基礎問題小委員会(第44回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成17年11月8日(火)16:06~16:32

石会長

今日から基礎小を立ち上げまして、年度改正の最初の議論を取り交わしてもらいました。今日、三つテーマがありまして、個人所得課税、国際課税、そして環境税・特定財源、この三つのグループに分けまして今まで議論をしてまいりました。資料はお手元にいっていると思いますので後ほどご覧いただきたいと思いますが、その中でどんな議論があったかを若干ご紹介いたします。

個人所得課税につきましては、これまで十分に議論してきましたので、再度新しい面ということではなくて、従来議論を取り交わしたものを、過去の答申を参照しながら議論を繰り返したという面が多いと思います。

税源移譲につきましては、たしか個人所得課税の9ページ目に表が出ていると思いますが、これは前にも示しました図であります。既にイメージがわいていると思いますが、住民税を10%に、つまり13を10に下げ、5を10に上げるという形でフラット化した後、3兆円の財源を国税のほうから持ってくる。今言った5%を10%に上げることによる財源、そして13から10に下げるところは、これは減税財源になってきますけれども、これと、それから国税と地方税の課税最低限のでこぼこがありますから、そこで低所得者層のために税額控除という形で増税にならないようにしようというものに財源を使うという形でほぼ3兆円、仮に補助金の整理等々で出てくれば、これに対応するという形の制度設計を今日、再確認したわけであります。

課税最低限を国税と地方税で性格上もう一回見直してはどうかといったような議論もございましたけど、今回は、一応3兆円という税源移譲をきっちり行うということに第一義的な目標を置きまして、所得控除の見直し、あるいは課税最低限の調整は将来の課題にするという形で皆さん合意に達しました。

それから定率減税につきましては、昨年と同じように、ここにいろいろ表が出てございます。景気がどうなったかということにつきまして、事務局からご用意いただきました景気指標、これは前回の税調ではなく、今日は新しい資料でしたが、幾つか出ております。それで昨年の今頃議論した、来年1月から前半半分を廃止するということにした定率減税の後半部分を議論しているわけであります。景気情勢は足元としては今のほうがいいであろうということで、景気の問題は昨年より好転している。ただ、何といっても「いざなぎ景気」を超えるような長い長い景気回復がずっと続くかどうかということを心配される方もありまして、まあ再度行うときには、立ち止まってしかるべきところで景気情勢を議論しなきゃいけないないんじゃないか、まあそういう形でご提案がございました。そういう意味で定率減税、あるいは税源移譲につきましては、これまでの議論を再度復習したということだと思います。

それから国際課税でありますが、これは1冊、冊子がございますが、かなりテクニカルな話でございます。はじめに最近の租税条約として日本とイギリス、日本とインドで取り交わされた租税条約の説明がありました。これはご報告でありますが、その後、いろんな国際上の慣行に従いまして情報を交換したり等々するときに、国内法の不備があり、これがどうもまずいんじゃないかという意味で、犯則調査等々で国内法を完備したいといったあたりが一番大きな議論ではなかったかと思います。国際課税の専門家のコメントがございましたが、今回ご提案いただいたものについては、大変よいご提案であるという形で、当面の問題あるいは将来の問題としてこの方向でいけという議論がございました。

それから環境税・特定財源の話でございますが、時間の半分近くはこれに費やされました。今申し上げた前の二つのテーマは、前にやってたこと、あるいはかなり特殊な領域の議論であったということもございまして、この後半の環境税と特定財源、この二つで時間を使いました。

環境税でありますが、お手元に資料がございますように、環境省案、これは10月25日に公になされましたが、これを具体的にご説明いただきました。まあ昨年との比較においてほとんど変わらないんですが、一応出されたものをどう理解するかということにつきまして、何人かの委員からもコメントがございました。見てご覧いただけますように、昨年と同じように、環境税の持つ価格による抑制効果に期待するというよりは、財源を使って、言うなれば地球温暖化対策をしようという意味で、財源調達型の議論になってますよね。それに対して当然、3,000億円程度なら単独で財源を持ってきたらいいじゃないかという議論もあり、それからあとの議論と引っ掛かりますが、道路特定財源が今度一般財源化されたときに、こちらの環境税が目的としている、言うなれば環境対策に持ってくるということもあり得るじゃないかという議論ですね。それから、本四架橋が来年度なくなってオーバーフローの問題が出てくるわけでありますが、その問題をいつまでもほっておくのは非常に問題であると。来年度から6,000億円出てくるじゃないか、これをちゃんと政治的に処理すべきであるというご提案もございました。それからやっぱり行き着くところは補助金を使うよりは、もう少し本来的な環境税の性格をきっちり議論する必要があるだろうと。つまり、補助金を使うということは汚染者負担原則に反するわけでありまして、それよりは環境税の本来の役割を果たせるような、きっちりとした議論が必要ではないかという話が出ました。ただ、今回はおそらくそのきっちりとした議論等々の時間的余裕はないと思いますので、道路特定財源絡みでどういうことが出てくるかというあたりを少し整理するのかなと思ってます。

それから環境省案は、やにわに目的税化あるいは特定財源化しないで、一応一般財源という形で出しているわけであります。本来、一般財源というのは社会保障に回してもいいんですよね。そういうもっと幅の広い税収の使途面の議論もあっていいんじゃないかという意見があったり、今回かなり先を見通した形で、京都議定書の発効とも絡めて議論を深めるべきであるという意見があったわけであります。

それから道路特定財源ですが、これももう累年、税調で書いておりまして、一般財源化も含め見直すべきということは今回の資料にも整理されておりますので、今さらもう一回ご説明はいたしません。なされた議論としては、単なる道路特会、道路特定財源というよりは、この見出しにもございますように、特定財源というのは、空港絡み、あるいはその他にもありますね。主な特定財源一覧というのは資料の特定財源関係の1ページに出ておりますが、やはり税調としては、特定財源というのはそもそも資源の非効率化を生みますし、資源配分上よろしくないという意味で、元来一般財源を主張している手前、この1ページの表にございますように、道路特定財源はもとより、航空機燃料税が空港財源に使われたり、あるいは牛肉等関税が肉用子牛対策に使われたり、あるいは電源開発促進税が電源立地等に使われたりというようなことは、確かに昔はそれなりの意義があったかもしれないけど、もう見直すべきではないか。そういう意味で道路特定財源に限定せず、この特定財源の問題は特会のこれまでのさまざまな議論が財制審等もあると思いますが、それと呼応して議論すべきであるという形で今回、論点を整理したという形であります。

いずれにいたしましても、特定財源を一般財源化するということを通じまして、やはり財政再建ということに役立てるという方向を模索すべきではないかということで意見が一致したというふうに思います。

今週は、今三つ取り上げましたが、第二回目、この金曜日に開催いたしまして、法人課税、酒税、それと固定資産税、この三つのテーマを取り上げて議論したいと考えております。二回やりますので、来週の火曜日には総会をやりまして、この二回議論いたしましたことを、税調としてみんなのご意見を聞いてまとめたいと考えています。今日のお話はそういうわけで、税調全体というようりは基礎問題小委員会の意見集約でありますので、総会に諮ったうえで総会としての議論をまとめたいということであります。

以上です。

記者

何点か質問させていただきます。まず定率減税についてなんですけれども、先ほど今までの整理していたことを確認していたというご紹介があったんですが、委員の方からの意見の中で、再度行うときには立ち止まって議論すべきだというお話もあったとご説明されてましたが、その場合、何か経済の状況に対応して見直すような条項を廃止すべきであるという見解にふすお考えなのか、また…。

石会長

いや、それはございません。足元の景気も、今年はいいんですよね。昨年の秋よりね。そういう意味で、景気に対しては心配しなくていいんだけど、あえてその方お一人の発言ですが、「いざなぎ景気」の、50数カ月は来年、あるいは再来年になると超えるじゃないか、そのときにやっぱり景気というものについてそれなりの配慮があってもいいと。しかし何か条項を入れたりするべきというほどの積極的なご発言ではございません。

記者

次に、道路特定財源の見直しについて伺います。小泉首相が北側国土交通大臣に対して、一般財源化と税率の維持を前提に見直しの方針を年内に策定し、具体的な案は来年の税制の抜本的改革に合わせて取りまとめるように指示されたそうです。今まで税調で一般財源化と税率は下げるべきでないということをおっしゃってますけれども、一般財源化する場合は税率を下げるべきだという指摘がよくなされますが、その税率の維持を納税者に対してどのように説明していくお考えなのか、会長の考えを聞かせて下さい。

石会長

それにつきまして、一人、二人、ご発言がございましたが、特定財源を外した際に、言うなれば減税の議論が出てきたとき、我々、過去の答申では下げるべきじゃないと書いてきています。その一番大きい理由は環境問題ですよ。そうでなくても今は化石性燃料等々の排出抑制をしようというような環境税や環境問題を議論しているわけでありまして、今下げてしまっては、京都議定書に反して地球温暖化促進になっちゃいますから、それは議論として下げるべきではない。ただ、暫定税率の扱い方をどうするかは、これからかなり政治的な折衝があると思ってますので、我々は従来書いております通り、一般財源化を検討し、負担を戻さないといったような形で議論していく従来の方法をそのまま踏襲するという議論になってくると思ってます。

記者

道路特定財源の充てられている税目を一般財源化していく場合に、会長はどの税目が適当だというお考えはあるでしょうか。

石会長

揮発油税とか、石油ガス税、自動車重量税とかっていう話ですか。今日、私個人というよりは、自動車重量税は別に法案を改正してやるべきでもないし、自動車重量税について道路建設にあてすぎじゃないかというニュアンスの質問はございましたし、それから揮発油税についてもですね、目的税という形で税法上書かれてるわけじゃないんですね。まあそういう意味で、これまで歳出を特定化するというのは、言うなれば税の問題というよりは歳出面の問題なんですね。まあそれをしっかりとやればできる話でありますので、一応国税については三つの揮発油税、石油ガス税、自動車重量税について区別なくですね、一般財源化でいいと思ってます、個人的には。

記者

先ほどの、最初の税額控除と課税最低限のところは今後の課題にするというお話だったんですけど、税源移譲で所得税と住民税、税率を触りますとね、低所得者のところを、まあ低・中所得ですか。一部増税になっちゃうということも、まあやむを得ないといいますかね、しばらくの間は。そういうことでしょうか。

石会長

まだ3兆円規模云々もわかってないんですよね。それで粗々の設計として、10%でフラット化して、国税の税率はそのまま残しておくという部分と、あと所要の財源をどう割り当てるかということはかなり技術的な問題が残ってるんですね。これについては、まだ税源移譲額がわかってないという形で、今日はそれほど細かい議論はしてません。ただ、270万円と325万円、要するに国税と地方税、違いますから、そこの低所得者のほうについては負担増にならないように、低所得者対策として調整をするということについては、皆さんそうだなという形で合意に達していると思います。その程度ですね、今日はまだ。

記者

確認なんですが、定率減税と税源移譲については今までの答申の再確認ということで、それについて特に異論がなかったということでよろしいわけですね。

石会長

基礎小としてはね。基礎小としては、従来の議論の延長で今日は幾つか細かい議論があったと思いますが、大きく基本線を覆すことはないというふうに私は考えてます。

記者

一応確認ですが、廃止で一致しているということと、税源移譲については低所得者についての…

石会長

配慮をしてね。

記者

5%が10%になる部分について税額控除をつけて負担を変えないということで。

石会長

要するに所得税を払ってなくて住民税を払ってる人の救済ですね。

記者

要するに5%から10%になったときに。

石会長

なったときに、ええ、それはやはり所得税を減税してもらわないのに住民税増税されてはですね、負担増が出ますんで、その調整は必要だろうという形で意見は一致しました。

記者

もう一つ、先ほどおっしゃった道路特定財源以外にほかの特会についても、一般財源化することで一致したというのは、ほかの特定財源というか特別会計についてもということでいいわけですか。

石会長

特別会計の議論は財制審でも進んでますしね、それから経済財政諮問会議でも進んでますしね、いろいろなところで進んでますよね。我々、財源という形でね、それに対して幾つか問題意識もあるし関心もあるんですけど、要するに幾つか既にある空港、あるいは牛肉対策、電発等々の道路以外のところにある特定財源、これについてもやっぱり一般財源化するんじゃないかという形で今日は強い意見が出されてですね、それについて特に強い反論もなかったですし、私自身ももう特定財源というのは、ある役割が終われば、当然一般財源化してしかるべき他の使途に充てるべきだと思ってますんで、その点は皆さん意見が一致してると思います。

記者

今日の主要な議題には消費税、今回挙がっていないんですが、新しい新内閣、第3次小泉内閣になって消費税の議論、既に活発化してきていますが、委員の中から消費税に関して何か言及はあったのかということについてお伺いします。

石会長

今日は全くありません。というのは、三つのテーマをやるんで精一杯で、時間的余裕もなく、脳細胞のほうもそっちにいかなかったということでしょうね。いずれ、次なるテーマのときに出てくるかもしれませんが、今回は消費税についてはございません。

記者

じゃあ石会長個人的にお伺いしたいんですが、谷垣財務大臣は2007年の通常国会で税率を書いて法案を出したいということで明言をされて、それに対して自民党の政調会長なり幹事長、いろんなところから集中砲火を今浴びてる形なんですが、石会長としてはこの2007年というのをどう思ってますか。

石会長

あれはですね、与党税調が、2年前かなんかに言ってることを谷垣さんが言ってるわけでしょ。つまり、2007年度以降消費税を含めて税制の抜本改革をやると。だから財務大臣としては当然のことを言われてるんじゃないですか。あとは、まあ政治的ないろいろ、なんか駆け引きのようなものがあるんだと思いますけれども、にわかに浮上してきた感じはしてます。税調としては、そういう時期の問題、あるいは税率の問題等々は政治的な決着で、国民の付託を受けた、政府・与党がやるべきだと思ってますし、それについては、谷垣さんが従来も言ってることを言ってるということについてですね、そうかなと思ってます。

記者

じゃあ援護射撃と受けとっていいでしょうか。

石会長

援護射撃ね…、まあそうとられても構わないけど、援護射撃ねえ、難しいな、またそうなると拡大解釈して書かれる可能性もあるからね。とりあえずね、この問題は来年度の税制改正のほうまで尾を引く議論だろうと思ってます。我々としては関心は持っておりますが、時期の問題とか税率アップの問題等々につきましてはですね、これはもう政治的決定マターだと思ってますので、おそらく税調として中立を保つのが一番いいでしょうねえ。

記者

10月25日のときには、まあ2桁じゃないかなと。

石会長

それはだって書いてあるもの、我々の2年前の答申に。それはなにも来年やるという意味じゃないですよ。何年先になるかわからないけど、我々税調というのは中長期的な視点から税の仕組み等々を議論するところですから、長い先のことを考えればね。今は政治的にはもう直近の話になってます。直近というとまあ1年の話になってるわけね。そこがちょっと我々と違うと思います。

記者

道路の暫定税率について、今日の中では減税すべきだという声がなかったのかというのが1点と。

石会長

ないです。

記者

環境以外の、例えば財政再建目的とか、あるいは担税力という観点で税率は実施すべきだというような見方。

石会長

担税力に関しては、これは表にございますように、日本のガソリンの税負担は低いんですよ。極めて低くて、税負担上の問題は出てこないと思います。それから、今言った道路特定財源に回ってるんだからやめろという議論については、環境税なりね、それから一般財源化というのは社会保障に充ててもいいし、財政再建でもいいという形で一般的に説明するということしかないだろうということで、暫定税率の部分をやめたらかえって地球温暖化の促進になるんじゃないかという意見のほうが多かったですね。僕もそう思います。

記者

道路財源なんですけど、さっき石会長も、役割を終えたら一般財源化すべきであるというふうに…。

石会長

役割を終えたら?

記者

道路整備はまだ必要という声がある中で、道路特定財源の役割は終えたのかどうかということについては。

石会長

それは難しい議論だと思いますよ。難しいと思いますけど、オーバーフローしてるということ自体、もうことさら必要な道路整備は、少なくとも国のレベルでないということでしょ。オーバーフローしてるということは、まあ公共事業を減らしてきたということもありますけどね。地方の特定財源も出てますが、一般の国道はもう9割以上整備終わってますし、そういう意味では別に道路特会をなくしたからっていって、国道あるいは道路建設をやめるわけじゃなくて、一般の経費と同じように扱えということですからね。それは我々としては問題ないんじゃないかと思ってます。

記者

道路特定財源の一般財源化問題なんですが、暫定税率分を維持しつつ一般財源化という小泉首相の指示について、今日も谷垣さん含め、納税者というか自動車ユーザーについて、理解を得ることが重要だという意見がいっぱい出てるわけですが、年内に基本方針を決めるとなると、政府税調、党税調の議論の場くらいしかない中で、広く納税者、ユーザーの声をくみ取る機会、そういうことはどのように考えておられますか。

石会長

税調はですね、広く意見を聞くということで、対話集会をこれまでもやってきましたけどね、今回この問題だけで対話集会ということは非常に難しいと思いますね。そういう意味で、おそらく党税調のほうにですね、各業界が大体あっちへ行くんだろう。一般の国民等々の声をどうやって吸い上げるかということになると、マスコミのまさに責任重大じゃないですか。それはちゃんと報道してですね、意見を聴取してもらいたいと思います。

記者

その中で奥田さんは、昨日は道路関連はまだまだ整備すべきところが…。

石会長

それは自動車会社の会長は言いますよ、それは当然だと思います。

記者

一方で、経団連会長でもいらっしゃって、まあ温暖化対策等の責任ある立場だと思うんですが、もし差し支えなければ、奥田さんが業界代表という感じでああいうふうにおっしゃることについてはどう思われてるか。

石会長

いやあそれは難しいですね。奥田さんは私もよく知ってる先輩だしね、どういう意図で言われてるかわからないし、まあ経済人としての、そのご発言かなとは思いますけれども、まあこれから大きな仕組みが変わろうとしている中で、その発言をどういう形で受けとめたらいいか、ちょっと私も戸惑いますね。わかりません、そこは。

(以上)