総会(第44回)・基礎問題小委員会(第53回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成18年5月12日(金)16:16~16:33
〇石会長
総会と基礎問題小委員会合同の会議をやりまして、今日から新たな局面というか、新たな勉強会を始めたということであります。前回まで歳出・歳入一体改革が出てくるであろうということを前提に、歳出面も含めて大きな視野から問題を議論していましたけれども、今日以降、個別の税制につきまして論点を整理していこうという作業に入ったわけであります。
当然のことながら税の中で一番重要な個人所得課税、所得税と住民税、2つ取り上げまして今日議論いたしました。ご出席の方、大勢いらっしゃったと思いますので、大体の流れはお分かりかと思いますが、非常に大きな問題でございますので、今日一回で片が付くわけではございません。それと同時に、既に過去3年間、我々5つ、ないし6つの答申を出しておりまして、その中である程度所得税の方向性というのは議論していたわけであります。特に10年、15年先を見て、日本の所得税制はいかにあるべきかという議論につきましては、方向性は基本的に確立していると思っています。従って今日は過去にやりました答申の意見を、言うなれば再整理して、そこから何を抽出して今後の中期答申の核にしようかという、まさに最初の作業を行ったわけです。今日、即話の決着が着くということでは当然ないわけでありまして、議論を開始したというところであります。
方向性につきましても、幾つか分かれているところもございましたが、私の目から見て、何が今後協議の上で必要な論点になるかということを3つ、4つ整理した方がいいかと思います。
今日議論がございましたように、三位一体改革が行われたわけですから、当然のこと、それをバックにした税制改正の流れをフォローしないといけないという意味で、特に現年課税の問題がありました。これは今、総務省で再度進めてもらっていますが、いろいろ聞きますと克服しなければならない課題があると聞いております。ただ、今日の資料にも出ておりましたように、所得の低い人ほど所得税より住民税が大きくなります。ということは、少ない方の所得税が現年課税で多い住民税が前年課税というのもおかしな話でありますから、いずれこの問題をしかと我々としても方向性を見極めたいと思っていますし、それに絡みまして、税務行政コストをどうするか等々の議論が当然出てくるかと思っています。
それから、先程来申しておりますように、我々の所得税改革の提案なり議論というのは、長めに見た先のことを言っているわけでございますので、議論になるであろう歳出・歳入一体改革の枠の中で、この所得税改革の、特に数量的な問題をどうするのかという話になりますと、これは、まだ方向性が定かでないということであります。いわゆる特定の所得獲得層を中心にして負担を高めるなんて話をしているわけではございませんし、消費税の話、所得税の話、他の税も出てくると思いますが、全体の中でこの所得税の話が出てくるわけです。今日お一人の方が、所得税改革は脇役だなとおっしゃっていましたが、そういう観点かもしれません。格差論が出てくると恐らく相続税の話にまで行くわけでありまして、こういう大きな流れの中で議論を展開していく他ないだろうということです。
その中で、従来の印象から子育て、少子化対策で税額控除ですか、その流れというのは二、三発言がございましたように、比較的一つの方向かなということかとも思っています。
それから、金融所得課税について、今日、2年前の小委員会の報告を再度奥野小委員長からご説明いただきました。この流れの方向は我々としても実現に向けて努力する方向であろうと思っていますが、具体的に損益通算、あるいは今の一時の優遇税制になっているのをどうするか。強い意見として、10%のものを本体に戻すというご意見もございましたけれども、これはこれからの審議の流れによって議論していきたいと考えております。
最後にN分N乗等の課税単位の議論が出ておりました。個人でやるか、夫婦でやるか、世帯でやるかといったいろいろな形の議論が出てきておりますので、どちらの方に行くかはわかりません。従来税調では個人単位ということをベースにして税を仕組んできましたので、それについてどういう問題があるかを整理しながら、今後議論していかなければいけないと思っていますが、そう短絡的に少子化対策の視点からこの議論ができるかどうかは、疑問ではないかと思っています。
以上が今日、議論を受け、私が司会をしていて重要な論点として受け止めた論点でございます。
最後の方で次のスケジュールを申し上げましたが、以下、月に2回あるいは3回のペースで、残った資産課税、納税者番号の話とか、あるいは法人課税、国際課税の問題、その中に非営利法人も入ると思っていますが、そういう問題。それから間接税で、消費税も含んでくると思いますが、そういうものを一当たりやりまして、6月末に総括的な議論をしたいと考えています。7月以降のことはまだ具体的に外枠が固まっておりませんので、外枠というのは例の歳出・歳入一体改革のスキームでありますが、今の段階ではっきりとしたことを申し上げる段階にはないと、このように考えております。以上です。
〇記者
幹事から幾つかお伺いします。議論の中で、将来的な消費税の増税というのは避けられないので、所得税等々、累進性というのを緩和しなくてはいけないという意見がある一方で、今の政治状況で消費税増税は難しいのではないかという意見があったりして、今、長い目で見ていくんだというお話があったんですが、消費税がどうなるかというのがなかなか鮮明にならない中で、所得税の累進課税云々という議論をどういうふうに進めていこうとしていらっしゃるのか、その辺の部分のご所見をお願いしたいのですが。
〇石会長
消費税等々の議論は今日何もやっておりません。今日はそれについて個人的なご発言があったと思いますが、どういう組み合わせでやるか、あるいは所得税がどういう地位を今後の税制改革で占めるか等々について、今のところ、まだ議論を開始しただけで方向性もまだ定かではありません。今のご質問、直に答えるだけの材料は、今日の議論を聞いていただいておわかりのとおり、ないと思います。私もその点につきましては今の段階で意見を持ち合わせておりません。
〇記者
消費税の議論がある程度煮詰まらない、所得税どうしようかという話もなかなか進めにくいという気がするんですが、そういうことはないんですか。
〇石会長
消費税は6月に入りましてから一応具体的にやる予定でおりますので、恐らくそこで再度組み合わせ、あるいは主役、脇役、あるいは歳出・歳入一体改革との絡みでという議論があろうかと思っていますが、今日は第一ラウンドですから、今日の段階で、方向性が固まるわけではないです。いろいろ論点を出し合ったというだけの話でありますから、我々としても全く先行き、方向性は固まっていません。
〇記者
あと子育ての関連で、税額控除というのが一つの方向性かなというお話があったんですが、会長としてもそういうふうなお考えなんでしょうか。
〇石会長
所得控除から税額控除へというのは、今各国の税制改革の流れなんですよね。そういう意味で今日、あくまで所得控除に固執するというご意見もなかったし、前回の「論点整理」でも少子化なり子育てについては、税額控除をやったらどうかという形での議論もございましたから、これについての議論を進めていきます。ただ、今日もある委員から発言がありましたように、これはある意味で歳出面との話とも絡んできますから、要するに還付までしなければいけない、つまり税額控除で自分が税金を払っていない、それを更にオーバーフローしてしまった人に対して還付までするのがどうかという議論がありますのでね。これは慎重に制度設計をしたいと思っていますが、今のところ、議論はそっちの方向で行くのかなという気はいたします。
〇記者
今の関連ですけれども、税額控除が一つの流れということで、その場合はN分N乗ではなくて、やはり税額控除でということでいいんでしょうか。
〇石会長
ちょっと今の話、税額控除か所得控除かという話と、N分N乗とか夫婦合算とかとはまた別な次元の話ですよ。従って、N分N乗という議論は課税単位の話ですね。そして課税単位の話でその方に行くなら、恐らく所得控除、税額控除含めて、どうやって様々なタイプの控除を見直すかという議論になりますからね。つまり個人単位でやるからいろいろな控除がくっついているだけですよ。だから、うやむやにしちゃうと全く次元が違っちゃいますから、がらっと局面が変わる。これも大きな議論ですが、議論してみたいと思っています。
〇記者
今、自民党なんかでN分N乗という際に彼らが議論しているのは、結局子育て支援の際に税額控除で行くのか、N分N乗で行くのかみたいな、選択肢的に…。
〇石会長
そういう意味はあるでしょう。要するに税額控除とおっしゃっているのは個人ベースを前提にした税額控除か、それとも個人ベースをやめてN分N乗という世帯でやるのかという選択。それは恐らく議論としてはあるのでしょう。どっちが有効で、かつ過去の、これまでの日本の経緯からいって、課税単位を一挙に個人ベースから世帯ベースに移すときの利害について、それは議論しなければいけないでしょう。ただ、税調は伝統的には個人ベースの方が良いと思っていますからね。そこを逆転するにはどれだけ議論をしなければいけないのか、これから議論が始まるところですからいろいろやってみたいと思います。
〇記者
そのN分N乗については今日の議論を聞いていても、かなり異論が税調の委員の中から強かったように思いますが。
〇石会長
異論が多いというのは、N分N乗で行くべきでないという意味ですか。
〇記者
だったように思いますけれども。
〇石会長
今日の議論だけでは、賛成した人の方が少ないとは思いますけれども、もう少しデータなり情報なり出してもらって、フランスがやっていることで、あれがどれだけの効果があるのか、どれだけの煩瑣なことをやるのか等々を踏まえないといけないので簡単には言えません。今日の段階だけではお聞きの通りの方向ではないかと思っています。
〇記者
金融税制なんですけれども、おっしゃったように今までの出されたもので、一体化と、税率の一体化か、損益通算の方向性と出ていると思うんですけど、今回議論するのは、それでいいかどうかということなのか、更にそこから踏み込んだような議論に発展する可能性はあるのか。
〇石会長
奥野小委員長に作ってもらった基本的な方向というのは、ある程度はっきりしているんですね。今ある様々な利子やキャピタルゲインも含めた金融所得を一括して、損益通算を認めて、そして歪み、ひずみをなくす意味で一律にしましょうという形で一つ括るわけですね。もう一つは、労働所得の方は労働所得で従来通りやりましょうという方向性でやっていきたいと思っていますが、ただご存じのように、まだ特例がありますのでね。残る作業はこれから金融所得を一体化したときに本当に資本所得まで行くのかどうかという議論が残っています。つまり建物・土地のキャピタルゲインはどうするかという問題。の方向に行くならね。これはまだ全く白紙ですね。ただ、とりあえずバラバラになって様々なひずみ・歪みを生んだり、中立性を阻害している金融所得の世界だけでとりあえずまとめていきたいという第一歩ですね。今日はとりあえず、従来からの方向を聞いて、それに対して強い異論がなかったということでしょうね。
〇記者
さっきの税額控除のところなんですけど、還付という話が今出てきていますけど、要するに、低所得者の引き切れない部分で、それを給付まで考えるということですか。
〇石会長
そういうこと。それまで考えているのが実は税額控除の世界なんですよ。そこで打ち切っちゃうか、それともオーバーフローというか、払っていない税金プラスアルファのところまで税を還付するかという議論は残りますよ。そういうのが大きいんですよ。
〇記者
給付という部分……。
〇石会長
そういうこと。だから歳出面との話と、手当みたいな話になるということですね。だから、そこはこれから大きな議論があるところだと思いますよ。児童手当なり、扶養手当なり、歳出面でやっているものをダブっているところをどうするのか等々の議論があるでしょうからね。それはやっぱりそう簡単にいろいろできないと思いますが、税額控除の世界においてはその問題が絶えず付いて回るということですね。
〇記者
現年課税なんですけれども、現年課税は去年も検討していくような話は書いていて、やる、やらないの意思ではなくて、できるか、できないの物理的な要素の方が大きいと思うんですけれども、会長はさっきみんなの同意が得られればやりたいという話を確か総会でもおっしゃっていたと思うんですが、そうすると書きぶりと言ったら変なんですけど、どういう…。
〇石会長
外堀は埋まったのかな。さっき言ったように、住民税を多く払う人の所得層が多くなってきたわけですよね。それで、多い方が現年課税でなくてね、過年度なんておかしいという話もありますし。ただ、ご存じのように国税の場合は、例えば会社にすれば別に問題なく払えるけど、要するに今度住民税の場合は各勤務先が各市町村に全部配るわけですよね、根っこで。これは大変な作業だと思いますよ。コンピューターのしっかりしているところならいいけどね。ただ、やってできなくはないだろうという印象は私は持ってますけどね。それにこれほど広いネットワークで個人住民税みたいなのをとっているのは日本だけじゃないかなという気もしますけどね。外国はどうなっているのかという話もちょっと調べてもらいます。
とりあえず今、事務局は当事者、地方自治体、あるいは源泉徴収義務者、会社の経理みたいなところを含め、大きい会社ならコンピューターが発達していますけど、小さいところはどうなるかということも含めて、フィージビリティースタディをやってもらっているんですね。だから、これをいつ頃できるか等々について、いずれまた報告してもらいたいと思います。工程表という議論も出てきましたから。どうしようもなく出来ないというところにぶつかれば、また考え直さなければいけないけど、乗り越えられる壁ではないかなと思っていますし、今回の三位一体で出てきた一つの副産物ではないにしても、方向性としては、前から言われている話でもありますので、議論してみたいと思っています。
(以上)