総会(第45回)・基礎問題小委員会(第54回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成18年5月23日(火)15:58~16:07
〇石会長
今日の総会と基礎問題小委員会合同会議では、資産課税、納税環境整備をテーマに取り上げました。これまでの復習を兼ね、過去の累次の答申の中から出てくる延長上の議論でございましたから、それほど新しい問題ということは今日は出てこなかったと思います。ただ、今日は野村総研から中村研究理事にお越しいただいてお話を聞きまして、今後どういう視点で新しく議論するかというところの幾つかのポイントが出てきたかもしれないと思っております。
相続税につきましては、どなたかおっしゃっておりましたが、過去十何年、減税、減税で来ました。そこで、それはひとえにバブルがあったが故に地価が高騰して相続税が過重になったということで見直しをしたわけでありますが、今、環境が随分変わりました。変わった中で更に少子高齢化という視点も出てきましたし、それから介護というものをどうするかということも出てきました。その財源をどうしようかという問題も出ておりますので、相続税も新しい視点からの議論があるのかなと思っています。今日はまだそういう問題提起があっただけでございますので、新しい展開というのは今後の課題にしたいと、このように考えております。
それから、今、格差の問題も話題になっております。そういう意味から見て、資産段階での再分配をどうしようかという議論は当然重要なテーマになると思います。ただ、今日お聞きになったように、やっぱり政策面で相続税を増収に使うよりは、税制の本体として本来あるべきとしている富の集中化を阻止するという視点の議論が重要ではないかというのが税調の主流な考えではないかと思っています。何分にも1兆3,000億円ぐらいの税収しかございませんので、税収確保というよりは質的な面で、税制ということの本来の機能をより完全なものにするという視点が重要ではないかと、このように考えております。
それから、納税環境整備を巡って、納番の議論もいたしました。もう既に住基番号と年金番号が入っておりますので、現状はどのようなっているか、発足して以来の大体の論点を整理して頂く意味で、担当者に来て頂いてお話を聞いたという形でございます。納番に関しましては、もう20年近くなりますか、税調としては問題意識を持っておりまして、それなりにこれまで議論を重ねて参りました。
今日の税調の委員の方のご議論では、納番というものをこれから本格的にやるべく、言うなれば基盤整備をすべきであるというようなご議論だったと思っております。どっちの番号を使うかとか、その番号の立ち上げ、並びに維持について、どのくらいのコストがかかるか等々は、まさにこれからの議論ではないかと思っております。やっぱり税制全体の基盤を作るという意味で、こういう番号によってしっかり支えるという視点は重要になってくるかと思います。ただ、何分にも大きな話でございますし、我々これまで長い年月をかけて議論してきたというのは、それの難しさもあるわけでありますから、一挙にどっちかの方向で解決というのは難しいかもしれませんが、少し踏み出した方向で今後議論が展開し得るのではないかと、このように考えております。
以上、2つの問題につきまして感想を申し上げました。以上であります。
〇記者
相続税なんですけれども、今日は社会保障に充てるという話とか、格差の話が出てきていますが、あとは一方で、いわゆる消費税の将来増税とか考えた場合に、逆進性があるのでその場合、高所得者である方々の負担の分配をということで発言があったと思うんですが、石会長としては今後相続税についてはどういう方向で議論していくのか。
〇石会長
今、まさに2つの点から切り込むべきだ、あるいは問題があるじゃないかというご示唆をいただきましたけれども、まさにそのとおりで議論はしていくべきではないかと思っています。ただ、少子高齢化の財源、あるいは目的税なんていうことにつきましては今日問題提起がございましたが、税収そのものが大きいものでもありません。同時に、対象になる福祉の方はすごく大きな金額ですからね。それのミスマッチもございますから、どういう形で目的税にするかという点はなかなか難しい問題が潜んでいると思います。
それから何遍も申しますように、これから消費税だけ取り上げて議論するわけでもございません。所得課税、資産課税、すべからく全ての税につきましてのトータルの面での議論をいたしますから、資産課税の本来の役割としての資産段階での再分配効果等々は、これから大きなテーマになろうと思っています。そういう意味で、他の税目の改革の方向等もにらんで、この資産課税も議論していきたいと、このように考えています。
〇記者
その場合の相続税の議論は、いわゆる現状よりは強化していくという方向でよろしいですか。
〇石会長
過去の2回か3回の我々の答申にも、もうちょっと多くの方々に負担してもらう。つまり課税ベースを広げてという点は何度か既に盛り込んでおります。それを再度取り出して議論しようかと思っています。それについて今日の議論等々を見ても、それほど強い反対はないのかと思います。ただ、その幅やそのロットというのはこれからの議論だと思っていますが、先程言っていますように、相続税は税収の手段にはなりにくいんですよね。だから、どうしても再分配を強化するということの方が、優先されるべき視点になってこようかと思っています。
〇記者
納税者番号の議論で、社会保障番号というのが新たに政府で検討が進んでいるという紹介があったと思うんですけど、新しく2つあって、もう1個出てきた社会保障番号と納番との関わりについては、どのようにお考えになっていますか。
〇石会長
どこまで本格的に番号制度を入れて税制を完備するかという視点によってくると思います。アメリカなんかはソーシャル・セキュリティー・ナンバーで、言うなればすべからく社会保障全体をカバーする、あるいはそれを税にまで応用するというスタイルにしています。従って、これから少子高齢化、福祉制度の完備等々という絡みで言えば、その視点の方向性はあるのかもしれませんけれども、年金番号即社会保障番号じゃありませんからね。その間にすごいギャップがあるというのが今日のご説明でお分かりいただけたように、かつ、コストの面もかなりの問題ですよね。だから、その辺の費用対効果の面でどこまで出来るか、これから少しじっくり議論しなくてはいけないかなと思っています。議論の方向性はあり得るとは思いますけどね。
〇記者
消費税なんですけれども、最近、消費税を社会保障目的税化すべきだという、まあ去年からありますけど、そんな議論がまた出てきているようにも思うんですが、会長ご自身はその点についてはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
〇石会長
消費税は次の次に議論する予定でありまして、その辺について今日は税調で議論していませんよ。だから、恐らく考え方は幾つかに分かれているかと思いますが、私、今の段階で個人的に、どうこうということはちょっと言えません。目的税の是とか否とかという話は、今、問題提起がありましたように、次の次の税調で議論になるのかもしれませんが、今日の段階では固まった方向は出ておりません。出ておりませんし、私も固まった方向でまだ議論は出来ないと思っています。
(以上)