総会(第43回)・基礎問題小委員会(第52回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成18年5月9日(火)12:09~12:22
〇石会長
只今、会合が終わりました。そして、一通りこれまでやってきました財政全般に対する勉強会の色彩を持つ会合を終えたわけでありまして、これから次回以降個別の税目につきましての検討を始めたいと、このように考えております。
今日は地方財政と、それから財政運営一般についてのご議論をいただきまして、我々としては大変参考になったと思っております。
地方財政についてはお二人の方から、言うなれば地方の方から見た今の問題、国から見た今の問題、2つともあったのですが、見る目は違っても今どこに地方財政の問題があるかということにつきましては、的確なご指示をいただけたと、このように思っております。やはりミクロとマクロの乖離というのが今後の大きな論点として浮上してくるし、それから実際の政策論議に大きく響いてくるのかなという感じはいたします。
2番目の渡辺教授の非ケインジアン効果、あるいは財政規律の過去の実証にしても、これはそれなりの学問的な成果を踏まえている議論でありました。非常に興味深いお話だと思いますが、過去に日本はいろいろやってきて、それなりに苦労したなという点が今日税調のメンバーの方々にも伝わったのかなと、こう考えております。
問題は、例の日清・日露戦争の時期と第二次大戦の時期には債務残高の山がございましたが、このバブル崩壊後の拡張が、今後数年で急激に下降するのか等々の問題であろうかと思っておりまして、これはこれからの宿題ではないかと思います。歳出カットでやるのか、増税でやるのか、あるいはインフレでやるのか、その辺の様々なチョイスが今後あり得るんだろうと考えております。
そういうわけで、次回以降6月末までは議論として個別の税、所得税、法人税、国際課税、納番も含めた話、あるいは間接税等々ございます。それから歳出・歳入一体改革が6月の末に出ると思いますので、それを受けまして我々としても税制改革、それから財政再建等々を踏まえた中で関連する議論をしなければいけないと、このように考えております。今日は勉強会でございますので、これ以上私の方からあえて言及することはございません。
以上でございます。
〇記者
今日、地方財政の勉強会を一応やられたと思うんですけれども、以前石会長は歳出・歳入一体改革でギャップが出てきてから税のパーツをやるという話をされていたと思うんですが、地方財政といえばプライマリーバランスが元々黒字だという議論が出ると思うんですけども、それで今日こういう地方財政の運営状況とかの説明とか、あるいは議論をされて、じゃあ地方税については今後議論の方向性としてはどうなっていくのかというのを知りたいんですが。
例えば今日もインセンティブを啓発するような税制が必要とか、そういう話も出ていましたが、そうすると法定外税とかを積極的に認めていくとか、あるいは超過課税をした場合に地方財政計画の基準財政収入についてどう反映させていくかとか、そういった議論も含まれるのかどうか。
〇石会長
これまで地方税につきまして本格的に立ち入った議論というのは、それほど濃密にやられたかというとそうではございませんので、今のご質問に対してはこれからの議論だということになってしまうかと思います。
今日、地方財政をあえて出したのは、社会保障と地方財政、この二大項目が歳出削減の一番キーになるという理解で、社会保障につきましては2月、3月の段階でやりまして、その後に地方財政ということでございましたけれど、ちょっと事情があって今日になってしまったということです。
今日は地方税そのものの議論という認識ではやっておりません。ただ、土居さんが課税自主権についてお話されてましたので、結果的にはそういう議論に立ち入りましたけど、本格的な議論はこれからだというふうに私も考えております。特に税源移譲した後の税負担がどうなのか、階層別にどうなのかという辺りも大きな問題だと思いますので、これからデータを出してもらいまして、十分に議論をしたいと思ってます。
〇記者
6月の諮問会議で一体改革が出るまでのいわゆる税の議論、金曜日から始まる議論ですけれども、一応6月までは勉強会という形をとるということだと。
〇石会長
「勉強会」という意味では、財政一般につきまして、今までも勉強会をやってきました。今後はそうではなくて、これまで累次の答申を出してきましたよね。少子高齢化の話もあるし、あるべき税制の姿もあるし、金融所得一体化の問題もありますし、様々な論点で一応整理してきました。ただ、メンバーも一部変わったこともございますし、今後中期答申という形でまとめるとなると、過去に我々整理したのがこれでいいかという再検討、再検証、これは必要でしょう。そういう意味でこれから2か月の間、これまでの議論をふり返りつつ、どこにその強調点を置き、どこに問題を見いだすか等、再度検討してみたいと思っておりますので、これからの話として受け止めていただけたらと思いますけどね。そういう意味での「勉強会」です。
〇記者
中期答申に向けた議論なんですけれども、6月の諮問会議は選択肢あるいは工程表を出した後の税調の議論というものはどういうものになるんでしょうか。
〇石会長
とりあえず6月のいつ頃出るかわかりませんけど、多分後半でしょう。それまでに主要な国税、地方税の税目につきまして論点を整理しておく。それからその後の話は全く白紙なんですよ。実は7月に何やるか、8月はお休みになると思いますから、6月以降の状態はわかりません。中期答申というのは言うなれば3年ごとに出す卒業論文みたいなものですから、それは10年、15年先の税制のあるべき姿を整理するというのが我々に課されたテーマだと思いますから、ある意味では個別の税の論点をトータルで税制改革の中で位置づけるという作業があり、個別と総論とのうまい組み合わせ、そういう視点から税制全体、個別の問題点、それを整理したいと、このように考えてます。
〇記者
何点かあるんですけど、まず消費税で前回4月に会見されたときに消費税の話がここで出て、その後中川政調会長なんかがかなり石会長の言っていることに対して批判をしたりしていましたが、それに対してどういうふうに思われているか。
それと、もう一点が消費税自体が自民党税調の方で割と先送りしたいようなムードが強まってきていて、これが財政再建にどういう影響を与えるのかという懸念も強まっていると思うんですが、それについてはどういうふうに思われるか。その2点をお願いします。
〇石会長
消費税について、今、政治主導で動いてますよね、いろいろね。そういう意味では、政治家が、自民党税調も踏まえ、あるいは政調も踏まえて議論していることにつきまして、我々この一審議会の方からとやかく言う話でもない。それはそれで淡々と我々は自分たちの議論を進めるべきだと思ってますので、特に中川さんがどうこうしたということについては、特段私の方は意見ございません。
そういうトーンでいきたいと思いますので、5月、6月の我々の勉強会の中で当然のこと、間接税、消費税、その議論もある時期にしなければいけないと思ってますが、そのときに再度皆さんのご意見を聴いて、今後の我が国税制における消費税の位置づけ等々も議論になってくると思います。それまでどういう議論になるか。ある程度、これまでやってきましたことについて、再度それを確認するという作業、あるいは新しい使途を出さなきゃいけないかどうか、それはその段階で我々考えたいと思います。
〇記者
2点目の方の、自民党税調の方で何となく伊吹さんとか柳澤さんも含めて、消費税について来年度税制改正ではなくて、その先みたいな意見がどんどん出てきてますけれども、それについてはどんなふうに。
〇石会長
いや、だからそれにつきましても、5月、6月の段階ではいくつかある主要な個別税目の中の一つですよ。恐らく所得税、法人税あるいは消費税、資産課税等々の議論があるわけでありますから、みんな横との関係で議論を進めているわけで、消費税だけ取り出して今後どうするこうするという、そういう議論は我々としてはしないし、するべきでもないと思ってます。中期答申というのは日本の税制全体を見渡してどうだという議論をしますから、その中の1項目として出てくるということでしょうね。
〇記者
もう一点、地方税なんですけれども、今いろいろ地方税の法人税の部分の配分について見直そうじゃないかという機運が出てきてますけれども、その点についてどんなふうにお考えでしょうか。
〇石会長
おっしゃっていることは、法人事業税のところですか。一部外形標準課税を入れてやっておりますが、今日も2人の論者から地方の法人課税をどうすべきかという議論が出ました。これは日本の一つの特色かと思いますが、地方税として法人課税がどうあるべきかという議論をしなければいけないと思ってます。それは代わりの財源の問題もありますから、それこそなくしてしまえという議論なのか。今日土居さんがいみじくも、これ以上高めないという方向で議論してもらえないかということをおっしゃってました。これは土居さんのご意見だと思いますが、税調ではどういう議論になるのか、それは議論の中でおのずからにじみ出てくる問題だと思ってます。
その中で、恐らく法人事業税の再検討なり、法人課税全体について地方税がどうあるべきかという議論が恐らく表に出てくると思ってます。
〇記者
今日の土居さんのご説明の中で、交付税の法定率を土居さんとしては下げるというようなことも考えたらどうかという意見があったと思うんですが、法定率のあり方について会長はどうお考えですか。
〇石会長
土居さんのご意見は、法定5税そのものをいじるというよりは、今はそれを大分超えて借金してやってますよね。国や、いろいろなところから借りてきたりして。まずそこの問題を言っているんだと思いますよ。
それから持田さんの方も、法定5税の税率を上げるのかどうかわかりませんけど、基本的には法定5税の範囲の中でやるのが本質的な交付税の性格であるというご議論をしてます。
両者の間でどれだけ議論の違いがあるかどうかよくわかりませんけれども、5税そのものを直にいじくるというよりは、その周辺部分の問題が今大きな問題だと私自身は理解しておりますので、借金までしてやるかどうかという辺りが恐らくこれからの大きな争点だと思います。
〇記者
今の関連なんですけども、例えば将来消費税考えた場合に、今の現状で言えば地方消費税1%で、残りの交付税の部分だけを引き上げたとしても、現状の法定率のままだと、そのまま、また一定割合地方に行ってしまいますよね。そういう意味では、税調としては財政再建という観点で言えば歳入の面についての議論の中でその使途についての、例えばその一つに法定率が入ってくるんじゃないかと思うんですが、その辺はどうなのでしょうか。
〇石会長
恐らく最初3税でやって、それが2つ加わって5税になったという歴史的経緯もありますけどね。その辺の議論というのは1回、現状を維持するにしても議論してみなければいけないとは思ってます。特に消費税が将来税率アップになったときの分け方、この分け方につきましては、恐らく地方財政の現状、地方交付税の現状、あるいは税源移譲の後の話も踏まえて本格的にやらなければいけないかと思っておりますので、一つの大きなイシューだと思っております。
(以上)