第39回基礎問題小委員会 議事録

平成17年6月7日開催

委員

それでは、再開させていただきます。

基礎問題小委員会で、これから個人所得課税を中心に議論をしていきたいと思います。今、お手元に配られると思いますが、最初にこれを読んでいただかなければいけません。いろいろな形で説明もしなければいけないのですが、とりあえず用意されております「論点整理(素案)」というのを読み上げていただきまして、そのあと、税制第一課長からご説明をいただきたいと思っておりますので、読む過程におきまして、ご自分のもの言いたいところはチェックをしておいてください。

では、朗読をお願いします。

[事務局読上げ]

委員

ありがとうございました。

では、税制第一課長、後ろについております資料の使い勝手も含めて、ちょっと補足説明してください。

事務局

大部にわたるものでございまして、簡単に二、三、補足をさせていただきます。

まず1ページ、この論点整理の趣旨でございますが、第2段落目、ここは字句をお読みいただければと思います。前回の会合で、今回の見直しというか、検討の基本的哲学は何ぞや、こういうご論議がございました。実は、この十何ページにわたってそれぞれ出てくるところの考え方というのはなかなか一つの言葉では言い表しにくい、そういう面もございます。我々の気持ちとしては、この14行目から始まる、構造変化にキャッチアップしていきたい、歪み、不公平、こういったものを直していきたい。

22行目でございますが、「こうした取組みは、結果として、個人所得課税の本来果たすべき財源調達機能の回復にもつながる」、こういう位置づけが最小限言えることかなということでございます。

さらに、このページの下の2行でございますが、先ほど会長からもお話がございましたように、今回のこのペーパーは論点整理ということでございます。中身、議論がオープンエンドになっているものもかなりございますが、基本的にはグランドデザインを書いていくに当たっての主な論点を整理したもの、こういうふうにご理解いただければと思います。具体的中身につきましては、財源調達、税収水準をどうするのかといったことも含めて、今後、例えばこの秋以降であるとか、実際の改正が行われる年度での議論をさらに一層深めていただく、こういう位置づけかなというふうに思います。

2ページ目以降、まずは所得の種類。ここは飛ばします。

7ページ、「世帯構成と税負担のあり方」ということでございます。配偶者との関係が8ページでございますが、8行目に「現行の配偶者控除制度については、次のような問題点がある」ということで、「まず」というのが第1でございます。さらに14行目、「また、」ということで、就労に対する中立性。19行目、「さらに」ということで二重控除の問題。この3つの問題点について提起しております。従前は、「また」で始まる家族の就労に対する中立性、この辺を中心に議論してきたわけですが、第1の論点、これは今年のこの報告書の一つの新しい切り口でございます。

N分N乗についてややたくさん書いておりますが、前回の説明はちょっとわかりにくいというご指摘もございまして、おしりから2ページ目のポンチ絵をもう一度ご覧いただきたいと思います。本文の文中にも出てまいります、フランスにおけるN分N乗方式の計算でございます。左半分をご覧いただきますと、所得をまず足します。Nは家族除数というわけですが、Nでまず所得を割ります。これは夫婦子2人で家族数は4人ですが、Nは3。フランスは第1子と第2子を半人分とカウントしておりまして、1+1+(2分の1+2分の1)で3。第3子以降は一人分というふうにカウントするようでございます。

このNの3で割ります。左から2つ目の柱ですが、そこからまず何をするかというと、Aという税率不適用所得、これは基礎控除みたいな機能を持つわけでございます。これを差し引いた残り、これに一定の税率をかけて、さらに最後に、×3、×N倍する。要するに、Aを引いて税率を掛けるという作業を3回するということでございます。今度は右のほうからご覧いただきますと、妻と夫の所得を足します。そこから所得を、この場合で言うとN個、Aは3個、差し引きをしてそれでnの税率を掛けることと実は結果的に同じである。

ここで何を申し上げたいかというと、課税ベースの観点から申し上げますと、N分N乗して1回Aを差し引くという作業をするのと、右側で申しますと、所得控除の形でAを3つ引くことは同じ機能を持っている。ただ、ご案内のように、フランスの場合は税率がかなり初めの段階でスティープルに上がります。日本の最低税率との間に3段階ほどございます。3で割る、ないしはNで割るということで適用税率が下がる、そういう効果は当然あるわけですが、日本の場合はほとんどが10%で終わっている:こういう問題があるということでございます。

本文に若干戻っていただきまして、10ページでございます。実効税率の水準が大切だということを受けまして課税ベースとなっているわけですが、いわゆる課税最低限という話と課税ベースの話がとかくごっちゃになっていた嫌いもございます。その関係で、最後のページ、おしりについている1枚紙をご覧いただきたいと思います。

もちろん、課税ベースを考える際には課税最低限というのも大切な考慮項目ですが、実は課税最低限で議論されているのは、この中で言うと、左側から2つ目、各種所得についての控除と給与所得控除と人的控除の上3つ、さらに、その他の所得控除の中に入っている社保控除、これだけを取り出して機械的に計算をしているわけです。課税ベースを語る際には、左側、非課税所得というのがいろいろある。矢印で引いております。そこから各種所得についての引き算ということで給与所得控除、これが例にありますが、そのほかにもいろいろございます。さらに人的控除。人的控除の中には、本文にも出てまいりますが、勤労学生控除といった特別な人的控除もある。さらに、その他の所得控除ということで、雑損控除、医療費控除、社保控除、こういったものもあるということでございます。

課税ベースを議論する際には、課税最低限でカバーしている一部分ではなくて、もう少し視野を広く持っていただきたい。こういうメッセージを今回出していただければなというふうに考えておる次第でございます。

以上、さっと補足をいたしましたが、その後、いわゆる納税環境整備のところで納税者番号制度の議論が出てまいります。14ページからでございますが、23行目に、「事業所得に関しても納番を活用することができないかという議論がある」、これが今回の新しい目玉になっている箇所でございます。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

事務局

それと、宿題の話をちょっと。

委員

お願いします。

事務局

お手元の「基礎小39」という資料で、これまで幾つかの実効税率等のデータにつきまして、夫婦子2人だったのですけれども、独身者を加えてみた場合、あるいは社会保険料を入れてみた場合等々のご指摘がございました。まず1ページをご覧いただきます。これが、前々回だったでしょうか、各国の実効税率の比較でございます。夫婦子2人の場合がこの資料ですが、次の2ページが独身の場合で調べたものでございます。各国とも、今のお話にもありましたように、夫婦の場合には2分2乗だったりN分N乗だったり、アメリカなどは夫婦共同申告があったりして、夫婦の場合の税率が下がっておりますので、独身になりますとドンと税率がはね上がるという関係で、外国が少し上に膨らみが大きい形、税率が高いという姿になっております。

3ページは、社会保険料まで含めた実効負担率の国際比較ということで、社会保険料を入れますと各国と日本の差は少し縮まってきますけれども、全体としては下のほうということになります。

4ページがそれを独身でやった場合で、これは少し差が開くということになります。

5ページが、限界税率のブラケットで、前回、納税者の分しかなかったのですけれども、税金を納めていない人も入れてみたらどうかということで、これはデータで、1年を通じて勤務した給与所得者について「民間給与の実態」の資料に基づきましてやったものでございます。1年未満になりますと、家族構成のデータが一部ないことからブラケットがちょっとつくれなかったので、1年を通じて勤務した給与所得者。それから国民年金、厚生年金の年金受給者についてやってみたものでございます。給与所得者は15%くらいが税金を納めていない、7割くらいが税率10%ということになっております。

ちなみにこれは、就業者全部を対象にしてやると、税金を納めていない人は4分の1くらいということになるのですが、1年を通じて勤務した給与所得者ベースでやると、こういう姿になる。年金受給者については8割近くが税金がかからないという状況になります。

6ページはちょっと中身が変わりまして、退職所得に関して、転職がどれくらい起こっているのかというお尋ねがございまして、その希望率の推移でございます。若干でこぼこしていますが、最近、ずっと上昇傾向にあって、7ページは、実際どれだけ就業異動しているか。これは希望とか強制的なものを問わず、実際の転職の状況ですけれども、これも最近少しずつ上がってきているということが見てとれます。

以上です。

委員

ありがとうございました。今ご説明いただいたのは、これまで何人かの人から出た質問を受けて作成していただいたものです。今日のこの作文には直接関係ないかもしれません。

それでは残された時間で、今お読みいただいた、やや大部ですが、中身を検討しましょう。これも10ページあたりでちょうど区切れると思いますので、前半、後半と分けて、まず最初に前半から幾つか問題をお出しいただきたいと思います。技術的な問題で複雑なことも入っていますので、こなれていない表現もあるし、お読みいただいてすっとのみ込めないところもあるかもしれません。そういう点もご指摘いただきまして、文章自体のいい悪い、それの判断もしていただきたい、このように思っております。

それでは、どなたからでも結構ですから、前半のほうから議論を始めましょう。

委員

先ほどご説明がありましたように、これは個人所得課税の論点整理ということで、大きい方向づけとかそういうものよりも技術的な論点に集中するということなのでしょうか。

委員

技術的というよりは、これまで残された問題もあるし、ひずみ、ゆがみと言われたところの具体的な例を出すとか、いずれにしても1ページの一番下に書いてございますように、秋以降、一種のグランドデザイン的と。というのは、来年の今頃は中期答申を書かなければいけないわけです。中期答申を書くときの議論は今からやっておく必要があって、それを踏まえて書いてあるわけです。まさに基本的な方向は、出ているような出ていないようななんですけれども、パーツ、パーツでいろいろな論点を整理したという点で、性格的にはそういうことなものですから、主要な論点整理という形になっています。

ご意見は、それでは弱いということですか。

委員

いえ、平成17年度の答申で、消費税の引上げと二ケタという将来的な方向が出ているものですから、それとの兼ね合いで、今後、所得課税のあり方はどういうふうになるのだろうかと。例えば1ページ目の22行目に「個人所得課税の本来果たすべき財源調達機能」となっていますけれども、さて消費税が上がってくる場合に、ここ、何か意味が変わってくるのかなとか、そういうようなことをちょっと考えまして。

委員

つまり、所得税のマクロパーツとミクロパーツがあります。これは、マクロパーツの、どのぐらい税収を上げるために使うかどうかという議論はあえて書いていないわけです。これはある意味では所得税改革の中身の問題を直にやっていて、トータルな意味での税収確保の数量的な問題等は諸条件がまだ成熟していませんから、できないだろうという判断なのです。

そういう意味では、秋以降、これを使って具体的に来年度税制改正、中期答申を踏まえ、数年先を見ての議論というのはもっとできると思いますので、まだ決め打ち的に議論はできないという判断に立っていますが、そうじゃないだろうというご意見もあれば、ぜひお伺いしたいと思います。

委員

やはり中期答申あたりを……。

委員

それをにらんでということですね。準備段階と思っていただいて構わないと思います。

委員

わかりました。

委員

どうぞ。

委員

最初に会長のご判断を聞いておきたいのですが、ここにもおわりに書いてあるけれども、来年の税制改正、拙速にできるものではない、着実にやるんだと書いてある。ゆがみと不公平という2つの視点からのびのびと問題点を指摘しているわけです。それでいいんですよ。いい勉強の材料になるけれども、ただ、秋口の我々の作業を考えてみると、この中でいろいろな項目にわたって所得税のゆがみ、不公平が書かれている。どれを突破口にして、何項目くらいやって、あとは、そうもいかないから少しゆっくりやろうかと。そういう戦術面みたいなことについて、会長が何か判断を持っていらっしゃるなら聞かせてもらいたい。

委員

まさに政治問題、ポスト小泉の話にもよると思いますけれども、ただ、秋以降の大きな論点は一つは税源移譲に伴う話でしょうね。国税、地方税の関係。それから、定率減税が果たして来年の1月からできるのか。残り半分の定率減税についてどう考えるのかという話もあります、所得税につきましては。そういう意味で、ここに書いてありますこと全部を一気に来年4月からできるとは到底思っていません。

そういう点から言いますと、所得区分の中でいろいろ出されている問題点--不動産所得をやめてしまえとか、一時と雑をまとめてしまえとか、できればの話ですけれども、給与とか退職金で何かできるかとか、その辺の問題から入るのがいいのかなと思いつつも、今の委員がおっしゃったように、消費税の話が絡んできたときに所得税をどうするかということなんです。ここに書いてあることが、何年先かに全部実現できればいいとは思っていますけれども、たぶん、なかなかそうは行かないでしょう。

そういう意味で、今言った外側の幾つかの大きな問題を片付けつつ、あるいは配偶者控除、退職・給与も含めた人的控除の見直し、それから、ぶら下がっている給与所得控除あたりがどれだけできるかですけれども、そういうあたり、来年は無理としてもその次の2007年度。ただ、消費税が絡んできますと、所得税は1回休みなんてこともあるかもしれませんが、そんな先の感触を持っています。

逆に、どうでしょうか、見通しについて政治的なことを含めて何かございますか。

委員

ございませんけれども、ただ少子化問題について、それもゆっくり2、3年たったら答申を出すぞというのではちょっと問題かなと。

委員

少子化はかなり先のほうの議論だと思っています。例の税額控除のことですね。

委員

はい。その辺ぐらいは切り込まないと、抵抗が大きいから全部ゆっくりやりたいというのでは、ほとんどあれにならない。

委員

この会議、世帯と扶養と子育て支援のあたりで何か重要な問題提起ができればという中で、税額控除化などというのは一つキーになると思います。

委員

質問というか、会長のご意見をお伺いしたいのですけれども、1ページのところで、財源調達機能が低下しているし、それから22行目、「こうした取組みは、結果として、個人所得課税の果たすべき財源調達機能の回復にもつながる」と書いてあります。これを見ていると、増税したいというのが本音かというように見えるのですけれども、そういうことですか。

委員

いいんじゃないですか。

委員

だけど、さっきの委員の話ではありませんけれども、少子化の話で、ほかの所得控除を整理したところから出てきた金を、全部そっちに突っ込んだらどうだというような話になれば、財源調達機能の回復にはつながらないわけですから、こういうことを書くのがいいのかどうかというのは……。

委員

逆に言えば、書いておかないと、全部突っ込めという議論になってしまうのではないですか。今の委員の例で言えば、税額控除、子育て支援のほうを大いにやるなら、ほかから探してきて全部突っ込めという議論になって、税収回復機能にならないですね。

委員

ただ、公平、中立、簡素な税制を構築していかなければならないと20行目に書いてあるわけです。今までに生じていたさまざまなゆがみや不公平をここで是正していこうということで、それが一番大きなことであって、財源調達機能の回復というものをわざわざ書かなければならないのかどうか。

委員

私は、結果としてそうなるという話をしているわけです。課税ベースを広げるという形で、公平、簡素、中立がおそらく実現されるのでしょう。そうなりますと、どうしても増収になりますね。その間接的な手法でいいのではないかと思っているのです。

委員

結果としてそうなるなら、あえて書かなくてもいいのではないかと思いますが。

委員

いえいえ、そこが重要なんですよ。要するにダイレクトに所得税改革を何のためにするかといったときに、すぐさま念頭に浮かぶのは増税路線で、所得税改革のためだったら何でもいいから税率を上げてしまえとか、どこかの所得控除を吹っ飛ばせという話になるけれども、そうではなくてそもそも論から言うと、公平、簡素、中立という錦の御旗を掲げて改革する、と。それは幸か不幸か課税ベースを広げるしかないのです、ここに書いたように。それはやはり増収策に結びつくわけです。例えば給与所得控除見直しも、退職所得控除見直しも、控除というものを縮小していけば課税ベースは広がります。

それから、今、一つ問題になっているのは、先ほどの委員がお出しになった、扶養控除の中の所得控除を税額控除化したときに本当に減収のほうに行くかどうかだと思います。

これは皆さんのご議論を賜って、所得税改革の単にパーツだけでいいのか、マクロ的な狙いまで書き込むかどうか。悩ましいところですけれども、ここはさり気なく出しているつもりですが、ぎらついて出す方法もあるでしょう、全く出さない方法もあるでしょう。この程度ですね。

どうぞ、時間もありますからどんどんご発言ください。

委員

書けることと書けないことがあるのかもしれませんが、今、基礎的財政収支が少なくとも一般会計で20兆円も赤字だという状況の中で、まあ、これは個人所得課税についてのことですから書いてはいないのですけれども、全体の税制の議論をしていけば、当然、それは念頭に置かなければいけない問題でもあります。もちろん、歳出削減だけで埋めろということを初めから決めればそれはまた別ですけれども、そこをどうするかということは誰の頭にもあることで、それを直接書くかどうかは別として、公平、中立、簡素という税制改革をやる中で何らかの含みがあるというのは、これはしようがない。そう見なければいけないだろうというのは当然思っています。

それからもう一つ、少子化対策に税制が取り組むのは大変結構なことだと思いますので、こういう書き方で結構だと思いますが、所得税の話だけにとどまらないことだけは少し考えてほしいですね。例えば育児休業、女性は1万人くらい取るのに、男性は10人台ぐらいしか取れない今の状況を考えると、それなどはずいぶん重要な問題ですので、これは逆に法人税でそっちを突っつくようなことも、場合によっては……。消費税などでも出てくるので、ここはこことして、ほかの税制でも何か考えられないかということは少し考えておいたほうがいいのではないかと思っています。

委員

どうぞ。

委員

2ページの21行目ですが、「給与所得者においては、自らの市場価値を高めるべく様々な自己啓発努力」--などは、していないのではないかと思うのですが。そういう人もいるけれども、「市場価値を高めるべく」というこの言い方が何となく気に食わない。こういうのはちょっと感じ悪いなという気がします。

委員

わかりました。感じよくするように考えましょう。

委員

8ページも似たような感じがあるのですが、夫婦のあり方などというものについて、「はずである」というのはうるさい。みんな勝手にやっているわけですから、これは、「税金を取るという観点から見れば」こうです、というふうになっていれば問題のないところもあるとは思いますが。

委員

ちょっとお節介かもしれませんね。

委員

余計なお世話であるというのは明確ですので。いろいろな夫婦がいるわけですから。ただ、税金から見れば、こういうふうにしかおまえらは見えないんだぞというのは言っていいと思います。

委員

わかりました。

どうぞ。

委員

2ページから4ページくらいにかけて、給与所得について、退職所得もそうですが、方向的にはそうなんだろうなとは思いますが、サラリーマンが一番頭に来ているのは、個人事業主、さらに零細事業者。ここの不透明性にものすごく頭に来ているわけです。ここでもその不公平は指摘していますが、申告をちゃんとしなさいよということを言っているだけで、結局、取られるのはサラリーマンだけかいな、という感じにとられやしないか。この概算控除というのがどの程度の担保になるのか、その辺のところがよくわからないので、個人事業主それから零細のところをもっと厳しく……。

委員

でも、青色申告を含め事業所得者も頭に来てるんですよ。給与所得者は莫大な控除を受けている、けしからんと、向こうは向こうは言っているわけです。

委員

結局、税金を払っていない、さっき説明があったように……。

委員

25ね。

委員

25と10何%はかなりあるんじゃないですか。

委員

それは向こうが所得が低いからでしょう。それは一概に比較できないと思いますけれども、ただ、おっしゃる趣旨もよくわかります。何か入れられたらちょっと考えてみましょう。クロヨン、トーゴーサンの匂いを少し書いたら、というご発言ですね。

委員

そうです。

委員

わかりました。

ほかにいかがですか。では、時間もありませんから、10ページ以降、後ろまでカバーしてどんどんやりましょう。

どうぞ。

委員

13ページですが、もう何回か申し上げている住民税の均等割の配分の問題です。都道府県の分を市町村に渡すべきだと、これはまさにグランドデザインの話です。金額的にはそう大したものではないかもしれませんけれども、地方分権ということを真面目に考えるのだったら、これはぜひやらなくてはいけないというふうに思います。

都道府県というのはむしろ道州制とか何とか、広げて広域になっていこうとしているわけです。それに対して市町村は、かつて基礎的自治体と言っていたのを基礎自治体とするということを言ってまして、完全にこれが基本であるということになっているわけです。地方分権というのはそういうことなんですね。そのために合併をやって、基礎自治体たる力をつけるということをやってきたわけです。そういうところに最もふさわしい税は何かといったら、固定資産税と均等割だと思うのです。そこは制度、この国のかたちの問題ですから、これだけはぜひ。グランドデザインをやろうというときに、これが論点から落ちているというのは私は信じられないような気がします。それが一つ。

もう一つは、読んでいておやっと思ったのですが、16ページの11行目のところです。「事業所得等に係る所得が300万円以下の者には記帳義務は課せられていない」というのですが、私、ちょっと記憶がはっきりしないのですけれども、これだけ読みますと、記帳しないでどうして所得が300万円以下だとわかるのか、というように見えます。収入だったらわかるのですが、ここのところ、書き方にちょっと工夫が要るのではないかと思います。

委員

わかりました。

総務省から何かリアクションはございますか。

事務局

均等割の話ですが、県が現在行っている事務、例えば警察であるとか、公立高校であるとか、市町村と同様にほぼすべての人が受益している業務を行っている。こういった仕事の見直しとは別に税だけ移すというのはどうかというのが一つ。

それから、移すとなれば、今、所得税と個人住民税では裏で財源論があって、それで税源移譲という話ですが、税源移譲の部分だけを書くことについてどう考えるかという問題があろうかと思います。

委員

書くなら、今言ったサービスのほうの区分も少し変えるとか、入れるということになるでしょうね。

どうぞ。

委員

関連してです。今の委員とちょっと考えは違うのです。一つはおっしゃっているのはよくわかります。例えば教会税みたいに、もともとの地方税というのはお互いに負担し合うものだから、負担分任的なものについては市町村にのみ、そういうご趣旨ですね。

ところが、もう一つ、共同作業でさまざまな事業をやっていくということがあって、それは道府県レベルでかなりやり始めている。というのは、私は道府県レベルのいろいろな独自課税をやる委員会をやらされているのですけれども、環境関係の森林保全とかそういうことについては、いわゆる環境税というか、悪い行為に科罰するような課税ではなくて、みんなで森林を守っていこうと。森林を守り合うというのは広くみんなに利益や負担が行くので、市町村レベルでは無理なのです。お互いに道府県民がみんなで負担し合おうということで、私が関係している中でも、すでに勧告を出して実現しそうなところが幾つも出ていて、すでに幾つも入っております。おっしゃる意味はわかるのですが、相互扶助的なことと共同作業的なことと両方をやるので、共同作業的なことは広域自治体が担っても構わないのではないか、そういうふうに思います。

委員

住民税を全部市町村にやれと言っているわけではないのです。均等割の話なんです。金額的にはわずかなものです。それで、森林とか何とかそういう問題もあるでしょう。それは、住民税の今度移譲したり何かするときの都道府県との分け方、定率部分、そういうようなことで考えればいいのであって、均等割というのは、そこに住んでいる住民みんなにかけるというタテマエです。それは、そこの自治体の土地を利用している人みんなにかけるという一番基本的な負担の仕方ですね。それは基礎自治体に行くべきではないかということを申し上げているので、これはものの考え方の問題で、どういうことをやっているからという話ではないのです。

委員

おっしゃる意味はわかりますけれども、いずれにしても県民がお互いに負担し合ってあげよう、共同作業をやろう、お互いに自然を守り合おうというようなことは起こっていて、すでに行われている。今、私が言ったのは、均等割部分で行われているということです。

委員

だから、なぜ論点に挙げてはいけないのですか。そういうことをまた議論すればいいでしょう。

委員

どうぞ。

委員

おっしゃっている市町村こそ均等割という話は、おそらく均等割の水準の話にもつながってくると思います。つまり、今、低過ぎるからもっと均等割をきちっと取れという話で、13ページのところに均等割の水準の引上げと。私は、市町村こそ均等割というのはよくわかりますが、都道府県が、広域的だけれども、しかしながら住民に密着している行政、均等に利益が及んでいるという場合は別に均等割で課税しても構わないのではないか。つまり、都道府県が均等割を課税するべきではないとは私は考えていなくて、市町村がもっと均等割にウエートを移すべきだという議論はよくわかります。

委員

繰り返しませんけれども、論点に取り上げていただいて、また議論することにしてはいかがでしょうか。

委員

わかりました。

どうぞ。

委員

まず、17ページの公示制度ですが、プライバシーの観点から「廃止を検討すべきである」と書いてあります。これは私の意見としては、第三者のチェックという意味で残してもらいたいという気がするものですから、少数意見として書いていただきたいというのが一つ。

もう一つは質問です。12ページの第1段落と第2段落に書いてあることですが、まず第1段落で、「税源移譲のためにあえて10%よりも低い税率区分を設ける必要がある」と書いてあります。これは5%か何%かわかりませんが、そういうものをおそらく新たにつくるということですね。これは当然、刻みが増えるのだろうと私は理解していたのですが、次の段落で、税率の刻みは「これ以上増やすことは適当ではない」と書いてあります。この辺の整合性はどうなのでしょう。つまり、一方で住民税はフラット化されるから、合計した部分の刻み数は、仮に所得税のほうで増えても、合計のあれは増えないということなのか、その辺わかりにくいものですから、説明していただけないでしょうか。

委員

おっしゃるとおり、10の下に5をつければ、単純に考えれば、10、20、30、あるいは40になるかもしれませんが、1コ増えます。ただ、合わせれば地方税3つが1つになる。トータルで見て、刻み数を増やすのは簡素化に反するという趣旨で書いているのですが、おっしゃるように、もうちょっと中身がクリアカットになるほうがいいかもしれません。どういう形でこの辺を書くか、検討してみます。

公示制度につきましては、この間ご議論を伺って、前半でやめろという話がばたばたと出て、後段で、今おっしゃった第三者チェックもあるよというので入ってきたので、どう書こうかなと思っていたのですが、ちょっと考えてみます。これを残すのか、それとも、載せられない主な意見みたいなものをつくって、そこで入れるか、これを含めて実際の文章のところで皆さんにお諮りしたいと思います。

どうぞ。

委員

今回の個人所得課税に関する論点整理ですけれども、今まで議論してきたことがどこまで煮詰まったかということで、一点、疑問があります。最後、調査課長から資料を出していただいて、これの2ページ、単身のほうがわかりいいでしょうから、単身のこの表を見ながら、論点整理との兼ね合いですけれども、私にとって今回の論点整理で一番重要だと思ったところは、12ページの13行目くらいですが、個人所得課税をどう変えるかということで、もちろん、退職所得をどうするかとか、給与所得をどうするかとか、一時所得をどうするか、税調はこういうことを言うよなという感じでそれは読み取られると思います。一歩踏み出したとすれば、私にとっての理解ですけれども、12行目に、「現在の所得税・個人住民税あわせて50%という水準は、個人の勤労意欲・事業意欲の点から見て妥当」と。つまり最高税率は変えない。税源移譲とかあるのでしょうけれども、でっぱりひっこみで調整して50%にすると。

次ですけれども、「実効税率の水準を引き上げるためには、現在の最低税率のブラケットの幅を狭めていく」。わかりにくいですけれども、10%の幅を狭めていくということですね。2ページのさっきの図で、税調の我々の理解を、事実ですから、統一的にすべきだと思うのですが、これは個人の単身の場合の給与所得で各国比較したものです。フランスは、一番下のは忘れて、一般社会税も含んだほうがいいと思って、これを見る。そうすると、日本の単身のケースでいくと、アメリカが課税最低限は一番低い。そして、なぜこれだけ給与所得控除が大きくて日本の課税最低限がドイツやイギリスより小さいのか。イギリスの場合には地方の個人所得税はないですから、それもあるのかなと思いますけれども、課税最低限に関して何かまだ割り切れないなという気がして……。

今回の我々の議論は少しトーンが変わってきて、1,000万円は多いでしょうけれども、1,000万円以下ぐらいのところを見ると、課税最低限は日本は特に右側に行っているわけではないけれども、立ち上がり方がいかにもスロー。というのは、あとの図でも出てきたように、ほとんどの人が税金を払っていないか、10%のところで済んでいる。

そうすると、今回の論点整理、税調のメッセージは何なんだろうと。今まで、それぞれ10種類の税は見直す、金融所得課税も重要ですというようなことは言ってきて、しかし、ここで税収を上げなければいけないとすると、この答申のメッセージは、10%上げるというふうに読んでほしいということでいいわけですか。

委員

10%のブラケットを左に寄せるということでしょう。

委員

だから、この黒い線が……。

委員

上げるという意味ですね。それはそうです。

委員

上がる。そういうことでいいとして、課税最低限のところは、この報告書に書く書かないはともかくとして、いまだに不思議だなと思う。ドイツとイギリスが日本より高いというところは、今日でなくていいですから、説明してもらいたいと思います。

委員

この間出した資料に入っていませんでしたか。例の児童控除が税額控除になったからという形で、この間出した資料でそれは細かく出ていたと思うけれども。

委員

言いたかったのはこういうことで、日本はすべての労働者に給与所得控除は適用されるわけです。私もいやというほど実効税率を計算していて、私自身の計算結果から言っても、所得控除が異常に大きいという研究実感を持っている。だから、単にこういうふうに比べられるのか。日本の場合には、あらゆる人に給与所得控除でいってしまいますから。そうではなくて、ある要件を満たせばこうなるのか。そこが第1点。

第2点は、今回の新しい点があるとすれば、日本はこの黒い線が立ち上がりがスローなのは、立ち上がりの10%のところがバーッと広くて、85%の人が限界税率10%で済んでいる。そこを我々税調としては直したいと。

委員

具体的な修文というレベルで言うならば、書いてあるから、もっと詳しく書けという言い方はあるかもしれない。それから、給与所得控除の青天井をなくせとか、そういう議論でしょう。

委員

どこを直さなければいけないかという、所得税のその事実認識がまだはっきりしないという気はします。

委員

今、税率を実効税率のレベルで上げろというニュアンスもあるし、課税ベースを広げる意味において、課税ベースのところで書き込んであるでしょう、いろいろな形で広げていかなければだめだと。だから10ページ以降のところで、一種の仕掛けというか、税収が漏れているものをもう一回戻したいというような具体的な制度設計があるわけです。

ただ、これをどういう形で書くかというところで、今、専門的な視点から今の委員が切り込んできたということです、話としては。それをもっとはっきりわかるように書くかどうかという議論だと思います。

委員

端的に言えば日本の所得税は、国際比較をすればこれが問題なんだ、これを是正したい、というタッチで書くとすればどうするかということです。

委員

それは、1ページ目にすでに非常に低いという意味で書かれています、最初の10行ぐらいの中に。ただ、これを後ろの具体例にひっかけて書くかどうかでしょうね。ちょっと検討してみましょう。

どうぞ。

委員

子育て支援との関係で、N分N乗方式が参照事例として出ています。9ページの24行目、日本の扶養控除を使った仕掛けとフランスなどのN分N乗と、「世帯全体で見た税負担の配慮は劣るものではない」という指摘ですけれども、ただ、子供の数が多くて、やや所得が多い家計というのがあった場合には、N分N乗のほうが負担が軽いのではないか。どのくらいの扶養控除を設定するかにもよりますが、「劣るものではない」と、子育て支援という問題意識で書いた文章の中でこういうふうに簡単に書き切っていいのかなという感じがします。

委員

N分N乗はある意味でネガティブにとっているということですね、こういう書き方をすれば。

委員

そうです。

委員

そうではなくて……。

委員

もうちょっとポジティブなのではないか。比較的所得が高くて忙しい人たちは、税を見て子供を産むという話ではないけれども、今の税制だと負担がものすごくきついから、子育てにひるみますけれども、N分N乗だとずいぶん……。私のフランスの友人などは何人か例がありますが、「おかげでずいぶん助かっています」という人が多いんですね。それは控除をどういうふうにとるかによりますけれども、こういうふうにパッと書き切ってしまっていいかどうかというのはちょっと。

委員

税制第一課長、この辺の書き切り方、「劣るものではない」というあたり。

事務局

今お話がございましたが、フランスではN分N乗は2つの効果があると。税率の平均化、これが終わったあとの税率で計算されます。フランスの場合は、日本の最低税率の間に、先ほど申しましたけれども、3段階に分かれています。ということで、ブラケット・クリープダウンが生じるというのが結構大きいです。ただ、この事情が実は日本にはあまりない。先ほど申しましたように、ほとんど10%。たしかにちょっと所得がある方、いわゆる1,000万プレーヤー、20%になっておられる方、子育て的にどういう世代なのか、この辺が難しいところですが。

ただ、課税ベースの考え方としては、割ったあと1回の税率不適用所得を差し引くやり方と、入口で割る、前に入口で差し引くというやり方は同じ効果を持っています、ということを申し上げたいだけでございます。

委員

理論的に一長一短があるというか、同じものを別の形で表現することもあるのはわかりますけれども、途中でおっしゃったポイントなんですよ。1,000万プレーヤーはやはりN分N乗はエンカレッジメントになります。本当に子育て支援が必要な階層の人たちがものすごくディスカレッジされているのです。税だけではないです。社会的なコストがものすごく高いので、税がそういう格好になっていると、10%ブラケットの人はいいのですが、もうちょっと頑張って所得を稼いでいる人たちを、仕事も子育ても頑張りたいというふうにするには一考の余地があるのではないか。「劣らない」というのは、子育てとの関係ということで言えば、私は、劣ると思いますが。

委員

ちょっと文章で考えてみましょう。ただ、個人ベースを完全に放棄してN分N乗に変えるということを強制的にやると、これまたディベートがいっぱい出てきますから、それをどう書くかということだと思います。

どうぞ。

委員

並べ方の話の筋として、10ページの4、「所得金額に応じた税負担のあり方」、この中の課税ベース、税率構造、これは一番最初に来るべきものではないかと思います。つまり、2ページの「所得の種類と税負担のあり方」の前に来たほうが、何を議論しているかがわかりやすいのではないか。そうすれば財源調達機能とか、全体の税収の中での所得税の位置づけ、そういうものもわかってくるのではないかというふうに思います。

あとは、退職金がどうとか給与所得がどうとかいうのは、でこぼこ、ゆがみがひどいからこうこうだと、各論の話になるので、それはそれでいいと思います。ちょっと並べ方が、4は全体の議論というか、マクロ的な観点からの議論も入ってくる話かなと思います。

委員

わかりました。今回、所得区分、所得の分類というところに重きを置いていろいろ議論したものですから、重要な点は、新しい切り口だという意味で前で少し議論して、そういうさまざまな所得の定義等から、いうなれば課税ベースの算定などの問題があると言いたかったのですが、おっしゃるように、税の仕組みから行こうという手もあるのでちょっと考えさせてください。また具体的にご提案させていただきます。できるかどうか、文章の中で考えてみます。

どうぞ。

委員

子育てのこととか少子化の対策のこととか、いっぱい出てきて、それが所得税と密接に関係するのはそのとおりですけれども、結婚して子供をつくるかどうかの選択以前に、結婚したくてもあまりにも所得が少なくて、アルバイトで暮らしている方とかそういう方を非常にディスカレッジしている。特に私たちは司法試験の浪人している人たちを見ているもので、あまりにも気の毒で。だからといって税金をまけろと言うつもりはないのですけれども……。

委員

税金を払ってない人たちですよ。

委員

まあ、源徴は取られていると思いますが。そこで、独身の貧しい給与所得者が結婚しても課税上の扱いは独身のままですね。先ほどの1ページの22行目のところですけれども、「結果として、個人所得課税の本来果たすべき」と。これ、財源調達機能はたしかにそうなのですが、そういう配慮を考えると、個人所得課税の本来果たすべき機能、それには財源調達機能と再分配機能とあるわけで、多少再分配のことも税調は考えている。気持ちだけですけれども、これだけ苦しい国家の運営でそんな大風呂敷は広げられないとしても、再分配も本来の所得税の機能ですから、財源調達だけ強調しないで……。

委員

具体的に所得税の世界で再分配はどうされるのですか。最高税率を上げるという議論ですか。

委員

最高税率を上げなくても、しかるべきところで。

委員

インカムブラケットを変えるのですか。

委員

これを見ますと、3,000万円の給与収入まで入っていますけれども、100万円、200万円で生きている方から見ると、3,000万円なんてこの世の出来事ではないわけです。だから、本当に独身の給与所得者の比較を考えるのだったら、500万円より下とか、400万より下とか、そのくらいのところしか意味を持たないのではないかという気さえします。公務員でも、若い教え子たち、最初は相当苦しい。先を考えると暗くなるという顔をしています。私も昔、暗かったですけど、それはともかくとして、うんと下のことを少し考えて、比較的上のところから少し取るとか、一番上の50%は上げる必要はないかもしれませんけれども、そういう配慮がほんのちょっとあったほうが……。

委員

そうすると、インカムブラケットをスライドしたらいいということですね。

委員

そういうことです。どうしていいかはちょっとよくわからないですけれども。

委員

先ほどの委員が提案されたのは、1,000万から左のほうだけれども、今の委員はどちらかというと、1,000万から上のあたりの、もうちょっとスティープになるような形で、30、40あたりの高い税率のところのインカムブラケットを含ませる人数を増やしたらと、そういうご提案ですね。

委員

結婚して子供が2人とか3人とか、相当ぜいたくをしている人は、しかるべく負担してもいいという考え方も……。これだけ結婚しない人が出てきているというのは、そういうところの配慮が足りないのではないでしょうか。

委員

どうぞ。

委員

だから、この手の図をいくら出しても決着しないと思うのです。私は払ってないと思うんです。まあ、払っていない、払っているというのは、何%をもって払っているとか、1%だって生活実感だと。だから、何が日本の所得税の問題なのかという概念化するところが重要だと思うのです。

いずれにしても10%のブラケットの右側のへりをもっと左側に持ってこいということは、先ほどの委員も言っているわけですね。課税最低限はさらに広げられないから、そっちは右に行けなくて、10の右側のへりは左へ持ってくるとすると、その原理を実現しようとすると、10を5にしろということですか、煎じ詰めると。

委員

1でもいいです。

委員

まあ、それは考え方として。

委員

どういう具合に書き込むか、実は再分配効果を上げてなんていうことを書いていたのですけれども、それをやると、最高税率を60、70にしろという話が必ず出てくることと、税率だけで話は終わらない。何よりも金融所得というのを分離課税で追い出しておいて、俗に言われる、お金持ちの持つ所得を低く押さえておいて再分配もないだろうという話があったりしまして、そういう配慮があってちょっと書き損じていたのですが、もう一回復活させるかどうか、ちょっと考えてみます。

どうぞ。

委員

物言いというか、心の温かさの問題ですが、例えば9ページ、子育て支援というので、上のほうで「要請が高まっている」のあとに、「これに応えたい気持ちはある」とか、何か方向性がないと……。

委員

何行目ですか。

委員

一番上のところ。ここをずっと読んでいくと、「君、何を思っているの?」というのが何もないわけですよ。やりたいのかやりたくないのかわからないし。

委員

やりたいという趣旨で書いてるんですよ。

委員

あっち見るとこういう問題、こっち見るとああいう問題と言ってるだけで、全体的には税金をいっぱいもらうよということをこちゃこちゃ言っているわけですから、せめてここら辺だけでもちょっと配慮したほうがいいのではないかというのが一つ。

あと15ページで、政府税調だからしようがないのですが、10行目、電子政府があって、「国民の利便性を考えれば」と言っていますが、これが、国民の利便性なのか、政府の利便性なのか、国税庁の利便性なのかというのはわからないわけでございます。ここのところが結構もめているので、「国民の利便性」とは言わないで、何もなしの「利便性を考えれば」とやったほうがすごくいい感じがするのですが。

委員

わかりました。そうかもしれませんね。

はい、どうぞ。

委員

6ページの金融所得課税で、今日はいらっしゃらないのであれですけれども、ある意味で基本的考え方が出ているから、それを前提にやりましょうということで割り切ってしまえばいいのかもしれませんが、(2)の24行目、「金融所得として一体化し、~貯蓄率が顕著な低下傾向を示す中、現存する金融資産を効率的に活用することが要請された」、ここにすべて入っているのでしょうけれども、金融所得課税の議論をしたときはもう少し何かミッションがあったような気がします。「貯蓄から投資へ」とか、あるいは現下の問題では、国債の家計の保有がいかにも低い。国債金利の乱高下とかいろいろ考えてくると、家計が国債を資産としてもっと持つことは底固めになってくる。そこは書けるかどうか知りませんけれども、もう少し金融所得課税の意義をうたってもいいように思います。

委員

どうぞ。

委員

あまり出ていなかったので、とんちんかんになるかもしれませんが、個人所得課税の重要な点は、課税目的として、財源調達機能とともに、応能的な公平が可能になる主要な税目であるというのはあまり書いていないのです。そのことは言っておいたほうがいいのではないかと思います。

委員

納税者の担税力が調整できるということでしょう。

委員

そうです。そういうのが本来の機能として重要で、これが落ちるということは、今後、消費税が仮に増税されるとしても、これがある程度の水準に上がってないとというようなことも含まれるかと思います。

その関係で言えば、些細なことですが、不動産所得を廃止してしまうこと自身、現在のことではいいかもしれませんけれども、合算課税制度というのは課税単位とかかわっているわけです。つまり個人単位を採用するけれども、資産所得についてはこれを入れればというふうにかかわっている話なので、不動産所得が廃棄されて、永久に歴史の中からこの問題が葬り去られることがないように、問題としてはあるということだと思います。

それから子育て支援のところは、お帰りになってしまったからあれですが、N分N乗にはN分N乗でフランスに調べに行っていただいているので、実態はわかっていらっしゃると思いますけれども、私が調べていた範囲内の昔では、かなりいろいろな問題が起きていたわけです、公平性などを貫くというようなときに。日本の出生率は、有配偶者について見ると出生率はずっと低下していなかったのです。というか、最近落ちてしまったというのが深刻で、結婚させる税というのは不穏当ですが、つまり言いたいことは、これが子育て支援と本当に結びつくのかどうかということの検討抜きに、安易に税の不公平性を--応能的な負担というのは重要な税金だとすると、直結しないような慎重な書き方をお願いしたいということだけです。

委員

わかりました。

どうぞ。

委員

8ページの10行目から「そもそも夫婦とは」とあります。これ、前段はいいと思いますけれども、「担税力という面での配慮が必要な関係ではないはずである」と言い切ってしまっていいのですか。というのは、今まで担税力を減殺させるという考え方について何十年もやってきたものを、今、突如否定するという話になってしまう。そうではなくて、何かほかの要因があって変わってきているのではないかというなら話はわかるけれども、今までやってきたことは間違いだったんですよ、という話になりはしないかと。

委員

今のお話はわかりました。たしかにここはちょっとお節介気味なところがあるからね。ただ、急に変えてしまっているのか……。ちょっと考えてみましょう。難しいですね。

どうぞ。

委員

納税者番号制度のところ、14ページから16ページまでですが、この流れを読んでいくと、本来適正・公平な課税に資するものなんだけど、金融所得課税そのもので今までこういうことをやっているから、納番制度を導入する必要性は大きくない。事業所得にかけるという考え方もあるけれども、消費者が番号付きの情報を全部出せるということは実際問題としてはない。限界があると認識せねばならない。しかも、納税者番号があれば適正・公平な課税が全面的に実現するという誤解が一部に見られる、それは幻想ですよみたいな言い方がある。それから、売上げが把握できたとしても、それが仕入れか家事関連経費かまではチェックできません、あくまで道具にすぎなくてと書いてあると、全編の流れとしてはすごくだめだというふうに見えるんですね。だけど、挙げているマイナス面はどのくらいの幅のマイナスなのか、本筋の流れとしては適正・公平なほうに行くのかというのがちょっと……。

委員

わからないでしょう。

委員

ええ。わざとわからないようにしてあるわけですか。

委員

いいえ、わざとではない。本当にわからないんですよ。

委員

そうなんですか。

委員

つまり税調というのは、25年来かな、納番を入れてというふうに調査団を3回も出して調べてきて、その頃、番号がなかったからできなかったけれども、今回は番号があるから、やる気ならできるのです。ただ、諸般の事情を見れば、今、住基番号だっていろいろ訴訟みたいなものが起こっていますね。それから、年金番号はどうも穴があいているという話もある。ただ、これはやろうという動きは、小泉首相以下、結構あって、税調としてもこれだけ検討したので、やはり何か書いておかないといけないだろうという趣旨もあって。

おっしゃるとおり、これを読んでみると、そういう反対を押し切って強行突破するのか、それとも、言うがままに流れるままにずるずると今後行くのか。ただ、数年間であっという間にケリがつく話でもなさそうに私は思っていますが、長年やられてきた主税局の審議官、何か感想があるでしょう。

事務局

実はこの問題について相当世の中の認識も変わってきたし、我々も、ここに書いてありますけれども、従来の前提は金融所得を総合課税するということでずっと考えてきたわけです。それがここに来て、そっちよりもむしろ事業所得の適正化に使えないかと、これはまさに最近、急に盛り上がってきた議論。我々もこの問題について正面からものすごく深く検討したわけではないですが、ただ、今の段階で我々がきちっとメッセージとして議論するときの--結論はこれから議論を深めるにしても、この段階でいろいろ期待されていることと、実務的に例えば国税庁などの話を聞くと、こういういろいろな問題があるので、そこのところをうやむやにしておくのはよくないのではないかという意識はメッセージとして。

今の委員がおっしゃったように、どのくらいの評価かということについては、我々も、こういう程度だということが今すぐは言えない状況なので、もうしばらく議論を続けるしかないかなというのが率直なところです。

委員

どうぞ。

委員

質問です。個人の場合は納税者番号はいいのですけれども、法人取引の場合はどうするのですか。

委員

これは当然、法人も含めての話でしょう。

委員

いや、住民基本台帳方式というのは個人だけで、法人はないですから。

委員

何かあれば、どうぞ。

事務局

その場合は、法人は法人の番号を別途考えるということになると思います。

委員

そうでしょうね。アメリカなんかそうですよ。

どうぞ。

委員

今日の所得税の議論は、少子高齢化社会の構造変化の中で論点整理ということで、メッセージ性というのはあまり強く打ち出していないわけですね。ただ、例えば子育て支援の問題でもよその省庁とのかかわりもあるわけだから、そういうところの糸口みたいなもので、もう少し包括的なメッセージ性みたいなものをつくる場所というのはどこになるのかということが一つわからない。

もう一つは、財政審で道路特定財源の見直し、一般財源化と言っているときに、今日は所得税の論点整理ですけれども、相呼応するような形で、税調側からもそういう議論をやったのだというふうな形をとったほうがいいと思います。やっているんですよというメッセージを出していかないと……。

委員

今回は非営利法人と所得税に限ってやっていまして、あの世界はある意味では間接税の世界ですよね。おそらく私は秋以降、間接税もやらなければいけない問題も出てくると思って、今、唐突にこれを出すとすると、総会に出して緊急の問題提起ということにするかどうかですね、やるとすれば。そういう取扱いになるかもしれませんが、それがどれだけの効果があるのかなと思っています。まあ、私もそれは前から関心を持っているところです。環境税絡みの話もありますから。取扱い方につきまして、少し考えさせてください。

どうぞ。

委員

最後の立証責任のところの23行目、24行目に、「納税者が自ら説明責任を果たすことが相応しいと思われる項目について」というふうに書いてございます。申告納税というもの自体に、私自身、説明責任ということを本来感じてやっておりまして、ここであえて「説明責任を果たすことが相応しいと思われる項目」というふうに書かれると、これは一体どういうことを指しているのか、わかりにくいなというふうに思います。

委員

何かございますか。つまり、概算控除というのは必要経費の算定あたりで説明責任というけれども、元来は課税当局が負っているという仕組みで来ています。ここはちょっと話が込み入ってますけれども、今の話で、申告所得税はそもそも納税者側であるという理解でいいのですか、悪いのですか。

ああ、専門家がいたね。どうぞ。

委員

法科大学院でありますから。主税局にはとてもかなわないのですが。立証責任というのは個々の法規から客観的に出てくるもので、要件事実論とかいろいろ法科大学院で教える難しい分配のあれがあって、租税の場合には、どう考えても仕組みからして課税庁側に立証責任というものはあるのです。それは簡単に動かせるとかそういう話ではなくて、法律の仕組みがこうなっていたら、そうなのです。ただ、特定の項目については、立証責任を変えるというのと違って、客観的な立証責任と主観的なのを分けなければいけないのですが、これ、書き分けてあるんですね。これ以外の書き方は、法律の細かい人、特に民事訴訟法の方は非常に細かいですから、私もよくわかっていないのですが、こういう書き方になるのではないかと思うのですが。

委員

所得申告して過少申告ということが問題になったときに、課税局側が過少申告の証拠を挙げてきて追及するのですか。

委員

そうです。今の所得税法なり法人税法の出来から言うならば、あなたが逃れていますということは、国税のほうが--国税のほうが立証するというのではなくて、どっちかわからない場合には国税側の負担になるという意味です。「おまえはやってるんだろう?」「いや、俺はやってない」というのは、立証責任とは別の、何て言ったらいいのでしょう、主観的立証責任という全然別の話なのです。

委員

そういうことのようです。何か専門家ががちゃがちゃ言ってるけれども。

どうぞ。

委員

8ページの配偶者との関係で、十分書かれていますけれども、配特をやめるといったときに、男女共同参画というか、これからの社会のあり方という観点でだいぶ言った記憶があるんですね。今度、これだけ1ページ使われているけれども、一言もないので、男女共に就労する、いわゆる専業主婦というのはだんだんなくなっていくという考え方を是としていることは、どこかにあったほうがいいかと思います。

委員

前半戦で少しくたびれてしまって、後半戦はややエネルギーが欠けてきたかもしれませんけれども、主要な点につきましては大体ご意見をいただいたと思っております。

これをどういうふうに処理するかにつきまして、予定を申し上げさせていただきますが、次回は総会です。6月10日・金曜日、非営利と個人所得課税について出てきました論点を整理して、総会で1回もんでいただこうかと思っています。総会の方々のご意見を聞いて全体のまとめをしたいと思いますが、個人所得課税につきましては、さらに6月14日、来週の火曜日を考えております。総会でもまた議論になると思いますので、それを再度お諮りして議論していただきたいと思っています。

いずれにいたしましても、21日に個人所得課税は最終的に公表したいと思っています。まだ1、2回、中身を議論することができますので、今日いただきましたものを早速事務局と相談いたしまして、修文して、総会並びに14日にお諮りしたい、このように考えています。

今日の「報告書素案」はまだ仕掛品でありますので、机の上にお残しください。

長時間、どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。