基礎問題小委員会(第45回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成17年11月11日(金)17:12~17:33
〇石会長
ただいま基礎問題小委員会終わりました。今日は、お手元に資料が配られてますように、四つの大きなテーマがありました。法人税等、納税環境整備、酒税、それから固定資産税と、こういう順番でやってまいりました。基本的な方向についてこれまでの議論を延長するということもあり、あまり議論が出なかったものもあります。固定資産税はそういう意味では、今日時間切れもあってあまり詰めておりませんで、説明を聞いただけで終わったという点もありますので、私の説明では触れないことにいたします。議論が交わされませんでした。
法人税のほうの資料をちょっとご覧いただきたいんですが、幾つか新しい要素の内容の資料が出ておりますが、やはり我々として一番議論しなければいけないのは、例の設備投資減税とIT減税です。研究開発と設備投資の中のIT関係の減税の期限切れが3月に来ますので、それをどうするかということですね。
これからご説明いたしますが、税調は元来、租税特別措置についてはかなり限定的で、有効期限まではしようがないけれども、それが切れたら廃止しましょうという意見一致でございます。今回も、原則的に言えば、税調の基礎小の意見としては廃止と。その理由は、幾つか資料に出ておりますが、設備投資減税にしてもIT減税にしても、景気という面から言えば使命・役割は終わったんではないか、これ以上税で支える必要はないんではないかということですね。それが一番大きな理由。それから、租特というのは、期限が来たら極力廃止しましょうというのが元来の税調の意見。この二つが大きな理由であります。ただし、新しく「国際競争力」という視点がどうしても必要ならば、一旦廃止した後に、すぐ来年というわけじゃありませんが、そういう視点から別途、IT・設備投資減税等について配慮してもいいんじゃないかという意見が二、三追加されたということであります。いずれにしても、景気と、それから現に行われております設備投資、企業のキャシッシュフロー等々から見て、税制でこれ以上支える必要はないだろうと。これについては意見が一致した、このように考えております。
これが一番大きな項目であったんですが、法人税に関しましては、あと二、三追加すべきことがあるとすれば、新会社法によるところの税制、ここで優先株等々の税制の仕組みを早めに整理したほういいんじゃないかとか、それから「法人成り」という形で企業をつくり給与所得控除を引いているというような意味での役員報酬の問題、役員給与の新しいコストとして認める等々の議論と引っかけた意見があったということですね。それから留保金課税につきましては、期限切れが来るというものについていろいろなご意見がございました。それについても、期限切れということならばそういうことだろうということでありますが、いろいろ微妙な問題もあって、文章を書くときにはこれを少し整理したいということであります。
あと追加的な議論としては、生損保控除等々について、前から廃止と言っているけれども、今回所得税の審議ではございませんが、これをもう一回どういう形で議論するかということにつきまして、廃止するべきという強い意見が出たと。それに対して、また新しい高齢化社会に備えて、政府のやれないことをこういう控除でやるという意味において、年金の改良とかなんかと絡めた新しい装いで出直すべきだという意見もありまして、これはまあ従来の意見だったと思います。
そういうわけでかなりの時間は設備投資並びに研究開発投資減税の全廃に向けて議論いたしました。とりあえずこれは一旦切るということで、税調としては意見は集約できたように思います。後で申し上げますが、来週火曜日に総会を開きます。そういう意味で、また総会で議論が変わってくるかどうかわかりませんが、今日の段階では、基礎小ではそういうことで意見が一致したということであります。
それから納税環境整備、ここでやっぱり一番大きい問題は公示制度の問題でありまして、これは基本的に大多数の委員は廃止と。ただ、今回所得税のみならず相続税、贈与税と法人税と三つ出しておりまして、これを一括して廃止の方向でいいだろうというのが多数の意見でございますが、法人税だけ残してはどうかというご意見とか、そもそも公示制度の意義があるんだから、これをなくした後の弊害も考えたらどうかというようなご意見が散発的に出てきました。それから、個人情報保護の問題がこの公示制度に引っかけて議論になっていますが、個人情報保護法にどうも過度に使用されている面もあるんじゃないかというようなご意見もございました。あとは相続税の物納を活用しようということについては、その方向は流れとしていいだろうという形で、お一人しか意見がなかったですが、大体皆さんもそういう形で考えられているんだろうと思います。
酒税のほうですが、これは新しい資料、国際比較かなんかを出しております。資料の12ページにある、同種・同等のものの税負担を近づけようという、この間の答申で書きました方向について、基本的にこれでいくということなんですが、問題は、税負担格差の是正というときの税負担は、何についてのものか。資料の4ページに出てますが、要するに価格、小売価格に対する税負担で見るのか、それともアルコール度数あたりのキロリットルで見るのか等々、話が随分違ってくるんです。そういう意味で、一言で税負担を均等化しようと言っても、そこはなかなか難しい議論があって、今日それをどうこうしようという話を決着つけることはできませんし、技術的にかなりいろんな詰めをしなきゃいけない。元来価格当たりの税負担でやったのは、何年か前のWTOで、要するにウィスキーと焼酎について、キロリットル当たりが結局、酒類の負担を決める決め手になるんじゃないかという意見が大分有力になったというご紹介もございました。いずれにいたしましても、この間書きました同種・同等のものの税負担を均等化しようという方向は、一般的に言えば承認されたと思いますが、基礎小ではね。あと具体的に仕込むのはまだまだいろんな意味で技術的に困難な面があるし、それから時間をかけてやらなきゃいけないというご意見も片やありました。今日の段階では、この酒税の具体的な改革の方向につきましては、全体としてどっちの方向にいくべきか決めかねているということであります。
先ほど申し上げました固定資産税につきましては、3年前のやり方等々につきましてご説明があって、平成18年度もその方向でやっていくということにつきまして、特段ご意見、ご反対もなかったので、従来どおりの線でいくということで固定資産税については意見が集約された、このように考えております。
以上、今まで議論してきたのを概略まとめますと以上でございます。
〇記者
法人税のITと研究開発投資減税なんですが、意見として出た、新しく国際競争力の視点が必要なら追加してもいいのではないかということは、あくまでも意見として…。
〇石会長
はい。要するに国際競争力云々はまた別な視点の話であろうと。今回、期限がくるものの大きなものは景気対策でやったわけですから、景気等々を見れば、もうこれ以上税制で支える必要はないだろうと。ただ、来年度ということではなくて少し長めで見てね、国際競争力云々という問題が新たに登場してくれば、また別の次元の話として、新しい租税特別措置でやるんでしょうけど、議論はしなきゃいかんかなという問題提起がありました。それは一、二の方からあったというふうに考えております。そのときも、やはりITの守備範囲をもうちょっと縮めるとか、幅も縮減しながら、特定の業態、製品についてやるべきというご意見だったと思います。だから、国際競争力云々で新しくやるということは、元来の租特は極力切れというのが我々の主張でありますから、その視点の中で例外的なことがないかなという問題提起だというふうに受けとめました。
〇記者
小委員会としては、あくまでも廃止ということで一致したと。
〇石会長
そうですね、基礎小としてはね。
〇記者
あと酒の税負担の格差の是正なんですが、具体的な方法については踏み込まれなかったということなんですが、これは実際にこの形で提言として盛り込まれるのかどうかは、総会を経てということですが、その後の具体策についてはどこで議論するのでしょうか。
〇石会長
例えば10品目あるものを幾つにするとか、その中でどういうグループ分けするとか、その中でまた税負担格差をどうするかというのは大問題であるというふうに我々は考えております。今おそらくメーカー、業界のほうでいろいろ検討、ヒアリングもしていると聞いておりまして、そういうものを踏まえて議論しなきゃいけない面もあって、今回、具体化に向けて思い切ったことがどこまで書き込めるかは、文章をつくってから議論したいと思います。12ページに出ております昨年度のものは、その方向性が二、三行でございますけれども、それに何かつけ加えるかどうかはこれから議論いたします。
書くとしたら、今の基本的な方向だけで、これらの意見の集約であるということですね。聞けば聞くほど大変な話のようです。
〇記者
法人税の今あるものについては打ち切りということなんですけれども…。
〇石会長
法人税って、設備投資減税とIT減税のところですか。
〇記者
ITについて。新しい減税措置を、じゃあかわりに入れるかということについてどう思うかと。あと、ITと研究開発自体は今回は期限切れとなる法人減税の半分ですけれども、ここある、例えば留保金課税等々、ほかの減税措置についてはどういうお考えか。
〇石会長
留保金課税って、法人税のところですね。これはご意見が幾つかございましたけど、ほかの租特と同じ扱いで、期限が来れば当然見直すのが筋ではないかということが一つですね。それから、例の研究開発減税は上積み分のところの問題、設備投資は根っこからいろいろ問題があるんですが、これはとりあえず一旦整理して、先ほど幹事のほうからもご質問が出ましたけど、仮に何かやるなら、国際競争力が一つのテーマになるだろう。ただ、これは我々の税調の主張から言いますと、新たな租特をつくるという格好になるなら、かなり議論をしなきゃいかんかなというふうに考えてます。だから、来年度すぐという話ではないですね、この別な新種の投資減税というのが組めるかどうかは。
〇記者
確認ですけれども、これは入ったときの、議論は本法を下げるか、こちらの減税をやるかという議論があってですね。
〇石会長
それは諮問会議との間で、どっちをやるかという議論がありましたね。
〇記者
ええ、ありました。その結果、こっちの租特のほうが入ったという経緯もありますよね。それから、これが上がると実効税率そのものがどうなのかという議論がありますけれども、そこら辺の問題を会長自体はどう…。
〇石会長
法人税の国際比較が出ておりますが、日本の法人税の負担というのが国際的に見て特段高いというわけでない現状においてですね、国際競争力云々の議論もございますけれども、基本税率の引き下げ云々は他の国の動向、例えばアメリカとかドイツ…ドイツは大分下げましたからアメリカですか、その辺とにらみ合わせて議論しなきゃいけないと思います。ただ、今その状態ではありませんから、今回は基本税率ですか、先の議論ということで、まだ我々の問題意識もできておりません。
〇記者
先ほどのお酒の税なんですが、さっきの会長のお話しぶりからすると、答申、今月下旬にあるわけですが、時間切れということになるのでしょうか。
〇石会長
いや、時間切れというか、ここに書いてある問題意識は極めて鮮明であります。例えば10もあるのはあり過ぎるから、それをとりあえず、半分かそれ以下ぐらいにくくっていくというのが一つです。ただ実際に、そうは言っても、どこのカテゴリーにどれが入るかという技術的な問題を踏まえてですね、かなり時間をとって調整しなきゃいかんだろうということで、そこまで書き込めないということです。だから、簡素化して同種・同等のものは極力均等にするというところは従来どおりの話でありますから、そこからあまり進んでないという意味では時間切れかもしれません。ただ、やる方向ははっきりしてます。それで、今日も議論が出たんですけど、あるターゲットを決めて、それについて時間をかけてやるのか、一挙にできればいいんだろうけど、いろいろ業界がありますから、その辺は一挙に、一網打尽的な解決は難しかろうというような議論が今日の主流だったということです。
〇記者
その関連なんですが、酒税で「第三のビール」がどうなるかというのが注目されてるんですが、それに関してのお考えと、仮に「第三のビール」を増税したときに、「第四のビール」といいますか、類似品が今後出てくる可能性について、税の部分で何か予防的なものが必要だというお考えか。
〇石会長
ですから、「第三のビール」そのものを取り上げて、これをビールという世界の中で本体のビールと一緒にするか等々の個別な、まあ言葉は悪いけども、狙い撃ち的なことはするということではない。それについては何ら意見はなく、つまりそれをしようというご意見は出てなかったということです。問題は、また第四、第五、第六のビールなんかが出てくるのかもしれないけども、これは私個人的には、今の酒税の持っている中立性の原則を目指すような意味で、課税の中立性が達せられず、ゆがみ・ひずみが出てるわけであります。長い目で見て、それを是正するような方向で議論するということはあり得べしでしょう。それがこの間書いた同種・同等でくくって、税負担をなるべく近づけるということだと思います。ただ、その具体化に当たっては、まだこれからかなり慎重に、かつ時間をかけないとだめだろうというふうな印象を持ってます。
〇記者
今回、二回やって、そうすると定率を廃止して、今回法人税も打ち切るということで、来年度答申では所得税と法人税の両方が上がることになりますよね。片や来年の議論を見ると、今度は消費税の引き上げ論議が控えてます。そういう中で、谷垣さんは消費税論議をかなり言ってますけれども、こうした増税に対して非常に内外から批判的な、抵抗勢力だとして税調を批判してるとおぼしき発言もありました。歳出削減を優先させるのか、それとも増税をやるのかという議論が延々繰り返されてますけど、そことの歳出削減とのバランス、あるいはそういった論議に対して会長としてはどうお考えなのかを。
〇石会長
「形を変えた抵抗勢力」だということを耳にしました。しかし、まあある意味では非常に失礼な話ですよね。我々税調の、まあ審議会の会長というのはある意味でその審議会の代表者で、メンバーのいろんな人の意見をくみ上げて議論してるわけであります。そういう批判は税調という審議会全体に来る話だろうと思ってます。ただ、誤解されてるのは、税調は増税ありきだということで決めつけて、それでなんかスケープゴード的になんかわあわあ言われてる面もあるんですが、累次の答申読んでいただくとおわかりのように、我々、一つもそんなこと言ってません。総会を傍聴されたことのある方は多いと思いますが、絶えず税調のメンバーの方々は、増税の前提条件として歳出カット、行革が絶対必要であるということを繰り返し言われております。歳出削減を無視して、すぐ増税に飛びつくという、つまり増税ありきというような言われ方をするとですね、税調全体に対する責任もありますから、私は訂正しておかなきゃいけないと、このように考えております。
それから、歳出削減というのを叫んでるのは当然の話でありますから、歳出削減の中身について、何をどれだけの規模でいつごろまでにやるか。それがないと増税できないよというところの討論がないと、国民はかえって迷うんじゃないですかね。また、少子・高齢化で負担を少し増やす、あるいは増やしても現状の福祉水準を守ってくれという声は結構強いわけですよね、若い人には。そういう点から言うと、歳出カットをするまで増税というのは議論もしてはいけないというのも、ちょっと困るのではないでしょうか。そういう意味で、僕はこの際、議論と実施というのは、使い分けてもいいのではないかと、このように考えてます。
それからまああえて、余計なことかもしれないけど、審議会のメンバーあるいは会長を含めて、抵抗勢力なんて言われても、我々、抵抗して守るべきものは何もないわけです。既得権益があるわけでもないし、ある制度を守るわけでもないからね。したがって、皆さんこの国は大変なんだろう、赤字どうなるか、あるいは少子・高齢化をどうしようかという、まさにそういう議論をしてるわけです。まさに滅私奉公ですよ。なんか抵抗勢力的なフレーズで、一網打尽に批判されるというのは、税調を代表する身としてはですね、これはある面ではけしからんと思いますね。
以上です。
(以上)