総会(第42回)・基礎問題小委員会(第51回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成18年4月11日(火)15:40~15:56
〇石会長
今日の税調の総会と基礎問題小委員会、合同の会合が終わりました。今日は「歳出・歳入一体改革中間とりまとめ」に基づきまして議論しました。我々にとって大変勉強になったと思います。これに対して税調で今後どういう形で取り上げるか、個人的にはどういう見解を持ったかというあたり、二、三点まとめてご説明したいと思います。
従来、財政再建とか財政構造改革といっても、国の姿とリンクしない形での議論が非常に多かったと思います。従来、まさにそのとおりでした。同時に、国と地方がまた分離して、やっぱり国全体の姿と、国、地方の財政の姿が別個な領域でやっていたということです。財政というのは税収、歳出ともにマクロの方に影響しますから、その中で大きなフレームをつくってくれたということに関しましては、この歳出・歳入一体改革というのは、非常に大きな意義があると思います。今日、委員の中にもそういう評価をした人がいたと思いますが、そういう意味で私はこの種の議論が本格的になったかなと、大いに評価をいたしております。
ただ、フレームだけでありますから、このフレームの中をどういうふうにこれから具体化していくかというのが残された大きな問題ではないかと、このように思います。そういう意味で、議論の第一歩としては非常に有意義であったと思います。これが第一点。
第二点はですね、七つの改革の基本原則を出してもらいましたが、これが目標なのか手段なのかよくわかりませんが、少なくともそのプライマリーバランスを2011年までに均衡化する。それから、それ以降本格的にGDP対国の債務比率を減らしていく、そのためのプライマリーバランスの黒字化ですね、これを図るという目標がはっきり設定されたと思います。ただ、まだその先の時間軸がわかりませんけれども、言うなれば無限に財政が発散して持続不可能になるということではないという意味において、この試算は大いに意義があったと思っております。
そこで、多分基本原則は手段の方に入るのかなという気はいたしますけれども、この中身は今日も「原則の7」で、これはどういう形で税制改革を行うということかという議論もございましたけれども、今はあくまで広い意味でのマクロ的な視点から財政の姿にもタッチしているわけでありますから、まだ個々の部品について細かい議論をするというのは、どだい無理であろうと考えております。
第二点としては目的、目標と言うべきでしょうか。目標と手段の関係がとりあえずはっきりしてきたというのが、この中間とりまとめの非常に優れた点であると、このように考えております。
第三点は、さはさりながら、政策論としてはこれは「中間とりまとめ」でありますから、当然でありますが、まだ不十分です。「中間とりまとめ」という意味は、これからやるよ、あるいは、これまでやってきたところを示すわけでありますから、どうしても現時点において政策論が不十分になる。未成熟であるというコメントはよろしくないとは思いますが、今後に期待を込めて言うなら、個々の、例えば原則を7つ出しましたけど、この中にやっぱりもうちょっと踏み込んだ形で個々の政策面での対応を考える必要がある。これをこれから議論してもらって、そして6月に最終的な仕上がりがあるような形で出てくるのかなと、このように思ってます。
そういう意味で、まだ総論であります。また、税調もまだ各論に入っていないということもあって、それほど批判なり異なる見解が出てきておりませんけれども、総論賛成、各論反対にならないように、これからこの各論をじっくり詰めるというのが大きな役割になるのではないかと、このように考えております。
恐らく歳出・歳入一体改革というのは、ある意味で政府と与党とそれから各審議会、あるいはこの中央省庁、様々な面での、これまでてんでばらばらにやってたとおぼしきグループが、それなりに主体性を持って責任を持ってやるわけでありますから、それなりのことが期待できるかなというふうに考えております。これが今日の印象を三つにまとめたところでありまして、私は個人的に大いにこの歳出・歳入一体改革の方向には期待感を持ってこれから見ていきたいと考えております。
さて、我々の税調の方でございますが、ある意味ではこの前から言ってますように、歳入・歳出の大きなフレームが出た段階で、歳入改革の一翼を担うべく税制改革を進めなければいけないということだろうと考えております。次回は地方財政の部分につきまして、21日でございますが、議論を整理してもらいたいと思ってます。今日も基本原則にございましたように、国と地方の間の垣根がどうなっているか、これをどうするかというのは、要するにプライマリーバランスの改革も国と地方で違うという点も踏まえて、いろいろあるわけでありまして、これはこれからの議論としてぜひ押さえておかなきゃいけないという意味で、21日に地方財政等について有識者から話を聞きたいと思っています。ゴールデンウィーク明けは、個々の税目につきまして議論をしていこうと考えています。当面、最初はこれまでやったことの論点の整理、それから様々な基礎的な指標の整理ということだと思いますが、いずれにいたしましても6月の段階で歳出・歳入一体改革が出た後に急にというわけにもいきませんので、ある程度方向性が決まった段階で個々の税目の主要な論点を、連休明けから議論を始めていっても早くはない。かえって遅過ぎるぐらいではないかと思いますが、そういう作業を始めていきたいと、このように考えております。
一応、これらのことは6月、7月、議論いたしまして、9月にまとめたいという形で、9月の後半あたりを答申をまとめる一応のタイムリミットにしたいと思いますが、政治情勢がいろいろありますので、今からいついつまでにどうするということで、まとめるのはちょっと難しいかなという気がいたしております。これが現状であります。
今日の会議を経た後の私の論点は、以上であります。
〇記者
まず今日の議論でもいろいろありましたけれども、原則の7で新たな国民負担というところが出てきますけれども、その部分について石さんとしてどういうふうに評価されているのか、これがまず一点で。
この原則の7の中に、勤労世代への負担集中の回避という点があって、これは先程も議論になってましたけれども、この解釈について、この部分は所得税で、その次の部分は法人税だろうという話が出てましたが、ここで勤労世代の負担集中の回避というところは、去年も出てたサラリーマン増税みたいな部分とも重なってくるんだと思いますが、これは実際負担の集中の回避というのは可能なんでしょうか。
〇石会長
これはある意味ではまだ中間の報告であり、これからの議論だと何度も齊藤さんがお答えになってますように、中身について様々な選択肢、あるいは様々な解釈があっていいと思います。そういう意味で、新たな国民負担増というのは、恐らく税の方と社会保険料の方の引き上げというのは、やっぱり避けて通れないという判断基準を示されたんだと思いますし、それはマクロのフレーム自体から来ている話でもあります。つまり経済成長率、名目成長率以上に長期金利が上がるということから言えば、様々な試算がありましたように、歳入面で対応ゼロというわけにはいかないだろうと。その対応の仕方が、成長率とか金利とか、あるいは歳出カットの幅によって違うという点でありまして、これは全く今の段階では決めうちはできないだろうと思います。
そういう意味で、何らかの形で新たな国民負担増といったときに、この原則の7に書いてありますように、勤労世代の負担集中を回避するというような話のところで、一体どういう税目が有力になってくるか。所得税なのか、あるいは消費税なのか、はたまた資産税も絡むのか等々は、全くこれからの税調の議論の中で固めていくべきことだろうと思ってます。ゴールデンウィーク明けの議論として、まずは各委員の意見をとりあえず聞き、我々の中でディスカッションしていきたいと考えてますので、私が今個人的にどっちの方向で持っていくということは全くございません。
以上です。
〇記者
その印象として、その勤労世代の負担集中を回避というふうにありますけれども、それについては可能なんですか。
〇石会長
これ、「負担集中を回避」でしょう。だから、要するに勤労世代というのは、自分で所得を稼いで消費するわけですよね。そういう意味では、どんな税を取ればより重くなるかという、組み合わせいかんの話ですよね。だから、過度に集中を排除するのか、あるいはそこそこでいいのか、いろいろな組み合わせがありますから、わかりません。
わかりませんけど、恐らく必要な歳入・歳出のギャップであって、その中での税制の占めるギャップがあって、その中でしかるべき数字が出たときに、初めて所得税でやるのか、消費税でやるのか、その他の税でやるのかという議論が出てきますよね。そのときに、今言った勤労世代というのが念頭に挙がってきて、今、世代間の不公平感等々ございますから、そこで議論が出てくるので、負担集中という意味は負担ゼロという意味じゃないですよね。だから、「集中」というのもこれから議論になるんじゃないでしょうか。例の格差社会とか、あるいはジニ係数の問題を含めて、これから我々としても真剣に議論をしていった方がいいと思っています。
〇記者
最後にもう一点、今後のスケジュールの部分で、今回の歳出・歳入一体改革の方向性が出たところで、具体的に各税目を議論していきたいというお話がありましたけれども。
〇石会長
いや、その前から始めるんですよ。ゴールデンウィーク明けから。
〇記者
実際、その税調の議論をもっと歳出・歳入一体改革に反映してほしいとか、そういったことをやっていくお考えはないんでしょうか。
〇石会長
それは自民党税調はそういうお考えがあって、例年より早めてやってると思いますけれども、我々にとって歳出・歳入一体改革というのは、個々の税目には来ない話なんですよ。恐らく大きなくくりで議論されてますから、我々の税調の中の議論として、まさに税制の細かい、細部にわたった議論をこの歳出・歳入一体改革ではまだできない。それは別な次元での話ですからね。我々が参画する必要はないし、参画する余地もない。ある程度条件を整備してから、その段階で我々なりの視点を踏まえつつ歳出・歳入一体改革の中での税制改革を、個々の税の、例えば公平、中立、簡素なんていう、改めて言うまでもない、そういう原則から我が国税制のあるべき姿、中長期的な視点からそういう議論ができるわけですよ。だから6月の段階で、我々として積極的にそういう話を仕掛けるというのは、少なくとも私個人的にはありません。
〇記者
一つだけ伺いたいんですけれども、消費税を社会保障目的税とすることについての考えを改めて聞かせてください。
〇石会長
何年前になりますか。既に税調のしかるべき答申の中で福祉目的税があまり好ましくないと、断定はしてたか、留保をつけて書いたか定かではありませんが、税調の基本的スタンスは出ております。その理由はいくつかあって、特定の財源に特定の支出項目をあてると資源の不効率な無駄遣いが起きるとか、あるいはガソリン税と道路特定財源のようにつながりですね。専門用語で言うとリンケージと言いますが、その連結の程度が目的税にしたときの消費税と福祉ではどうか等々述べております。その基本的な原則を、今後どういう格好で話が進むかわかりませんけれども、変える必要があるのかどうか。あるいは、再度見直す必要があるかというあたりが今後の税調の議論になると、このように思っています。恐らく税調の中でもあくまで一般財源でやるという意見もあるかと思います。その辺は、税調のメンバーの中でこれから外野がいろいろ変わってきたときには、何か出てくるのかどうかわかりませんけれども、それは議論しようと思います。
とりあえずこれまでは我々の意見ははっきりと整理されていると思っております。これまでは、否定的な話ですよね、我々としては。
〇記者
竹中総務大臣が消費税の引き上げ幅について3%程度で十分だというふうにおっしゃってます。一体改革のその議論の前提でまだいろいろ意見の一致見てないわけですけれども、石会長は3%で十分だという発言に対してはどう思われますか。
〇石会長
どういう時間軸で考えられているか知りませんけど。とりあえず3%というのは何か意味があるかもしれません。10年も20年も今後ずっと長い期間3%でいいよという話ならば、これから少子高齢化がどんどん進むし、それからGDPの対債務比をだんだん減らしていこうといった、本格的なプライマリーバランスの黒字化やっていくとかという、もっともっと様々な要因が将来予想されるわけですよね。そこで、今の段階で3%でいいということ自体は、ごくごく短期的な視点に立っての議論じゃないかと思います。それが今の時点でどれだけ意味があるか、我々は中長期的な視点でもの考えてますから、その議論とはちょっとまた違った局面の議論をしなければいけないと思ってます。
だから、ご本人の言ってる3%の前提条件ですね。これがよくわかりませんので、コメントのしようがありません。未来永劫に3%で留まるということは、日本の様々な経済成長なり長期金利なり、あるいは少子高齢化等々を考えたときにはあり得ないでしょう。要するに、3%というのはもっとかなり直近ですね、次の税制改革をめがけてというような話なのかなというふうに理解します。
〇記者
中長期では、前の報告にもあったけど、2桁であるというお考えだというふうに。
〇石会長
税調としては既にそう書いてありますね。別に訂正する必要もないし、ただ、その中長期の意味が7、8年先だか10年先か15年先かはわかりません。今の段階においては、これは誰もわからないと思います。ただ、1年先というようなごく短期的な話じゃないということだけは言えると思います。
〇記者
ちょっと議論の中で、税収弾性値の話があったと思うんですけれども、資料では平成16年度は10以上ということになってます。それで、説明の中で法人税は増えやすいということで説明されていたかと思うんですけれども、今後将来の財政収支の改善を目指す上でどれぐらいが適当だと思われますか。
〇石会長
今日、永長総務課長がご説明されてますように、年々の歳入見積もりというのは、弾性値を使ってないんですよ。個々の課税、個別の税源を積み上げて計算します。トータルとしてはそんなにぶれない形で出てくるだろうと思います。弾性値は10年とか15年とかという、ある意味で長い間の平均的な税制を考えているわけで、それを将来に伸ばしましょうというだけの話でありますから、僕はこれはどれをとっても、例えば1.5がいいとか1.2がいいとか1.1とか決め手はないと思いますよ。それで、今10近くまで跳ね上がった弾性値というのは、まさに法人税が要因。法人の業績というのはご存じのようにすごく可変的、変動的ですから、比例税率であれ、あっちがバーンと上がるとああなる。でも、非常に異常値ですね。
そういう意味で、弾性値の議論というのはまず異常値を除いたある平均的な値をとって、かつこれも控えめに見るべきでしょう。そういう意味では、1.1が低いという人がいても、1.2ぐらいが精一杯だと思います。私もそう思いますね。結局弾性値を上げている要因というのは、法人税の可変的なところと、所得税の累進税率のところだけですからね。その二つのウエートが今後どんどん縮まってくることを考えれば、仮に弾性値を高めにして自然増収を大いに期待して、名目成長を高めるという時期があっても、安定した税源は得られませんね。安定した税源を得るという意味では、弾性値も考え得るべき中で一番控えめなもの、プルーデントなものをとるべきではないかと思います。僕は1.1ぐらいでやっても安全だと思いますけどね。1.5ぐらいでやって、あとでしっぺがえしが来た方が怖いですよ。そう思います。
(以上)