基礎問題小委員会(第36回)・非営利法人課税WG(第3回)合同会議後の石会長記者会見の模様
日時:平成17年5月20日(金)16:04~16:23
〇石会長
それでは、例の合同会議、終わりまして、非営利法人の議論をやってまいりまして、ほぼまとめる基本的な方向が浮かび上がってきたかなというのが今日の結論であります。具体的な審議に先立ちまして、東京大学の田中弥生先生、これは非営利組織論のご専門でございまして、この方からプレゼンテーション、いわゆるお話を伺いました。お手元に、パワーポイントの資料がついていると思いますが、ポイントは、シビル・ミニマムという形で、これまで日本社会においてさまざまな公共サービスが提供された。さはさりながら、それは右肩上がりの発想であって、右肩下がりになったときにはシビル・ミニマムの範囲とみなしてよいだろうと、その端的な図が18ページに出てますね。ここで、要するにこれまで拡張したシビル・ミニマムをある程度下げていくならば、民がオーバーフローしたと言うべきか、その範囲をみるべきであると。これが、要は非営利法人、この辺が担わなければいけない。まあ簡単に言いますと、このような官民役割分担の垣根が、言うなれば公的セクターの拡大を阻止するような形に動き、そこに非営利法人が入ってきたということで、あといろんなおもしろいお話がございましたが、その視角から議論がなされました。
それから、今日のメインのテーマは後でご説明しますが、まあ俗に言われるボキボキと言っておりますが、これまで出された主な意見をまとめてきたペーパーが入っていると思いますので、これをご覧いただきます。大体我々がまとめんとする方向が一応出てくるんですが、実はその前に、寄附金税制や個人所得課税というのが、基礎小36-3等の資料がついておりまして、これは前回まで主として国税の所得税の寄附金税制をやってまいりました。個人所得税じゃない、住民税の世界がどうなるかという議論があって、今日、改めて総務省からこの資料の提供を受けまして議論をしたわけであります。国税と違って、幾つかこれまで地方税として寄附金税制は制限的、あるいは限定的に用いてきたと、このように思われます。一番いい例が6ページに出ておりますが、恐らく範囲として極めて限定的であったということと、それから10万円を超えないと、個人の場合、所得控除の対象にしないよというような縛りがあったし、あるいは総所得の25%が限度だと。今度、国税のほうは30%になりますが、まあそんなところの差はございますが、ただ、幾つか当然のことながら、地方には制約がございまして、ご存じのように、東京都で寄附控除をし、東京都税を減免するような格好で、どこか自分のふるさとに寄附したいというふうになると、例えば愛知県なら愛知県のほうに、その寄附の寄附金がいくわけですよね。したがって、地域の受益と負担のばらつきがあって、そういう意味で本来、地方税は寄附金税制になじまないという議論がございました。
まあ、いろいろ検討してもらいまして、この資料の12ページに主要な論点が出ております。これをご覧いただきますと、どういうことを議論されたかわかると思いますが、個人住民税における寄附金控除の主要論点でありまして、これを最初の四つ目ぐらいまでを見ますと、極力やらないよという方向でこれが書かれているんじゃないかという批判もございましたが、必ずしもそうではなくて、五つ目に書いてございますように、地方の条例でやってもいいんじゃないかと。それから今日は、この枠をさらに越えて地域で、言うなればさっき申しました東京と愛知の関係で、東京のほうが減税になっても寄附が向こうへいくというような制度を、言うなれば認めてもいいんじゃないかというような話。いずれにいたしましても、地方の地方分権を言うならば、もっと住民税の世界で寄附金制度の枠を広げるということがあってもいいじゃないかという議論が出ました。
それから、イギリスにおけるチャリティ委員会の概要というのがペラ1枚出てございますが、これもさっとご説明があり、言うなれば、我々がこれから考えるであろう第三者機関による公益性の認定というのは、こういう形の一種の認定機関をつくろうというわけでありまして、これを参考にしようという形になりました。
それから今日のメインは、最後に、「これまで出された主な意見(未定稿)」という形で、さまざまな議論をした結果を踏まえて議論を整理した紙がございます。これは、「〇」で打ってございますから、必ずしも全体が一気に流れた文章ではございませんけれども、これからこれをベースにして文章化しようと。ついては、ここに書いてございまして、よく見ますと、基本的には同じ方向で議論されておりますが、対立した点もないことはない。今日これを中心に、さまざまなご議論をいただいたわけでありまして、これは後でお読みいただけたらと思いますが、どんな議論があったかというのを、この紙に即しまして若干ご説明をさせていただきます。
一つは、「〇○か」という疑問形もあるし、それから「評価できる」という、あるいは「必要がある」というふうに断定的に書いてあるところもありますが、疑問形でないところはほぼ多数意見として、我々の意見が集約されたと考えて下さって結構だと思います。最初の論点は、この寄附税制を要するに拡大しよう、あるいは新しい非営利法人の制度を拡大しようという形になったときに、これが不正利用されて、悪用されて、まあ租税回避なり脱税材料に使われては困るじゃないかという問題が最初に出されまして、これに対しては、公益性のチェックのときに認定を取り消されて、過去に遡った、言うなればペナルティ的に税も課されるよというような話がここに書いてございます。まあそれは第三者機関の業務内容だとは思いますが、それ以外に、第三者機関は絶えず、今言ったような租税回避行為等々で寄附金税制が使われるということのないように、事前事後チェックしなきゃいけないということと、それから、情報公開なり、あるいはそれに類した公明正大な行動をとってもらうというのが公益性を認定する基準になった場合には、覚悟して入ってきてくれというようなメッセージが送れるような厳しい基準をつくるべきであると。まあそういう意味で、第三者機関に関しまして幾つかの注文が出たということであります。
それから今回、民法34条によります、言うなれば財団法人と社団法人だけが念頭にありますが、3ページに特別法に基づく公益法人として学校法人、社会福祉法人、NPO法人等々があるんですが、これは今回手つかずなんですね。さはさりながら、今回の新しい仕組みをスタートさせた後に、こういう特別法に基づく公益法人の議論もすべきではないかということについて、今の段階で書いておくべきではないかというような議論も一部出されました。
それから、4ページの金融収益課税に対する課税で、言うなれば、非営利法人が収益事業をやってカネがもうかると、これを預貯金にしたり、いろいろ資産運用を図って金融資産収益が出てきたときに、これに課税すべきである、あるいは課税すべきでないということに対しては、まだ意見が分かれて…分かれたまでは書いてございます。まあお一人の強い要望として、言うなれば最終的に金融収益を稼いだから、つまり利子で稼いだカネだって、結局は非営利の本来の活動に回るんだから、ここに課税するべきではないといったようなご意見も出まして、まあそっちの方向でいくかもしれません。これに対して強いご反対はなかったように思います。
あともう一つは、そのすぐ上に書いてあるみなし寄附金制度ですよね。これ、ご存じのように、稼いだカネの2割は、言うなれば非課税のほうへ入る。要するに非課税の領域に入る、2割みなし寄附すればね。この2割というものをもうちょっと拡大していいじゃないかという議論と、そうは言っても、ここを奨励すると、本来非営利で非営利活動をやるのに収益事業で稼いで、課税上の恩典を与えるというふうになっちゃあいけないないと、この二つ、意見も分かれまして、まあこの辺をどう書くかが、もう少し議論しなきゃいけないと思いますが、まだ対立点として恐らく残っているというふうに理解されると思います。
それ以外に、基本的には、新しい非営利法人のところで寄附金というものについて、税で国税、あるいは地方税で、それなりに新しい方向として認めるべきであるという方向で、7ページ以降の寄附金控除等の話は、大体議論としてはある方向に出てきたと思われます。
そういう意味で、お読みいただけるとわかると思いますが、3か所か4か所ぐらいが、イエス・オア・ノーで言えば、反対の方向で議論が書かれてますが、ほかは恐らく基本方向の許容範囲の中で議論ができております。今回、座長としても、比較的非営利法人に関する認定の問題も含め、寄附金税制も含め、ある方向性は打ち出せるかなと思います。これまた第三者、外の方から専門家が見ても、この方向でいこうという形で支持がありますので、税制も含めてまとめていきたいと、このように考えております。
というわけで、今日こちらの非営利法人制度につきまして、一応の方向性を出した後で、来週24日に総会を開きまして、この問題と、前回やりました個人所得課税のまとめたものを報告して、総会でご了承いただきたいと考えております。そして、5月の末から6月にかけまして、火・金、火・金、大体ほぼ毎週になりますけれども、基礎小と基礎小・ワーキンググループの合同会議で、この非営利法人の問題と個人所得課税を、文章化したまとめですね、そっちの方向に話をもっていきたいと考えております。一日で二つ、会議を連続してやることもあって、なかなかハードになると思いますが、一応21日ぐらいを締めとして、この二つの問題領域につきまして論点を整理したいと、このように考えています。以上です。
〇記者
寄附金税制なんですけれども、国税での寄附金税制のあり方、地方税での寄附金税制のあり方というのは、委員の方からどんな意見が出て、会長としてはどういうお考えか、お願いします。
〇石会長
今日の論点整理のところの最後で1万円の問題と、それから25%から30%に寄附金の控除限度額、7ページぐらいに書いてございますが、ございます。ここに書いてございますように、基本的には、控除限度額もあるいは下限の1万円もですね、従来からもうちょっと幅を広げていいじゃないかという意味で、所得税につきましては、この具体的な数字が、もうちょっと寄附がやりやすいような方向に動く。例えば1万円で、まだわからないけど5,000円になるか、あるいは30%、もうちょっと上がるかという話はあると思います。
それから、地方税のほうはですね、結局、地方分権であって、全国一律にですね、これぞって決めるよりは、自分たちの税収が減って他県のほうに寄附金がいくというようなことはですね、その地域ごとの条例、あるいは地方議会が決めたらいいんじゃないかというふうな意見のほうに、大分話はいくんじゃないかと思います。もう一つは、自分の府県なり県内だけの寄附については、その県の住民税を使えばいいじゃないかという話もあるし、この辺はやっぱり、国が一律に決めなくてもいいじゃないかという意見で、さはさりながら、今の10万円がもっと下がるという方向、あるいは、さっき言った25%がもうちょっと上がるという方向、これはある意味では、国税と同じような方向で改革が行われると思いますが、ただ、最終的には、やっぱり地方の寄附金の性格が、国全体として見たときとはちょっと違いますからね、少し差があってもいいとは思います。ただ、寄附金をもう少しやりやすい方向で制度を仕組みたいと、私は基本的にそう考えます。
〇記者
公益法人の金融資産収益のところは、この「主な意見」では賛否が書いてあるんですけど。
〇石会長
書いてあります。
〇記者
先ほど、方向性で異論がなくというのは…。
〇石会長
ノータックスにしろという意見がひとつ出てですね、それに対して強い反対もなかったという意味では、ただ、まだこれ、もう少し皆さんの意見を聞いてみないとわかりませんから、まだ決め打ち的に、こっちに決めたというふうには言えません。ただ、まあ、広げるという方向から言えば、金融資産収益課税も、それは少し面倒見るということがあるのかもしれません。
〇記者
収益事業の課税方針でございますけれども。
〇石会長
例の33のところですか。
〇記者
そうです。それを、ポジリストとして定めるのか、あるいは対価性のあるなしで除外するのかという、二つ書かれてますけど…。
〇石会長
今日、これについて、じかに直接ご意見があったわけではないんですが、考え方としてはですね、33はポジリストで列挙していくというやつは限度がありますよね。これが40、50になるかもしれない。あるいは33の中を見れば、今風に言えば、もう役に立ってない区分けもあるかもしれない。これをずっとやっていくという意見と、それから、これは非課税で、それ以外は全部かけろという言い方ね、そっちのほうが一般的かもしれない。後者のほうでですね、議論が進む可能性はありますね。今日は、ちょっと、ここに出てきただけで議論ができておりませんが、文章化された段階で、それも決めたいと思いますが、従来考えられてない要素として、非課税を列挙しておいて、これ以外は課税という方向も現実的にあり得べしと考えています。つまり、公益性を認定するわけですからね、公益性に沿ってかけちゃいけないという領域を決めたほうがコンシステントですよね、議論としては。
〇記者
ネガリストだと課税強化になりますか。
〇石会長
どうですかねえ。それはよくわかりませんね。課税強化かどうかは、何が具体的に出てくるかという話ですからねえ。どっちがどうですか…。ただ、まあ、今言った33のあの中で何も変わらないかといえば、社会構造が変化してくると、絶えずそういう見直しをやらなければならないほうが問題じゃないかと思いますが、それはちょっと、新しい発想としてやったときの問題点は少しこれから、事務局も通して少し検討したいと思ってます。
〇記者
来月の取りまとめに向けて、また来週以降、個人所得課税なんかも話していくと思うんですけど、その中で控除についてはですね、まあ給与所得控除とか子育てとかいろいろあると思いますが、会長としては、現段階で方向性としてどういう…。
〇石会長
個人所得課税のことですか。
〇記者
はい。
〇石会長
今日のテーマじゃないですね。テーマじゃないけれども、言うなれば、個人所得課税の世界において所得控除を見直すということはですね、大体、統廃合し、その所得控除が不必要という点を拾い出せる作業になるとすれば、これは増収のほうですよね。さはさりながら、子育て支援という意味で扶養控除のほうを少し拡充して税額控除にしたいなんてことは減税のほうだよね。その組み合わせをどうするかということでありますが、正直言って、「あるべき税制」という視点から言えば、過去の非常に重過ぎる所得控除によって課税ベースがえらい縮小して、これがひずみ、ゆがみ、不公正を生んでいるという判断をしてますので、見直す方向としては、やっぱり課税ベースを広げなきゃいかんという視点からになれば、廃止すべき、あるいは統合すべき控除が多くなるでしょう。ただ、これは一挙に来年というわけにいきませんから、数年先を見ての話。これは、今度の27日、3時間かけて個人所得課税を国税・地方税でまとめてやりたいと思いますが、そのとき、もうちょっとはっきりした姿が出てくるかもしれません。
(以上)