第45回総会・第54回基礎問題小委員会合同会議 議事録
平成18年5月23日開催
〇石会長
時間になりました。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。
今日は、資産課税と納税環境整備、納番などについて、過去の経緯を踏まえてご議論いただきたいと思います。今日は、外部の有識者の方、事務当局、いろいろな方にお出ましいただくので、議事が盛り沢山になっております。あらかじめ16時半までと御案内していたのですが、進行状況によっては、16時頃に終わりたいと思っております。ご協力をいただければと思います。
議事に入る前に、今日ご欠席の高木委員から意見書が出ております。一番最後にあると思いますので、折を見てお目通しいただきたいと思います。
それから、累次の答申を、今言った2つのテーマについてまとめたものが事前にお手元に配られていると思います。過去の経緯等につきましてはすでに勉強の成果も上がっている方もいらっしゃると思いますので、それを今日の議論につなげていただきたいと思います。
それでは、後ほど外部の方をご紹介したいと思いますが、最初に事務局から、相続税・贈与税、一般的なこれまでの経緯も踏まえてのご説明をいただきまして、その後に、野村総研の中村理事からプレゼンテーションをいただきたい、このように考えております。
まずは、長谷川企画官、よろしくお願いします。
〇長谷川企画官
お手元の資料「総45-1」をご覧いただきたいと思います。
2枚めくっていただいて、1ページです。相続税収の推移ですが、バブル直後の平成4、5年あたり、約3兆円近くございましたけれども、その後の地価の下落、累次の減税によってだんだん縮減してきまして、現在、足元18年度予算ベースですが、約1.4 兆円、国税収入に占める割合は3%程度となっております。
続いて2ページ、相続税の仕組みですけれども、ポイントだけ申しますと、基本は相続財産の時価に課税するということ。その例外として、左下の箱にありますが、一定の非課税財産がございます。それから、小規模宅地について8割減額するという特例がございまして、例えば 1億円の土地であれば2,000 万円という形で計算するということであります。その上で、右上に基礎控除とありますが、5,000 万円+1,000 万円×法定相続人数ということで、例えば妻と子供3人で相続すれば4人ですので、9,000 万円までが非課税になります。その基礎控除を超えた部分が課税対象になるわけですけれども、納税義務は個々の相続人ごとに実際に相続した割合で税額を負担する、遺産取得課税方式という方式をとっているわけでございます。
ただ、遺産全体に対する相続税の負担割合は、遺産分割の仕方はいろいろありますけれども、一定になるような仕組みになっておりますので、その意味で遺産税方式の要素も一部加味した、いわゆる併用方式と言われているところであります。
次に3ページ、4ページは、今申しましたような遺産課税方式、遺産取得課税方式の概要なり考え方を整理したものであります。説明は省略させていただきます。
続いて5ページですけれども、最近の累次の相続税の減税の概要をあらわしたものであります。左から右、上から下というふうにご覧いただきたいのですが、最高税率は75%から50%に引き下げられておりますし、税率の階段も14段階から13、9、6というふうに簡素化・フラット化しております。基礎控除、配偶者に対する軽減措置、小規模宅地の特例、いずれも累次拡充されてきております。
続いて6ページですけれども、ここは相続税の課税状況の推移ということで、(b)/(a) 、死者100 人に対して何人が課税対象になっているかというところをご覧いただきたいのですが、昭和61、62年あたり7~8%、100人に対して7~8人が課税対象となっておりましたが、足元16年の実績で言いますと、100人中4.2 人まで縮減しております。
続いて7ページですけれども、これは実際課税されている方々の内訳です。右の負担率を見ていただきますと、一番下の合計欄で言いますと10.8%。これは遺産に対する相続税の負担の割合ですけれども、その内訳で見ると、20億円超のいわゆるスーパーリッチの層で言えば3割近くの負担。逆に1億円~3億円のところでは数%の負担ということになっております。
なお、この分母の平均課税価格というのは非課税財産を含みませんし、先ほどの小規模宅地の特例については8割減額後の数字でございますので、実際の遺産の時価に対する負担割合ということであれば、この数字よりもまた小さくなるという点はご留意いただきたいと思います。
続いて8ページは、相続財産の内訳ですが、土地、現預金、有価証券あたりが大宗となっております。
9ページは、地価の動きと累次の減税との関係を示したものです。ご案内のとおり、平成3年をピークにその後ずっと地価は下落しておりまして、現在、18年の足元は、58年と同じか、あるいはそれよりも下のレベルになっております。そのピークの平成3年をまたぐような形で累次減税が行われてきて、その減税の効果は今なお続いているということになります。
そのことを具体的なケースでイメージしていただきますのが10ページでございます。東京都区部のケースと書いてありますが、上が商業地、千代田区外神田三丁目、下が住宅地、世田谷区成城六丁目について、それぞれ200平米の土地、その他の財産、現預金等ですが、1億円で一定と仮定いたしまして、その時点、時点の税額を機械的に計算したものであります。
例えば上の商業地で見ていただきますと、昭和58年から平成3年にかけて、路線価、すなわち地価は約14倍上がりました。それに対して税額は、減税の効果もありましたので、8倍程度の上昇でとどまっております。その後、平成3年から17年にかけて地価は8分の1に下がる一方で、減税も行いましたので、税額はさらに51分の1という形で縮減しております。この平成17年のレベルは、昭和58年と比べても相当低いレベルになっていることがおかわりいただけるかと思います。下の住宅地も同様の関係になります。
続いて11ページ、12ページは諸外国との比較になります。課税方式がいろいろですので単純な比較はできませんが、ご覧いただきたいのは、11ページで言えば下から4つ目の課税割合のところ、日本は死者100人に対して4.2 人の課税割合でしたが、アメリカは日本よりも少ない1.4 人、イギリスは日本と同じくらいで4.5 人。これに対して大陸ヨーロッパのドイツ、フランスは14.6人ないし27.3人ということで、日本以上に広い対象で課税されていることがおわかりいただけるかと思います。
12ページは実効税率のカーブで、日本は諸外国の中で真ん中ぐらいの水準になっているということかと思います。
13ページ、14ページは相続税にかかる諸控除を整理したものでございまして、ご参考でございます。説明は省略させていただきます。
15ページは、事業承継の円滑化に資する措置を種々講じてきておりますが、それを整理したものでございまして、これもご参考でございます。
16~17ページ、相続税の納付の方法です。金銭納付、延納が困難な場合には一定の要件のもとで物納が認められておりますが、ご案内のとおり、平成18年度の税制改正におきまして、17ページにございますが、物納許可基準の明確化、物納手続きの迅速化・明確化といった観点からの改正を行っております。矢印のところにありますように、この結果、いわゆる非上場株あるいは農地・山林についても、所要の要件を満たせば物納が可能となることを明確化したところでございます。
18ページ以降は贈与税の関係でございます。贈与税は、原則、暦年課税でございまして、1年の間の贈与について基礎控除を超えた部分について、右の四角にありますような税率で課税することになりますが、この税率は、相続税に比べますと、課税価格に比べればかなり高い税率になっております。
このことが、赤の他人に対する贈与はともかくとして、親子間の生前贈与についてこれは阻害しているのではないかというご指摘がございました。これを踏まえまして、ご案内のとおり、平成15年度の税制改正におきまして相続税と贈与税の一体化措置、いわゆる相続時精算課税制度を導入したところでございます。その内容は20ページにあります。説明は省略させていただきますが、基本的には何度贈与しても累積で2,500万円まで非課税、住宅取得資金については3,500 万円まで非課税。非課税枠を超えた部分については、20%の税率で一たん納付していただいて相続時に精算するという制度でございます。
その活用状況ですけれども、21ページ、本日発表されました17年分の速報ベースの数字です。15年の導入以降、15、16、17とほぼ同じような結果が出ておりますが、大体毎年1.2 兆円にのぼる生前贈与がこの制度を使って行われているということでございます。また、2や3にありますように、住宅取得促進にも寄与している、あるいは、非上場株の贈与によって、円滑な事業承継のためにも積極的に活用されているといったような結果が出ております。
22ページ以下は経済環境の関係でございますけれども、22ページは家計資産残高の推移でございます。一番右の16年度で見ていただきますと、黒いところの金融資産はいわゆる個人金融資産1,500兆円弱、その上に実物資産が1,000 兆円のって約2,500 兆円。実物資産は地価の下落でバブルの頃からかなり縮減しておりますが、一方で、金融資産は着実に積み上がってきていることが見て取れるかと思います。
23ページは逆にミクロの数字でございます。一世帯当たりの家計の資産額を世帯の年齢階級別に整理したもので、これは総務省の全国消費実態調査に基づいてつくった資料でございます。
私からの説明は以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。今のご説明にご質問があろうかと思いますが、次の中村さんのご説明を聞きましてから併せて皆さんからの質疑をいただきたい、このように考えております。
それでは、野村総研の中村理事からプレゼンテーションをいただきます。
中村さんは、昭和48年に野村総合研究所に入社されまして、その後、資本市場調査室主任研究員、ニューヨーク事務所勤務などを経まして、平成7年より現職の研究理事としてご活躍でございます。12年より経済同友会の社会保障改革委員会主査もされておりまして、社会保障のほうで数々のご業績がありまして、専門家でございます。今日は、そういう視点から少子高齢化時代の相続税の話をいただくことになっております。
では、中村さん、よろしくお願いします。
〇野村総研 中村研究理事
中村でございます。今日は、お手元の資料、「少子高齢化時代の相続税」という資料を使いまして、相続税について社会保障的な感覚で説明させていただきます。
表紙のページで見ていただきますと、これからの時代の全体像でございます。2025年には65歳以上の人が3割になります。
生まれている子は、今、106万7,000 人。私は昭和24年生まれで270万人、1クラス60人の7クラスの芋洗いが私の人生ですけれども、今は半分以下でございます。
死んでいる人の数は107万7,000 人になりまして、昨年から人口純減社会でございます。
そして2007年から2010年にかけて、昭和25年生れまで入れた1,000万人のベビーブーマーが還暦を迎えて、この国は急速な高齢化社会になります。そのときアジア地区では2008年が北京オリンピック、2010年が上海万博でありまして、中国がアジア最大の経済大国になるとき、日本は高齢化社会をどうマネージするかが必要となるということであります。
現状を図で示すと、次の1ページ目でございます。
楕円に沿って説明してまいりますと、全然結婚しておりません。東京ですと、30~34歳の女性の半分が独身でございます。結婚しておりませんから、子供が生まれておりません。子供が生まれていないにもかかわらず、保育所が東京、名古屋、大阪で不足しておりまして、これは、旦那が信じきれなくなった中で夫婦共稼ぎで行こうという人が急速に増えたために、対応が整っていないからでございます。
教育に関しては、義務教育の能力低下が問題になってきております。
一方、高齢者に対しては、公的年金をどうする、介護をどうする、医療をどうするが、毎年、国会の議題である。これがいわゆる少子高齢化対策でありまして、家族を順調に再生産ができるかが問われているわけでございます。
では、次の2ページ目で、家族の標準的な形をどう考えるかでございます。基本的にはアメリカでどうだったかということを基準にお話し申し上げます。
左側が1980年を100 にして、どんな業種で雇用が吸収されましたかということであります。アメリカにおいては流通・サービスで雇用の大半が吸収されました。流通・サービスであるということは女の人が働けるということです。右上段にありますように、旦那だけが稼いでいる家庭の収入が3万6,000 ドル、夫婦共稼ぎだったら6万ドル、女の人の収入が増えたから右肩上がり。したがって右下にありますように、共稼ぎ比率が6割に上がっていったということでございます。
おそらく同じことを日本も繰り返すのだと思いまして、夫婦共稼ぎで子育てをしながら中産階級の生活を維持したいというのが、今の若い層の願いだと思いますが、現実は若干きついというのが現状でございます。
それが次の3ページ目でございます。社会保障の場合は、少子化がなぜ起きているかが話題になるのですけれども、このような解き方をします。生まれてくる子は、この国においてはシングルマザーが極めて少ないから、女の人が何歳で結婚して、結婚した女性が何人の子供を生んでいるかで生まれる子供の数が決まるだろうと。過去何十年間のアンケートが続いておりまして、50歳くらいの女性に「一生の間に何人の子供を持ちましたか」と聞くと、過去何十年間、常に2.2、一人っ子は嫌で、3人は無理でしたという答えが返ってくる。
では、どうして子供が生まれないかは、左側の下、晩婚化と晩産化。平均女性の初婚年齢が一貫して上昇し28歳近くなり、最初の子供が29歳ぐらいで生まれ、直近においては生まれる子の半分以上が30歳以上の女性から生まれ、高齢化が進む中で50万のカップルが不妊に悩んでいる。それが現状でありまして、少子化の主因は結婚が遅れていることであります。
では、なぜ結婚しないのかという問題でありますが、左上段、全雇用の3割を占める非正規社員が今1,650万人になっている。今回の長期不況の中で若者の間に格差が発生した。アンケート結果を見ると、東京の未婚女性の66%は少なくとも旦那様の年収に月給30万円以上の400万円ぐらいを期待しているが、一方、未婚男性の78%は年収400万円未満であって、折り合いがつかない。では共稼ぎしかないということになるのですけれども、右側の下、保育所への入所を待つ待機児童数は全国で 2万4,000 人。幼稚園が終わったら小学校で鍵っ子、どこで遊ぶのか。学童保育は65万人が通っているが、さらに不足という状況にある。
正社員女子はいい。育児休業などいろいろある。しかしパートの女の人にとって、私は出産したんですといったことは失業を招く。働く女性の4分の3は最初の子供の出産を機に退職しているのが現状でございまして、結果、だらだらと結婚が先延ばしされているのが現状である。
このように若者に若干弱さが見られているのですけれども、この国は、次の4ページ目の社会に行かざるを得ない。これはご案内のとおりの話であります。20~64歳の働く人の数は、2000年の7,900万人から、2025年、6,900万人へと減る。65歳以上の年金をもらいたい人は2,200万人から3,500万人へと1,300万人増える。バランスが狂う。このことは社会保障全体に動揺を与える。例えば公的年金は親への仕送りの社会化であります。だから、現役の賃金の総プールから一定の金を強制的に調達してOBの人たちに配っている。払う人が減って、もらいたい人が増える。バランスがとれないから調整が必要になるということで、少子高齢化のもとで社会保障に動揺が生じている。
今回はその中で焦点を医療に絞ります。それが次の5ページ目であります。こちゃこちゃしておりますけれども、左上段から説明します。医療保険というのは、皆でお金を出し合って、病気になった人が病院で少ないお金を払えばいいようにしましょうという相互扶助の仕掛けでございます。ですが、上から見ていると、人間はやがて中古車になってポンコツになりますので、表にございますように、65歳未満の方は1人平均15万円しか医療費を使っていないけれども、70~74歳になると61万円、85歳以上になると105万円使う。したがってその下、全人口の2割に当たる65歳以上の高齢者が、医療給付の5割(16兆円)を利用している。全体が32兆円である。このままではやばいというので、今回、医療費目標額を48兆円にすることが決まって、節約をしなさいということになったということでございます。
それと同時に、高齢者もある程度負担してほしいということで高齢者医療保険制度ができまして、半分は公費で負担、自己負担を引き上げろということで、右上段にございますように、豊かな高齢者は現役と同じ3割、中低でも3割、2割、1割の自己負担という格好にし、さらに保険料も1割負担してほしいという格好で、高齢者医療保険制度の改革が進んでおります。
それに併せて、制度をつくったからといって医療費は減らないだろう、まず社会的入院を何とかしようということで、右側、入院期間の短縮。先進国で見て、なぜこんなに長く病院に入っているのか。ある程度出ていってもらわなければ困るということになりまして、38万床の療養型病床群を介護施設に移さなければいけないという改革が進んでいるわけでございます。本日は、この角度から相続税について話をいたします。
次のページ、6ページ目であります。まず、通説からお話し申し上げます。通説的な相続税の根拠というのは富の再配分でありまして、格差が拡大していれば考えなければいけないことであろうと。
左側の1番、生活保護世帯は100万世帯。10年前に比べて1.6 倍増えている。母子家庭は5年前に対して1.3 倍。離婚が大半の理由でございます。平均年収は212 万円。パートが多い、これではつらい。それから、非正規と正規の賃金格差も明確に出てしまった。
そういう状況の中で、右側でございますけれども、義務教育で親がお金がなくて公から支援を受けている人たちの比率を占める援助率と、生活保護率を合わせました。東京と大阪はかなり高い数字であります。東京の援助率は24.8%ですから、今年の2月、東京では4人に1人の子が私立学校を受験しました。そして4人に1人の子が、親がおかみからお金の援助を受けて子供を義務教育に通わせている。明らかに機会の平等は損なわれた。したがって相続税が資産再配分として重要となる。
これが通説的な考えでございましょうけれども、別に社会保障から話をします。それが次の7ページ目であります。
高齢化に対して巨額な医療・介護費が給付されているのが現実でございます。具体的に平均像だけでまずお話し申し上げます。左の上の表ですけれども、今、60歳男性の方は平均的に17.5年健康で、3.5 ~4年、ちょっと調子悪い時期になって、半年~1年のターミ ナルケアで平均的に82歳まで生きております。女性の場合は、60歳に生きている方は86歳まで生きます。4年違います。女の人は自分が長生きのことを知っているけれども、4~5歳上の旦那と結婚しておりまして、現在、結婚している女性は多くの場合、夫の死後10年の1人の期間がございます。
具体的に言うと、女性が70代に入ると夫が不調になって、70代後半に夫が死亡して、自分が80代後半死亡するという形になる。そこの70代から80代に至る老夫婦に対して、介護費で6兆円、高齢者医療費で70歳以上で13兆円、約20兆円の給付が続いているというのが現実でございます。そして、その半分が税金によって賄われていることが事実でございます。
それで、次の8ページ目でございます。個人の方々から見れば、保険料を払ったのだから医療給付を受ける権利があると。それはそれでいい。しかし、制度設計の立場で言うならば、左上段の1番・公費負担。基礎年金の半分、高齢者医療の半分、介護保険の半分が公費であることは無視できないということであります。
では、医療保険サイドに応能の原則、豊かな人はたくさん払えという原則は機能しているか。さっきのページで高齢者3割自己負担となっているけれども、500万円の月間医療費で3割だから150 万払えと言われたら相手が即死するということで、キャップが張られておりまして、右の2番、70~74歳で月の医療費が150万円だったら幾らまで払えというのを見ていただくと、極めて低い金額になっております。つまり事実上、日本の医療・介護というのは、富の差に関係なく一律で平等に給付しているのが現実の姿であります。
保険料は保険料で取っているのですが、次の3番、ちょっとしぶい話題ですけれども、保険料を取っていることが所得税にインパクトを与えております。理由は、3つの保険が全部所得控除、給付もほぼ非課税という状況ですので、その分の金額が所得税の対象外になっている。もうちょっとしぶく言うと、所得の低い人に50万円の給付、50万円の人に10%限界税率だったら5万円の控除だけれども、20%の人にとっては10万円、30%の人は15万円。豊かになればなるほど、控除というのは減税効果がでかいということがある。そうすると、保険料の取り方は税に対して副作用を持っていると。
以上をまとめると下のほうになるわけですけれども、現行の医療・介護は富の差をほぼ無視し、可能な範囲で約20兆円、高齢者に対して給付している。高齢者から見れば、非常に低いコストの医療サービスを受けることになるのだからこれはいいことだけれども、高齢者世帯の資産を見ると、平均5,961 万円と豊かであり、富を温存する効果を持っているのが明らかであろう。したがって少し応能の原則というのを考えたらどうだろうか。それを相続税で考えたいということであります。
なぜそんなことを考えるか、次の9ページ目であります。なぜ相続税を医療関係の人間が注目するかというと、ここでアメリカのオレゴン州の例を挙げたいと思います。アメリカというのは国民皆保険の国ではなくて、貧しい人が保険に入れない国であります。その中でオレゴン州が正義に目覚めて、80年代に、貧しい人も医療保険の対象にしようということになって新税を設けてカバーを広げた。だけど、金があまりないから医療給付の合理化をしようということで、多くの人には基礎的医療給付をあげるけれども、高額の医療には制限を入れるよという言い方をしたわけです。
それで2番、オレゴン州のヘルスプランでは709 の症状に優先順位をつけて、高すぎるものは劣後させて、基礎的なものを優先させた。優先順位の低い医療は、体外受精、心臓移植、肝臓移植、骨髄移植などであった。
そのため1987年、ジャーナリズムで有名になった話ですけれども、コビー・ハワードは白血病のために7歳で死んだ。親にそれをカバーする金がなかったからであるということであります。
4番、申し上げたいことはこういうことでございます。医療費に対して制約をかけようとしております。しかし、月500万円の医療費が大体2,600 件くらいになっておりまして、先端的な高額医療が増加しているわけです。そうすると将来、日本が医療に対して二段階論をとる可能性は十分あります。基礎的なものに対しては低い負担とし、先端医療の高いものに対して自己負担比率を上げるということであります。しかし、このことは結果として金で命が買えるということであって社会的に正しいとは思えない。そうすると何らかでの資金調達が必要であり、それとして相続税が考えられるだろうということが申し上げたいことであります。
では、どういう角度で相続税を増収させるか。次の10ページ目であります。左側は、公的年金が物価スライドになったことを示しております。1999年に物価スライドにしました。つまり、消費者物価が下がっているということは現役の賃金が下がっている。現役の賃金が下がっているときに何でOBの年金が一定なんだ、それは搾取だろうということで、消費者物価に合わせて年金を移動させようということになったわけです。だけど最初3年間はやばいというので、政治的に止めたわけです。そして2002年からやり始めて、直近に至っている。今年になって物価が上がり始めた、ではどうするのかという話になったけれども、最初の1. 7%、まだ返してもらっていない、これが埋まるまでは物価スライドしないというのが年金でございます。金額で言うと、この1.7 %が基礎年金だけで年間2,500 億円から3,000億円でして、10年このまま放置すると2~3兆円違ってしまうというレベルであります。やはり実質で考えることが必要でございます。
右側は、相続人が4人の場合の基礎控除でありまして、あのバブルの絶頂期の土地の値段に対して一気に上げた、そのあと地価は大暴落していると。それなら実質に合わせて基礎控除はインフレスライドさせるべきだ、そのときの指標は地価と株価であろうというふうに考えます。
次に11ページ目であります。家族の基本は、専業主婦から共稼ぎに移行しつつあるのではないかと思っております。ただし、日本の税制は、外で働く夫と家事と育児に専念する専業主婦を前提に優遇してきた。左側でございます。専業主婦がいると、基礎控除のほかに配偶者控除が夫の所得から減る。旦那が健康保険料を払うと、奥さんは払わないけれども組合員になれる。旦那が厚生年金保険を払っていると、払わないで奥さんは基礎年金がもらえるというふうにして優遇した。
しかし、優遇がどうも正当性を失いつつある。例えば女の人が働こうと思うと、103 万円の壁で旦那の税金が増えてしまう。共稼ぎ夫婦から見れば、何で働かない人の家族が優遇されるのよ、理解できないわという話になる。そうすると、徐々にであろうが、共稼ぎ夫婦を標準とすべきではないかと思います。
そうすると、左側の一番下、夫が死亡した場合、法定相続比率以内の相続は非課税である。つまり、夫婦で共に一生懸命頑張ってきたと。名義は旦那だろうけれども、実質半分は奥さんのものなのだから、非課税というような議論は専業主婦等を前提にしているであろうと。共稼ぎを標準として、両方が高校の先生だった。両方が退職金を取った。旦那が死んで、奥さんに行ったお金はこれは富の移動であり、課税が当たり前だろうというふうに考えていっていいのではないか。
まず手始めに、下の4番ですけれども、現在、全額非課税となっている法定相続比率以内の奥様への財産相続に対して非課税上限を儲けるべきだと考えます。
以上、すべてまとめましたのが12ページ目でございます。相続税の通説的根拠は富の再配分でございますが、多額な終末期医療・介護、約20兆円は、その半額が公費で賄われていることに目を向けるべきだと思います。個人から見れば、保険料を払ったから給付を受けるのが当然であろうというのは結構ですが、制度設計上は、半分が税金でファイナンスされていることが物事の原点であろう。
さらに、医療保険の自己負担比率は、事実上、応能の原則に全然沿っておりません。また、社会保険料というのは副作用として所得控除の問題を生み、所得税の累進効果を弱めております。そういうことを考えれば、患者が死んだあと、残された家族がその財産すべて支配するということはちょっとどうか。それに対して大量の公費が投入されたという事実はあるだろうということでございます。
それで3番、高齢化社会が進行しており、医療費抑制が求められている。低コストかつ平等な医療を提供するためには、つまり、できるだけ多くの方に高額の医療を低いコストで提供するためには、資金調達の中に応能の原則が働いている相続税を利用すべきではないか。
相続税を増収にするためには、基礎控除に物価スライドを導入すべきであろう。物価といったら何か、地価と株価だろうと。
5番、配偶者に対する優遇も見直すべきであろう。専業主婦から共稼ぎ家族が家庭の中心に移行しつつある。そうすると、現在、全額非課税となっている法定相続内の奥様の相続について、非課税上限を設定すべきではないかというふうに考えます。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。限られた時間でございましたが、大変密度の濃いお話をいただいたと思いますし、また、新しい切り口からの様々なご提案があったように思います。おそらく税調でも、相続税の議論を少子高齢化とくっつけて議論したというのはそんなにない話でございまして、今日はいろいろなご示唆をいただいたと思います。
それでは、日本の相続税・贈与税の現状のご説明をいただいた長谷川企画官のお話と、今の中村さんのお話につきまして、しばらく時間をとりまして議論をやりとりしたいと思います。どうぞ、どなたからでも結構ですからご発言ください。
どうぞ、井堀さん。
〇井堀委員
今の中村理事のご説明ですけれども、最後の結論の1~5は、それぞれもっともだと思うのですが、問題は、3のところの「相続税を利用すべきである」というのは、相続税を福祉目的税として医療に特化する形でやれと言っているのか、あるいは、単に相続税の税収は一般財源として集めて、要するに全体の税収が増えるから、結果として国費の税金の投入分の財源的な手当になるという具合に考えているのか、そのあたりの区別がかなり重要ではないかと思います。これは、まともに相続税を目的税化するということであると、かなり大胆な相続税の意見だと思うのですけれども、そうでなければ、相続税の税収の話と医療・介護の話はそれぞれもちろん重要だと思いますけれども、その2つがどのようにリンクしているかというのがいまひとつよくわからないのですけれども。
〇石会長
では、中村さん、どうぞ。
〇野村総研 中村研究理事
とことん本音の議論をいたしますと、福祉国家として保障すべきことは3つだと考えております。いわゆる義務教育という問題で、人が20歳になったときちゃんと競争できるようにしよう。それから、病気になったときはなるべく低いコストで賄えるようにしよう。あと、高齢者の所得保障については責任を取ろうではないか、ということの3つは何とかしようというふうに考えております。そして医療に関しては、なるべく多くの人たちが先端医療を受けられるようにしたほうがいいと思っております。義務教育の問題に関しては先生の問題が大きいだろうし、年金の問題に関しては、公的年金の問題で保険料と給付のレベルの問題であると。
ですから、純粋に個人的に何を考えているかということを素直に申し上げますと、私は、相続税は医療費の目的税とすべきであろうと思っております。つまり、応能でいただきたい。さらに、酒とたばこも目的税にしたい。理由は、たばこを吸う人が肺ガンになる率が高くて、大酒を飲む人がそれだけ肝臓をおかしくするのだから、医療会計に特別にたくさんお金を入れていいであろう。事実、カナダがそうしている。だから私の本音は、そういうのを目的税として医療費を賄い、全体が節約される時代であることはわかっているけれども、その中でなるべく多くの方々に高度医療を受けられる形にさせたいということであります。
〇石会長
相続税は1兆3,000億円くらいですからね。
〇野村総研 中村研究理事
小さい税なんですけどね。
〇石会長
小さい税ですけれども、もっと大きくしようというアイデア、相続税をもう少し重課してもいいではないかというアイデアもあるのですか。
〇野村総研 中村研究理事
そこまでは思っていませんけれども。
〇石会長
わかりました。
では、田近さん。
〇田近委員
目的税の話から入ったのですけれども、中村さんのお話、非常に興味深く伺っていて、ただ問題は、相続税にもリンクすると思うのですけれども、それでは所得の低い人たちは今の話でどこに出てくるのか。それのコメントをしたいのですけれども、中村さんのおっしゃるとおり所得控除はある意味で罠みたいなものがあって、限界税率が高い人が得ではないかと。そのとおりだと思います。だから、本当に所得の低い人を救うには税額控除のほうがいい。
もう一つの医療費のほうですけれども、所得の低い人は一生涯いろいろなサービスを受けているのに払わなくていいのか。そこも大きな問題で、介護保険とかを見ていると、ある人が施設で亡くなると、枕元に年金が残っていてそれを家族が取りに来たとか来ないとか、そういう話も聞いています。中村さんの話を聞いていて、高額所得者に何も話を限定する必要はなくて、所得控除から税額控除、それから、生涯で死んだときに受けたサービスに対して払うということだと、所得は幅広く考えるべきではないか。
そこから私の考えですけれども、サービスを受けて対価を払う、あるいは税額控除を上げるというときにも納番が要るだろうと。だからあるところで、所得が低い高いではなくて、幅広く所得を捕捉して、貯蓄を捕捉して、給付を上げたり負担をしてもらう。そういう視点だろうと。相続税はその中の一つの部品で、おっしゃられるとおりのこともあるかもしれないけれども、もう少し目を広くして、高額所得者あるいは高資産家だけの問題ではないだろうというのが私のコメントです。
〇石会長
要するに消費税とか何かも加味しろということですね、お話は。
〇田近委員
低いほうの人からも取ると。
〇石会長
中村さん、今のコメントについて何か。
〇野村総研 中村研究理事
考えていることはこういうことなのです。つまり、高齢者である、豊かだろう、それだったら自己負担を高くしていいだろう、500万円の治療費がかかった、生体肝移植だ、150 万ドーンと取りに行こうかと。でも、高齢者の豊かさというのは実は金融資産残高とかそういうところですね。年金は少ないかもしれない。そこに向かってドーンと高い自己負担が打てないわけです。そのために高額医療に対してキャップを張って、ここまでで結構ですよと言っていて、結局、資産だけ後ろに行ってしまう。それを最後で少しもらおうというところまでの話なのです、私のは。
だから、情報がわかっていて、金融資産を幾ら持っているかというのだったら、自己負担のところでドーンと入っていいけれども、それは全然ないから、それなら最後で取ろうというところまでです。
〇石会長
わかります。
ほかにいかがですか。どうぞ、井戸さん。
〇井戸委員
資料「総45-1」、7ページの「相続税の課税価格階級別の課税状況等」をご覧いただきますと、課税価格階級区分別の負担率が出ていますけれども、相続税というのは人の金ですよね。人の金の負担率がこんなに低いのです。それで、自分が稼いだ所得税の負担と比較してみたら非常にバランスが崩れているのではないかという思いが、私自身、これを見てするのです。つまり、自分の年間所得だけで稼いだ分に対する所得税額、住民税を入れてもいいです。入れたとしても、圧倒的に実効税率など比較すると相続税よりも高いのです。それなのに相続税、人の金の負担なのに、何でこんなに低くしてしまったのだろうというところを、もう一度よく考えてみる必要があるのではないかという問題提起をさせていただきます。
〇石会長
わかりました。これは事務局のほうから特に発言はないですね。今のはコメントとしてお受けしましょう。
では、宮島さん。
〇宮島委員
相続税と贈与税については、私は今、中村さんのお話を聞いていて大変同感できる面がありますけれども、ご存じのとおり、その一方でアメリカとかイタリア、オーストラリアなどで相続税や贈与税の廃止という方向が、最近、むしろ世界的に起こっていることのほうも大変気にはなっております。つまり資産の評価でありますとか、税務行政の問題ですとか、納付のキャッシュフローがある、ないとか、税収が比較的少ないからということで、あるいはアメリカなどは、家族の問題に介入すべきでないというやや保守的な思想の中で、むしろ相続税や贈与税に対しては非常に批判が強いということです。そういう点で言えば中村さんのお話は、それに対して真っ向から反論する形になっていて、私自身、大変賛同するところが多いと思います。
ただ、少子高齢化の中での相続税とか贈与税の問題というのは、この中でありましたように、高齢者の個人資産が平均的に大きかったりすることがございますし、子供の数が減るということは、それだけ相続分が1人当たり増えるということが格差問題に影響しているのではないかということが、おそらく出てくるのだと思います。
ただ、私みたいなやや租税論的な立場で言いますと、相続税とか贈与税というのは必ずしもそういう格差の問題とか何かではなくて、要するに所得税の場合であれば、教科書的に言うと、保有している資産が値上がりしていて、それを持ち続けて死んでしまうと、結局課税ベースから抜けてしまう。それから消費税の場合ですと、将来消費に使うために貯蓄しておいたのが、結局、早く死んでしまって消費しないで残った資産。相続税とか贈与税というのはそれなりにきちんと課税しないと、課税ベースに脱漏が生じてしまう。
私はそういう意味で、まずベースには、相続とか贈与については消費課税なり所得課税の点からきちんと課税の仕組みをつくっておいて、それプラス、高齢化のための費用問題でありますとか、あるいは格差問題ということであれば、それはまたもう一つの税の組み立て方をするというのが私はいいのではないかと思っております。日本の遺産課税を基礎にして、それと相続と組み合わせるという相続税の話が中心だったと思いますけれども、遺産課税という被相続人に対する課税と、それから相続人に対する相続税、この2つの税の組み合わせを、先ほど言った所得税や消費税に対する課税ベースの脱漏を防止するという観点からきちんと位置づけることが一番いいのだろうと思います。ちょっと理屈っぽい話ですが。
〇石会長
租税本体から入れということですね、政策論議より。
中村さん、何かございますか。
〇野村総研 中村研究理事
アメリカの話で申し上げたいことがあります。アメリカは介護保険がありません。医療保険は全部民間です。それから、アメリカにおいては寄附が個人を中心に年間15兆円行われます。ビル・ゲイツは1兆5,000の寄附をしています。この国は医療・介護は丸抱えです。寄附はしません。それと、アメリカにおいてはNASDAQを中心にものすごい勢いで経済の新陳代謝があり、富を得てもまた別の人が富を得るという回転の速い社会ですけれども、この国はそこまでの新陳代謝は進んでいない。寄附というのに圧倒的に遅れている。医療・介護が日米でものすごく差がある。そうするとアメリカ的にいくと、ものすごい寄附があるのだから相続税がなくても大丈夫だよという議論は出る。しかし、この国はちょっと違い過ぎる国ではないかと思っております。
〇石会長
寄附との絡みでまた相続税の話になったわけですね。
では、河野さん。
〇河野委員
この10年間、相続税を税調が取り上げたのは3回あります。全部、地価の高騰で、相続税残酷物語というのでずいぶん喧伝されたのです。べらぼうに地価が上がって、それに真っ当に税金をかけてきたらば、本当に自分の住んでいる家も土地もぶん投げなければ払えない。売れないからしようがない、物納するという悲惨な話がずいぶんあって、お金持ちがいくらか税金を負担するのは当たり前だろうと思っている人が大部分ではあるけれども、ちょっと行き過ぎだなという議論があって減税をやったわけです。
今、現状というのは、かつてに比べて収入が、かつては3兆円だったのが、今は1兆3,000 億だと。かつては亡くなった人の8人近くが納めたのが、今は100 人のうち4人。つまり、相続税の持っている機能が著しく低下したのです。いいか悪いかわからないけれども、それが現実なわけだ。そこから議論を始めなければいけない。
今日の中村さんの話は、我々が伝統的に考えている富の再配分という、ちょっとかたい言葉だけれども、30年前から教科書にある言葉だけれども、それに比べてなおいろいろな理屈があって、もっと税金もらっていいのではないかという話ですね。つまり、これは増税論なわけだ。いまだかつて10数年間で相続税増税論を聞いたことがない。初めてなんですよ。それには現実的な理由があると思っています。次の政権のテーマは、外交が一つと、あとは内政だったら格差論なんですよ。格差がどういうふうに発生したかという議論とか、どうなっているかということについて、社会学者の間でいろいろな議論がある。たくさん知っているけれども。
しかし、たった一つ共通点がある。もし格差が広がっているとすれば、固定化することはあまりよくないという話です。固定化反対論。そういう議論からすれば、原点に帰って、富の再配分という観点から相続税を少しいじってもいいのではないかという議論は十分成り立つ。安倍官房長官は一生懸命それをやっているわけだけれども、彼が役人を集めてやるならこのことも入れるべきなんですよ。入れているか分かりませんが。
もう一つは、次に我々が議論するのは消費税なわけです。これは逆進性のある大衆課税であることは間違いないわけです。そうすると、資産を持っている人たちがもうちょっともらってもいいのではないかという議論は政治的にはあり得る。私の言っていることは、ちょっとまやかしに近い議論になりかかっているけれども、現にそういうことは線としてあり得る。そういうことを考えてみると、この時期に相続税の議論をここでやっているということは、ずいぶん意味のある議論をやっているのだと私は思います。以上。
〇石会長
中村さん、今のご意見に何かコメントございますか。要するに富の再配分含め、格差社会の税も含め、その辺の関連で。
〇野村総研 中村研究理事
初めてお話をさせていただいて、上げるべきだと言ったのですが、何か十余年ぶりだと言われてちょっと驚いております。やはりちょっとつらい時代ですので、豊かな方から少しいただかなければいけないかと。
〇石会長
では、神野さん、最後に。
〇神野委員
私の理解では、相続税の課税の根拠というのは3つあると思います。流通税として考えて、所有権を移転したことを認めるという手数料的な考え方は一つありますが、それを除くと、人税としての相続税は3つぐらい課税の根拠があって、一つは、巨大な富の集中を排除するということです。それぞれの課税の根拠は税の仕組み方にかかわってきております。ですから、課税最低限はかなり上げたとしても、資産税は非常に課税の技術が難しいので、徹底して巨大な富を操作してそれの形成を排除するというのは一つの根拠だと思います。
もう一つは、一世代に一回の租税。一世代に一回、租税を精算していくという考え方があります。
もう一つは、ウインドフォールといいますか、意外な利益に対して課税をするという考え方があって、非常に遠い親戚からもらったという場合には重く課税するし、例えば親等、非常に近い身内からもらったときには軽課するという仕組みにも反映してくると思っています。
私は、これは河野さんと全く同じ考え方なのですが、この間の相続税の改正では、1番目の富の集中を排除するという点は少し弱かったのではないか。特に今日問題提起をしていただいた、5番目の配偶者に対する過大な優遇。これはちょっと私もどういう根拠なのかというのは……、一世代に一回の課税だから、同じ世代同士だからあまり課税しなくてもいいよという話で課税しないのか、それともウインドフォールではなくて、当然だという感じで課税をしないのかよくわかりませんけれども、たぶん1番目の富の集中排除ではない、2番目と3番目の課税の根拠が重視され過ぎたきらいがあるので、私はこの時期、弱まりつつある富の集中排除という観点から相続税は見直すべきだと。
ですから、今日最後にいただいた5番目の問題というのは、極端に言ってしまえば、巨大な富であっても、何百億であっても非課税になってしまうわけです、法定相続分であれば。これは少し見直してもいいのではないかというふうに思います。
〇石会長
今のご意見は、配偶者の優遇税制を見直す方向でということですね。
〇神野委員
これだけに限りませんけれども。
〇石会長
限りませんけれども、それを最後におっしゃったわけですね。
〇神野委員
そうです。
〇石会長
そうすると事務局から、今、神野さんが出した、配偶者をなぜ優遇しているかというこれまでの根拠、ちょっとご説明いただけますか。
長谷川さん、どうぞ。
〇長谷川企画官
今まさにおっしゃっていただいたように、相続税というのは基本的に世代から世代にわたるものについて負担を求めるということで、配偶者については同じ世代だということで優遇するという点が1点。それから、配偶者については夫の資産形成について一定の寄与があるだろう、それは本来妻の取り分だからという意味で、その分、法定相続分については課税しない。そういった考え方がいろいろあったのだろうと思います。
〇石会長
「従来はそれだけど」と、神野さんはそれに対して若干異議を唱えているのでしょう。そうではないですか。
〇神野委員
いえ、異議を唱えているのではないですが、仮に低額の資産階層にそれを認めたとしても、高額の、巨大な資産に対しては……。これはそういう提案ですよね。一定限度については上限を設けるべきだという提案だと思いますので、設けるということに関しても、巨大な富の集中を排除するという側面から、ある一定の条件を設けて、巨大な富を重課するような仕組みに変えていく方向を考えてもいいのではないかということです。
〇石会長
村上さん、どうぞ。
〇村上委員
2年前に贈与税と相続税を一体化させる措置を取って、これはよかったと思うのですが、期待していたのは、その当時、全体に占める納税割合、5%くらいだったはずです。それが下がっているというところが、姿は非常によくなったのに納税してみると下がってしまっているというのは、やはり行き過ぎだったのかなということで、基礎控除をもうちょっと縮小するとか、先ほど出ましたように、ブラケットをもうちょっと広げていくというような課税ベースの拡大を考える必要があるのではないかということです。
それから、一つ非常に疑問なのは、なぜ納税額が1兆4,000 億くらいでとまっているのかという理由として、直感的に思うのは、皆さん何百億という資産を持った人は納税しませんよね。普通、基金をつくったり、はっきり言ってどうでもいいような財団をつくったりして、さわれないようにコンクリートにしてしまいますね。その辺をもう少し追跡して、公的な意味があるのかないのか。つまり課税の繰延べですから、それはいいのか悪いのかというのは、もう少しきちっとする必要があるのではないかというふうに思います。
〇石会長
そうですね。第1段の、精算課税制度を入れたのと相続税収が減っているということの因果関係、これは事務局はつかまえてあるのですか、ないのですか。
〇長谷川企画官
相続時精算課税制度の適用を受けた場合、いったん、贈与時に贈与税の税収となった上で最後に相続時に相続税と精算することになりますが、15年度に制度が導入されてからまだ間がないので、どの程度足元の相続税の税収に反映されているかということですが、ちょっと今手元には資料がございませんので、もしありましたら、またご報告したいと思います。
〇石会長
まだあるかもしれませんが、今日はまだほかにも幾つかございますし、次のご説明をいただく人もお見えのようでございます。
では次に、固定資産税、現状を関固定資産税課長からご説明いただきます。よろしく。
〇関固定資産税課長
お手元の「総45-3固定資産税」という資料をご覧いただきたいと思います。
1ページでございますが、これは固定資産税と都市計画税を比較した概要でございます。都市計画税が、道路、公園、その他の都市計画施設を整備するための目的税であるのに対しまして、固定資産税は市町村の一般歳入に充てられております。
固定資産税の課税客体は、真ん中にございますけれども、土地、家屋、償却資産の3種類で、資産税として膨大な数の土地、家屋を評価する必要がありまして、土地と家屋は3年に一回の非評価替えをすることとされております。
2ページをご覧ください。市町村税収全体に占める固定資産税の割合を示すものですが、全体で46%、町村に限りますと55%と、半分以上の割合を占めておりまして、基幹的な税となっております。
3ページをご覧ください。土地、家屋、償却資産別の税収動向を示しております。下のマルがついている年度が3年ごとの評価替えをあらわしております。平成11年度が税収のピークですが、土地は12年度以降、毎年、減少傾向にございます。家屋につきましては、ページの左側に書いてございますように過去3回の評価替え年度ごとに大きく減収となっております。
4ページですけれども、固定資産税の税額算定の流れを図示したものでございます。左の上から、まず評価額を決めまして、課税標準の特例や負担調整を考慮しつつ決定されました課税標準額に税率を掛けて税額が決められます。その住宅用地の特例、負担水準の均衡化については後ほどご説明いたします。
5ページでございますが、一番上の折れ線グラフが、バブル時期をはさみます地価の動向を示しております。その下の評価額のグラフをご覧いただきますと、以前は評価額が低く、かつ、市町村ごとに土地の評価にばらつきがありましたが、平成6年に7割評価というものを導入いたしました。しかし課税標準額につきましては、緩やかに上昇させる負担調整というものを行った結果、一番下のグラフにありますような状況になっております。
これについては次の6ページをご覧ください。左の「平成5年度まで」のところに書かれておりますけれども、市町村間、各土地の間におきまして評価に大きな格差がございました。これを是正するため、ページ中央の「平成6年度~」というところにございますけれども、地価公示の7割で評価の統一を図りました。しかし、これをそのまま税額算定に使いますと税額が急上昇するところも出てきますので、緩やかに課税標準額を上昇させる負担調整、例えば中央の少し下の課税の枠の中の[1]にありますように、評価額が3倍になっても税額の伸びが3年間で15%しか上がらない仕組みを入れた。それから、この[1]だけでなく、住宅用地の税負担の緩和も行いまして、[2]にありますように、特例が1/4 、1/2 から1/6、1/3 に拡充されております。
右側の「平成9年度~」をご覧いただきますと、地価の下落時には、3年に一度の評価替えを待たずに各年で修正するとともに、負担水準の均衡化を引き続き図るというところでございまして、税の公平性の確保に努めております。
7ページをご覧ください。現在の負担水準の調整方法について、商業地の例で説明した資料でございます。左上に地価公示価格等とございますが、これが出発点です。これに7割を掛けたものが固定資産税評価額になります。生の地価公示価格を使用しているわけではございません。同じ7割なのでちょっとわかりにくいのですけれども、地価公示額に7割を掛けた固定資産税評価額にさらに7掛けしたものが課税標準の上限というものになります。ここで、過去の負担水準のばらつきを是正し均衡化を図るために、ページの中ほどの枠の中にございますが、前年度課税標準額+評価額×5%の額、これをAと名づけますと、Aが評価額の60%を上回る場合には60%の額。Aが評価額の20%以上、60%以下の場合にはAの額。評価額×20%を下回る場合には、20%の額が課税標準額となるように調整を行っております。
それから、左のやや下に条例減額制度というのがございます。これは、市町村の判断によりまして、課税標準額をさらに60%~70%の範囲で引き下げることができるという制度でございます。
8ページですけれども、右の図は、7ページと同じ、現在の負担調整措置でございますけれども、左側が従来のものでございました。これまでは水準に応じて毎年0.15から0.025 ずつ増えるという仕組みでございました。ただ、わかりにくい、調整速度が遅いということもございまして、18年度から現行方式に改めております。
9ページですが、住宅用地について説明したものでございます。小規模住宅用地の場合には課税標準の1/6 という特例の適用がありますが、その適用後に商業地と類似のの負担調整がなされております。特例については後ほどご説明いたします。
10ページですけれども、商業地等の税負担の変化を示しております。もともとの負担水準が低い土地は、公平の観点から税負担が引き上げられてきております。最近は引き下げられている土地が増加しておりまして、この傾向は大都市でも同様でございます。すなわち、負担水準の均衡化がかなり進んできたことを示しております。
11ページですが、これは、先ほどちょっと触れました住宅用地の特例の詳細でございます。1の概要にございますように、小規模住宅用地でも200m2、約60坪でございますが、そこが特例の対象でして、大都市ですと多くの住宅地が1/6 に減額されることになります。200m2以下はすべて1/6 でございまして、一般住宅用地として1/3 になるのは、これを超えて家屋の床面積の10倍までという部分でございます。
この特例は店舗との併用住宅にも適用されます。ページの中ほどの例にございますように、敷地が200m2で、店舗と住宅の床面積がともに50m2の場合は、住宅の割合が1/2 ということになりますので、敷地全体に特例が適用されて1/6 に軽減されます。中心市街地などでも負担軽減になっております。
先ほど申し上げましたけれども、経緯として、この制度は平成6年度に特例率が1/ 4、1/2 から、それぞれ1/6、1/3 に拡大され、現在に至っております。
12ページでございますが、これは家屋の評価でございます。真ん中にございますけれども、新築時には、屋根、外壁、天井等の部分別評価を積み上げて評価しております。評価替え時には、対象家屋と同一のものを新築する場合に必要な建築費をもとに、物価変動の反映あるいは経年等による減価によって評価額を求めるという方法をとっております。
経年変化は当然ですけれども、物価変動につきましては新築家屋とのバランスに配慮して行っているものでございます。ただし右下の図にありますように、いくら物価が上昇してももとの評価より上がることはございません。
13ページは新築住宅の特例でございます。住宅不足を背景に昭和39年に創設されまして、その後、繰り返し延長されてきました。減収額は1,600 億円を超えておりまして、固定資産税の特例の中でも最大級でございます。創設当時に比べて住宅事情も変化していること、減額期間経過後の税額上昇への苦情が多いなどの状況もございます。
14ページですが、これは償却資産についてのご説明でございます。事業用の償却資産が課税対象でございまして、事業の用に供することができないものは対象になりません。ページの下の表にございますように、固定資産税収全体に占める償却資産の割合というのは、人口の少ない町村で25%以上を占める重要な税源となっております。
15ページですが、これは情報開示でございます。比較のために、他の土地、他の家屋の評価額の概要を見るという制度が左側の縦覧制度。それから、自己または利害関係者が課税台帳を見られる制度、これは閲覧制度と申しておりますが、それが右側のものでございます。そういうものを整備しております。また、下の部分にございますように、固定資産税路線価の公開も進んでおります。
16ページは、ご参考として国際比較について表にしておきました。
以上で私のご説明を終わります。
〇石会長
ありがとうございました。今の関さんのご説明の固定資産税について、何かご質問、ご意見ございますか。よろしゅうございますか。
それでは、相続税並びに固定資産税関係の資産課税のご説明を賜ったあとの議論をこれで終わりにいたしまして、後段の納税環境整備に議論を移したいと思います。
最初に佐藤税制第一課長からご説明をいただきまして、その後、現在の年金番号、住基番号等々の現状を踏まえまして、厚生労働省並びに総務省からご説明をいただきたい、こういう段取りを考えております。
では、佐藤さん、お願いします。
〇佐藤税制第一課長
お手元資料「総45-5納税環境整備」、この資料をお手元にお開きいただきたいと存じます。
まず1ページ目、目次をめくっていただいてご覧いただきたいと思います。納税者の信頼確保に向けた基盤整備ということで、様々な制度が用意されております。右側に2つ箱がございます。納税過程における法令遵守、適正・公平な課税の実現、こういった視点と併せて、左側でございますが、各種手続きの効率化、納税コストの抑制といった、いわば利便性のような視点を全体として考えながらそういう基盤を整備していくということで、この中にマルが9つほど書いてございます。記帳義務・帳簿保存から始まりまして、立証責任、納税者番号等々ございます。これらについて、それぞれ一体的に議論していくということかと存じます。
次の2ページ、3ページでございますが、そのようなことを念頭に、過去どのような施策をしてきたかということをラインナップしてございます。詳細は時間の関係で省きますけれども、例えば56年、59年を見ていただきますと、記帳制度の創設、整備といった話、罰則の関係の整備、あるいは最近、平成10年以降では、いろいろな手続きということで、電子データ保存制度とか電子申告の運用開始、そういったいろいろな形での整備が行われてきていることが見てとれるかと存じます。
4~6ページですけれども、納税環境整備に関して昨年おまとめいただきました「論点整理」で、さらに様々な論点もあろうかということでご議論をいただき、おまとめいただいております。事前にご送付させていただいておりますので割愛いたしますけれども、納税者番号制度、6ページ、(2)で、記録・記帳にかかる話、立証責任、源泉徴収、あるいは罰則と、それぞれについてのご指摘があり、このようなことを念頭に考えていくということかと存じます。
今日はさらに一つ話題といたしまして、納税者番号制度の話を少し突っ込んでご議論を賜りたいということで、赤い紙のあと、8ページ以下をご覧いただきたいと存じます。この話はもう何度もこの場でもご紹介させていただいておりますが、改めまして若干の頭の整理方々、あとのプレゼンテーションにつなげたいと思っております。
まず、若干復習で恐縮でございます。納税者番号制度というのは一体何だろうかということです。この枠の中ですが、広く番号を付与いたしまして、各種の取引に際して、納税者が取引の相手方に番号を知らせる。そして、納税申告書と、取引の相手方が税務署に出す情報申告書に番号を記載することを義務づけまして、この提出された資料について、番号をキーとして名寄せをしマッチングをしていくことだと書いてございます。
下の図をご覧いただきますと、実は納税者番号というのは2つの問題が融合した問題だと思います。1つは真ん中左側、「納税者」とございます。この方にある機関から番号が付与されますが、どのような番号を付与するかという番号そのものの問題がまずあるわけです。仮にそれが付されたとした場合、これがどういう場面で登場するかということでございます。例えば[5]、[6]のあたりでございますが、取引の相手方との間で取引を行う。例えばモノを買う等々あった場合に、そこで番号がやりとりされて取引が行われる。納税者はもちろん納税申告書を提出いたしますので、それに番号を付して税務署に提出するわけですが、取引の相手方も、実はいろいろな書類について相手の番号を付したものを税務署に提出いたします。
そして税務当局の中で、その情報の処理と納税申告書の突き合わせをする。その突き合わせをするときに、住所・氏名のみならず番号ということであれば、より効率的にできる形になるわけです。このようにどのような取引に番号を介在させるか。それから、その番号を載せたどういう書類を税務署に提出させるかという、いわば広い意味での資料情報制度と申しますが、そのような制度をどう整備するかということ、この2つが実は合わさった問題が納税者番号制度であるということでございます。
したがいまして議論といたしましては、この2つを大きく分けながら考えていくことが重要かと思います。主要論点、4つほどマルが書いてございますが、上の2つが大変重要なポイントだろうと思います。それからセキュリティ、プライバシー、もとより重要でございます。番号に付随する問題ということになろうかと思います。トータルでコストの問題も重要かということで、この辺を考えていくということでございます。
9ページでございます。外国の制度、社会保障番号というものが現にあって、これを税務に使っていくというのがアメリカ、カナダ等でございますし、住民登録番号というものがあって、これを税務に使っていくというのが、デンマーク以下、真ん中の欄でございます。イタリア以下、税務番号という形もございます。
「注」でございますが、イギリス、フランス、ドイツについては納税者番号制度はございません。年末調整制度とか、金融所得に対する課税方式等々があることで、番号は不要ということなのだろうと考えられるところでございます。
そこで、10ページ以下でございます。番号の問題というのをまず始めたいと思いますが、あとでプレゼンがございますので、ポイントだけご説明をしたいと思います。この10ページ、11ページの表もすでに見慣れた表でございますが、若干リマインドさせていただきたいと思います。
「基礎年金番号」というものがよく番号で取り上げられるということです。厚労省令に基づくものである。それから年金の加入者が付番の対象者。言ってみれば、非加入の人には番号は行かないということでございます。それからプライバシーの保護規定については、ここに書いているように、下から3つ目のあたり、「個人情報の保護に関する法律」というのもございますが、民間での利用については民間利用規制は特にないということで、他に利用されないよう注意喚起をする。
こういうことで制度が現にあるわけですが、注書1にございますように、社会保険庁の改革法案が出てまいりまして、これについては様々な制度改正、例えば[1]に「基礎年金番号の法定化」と書いてございますが、現在、省令であるものを法律化するという話もございます。このようないろいろな見直しも、この基礎年金番号では現在行われつつあるということで、このあたりはあとで厚労省からお話をお願いするということでございます。
それから、住民票コードの右側でございます。対比的に書いてございますが、ご案内のとおり住民基本台帳法に基づくもの。付番対象者は居住者ですが、一部、ネットワークに参加していない地方公共団体があるといった問題もあろうかと存じます。
民間での利用については、今度は基本台帳法によって民間利用禁止ということでございます。このような性質のものがございます。
それから、注の2でございます。若干小さく書いてございますが、最近、社会保障番号という議論も政府部内で出てまいっております。後ほどこの辺の議論も含めまして、若干のご説明を関係省庁からいただきたいと存じております。
11ページでございます。今申し上げた番号それぞれのメリット・デメリット、見慣れた表でございますのでご覧いただくことにとどめますが、下のほうに「納税者番号として求められる基礎的条件」と書いてございます。このようなメリット・デメリットを含めまして、昨年の「論点整理」の中にこのような記述があるのを要約したものをご覧いただきたいということでございます。
法律上の根拠を持っていること。全国一律の番号であること。いろいろな異動があった場合にそれが管理できる体制となっていること。民間利用が許容されること。プライバシーを含めたセキュリティが十分確保されていること。利便性の観点から、受益を伴う行政分野をはじめ、様々な行政分野で活用されている番号であること。このようなことがあると、番号としては大変望ましいというご議論を賜ったところでございます。
いずれにしてもこのような条件を頭に置きながら、番号制度そのものがインフラ整備されていくということであれば、それがどういうものであれば税務に活用できるかということが、今後の大変重要なご議論のポイントであろうかと思いますので、ご指摘させていただきたいと思います。
12ページでございますが、この表は、主要国におきます法定資料制度の概要というものでございます。先ほど納番の問題を2つに分けましたが、後半の資料制度の問題として考える場合にひとつご参考になればということで用意したものです。この法定資料といいますのは、欄外注の1に書いてございますが、「取引の内容等を記載した資料を税務当局に提出する」という書類でございます。ですから、どのような書類が税務署に来ているかということを見たものでございます。
納番を持っている国、持っていない国、様々ございますが、ざっとご覧いただきまして、例えばフローの取引、金融所得のところは大なり小なりマルがついているわけでございます。事業所得のところは概ね×でございます。この辺については昨年の「論点整理」のときにもご議論いただいたところでございまして、小売業、サービス業の売上げ把握ということで、消費者がそのような資料を出すことについてはなかなか難しいのではないか、こんなご議論もあったところでございますが、ここは×がついています。
アメリカで特徴的なのは、国内送金、預金の出入り、あるいは、海外送金といういわば金の流れが出ていくところについて、ここではどうも1万ドル超ということですけれども、それがありましたときには税務当局に通知をする仕組みになっております。日本の場合はちなみに海外送金につきましては、マネロンということで、200万円超ということでここに〇がついているということでございます。これは若干アメリカが特徴的でございます。
ストックのほうですけれども、例えば預金口座を開設するというあたり、フランス、オーストラリア、〇がついてございます。アメリカについてはございませんが、その記録を金融機関が保存する義務があるように承知しています。概ね×があるかなということでございます。
いずれにしましても、すべての取引にかぶせることはいろいろなコスト面からなかなか難しいのだろうということで、それぞれの国が知恵を絞りながら、こういう全体としての制度になっている。このあたりも参考にしながら、今後、ご議論をいただくということかと存じます。
あと、13ページ、14ページ、アメリカの例、日本の現在の法定資料を参考につけてございます。
最後、15ページですけれども、個人情報保護という法体系の話がございます。ご参考でございますが、平成17年4月1日以降、全体のスキームが施行されておりまして、「個人情報保護に関する法律」ということで、民間部門、公的部門それぞれについての一定の保護法制がスタートしてございます。一定の行政番号のようなものが税務で使われることになりますと、このような法律が適用されてくる状況にすでに至っていることを、事実としてご確認を賜ればと思います。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
それでは次に、「基礎年金番号等」につきまして、社会保険庁運営部の中野企画課長と、厚生労働省政策統括官付の清水参事官、お二人にお越しいただいておりますので、各々ご説明いただきます。
中野さん、お願いいたします。
〇社会保険庁 中野企画課長
社会保険庁の企画課長でございます。基礎年金番号についてご説明申し上げます。
お手元の「45-7」という資料をご覧いただければと思います。1ページ目をご覧いただきたいと存じます。ご案内のとおりでございますけれども、わが国の年金制度はかつて、厚生年金保険、公務員などを対象とする数種の制度に分かれておりました。これにつきまして、昭和60年の年金制度改正によりまして全国民共通の基礎年金が導入されました。
しかしながら、年金制度の加入者の記録につきましては、その後も、国民年金、厚生年金保険、船員保険等々、それぞれの保険者ごとに管理されておりまして、そのために基礎年金制度導入前におきましては、[1]にございますが、制度を通じた記録の把握が困難、あるいは[2]にございますように、届出がなければ保険制度への未加入者についての情報の把握が困難ということで、未加入者の把握ができないといった状態がございました。
こういった状態の解消を図るために、一番下のマルですが、平成9年1月から各年金制度共通の基礎年金番号を導入いたしました。当時、国会におきまして、国民総背番号制導入等への懸念から目的外利用の禁止等のご議論がございまして、私ども、国会の議論の中で、もっぱら年金分野において活用する形で導入することをお約束申し上げてきたところでございます。
2ページ目をご覧いただきたいと思います。基礎年金番号の付番の状況でございます。平成9年1月の導入当時ですが、国民年金、厚生年金の被保険者につきましては、その当時の年金手帳の記号番号を使いました。[2]ですが、年金受給権者につきましては、その年金受給権の裁定基礎となった年金手帳記号番号を基礎年金番号とする。共済組合の組合員等につきましては新規に基礎年金番号を付番し、1億156 万件の付番をいたしました。この時点では、冒頭申しましたように、それぞれ制度、縦割りでございましたので、かなり数が多くなっております。重複した部分が含まれているということでございます。
その後、基礎年金番号、付番導入した後でございますが、新たに年金制度に加入してきた際、あるいは、平成9年1月時点では資格を持っていなかった方が再度加入してきた際、あるいは、年金裁定請求をしてこられた際など、そういった契機をとらえて付番をしております。現時点の数字はこの2ページにあるとおりでございます。
3ページ、年金番号の体系と付け方ということで、それぞれの制度ごと、上の段が従来の姿、基礎年金番号導入後は下のような姿で、10桁の統一的な番号の付番が行われたということでございます。
4ページをご覧いただきたいと思います。基礎年金番号を用いまして、私ども、年金事業にあたりまして、各制度間を異動する加入者などに関する情報を把握する仕組みがこれによって構築できるようになったということでございます。
[1]の部分ですが、これによりまして、各制度に加入していた期間を基礎年金番号をキーとしてつなぎ合わせることができるようになりましたので、58歳の年金受給期が近づいた段階で、その方の加入状況・年金見込額などのお知らせができるようになっております。またインターネットを使いましたり、あるいは、裁定請求書そのものにも私どもの情報を印字してお送りするなどのサービスが可能になっております。
5ページ目をご覧いただきたいと存じます。上から2つ目の事項ですが、平成20年4月から、国民年金、厚生年金のすべての被保険者の方に対して、それまでの納付実績を「ポイント」、点数化した形でお知らせするサービスもできるようになっておりまして、現在、準備を進めております。
5ページにございますように、年金相談・裁定事務が迅速化、効率化される。あるいは、制度間で年金の過払いの防止、二重に受給している方の状況を把握することによる過払いの防止などができるようになっております。
6ページでございます。[4]にございますように、各種届出を制度、縦割りごとに出していただく必要がなくなっておりまして、そういう形で利用者の方のサービスの向上が図れるようになっております。
[5]でございますが、未加入者の把握もできるようになってまいりまして、未加入と思われる、手続きが行われていないおそれのある方に対して、私どものほうで働きかけを行い、職権で適用することもできるようになったということでございます。
7ページをご覧いただきたいと思います。基礎年金番号の取扱いにつきましては、これまでもその取扱いについて、職員の機械操作にあたっての個人識別がきちんとできるようにすること、あるいは、個人情報の閲覧等について監視ができるシステムを構築するといった取組みを行ってきております。
今後のもう一段の取組みといたしまして、現在、国会に提出させていただいております社会保険庁改革関連二法案の中で、一つは、ねんきん事業機構、新たに社会保険庁の後継となって業務を行っていく機関でございますが、この機関における年金個人情報の取扱いに関する規定の整備を行うこととしております。また基礎年金番号についても、現在省令で位置づけられておりますものを、法律上、位置づけをする。それに合わせて、適正に活用するための利用制限等の措置を講じるといった内容の法律案を現在提案させていただいているところでございます。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
引き続きまして、住基番号のほうを、総務省の自治行政局市町村課長、望月さん、ご説明ください。
〇総務省望月市町村課長
総務省の市町村課長でございます。お手元の「総45-8」をお願いいたします。
住民基本台帳制度でございまして、1ページおめくりいただきますと、「住民基本台帳制度について」ということでございます。住民基本台帳法は、昭和42年に制定されたものでございますが、40年が経過しております。この中に住民票コード、住民基本台帳ネットワークも位置づけられているところでございます。
おめくりいただきまして、2ページでございます。住民基本台帳ネットワークシステムにつきましてポンチ絵がございますが、上の箱にございますように、各種行政の基礎でありまして、居住関係を公証する住民基本台帳のネットワーク化を図り、4情報(氏名・住所・性別・生年月日)、それから住民票コード等、「等」というのはその変更情報でございますが、それを地方公共団体共同のシステムで、全国共通の本人確認、居住関係の確認ができる仕組みをつくり、現在、稼働いたしております。
この関係の法律改正は平成11年の8月に行われまして、3年後の平成14年8月、約4年前ですけれども、具体的にこのネットワークの活用が始まっております。約4年がたちますけれども、安定的に稼働しているところでございます。
下に絵がございますが、左のほうに市町村とありまして、「既存住基システム」とあります。全国の市町村、今日時点で1,820市町村、それに23特別区でございますけれども、この市区町村におきましてはそれぞれ住民基本台帳を整備し、住民登録が終わりましたあとデータを整備しているわけでございます。既存住基システムと左のほうにありますが、ここには氏名・住所等、10数項目の個人情報があるわけですが、その中から4情報プラス住民票コードとその変更情報。ちょうどこのページの真ん中に、「本人確認情報、4情報、住民票コード、変更情報」と四角で囲ってございますが、これだけを取り出しまして、ファイアウォールで囲まれた市区町村のコミュニケーションサーバに取り込みまして、それを専用回線網を通じて県でまとめ、最終的には各都道府県が事務を委任しております、真ん中にマルで囲っておりますけれども、指定情報処理機関のサーバ、住基ネット全国センターと言っておりますが、そこに集約いたしまして、法律で定まりました仕事に使っている、というのが住基ネットシステムでございます。
どういう仕事に使っているかといいますと、このページの右下に「行政機関」とございまして、国・地方公共団体等とございますが、基本的には住基ネットは行政に活用いたしております。中に、恩給、児童扶養手当、建設業の許可等ございますが、今、法律で限定いたしまして、280余りの仕事・事務が法律に列挙されております。
こういった仕事におきまして、申請者、資格の付与者、あるいは給付を与える相手の方の居住関係の確認をする場合に、これまでは葉書でもらったり、あるいは住民票の写しをもらったりしていたわけですけれども、それをやめまして、住基ネットを使って確認をする。住基ネット全国センター、あるいは県のサーバから必要な情報、本人確認情報をもらいまして確認をするというのがこのシステムでございまして、稼働が始まりまして4年弱が経っております。
次の3ページですけれども、今申し上げましたことが記載してあります。上のほうにありますように、行政機関等に対する本人確認情報の提供ということで平成14年8月から始まっていること。それから、具体的に活用しております事務につきまして中ほどに書いてあります。(2)番にありますように、都道府県は条例を制定いたしまして、税あるいは恩給の事務に独自の活用をいたしております。条例で仕事を定めまして、この住基ネットを使って本人確認情報を提供してもらうという仕事が、こういった県で始まっております。
数字が幾つか書いてありますが、ここにございますように、国の行政機関等に対して16年度におきましては、年間約3,000万件の本人確認情報を提供いたしているところでございます。
それから下の四角にございますのは、今、社会保険庁の中野課長からお話がありましたように、社会保険庁の改革法案の中で新たな活用の方向があると。それが2つ目のマルでございます。1つ目のマルには、社会保険庁が国民年金、厚生年金等の支給事務におきまして住基ネットをこの秋から活用されるということが書いてございます。
4ページでございます。同じような図がございますけれども、左側の市町村で持っております本人確認情報を、都道府県を経由して、中ほどにありますように住基ネット全国センターに持っていくわけです。市町村のほうでは、例えば転入・転出があって住所・名前が変わるといった場合には、ほぼリアルタイムで住基ネット全国センターに情報を送りまして、常に新しい本人確認情報が住基ネット全国センターには集まっている。右のほうに事務A・B・Cとありますが、例えばパスポートの発給ですとか年金の裁定事務等におきまして、決まった仕事に対してその情報を要求に応じて提供する、そういったことでございます。
右のほうにバツ印がありまして、中に縦の点線がございますけれども、各事務A・B・Cの間には連絡というものはない、行なってはいけないという仕組みになっております。
5ページは、住民票コードの利用制限でございます。住民票コード自体は、本人確認情報を確認する場合,この住民票コードを使って簡便かつ確実な住所の変更ですとか、名前を確認することになるわけですけれども、住民票コードにつきましては個人情報保護という観点から、ここにありますような告知要求制限、データベースの構築禁止といった保護規定が法律上設けられております。
次の6ページにおきましては、住基ネット全体の個人情報保護措置、セキュリティ確保の措置が記載してございます。
7ページでございます。住基ネット関連訴訟ということで、上の箱にございますように、国が被告となっている訴訟が現在35件ありまして、いずれも係属中でございます。
原告の主張ということで中ほどに書いてございますが、プライバシーの侵害、人格権の侵害、住民票コードは違法なデータマッチングのマスターキーとなるおそれがある、といった主張のもとに訴訟が提起されておりまして、現在、係属中でございます。
判決ですけれども、一部出ておりまして、金沢地裁、昨年5月30日の判決では一部敗訴しておりますが、その後出ました6つの地裁判決では、被告側(国、県、都)は全面勝訴をしております。
判決の動向としては、一審ではこういったふうに一部敗訴の、私どもとしましては異議のある判決が出たわけですが、その後の判決の動向は、私どもの主張が認められておりまして、安定しつつあるのではないかなというふうに考えております。
次に8ページをお願いいたします。8ページには住基ネット不参加団体の状況とありまして、1,820の市町村、23の特別区がございますが、その中で、ここにございます福島県矢祭町、東京都国立市、杉並区におきましては住基ネットに現在参加をいたしておりません。したがいまして、ここの住民の方の本人確認情報は行政機関が住基ネットを通して使うことができないという状況になっております。
なお、下のほうに横浜市とございますが、横浜市は段階的な参加ということで、352万人の人口のうちの84万人の方が本人確認情報を送っていないという状況にありましたけれども、この5月10日に横浜市長から、全員参加をするという表明がなされております。
9ページには、法律改正の動向が記載されております。
以上でございます。
〇石会長
では、年金番号のほうでちょっと説明が漏れておりましたので、よろしくお願いします。
〇厚生労働省 清水政策統括官付社会保障担当参事官
厚生労働省の社会保障担当参事官の清水でございます。先ほど社会保険庁がご説明した資料「総45-7」の8ページと9ページをご覧いただきたいと存じます。
基礎年金番号は基礎年金に関する番号ですけれども、それにとどまらず、年金医療・介護といった社会保障全体についての社会保障番号を導入したらどうかというご指摘がございます。8ページでございますけれども、本間先生をはじめ経済財政諮問会議の民間議員のペーパーとしてもございますし、この4月の中間とりまとめでも「検討を」というふうなご指摘がございます。
それについて、9ページでございます。先ほど年金についてご説明申し上げましたように、現在、各保険者におきまして、年金は年金、医療は医療、介護は介護ということで、それぞれ付番をしてシステムを構築した上で管理してございます。基礎年番の保険者は社会保険庁、国という一つでございますけれども、医療保険の保険者は約5,000くらい。健保組合が1,622、国保が市町村含めて3,144、公務員の共済が76といったような形で、そのくらい多数にのぼる保険者が各々、基本的に足並みそろえてということでございますけれども、やっている状況にございます。
この社会保障番号についての考え方でございますけれども、メリット・デメリットの整理を簡単にいたしますと、メリットといたしましては、併給調整など一部の事務処理の効率化が図られるかなと思っております。ただ、この間の様々な改革の中で、そもそも併給調整事務など要らないような制度改革をやっております。ホテルコストのようなものは、いわば年金の中には観念的に含まれているけれども、介護保険給付などからはそもそも外す、保険給付の対象外とするといった形で、そもそも併給調整事務が要らないような形にしてございます。併給調整事務が要るのは、例えば老齢の方で失業した場合の老齢年金と失業給付の場合ですが、これは年間数万件といった程度になってございます。
一方、それに対する費用とか、デメリットあるいは留意点を考えますと、右側でございますけれども、やはり相当なお金がかかるというのが一点ございます。それと国民の皆様、あるいは先ほど言った数千にのぼる保険者の関係者、これは市町村も入るわけでございまして、先ほど、住民基本台帳の関係でのいろいろな自治体さんの反応があったわけでございますが、そういうものも含まれる、ほぼ重なるものでございます。それから技術的なセキュリティ等々の論点、課題といったものがあるわけでございます。それらを考えますと、こういう個人情報に関するなかなか敏感な状況、厳しい財政状況といったものを踏まえながら、考えていく必要があるというふうに思っております。
そこで次の四角ですけれども、統一番号の導入は基本的な直接効果としては、当然のことですが、名寄せと漏れのチェックということになります。その上でどういうふうに利用していくか。それは一種の政策判断ということになっていくわけでございまして、社会保障の中だけですと、メリットというのは比較的小さいものではないかというふうに考えております。
納税者番号、今、ご論議の最中でございます。あるいは、今総務省からご説明がありました住民基本台帳とリンクということでいろいろな利用を、あるいは、民間経済社会活動における利用といったものの中から行政の効率化も図る。あるいは、国民の皆様が、これは便利だなというふうに思っていただくような形になってはじめて、意味が出てくるのではないかというふうに思います。
基礎年金番号の法定化を含む法案が、現在、国会でやっと審議入りするというところでございますので、具体的にどのようなということをこういう公式な場で申し上げることはいかがかということで、最近訳された、アメリカのハーバード大学の教授が書いた本の中には、※印で書いたような,利用といいますか、実際の使われた方も書いてあるところでございます。この例が適当かどうかは別にいたしまして、このような形で様々な効果というものもあり得るのかなということで、今後、検討していくべきことかなというふうに考えている次第でございます。
以上、簡単でございますが。
〇石会長
ありがとうございました。今の補足説明も含めまして、まだ時間がございますので、特に番号に絡みまして、あるいは納税環境整備に関しまして、どうぞ、ご意見なりご質問をいただければと思います。
どうぞ、佐竹さん。
〇佐竹委員
実際、各種の番号を使う立場から幾つかお話したいと思います。
一つは、特に医療、それから福祉関係の制度改正がしょっちゅうあるわけです。そのたびにソフトウェアから何から相当な金がかかるということで、我々としてはそこら辺、全体をもうちょっとかからないようなシステムにできないのかというのが、実際、現場ではあるのです。
もう一つは、どの番号を使うかどうかは別にいたしまして、納税者番号、あるいはそれら全体の何らかの付番といいますか、これはやはり時代の流れの中で考えるべき、しかも相当効率的に考えるべきではないのか。そういう時期に来ているのではないかと。
もう一つは、セキュリティの問題について、100 %絶対ということはないわけであります。これはなかなか難しいのですけれども、万が一の場合の個人に対する様々な保障措置といいますか、そういうものをきちっとやった上でこれをやるということでだいぶ理解が得られるのではないか。どうもセキュリティのところで、いつも、いや大丈夫だとか、大丈夫でないとか。ただ、技術的には100 %はないわけですので、セキュリティのところで問題があった場合、その個人の国民をどう保護するのか。そこをきっちりした上でこの議論を進めることが全体の効率化に結びつくのかなという感じがいたします。
以上です。
〇石会長
佐竹さん、セキュリティの具体的なやり方、あるいはケースまではなかなか検討までいってないのでしょうね。そういうことをしたほうがいいという方向性の問題ですね。
〇佐竹委員
技術的なことはどうしようもない場合もありますけれども、何らかの損害を受けた場合、個人に対してそのものについてどう保障するのか、そういう制度ということだと思います。
〇石会長
どうぞ、井戸さん。
〇井戸委員
納税者番号にどういう番号を使っていったらいいのかというのは、これからご議論いただいたらいいと思いますが、納税者番号制度をぜひ導入しなくてはならないと思います。というのは、阪神タイガースの阪神の株を村上ファンドが買おうとして46%も買い占めているのですが、誰がそのファンドに出資しているのか全然わからないのです。つまり今の時代、特に金融資産について、誰がどういう行動をしているのかほとんど公開されていないというか、透明性が非常に薄いのです。
そういう状況の中で、かなり多額の収益が帰属したり帰属しなかったりして、しかもそれが税負担をきちっとしているのか、していないのかもわからない。そういう状況が現出しているわけです。そういう時代を迎えてしまっているからには、納税者番号制度をきちっと導入して少なくとも社会的責任を果たしてもらう。その上で運用を図るのが当然のことなのではないだろうか。私自身はそういう意味では、納税者番号制度は長い懸案事項ではありますが、できるだけ早く導入すべきだと思います。
2番目に、今、番号の話が2つありましたけれども、住民基本台帳番号制度をもっと活用すべきだと。何も私が知事だから言うわけではありませんで、すでに全国民に全部付番されているのです。ちょっと抜けているのがありますが、地方自治という立場から、抜けるような状況はそういう制度にしたからであって、いくらでもそういう自由がないような制度に置きかえられるわけです。それから、民間利用を禁止しているから利用できていないだけであって、なぜ民間利用ができないのか。特定の民間利用についても、例えば納税というような場合については許せばいいわけでありまして、そういう意味からすると、すでに付番がされて利用もされているようなネットワークがあるにもかかわらず、それを利用しないで別の番号を振ったり、別の制度をつくっていくというのは非常に不合理ではないか。このように思っています。
それから、今、社会保障番号制度についての話が出ました。これはこれから議論していただいたらいいのでしょうけれども、年金番号については社会保険庁の事務上の都合でつくられた番号です。それを使っていくのがいいのか、もし新たに社会保障番号として付番するというなら全くナンセンスだし、無駄なことです。それから、年金番号で全部カバーしているかというと、無年金者がものすごくいるという実態がありまして、それとのかかわりで言っても、結局、年金番号を活用するためには、住民基本台帳番号と突合させながらリンクしていないと機能していかないという制度上の問題がどうしても出てくるのです。だとすると、どうしてベースになる住民基本台帳番号を使わないのだろうか。私自身はそのように思います。
以上ですが、もう一つだけ、これは社会保険庁のほうに要請です。今度、公的年金から国保料を天引きできるようにしようということを検討されているのか、されることになっているのかと思います。何だか知りませんけれども、所得税は公的年金から源泉徴収されることになっていますが、住民税は落ちてしまっています。したがって、何かプログラムを一つずつ変更していったら非常に無駄な経費をまたプラスアルファ払わなければいけないので、国保料を公的年金から控除できるように、併せてぜひ住民税も控除できるようにしていただいたら、プログラム変更も一回で済むということになるのではないか。そういう予算が入っていないから難しいとか、そんな馬鹿な話で制度がつくれないということはないのではないかと思いますので、これはぜひ前向きに検討していただきたいと思います。
〇石会長
最後の点は税調でかつて問題になりましたか。今、向こうに要望という形で出されたわけですね。
〇井戸委員
そうです。ただ、所得税を公的年金から源泉徴収することにしながら、住民税が落ちているのがどういう理由なのか、私には全然理解できないです。
〇石会長
これは事務局から何かご説明できますか、過去の経緯を含めて。
どうぞ。
〇社会保険庁 中野企画課長
今お話にございましたように、国保の保険料につきまして、平成20年4月から年金から徴収ができる形にしていこうということで、現在、準備を進めているところでございます。一方、地方税(住民税)につきましても同様に年金から特別徴収ができないのかという点について、現在、総務省さんのほうと、進め方、具体的な取扱いの仕方について、細部についてご協議を申し上げているところでございまして、そういった細部を詰めた上で、具体的に今後いつから、どういう形でということを前向きに検討していきたいと考えているところでございます。
〇石会長
いずれ固まった段階で、またご報告いただきましょう。
ほかにいかがでしょうか。どうぞ、上月さん。
〇上月委員
納番制で、費用対効果の問題でかなりコストが高くつくという意見を聞いていますけれども、実際にマッチングに要する国と民間の費用とか、そういうのが概算でわかれば教えていただきたいと思います。
〇石会長
費用のカバレッジの問題ですね。わかりますか。
どうぞ、佐藤さん。
〇佐藤税制第一課長
結局どういう仕組みをつくるかによりまして、全然変わってまいります。非常に大幅なものを考えるかどうかによって違ってくると思います。
それからコストの場合でも、初期のコストと経常コストといろいろございます。もう少し議論が進む中で、必要とあらば検討してみたいと思いますが、今すぐに数字は持っておりません。
〇石会長
厚労省のほうで社会保障番号のご説明がございましたけれども、さっきの井戸さんのご説明で、保険から社会保障全体に広げるところのプロセス等で、新しい番号は難しいので、エクステンションできるかどうか等々、ご検討がもう始まっているのですか。
〇厚生労働省 清水政策統括官付社会保障担当参事官
まだ、全体の問題点の整理等、幅広い論議という段階でございますが、いずれにしろ導入するという目標に向かって考えている場合におきましては、既存の資源をいかに活用できるか、いかに安上がりでコストパフォーマンスがいいかということを念頭に置いて考えるべきものだというふうに思っております。
〇石会長
よろしゅうございますか。
どうぞ、村上さん。
〇村上委員
納番に関しては、漠然とした理解しかないものですから何とも言えないのですけれども、この際、もし納番をやる必要があるというのであれば、どの範囲の何の項目について納番を適用するか、使うのかということを、先に議論する必要があるのではないかと思います。先ほど井戸委員がおっしゃった村上ファンド、ああいう人をとらえるときに、金融取引としては証券会社があるわけで、そこは一応押さえているはずなのです。ですから、あれが脱税しているかどうかという疑いというのは、あるかないか知りませんが、あの分野はとにかく押さえているはずですよね。
だから、例えば大口の金融取引があったとか、先ほど説明があったような大口の預金とか口座開設とか、そういうものを参考として使えるように納番を利用するということはあるかもしれませんけれども、例えば事業所得をくまなく押さえるとかいうところまで話を広げてしまうと、これはとてもできない話ですから、何と何をやるのかというところの範囲をまず設定する必要があるのではないかと思います。
〇石会長
今日は、いずれにいたしましても過去の納番の議論の整理でありまして、これから先どう進めるかは、また機会を見つけまして議論をしていきたい。そのときにはおそらく、村上さんみたいな視点で使途をどうするかという議論を始めなければいけないかと思います。
ほかによろしゅうございますか。
それでは、ほぼ議論も出尽くしましたし、予定した時間も来ておりますので、終わりにしたいと思います。
今日は、厚生労働省、社会保険庁、総務省行政局、お忙しいところをどうもありがとうございました。
それでは、今後の税調の予定等についてお話しいたしまして、散会にいたしたいと思いますが、次回は6月2日(金曜日)午後2時から4時を考えております。これは本日と同じく総会と基礎小の合同でございまして、法人課税、国際課税、この辺をやっていきたいと思っています。つまり、個人所得課税が来て、今日、資産課税が来て、次は法人課税、その絡みで国際課税、それからもう一つ、消費税の世界が残っていると思います。また、間接諸税の問題もありますので、順次片づけていきたいと考えております。非営利法人も法人課税でやりたいと思いますので、またご議論いただきたい、このように考えております。
では、今日は長時間ありがとうございました。これにて散会いたします。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。