総会(第40回)・基礎問題小委員会(第49回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成18年3月10日(金)4:11~4:19
〇石会長
総会・基礎問題小委員会合同会議が終わりました。ご報告といってもそうないのですが、今日ございましたのは社会保障関係、特に現場の厚労省の方々からのお話と社会保障の専門家の小塩先生と、お二人から聞きました。この問題は、まさに各人各様、とらえ方が個別でございまして、全体で何か統一的な見解を出すといったような話じゃないんですね。それと同時に、我々の念頭にございます社会保障制度というものについて給付が増えて大変だろうというので、削減の切り口が云々という議論があるわけでありますが、まあそういうことも今日は具体的にいただけなかったかと思います。ただ、皆さん少子高齢化の中で、かつ年金、医療、介護を維持するだけでこれは大変なので、いずれいろいろな形で合理化、削減等々をしていかなければいけないということについては見解が、まあこれから意見を交わしていきますが、出てきたんじゃないかと思います。とりわけ小塩さんのほうから税制に対するご発言とか、あるいは世代間の、あるいは世代内の公平とか効率という視点から、いろんな形の興味ある示唆に富むお話をいただいたと、私はそういうふうに考えております。厚労省のほうは、ちょっと情報過多でありまして、あの短時間にご説明いただいたものがみんな自分のものにできたかどうか、ちょっと心配ではありますが、後で資料を見てもらえればと、このように思っています。
あと、税調の進め方なんですが、実は社会保障と地方財政関係、特に地方交付税の問題、財制審でも興味を持っていますが、我々も同じような視点から、歳出の整理合理化、あるいは削減問題としてひとつ議論する必要があります。いずれ地方交付税を中心とした地方財政関係の議論を、これは4月に入りましてからやりたいと考えております。具体的には、まだ中身は決めておりませんが、そういう形でございます。
それから、次の大きなテーマ、今月24日に考えておりますのは、歳出歳入一体改革の問題、財制審が恐らく歳出カット中心の試算を出してくるんだろうと思います。プライマリーバランスがどうなるか、その後どうなるか等々の、第一次試算が出てくると思いますので、それを税調でご説明いただく。その後、両審議会から数人の専門家を中心として、メンバーに選ぶというよりはお願いして、議論を今月末に一回やってみたい。これはある意味では、税調側から見ると、長期試算に対して税調側の立場からいろいろコメントをするという格好になっていくのかなと、このように考えております。
そういう意味で4月までは基礎研究、基礎勉強という形にならざるを得ないと思いますけれども、長期試算等々をベースにいたしまして、全体像を次第にクリアカットにしていきたい、このように考えています。
申し上げたいことは以上でございます。
〇記者
今日の議論というか勉強会の中で、年齢中立的な税制というのが出てきたんですけれども、これは控除の縮小とか課税強化なのか消費税なのか、会長のイメージというかですね。
〇石会長
公的年金等の控除の問題とか、老年者控除のときは、たしか特に年齢だけで優遇するのは問題だという、そういう切り口は出した記憶がございます。今後恐らく、今日の議論も踏まえて言うならば、年をとったからどうだとか、若いからどうだとか、つまりそれが所得にひっかけるとか、資産にひっかけてですね、何かしにくいでしょうね。そういう意味で、具体的に制度設計をするかどうか、今日小塩さんもこの辺は触れていたと思いますが、相対的に言って、年齢のファクターを、具体的な設計でこれがどれだけ取り上げられるかはこれからの議論だと思ってます。
〇記者
財審との合同の話し合いの場なんですけれども、これ、合同会議でしょうか、どういう形で…。
〇石会長
非公式な、代表者会議というような位置づけで考えております。本来だったら、全員が参加するという、いわゆるジョイントコミッティがいいんでしょうけど、恐らくそれをやると60~70人になっちゃうんじゃないですか。とてもそれでは会議体としての体をなしませんから、恐らく双方から会長、会長代理、あるいは小委員長等々を入れて10人ちょっとぐらいの人数でやれたらなあと思ってます。ちょっと増えるかもしれませんが、まあそのぐらいが会議体としていいのではないかと、このように思います。
〇記者
最近、少子化対策と税制に関してですね、例のN分N乗方式とか税額控除方式とか、幾つかそういう話が出てきてるんですけれども、それに関しての会長の…。
〇石会長
それはまさに課税単位の問題ですよね。タックスユニットの問題ですよね。これはもうまさに、シャウプさんが出てきて以来の日本の所得税制の根幹に触れる問題で、そう簡単に結論は出てこないとは思いますが、戦前の世帯単位から戦後、個人単位に変わったという、そういう経緯がありますね。今後、少子化等々をにらんでN分N乗方式でやるのか等々、いろいろな議論が出ておりますけれども、現行制度は個人単位で一応仕組まれてますね、いろんな意味の所得控除は。だからN分N乗方式にするんだったら、まさに所得控除の全般的な見直しが必要でしょうね。それから、累進構造の見直しの議論も必要になるでしょう。かなり大きな問題です。ただ、今のところ、いろいろ論点があれば、それについて議論をしてみたいと思ってますし、既に昨年の6月の段階で、「論点整理」のところでそれにかなり触れてます。それをもう一回見直してですね、改めて少子化対策に役に立つのか、あるいはファミリーポリシーですね、家族設計に役に立つのか、そういう視点からもう少し議論したいと思ってます。これからの課題というふうに考えてます。
〇記者
今日小塩さんの発表で、今、政府のとろうとしているような少子化対策に対して、割と懐疑的な見方が示されたと思うんですが、会長ご自身の考えは。
〇石会長
恐らく研究者の中でもですね、幾つかその辺は分かれていると思います。僕の印象では、小塩さんの見解というのは、かなりマジョリティじゃないかと思いますけどね。私も小塩さんの意見に賛成です。本格的にやるんだったら、要するに税でやるというのは、税金を払ってない人は無関係になっちゃうから。恐らく少子化なり晩婚化なり晩産化等々というのは、やっぱり低所得者層のほうの人をかなりカバーする必要があると思います。今日彼は、所得制約を設けて、低所得者層に恣意的にやるほうがいいと言ってましたけど、恐らくそういう議論というのは、税じゃできないんですよね。そういう意味で、税でできる範囲というのはいろいろ考えてはみますけれども、あくまで補助的なというか、補完的な役割だろうと思ってます。そういう意味で税でやるのは私は限界があると思う。それから、手当をしたらどうかという議論もこれからありますけれども、政府がどんどん出てくるのがいいかどうか、これは検証しなきゃいけないと思ってます。
(以上)