第39回総会・第48回基礎問題小委員会合同会議 議事録

平成18年2月28日開催

石会長

お忙しいところをどうもありがとうございます。

2時から1時間30分ほど、財政制度等審議会で、今日と同じプログラム、つまり、この資料に出てます富田さんと田近さんに財政悪化の要因につきまして、歳入・歳出各々の面でご議論いただきました。

税調の審議の前にちょっとご報告しておいたほうがいいのですが、国会でお忙しい谷垣大臣が財政審に直接お越しいただきまして、これから財政審で議論してほしいというお話がございました。それは我々にも関係するのでちょっとアナウンスしておきますが、今、経済財政諮問会議で与謝野大臣から、財政の健全化を歳出削減のみでやるのはどうなのかということを財政審で検討してくれと、かつ、その結果が将来の財政健全化にどうつながるかということも検討してくれというようなことがあって、しっかりやってくれというアナウンスが冒頭ございました。これはある意味では、我々にも関係する話でございまして、今日の議論にも関係してくるかと思っております。

それでは、今から富田さんと田近さんにご説明いただきますが、ちょっとお願いがあります。技術的に細かいことは資料を見ればいいから、メッセージ性豊かにやってもらいたい。どういうことかというと、なぜ財政が悪化したかというのを歳出面でえぐっていくと、要因が3つ4つあるだろうと。ごたごた言うことないのですよ。それがわかるように講義してもらいたい。

それから田近さんのほうは、税収の推移をごたごた言われてもわからないから、どういう結果になったかということと、今後、景気がよくなれば、このままどんどん税収上がって、もう増税やる必要ないのではないかなんて言う人もいるぐらいなのですよ。果たしてそうなるかどうかね。これから景気よくなる、利子、株価も上がる、そうなったら、わんわん上がってきたっていいのではないのなんていう話もないことはないので、そうなのかそうでないのかも含めて説明していただいて、皆さんからいろいろご意見を伺いたい。20~30分、時間を厳守して、短くお願いします。

それでは、始めます。富田さんは税調の委員ではないのですが、きょうは助っ人を買って出てきていただきました。財政制度等審議会のアクティブメンバーであります。財政赤字とか、あるいは歳入構造、行革等々、さまざまな分野で幅広いいろんな形でご意見を言われてますのはもう先刻ご存じだと思います。現在、野村総研から中央大学のほうに移られて教鞭をとっております。今日は有難うございます。

では、お願いします。

富田教授

ご紹介いただきました富田と申します。

今日は、これまでの財政審におけます議論の積み重ねと、それに若干私見を交えながら、財政の現状と財政悪化の原因について、お話しさせていただきます。

目次をご覧ください。4つの部分に分けてお話ししたいと思います。第1は「財政の現状」、2番目に「歳出構造の変化」、そして3番目に「行政改革等と歳出の動向」、そして4番目に「財政悪化の原因」についてでございます。

まず「財政の現状」につきまして、2ページをおあけください。ご存じ、ワニの口であります。上あご、下あごのあきぐあいが見てとれます。が、あいた口のほとんどは赤字国債によって埋められております。特例公債と言われておりますけれども、特例ではなく、恒例のように、しかも毎年、極めて巨額の赤字国債の発行が続いております。

次のページはそれを残高で見たものでございますが、残高は、公債残高、06年度で542兆円であります。90年度末で166兆円でありますので、この間に376兆円も増加しております。3.3倍の増加であります。そして、03年度末に赤字国債が、残高におきましても、建設国債を上回るようになりました。

次の4ページは明治からのちょっと長いスパンで、国債残高、そして国債費と税収との関係を見ております。06年度末の国債残高の税収に対する比率は12倍でございます。第二次世界大戦末期を除いて最悪の水準となっております。また国債費の税収に対する比率は40%でありまして、大規模な債務整理が行われました西南戦争の後、そして日露戦争の後を除きまして、高い水準にあります。

幸いなことに、次のページにございますように、幸か不幸かは別にいたしまして、90年から、冷戦の終焉に伴います世界レベルでの大きな産業構造の変化を背景といたしまして、期待インフレ率が低下するという中で、アメリカ、ドイツの国債金利とともに、わが国の国債金利も、この図でご覧いただけますように、低下傾向をたどってきました。

こうした市場金利の低下を受けまして、次の6ページでございますけれども、国債残高が90年度から3.3倍になったにもかかわらず、利払費は、グラフでご覧いただけますように、横ばいから減少に転じてきました。しかし、04年度末の国債残高のクーポンの加重平均いたしますと、1.54%まで低下してきておりまして、市場金利の低下によります利払費の抑制効果というのは次第に消え始めています。

この点は次の7ページの図でより明らかとなります。7ページの図はワニの口のあいた下あごですね。つまり、税収と国債発行額を示しております。これまで大量に発行されました国債は次から次へと満期を迎えておるわけですけれども、償還財源ありませんので、借換債を発行しております。新規国債と借換国債を発行したのが棒グラフで示されております。

平成10年、1998年に、税収よりもグロスの国債発行額が多くなっております。この時期からですね。この年以降、わが国の財政は新しい困難な段階を迎えたと言えます。これまでは、先ほど申しました期待インフレ率の低下で問題は顕在化しなかっただけでございます。経済成長が高まりますと、税収は増えます。しかし、経済成長が高まれば、期待成長率、期待インフレ率が高まりまして、国債金利も上昇いたします。毎年発行されます国債は税収の3倍にも達しておりますので、高い経済成長が、かつてのように、必ず財政収支の改善をもたらすとは言えないのであります。わが国財政の現状は、金利上昇に対しまして脆弱になっているわけであります。

次に「歳出構造の変化」について申し上げます。9ページにお移りください。私、毎年初めに予算の説明が発表されますと、いつも主要経費ごとのデータをインプットしまして、その構成比を求めております。長年積み上げたものが41年分になりまして、それら一般歳出の構成比をクラスター分析という方法で、毎年の予算の類似度を求めました。多くの年は大体前年度の予算構造に類似しているのですけれども、過去40年ほどの間に大きな変化があったのは1974年度予算と2001年度予算であります。2001年度予算から、この右下の図にございますように、2006年度予算というのが一つのグループを成しております。

その理由を見たのが次のページでございまして、2001年度から2006年度まで、一般歳出の変化を見ております。この間、社会保障関係費が3兆円増加した一方、これ以外の一般歳出は5兆3,000億円減少、削減されました。社会保障関係費の増加をそれ以外の経費の削減で賄ってきたと言えます。

同じ計算を税源移譲がなかった場合について行ったのが11ページですが、同じことが言えます。

さらに、この中で公共事業費の削減が大きくなされたわけですけれども、それを見たのが12ページでございまして、98年度、14兆9,000億円、補正後の公共事業費を使ったのですけれども、それが06年度当初予算では半減以下の7兆2,000億円というふうに減少しております。この水準は、すでに大規模な景気対策が行われていた90年代以前の水準にまで削減されてきたわけでございます。

13ページをご覧ください。国の一般歳出を主要経費別にGDP比でその推移を見たものでございます。一番下に黒いのが出ておりますけれども、これが社会保障関係費のGDP比でありまして、それが上昇してきました一方、公共事業関係費など他の歳出のGDP比は低下しております。

これは、税源移譲がなかった場合について試算いたしましても、次の14ページですけれども、同じ傾向、同じ形がうかがえます。

そこで15ページをご覧ください。今述べました歳出構造の変化を踏まえまして、1990年度をベースにいたしまして国債残高が3.3倍になったわけですけれども、その理由を歳出と歳入に分けて分析しております。90年度、財政収支のギャップが2兆8,000億円だったのですけれども、それが毎年どのような理由で国債残高を増加させてきたのかということを図で示しております。

図でご覧いただけますように、公共事業関係費によります国債残高増加圧力というのがどんどん減少してきた一方、社会保障関係費の増加による寄与が年々増大してきました。また、下の図にございますように、税収の減少によります国債残高の増加が依然として続いております。これらの国債残高の増加の要因を累計いたしまして右の表にまとめてございます。

仮に90年度の収支ギャップ2兆8,000億円がずっと続いていたとすれば、国債残高の増加は45兆円で済んだのですけれども、歳出の増加によって129兆円、税収の減によって、それを上回る142兆円の国債残高増がございました。さらに、その他の要因といたしまして、旧国鉄債務の承継分や、あと金融危機に対します国債の償還のための財源ということで、国債残高が合計で58.9兆円増えております。

これらの要因によりまして、この16年間で375兆円、国債残高が増えたということになります。ここでも、歳出面では社会保障関係費が国債残高増のその支配的な要因となってきたと。歳出面におきましてはそういう傾向がご覧いただけます。

以上述べましたように、国の財政は社会保障関係費の増加と税収の減少を主因といたしまして、大幅な赤字が続いております。

一方、16ページでご覧いただけますように、地方財政でございますが、90年度以降につきましても、2~3年は例外ですけれども、これを除きますと、プライマリー収支の黒字が続いております。06年度は4兆4,000億円のプライマリー黒字、GDP比で0.8%の黒字が見込まれております。また、国債及び地方債の依存度を比較いたしました右の図をご覧いただきましても、国と地方の財政状況が極めてアンバランスな格好になっていることが一目瞭然でございます。

17ページをご覧いただきますと、地方債残高の増加テンポを見ております。増加テンポは国債と比べて極めて緩やかなものに抑制されてきております。

18ページにお移りください。これは国税、地方税から交付税による移転部分を差し引いたネットの国債の償還財源、国債残高との比率を見たものですけれども、国債残高が、国税引く交付税ですと、その17.5倍も残高あるわけですけれども、地方債は地方税に地方交付税が加わりまして3.9倍ということで、ここにおきましても、極めて著しい国と地方の財政状況の対照が見てとれます。国の財政再建には交付税や補助金の削減など、地方の協力がぜひとも必要とされるゆえんであります。

19ページをご覧ください。地方財政計画ベースの歳出のGDP比を見たものでございます。国と同様に、投資的経費のGDP比の低下が進んできました一方、一般行政経費のGDP比の上昇が顕著であります。その中には、国ほど巨額ではありませんけれども、社会保障給付費の一部が含まれているわけであります。そのことがこの一般行政経費の増大の一因と考えられます。また給与関係経費は、06年度計画では22兆7,000億円、GDP比4.4%とやや低下ぎみに推移しております。

20ページにお移りください。こうした地方財政計画ベースでの歳出の抑制によりまして、地方財政の財源不足額というのが03年度をピークにいたしまして減少しました。11.1兆円から、06年度、1.4兆円と減少いたしました。この財源不足額と申しますのは、国からの交付税と臨時財政対策債とで折半されてきましたので、地方の歳出の合理化というのが各地方公共団体の財政の改善だけではなく、国の歳出の抑制にも寄与してきたのであります。

次の21ページは地方財政の歳入のほうの推移をGDP比で見ております。国と対照的なのは、まず地方税の安定した推移ということにございます。加えまして、地方税の減税や国税の減税によります交付税への影響額といったものを国が補てんしてきたことも、地方財政の悪化回避と地方債の増発抑制につながりました。

次の22ページにお移りください。以上述べました地方財政の歳出入の構造を踏まえまして、地方債残高の増加要因を、さきに述べました国と同じ方法で計算しております。図は90年度の地方債残高52兆円が毎年どのような理由で変動してきたか、そして03年度末に138兆円に増加したのかを見ております。

ご覧いただきますように、図の下のほうでありますけれども、地方税収と交付税等が地方債の増加を抑制する方向、減少させる方向に推移してきた。これらの累計額は税収等の増加分ということで、地方債残高を、右の表をご覧いただきますと、130兆円減少させております。その一方で、歳出の増加分ということでご覧いただきますと、人件費で47兆円も地方債残高が増える。扶助費、建設事業費、それら内訳が出ております。

このように、歳出の増加184兆円に対して、税収、交付税を含めますと130兆円も地方債残高の抑制につながったということであります。また、歳出の増加分184兆円のうちの半分が交付税等出口ベース、48兆円と国庫支出金、その合計92兆円で、歳出増の半分が歳出増加による地方債の増加の半分、半分で済んだのがこれらの要因によるものということが言えます。

これまでは歳出削減の動向を主要経費別、経費別に見てまいりましたけれども、以下では行政改革の動向との関係で見たいと思います。特殊法人改革、特別会計改革、総人件費改革、そして政府資産売却、これらが財政健全化にどのように寄与できるのかという観点から見たいと思います。

一般会計と特別会計から特殊法人等への財政支出がどう推移したかというのが24ページでございます。01年度から02年度の間には、出資金の見直しによりまして大きく削減が進んだのですけれども、その後それほど顕著ではございません。一層の削減には事務・事業そのものを丹念に精査して見直すことが必要でございます。

次の25ページでございますが、特別会計であります。特別会計も、一部に、400兆円も支出があるので、むだな支出がいっぱいあるから削減もっともっとできるはずだという期待感があったわけですけれども、この31特別会計の支出をよくよく見てみますと、グロスでは確かに460兆円だと。しかし、各特別会計間の重複計上分を除きますと、図の中段にございますように、225兆円だと。そこからさらに国債償還費、利払費等で117兆円。これを削減すると日本国債のデフォルトということになりますのでできません。そのほか、50兆円の社会保障給付があります。これは社会保険関係の特別会計の支出の中で直接国民に支出されるものが50兆円ということでありまして、施設整備費だとか事務費だとかは除かれております。

これらの合理化といったことは、社会保険制度の改革、社会保障制度の改革ということで議論されるべきでありましょう。また、その横に財政融資資金への繰入れ、27兆円というのがございますけれども、これは財投改革との関係で議論されることであります。それから地方交付税交付金というのは19兆円でありますけれども、これらの削減についても、それぞれの改革の中で、地方交付税の改革の中で議論されるべき問題と考えられます。

そういう意味で、特別会計が対象とするもの、これは特定財源の問題を含めまして、その支出対象は12兆円程度であるということであります。この中から、06年度は実質的な歳出削減として約5,000億円の削減が実質的に行われました。

さらに、次のページでご覧いただけますように、すべての特別会計につきまして制度改革が予定されております。

続きまして総人件費の改革について、27ページでございます。まず国家公務員ですが、郵政を含めて94万8,000人、8.6兆円の人件費を向こう10年間でGDP比を半減させるという長期的な目安を念頭に置きながら、数値目標といたしましては、この図の上にございます、郵政を除く68.7万人を5%以上、今後5年間に純減することが計画されております。

28ページは、一般会計、特別会計から支払われます人件費の推移です。図でご覧いただきますように、05年度、06年度のところですけれども、特定独法、そして国立大学法人、そして郵政公社を除きますと、5兆4,000億円の支出でございまして、GDP比1.1%です。これに対しまして、5年間で5%の定員純減と給付制度改革が行われます。そうすると、5兆4,000億円で5%、年1%といたしますと、数百億円程度の削減であり、何か期待感としてもっと大きなものがあろうかというものもあるのですけれども、それほど大きな削減がここからは望めないということです。

29ページにお移りください。左の表は、企業会計準拠で作成されました国の財務書類の業務費用計算書でございます。その中で人件費、退職給付引当金が出て、四角で囲ってございます。この合計額5兆6,000億円が、先ほどご覧いただきました5兆4,000億円にほぼ対応する中身でございます。こちらは発生主義でつくられております。

ご注目いただきたいのは、国ベースの業務費用全体で見ると122兆8,000億円である。だから、国の業務費用の4.6%相当。これを対象に5%の定員削減を行うという話でございます。この改革に際しまして、業務が停止されずに、国家公務員から独立行政法人の職員に移るだけでは、右側の連結ベースをご覧いただきますと、こっちのほうでは増えちゃうよということになることに留意する必要があります。また、単純なアウトソーシングでは、人件費は減っても委託費が増えるということになります。そういう意味で、この国の財務書類は非常に正直なものだと思います。

また、今ご覧の国の財務書類で言いますと、地方の公務員も純減と給与の改革が進みますと、地方の歳出が抑制されますと同時に、この左の表でご覧いただきます、国の業務経費であります補助金や委託費や地方交付税の削減にもつながるわけでございます。

同じページの右をご覧ください。上は千人当たりの公的部門の職員数。日本は相対的に少ないということが従来から言われているわけでございます。

下は人件費であります。なお、この一般政府には政府企業が含まれておりません点はご留意いただきたいのですけれども、上と同じ国名を順番に並べておりますが、千人当たりの公務員数が少ないほどには人件費の対GDP比が少なくないということがわかります。それは公務員の定員の削減だけではなく、適切な給与改革が必要とされるゆえんであります。

そこで30ページに地方公務員の総人件費の改革でございます。2004年4月の職員数は308万4,000人、国の4.5倍であります。また給与は28.9兆円で、国家公務員の4.7倍に達しております。この定数が向こう5年間で4.6%以上削減されるということが先般閣議決定されたわけでございます。

31ページでありますけれども、地方公務員の職員数は近年は抑制されております。私は新聞報道でしか知らないのですけれども、北海道の職員は向こう10年間で3割削減ということが伝えられております。察しまするに、またほかの資料を見ましても、地方公共団体は市町村合併や、国とは異なりまして、団塊の世代の大量退職が見込まれておりまして、大きな削減が期待できるように思います。

32ページにお移りください。政府資産の売却についてであります。図は03年度末の国の貸借対照表であります。一般会計と特別会計という国のベースで、左側、資産の部合計、696兆円でございます。このうち外為資金、年金運用資金、そして売却困難な公共用財産を除きました430兆円につきまして、今後10年間で、GDP比で見ておおむね半減させるという目安を念頭に置きながらスリム化を進めるということとされております。

このうち貸付金、資産の上から5番目にありますけれども、290兆円、これは財投改革によりまして今後とも縮小に向かうことが期待できます。また、一部の特別会計に積み上がっております剰余金や積立金などから、明確な必要のないものは国債償還などに充てるべきであります。

しかしながら、道路、河川、港湾など、国が国民に行政サービスを供給することを目的として保有している公共用財産や防衛施設、国有林野などの国有財産は、行政サービスを廃止しない限り売却することのできない資産であります。

先ほど、特別会計の規模が400兆円を超えているということを申しましたけれども、こうした議論と同様に、日本政府の資産はアメリカの5倍もあるので、政府資産売却で巨額の財源が捻出できるという、そうした甘い期待を国民が抱いてしまうことになりますと、かえって財政再建を先送りすることになる危険がないとは言えないと思います。また、資産を減らすことができましても、見合いの負債は減るだけであって、歳入が期待できることもあまりありません。また、資産が売却できましても一時的な臨時収入であります。

ただ、もちろん、言うまでもありませんけれども、未利用国有地など、売却可能な政府資産は徹底した売却を進めるべきであります。

なお、こうした貸借対照表の議論と絡みまして、国と地方の債務残高を見る場合に、グロスでなしに、政府の保有する金融資産を差し引いたネットで見る必要があるのではないかと。ネットで見れば、GDP比でグロスの半分の80%で、それほど大きくないという議論もあります。先般、『文芸春秋』にもそのような記事が出ておりました。

確かに、33ページをご覧いただきますと、政府の保有する金融資産が出ておりまして、ネットで見ると、グロスの債務が半分になるということになります。

ただ、ここで留意しなくてはなりませんのは、政府の保有する金融資産の大半というのが、右の黒抜きで出ております社会保障基金の資産でございます。これは国民が支払った保険料を将来の年金給付のために積み立てているものの一部分であります。これは税金ではありませんでして、国債の償還に充てることはできようはずがありません。国から見ますと巨額の年金掛金債務の見合いの資産のごく一部だということになります。したがいまして、ネット債務残高で国と地方の債務履行能力を判断するというのは問題であります。欧州におきましても、通貨統合のためのコンバージェンスクライテリアではグロスで見ております。

34ページをご覧いただきます。左側がグロスでございます。06年末で160%ほど。ネットで見ましても、わが国、この純債務残高の比率が急速に上昇を続けているということはグロスで見るのと変わりがございません。

36ページに移ります。財政悪化の原因についてでございます。さきに申し述べました国と地方の歳出、税収について、それぞれの合計を重複分をキャンセルアウトした全体像が36ページで示されております。利払費を除く歳出と税収等のGDP比の推移を実績ベースで見たものでございます。したがいまして、ギャップはプライマリー収支を示しております。そのGDP比は、90年度、2.8%の黒字から、04年度、3.9%の赤字となりました。

この大幅な赤字化した原因は図から一目瞭然でございまして、国・地方合わせました税収の対GDP比が低下を続けてきました一方、歳出面では、黒塗りの部分でありますけれども、社会保障公費負担が増大を続けてきたことが原因でございます。社会保障関係費以外の歳出の削減では、税収減と社会保障の増加を賄うことができず、巨額のプライマリー赤字が発生しているということでございます。

石先生からいろいろ細かいこと言うなと言われるのですけれども、この36ページは一つのポイントの要約図でございます。

さて、その社会保障の給付でありますけれども、その給付財源について見たのが37ページでございます。ご覧いただきますように、社会保障給付は、左側にあります社会保険料とともに、国庫負担、それから他の公費負担、これは地方の公費負担であります。これらより財源構成が成っております。この国の社会保障給付の国庫負担というのが、先般来述べております一般会計の社会保障関係費とほぼ対応いたしております。

そこで、これらの推移でありますけれども、右の図が示しますように、社会保障財源のうち社会保険料の伸びが最近、ご覧いただきますように、公費負担に比べて伸びが低くなっているというか、公費負担が速いテンポで増加していることがご覧になれます。これは高齢化の進展により伸び率が高くなっております高齢者向け給付に比較的手厚く公費が投入されていることなどによるものであろうと思われます。

38ページをご覧ください。社会保障給付についての過去20年間の推移と今後20年間の見通しであります。左の図が示しますように、過去20年間で、国民所得は1.4倍、社会保障給付は2.5倍、増大いたしました。右の図は2004年の年金改革後の社会保障給付の向こう20年間の見通しを示しております。国民所得は、過去20年間と同じ1.4倍で、社会保障給付の伸びは1.8倍、向こう20年間で増大するという見通しでございます。

その後、下の表にございますような06年の医療制度改革が行われまして、2025年の医療給付費が、黒塗りでございますように、従来の見通し59兆円から48兆円へと11兆円削減される見通しとなりました。それでも、社会保障給付は経済規模を超えるテンポでの増大が見込まれております。

このように、最大の歳出膨張圧力は、過去におきましても今後についても、社会保障給付の増大にあります。そして財政悪化の原因はその受益と負担のギャップが拡大していることにあると言えましょう。制度を支える現役世代の減少は今後も続きます。巨額の社会保障給付を支える現役世代が負担可能な規模に給付を抑制する努力を続けるということと同時に、制度の持続可能性が確保できるよう、負担を先送りせず、安定的な財源を確保することが必要であります。

次の39ページをおあけください。国際金融市場というのは各国の財政の健全性、つまりは各国の民主主義の健全性を常に推しはかろうとしております。国内では日本国債の金利が極めて低いので認識されにくいのですけれども、実は国際金融市場では日本国債に信用リスクプレミアムというべき金利差が求められております。図は横軸に満期までの残存期間、縦軸はドル建て日本国政府保証債の金利と同じ満期のアメリカ国債の金利との金利差を示しております。△は、ロシア金融危機が起こります1年前の1997年8月の金利差です。それに対しまして、この2月の金利差は大きく拡大しております。しかも、この間、アメリカの10年国債の金利は、下の注に出ておりますように、6.4%から4.6%に1.8%も低下したのですけれども、逆に日本国政府が保証するドル建て保証債の金利は相対的に上昇したということでございます。このことから、日本国債の信用が揺らいでいると言わざるを得ないわけでございます。巨額な財政赤字によりまして、国民は社会保障制度の増加可能性に不安を抱きまして、国際金融市場では日本国債の信用に懸念を抱いているわけでございます。

以上、財政の現状と悪化の原因についてお話しいたしましたが、2010年代の初頭までにプライマリー収支の黒字を実現し、その後一定のプライマリー黒字を安定的に確保するために何をなすべきかの議論にお役に立てることを祈りつつ、私の話を終わります。以上でございます。

石会長

どうもありがとうございました。

それでは、次、田近さん、お願いします。

田近委員

時間も押してきて、メッセージ性のあるものをということで、90年代の税収の推移というのを20分ぐらいでお話しさせていただきたいと思います。

初めに、富田先生の使われた資料の15ページ、「2-7 1990年度を基準とした普通国債の残高増加の要因分析」、我々のしたい仕事というのは、結局、ある意味でここの数字で尽きていると思うのですけれども、ここでやっているのは、90年に比べて歳出がどれぐらい増えたかと。90年の収支差をそのままにして維持すれば45.4兆円。歳出が129兆円増えたと。税収が142兆円減ったと。その他。その結果、375兆円の国債残高が増えたと。

我々がやりたいというか考えたいのは、この税収等の減少分、減少がプラスとなって出てますけれども、足元、2006年に90年に比べてこれが10兆円ぐらい、まだ足りないと。こいつをどれだけ左のほうに戻せるかというのが一つのイシューだと。それが我々の見たいことだということで、あとは手元の資料のそれに関するポイントだけをここでは触れたいと思います。

2ページがまさにこの1990年以降の全体の流れですけれども、これもポイントを言えば、私もこの資料を見ながらいろいろ復習して思ったのですけれども、1997年4月に、消費税が橋本内閣のところで3%から4%、地方を入れれば5%に上がった。我々、そればかり言っているのですけれども、実は97年4月に消費税を上げることは、94年11月に決定したわけです。村山内閣のときに。そうすると、97年4月に消費税上げるので、先行して所得税を下げようと。そういうことをやったというのが一つの事実です。

それは下の図で見ていただくとわかるのですけれども、点線である名目GDPがどんどん伸びているのですけれども、何と、一般会計の税収は減っているわけですよね。それで97年の4月を迎えた。それから山一証券がつぶれるとか、不良債権の問題とか、アジアの経済危機とかいろんなことがあって、小渕内閣が出てきて、この税調の場でも何百回も議論してきた恒久的減税というのを所得税、法人税でやる。そして、このときにはGDPも下がるわけですけれども、税収も下がってくるというのが大きな流れです。

ずっと飛ばしていっていただいて、4ページ、1-3で見ていただきたいのは、これもいつも見ている国民所得比で見た税収、社会保障の負担です。社会保障のほうは税でやったり保険料でやったりするので国際比較は難しいとして、日本の税構造の特色は、これも税調で出てきて何回も議論しましたけれども、決して日本は個人所得税を他の国に比べていっぱいとっているわけではないということ、それから圧倒的に法人所得税の依存が高いということ、これは明らかだと思います。

そして今日の議論のおそらく一番重要な図は、5ページの「中期的な税収減とその主な要因」、これと先ほどの富田さんの2-7の90年度を基準としたという税収のところを比べていただくと、実はこの税収等の減少分の内訳がこの表なわけです。税調のほうの資料を見ていただくと、2年度、1990年度の決算で、60.1兆円の一般会計の税収があったと。それが平成9年度、まさに消費税の後ですけれども、これは53.9兆円。平成18年度では45.9兆円となっているわけです。これがどのぐらい減ってきてどのぐらい回復力があるのかというのがおそらく今日の最大の関心事だと思います。

それで、細かな内訳は触れないとしても、18年度、足元の45.9兆円の中で3兆円は所得税の税源移譲だから、その部分の背丈は伸ばしてあげなければいけない。そうすると、所得税が12.8兆円に3兆円ですから15.8、16兆円ぐらいいく。法人税は、平成9年度と比べるとほとんど戻っている。おそらくこの足元ではもう超えているかもしれない。消費税は変わらない。その他は、多少まだ資産デフレで下がってますけれども、これは後でいろいろ議論されればと思いますけれども、これも戻ってくる可能性があるだろうと。18年度、足元と平成9年度を比べれば、おそらくそこは戻っている。これは富田さんのほうの図で見て、98年と2000年の税収の減少分が足並みそろってますから、それと同じだと。そうすると、それがさらに左側まで行く勢いがあるのかというのが今のポイントだと思います。

所得税のところは、後で表をお見せしますけれども、やはり恒久的減税のショックは、構造的な改革の余波は続いていると思います。これがまだ取り戻せないだろうなと。法人税のほうも、これから簡単なグラフはお見せしますけれども、これはほとんど取り戻しているという感じです。

次、7ページを見ていただくと、「所得税収の推移」ということで、縦棒が所得税ですけれども、平成2年度から見ていただくと、さっき言ったように、段々と下がるわけですね。平成8年度まで下がって、そして平成9年度に1回上がるのですけれども、恒久的減税でドカンといく。足元の平成16、17、18年度は、少し低めに見えているのは地方への譲与税、税源移譲絡みで、直近はさらに3兆円足しますから、実力的に言うと、16兆円ぐらいが今の水準だと。これと前のを見ていただくとわかるように、やはり所得税の力は落ちているなということです。これはポイントの一つ。

それから10ページ、利子課税、2-4です。利子課税は、何といっても金利がこれだけ低いわけですから、税収が上がりようもないというのが答えです。縦棒が利子税収ですけれども、平成12、13年度は、上のほうの10年前の郵貯金利が満期になったということで出ているだけです。直近は3,000億円ぐらいしか入ってきてないということです。

配当は、次のページですけれども、昨今の企業の業績回復とそれから配当性向が伸びているということから、かなり好調です。17年度は一時的なみなし配当の収入があるのですけれども、細かなことはここでは説明を省くとして、一時的なものはあるにせよ、2兆円近く出てきているということです。

12ページ、キャピタルゲイン、有価証券等の譲渡益課税ですけれども、もちろんバブルのときの2兆円というのは夢のような数字であるとしても、平成9年度、我々、ここでとりあえず見ているのですけれども、そこが6,000億円。ただ、中身が大分変わってきまして、ここで議論したように、譲渡益課税が申告分離に一本化された。直近のところは、見にくいのですけれども、2,590億円ですね。一番下の1,030億円が申告分離です。1,560億円は特定口座です。我々のイメージにも合うように、こういう動きが出てきて、しかも、今、国・地方で10%で、国税は7%です。ここの伸びもあるということです。次、土地はなかなかまだ税収上がってきてない。そこまでが所得税です。

研究開発・設備投資の減税というのは、非常に大きな減税効果があったわけですけれども、私は個人的には、これは戦後の日本の法人税制でも有効的だったなと。

18ページが、それでは法人税がどうなるのかというふうなイメージです。一番上が、これは日銀短観で、直近まで経常利益の伸び率が見たいので、日銀短観がいいのだということでこれをとったわけですけれども、経常利益が最近ものすごく伸びてきていて、それに伴って法人税収も増えてきた。平成18年度の予算が13.1兆円で、左側、平成9年度が税率37.5%ですから、もし税率が30から37.5になれば、その分企業が税金払ってくれるとすると、13.1兆円に30分の37.5をかけるわけですけれども、16兆何がしかになります。これはもう9年度を超えているということで、この部分をどう読むかというのが次の問題だろう。

それから次、20ページからは、それでは企業の背後で何が起きていたのかねということですけれども、ざっくり言って、21ページが、今度は法人企業統計ですけれども、売り上げに占める費用が、企業努力で、折れ線グラフは下がってきましたねと。

22ページは、下がってきた中で何がさらに下がったのですかというと、圧倒的に支払利息が減ってきたということです。こうやって企業は利益を、もちろん人件費等を下げて費用を下げた。その費用の中では特に支払利子を下げて利益が生まれてきたということ。

それで自己資本が増えた等々で、24ページ、その結果、この表はどう読むかというと、イメージだけでいいのですけれども、企業のキャッシュフローについては、経常利益の半分に減価償却を足したキャッシュフローで設備投資がどれだけファイナンスできるかと。最近は下のほうにあるということはお金が余っているということで、企業は今お金が余っているというか、キャッシュフローで十分投資が賄えますということです。

25ページは、税調なので、少し見ていただきたいのですけれども、では企業は内部留保をどのぐらいしているのだということで、上のほうは黒字法人の国内の、税引き後利益からどのぐらい利益を内部留保しているかということで、ご覧のように、これが足元で非常に高まっている。業績がいいのでしょうと。それから海外法人はさらに高い。これが税絡みで一体どういうことを意味するのか等々の議論がある。

繰越欠損金の話は、以前やったということで省略します。

消費税、33ページからですけれども、これについて、34ページをご覧になっていただくと、平成9年度にドカンと上がる。このときは単に税が上がるだけではなくて、仕入控除の割合とか、簡易課税の下限を下げたとか等々で結構上がったわけですね。それ以降も、この場で言わずもがなですけれども、もし見ていただけるなら、35ページ、4-2、要するに、足元で見て、4%の税で10.5兆円。つまり、1%あたり2.6兆円ぐらい安定的に税がとれる税だというのは周知のことですけれども、確認です。

最後に地方税ですけれども、地方というのは、基本的に税収が減ったら、その部分だけ地方交付税受けている団体が収入減ってしまうわけではなくて、10億円減れば、その75%、7億5,000万円は交付税で、他の要件が変わらないとすれば補てんしてくれる仕組みだとしても、税収自身は国税に比べると比較的安定している。動きはほぼ同じですけれども、個人住民税の落ち込みもそれほどでなかったということと、あとやはり重要だと思うのは、固定資産税等が非常に粘り強く税金が入ってきている。それから最近は、法人2税、住民税、事業税の動きが非常に活発だということで支えているのかなということです。

あとは、今言った大きな数字をさらに見ているわけで、39ページの5-3は、今申し上げたような住民税は大体所得税と同じだけれども、その出っ張り、引っ込みは少ないねということです。

あと40ページ、地方法人税、まさにこれは国税の法人税と同じですけれども、最近の策が支えている。

41ページで重要だと思うのは、直近で、地方の法人税が11.56%、住民税、事業税合わせて11.56%、国税が約30%ですから、実効税率で約40%。これが日本の法人税制だということです。

あとはもう今言ったことの繰り返しと、44ページに、これもこの場で私の口から言う必要はないと思いますけれども、それでは、地方は全体で大体35兆円の税がある、その中で超過課税、法定外税でどれぐらいとれているのかというのがこの5-8の表です。大体直近で5,860億ということで、どれでとれているかというと、法人住民税の超過税率。これは大規模法人、資本金1億円以上の法人等で基本的には課している。法人事業税は、大阪、東京、神奈川、愛知とか、兵庫はあったかどうか知りませんが、そういうメジャーな産業のあるところでとっている。それから法定外普通税の大きなものは、核燃料税のような、結局、電気代で払ってもらっているそういうもので、35兆円に対して5,000億円というのが自前の収入で、つまり、基準財政収入以外のところでとっているということ。

そうすると、まさに、富田さんの報告を引かせていただきましたけれども、富田さんのところの15ページの2005年の90年と比べたら、10兆円の今まだある税収の減収というのがこれからどう取り戻せるかということで言えば、やはり所得税のところがそういう意味では弱い。

法人税は今後どうなるかというのはまさに非常に動向を含めて見極めなければならないだろう。消費税は、1%、2.5兆円程度ということで安定してきている。その他、資産デフレではげ落ちたというところは、有価証券のキャピタルゲインでご覧になっていただいたように、あるいは大分戻ってきたというところかなと。

以上です。

石会長

ありがとうございました。

それでは、5時までまだ三十数分時間がございますので、今のお二人のご説明につきまして、ご意見、あるいはご質問等々ありましたら、自由に出していただきたいと思います。過去のファクトの問題でも結構ですし、それからどういう教訓を学び取るかという点でのご意見でも結構です。どうぞ。

神野さん、何かないですか。地方のほうから。いや、地方とは別に、今後の税収見積もりはどうだ、あるいは何かそういう結果があれば。

神野委員

私は、財政というのは政治と経済との狭間だと思いますので、その架け橋みたいなものだと。そうすると、経済問題だけではなくて、社会問題を非常に重視して考えなければならないだろうと。ご案内のとおり、現在非常に国民が、様々な意味での社会的な病理や秩序の乱れなど、不安が出ておりますので、こうした点には適切に対応せざるを得ないということだと思うのですね。

富田さんのご発表でも、社会保障がかなり財政面での悪化に寄与した、ないしは今後も寄与していくかもしれないということのご指摘だったわけですが、それは結局、国民の負担と受益をきちっと、選択させなさいというご意見だったのですが、それは一般的にも、つまり歳出全体にという意味ですが、全体についてもそういうふうに言わざるを得ないのではないかと思います。

それで、そうだった場合に、歳出と歳入とを一体改革すると言ったときには、どういう公共サービスを今後国民が望み、それをどうやって負担し合っていくのかという、つまり、量だけではなくて、中身を含めた、つまり、こういうサービスが出てくるのだったらこういう負担構造にしようというのが筋ではないかと思うのですね。そういうような形で社会の様々な問題を解決しながら、結局、財政のバランスをとるということを考えれば、先ほどの地方ということであれば、私の考えは、できるだけ身近なところで、どういう公共サービスが要らなくて、どういう公共サービスが必要であって、私は必要な公共サービスが出てないという側面も非常に大きいと考えておりますので、そこをうまく選択させるような仕組みというのが重要なのではないかと思います。

石会長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、佐竹さん。

佐竹委員

今、富田先生のお話の社会保障給付の関係は、これはまさしく私どもの自治体でも、18年度の予算編成終わりましたけれども、全体で3.3%減ぐらいですけれども、この社会保障関係だけは7~8%増。トレンドをしていきますと、10年以内に市町村がやるのは社会保障と教育、これ以外の分野はそこに入ってくる余地がなくなるのですね、トレンドでいきますと。結局、私どものほうで、そこの社会保障のところはどうしようもない、我々としてはいじれない分野であるわけですよ。あえて交付税の議論はしませんけれども、その全体としての制度設計をどうするのかというのは、国と地方、全くそこのところは共通しているということです。

それともう一つは、税収の関係の、法定外税の問題はあるのですけれども、これなんかは、今、神野先生、お話ありましたけれども、私ども今やっているのは、とにかく、もうこれはやめると。こういう行政サービスはやめると。そこまで至らないと、変に一律歳出カットなんて言ったって全部中途半端になると。何をやって、何をやめるかと。

もう一つ、意外と隠された面があるのですけれども、これがなかなか難しいのでありますけれども、いわゆる受益者負担の原則というのは、社会保障だけではなくて、公園使ったり、テニスコート使ったり、あるいは水道、下水道の料金に至るまで、これを全部見直していかないとなかなか難しい。そういう場合に、これを完全に受益者負担の原則にしますと、一方で、我々、非常に苦しいのですけれども、田舎では下水道はもう払えなくなるのですね。本管100メートルに3軒か4軒しか使わないわけです。東京、大阪は100軒も200軒も使う。1軒で10万円なんていう料金は払えなくなるのですよ。そういう部分をどうするのかと。ただ、これも我々としてはかなりのペースで上げているわけですね。その分が、増税になるとするとそれとダブルでかかってくると。そういう非常に隠れた負担というものがこれから相当出てくるのかなと。

石会長

やめようとお考えの経費は何か具体的にあるのですか。

佐竹委員

ここへ至って、これがまた非常におもしろいのは、これはバブルのときの発想で、ソフト事業というのがいっぱいあるのですね。投資的事業は、今大変我々としては新しいものをつくる余裕はない。地方へ行きますと、今みんな学校が耐震化されてません。ちょうど全部建て替えの時期です。そういうものほとんどは建て替えなのですね。公民館にしても。つくるときは3つか4つを一緒にしても、全体的に管理費減らすという話ですけれども、ソフト事業というのは非常に楽しい事業がたくさんあるのですけれども、この種のものは最初からどうしても切っていかざるを得ないのですけれどもね。ただ、ここが住民の活動と非常に密接な連携があって、すべて全部悪いというわけにもいかないという、なかなか難しいところですね。

石会長

また今後の悩みをどうぞご開陳ください。どうぞほかに。

村上さん。

村上委員

富田さんに伺いたいのですが、富田さんとはお考えが違うのだろうと思うのですが、野村総研にリチャード・クーさんがいらっしゃるわけですがね。あの方は、積極財政でいけば、要するに税の問題は解決するという考えでずっとおっしゃっていたと思うのですけどね。今ご説明を伺って、自民党の中にもそういうような、つまり、名目4%ぐらいの成長でいければ増税はしなくてもいいというような考えがあるかと思うのですよね。その辺について、富田さんのお考えとはちょっと違うようには思いますけれども、どのあたりが限界かということですね。

石会長

富田さんの自説を開陳いただければいいですね。

村上委員

その辺を伺いたいのと、もう一つは、田近さんが、所得税が非常に弱いという分析をされているわけですけれども、所得税の改革をするためには、それでは、どのあたりが一番弱いというのか、何が弱いのかということで分析しておられたら教えていただきたいと思います。

石会長

ではどうぞ、富田さんから。

富田教授

神野先生からは、歳出だとか歳入を決めるのは政治であるということを言われて、全くそのとおりであるわけですが、私が強調したかったことは、政治が決めるにしたって予算制約というものをやはりきちっと守る必要があると。今日は、過去の財政を見ても、ほかの経費をいっぱい切ってきて、社会保障給付の増加に充ててきたのだというお話をさせていただきまして、決してほかのものが大事だとか大事でないということを言ったことではございません。

それから市長からは大変貴重な指摘をお教えいただいたのですけれども、もう市長ご指摘のように、いろんな改革が言われましても、この事業をやめるかどうかということを決めませんと、枠だけ決めてやる議論ではなかなか歳出の削減というのも進まないだろうと私も思いました。

最後のご質問ですけれども、4%になったらどうなのだということですが、今日強調させていただきましたように、税収と国債発行額を比べたらどうかと。国債発行額というのは、借換債含めますと、税収の3倍にも達しているのですね。成長率が1%高まるというふうに人々が思いますと、やはり金利も、期待インフレ率、あるいは期待成長率の高まりを反映してそれぐらい高くなってしまう。そうすると、税収と発行額で比べて母数が3倍違うわけですから、どっちが早く大きくなるかということを考えますと、やはり利払費のほうが早く増えてしまうのですね。ですから、この98年を境に日本の財政は極めて大きな構造改革を、いい意味でではないですよ、なんか変な構造になってしまったということなのです。税収よりも毎年の発行する国債のほうが多い状態になったということをまず我々は認識する必要があると。

ですから、高い成長率になって、自然増収で財政は改善するとはとても思えない状態である。だからこそ、国際金融市場はもう98年から警告を発していると私は理解しております。別に国際金融市場という話をしなくてもいいのですけれども、先ほどのグラフでご覧いただいたページで申し上げますと7ページですね。これが物語っていることなのですね。

国債の金利というのはもう完全に自由になっております。有名な、悪名高きといったら怒られますけれども、これまでは国債発行はシンジケート団でやってきたのですけれども、もうどんどんシェアが低下いたしまして、この4月から完全になくなります。国債管理政策も大体アメリカやヨーロッパ諸国並みに、あるいはそれ以上にもう整備されてきたわけです。

そういう意味で、国債金利を通貨当局はいじろうとしても、日本銀行であれ財務省であれですけれども、それはいじることはできない。必ず投資家というか、市場の期待を通じてしか変化させることはできないわけです。取引量ももう兆のオーダーを超えて、何京という金額で取引されていて、だれもこれを管理することはできない。ですから、私が申し上げたいのは、国債発行額が税収よりも多い時代になったということ。それと国際資本移動が完全に自由であって、だれも国債金利を規制することはできない時代に私たちは生きているのだと。

そういうことを考えますと、何か景気よくなったら財政よくなるというのをいまだに言っているのは閉鎖経済の発想に依拠した考えであろうと思います。閉鎖経済であればお金は海外に逃げませんので、国内のお金は国債に投資するしか道がないわけですね。そういうことをやってきたのが2.26事件以降の我が国と、それから1933年の全権委任法でナチスが中央銀行を政府機関としてしまったとき、それ以降の、つまり敗戦に至るまでのそういう時期であったということであります。

石会長

歴史的事実を踏まえて、どうもありがとう。

では、田近さん。

田近委員

今日は90年代の税収の推移というのがテーマだったのですけれども、ご質問に対しては、事実認識ということで、所得税をどう回復するかというのが現状から見ての問題だという認識に立って、まず、だけど、もし所得税でやらなくて消費税でやれば、それは1%で2.5兆円程度とれるわけですけれども、それは早い話、この税調の場でも何回も議論しているように、もし消費性向というか、100の所得で6割消費したと。そして消費税が5%ならば、要するに所得の3%に税金がかかってしまうということで、それはとれるに決まっているわけだと。要するに課税最低限が非常に小さくて、消費する部分が全部根っこで税金かかってしまうわけだと。もしそれが嫌ならば、そこから始めるべきではないと私も思うのですけれども、なら所得税からやらなければいけない。ではどこでやるのだと。

実際、最高税率に関しては、国税37、地方が13。合わせて50%で、これは国際的に見ても、あるいは実態的に見ても、もし変えるのが難しいとすれば、課税ベースをどう見直すのかな、課税最低限をどう見直すのかな、それから最高税率に至るところまでのブラケットをどう見直すのかなというところを考えないといけないということ。ある意味で、多くの人にとっては、実態的には消費税というのは労働所得課税ですから、要するに非常に小さな控除、あるいは非常に大きな課税ベースの労働所得税ですから、それでいいのだというならばそれでいいのかもしれませんけれども、やはりそうではないだろうと。所得税の力というのをここでもう一回考え直して、どこまでその力を取り戻せるかという議論は必要だと私は思います。

石会長

ありがとうございました。

どうぞ、菊池さん。

菊池委員

聞く前に、富田さん答えてしまったのですけれども、プライマリーバランスが当面の目標としては、ほかにないからいいと思うのですけれども、一旦プライマリーバランス均衡してしまうと、そこから先というのは、この赤字分、国債を出せばいいという考え方になりますよね。そうすると、幾らでもそっちの世界で勝手に出してくれやという話になってしまう気がするのですが、そのときの倫理観、それを抑えるのが何かあるのですか。

石会長

では、富田さん、どうぞ。

富田教授

今、菊池さんご指摘の点は、プライマリーバランスが成立しているという前提で、例えば金利が上がると利払費は増える。それを国債発行でカバーしますので、結局、国債発行もどんどん増えるということですね。それは、確かに民主主義のベースでプライマリーバランスが均衡しているからいいではないかと言っても、マーケットはなかなか許してくれないわけですね。しかも国債発行額はどんどん増えるわけでして、プライマリーバランスがとれていても利払費がどんどん増えますれば、やはり国債依存度の指標で見たりすると非常におかしな形になっている。ですから、プライマリーバランスが確保でき続けると言っても、その格好は非常にいびつなものになっている。金利が上がればですね。そういう危険もあるわけなのです。

ただ、プライマリーバランスが維持できているという前提で議論してしまうと混同してしまうと思うのですね。我々は、まだ大幅なプライマリー赤字にあるわけですので、まずはプライマリー黒字を実現するところまでどう道筋をつけていくかということが第一に議論すべきであり、さらにその先も高齢化が進み生産年齢人口の減少が続くわけですので、そういう中で財政の健全性をどう維持するかということを考えれば、プライマリー黒字が一定幅必要になってくるだろうということなのです。ですから、プライマリー黒字が維持できるという前提自体を置くまでにまだ至らないということなのですね。

菊池委員

何でか、わかるのですけれども、政治的に、プライマリーバランス、ゼロにすると、なんかいい世の中が来るみたいに思ってしまうでしょう、一見。普通の人は。

石会長

そうかな。

菊池委員

ええ。だから、結果、プライマリーバランスってすごい危険な考え方だと思って言ったのですけど。

石会長

心しなければいかんでしょうな。

富田教授

そうです。おっしゃるとおりです。

石会長

では遠藤さん、どうぞ。

遠藤委員

富田さんの資料の36ページの表を見ていると、確かにこの黒い部分が社会保障公費負担ということで、これ、上に乗っかっているので、何か原因のような気がするのだけれども、ひっくり返して書くと、2004年度の15.2%のこの灰色の部分が上にぽっと出るのですよね。だから、赤字が出ている原因が、この黒い部分が過去4%であったのが6%になったからだとばかり、それも一理あるでしょうけれども、下の部分だってもっと減らしたっていいのではないかという議論が出ないかということですよね。

それで、15ページを見ると、その他の歳出は、この10年間というか、90年度以降、19兆円を減らしているので、相当努力しているのですよということを言いたいだろうと思うのですけれども、これが本当に正しいのかどうか、もっとできたのじゃないのという話はどこで判断するのかということですね。

それから、富田さんの話を聞いていると、地方財政がなんかでたらめで、交付税で何か余計やったので、その部分が原因だということのように私には聞こえたのですけれども、そういうおつもりでおっしゃったのかどうか知りませんが、交付税を削減してと、こう言っているのですけれども、市長さんもここにおられますけれども、地方団体関係者、交付税というのは国からの補助金でも何でもないわけで、地方税なのですよ。だから、交付税率を削ってという話になると、それでは地方税を国税に移管するのかという話になるわけで、そんな話が通るわけがないので、今、国から地方に国税を移譲しようかという時代に、地方税を国税に戻そうかという話ですから、そんな話は通るわけがないので、そこのところはちょっと考えが違うのではないかということだけ指摘しておきたいと思います。

石会長

富田さん、どうぞ。

富田教授

考えが違うと言われてしまったら、議論にもならないので申し上げますと、最初の36ページは、黒い部分を下にしようと上にしようと同じ事実を示してますので、別にこれは特に作為があってこういうことをしたわけではございません。

申し上げたい点は、90年度から2004年度にかけて、国・地方を合わせた税収の対GDP比が減少してきた一方、他の経費を抑制したにもかかわらずプライマリー赤字が発生した。これから先、長期的に考えても、社会保障給付というのが増大せざるを得ない。これは社会保障給付が悪いと言っていることではなしに、むしろこうしたことを国民が不安に思っているわけでして、この安定的な財源をどう確保するかということは、歳出歳入一体改革においてやはり建設的に議論されるべきことだということを申し上げたかったということであります。

それから次の点、交付税が悪であるかのような印象を受けられたとのことでありますけれども、やはりいつも国が財源を補てんしてくれるという中で、果たしてそれが本来の地方分権であり地方自治であるのかということをぜひともお考えいただきたいということが第一に申し上げたい点ですし、これから先、社会保障の安定的な財源の確保に窮しているときに、国・地方、両輪となってその確保を目指すべきであり、さっきもご紹介申し上げましたけれども、国と地方の財政状況は明確なコントラストを成しておるという事実、これも含めて広く国民に議論していただく必要があるだろうということを申し上げたいわけでございます。いつまでも水引き争いでやっているような状況ではないということを強く訴えたいと思います。

石会長

ぜひというご発言ですから、では短く。

遠藤委員

気になるのでちょっと発言しますが、国民は社会保障関係費を切ってくれと言っているのではないのですよ。

富田教授

すみません。私は社保を切れとは一言も言ってません。よく発言を聞いてください。

遠藤委員

伸びを抑制するのではなくて、約束したことはやってもらいたいなと国民は思っているわけですよ。だから、そこのところは社会保障関係費だけというのは問題があるのではないかと思いますね。

それから交付税の足りない部分を国が補てんするというシステムはおかしいとおっしゃるけれども、それは、もともとは地方の財源が足りなくなれば交付税率を動かしますよというのが本来の制度だったのですよ。それができなくなったから、地方も自腹というか、半分自分で負担しますよという形になってきているわけで、最初から国が補てんしますよという形にはなってなかった。国が責任を持ちますよという制度設計になっていたのですから、それが事情が変わったということだと思いますね。

石会長

これは百年戦争につながりますから、いずれまた。

佐竹委員

ちょっと一言だけ。財政赤字について、これは先生まさにご承知だと思いますが、当たり前ですけれども、国の場合と地方の場合とそもそもシステム違いますからね。地方の場合の地方債はある一定以上は発行できない仕組みですから、今の国債のあれと地方債のあれは全くルールが違いますので、これを単純には比べられないということですね。それだけです。

石会長

では河野さんと丹羽さんの順でいきましょう。どうぞ、河野さん。

河野委員

1月以来、学者が、評論家が、政治家がこの問題について、現在までの分析と将来展望について何を言おうと、2つに分かれるのですね。世間の人はそういうふうに色分けするわけだ。折衷案というのはあまりないのですよ。世の中、こちらの主張もとって、中川氏の主張をとって、財務大臣の主張もとって、与謝野さんの主張もとって。ここをミックスしたらどうだというきれいな議論はあまりないのですね。問題はそれほどシャープだということですよ。

今日のお二方の話も、位置づければ実に明快になるのですね。特に一番戦闘的だったのは富田さんだから、当然そういう反論も出るし、それを意図してしゃべられたと思うからね。結局、中間のポジションというのは、今、財界人であろうが学者であろうが、うまいこと言える人いませんよ。僕が聞いてみたら。どっちかに加担しているのだ。

結局のところ、ここは税調だから思うのだけど、将来、次の政権構想、だれがどう座敷をとって担うかという話を別問題にして、我々、大臣になるわけでも何でもないから、そうでなくて、客観的に見て、どういう方向でものを考えたらばより国民全体のためにいいかという、もうしようがない、そこに観念的に立つしかないのですよ、我々の議論は。そうすると、どこをどう削ってどこの歳入を増やすかということしかないのですね。

田近先生もおっしゃったけれども、消費税だって、今、税率のことを言わなければほとんどもの言ったことにならないわけ。所得税も、累進税率構造変えるのだよということを言わなければ、ほとんど何を言っているのかわからない。今日、田近先生のほうから随分甘く言われたわけですよ。気持ちはわかるけどね。つまり、シャープに言うかどうかの差なのですよ、この話は。今はまだその時期ではない。どっちかに類別されたらかえって発言は苦しくなるからみんな黙っているだけですよ。ただ、それでも、よく聞いていればよくわかりますね。例えば富田さんおっしゃっていること、国有財産を売却するなんて、前の税調会長も言っていたけれども、伝統で20年間言っているのだから、それはやったらいいのですよ。ディベロッパーが喜ぶからいいのだ。部分的には。しかし、全体を救うようなスケールではないかもしれないなということはもう薄々わかっている。特別会計も同じこと。

そうすると、やはり根っこは歳出をどういうふうに抑制できるか。みんな我慢できる範囲内で。あとは、税金どうするかという話ですよね。折衷案はないから、結局、何言ったって、おまえさん、どっちのグループだなと言われるのですよ。お二人の話は間違いなく与謝野、財務大臣ベースですよ、基本は。それより発言しようがないのだから、こんなところで。

石会長

わかりました。そういう色分けも重要だということ。まだありますか。

河野委員

そういう意味でおもしろかったですよ。

石会長

コメントが出たところで、では丹羽さん、どうぞ。

丹羽委員

大変参考になりました。今までは要するに、一応遠藤さんの反論もありますけれども、社会保障費が足を引っ張り、所得税がまた下がったというのは特徴的に歳出・歳入で両方言えると思うのですね。これからは今までと違う面がやはりあるだろうと。1つは少子・高齢化がどの程度の影響を及ぼすか。特に少子・高齢化が社会保障費を減らす方向にはいかない。今まで足を引っ張っていたのがもっと引っ張るようになるだろう。もう一つは金利の上昇ですね。これはプライマリーバランスが達成された後も、菊池さんがおっしゃるように、やはり金利が上昇したとき、富田さんも指摘されたように、負担が増える可能性があるというような、金利の上昇とそれから少子・高齢化というのは今までなかった現象がこれから起きるよと。それを前提にして議論しなければいけない。

ところが、これはいずれもマイナス要因になる可能性があるということで、結構政府の見方も甘いし、今日お話を聞いたのもちょっと甘いのではないのという気がいたします。

石会長

ありがとうございました。あと5分ほどになりましたが、早い者順ですから。

では林さんから。

林委員

国と地方の合計のいわゆるプライマリーバランスを考えるときに、国の歳出をカットしたときに、カットの仕方によっては、プライマリーバランスの改善にはつながらない部分があるわけですね。つまり、国が地方に対して、例えば必置をしているとか定員を決めているとかいったような場合に、国の歳出カットが必ずしも国と地方合わせたプライマリーバランスの改善につながらないものとつながるものとがあるわけですね。ですから、そこの部分をきちっと切り分けていかないと、つまり、地方の制度というのは随分受け身の部分もあったりしますし、いわゆる財政制度そのものが随分国と違うということもありますので、そこらを、国の歳出カットで、国のプライマリーバランスを改善することが全体のプライマリーバランスの改善につながらないようなものは一体何なのか、あるいはつながるものは何なのか、きちっと切り分けた議論をしていかないと、どうもそのあたりがあいまいになってしまって、結果的にはどちらも別に、国はよくなったけれども地方が悪くなるとかいうような話にならないようにしないといけないという感じがいたします。

石会長

おっしゃるとおりですね。

菊池さん、どうぞ。

菊池委員

富田さんには、39ページのこのスプレッドですけれども、これは随分深刻だなと。その深刻度をひとつ伺いたいのと、この10年間の推移というのはどんな感じに、大ざっぱでいいのですけれども、大体こんな広がったままなのかね。

富田教授

これは私は最近から、97年ぐらいから取り出したので、ちょっと過去までないのですけれども、ほかの尺度としては、円建てでイタリアが国債を出している。スペインも円建てで出しているのですね。それらの国々の国債よりも、同じ満期の日本国債の金利のほうが少し高いという事実もございます。そういう意味で、日本国債の信用が揺らいでいるということは言えるということなのです。

さらに、非居住者があまり日本国債持ってないから大丈夫だという指摘がよくあるのですけれども、株式ですと、上場株の24%ぐらい、非居住者が持っているのですね。日本国債はあまり人気なくて、4%ぐらいしか非居住者は持っていないのです。この民間企業と日本国債との極めて大きなコントラストといったことも、我が国の財政の健全性、先ほど申しましたように、民主主義の健全性ということを見る上で、やはりこういう尺度も私どもは見ていかないと、なんかここは地方財政審議会みたいに地方の方ばかりいろんなこと言われるので、そういう議論だけに陥らないように、やはり幅広い観点よりご議論いただかないと大変だなあと思います。

石会長

よろしゅうございますか。予定した時間まで1~2分ですが、どうしてもという方があれば。

では井上さん、最後にまとめてください。

井上委員

いや、まとめるというのではなくて、どうも地方ということに対する問題なのですけれども、地方は非常に人件費も高い。それから、例えば教員の問題にしたって115万人いる。これにしたって非常に多いという、義務教育なんかでもそうですけれども、80万人ぐらいいる。それは何回も言ったことがあるわけですけれども、ともかく、本当の教育もしないで教員ばかりいると。それを許しておる地方ということにもっと逆に問題があるのではないかと。

それから例えば今の交付税の問題にしてもしかりですけれども、これだけ足りないから交付税としてと。国がコントロールし過ぎているということになるのではないのかなと。だから、先ほど佐竹さんから言われた、下水道はつくった。その住民は2~3人だと。10万円以上の負担できない。そんなのは本当は浄化槽でいいわけですよね。そんなところに下水道つくったことが間違いなのであって、そういうむだ使いをずうっとやってきているということをもっと反省していただかなければいけないのではないのかと思うわけでして、どうも国がコントロールし過ぎるからそういう問題が起こっているのかということもあるのかなと思うので、その辺をもう少し検討し直さなければいかんと。

それから予算の問題にしてもしかりだと思うのですけれども、予算の配分の仕方、これもむだな予算がいっぱいある。その辺をもっと突っ込んで検討していただかないと、もうむだが多過ぎると思いますので、よろしくお願いします。

石会長

最後に、また反対側かどうか知りませんが、懐疑の意見も出ましたけれども、今日は非常に各々皆さんのお考えを率直にいただきまして、実りある議論だったと思います。

富田さん、ありがとうございました。税調はいつもこんな調子ですから、またぜひ出てきていただいて、大いに議論していただきたい、刺激を与えていただきたいと、このように考えております。

次回以降の予定を申し上げまして散会にいたしたいと思いますが、次回は3月10日、金曜日でありますが、2~4時を考えております。総会と基礎問題小委員会合同でやる予定でございますが、社会保障制度につきまして社会保障の専門家と、それから厚労省のほうから、今すでに改革が行われておりますことにつきまして、年金、医療、介護も含めて総括的にご議論いただきたいと思ってます。今日の話でもございましたように、やはり社会保障をこれからどうするかというのは最大の問題でありますから、現に進んでいることを我々としてもっと学びたいと、このように思いますので、次回は社会保障に限定いたしまして議論いたしたいと思います。

では、ちょうど時間になりました。どうも今日はありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。