基礎問題小委員会(第32回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成17年4月12日(火)16:04~16:39
〇石会長
新年度になりまして、最初の基礎問題小委員会でございまして、かなり活発な議論が行われました。お手元に、個人所得課税の国税分と地方税分の二つの基礎データが入っているものと、それから主な論点という意味で、7項目にわたっている主要な論点が並んだ1枚紙がございます。これに即しまして、事務局から説明を受け、30分ぐらいで切り上げまして、残り1時間半、この7項目の論点、ほぼ全般的にわたりまして、かんかんがくがくの議論をしました。
ねらいはですね、かねがね所得税の問題というのは、累次の議論、あるいは報告書、答申で出していますので、あらあら大体念頭にあるんですけど、実は6月の段階でですね、主要な論点を整理したいと、それが大きな目標でございます。この4、5、6月とかけて、それを整理するということが今回の基礎問題小委員会の大きなねらいであります。これは、おそらく来年度以降、2006年度以降の税制改革のコアの部分になる…所得税の世界に限ってですね、そういうものをつくりたいと考えておりますので、もう一度、これまで出尽くした感もございますが、論点を整理し、さらにまた残されたところもございますので、それを入れて議論しようと、今日はまあ言うなればどういう土俵をつくるかということで議論を整理いたしました。
そこで、主な論点メモの1枚紙の中、どういうことを議論したかということをさあっとご説明しようかと思います。1から7の下にサブカテゴリーの一応項目が幾つか並んでいるというふうに想像して下さい。それで、「個人所得課税の抜本的見直し」は、ご承知のように、定率減税の縮減、廃止をにらんで所得税の抜本改革をしようということからスタートしているわけであります。そういう意味で、とりあえず新年度の税制改正の中に今年の4月から半分定率減税をなくすということですよね。まあそれができるかできないかは経済の情勢かと思いますが、それを念頭にし、あくまで所得税の抜本改革までに直すと言ってますから、それこそ抜本改革をせにゃいかんという趣旨のことであります。と同時に、税源移譲がございます。この税源移譲というのも非常に大きな問題でございまして、それやこれやでですね、所得税をかなり見直したい。ただ、そのすべてを来年度税制改正で実現するとは思っていませんが、少なくとも数年先を見たときに、こういうことをしなければいかんじゃないかという論点を我々は整理するつもりでございます。
そこで、「資料(個人所得課税)」というのがございますが、ここで一応資料の7ページ以降に、これまでの各種の答申で所得税というのはどこが問題で、どこを改革すべきかという論点を整理してもらった一覧表がございます。これが、この主要論点メモの項目の中の背後にあると。だから、これは既に言っていることなんですよね。そういう意味で、まず抜本改革が必要であるという前提で今日は議論をいたしました。一言で申し上げますと、「所得税課税の本来の機能の回復」ということが第2番目にありますが、これはある意味では「所得税の復権」ということですよね。26兆円ぐらいまで一時伸びた個人所得税も、今や十数兆円になっちゃってるわけですよね。それだけ大きな落ち込みがございますが、これはまさに所得税の持っている財源調達機能と所得再分配機能の二つを放棄しているということになってますよね。これ、どんな形でこれから復権したいかという議論がどうしても根っこにあるという形であります。まあ所得再分配機能の場合には、税収のこともございますし、あるいは課税最低限のこともございますから、それがまた税源移譲と絡んできますので、かなり複雑な図式になろうかというふうに考えます。
それから、新たに今日、視点として出てきたのが「所得区分及び所得種類に応じた税負担のバランス」ということで、3番目ですよね。3の項目は、四つ五つサブカテゴリーがございますが、まあ所得区分の中で問題になろうと思われている最初の問題が給与所得なんですね。これは特定支出控除という形で実額控除をするような人がほんの少ししかいないんですが、将来的に給与所得控除を見直すときに、まあ実額控除の範囲をどうするかとか、そもそも給与所得控除というのが過大に過ぎるんじゃないかという問題意識をもっております。給与所得控除見直しというのは、その過大と思われているものをどう縮減するかという方向の議論になってくると思います。退職所得はですね、第二の項目としてそういう区分の問題点なんですが、今は2分の1課税ですよね。そもそも退職金制度自体が今見直されてきているし、そもそもそういう制度があるのかないのか。それから、2分の1課税というのを乱用して、ごく短期間で外資系の会社あたりは、退職金に支払わせて税を節税しようという動きもかなり頻繁であると聞いておりまして、退職所得の制度自体、あるいは退職金の控除自体、これも大きな問題意識としてもっております。
それから、事業所得が三つ目の項目なんですが、事業所得というのはこれまで青色申告者がおり、それに類しないのは白色がいたりして、まあ記帳義務というのを前提に、どうやって必要経費であるとか、あるいは収入を捕捉しようかという一応枠を決めてきたわけでありますが、給与所得課税の見直し等々を含めれば当然、事業所得の見直しというのもございます。家事関連経費の問題もございます。そういう意味で、記帳義務というのを本格的に導入して、言うなれば必要経費のあたりをしっかり制度的に保証するような仕組みをつくらなきゃいけないんじゃないかと考えておりまして、これは7番目の「納税環境の整備」の中に記帳義務といったような、あるいは記帳制度いったようなものを今後、事業所得も絡めて本格的に仕込みたい、このように考えています。
四つ目の所得区分は金融所得ですよね。これを十分これまで、奥野さんの金融課税でやっておりますから、その議論をどういうふうにやっていくかという形で、あの答申に沿った形で、損益通算も含めて議論したいと考えています。あと、所得税分類の中の損益通算の中で、まあほかにいろいろ所得がございまして、一時所得だとか譲渡所得とか不動産所得とか雑所得等々ございますが、一時所得も控除50万円を引いた後、やっぱり2分の1課税なんですよね。こういうのをどこまで残すか。あるいは雑所得というのは文字通りその他所得を全部くくってあるものですから、年金も入るわ、原稿料も入るわ、政治資金も入るわ、あるいは給与関係で出てきたものが入るわ、いろいろあるんですよね。果たしてそういうようなごちゃごちゃのままで雑所得というのを今後維持するかという問題意識もありますし、それから不動産所得が、言うなれば節税の所得として使われているんじゃないかという批判もこれあり、またこの所得区分の中では損益通算というのを認めておりますから、雑所得の中で年金から、ほかの雑所得で損が出たときに引くとかいったような、全然関係ないような所得相互の通算が行われたりいろいろございますので、この辺の整理はしなきゃいけないだろう、このように考えています。
それから4番目、「世帯構成に応じた税負担のバランス」。これは我々、実像把握からやっておりますように、やはり家族の在り方、世帯の在り方、あるいはそれぞれの絡みでの諸控除の在り方ですね、とりわけ人的控除の在り方ということで、どうしようか。まあ特定扶養控除みたいな、その辺で検討の材料になると思いますし、まあこれとの絡みで、ここに明示されておりませんが、課税単位の問題というのをもう一回議論したほうがいいんじゃないかという議論も、税負担のバランスあたりと絡めて出てくる可能性がありますよね。今、日本というのは個人単位なんですよね。個人単位でありながら、非常に家族とか世帯の面倒を見るという前提での控除があるわけですよね、扶養控除みたいなのは。まあそれを今後どうしていくか。あるいは世帯単位に戻すのか、あるいは夫婦合算できるのか、二分二乗でいこうかなんていう議論も、少し枠を広げて議論する必要があるかもしれない。
5番目の「所得再分配機能」は、中身は税率の問題と課税最低限の問題、この二つ。つまり、税率を強化すれば再分配効果が高まる、あるいは課税最低限が上がればどうだという議論と絡んできますけど、これは別のことから言えば、基本的な租税構造という意味で、税率の問題と課税最低限の高さ。課税最低限というのは、まさに所得控除をどれだけどう認めるかという議論でありますので、これを税源移譲等々と絡めて大きな問題になろうと思っていますので、おそらく本丸の議論になろうと思います。
個人所得税のほうですが、これも地方分権、そして税源移譲という形で、住民税のほうがどんどん太ってくるというか増えてくる。所得税から徐々に移りますから。そうなりますと、従来の住民税のような考え方でいいかという議論が当然あるわけですよね。これは税務執行体制が本当にちゃんとできているのか。例えば今は前年課税だけど、国税と同じように現年課税、こういう議論は総務省のほうも問題意識をもっているようですし、それから課税ベースそのものの拡大という意味で、所得税もやるなら地方税はもっと応益原則に沿って課税ベースを広げる余地があるんじゃないかとか。あるいは所得税と住民税というのは、なんか似たような感じで運営されてますが、抜本的に変えて、住民が分担、その責任を果たすという意味で、おそらく課税最低限というものも随分意味合いが違ってくる。あるいは均等割りなんていうのも、今、県と地方を合わせると4,000円かな、あまりに低すぎるんじゃないかというような議論もあり、住民税自身が税務行政を含めて大きな岐路に立っている、まして税源移譲と地方分権の流れの中で、住民に直面したところで徴税が可能とは言いつつ、かえってそれが裏目に出る可能性もあるんじゃないか。特に今、大阪市の問題みたいなものが出てまして、一体どうなるかという議論が出てくるわけです。
今回、「納税環境の整備」というのもかなり大きな論点になるし、これに重点を置いて議論をしたいと考えています。納税者番号、当然これが入ってきます。今まで金融番号というような形で金融所得の一元化と絡めて議論をいたしているつもりでしたが、やはり国会の議論、小泉首相自身の問題意識等々、あるいは年金制度の一元化と絡めての自営業者の所得捕捉を含めて、納番の在り方が問われていますので、これはやはり大きなテーマとして議論したい。それから、先ほど申し上げた記帳制度というのも、おそらくすべて事業所得者に義務づけると、青色申告というのは要らなくなるんですね、全部が記帳義務を課するならば。言うなれば青色申告という形でちゃんとしているところに恩典を与えるという形で記帳を促進してきましたけど、もっと広げて、事業所得全体として記帳が必要だということにならば、青色も白色もなくてみんなやってもらうということになると、青色の意味合いが変わってくる、そう思いますね。それから立証責任なんていう議論に多分なって、今、アメリカと違って日本は課税当局にあるわけですよね。しかし、いつまでも課税当局がいいのか、それとも証拠が近いという意味では納税者が立証責任の一部をもっと負担してもいいじゃないかという議論もこれあり。それから、源泉徴収、年末調整の制度だと、一般のサラリーマンが税務署から遠のいてしまう、これが果たしていいか。先ほど申し上げた特定支出控除というのが実額控除を認めてるんだけど、ほんの数人、十数人かなあ、しかやっていないというのは、それが面倒くさいんですね。ただし、給与所得控除を見直すときには、実額控除の制度も当然認めて、一般のサラリーマンでも、会社頼みの納税ではなくて、自分の裁量に基づいた納税という制度で納税者スピリットを養ってもらうということも当然あり得るだろうと思っています。
それから公示制度、前々回ぐらいの…いや昨年かな、いろいろ問題提起したのが実現しておりませんが、公示制度というのは今はあれかな、所得税が1,000万円以上だったかな、それが公示されますけど、あれが犯罪なんかで利用されているという点もあって問題視されております。
というわけで、これがさっと受けた議論で、ちょっと今日は長くなりますが、最初でありますから、我々の議論の展開を少しご説明したほうがいいと思います。どういう議論があったかと4点、ここでまとめて、この説明の中で各委員の問題意識がどうかという意味でご説明します。
第1点目。これは非常に我々は悩ましいんですけど、課税最低限の意味づけが非常に変わってきたという認識を我々は共有しております。というのは、数年前まで日本の課税最低限は非常に高いと。これを下げて、納税者の割合を増やしていきたい、まあ「税収の空洞化」なんて言いました。そこで、例の配偶者特別控除等々も下がってきたわけでありますが、今、世界の大きな流れは、所得控除から税額控除にしているんですね。課税最低限というのは、はっきり言って所得がかからない最低の、ここまでの水準よという意味がありますから、基本的な所得控除を五つ六つ重ねて、いわゆる300万とか350万ていうふうに積み上げたわけですよね。ところが、イギリスでもアメリカでも、児童控除的なものが税額控除になるということは、税額控除というのはご存じのように、すべて所得税を計算した後に10万円とか20万円、ぼおんと与えるわけですよね。これは所得控除とは違うんで、所得控除というのは、ここまでの所得にはかからないというわけだけど、税額控除の場合は、その税額控除をかからなくなる所得というのがまたあって、これを具体的に放り込んでいくと、結果的に税額控除がある国ほど課税最低限は上がってくるんですよね。もちろん、極端な例を言うと、住宅ローン控除って税額控除ですよね。あれは50万円ぐらいの税額控除があると、夫婦・子ども2人の給与所得は、確か900万円ぐらいまで、ノータックスになる。そうすると課税最低限900万というような、極端な例ですけど、そうなっちゃうんで、そうやって税額控除というのが入ってきた段階において、一体課税最低限を国際比較してどういう意味があるか。あるいは過去の流れから見てどういう意味があるかということをもう一回検討すべきであるという議論が、今日非常に大きな問題意識として出てまいりました。
と同時に、税額控除というのは、言うなれば税金をまけてもらうんだけど、逆に言うと、今度は歳出で児童手当みたいにもらう場合がありますよね。そうなりますと、言うなれば、まさにプラスのほうでもらってくる分との兼ね合いで、やっぱり所得がかからないという水準との比較においてそれもやらなきゃいけないんじゃないか、そういう議論ですね。それが第1点。つまり、課税最低限の基礎概念をしっかりまとめ、過去のいろんな引っ掛かりも整理する必要があるだろうという議論をいたしました。
それから、定率減税が戻った後ですね、所得税の累進度のカーブをどうしようかという議論が多分これから大きな問題になる。ご存じのように、イギリスというのは、後でこの図を見ていただければわかりますように、課税のネットに入っていたのが急激に上がるんですね。日本というのは、だらだらだらだらと上がっているんですね。どっちがいいかというような議論も、税率の決め方としては大きな意味をもつんではないかということですね。
それから、先ほど三つ目の問題は「所得税の復権」と申しましたが、これはひとえに財源調達機能が衰えているということなんですね。今後、どう考えても基幹税としての所得税が、税収がしっかり上げられるようでないと日本の税制はもたないだろうという意識をもっております。例えば、国民所得比の中で所得税・住民税を合わせて、日本てたしか6%ぐらいしか国民所得比はなくて、デンマークとか北欧は20%を超えるんですよね。あるいは、間接税の国と言われるフランス、ラテン系の国でも十数%なんですよ、国民所得比で言うと。所得税・住民税ね。いかにこれ低すぎるじゃないかと。ただ、これを表に出して、どれだけ国民の方に納得してもらうか。あるいは、所得税というのは減税・減税というイメージで、所得税というのはすべからく減税のほうにあっているんじゃないかという意識をもっているわけですよ、皆さんね。これのベクトルをどう変えていくかというのは非常に大きな問題になるんじゃないか、このように考えております。
まあ、幾つかほかにもございますけれども、もう一つあえて言うと、冒頭申し上げた4点目として、地方の税制度を本格的にどう再構築するかという問題が大きいだろう。特に、3兆円規模の税源移譲が行われるとして、だんだんだんだん住民税のほうが国税の所得税より大きいという世界が出てきたとして、国税のほうはいろいろ問題があっても、それなりに徴税機構というのはしっかりしているんですね、相対的にですけどね。ところが、地方というのはそれだけに見合った制度がはっきりしているかと。例えば、地方の税務当局の、言うなれば能力なり関心なり、どうなのかという点も含めて、そこをはっきりしなきゃいけないということと、先ほど申し上げたように、住民税と所得税は性格が根本的に違うと考えて、やっぱり課税ベースであるとか、あるいは税率の設定というのも、応益原則と応能原則に分けてどう切り替えていくかというあたりが大きな問題になってくると思っています。
そういう意味で、現年課税なんていうのも現実的な議論として今後話題になるであろうというふうに考えています。すなわち、今まで国税の前年分をもらってきて、そこで自分たちでかけていくというような話ですが、今、職業選択の自由もあったり、所得の変動性も非常にあるときですので、前年課税では本当に担税力は分からないだろうと。その年に獲得した所得をベースにして担税力が出て、それで納税すべきであるというのは正論だと思いますので、まあこの辺のことがひとつ問題になる。
最後に5点目で、補足的でありますが、これはもう既に申し上げたことでもありますが、増税項目オンパレードにならないように、まあならざるを得ない面があるんですけど、所得税の世界でですよ、やはり国の政策としてなにか一つ、税のほうで手当をする必要があるとなれば、少子化対策ではないか。これは、ある意味で少子化対策を税だけでできないということは明々白々なんですが、しかしそうは言っても、税の中でもそれなりに寄与すべきであるという形で、まあ具体的に言えば、扶養控除の税額控除化みたいに、税額控除すると低所得者に手厚くなりますね。だからそういう意味で、どこの国も児童手当みたい、あるいは児童控除みたいのを税額控除にしてますけどね、これが一つのいき方として日本でも検討されるべきではないかと考えております。
それから、最後に例の税源移譲した後の住民税・所得税の税率構造等々は、事務局にいろいろ今、試算等々をお願いしているんですが、なにぶんにも、一体幾ら国から地方に移るかというその規模が正確に決まらないんですよね。3兆円規模と言ってますけど、例の中教審でもんでおります義務教の問題等々含めても、あそこは8,000億やるのかな、あれが決着つかないと、一体幾ら移せるのか、2兆円なのか2兆5,000億円なのか、2兆8,000億円なのかわからない。ということは、今から税率構造を変えたり、課税最低限をいじくるとかいったような具体的作業は、内々シミュレーション的にはやってもらっても、税調として公開するまでに至らないという形で、この問題は3兆円規模のところが正確にわかる年末ですか、あるいは秋深まったころまで、どうもお預けになるんじゃないかと。私は夏までにできるだろうと思いましたけど、ちょっと無理なようですね、いろいろ事務当局との議論をやりとりした結果。まあそういう意味で具体的なイメージ図、例の10%フラット化して云々のイメージはございますが、あれを具体的にどう設定していくかというのは先の話だと思っています。
次回は5月17日、基礎問題小委員会で、これは所得区分とか所得収入等々の、先ほど申し上げた幾つかある所得項目の中のバランスを考え、損益通算をどれとどれとやるといったあたりを、もう少し過去の問題点を整理しながら議論していきたい。これはこれまで税調で本格的にやっていない議論でありますので、これは非常に重要だと思っています。それから今週の金曜日に非営利法人のワーキンググループと一緒になって基礎問題小委員会が、非営利法人問題を本格的に議論したいということを考えております。当分、二本立てでいこうと思っています。
ちょっと長くなりました。以上です。
〇記者
まず最初に、見直しのスケジュール感みたいなものがありましたら…。
まあ一気に来年全部できるということでもないと思うので、一つは、定率減税の廃止のときにどのぐらいやるのか、それから消費税の引き上げのときにどういうものがあるのか、あるいは、そこで残るものがあるのか。その三つをお願いします。
〇石会長
それは、税調としてね、第一段階、第二段階、第三段階あってメニューをそろえるということはできないと思うし、あんまり意味がないと思ってるんですよ。私、意味があると思ってるのは、税調というのはですね、企画・プランナーとしての役割でありますから、とりあえずやりたいことを全部洗いざらい出そうと思っています。そういう意味で今、おっしゃった定率減税のときにどういじくるかに限らず、あるいは消費税のときにどういじくるかに限らず、所得税はこことこことここが問題だと。したがって、2006年度以降、まあ何年になるのかなあ、よくわかりませんけど、3年か4年か10年かはわかんないけど、所得税のあるべき税制という姿を描いて、それに向かってどういうことをやらなきゃいけないかという見本を示したいと思ってます。で、そこからどれが吸い上げられて、実際に実現するかというのは、まさに僕は政治家の問題だし、党税調の問題かもしれない。しかし、まあ我々としては、自ずからそのプライオリティが分かる書き方ができたらいいと思いますけれども、とりあえず今、全力を振り向けたいことは、トータルの意味での主要論点を整理するということのほうに主眼があります。何となくわかるでしょう、意味合いは。
〇記者
それから、「本来の機能の回復」というところで、税源の調達機能と再分配機能ということだと、先ほど石さんもおっしゃったように、どうしても増税が必要となりますよね。で、あるべき税制というと雇用や家族の構造変化に対応した税制にすると。これは、要するに税制の組み替えというよりも、やはり時代の流れに合った税というふうなところを主眼に置くのか、それとも増税という形で財源調達とか再分配機能を達成するというところに主眼を置くのか、それはどちらなんでしょうか。
〇石会長
それは非常にいいポイントを言っていただきました。我々として、財源調達機能云々といいまして、これはあくまで結果でありまして、我々がやりたいのはやっぱり現行の所得税の歪みなりですね、やせ細ってしまった原因を追究するとかですね、それから公平・簡素・中立の視点から見てどういう問題があるかという所得税の、言うなれば理想とすべき方向に近づける制度改革を組み込めるかと。その結果としてね、これまで減税・減税でやってきた所得税の構造をですね、やっぱり歪みをなくすとか、不公平をなくすかということになりますとね、自ずから結果として増収になる要素が多いでしょう。つまり、所得控除が多すぎるというような話が典型的な例ですけどね、それを縮めていこうということになれば、いくら基礎控除とか扶養控除を税額控除して拡大しても、思い切ってほかの控除を削っていけば、ネットでは増収になる可能性、大きいですよね。あくまでバイプロダクツじゃなくて、要するに結果として出てくる増収を念頭に置いているんでありまして、やにわに増収というと、何でもいいから税率を上げて、課税最低限を低めて、所得控除を蹴っ飛ばしてっていうような話になりますけど、それはいかにも乱暴なんでね。税調としてはやっぱりそこは清々粛々と理論立てて議論したいと、このように思ってます。それが我々の使命じゃないかと思ってますから、やにわに増収ありきという議論…皆さん、結果だけ見ればそうなるかもしれませんけれども、プロセスが重要ですからね、そこをちょっと念を押しておきたいと思います。
〇記者
今回の夏までの議論では、単に中期的な論点整理をやって、2006年度改正の所得税から住民税の…。
〇石会長
仕組みだな。ですから、先ほどの7項目ありますね。まあ、こういうものを念頭に置いて主要論点整理をしたいと思ってるわけですよ、6月ごろまでに。で、この7項目がもっと項目が、例えば課税単位が増えるかもしれないし、なんかいろいろあるかもしれませんよ。ただ、大きなコアな部分はここで、これ過去にいろんなことやってきたし、また新たな展開も出てきたということを踏まえて、と思ってます。そういう意味でかなり大規模な所得税の抜本見直し提言みたいな話になろうかと思います。それは大きいのも小っちゃいのもあるし、さまざまだと思いますよ。やっぱりやりたいことは全部、今挙げておいたほうがいいと思いますから。そういう意味で、定率減税はまあプラスのほうに作用…プラスというか、戻すだけでしょう。税源移譲は、まあ国税と地方税の間ではネット中立だけどね、しかし国税のほうから3兆円規模で動かすとなると、かなりの税率緩和であるとか、ブランケットをいじくるになる、あるいは税率緩和5%つくるかもしれないし、所得控除を多く見直すということになりますとね、従来これがなければもっとやりたかった不要な控除をなくして、必要なものをあげるといったスイッチのうち、上げるほうばっかり先やらなきゃいけないなんてことになるとね、やっぱりオーバータイムでもう少し長い目で見て、これとこれは直したいというのは今のうちしっかり書いておかないと、いいところだけ取られちゃうということがあり得ますね、そういう問題意識です。
〇記者
給与所得控除のところですね、これを過大すぎるという問題意識があるから、まあ縮減の方向になっていく。で、これは確認なんですけど、その方法としては、今、例えばサラリーマンの場合は源泉徴収とかいうのがあって年末調整があって、自分では何もしないから、それを、まあ今は特定支出控除というのがあるけれども、実際はないと。ただ、サラリーマンとして、なんか自分で確定申告めいたものをやって、実際に必要だった経費みたいなのを申告した分だけ控除してもらうという方向を検討すると、そういうことなんでしょうか。
〇石会長
ええ、特定支出控除というのは、制度はつくりましたけど、ほとんど形骸化というか全然使われてないんですよね。というのは、それだけ面倒くさいいろんなことがあると。やっぱり、会社にやってもらうほうが楽ですからね。ただ、そうは言っても、今、複数の所得がある人、それから年収2,000万円以上の人、そういう人は確定申告してますよね。それをもっと一般のサラリーマンがやってもいいんじゃないかという問題意識をもってますんで、実額控除で、つまり給与所得控除が過大だということは、給与所得控除が下がるということでしょうね。だから、その範囲ぐらいは自分で重ねていって、あるいはそれを超えるようなことが合法的に認められれば、それはそれでいいんですよ。そういう点で少し納税者意識を高めてもらう意味で、納税者の感覚を呼び戻したいとねらいもあります。まあ、どのぐらい参加してくれるかは、制度の仕込みでしょうね。それも念頭に置いてやりたいと思います。
〇記者
細かい点ですけど、金融番号の議論の話なんですけど、昨年は、これはやっぱり個別の番号として検討したほうがというような話が多かったように思いますけど。
〇石会長
はい、多かったと思います。あのですね、それは金融所得の一元化というやつが2008年ぐらいまで先送りになったということと絡んでんですよ。例の10%の配当とキャピタルゲインとがあって、これが特例が直るのが、たしか2008年かな、全部なくなるのがね。で、20%一律になったときに、損益通算ができるような仕組みを構築したいわけですね。そのときに番号制、絶対必要なんですよ。まあそういう意味で、金融だけに限る番号というのがそことかませたら、まあ番号に対して抵抗のある人もですね、自主申告できるからという意味でそういう制度を考えてたんですけど、今、国会筋あたりではそういう金融だけに使われる番号というよりはね、もうちょっと大きな意味の納番を考えてますよね。僕は自営業所得が番号で捕捉できるとは思わないけども。ただ、アメリカなんかを見てると、あるいは今は日本もそうだと思うけど、複数から給与所得をもらっている人が増えてきますね、これから多分。ということもありますし、番号の使い方がもうちょっと広い意味で出てくる可能性があります。そういう意味で納番ということは、金融番号と別にね、再検討、あるいは構築してもいいじゃないか、という議論が新たに出てきたんで、一応金融番号とは切り離した形で議論したいと思います。だから、新たな予想が出てきた。まあ小泉さんも、なんかその辺のほうの関心が大きいですね、お話を聞いてみると。
〇記者
税額控除の話なんですが、世界の流れだと、所得控除から税額控除になって…。
〇石会長
特に児童控除のところですね、扶養控除のところですね。
〇記者
はい。というところで、これが今日の議論の中でも、課税最低限の意味づけが変わってきたということなんですが、この問題意識として、早急に取り組まなければいけないものなのか、即…。
〇石会長
どっちが? 課税最低限の低減、それとも所得控除、税額控除?。
〇記者
所得控除。
〇石会長
所得控除から税額控除ですか。それは問題意識としてはかなりもってます。というのはね、ご存じのように、所得控除というのは所得水準に応じて税負担が、高額所得者ほど有利なんですよね。ところが税額控除というのは、税金を全部計算した後に、金持ち・貧乏人関わらず、低所得者にも10万とか20万ポーンと引きますからね。それは所得に応じて、いわば低額所得者のほうが相対的に手厚い保護を受けるんですよ。という点から言うと、同じ税源を使うならば、所得控除よりも税額控除で、特に少子化対策などということになれば、児童手当や扶養控除は、税額控除のほうがいいだろうという問題意識をもってます。先ほど申し上げた少子化対策に税制をというのは、そこが一つポイントですね。これは各国でも始めている話です。ということになりますと、課税控除の計算云々でですね、国際比較も難しいし、日本でもオーバータイムでやる比較も難しくなるので、課税最低限ということ自体の概念づけ、意味づけが変わってくるということを申し上げたんです。
(以上)