基礎問題小委員会(第35回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成17年5月17日(火)16:07~16:37
〇石会長
今日、基礎問題小委員会を開きまして、個人所得課税の抜本見直しに向けまして、本格的に議論いたしました。本格的な議論という意味は、税務行政までかなり深く立ち入りまして、所得税の様々な論点を抽出しようという議論をいたしました。お手元に論点メモが入っているかと思います。所得分類のところと、最後のほうの納税環境の整備というところと、その2つが今日のメインのテーマでございました。税制一課長からこの資料に沿いまして説明を受けまして、それから今日は国税庁の次長の村上さんに来ていただきまして、現在、国税庁がどういう問題を抱えているかも踏まえまして、所得税のいうなれば今後の見直す方向において、税務行政がどう対応できるかというお話をいただいたわけであります。
そこで、幾つか問題になった点をかいつまんでご説明したいと思いますが、論点メモの3に、8つほど所得の種類と税負担のあり方が議論として出ておりますが、この8つにつきまして個々に、現状抱えている問題のご説明をいただきました。そこで、恐らく一番大きく今後議論しなきゃいけないというのが不動産所得。これはそもそも必要かどうかということを踏まえまして議論します。それから、一時所得というものが2分の1課税になっているというわけですが、この一時所得というのが、そもそもギャンブルとか、突然入ってきた担税力が非常にあると思われるものをかなり優遇している面もあって、これと雑所得とを一体化して考えるという余地も十分あるんじゃないかという意味で、不動産、一時、雑所得、この3つが存廃を含めて議論しなきゃいけない項目に多分なってきて。と同時に、雑所得に入っております非常に大きなかたまりの年金所得を別に取り出すというような作業も恐らくあるだろうし、委員の中には、この10というのにこだわらず、だんだん所得の分類を集約化していくことも一つの方法ではないかということですね。特に金融所得は、法制上の概念じゃないですね。中身は利子と配当と譲渡益でありますが、別途われわれ金融所得の課税の一元化をやってきたわけでありますから、それとの絡みでどうしたらいいかと、こういう議論があったということです。この説明が最初にあって、それから、納税環境整備で納番以下、記帳義務、立証責任、公示等々議論がありまして、すべての項目につきまして、今日は非常に活発な議論がございました。
そこで、今言った不動産、一時、雑所得、公的年金等につきましては、おおむねこういう方向での見直しということがあり得べしという形のご意見があって、それについて大きな反論もなかったと思いますので、今日の税調の議論としては、所得区分の中の3つの見直し、あるいは年金を入れるというような話として、ある方向が出たかなと思っています。
それから、やっぱりあと給与所得、そして退職所得、事業所得等につきましては、かなり議論もございました。退職所得というのは、前回お話しいたしましたように、そもそも退職金制度というもの自体が見直しの状況にあるし、かつ、外国にはこういう退職所得課税みたいなものがないわけですね。で、この間も説明いたしましたように、外資系の会社がこれを非常に活用して、税金を回避するという方向に、これを短期間勤めても使っているのではないかというようなご指摘がかなりありまして、これにつきまして考えなきゃいけない。ただ、退職金制度というのは、長い間かかって稼いだ金に対してかかるわけでありますから、一挙に大きく見直すと、現在これを密かにというか、期待してそれなりの設計をしている方も多々いられるわけでありますので、時間をかけてやる必要があるだろうということで、意見は一致いたしました。
それから、給与所得につきましては、やはりこの資料にも出ておりますが、給与収入の大体3割、ほぼ3割ぐらい、多額な給与所得控除があって、これをどうするかという問題はある。と同時に、給与という、あるいは雇用という形態自体が、たまたま昨日の公示制度に出てきたトップがサラリーマンであったわけでありまして、ああいう一種の、自分の才覚、能力に応じて多額な報酬が払われるようなサラリーマンもいたということですね。そういうことを見直すと、本当の、通常の意味のサラリーマンといったような雇用形態ではなくて、契約して、自分の能力をまさに契約というような形でああなるというのがあれば、給与所得控除というものの中身も考えなければいけない。と同時に、クロヨン等々の事業所得とのギャップの修正のために給与所得控除という意味合いではなくて、やはり給与所得を稼ぐ必要経費という意味合いのほうが今後強くなるのではないか。そういう雇用形態の変化、あるいはコスト面をどうこれで救済するかといったあたりの議論が中心になってきたかと思います。
それから、今日あえてこの資料を使ってご説明したいのは、基礎小35-1という横長の資料があって、15ページ。実は、納番というのは自営業者、事業所得について、基本的には納番を使っても捕捉できないよという形で一応議論をし、かつわれわれも説明してき、これも何回もご説明いたしました。その理由は、その1ページ前の14ページに書いてございますように、基本的なイメージは、取引相手があって、納税者があって、金銭の支払いがあって、番号を告知して税務署がマッチングするよと、こういうシステムがここにあるわけですね。そこで、事務当局にもお願いして、番号を使って事業所得、あるいは事業者の所得の捕捉というのは本当にできないかどうか考えてくれというようなことも申しまして、検討を依頼しておきました。今日、15ページのような一つのマッチングを使うと、コストは非常にかかるかもしれませんが、理屈の上ではある程度可能になるかなと。完全じゃありませんけど、番号を突き合わせれば、それなりの対応は可能かなというような線も出てきて、これついて今日かなり議論をいたしました。
ここに納番のイメージがございますけれども、事業者A、 Bという、特にBですね、小売業者といたしますと、いうなれば、小売業者でありますから、売上bをサラリーマンとか主婦に売るわけですね。かつ、事業者は小売業者でありますから、卸の事業者Aから仕入れてくるわけですね。そこで問題は、BtoBの場合は、つまり事業者AとBの間では売上、仕入というのを仮に納番というのを付与して、ここでAとBの間でやりとりをつかまえて、これを番号付きで税務署に送れば、事業者間の売上、特に事業者はAから買ってくる売上ですね、Aの売上は分かるわけですね。これは前のページの、いうなれば所得が2カ所から出てくるというのに類似しているわけです。問題は、小売業者Bの場合には、買ってくれるのが個人の顧客ですね。サラリーマンとか主婦でありますから。この人が事業者Bの買ってきたものについて番号を付けた申告、つまり売上情報を税務署に提供するなんていうことはできないわけですね。したがって、一番われわれが難しいといっているのは、ここでいうB、小売業者の自営業としての事業所得が分からん。これはそのまま残ると思いますが、ただ、BtoBの場合のAからBに行った場合の実は情報が一つあって、これは事業者Bは、いうなれば買うわけですけど、Aから買うわけだけど、事業者Bになると仕入れになるわけですよね。だから、AとBの間で売上、仕入れが捕捉されていれば、実は事業者は、売上は消費者だから分からないけれども、仕入れは分かるんだよね。かなりこれを制度化して、マッチング等々含めれば、やる気になれば分からないことはないということでしょうけど、これは極めてコストは高くなるでしょうね。つまり、小売業者というのは、あらゆる仕入れを個人事業者Aからやっているわけですからね。だから、これについて理論的には考え得ると。まあ、これについてやってやれないことはないだろうし、マッチングというものができれば、一つ情報になる。
もう一つは、個人事業者Bは、恐らく銀行口座で預金を持つ。この利子については今別に届出義務も何もなくて源泉徴収でありますから、情報は集まりません。ただ、口座A、B、C、Dというものの口座について、口座情報というのを提供してもらえば、稼いだ金がいくら貯まっているからということから、個人自営業者のある情報は集まってくるかもしれないし、これはそもそもできるかどうかはさておき、こういう形の仕組みを考えれば、納税者番号制度を使ってある程度、100%と言わないけれども、利子とか配当に類した形のマッチングを踏まえて納番というのはできるじゃないかと、こういうご説明を受けました。
これに対しまして、今日、委員のほうでいろいろ議論がありましたけど、結局これはコストとベネフィットの関係だろうと。利子とか配当とか、あるいは株の譲渡益ぐらいですと比較的限られた情報として納番は使えます。ところが、このように取引全体にまたがっているような個人の業者A、Bなんて、これはもう何億、何千とあるわけですから、こういうことが果たしてできるかどうか。今日は国税庁の方も来ましたから、いうなれば、問題はどれだけの人員とどれだけの予算を配置されて、コンピュータの精度がどれだけあればということの前提でしょうけれども、基本的な方向としては検討の価値はあるだろうということであります。実務的にはどこまでできるか、これについてどう考えているかにつきましては、各委員おのおのいろいろな意見を持ったことと思いますが、とりあえず番号を使えばこうなるよというような一つのイメージ図の整理は、一応ついたという感じです。問題は、これを実際にどのぐらいのコストをかけてやる価値があるかどうかの問題に移っていくかと思いますが、われわれとしては、これについては少し考えてみたいと思います。
それから、その他にいくつか議論があったんですが、昨日の公示も踏まえまして、今後公示制度というものをどう利用したらいいか。これは、所得税以外に法人税にもあるし、相続税にもあるんですね。だから、他の税との絡みもありますから、一概に所得税だけのことではありませんが、基本的には個人情報保護法もあって、まあ政府は、個人情報を保護しましょうという形で、逆にいえば反対方向で公示するのはいかがなものかという声の人が多かったかと思います。ただ、この公示制度というのは、ある意味で税務の情報を提供している。つまり、上位100番ぐらいの中にどういう業種の人が入っているかとか、今回もサラリーマンの人がトップなったというんだから極めて新鮮な情報提供なんですが、あれを踏まえて、これが完全になくなっていいかどうかということについて疑問をお持ちの方もいました。そういう意味で、かなり多くの人が公示制度はもうなくしていいんじゃないかというご意見があるけれども、何か部分的に今の制度を改善する、つまり、所得税額1000万円で切ると7万何千人いるんですか。しかし、末端のほうではなくて、上位100位ぐらいまでは公示してもいいじゃないかとか、そういうご意見もございました。あともう一つ、せっかく納税してくれるんだから何かご褒美をあげるような制度があっていいじゃないかという顕彰の問題ですね、こんなこともあって結論は出ておりませんでしたけど、公示制度というのは、方向としては、今日のご意見を私なりに集約しますと、見直しの方向でいくべきではないかという形ですね。
それから、所得税のホットな問題としてフリンジ・ベネフィットの問題があって、これは今日の資料の3ページ、4ページに多分載っていると思いますが、特に地方のほうの自治体の、まあ大阪市の問題があって、本間さんがいたこともありますけれども、自分勝手に、いうなればフリンジ・ベネフィットの範囲を規定し、自分なりにお手盛りでやっているなということを感じている人が多かったと思います。ただ、この3ページ、4ページ目に書いてある、通達で認めるとか何とかというのも、「社会通念に従って」という書き方であります。ただ、社会通念が最近非常に変わってきましたよね。例えば3ページに書いてあるように、レクリエーション費をどうするかとか、結婚祝金をどうするかとか、食事の支給をどうするかというのを果たして課税しなくていいものかどうかということは、5~6年前の通念と今の通念、だいぶ変わってきたんじゃないかと。そういう意味で、われわれとしてもこの辺について少し議論をして、少しはっきりしたことを言いたいと、このように考えております。
そんなところですかね。まあ、いずれにいたしましても、課税の公平、中立、簡素という視点から所得税を見直す時には、やはりもうちょっと実態に沿った様々な情報の提供を受けて、基本的な方向を探っていきたいと、このように思います。したがって、今日の議論の結論は、単に机上のプラン的ではなくて、税務執行面まで下った時にどういうことができるか。そういう意味で、あえてもう一つ付け加えておきますと、記帳義務というのも今、売上300万円のところまで青色でも白色でも義務が課されておりますが、これについて特にペナルティ的なものは課されてないわけでありまして、記帳の義務を本格化するために何か仕組みはできないかとか、源泉徴収、年末調整、こういった制度ももう一回、このままでいいにしても問題点がどこにあるか、これも議論したい。それから、立証責任が今課税当局にありますが、最近は裁判所の判例を見ますと、一部、納税者側にもきているわけで、この辺の立証責任をどっち側にするかというようなことの議論も必要ではないかと。
それから、国税庁のほうでは、今、脱税、租税回避は5年以下なんですね、ペナルティが。この5年というのは短いんじゃないかと。もうちょっと税の不公平、不正を正すという意味では、この5年をもっと上げてもいいんじゃないかといったような問題提起もあり、それに対してそれなりのサポートする議論もあったと思っております。
ちょっと今日は技術的な話になりましたので、私がすべてここで説明するわけにいきませんが、そういう議論をして、かなり切り込んで議論したということはご理解いただけると思います。次回は、来週の金曜日に、論点メモの4、5、6を中心に控除であるとか税率であるとか、それから地方の住民税も含めて、今度は仕組みですね。今日はどちらかといいますと、所得ベースの問題とそれをどうやって捕捉するかというほうに要点がありましたが、一たん所得を決めた後、これをどのような形で所得控除を認めてとか、あるいは税率をどう適用するか等々のほうに議論を深めていきたいと、このように考えております。今週はあと、非営利法人の議論をし、来週の火曜日に総会でこれまでの議論を踏まえてと思っています。そういう意味で、今月中にできるだけ主要な論点を整理し、議論は議論として整理していって、次第に6月の後半に向けての主要論点メモの文章としての答申、あるいは報告についてまとめていくという作業をしていきたいと、このように考えています。以上です。
〇記者
公示制度のところは、完全に廃止するとまでは言わないんだけれども、部分的に絞るなりして見直す方向で大体…。
〇石会長
僕は、多数は、廃止するほうが多かったと思いますよ。ただ、完全に廃止して責任持てるかねと。これはある意味では、所得税の税務行政の一つの根幹ですよね。これはもとをただせば第三者通報制度、密告制度のかわりに入ったということもありますね。そういう意味で、今さら密告制度を復活するという意味ではございませんけれども、やはり何かしらの情報はあるので、これを全部なくしていいか。だから、あえていえば公示制度見直し、廃止の方向だけど、全部直した時の問題点を考えなきゃいけないんじゃないかという意見があって、ちょっと最終結論はペンディングになったと。ただ、公示制度廃止の方向で一応議論はある程度集約、ただし部分的に残すというようなこともあり得べしということですね。何か歯切れ悪いんだけど、もうちょっと議論しないと。最後のほうに議論がわっときたものですから、集約し損ないましたけど、そんなところだと思います。
〇記者
納番のところで、石会長は所得の捕捉がなかなか難しいんじゃないかということをおっしゃっていたかと思うんですが、今回こういった形で事務当局の案が出たことで、これは可能なんじゃないかと。ちょっと税調としての議論の方向を。
〇石会長
いや、それはコストを考えなきゃどうしようもないと言っているんです、僕は。それは、何でもかんでも個人に全部納番を付けてやれば、できないことはないと思いますよ。今みたいに個人事業者A、Bのあたりをついていけば。ただ、あらゆる個人業者がいるわけだからね、その売上資料を全部番号を使って捕捉するなんてどだいできないでしょう、多分。個々のケースとしては。だから、どうするかということですよ。ただ、やる気ならばね、方法はないことはないだろう。そこでコストとベネフィットの関係でもうちょっと考えてみたいと。そういう意味では、はなから100%不可能だということではなくて、原理的にはある方向があるじゃないかというところを今日、事務局に検討してもらって、それをベースにして議論したということです。だから、委員の中でもこれでやれという方向と、それから、ちょっとそんなコストまでかけてやる価値あるの、という議論があったということですね。僕はなるべくやったほうがいいと思いますけどね。
〇記者
不動産所得の部分が論点に上がったということなんですが、なぜ見直し対象に上がるのか…。
〇石会長
この資料の10ページを見てください。不動産所得というのは、そもそも同居親族の資産・所得合算制度という制度があって、資産合算ですね。つまり、課税単位は個人なんですね、原則的に。だから、亭主でも奥さんでも、働けば2人、それから息子とか娘が働ければ3人、4人と、同じ家族で出てくる。ところが、財産に関しましては一家共有しているじゃないかという意味で資産合算という制度を入れたり引っ込めたりしているんです、これまで。その対象をね、資産合算をする対象として、実は不動産所得が入っていたんですね。だから、一家で何やらアパートを経営しているとか何かした時に、それは亭主の所得にするのか奥さんにするのかというよりは、ましてや子どもに何か学資のためにアパートでもやって、経営させた時の収入をどうするかというのがあって、そういう意味では資産合算にしていたんですよ。これはもう、シャウプの時もそういう議論もあったんですけれども。
このために、不動産所得はできた。ところが、この合算課税制度は平成元年に廃止になりました。ここの参考に書いてあるように。そうなると、要するに事業所得に入り込む不動産所得というのは、プロの不動産屋さんの所得は全部不動産所得ですね、だから、これはそっちに入るだろうと。それから、あと雑所得という中で個人がやっているものは十分救済できるんじゃないかという意味で、そもそもの資産合算がなくなった以上は、その時作った不動産所得を残しておく理由がないんじゃないかというのが一番大きな理由ですね。と同時に、この中身は事業所得と雑所得の両要素を持っているから、これは分解してもいいじゃないかということで、これについてはある意味ではっきりした理屈はあるように思います。
〇記者
一時所得なんですが、要するに2分の1じゃなくて、変な話、全部といいますか…。
〇石会長
ええ、全部雑所得にコンバインするという手もあるでしょうね。つまり、一時所得と雑所得の違いは、一時所得というのは、ギャンブルで儲けたとか懸賞金が当たったとかで、労務の対価がない、役務の対価がない。ウィンドホール・アセットだよね。ところが、雑所得というのは、原稿を書いて見返りに原稿料をもらうとか、講演してもらうとかというふうに、ある意味で見返りのものがあって、一応は仕切りはできているわけです、一応はね。ただ、ギャンブルで儲けようと何で儲けようと、2分の1課税で、非常に担税力はあるのに、非常に優遇されているわけだよね。そういうふうにポーンと入ってくるわけだから、懸賞金当たったなんていうとね。それはある意味で、そこの対価があるとかないとかを別にして、雑で入ってくるものは一緒にしてもいいじゃないかと、そこは。そういう発想ですね。だから、特別控除50万円引いた上で2分の1課税というのが、一時所得の性格から見て、こんなことまでする必要があるかなと。雑所得でいいんじゃないかねという発想も、片やあるということですね。
それから、10種類ある所得分類というものを、今日は集約化ということもありましたけど、できれば皆さん、年金、これは11番目なら11番目にしてもいいんだけど、まあ不動産所得がなくなれば1個減るから、1個減らして10番目にする。それから、一時と雑をまとめれば1個減るからなんていう話もあって、これはちょっとこれから最終調整ですけど、あまりにも細分化しているのがいいかどうかという反省もあるんですね。そういう意味で一時所得が俎上に上ったということです。これはなくすというよりは、雑所得と一緒でもいいんじゃないかという意味ですね。それから、雑所得の中にあまりにも大きなかたまりの年金所得がどんどんどんどん膨張してきたということですよ。これは外に出してもいいんじゃないかと、こういうことですね。
〇記者
給与所得控除の議論についてなんですけれども、必要経費という側面が次第に強くなってきているというのは、ここ数年の税調の議論の流れでもありますが、その一方で、本来の事業所得とのバランスといいますか、ギャップを埋めるという性格も依然として残っているんじゃないかと思うんですが、そのあたりについては今日はどのような議論がありましたでしょうか。
〇石会長
事業所得とのギャップというよりは、事業所得そのものの捕捉をもう少し、記帳義務等々含めて本格化をやるという作業が1つありますね。それから、ギャップとはいうけど、どうも必要経費以上に給与所得控除が大きくなり過ぎているんじゃないかという反省もこれまたあるわけですね。だから、どっちかといいますと、ギャップのほうは事業所得の捕捉のほうで頑張ると。それから、必要経費については、過大ならばそれは少し削っていくよと。で、実額控除も入れようと。特定支出控除を少し使いやすくして、そっちを本格的にしようとか、そういう形で、ギャップ解消の性格があったという点は、最近クロヨンの議論が次第になくなってきたように、税調の中でもそれほど大きく意識はされていません、そこはね。
〇記者
退職所得の中の退職金課税のところなんですが、見直しの時期にはあるということですけれども、例えば今日は、話の中に具体的に課税の仕方についてはこういうふうにすべきだとかいう話は出たんでしょうか。
〇石会長
やっぱり短期でね、退職金課税の非常にいいとこ取りをしている点については、特別な何か措置で封じられないかという意見ですね。つまり、外資系のような会社でごく短期間雇用して、給与を多く退職金にしわ寄せして、退職金2分の1課税を使うと。そういうことをいえば、退職金制度を使えるのは、例えば10年とか15年とか20年勤めなきゃだめだよというふうにするかどうかですね。そういう点で、一律に今ある退職金制度をばっさり切るというのは、まだ日本の慣行として退職金の制度というのは根強く残っている部分もあるから注意しろということと、一時リストラが終わって、雇用形態が変わったけど、またやはり終身雇用の良さを見直して、コアなメンバーは終身雇用したいという企業も出てくるだろうと。もうちょっと推移を見ないと分からないじゃないかという慎重論もありました。いずれにしても、時間をかけてこの辺はやらなきゃいけないだろうという点では一致していますが、特に今、目にあまる、つまり、再三言っているように外資系等々の目にあまる、いうなれば悪用というか乱用というか、この辺は何かストップさせる手だてはないかなというあたりですね、今日は。
〇記者
時間をかけてやるべきという意味は、見直しの作業自体をということですか。
〇石会長
そう。それから、今の社会の推移ね。つまり、もう一回雇用形態がどうなるか、年功序列がどうなるか、終身雇用がどうなるかというので、今一時、バブル崩壊後に急に社会が変化してきて、これをそのまま議論として受け止めるのか。ということは時間かかりますけれども、ただ、日本独特の制度ですから、これはやはりこのまま温存というわけにはいかないだろうということでは皆さんの意見は一致していると思います。
(以上)