども、例えば、新信託法、金融商品取引法に関連する動きでございます。この通常国会には新信託法、金融商品取引法、いわゆる投資サービス法でございますけれども、それが提出されてございます。仮にこれが成立しました場合に、国際課税制度がこれらの法案と整合的なものとなるように適宜改正する必要がございます。

具体的例を一つ申し上げますと、外国の法律に基づいて設定された信託が我が国で運用を行うことは十分考えられるわけでございますけれども、その外国の信託が我が国で稼いだお金につきまして、我が国でどのように課税することが適当なのかということは、これから新しく作らなければいけない制度でございますので、かなり手間が要る作業になろうかと思います。

二つ目としまして、国際的な租税回避行為の防止ということで、これまで講じてきておりましたような個別具体的な抜け穴防止策のほかに、今般、非常に大きな視野から租税回避行為の防止を考えなければいけないものが出てきてございます。それは、新会社法の関係でございます。新会社法の合併対価の柔軟化の部分につきましては、2007年の5月から施行されるわけでございますけれども、これが施行されますと、いわゆる三角合併が可能となります。三角合併自身は、組織再編を非常に機動的にやるためにプラスな面も多々あるわけでございますけれども、この制度を使って租税回避行為が行われるのではないかという点を我々としては懸念しているわけでございます。

二つほどクロスボーダーを使った組織再編の国際的な租税回避行為につきまして、諸外国でも問題意識を持たれているものについて、ここに例を掲げさせていただきました。

一つ目は「コーポレート・インバージョン」というものでございます。これはどういうことかと申しますと、企業活動の実態は変えないのですけれども、企業の所有を国外に移転する。つまり、今まで日本の会社であったものを、海外の会社の子会社にしてしまうというような制度でございます。これは実際に米国でも問題になっているわけでございますけれども、日本の先ほどのタックス・ヘイブン税制のもとでは、あくまでも日本に親会社があって、外国に子会社がある場合に、外国の子会社にたまっている所得を合算するという制度でございますけれども、このコーポレート・インバーションをしますと、日本の親会社が子会社になり、海外にあった子会社が親会社になってしまうわけでございます。そうすると、親子が逆転しまして、日本のタックス・ヘイブン税制では追いかけられなくなってしまうわけでございまして、こういったことを防ぐためにはどうしたらいいのかということを考えなければなりません。

もう一つ例を掲げさせていただいてございます。非居住者に対する内国法人の株式の譲渡益課税について、その内国法人の株式を外国法人の株式に転換することにより譲渡益課税を免れる行為ということで、日本の会社の株式の売買であれば、キャピタルゲインとして一定の場合には課税できたところを、日本の会社の株式ではなくて、それを外国の会社の株式に転換してしまう。そうすると、外国の会社の株式の売買の形になってしまいますものですから、日本では課税できなくなってしまう。こういった場合につきましても、いわゆる三角合併を不当に使っている場合に当たるのではないかということで、こういったものについても手当てを講じる必要があろうかと思ってございます。

さらには、このほかにも例えばアメリカではタックス・シェルターの動き等ございます。こういった諸外国での国際課税についてのいろいろな工夫、こういったものもフォローしながら、日本の国際課税というものが時宜に合ったものに随時見直してまいりたいと思いますので、引き続きご指導をよろしくお願いいたしたいと思います。

以上です。

石会長

ありがとうございました。かなり専門的な領域にわたったご説明をいただきましたが、ご質問なり、ご意見なり、いかがでしょうか。

田近委員

今日はそういうことで、これから検討することを話されたということだと思います。いつもここで思うのだけれども、もう少し実態的な話というのですか、日本の海外直接投資が非常に成熟化してきて、利益がどう上がって、それがどう還流して、どこで税を払っているのか。それが税調のこの税率自身に直にどう絡むかということは、その上の議論でしょうけれども、そういう実態の話が要るということを踏まえていただきたいということ。

もう一つは、言わずもがなかもしれませんけれども、今日一つ欠けていると思うのは、法人税はなぜあるか。例えばカナダなどは一番いい例だと思うのですが、なぜあるかというのは、外国の企業に税金をかけたいと。カナダは非常に税が低いですけれども、ある意味で、日本の企業が来てもらう。そこで活動してもらって、そこから応分をいただく。日本の国税庁が外国までずっと追いかけていって、どれだけタックス・ヘイブンもきっちりウォッチして取ってくるのか。それも重要だと思うのですけれども、大きな話ですけど、やはり税調の役割も、日本が投資環境をよくしていくような努力というか、それも要るだろうなと思います。

そういうわけで、個別のことはそれぞれ重要だと、それは了解しますけれども、実態の話と、あと、そもそも法人税ってどうしてあるのだろうという議論も最後は来るのだろうなと思います。

石会長

その最後の解決は難しいよね。

出口さん。

出口委員

そもそも論になるのですが、今の話とも近いと思うのですけれども、租税法定主義のもとで、いわゆる租税回避行動が国際間で行われて、どんどん網の目を細かくしていかなくてはいけないというのはよくわかるのですが、その結果として、先ほど移転価格制度のところでも出てきましたけれども、まともにやっている企業に見えないコストを相当かけているという問題があるわけです。この辺のところを、新会社法もできたし、非営利の新しい制度もできてきたし、いろいろ関わってくると思うのですが、この網の目をどんどん小さくすることによるイタチごっこがどこまで続くのか。そのときの副作用のコストをどう考えるのか。それを全部トータルとして考えた上で、今、企業の方は国連のグローバルコンパクトだとか、CSRだとか、法令とともに一種の規範というものと、それから、それをウォッチするNPOなりがしっかりウォッチして、こういう明らかに租税回避をやっているようなところについては、社会的制裁というスタイルで対応していくという方法も一つとしてあるわけでありまして、それがいい方法かどうかはわかりませんけれども、日本企業は経団連さんを中心にかなりこの辺の努力はしていることもありますので、中期的な見通しを、いろいろな制度が次々変わっていって、次々新しいことを考える人は出てくるでしょうし、ロースクールもあれですから、この辺のところは本当にきりがないところだと思うのですが、一体中期的にはどう考えるのかというのもぜひ考えていただきたいと思います。

石会長

では上野さん。

上野委員

税金のモラル観みたいな話というのは、ちょっと私もわからないのですけれども、実態の問題として、私、田近さんのおっしゃったことに多分に賛成でして、これはどういう事業をやるか、どういう投資をするかという相手方の中身もさることながら、税金にどう対応するかというのが、現実の投資をする場合には大変な判断のポイントになる。これは間違いがないですね。したがいまして、クロスボーダーの取引、あるいはクロスボーダーにわざわざすることによって税を回避するというようなことももちろん行われるわけですし、今のグローバルな経済というのは、グローバルに対応するということで考えないと、適切な、適正なというのですか、税金の徴収というのは難しくなってくる。

国と国の間に制度の差があったら必ず流れますから、私は税のあり方というのは、だんだん国際的に均等化、発展途上国と先進国との間の差はどうかというその辺はありますけれども、一般的にいえば、だんだん格差は小さくならざるを得ないと思います。したがって、法人税も実効税率が非常にほかと比べて高ければ、おそらく日本の企業はいろいろな工夫をして、法人税を払わない工夫をするのは間違いない。いい、悪いは全く別だと思います。私はだからそういう点で、視野を国際的に非常に広く持って、必要な税制を講ずる。非常に一般的な話で恐縮ですけれども、痛感します。

石会長

タックス・ハーモナイゼーションとかコーディネーションの話ですよね。税制は調和していくというような議論。

では丹羽さん、お待たせしました。

丹羽委員

実際に我々も海外進出をしているわけですけれども、今、東証一部上場企業の利益の4分の1が海外です。かなり出ているわけです。営業利益が海外で100億円を超える企業は74社あります。それほどこの4年ぐらいで海外部門の比率は、東証一部上場でいうと13%ぐらい増えています。

ということで、お願いしたいのは、アジアとの租税条約改定というようなことにもう少し力を入れていただく必要がある。どうしてかといいますと、かなりの日本企業がアジアに今進出しているわけですけれども、親会社、日本に払う配当、使用料、投資所得に対して高い源泉国の課税が行われているという国があるわけです。アメリカなどはロイヤリティなんかもゼロ、親子間の配当もゼロなのですけれども、例えばタイとかフィリピンとか、そういう意味で、やはり日本としては、投資所得に対する課税の低減を図って、租税条約の改定を進めていく必要があるのではないか。

二つ目は移転価格税制なのですが、これもまた、アジア諸国の移転価格税制というのが非常に未整備で、運用も非常に不透明で、我々も突然のごとく、インドとかあちこちで問題が起きるのです。そういう意味からいうと、国税当局でも課税強化の傾向が少し日本でもあるのですが、企業の税務リスクを非常に高めているわけで、事業展開上、ちょっと躊躇せざるを得ない国も出てくるのです。だから、アジア各国の制度整備をやはり国としてもやっていただくということをぜひお願いしたい。

石会長

武内さん、最後に全部まとめてお答えをいただけたらと思います。

武内参事官

なかなか私からお答えするのは難しいご指摘がたくさんあったのですけれども、税制のハーモナイゼーションみたいな話につきましては、OECDの議論を紹介させていただきますと、やはり各国それぞれ税制というものは違うべきであって、違って当たり前であって、税制自体のハーモナイゼーションまで目指すというのは、果たしていかがなものかという議論が多ございます。そのかわり情報交換はきちんとやろう、透明性はきちんと確保しよう、そういう土俵は各国、タックス・ヘイブン国も含めて整備しておこうという議論が多いことを、まずご紹介させていただきます。

それから、丹羽委員のほうからお話がございましたアジアとの間の租税条約について、今日、租税条約は資料にはつけさせていただいてございますが、説明はさせていただきませんでしたけれども、まさに私どもも同じ問題意識を持ってございまして、どの国と租税条約交渉をするかということを判断するに際しましては、条約交渉をすれば、それが実りがあるもの、つまり我が国企業がメリットを受けるものを中心に選ばさせていただいてございます。

具体的には、先般、国会でもご了承いただきましたけれども、インドをやりましたし、今はフィリピンと交渉中でございます。私どもも租税条約の一覧表を見ながら、日本の企業がどこにどれだけ行っているのか、日本の企業がほかの国の企業と競争条件上劣後していないのか、そういった観点を見て、引き続きアジアについても精力的に取り組んでまいりたいと思ってございます。

石会長

ほかによろしゅうございますか。

法人税、国際課税というと、私そんなに議論が沸騰しないかと思いましたが、今日は大変盛り上がった議論が様々なところから出まして、会長としては大変ハッピーでありました。

その結果、個別間接税のほうが次回回しになります。この資料は席上にお残しください。ご希望の方はお持ち帰りいただいても結構ですが、また同じものが来週配られるのだろうと思います。

それでは、ちょうど時間になりましたので、次回以降の日程等々をお伝えいたします。そして、散会いたしましょう。

次回は、今申し上げた消費課税を中心に6月16日、金曜日、2時から4時まで開催する予定でございます。

それから、それ以降、まだテーマは確定いたしておりませんが、日程だけ確保してございまして、6月30日(金曜日)、7月4日(火曜日)、7月14日(金曜日)、7月21日(金曜日)、いずれも2時-4時を考えております。7月はすでに3回はめ込んでおりますので、どうか日程のほうをよろしく調整をしていただけたらと思っております。

事務局、何かございますか。よろしいですか。

それでは、今日は活発な議論をいただきまして、ありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。